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特開2017-60461部分的に中性な(NEUTRAL)一本鎖オリゴヌクレオチド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-60461(P2017-60461A)
(43)【公開日】2017年3月30日
(54)【発明の名称】部分的に中性な(NEUTRAL)一本鎖オリゴヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20170310BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20170310BHJP
   C12Q 1/68 20060101ALI20170310BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C12N15/00 F
   C12M1/00 A
   C12Q1/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】62
(21)【出願番号】特願2016-140487(P2016-140487)
(22)【出願日】2016年7月15日
(31)【優先権主張番号】62/192,987
(32)【優先日】2015年7月15日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】516214674
【氏名又は名称】オリジャン バイオサイエンス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】ハーディー ワイ ホン チャン
(72)【発明者】
【氏名】ユー ショヨン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ウェン イー チェン
【テーマコード(参考)】
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
4B029AA07
4B029BB01
4B029BB15
4B029BB20
4B029CC02
4B029CC03
4B029CC08
4B029FA15
4B029GB09
4B063QA01
4B063QA05
4B063QA18
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4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR55
4B063QR62
4B063QR82
4B063QS16
4B063QS22
4B063QS24
4B063QS25
4B063QS32
4B063QS39
4B063QX01
4B063QX04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】遺伝子の検出感度と生体分子の検出の精度を向上させた検出方法の提供。
【解決手段】少なくとも、1つの電気的に中性のヌクレオチド及び、少なくとも1つの負荷電ヌクレオチドを含む、部分的に中性な一本鎖オリゴヌクレオチドを含む検出ユニット。電気的に中性ヌクレオチドが、Cのアルキル基で置換された燐酸基を含むことが好ましく、負電荷ヌクレオチドが無置換の燐酸基を含むことが、含ましい、前記部分的に中性な一本鎖オリゴヌクレオチド。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、1つの電気的に中性のヌクレオチド(electrically neutral nucleotide)および、少なくとも1つの負荷電ヌクレオチド(negatively charged nucleotide)を含む、部分的に中性な一本鎖オリゴヌクレオチド(partially neutral single-stranded oligonucleotide)。
【請求項2】
電気的に中性のヌクレオチドが、C1―のアルキル基で置換されたリン酸基を含む、請求項1の部分的に中性な一本鎖オリゴヌクレオチド。
【請求項3】
負荷電ヌクレオチドが、無置換のリン酸基を含む、請求項1の部分的に中性な一本鎖オリゴヌクレオチド。
【請求項4】
複数の電気的に中性のヌクレオチドを含み、および、少なくとも1つの負荷電ヌクレオチドが2つの電気的に中性のヌクレオチドの間に位置する、請求項1の部分的に中性な一本鎖オリゴヌクレオチド。
【請求項5】
請求項1の、部分的に中性な一本鎖オリゴヌクレオチドを含む検出ユニット。
【請求項6】
さらに、固体表面(solid surface)を含み;そして、前記部分的に中性な一本鎖オリゴヌクレオチドが、前記固体表面の上に接着するか、その近くに位置する、請求項5の検出ユニット。
【請求項7】
部分的に中性な一本鎖オリゴヌクレオチドが、前記固体表面に接着する最初の部分を含み;その最初の部分の長さが、前記部分的に中性な一本鎖オリゴヌクレオチドの全長の約50%であり;そして、その最初の部分が、少なくとも1つの電気的に中性のヌクレオチドと少なくとも1つの負荷電のヌクレオチドを含む、請求項6の検出ユニット。
