特開2017-60338(P2017-60338A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2017-60338カーボンブラシのリード線取り付け構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-60338(P2017-60338A)
(43)【公開日】2017年3月23日
(54)【発明の名称】カーボンブラシのリード線取り付け構造
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20170303BHJP
   H02K 13/00 20060101ALI20170303BHJP
【FI】
   H02K15/02 P
   H02K13/00 P
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-184642(P2015-184642)
(22)【出願日】2015年9月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000154185
【氏名又は名称】株式会社富士カーボン製造所
(74)【代理人】
【識別番号】100090239
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 始
(74)【代理人】
【識別番号】100100859
【弁理士】
【氏名又は名称】有賀 昌也
(72)【発明者】
【氏名】浮森 悟
(72)【発明者】
【氏名】マイ バン タン
(72)【発明者】
【氏名】宮城 保寿
【テーマコード(参考)】
5H613
5H615
【Fターム(参考)】
5H613AA01
5H613AA02
5H613BB14
5H613GA11
5H613KK04
5H615AA01
5H615PP26
5H615SS08
5H615SS15
5H615TT01
(57)【要約】
【課題】リード線103が外れ難いリード線取り付け方法及びリード線取り付け構造を提供すること。
【解決手段】加工用ドリル10の下降に伴い、ブラシ本体101には先端切れ刃13によってストレート穴21が切削加工されるとともに、第1外周切れ刃14と第2外周切れ刃15によってストレート穴21の内壁に沿って延びる螺旋溝22が切削加工される。そして、停止ステップ(D)では、加工用ドリル10が昇降を停止したまま回転するので、ストレート穴21の底部に第1外周切れ刃14と第2外周切れ刃15によって螺旋溝22の外径より大きい内径を有する拡径部23が形成される。リード線取り付け穴20にリード線103の基端部を挿入し、その周囲に銅粉111を充填し、充填した銅粉111加圧圧縮してリード線103をリード線取り付け穴20に固定すると、リード線103の基端部が螺旋溝22及び拡径部23に引っ掛かるので、リード線103がリード線取り付け穴20から外れ難くなる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシ本体に形成したリード線取り付け穴にリード線の基端部を挿入し、導電性粉体をリード線取り付け穴に充填して加圧圧縮することによりリード線をブラシ本体に固定したカーボンブラシのリード線取り付け方法であって、
ドリル本体の先端に、ドリル本体より細い径を有する先端軸部を設けるとともに、該先端軸部に、先端切れ刃と、第1外周切れ刃と、第1外周切れ刃から連続する第2外周切れ刃から成るリーディングエッジを設け、
先端切れ刃と第1外周切れ刃及び第2外周切れ刃をドリル本体の回転中心線を含む基準面に設けるとともに、先端切れ刃を回転中心線の一側に配置し、第1外周切れ刃と第2外周切れ刃を回転中心線の他側に配置し、
先端切れ刃の内側角隅部と第1外周切れ刃の内側角隅部が回転中心線上で接するように先端切れ刃と第1外周切れ刃を設けるとともに、前記基準面内において先端切れ刃と第1外周切れ刃が所定の角度を成し、
第1外周切れ刃と第2外周切れ刃が所定の角度を成す三角形の2辺を形成し、かつ2辺によって区画形成される三角形の頂角部が前記先端軸部の側方へ突出するように設けたカーボンブラシのリード線取り付け穴の加工用ドリルを使用し、
ブラシ本体に対して加工用ドリルを回転させながら所定の下降速度で下降させる下降ステップと、
加工用ドリルがブラシ本体に対し、所定の深さまで下降したとき回転を続けながら下降を停止する停止ステップと、停止ステップに続いて、加工用ブラシを回転させながら下降速度より速い上昇速度で加工用ドリルを上昇させる上昇ステップから成り、ブラシ本体の表面から内部に直進するストレート穴と、ストレート穴の内壁に沿って延びる螺旋溝と、ストレート穴の底部に形成され、螺旋溝の外径より大きい内径を有する拡径部を備えたリード線取り付け穴を加工するリード線取り付け穴加工工程と、
リード線取り付け穴にリード線の基端部を挿入する挿入工程と、
リード線取り付け穴に挿入したリード線の周囲に導電性粉末を充填する充填工程と、
リード線取り付け穴に充填した導電性粉末を加圧圧縮してリード線をブラシ本体に固定する固定工程を備えたことを特徴とするカーボンブラシのリード線の取り付け方法。
【請求項2】
前記回転中心線と前記頂角部との間隔yと、前記先端軸部の半径xが式:y/x≧1.9を満たすことを特徴とする請求項1に記載のリード線取り付け方法。
【請求項3】
先端切れ刃と第1外周切れ刃との成す角度が110〜130°で、かつ第1外周切れ刃と第2外周切れ刃との成す角度が80〜100°であることを特徴とする請求項1に記載のリード線取り付け方法。
【請求項4】
ブラシ本体に形成したリード線取り付け穴にリード線の基端部を挿入し、導電性粉体をリード線取り付け穴に充填して加圧圧縮することによりリード線をブラシ本体に固定したカーボンブラシのリード線の取り付け構造であって、
前記リード線取り付け穴がブラシ本体の表面から内部に直進するストレート穴と、ストレート穴の内壁に沿って延びる螺旋溝と、ストレート穴の底部に形成され、螺旋溝の外径より大きい内径を有する拡径部を備えたことを特徴とするカーボンブラシのリード線取り付け構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカーボンブラシのリード線取り付け方法及びリード線取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンブラシの一形式として、特開2006−50772号公報、特開2008−154453号公報、特開2011−50142号公報等には、ブラシ本体に形成したリード線取り付け穴にリード線の基端部を挿入し、銅粉をリード線取り付け穴に充填して加圧することによりリード線をブラシ本体に固定したカーボンブラシが開示されている。
【0003】
通常、この種のリード線取り付け穴は、図6に示すドリル100を使用してブラシ本体に加工される。図7に示すように、このドリル100を用いてブラシ本体101に加工したリード線取り付け穴102はストレートな形状を有している。このリード線取り付け穴102には、リード線取り付け装置110を使用してリード線103が取り付けられる。リード線取り付け装置110は銅粉111を蓄える受け皿112、受け皿112の底面の開口113に昇降可能に嵌合するチューブラ114を備えている。
【0004】
リード線取り付け装置110を図8に模式的に示す手順で作動させることによりリード線103がブラシ本体101のリード線取り付け穴102に固定される。初めに、ステップ(A)でリード線103を挿入したチューブラ114を下降させてチューブラ114をリード線取り付け穴102に進入させ、チューブラ114の先端から突出しているリード線103の基端部をリード線取り付け穴102の穴底に押し付け、リード線103の基端部を仮成型する。
【0005】
続いて、ステップ(B)でチューブラ114を上昇させ、チューブラ114で閉じていた受け皿112の底面の開口113を開け、受け皿112から銅粉111をリード線取り付け穴102に導入し、リード線103の基端部とリード線取り付け穴102の間の隙間に銅粉111を充填する。
【0006】
次にステップ(C)で、再度チューブラ114を下降させ、受け皿112の開口113をチューブラ114で閉じて受け皿112からリード線取り付け穴102への銅粉111の導入を停止する。
【0007】
さらにステップ(D)で、チューブラ114を下降させ、チューブラ114の先端をリード線取り付け穴102内の銅粉111に押し付けて加圧圧縮し、しかる後、ステップ(E)で再度チューブラ114を上昇させてリード線取り付け穴102から抜き出す。かかる一連のステップ(A)〜(E)を経て、リード線103の基端部をブラシ本体101のリード線取り付け穴102に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−50772号公報
【特許文献2】特開2008−154453号公報