【請求項8】
前記固体表面が、電界効果トランジスタ(field-effect transistor)(FET)のトランジスタ表面(transistor surface);表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance)(SPR)の金属面、または、マイクロアレイ基板表面(substrate surface of a microarray)である、請求項6の検出ユニット。
【請求項9】
前記固体表面の材料が、多結晶シリコン、または単結晶シリコンである、請求項6の検出ユニット。
【請求項10】
さらに、信号検出コンポーネントを含む、請求項5の検出ユニット。
【請求項11】
検出コンポーネントが、電界効果トランジスタ(field-effect transistor)、表面プラズモン共鳴(surface plasmon resonance)、顕微鏡、分光計(spectrometer)、電気泳動デバイス(electrophoresis device)、または電気化学センサー(electrochemical sensor)である、請求項10の検出ユニット。
【請求項12】
さらに、信号増幅器(signal amplifier)を含む、請求項5の検出ユニット。
【請求項13】
前記信号増幅器が、前記部分的に中性な一本鎖オリゴヌクレオチドの一端に接着した、ナノ金(nanogold)粒子である、請求項12の検出ユニット。
【請求項14】
さらに、約50mMより低いイオン強度を有する、バッファーを含む、請求項5の検出ユニット。
【請求項15】
さらに、生体分子を含む、請求項5の検出ユニット。
【請求項16】
前記生体分子が、一本鎖DNA分子、一本鎖RNA分子、ポリペプチドおよびタンパク質から成る群から選択される、請求項15の検出ユニット。
【請求項17】
検出ユニットを複数含む、請求項5の検出システム。
【請求項18】
マイクロアレイまたはチップである、請求項17の検出システム。
【請求項19】
請求項5の検出ユニットで検出を実行することを含む、検出方法。
【請求項20】
前記検出が、非標識の遺伝子発現(non-labeling gene expression)、ポリメラーゼの連鎖反応、in situハイブリダイゼーション、単一ヌクレオチド多型(SNP)検出、RNA検出、DNA複合タンパク質およびタンパク質検出(DNA conjugated protein and protein detection.)から成る群から選択される、請求項19の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子検出技術に関する。特に、本発明は、部分的に中性な一本鎖オリゴヌクレオチド(a partially neutral single-stranded oligonucleotide)に関する。
【背景技術】
【0002】
分子の検出は、臨床診断および分子生物学の研究において、重要な役割を果たしている。いくつかのシステムでは、サンプルにおけるターゲット生体分子の、検出および/または特定するために、分子の検出を実行するように、開発されている。中でも、一本鎖オリゴヌクレオチドは、ワトソン−クリックの塩基ペアリング ルールに基づいて、特定のヌクレオチド シーケンスを有するターゲットの、検出および/または同定に使用されている。
【0003】
詳しくは、ターゲットの検出および/または識別は、通常、一塩基変異(single base variant)を区別する能力を含む。一般的には、1つの操作(manipulation)で、複数の検出および/または識別を実行するために、いくつかの一本鎖のオリゴヌクレオチドが、蛍光標識サンプルの混合物をハイブリダイズするために、1つのマイクロ アレイ基板(microarray substrate)上にコーティング(coated)されている。このようなマイクロ アレイにおいて、各検出および/または識別において、各一本鎖オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションのための温度のような操作条件を調節(accommodated)しなければならない。また、感度と特異性は、任意の偽の信号を回避するマイクロ アレイにとって、重要である。
【0004】
感度と特異性を高めるために、最も適切なアプローチは、一本鎖のオリゴヌクレオチドの融解温度(T)に極めて関連する、ハイブリダイゼーションのための温度を高くすることである。融点は、オリゴヌクレオチド鎖の半分が、ランダム コイルまたは一本鎖になった状態の、温度として定義される。融点は、オリゴヌクレオチドとその特定のヌクレオチド配列の長さに依存する。
【0005】