【特許文献3】特開2011−50142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のドリル100で加工したリード線取り付け穴102は形状がストレートなため、リード線103の基端部がリード線取り付け穴102の内壁に引っ掛かり難い。そのため、銅粉111を加圧圧縮してリード線103の基端部をブラシ本体101に固定したときの固着力が低く、リード線取り付け穴102から外れ易い。一方、銅粉111を強く加圧して圧縮すれば固着力は増すものの、高い加圧力でブラシ本体101が破損するおそれがある。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑み、リード線が外れ難いカーボンブラシのリード線取り付け方法及びリード線取り付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、ブラシ本体に形成したリード線取り付け穴にリード線の基端部を挿入し、導電性粉体をリード線取り付け穴に充填して加圧圧縮することによりリード線をブラシ本体に固定したカーボンブラシのリード線取り付け方法であって、
ドリル本体の先端に、ドリル本体より細い径を有する先端軸部を設けるとともに、該先端軸部に、先端切れ刃と、第1外周切れ刃と、第1外周切れ刃から連続する第2外周切れ刃から成るリーディングエッジを設け、
先端切れ刃と第1外周切れ刃及び第2外周切れ刃をドリル本体の回転中心線を含む基準面に設けるとともに、先端切れ刃を回転中心線の一側に配置し、第1外周切れ刃と第2外周切れ刃を回転中心線の他側に配置し、
先端切れ刃の内側角隅部と第1外周切れ刃の内側角隅部が回転中心線上で接するように先端切れ刃と第1外周切れ刃を設けるとともに、前記基準面内において先端切れ刃と第1外周切れ刃が所定の角度を成し、
第1外周切れ刃と第2外周切れ刃が所定の角度を成す三角形の2辺を形成し、かつ2辺によって区画形成される三角形の頂角部が前記先端軸部の側方へ突出するように設けたカーボンブラシのリード線取り付け穴の加工用ドリルを使用し、
ブラシ本体に対して加工用ドリルを回転させながら所定の下降速度で下降させる下降ステップと、
加工用ドリルがブラシ本体に対し、所定の深さまで下降したとき回転を続けながら下降を停止する停止ステップと、停止ステップに続いて、加工用ブラシを回転させながら下降速度より速い上昇速度で加工用ドリルを上昇させる上昇ステップから成り、ブラシ本体の表面から内部に直進するストレート穴と、ストレート穴の内壁に沿って延びる螺旋溝と、ストレート穴の底部に形成され、螺旋溝の外径より大きい内径を有する拡径部を備えたリード線取り付け穴を加工するリード線取り付け穴加工工程と、
リード線取り付け穴にリード線の基端部を挿入する挿入工程と、
リード線取り付け穴に挿入したリード線の周囲に導電性粉末を充填する充填工程と、
リード線取り付け穴に充填した導電性粉末を加圧圧縮してリード線をブラシ本体に固定する固定工程を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のリード線取り付け方法において、前記回転中心線と前記頂角部との間隔yと、前記先端軸部の半径xが式:y/x≧1.9を満たすことを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1に記載のリード線取り付け方法において、
先端切れ刃と第1外周切れ刃との成す角度が110〜130°で、かつ第1外周切れ刃と第2外周切れ刃との成す角度が80〜100°であることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明は、ブラシ本体に形成したリード線取り付け穴にリード線の基端部を挿入し、導電性粉体をリード線取り付け穴に充填して加圧圧縮することによりリード線をブラシ本体に固定したカーボンブラシのリード線の取り付け構造であって、
前記リード線取り付け穴がブラシ本体の表面から内部に直進するストレート穴と、ストレート穴の内壁に沿って延びる螺旋溝と、ストレート穴の底部に形成され、螺旋溝の外径より大きい内径を有する拡径部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、加工用ドリルの本体の先端部に本体より細い径を有する先端軸部を設け、先端軸部に第1外周切れ刃と第2外周切れ刃を設けるとともに、第1外周切れ刃と第2外周切れ刃が所定の角度を成す三角形の2辺を形成し、かつ2辺によって区画形成される三角形の頂角部が前記先端軸部の側方へ突出するように設けたので、加工用ドリルの回転に伴って先端軸部がブレながら回転する。
そのため、下降工程で加工用ドリルの下降に伴い、ブラシ本体には先端切れ刃によってストレート穴が切削加工されるとともに、三角形を成す第1外周切れ刃と第2外周切れ刃によって、ストレート穴の内壁に沿って延びる螺旋溝が切削加工される。
【0016】
停止ステップでは、加工用ドリルが昇降を停止したまま回転するので、ストレート穴の底部に第1外周切れ刃と第2外周切れ刃によって螺旋溝の外径より大きい内径を有する拡径部が形成される。
【0017】
第1外周切れ刃と第2外周切れ刃によって形成される螺旋溝のピッチは加工用ドリルの昇降速度が速いほど大きくなる。そして、螺旋溝のピッチが大きいほど先端軸部が軸心側に大きくブレ、そのため螺旋溝の外径は小さくなる。一方、加工用ドリルの昇降速度が遅くなれば、螺旋溝のピッチが小さくなり、先端軸部の軸心側へのブレが小さくなるので、螺旋溝の外径は大きくなる。上昇工程では、ドリルが下降速度より速い上昇速度で上昇するので、上昇工程でストレート穴の内壁に沿って形成される螺旋溝のピッチは下降工程で形成された螺旋溝のピッチより大きくなる。そのため、下降工程で形成された螺旋溝が上昇工程で部分的に破損することがあっても大部分は残存する。
【0018】
このように、本発明に係る加工用ドリルを使用し、下降ステップ、停止ステップ、上昇ステップの各ステップを経てブラシ本体を加工することにより、ブラシ本体の表面から内部に直進するストレート穴と、ストレート穴の内壁に沿って延びる螺旋溝と、ストレート穴の底部に形成され、螺旋溝の外径より大きい内径を有する拡径部を備えたリード線取り付け穴がブラシ本体に加工される。
【0019】
かかる構造のリード線取り付け穴に挿入工程でリード線の基端部を挿入し、充填工程でその周囲に導電性粉末を充填し、加圧工程で導電性粉末を加圧圧縮してリード線をリード線取り付け穴に固定すると、リード線の基端部が螺旋溝及び拡径部に引っ掛かるので、リード線がリード線取り付け穴から外れ難くなる。
【0020】
請求項2に係る発明によれば、頂角部の先端軸部の側方への突出寸法が大きくなり、加工用ドリルの回転時に先端軸部がブレ易くなる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、加工時に螺旋溝の形状が崩れ難くなる。なおかつ、第1外周切れ刃と第2外周切れ刃が成す三角形が、加工用ドリルの回転時にブレ易い位置にくる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施例に係るカーボンブラシのリード線取り付け方法に使用するリード線取り付け穴の加工用ドリルを示す側面図である。
図2】同加工用ドリルを示す正面図である。
図3】同加工用ドリルによるカーボンブラシのリード線取り付け穴の加工方法を示す模式的説明図である。
図4】同加工方法で加工したリード線取り付け穴の一例を示す斜視図である。
図5】同加工方法で加工したリード線取り付け穴にリード線を固定する手順を示す模式的説明図である。
図6】従来のリード線取り付け穴の加工用ドリルを示す側面図である。
図7】同加工用ドリルで加工したリード線取り付け穴と、リード線取り付け装置を示す模式的説明図である。
図8】同加工用ドリルで加工したリード線取り付け穴にリード線を固定する手順を示す模式的説明図である。
【実施例】
【0023】
以下に本発明を図面に基づき説明する。図1及び図2に本発明の一実施例に係るカーボンブラシのリード線の取り付け穴の加工方法に使用する加工用ドリル10を示す。当該加工用ドリル10の本体11の先端部には本体11より径の細い先端軸部12が設けられている。先端軸部12の径は本体11の径の約半分である。この先端軸部12に先端切れ刃13と、第1外周切れ刃14と、第1外周切れ刃14から連続する第2外周切れ刃15から成るリーディングエッジ12Aが設けられている。
【0024】
先端切れ刃13と第1外周切れ刃14及び第2外周切れ刃15は、ドリル本体11の回転中心線Lを含む基準面S内に設けられている。先端切れ刃13は回転中心線Lの一側に設けられ、第1外周切れ刃14と第2外周切れ刃15は回転中心線L他側に設けられ、先端切れ刃13の内側角隅部16と第1外周切れ刃14の内側角隅部16が接している。
【0025】
第1外周切れ刃13と第2外周切れ刃14は基準面S内において三角形の2辺を形成し、かつ2辺によって区画形成される三角形の頂角部17が先端軸部12の側方へ突出するように設けられている。
そして、回転中心線Lと頂角部17との間隔yと、先端軸部12の半径xが式:y/x≧1.9を満たすように寸法が設定されている。
【0026】
先端切れ刃13と第1外周切れ刃14とが基準面内において成す角度θ1は110〜130°を成すように両刃13,14が設けられている。また、第1外周切れ刃14と第2外周切れ刃15とが基準面S内において成す角度θ2は80〜100°となるように両刃14,15が設けられている。さらにまた、先端切れ刃13、第1外周切れ刃14及び第2外周切れ刃の逃げ角は20°に設定されている。