いくつかの修飾されたオリゴヌクレオチドは、融解温度を増加するために開発された。たとえば、ペプチド核酸(peptide nucleic acid)(PNA)が開示されている(ニールセン PE、エグホルム M、ベルク RH、ブヒャルド(Buchardt)O、1991年。「チミン置換ポリアミドを用いた鎖置換(strand displacement)による、DNAの配列−選択的認識」サイエンス 254(5037):1497−500)、そして、PNAのバックボーンは、ペプチド結合でリンクした、N−(2−アミノエチル)グリシン単位の繰り返しを含む。様々なプリンとピリミジン塩基は、メチレン鎖(-CH2-)とカルボニル基(−(C=O)−)によって バックボーンにリンクする。PNAのバックボーンは、負荷電の隣酸基を含まないので、PNAとDNA鎖間の結合は、DNAとDNA鎖間の結合より、静電反発力(electrostatic repulsion)の欠如のため、よりも強い。残念ながら、これもどちらかといえば疎水性であること原因となり、溶液状態で、適用することを困難にする。さらに、リン酸結合の代わりに、ペプチド結合を有するPNAの観点からは、ペプチド結合が二重結合の特性を持っているので、PNAの構造の柔軟性は制限されている。様々な用途のために、異なったターゲット分子に、PNAが結合するとき、安定した構造を実現することは困難である
【0006】
モルホリノ、また、モルホリノ オリゴマーおよび、ホスホロジアミデート モルホリノ オリゴマ―(PMO)としても、知られているは、また、開発された(サマートン、J;ウェラー D、1997年。「モルホリノ アンチセンス オリゴマー: 設計、調整および性質」Antisense & Nucleic Acid Drug Development 7(3):187−95)。PMOの構造には、メチレンモルホリン環とホスホロジアミデート結合のバックボーンを有する。完全に非自然のバックボーンのため、PMOは、酵素のような細胞の蛋白質によって 認識されないし、そして、酵素認識と同様、蛋白質の結合に含まれるアプリケーションを制限する。
【0007】
ロックされた核酸(locked nucleic acid)(LNA)は、修飾されたRNAヌクレオチドとして提供される(Satoshi Obika; Daishu Nanbu; Yoshiyuki Hari; Ken−ichiro Morio; Yasuko In; Toshimasa Ishida; Takeshi Imanishi, 1997。「2’−O,4’−C−メチレンウリジンおよび−シチジンの合成。新規な二環性ヌクレオシド固定されたC3’−エンド糖のパッカーリング」Tetrahedron Lett.38(50):8735-8)。LNAヌクレオチドのリボース部位は、2’酸素と4’の炭素を結ぶ余分な架橋で修飾されている。架橋は、3’−エンド(北)の構造で、リボースを、「ロック」する。それは、しばしばA−型二重鎖で(A-form duplexes)、見出される。ロックされたリボース構造は、塩基スタッキング(stacking)とバックボーン前組織(pre-organization)を強化する。これは、オリゴヌクレオチドの融解温度を大幅に増加させる。しかし、LNAの一般性(popularity)は、その化学合成、および、LNAの設計および合成の価格によって制限されている。
【0008】
米国公開2014/0235465A1は、中性化されたDNA(nDNA) を開示する。ホスフェイトのバックボーンの電荷された酸素イオン(O)の全ては、アルキル化され、バックボーンは、全体として、電気的に中性である。この修飾は、相補的一本鎖DNA間のハイブリダイゼーション効率を高め、そして、検出の感度をより高くする結果となる、ハイブリダイゼーションに必要な塩を最小限にする。しかし、ハイブリダイゼーションに適用される、nDNAは、十分な特異性を作り出さず、そして、通常のDNAハイブリダイゼーション条件の塩濃度において、非特異的なハイブリダイゼーションが発生する。
【0009】
電界効果トランジスタ(field-effect transistor)(FET)は、抗体抗原の結合と同様に、ターゲットのオリゴヌクレオチドの検出および/または特定するために採用された。どちらも、試薬のラベリングの必要性がなく、FETのセンサーのための商業生産源が容易に入手可能であることという恩恵を受けることができる。FETのセンサーの感度は、トランジスタ表面と実際の検出された分子の検出距離(デバイ長)(debye length)に大きく依存する。FETの最新タイプは、感度の面で、遺伝子検出装置として、満足できない。これは、主に、DNA/DNAやDNA/RNAのハイブリダイゼーションのための、比較的高い塩濃度の要件のためである。高度に荷電された生物分子のハイブリダイゼーションには、電荷の反発力(charge repulsive force)を抑制する適切なイオン強度が必要である。残念ながら、ハイブリダイゼーション緩衝液中のイオンは、また、FETデバイ長(debye length)を減少させ、そして、それゆえ、検出感度を減少させる。抗体抗原結合の検出の場合に、他の生体分子と比較すると、大きいサイズの抗体も、また、FETの検出感度を低減する。抗体の表面電荷分布と、結合した抗体の結合方向(binding orientation)は、解決が必要で、定量的に分析されるべき、FETの検出を難しくした。さらに、結合緩衝液中の塩の平均濃度は、また、デバイ長(debye length)を減少し、そして、次に、同様に、検出感度も、より下げる。
【0010】
[発明の概要]
検出感度および、特異性を改善するために、ラベルーフリー(labeling-free detection)手法が提供された。
【0011】
本発明は、少なくとも1つの電気的に中性のヌクレオチドと、少なくとも1つの負に電荷したヌクレオチドを含む、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドを提供する。
【0012】
本発明は、また、上述の通り、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドを含む、検出ユニットを提供する。
【0013】
本発明は、また、上述の通り、検出ユニットの複数を含む検出システムを提供する。
【0014】
本発明は、また、上述の通り、検出ユニットで検出を実行することをふくむ、出の方法を提供する。
【0015】
本発明は、以下のセクションで詳しく説明される。本発明の、その他の特性、目的、および利点は、発明の詳細な説明、およびクレームで見つけることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明による、電気的に中性のヌクレオチドの1つの好ましい実施形態を示す。
図2図2は、ハイブリダイゼーション検出のための、FETにおける、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドの使用についての概要図(schematic drawing)を示す。
図3図3は、ハイブリダイゼーション検出のための、FETにおける、回復プローブ(recovery probe)としての、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドを使用する概要図を示す。
図4図4は、ハイブリダイゼーション検出用のための、FETにおける、回復プローブ(recovery probe)としての、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドと、そして、信号増幅器(signal amplifier)としての、ナノ金(nanogold)粒子を使用する概略図を示す。
図5図5は、本発明による、FETにおける、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドのイオン強度効果の結果を示す。
図6図6は、異なるターゲット濃度の検出において、本発明による、FETにおける、部分的に中性な一本鎖オリゴヌクレオチドの結果を示す。
図7図7は、極めて低い目標濃度を検出する場合における、本発明による、FETにおける、部分的に中性な一本鎖オリゴヌクレオチドの結果を示す。
図8図8Aと8Bは、DNA(8A)および、本発明に従って、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチド(8B)を用いた、ポリメラーゼ連鎖反応の結果を示す。
図9図9は、DNAおよび、本発明による、部分的に中性な一本鎖オリゴヌクレオチドを使用した、定量的なポリメラーゼの連鎖反応の結果を示す。
図10図10Aから10Cは、in situハイブリダイゼーションによる、miRNAを検出するために、DNA(miR−524−5pDNAプローブ)を使用した結果を示す。図10Aは、1.5ng/μlの濃度で、負のmiRNAsとmiR−524−5pDNAプローブを発現する細胞を示す。図10B図10Cは、0.3ng/μl(図10B)と1.5ng/μl(図10C)の濃度で、mimic miR−524−5pとmiR−524−5pプローブを発現する細胞を示す。
図11図11Aから11Cは、in situハイブリダイゼーションによる、miRNAを検出するため、nDNA(miR−524−5p All nDNAプローブ)を使用した結果を示す。図11Aは、1.5ng/μlの濃度で、負のmiRNAsとmiR−524−5p nDNAプローブを発現する細胞を示す。図11B図11Cは、0.3ng/μl(図11B)と1.5ng/μl(図11C)の濃度で、mimic miR−524−5pとmiR−524−5pプローブを発現する細胞を示す。
図12図12Aから12Cは、in situハイブリダイゼーションによる、miRNAを検出するため、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチド(miR−524−5p 7nDNAプローブ)を使用した結果を示す。図12Aは、1.5ng/μlの濃度で、負のmiRNAsとmiR−524−5p 7nDNAプローブを発現する細胞を示す。図12B図12Cは、0.3ng/μl(図12B)と1.5ng/μl(図12C)の濃度で、mimic miR−524−5pとプローブを発現する細胞を示す。
図13図13Aから13Cは、in situハイブリダイゼーションによる、miRNAを検出するため、LNA(miR−524−5p LNAプローブ)を使用した結果を示す。図13Aは、1.5ng/μlの濃度で、負のmiRNAsとmiR−524−5p LNAプローブを発現する細胞を示す。図13B図13Cは、0.3ng/μl(図13B)と1.5ng/μl(図13C)の濃度で、mimic miR−524−5pとプローブを発現する細胞を示す。