【0027】
加工用ドリル10の構造は以上の通りであって、図3にこの加工用ドリル10を使用してカーボンブラシの本体101にリード線取り付け穴20を加工するステップ(A)〜(E)を模式的に示す。初めに、下降ステップ(A),(B),(C)において、ブラシ本体101に対して加工用ドリル10を一定速度で回転させながら所定の下降速度で下降させる。そして、加工用ドリル10がブラシ本体101に対し、所定の深さまで下降したとき下降を停止する。この停止ステップ(D)において、加工用ドリル10の回転は下降ステップ(A)〜(C)と同様に継続する。停止ステップ(D)に続いて、加工用ドリル10を回転させたまま上昇させる。上昇ステップ(E)における加工用ドリル10の上昇速度は下降ステップ(A)〜(C)における下降速度より速く、素早くブラシ本体101から加工用ドリル10を引き抜く。
【0028】
本実施例によれば、本体11の先端部に本体より細い径を有する先端軸部12を設け、先端軸部12に第1外周切れ刃14と第2外周切れ刃15を設けるとともに、第1外周切れ刃14と第2外周切れ刃15が所定の角度を成す三角形の2辺を形成し、かつ2辺によって区画形成される三角形の頂角部17が先端軸部12の側方へ突出するように設けたので、加工用ドリル10の回転に伴って先端軸部12がブレながら回転する。そのため、ステップ(A)〜(C)における加工用ドリル10の下降に伴い、ブラシ本体101には先端切れ刃13によってストレート穴21が切削加工されるとともに、第1外周切れ刃14と第2外周切れ刃15によってストレート穴21の内壁に沿って延びる螺旋溝22が切削加工される。そして、停止ステップ(D)では、加工用ドリル10が昇降を停止したまま回転するので、ストレート穴21の底部に第1外周切れ刃14と第2外周切れ刃15によって螺旋溝22の外径より大きい内径を有する拡径部23が形成される。図4に加工用ドリル10で加工したリード線取り付け穴20の形状の一例を示す。
【0029】
第1外周切れ刃14と第2外周切れ刃15によって形成される螺旋溝22のピッチは加工用ドリル10の昇降速度が速いほど大きくなる。そして、螺旋溝22のピッチが大きいほど螺旋溝22の外径は小さくなる。一方、加工用ドリル10の昇降速度が遅くなれば、螺旋溝22のピッチが小さくなり、その結果、螺旋溝22の外径は大きくなる。上昇ステップでは、加工用ドリル10が下降速度より速い上昇速度で上昇するので、上昇ステップでストレート穴21の内壁に沿って形成される螺旋溝22のピッチは下降ステップで形成された螺旋溝22のピッチより大きくなる。そのため、下降ステップで形成された螺旋溝22が上昇ステップで部分的に破損することがあっても大部分は残存する。
【0030】
上述したように、本実施例に係る加工用ドリル10を使用し、下降ステップ(A),(B),(C)、停止ステップ(D)、上昇ステップ(E)のステップを経てブラシ本体101を加工することにより、ブラシ本体101の表面から内部に直進するストレート穴21と、ストレート穴21の内壁に沿って延びる螺旋溝22と、ストレート穴21の底部に形成され、ストレート穴21の内径より大きい拡径部23を備えたリード線取り付け穴20がブラシ本体101に加工される。
【0031】
次に、加工用ドリル10で加工したリード線取り付け穴20にリード線103を固定する手順を図5に基づき、説明する。初めに、挿入工程(A)でリード線103を挿入したチューブラ114を下降させてチューブラ114をリード線取り付け穴20に進入させ、チューブラ114の先端から突出しているリード線103の基端部をリード線取り付け穴20の底部の拡径部23に押し付け、リード線103の基端部を仮成型する。続いて、充填工程(B),(C),(D)においてチューブラ114を上昇させ、チューブラ114で閉じていた受け皿112の底面の開口113を開け、受け皿112から銅粉111をリード線取り付け穴20に導入し、リード線103とリード線取り付け穴20の間の隙間に銅粉111を充填し、銅粉111が所定量充填されたら、チューブ114を再度下降させ、受け皿112の開口113をチューブラ114で閉じて、受け皿112からリード線取り付け穴20への銅粉111の導入を停止する。続いて、固定工程(E)において、チューブラ114をさらに下降させ、チューブラ114の先端と周面を銅粉111に押し付けて銅粉111を加圧圧縮した後、チューブラ114を上昇させて、リード線取り付け穴20から抜き出し、リード線103の基端部をブラシ本体101のリード線取り付け穴20に固定する。リード線103はその基端部が螺旋溝22及び拡径部23に引っ掛かるので、リード線取り付け穴20から外れ難くなる。