図14図14は、FETによる、miRNAの検出に、本発明による、部分的に中性な一本鎖オリゴヌクレオチドの結果を示す。
【0017】
[発明の詳細な説明]
本発明は、少なくとも1つの電気的に中性のヌクレオチドと、少なくとも1つ負に電荷したヌクレオチドを含む、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドを提供することである。
【0018】
本明細書で使用するとき、用語「オリゴヌクレオチド」は、ヌクレオチド オリゴマーを指す。「ヌクレオチド」という用語は、窒素の入った塩基と、糖、および、1つまたは複数のリン酸基、好適には、1つのリン酸基から成る有機分子である。窒素の入った塩基には、プリンやピリミジンの誘導体が含まれる。プリンは、置換若しくは無置換のアデニンと置換若しくは無置換のグアニンが 含まれ;ピリミジンには、置換若しくは無置換のチミン、置換若しくは無置換のシトシン、そして、置換若しくは無置換のウラシルを含む。砂糖は、好適には、5炭素糖、より好ましくは、置換若しくは無置換のリボース、または、置換若しくは無置換のデオキシリボースである。リン酸基は、糖の2、3、または5−炭素と、好ましくは、5−炭素サイトと結合を形成する。オリゴヌクレオチドを形成するために、1つのヌクレオチドの糖は、リン酸ジエステルの橋で隣接する砂糖に結合される。部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドの適切なフォームは、本発明の開示に基づいて、必要に応じて選ばれる。好ましくは、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドは、DNAまたはRNA;より好ましくは、DNAである。
【0019】
本発明によると、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの電気的に中性のヌクレオチドと、少なくとも1つの負荷電のヌクレオチドを含む。ヌクレオチドを電気的に中性にする方法に、制限はない。本発明の一実施形態では、電気的に中性のヌクレオチドは、アルキル基によって置換されたリン酸基を含む。好ましくは、アルキル基は、C−Cアルキル基で、より好ましくは、アルキル基は、C−Cアルキル基である。C−Cアルキル基の例は、メチル、エチルおよびプロピルを含むが、これらに限定されない。図1は、本発明の、電気的に中性のヌクレオチドである、1つの好ましい実施形態を示す。リン酸基の負荷電の酸素原子は、無電荷の中性原子に変化される。アルキル基で、リン酸基を置換する方法は、一般的な化学反応に従って適用できる。
【0020】
本発明による、負荷電のヌクレオチドには、少なくとも1つの負電荷を有する、リン酸基を含む。未変更のヌクレオチドは、好ましくは、変更または置換のない、天然ヌクレオチドである。本発明の好ましい実施形態の1つでは、負荷電のヌクレオチドは、無置換のリン酸基を含む。
【0021】
本発明による、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドは、部分的に電気的に中性にされる。シーケンスまたは長さは限られない。そして、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドのシーケンスまたは長さは、本発明の開示に基づいて、ターゲット分子に従って、設計することができる。
【0022】
電気的に中性のヌクレオチドおよび負荷電のヌクレオチドの数は、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドの配列と、反応を検出する条件に依存する。電気的に中性のヌクレオチドと負荷電のヌクレオチドの位置は、また、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドの配列と、反応が検出される条件によっても異なる。本発明の開示に基づく利用可能な情報によると、電気的に中性のヌクレオチドおよび負荷電のヌクレオチドの数や位置や数を設計できる。例えば、
任意のプローブにおける、電気的に中性のヌクレオチドの数と位置は、二本鎖 (ds) 構造エネルギーに基づいて、分子モデリング計算によって設計できる。そして、dsDNA/DNAまたはdsDNA/RNAの融解温度(Tm) は、構造的なエネルギーを参照して、決定できる。
【0023】
本発明の好ましい実施の形態の1つにおいて、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドは、電気的に中性のヌクレオチドの複数を含み、そして、少なくとも1つの負荷電ヌクレオチドが、2つの電気的に中性のヌクレオチドの間に位置し;より好ましくは、少なくとも2つの負荷電ヌクレオチドが、2つの電気的に中性のヌクレオチドの間に位置する。
【0024】