【符号の説明】
【0032】
10…リード線取り付け穴の加工用ドリル
11…加工用ドリルの本体
12…先端軸部
12A…リーディングエッジ
13…先端切れ刃
14…第1外周切れ刃
15…第2外周切れ刃
16…角隅部
17…頂角部
20…リード線取り付け穴
21…ストレート穴
22…螺旋溝
23…拡径部
101…ブラシ本体
103…リード線
110…リード線取り付け装置
111…銅粉
112…受け皿
113…底面開口
L…回転中心線
S…基準面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2016年12月15日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブラシ本体に形成したリード線取り付け穴にリード線の基端部を挿入し、導電性粉体をリード線取り付け穴に充填して加圧圧縮することによりリード線をブラシ本体に固定したカーボンブラシのリード線の取り付け構造であって、
前記リード線取り付け穴がブラシ本体の表面から内部に直進するストレート穴と、ストレート穴の内壁に沿って延びる螺旋溝と、ストレート穴の底部に形成され、螺旋溝の外径より大きい内径を有する拡径部を備えたことを特徴とするカーボンブラシのリード線取り付け構造。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカーボンブラシのリード線取り付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンブラシの一形式として、特開2006−50772号公報、特開2008−154453号公報、特開2011−50142号公報等には、ブラシ本体に形成したリード線取り付け穴にリード線の基端部を挿入し、銅粉をリード線取り付け穴に充填して加圧することによりリード線をブラシ本体に固定したカーボンブラシが開示されている。
【0003】
通常、この種のリード線取り付け穴は、図6に示すドリル100を使用してブラシ本体に加工される。図7に示すように、このドリル100を用いてブラシ本体101に加工したリード線取り付け穴102はストレートな形状を有している。このリード線取り付け穴102には、リード線取り付け装置110を使用してリード線103が取り付けられる。リード線取り付け装置110は銅粉111を蓄える受け皿112、受け皿112の底面の開口113に昇降可能に嵌合するチューブラ114を備えている。
【0004】
リード線取り付け装置110を図8に模式的に示す手順で作動させることによりリード線103がブラシ本体101のリード線取り付け穴102に固定される。初めに、ステップ(A)でリード線103を挿入したチューブラ114を下降させてチューブラ114をリード線取り付け穴102に進入させ、チューブラ114の先端から突出しているリード線103の基端部をリード線取り付け穴102の穴底に押し付け、リード線103の基端部を仮成型する。
【0005】
続いて、ステップ(B)でチューブラ114を上昇させ、チューブラ114で閉じていた受け皿112の底面の開口113を開け、受け皿112から銅粉111をリード線取り付け穴102に導入し、リード線103の基端部とリード線取り付け穴102の間の隙間に銅粉111を充填する。
【0006】
次にステップ(C)で、再度チューブラ114を下降させ、受け皿112の開口113をチューブラ114で閉じて受け皿112からリード線取り付け穴102への銅粉111の導入を停止する。
【0007】
さらにステップ(D)で、チューブラ114を下降させ、チューブラ114の先端をリード線取り付け穴102内の銅粉111に押し付けて加圧圧縮し、しかる後、ステップ(E)で再度チューブラ114を上昇させてリード線取り付け穴102から抜き出す。かかる一連のステップ(A)〜(E)を経て、リード線103の基端部をブラシ本体101のリード線取り付け穴102に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−50772号公報
【特許文献2】特開2008−154453号公報
【特許文献3】特開2011−50142号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のドリル100で加工したリード線取り付け穴102は形状がストレートなため、リード線103の基端部がリード線取り付け穴102の内壁に引っ掛かり難い。そのため、銅粉111を加圧圧縮してリード線103の基端部をブラシ本体101に固定したときの固着力が低く、リード線取り付け穴102から外れ易い。一方、銅粉111を強く加圧して圧縮すれば固着力は増すものの、高い加圧力でブラシ本体101が破損するおそれがある。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑み、リード線が外れ難いリード線取り付け構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の発明は、ブラシ本体に形成したリード線取り付け穴にリード線の基端部を挿入し、導電性粉体をリード線取り付け穴に充填して加圧圧縮することによりリード線をブラシ本体に固定したカーボンブラシのリード線の取り付け構造であって、
前記リード線取り付け穴がブラシ本体の表面から内部に直進するストレート穴と、ストレート穴の内壁に沿って延びる螺旋溝と、ストレート穴の底部に形成され、螺旋溝の外径より大きい内径を有する拡径部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、リード線取り付け穴に挿入工程でリード線の基端部を挿入し、充填工程でその周囲に導電性粉末を充填し、加圧工程で導電性粉末を加圧圧縮してリード線をリード線取り付け穴に固定すると、リード線の基端部が螺旋溝及び拡径部に引っ掛かるので、リード線がリード線取り付け穴から外れ難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施例に係るカーボンブラシのリード線取り付け構造に使用するリード線取り付け穴の加工用ドリルを示す側面図である。
図2】同加工用ドリルを示す正面図である。
図3】同加工用ドリルによるカーボンブラシのリード線取り付け穴の加工方法を示す模式的説明図である。
図4】同加工方法で加工したリード線取り付け穴の一例を示す斜視図である。
図5】同加工方法で加工したリード線取り付け穴にリード線を固定する手順を示す模式的説明図である。
図6】従来のリード線取り付け穴の加工用ドリルを示す側面図である。
図7】同加工用ドリルで加工したリード線取り付け穴と、リード線取り付け装置を示す模式的説明図である。
図8】同加工用ドリルで加工したリード線取り付け穴にリード線を固定する手順を示す模式的説明図である。
【実施例】
【0014】
以下に本発明を図面に基づき説明する。図1及び図2に本発明の一実施例に係るカーボンブラシのリード線の取り付け穴の加工方法に使用する加工用ドリル10を示す。当該加工用ドリル10の本体11の先端部には本体11より径の細い先端軸部12が設けられている。先端軸部12の径は本体11の径の約半分である。この先端軸部12に先端切れ刃13と、第1外周切れ刃14と、第1外周切れ刃14から連続する第2外周切れ刃15から成るリーディングエッジ12Aが設けられている。
【0015】
先端切れ刃13と第1外周切れ刃14及び第2外周切れ刃15は、ドリル本体11の回転中心線Lを含む基準面S内に設けられている。先端切れ刃13は回転中心線Lの一側に設けられ、第1外周切れ刃14と第2外周切れ刃15は回転中心線L他側に設けられ、先端切れ刃13の内側角隅部16と第1外周切れ刃14の内側角隅部16が接している。
【0016】
第1外周切れ刃13と第2外周切れ刃14は基準面S内において三角形の2辺を形成し、かつ2辺によって区画形成される三角形の頂角部17が先端軸部12の側方へ突出するように設けられている。
そして、回転中心線Lと頂角部17との間隔yと、先端軸部12の半径xが式:y/x≧1.9を満たすように寸法が設定されている。
【0017】
先端切れ刃13と第1外周切れ刃14とが基準面内において成す角度θ1は110〜130°を成すように両刃13,14が設けられている。また、第1外周切れ刃14と第2外周切れ刃15とが基準面S内において成す角度θ2は80〜100°となるように両刃14,15が設けられている。さらにまた、先端切れ刃13、第1外周切れ刃14及び第2外周切れ刃の逃げ角は20°に設定されている。
【0018】
加工用ドリル10の構造は以上の通りであって、図3にこの加工用ドリル10を使用してカーボンブラシの本体101にリード線取り付け穴20を加工するステップ(A)〜(E)を模式的に示す。初めに、下降ステップ(A),(B),(C)において、ブラシ本体101に対して加工用ドリル10を一定速度で回転させながら所定の下降速度で下降させる。そして、加工用ドリル10がブラシ本体101に対し、所定の深さまで下降したとき下降を停止する。この停止ステップ(D)において、加工用ドリル10の回転は下降ステップ(A)〜(C)と同様に継続する。停止ステップ(D)に続いて、加工用ドリル10を回転させたまま上昇させる。上昇ステップ(E)における加工用ドリル10の上昇速度は下降ステップ(A)〜(C)における下降速度より速く、素早くブラシ本体101から加工用ドリル10を引き抜く。
【0019】
本実施例によれば、本体11の先端部に本体より細い径を有する先端軸部12を設け、先端軸部12に第1外周切れ刃14と第2外周切れ刃15を設けるとともに、第1外周切れ刃14と第2外周切れ刃15が所定の角度を成す三角形の2辺を形成し、かつ2辺によって区画形成される三角形の頂角部17が先端軸部12の側方へ突出するように設けたので、加工用ドリル10の回転に伴って先端軸部12がブレながら回転する。そのため、ステップ(A)〜(C)における加工用ドリル10の下降に伴い、ブラシ本体101には先端切れ刃13によってストレート穴21が切削加工されるとともに、第1外周切れ刃14と第2外周切れ刃15によってストレート穴21の内壁に沿って延びる螺旋溝22が切削加工される。そして、停止ステップ(D)では、加工用ドリル10が昇降を停止したまま回転するので、ストレート穴21の底部に第1外周切れ刃14と第2外周切れ刃15によって螺旋溝22の外径より大きい内径を有する拡径部23が形成される。図4に加工用ドリル10で加工したリード線取り付け穴20の形状の一例を示す。
【0020】
第1外周切れ刃14と第2外周切れ刃15によって形成される螺旋溝22のピッチは加工用ドリル10の昇降速度が速いほど大きくなる。そして、螺旋溝22のピッチが大きいほど螺旋溝22の外径は小さくなる。一方、加工用ドリル10の昇降速度が遅くなれば、螺旋溝22のピッチが小さくなり、その結果、螺旋溝22の外径は大きくなる。上昇ステップでは、加工用ドリル10が下降速度より速い上昇速度で上昇するので、上昇ステップでストレート穴21の内壁に沿って形成される螺旋溝22のピッチは下降ステップで形成された螺旋溝22のピッチより大きくなる。そのため、下降ステップで形成された螺旋溝22が上昇ステップで部分的に破損することがあっても大部分は残存する。
【0021】
上述したように、本実施例に係る加工用ドリル10を使用し、下降ステップ(A),(B),(C)、停止ステップ(D)、上昇ステップ(E)のステップを経てブラシ本体101を加工することにより、ブラシ本体101の表面から内部に直進するストレート穴21と、ストレート穴21の内壁に沿って延びる螺旋溝22と、ストレート穴21の底部に形成され、ストレート穴21の内径より大きい拡径部23を備えたリード線取り付け穴20がブラシ本体101に加工される。
【0022】
次に、加工用ドリル10で加工したリード線取り付け穴20にリード線103を固定する手順を図5に基づき、説明する。初めに、挿入工程(A)でリード線103を挿入したチューブラ114を下降させてチューブラ114をリード線取り付け穴20に進入させ、チューブラ114の先端から突出しているリード線103の基端部をリード線取り付け穴20の底部の拡径部23に押し付け、リード線103の基端部を仮成型する。続いて、充填工程(B),(C),(D)においてチューブラ114を上昇させ、チューブラ114で閉じていた受け皿112の底面の開口113を開け、受け皿112から銅粉111をリード線取り付け穴20に導入し、リード線103とリード線取り付け穴20の間の隙間に銅粉111を充填し、銅粉111が所定量充填されたら、チューブ114を再度下降させ、受け皿112の開口113をチューブラ114で閉じて、受け皿112からリード線取り付け穴20への銅粉111の導入を停止する。続いて、固定工程(E)において、チューブラ114をさらに下降させ、チューブラ114の先端と周面を銅粉111に押し付けて銅粉111を加圧圧縮した後、チューブラ114を上昇させて、リード線取り付け穴20から抜き出し、リード線103の基端部をブラシ本体101のリード線取り付け穴20に固定する。リード線103はその基端部が螺旋溝22及び拡径部23に引っ掛かるので、リード線取り付け穴20から外れ難くなる。
【符号の説明】
【0023】
10…リード線取り付け穴の加工用ドリル
11…加工用ドリルの本体
12…先端軸部
12A…リーディングエッジ
13…先端切れ刃
14…第1外周切れ刃
15…第2外周切れ刃
16…角隅部
17…頂角部
20…リード線取り付け穴
21…ストレート穴
22…螺旋溝
23…拡径部
101…ブラシ本体
103…リード線
110…リード線取り付け装置
111…銅粉
112…受け皿
113…底面開口
L…回転中心線
S…基準面