1つの本発明の好ましい実施の形態において、本発明に従って、1塩基の変化物の検出および/または特定において、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドを適用するとき、少なくとも1つの電気的に中性のヌクレオチドが、1塩基の変化物の近くに位置する;より好適には、2、3、4、または 5の電気的に中性のヌクレオチドは、単一の塩基変化物の近くに配置される。別の態様において、少なくとも1つの電気的に中性のヌクレオチドは、単一塩基変化物の下流または上流のサイトに配置される。好ましくは、少なくとも1つの電気的に中性のヌクレオチドは、単一塩基の変化物の下流と上流のサイトに配置される。
【0025】
電気的に中性のヌクレオチドを導入することによって、完璧にマッチ(perfect match)した二本鎖オリゴヌクレオチドと、本発明による部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドのミスマッチの(mismatched)二重鎖オリゴヌクレオチドの間の溶融温度差は、従来の DNAプローブのものと比較すると、より高い。理論に制限されることがなく、中性のオリゴヌクレオチドを導入することにより、2つの鎖間の静電反発力(electrostatic repulsion force)は低下され、融点は、それにより、上昇したと推測される(surmised)。電気的に中性のヌクレオチドの数や位置を制御することにより、溶融温度差は、目的のポイントに調整され、それにより、検出特異性が向上し、完璧とミスマッチのオリゴヌクレオチドを区別するために、より良い作業温度または温度範囲を提供する。このような設計は、1つのチップまたはアレイに統合された、異なる部分的に中性な一本鎖オリゴヌクレオチドの溶融温度の一貫性という利点を齎す。検出する反応の数は、高い特異性で大幅に上げることができ、より多くの検出ユニットを、単一検出システムに組み込むことができる。デザインは、より良いマイクロ アレイ操作条件を提供する。
【0026】
本発明は、また、上述の通り、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドを含む検出ユニットを提供する。
【0027】
ここで使用される、用語「検出」は、標的分子の存在または存在(existence or presence)を、発見または決定するプロセスを指し、および好ましくは、標的分子を特定するプロセスである。本発明の好ましい実施の形態の1つでは、検出は、サンプルにおける目的分子の定量を含む。検出に適用される反応は、オリゴヌクレオチド分子、タンパク質間相互作用、受容体リガンド結合、オリゴヌクレオチド−タンパク質間相互作用、多糖−タンパク質間の相互作用、または小分子化合物−タンパク質相互作用間のハイブリダイゼーションを含むが、これらに限定されない。
【0028】
本発明は、また、上述の通り、複数の検出ユニットを含む検出システムを提供する。
【0029】
ここで使用される、「ユニット」なる用語は、検出に適用される反応を実施するためのコンポーネントを指す。好ましくは、そのユニットは、単一の反応を遂行するためのものである。本発明の好ましい実施形態では、いくつかのユニットは、1つの操作で、いくつかの検出を実行する、1つのシステムに含まれている。たとえば、複数の検出ユニットは、検出システムに組み込むことができる。好ましくは、検出システムは、マイクロアレイ、またはチップである。
【0030】
ここで使用される、言葉「分子」は、小さな分子や高分子を指す。好ましくは、当該分子は、タンパク質、ペプチド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチドまたは核酸(polynucleotide)などの高分子である。分子は天然発生、または人工である。別の態様において、分子は、精製され、または他のコンテンツと混合される。本発明の好ましい実施の形態の1つでは、分子の発現パターンは、正常な状態、および、病気などの異常な状態において異なる。本発明の好ましい実施の他の形態において、分子の発現パターンは、異なる種類の細胞において相違する。本発明の更に好ましい実施形態では、当該分子は、DNA分子、RNA分子、抗体、抗原、酵素、基質、リガンド、受容体、細胞膜関連蛋白質または細胞表面マーカーである。DNA分子は、好ましくは、遺伝子または転写されていない(untranscripted)領域である。RNA分子は、好ましくは、mRNA、マイクロ RNA、長い非翻訳RNA、rRNA、tRNA、またはsiRNAである。
【0031】
本明細書における、用語「標的分子、目的分子、ターゲット分子"target molecule"」は、分子のプールから検出され、または、特定される、特定の分子を指す。
【0032】
本発明による、サンプルは、自然発生の起源から由来したか、または人工操作から由来する。好ましくは、サンプルは、抽出物、体液、組織生検、液体生検、細胞培養などの自然発生的起源から由来する。別の態様では、サンプルは、検出に必要な反応に従って処理される。たとえば、サンプルのpH値やイオン強度が調整される。
【0033】
検出ユニットの本発明による、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドは、溶液で提示されても、または基板(support)にリンクしてもよい。本発明の好ましい実施の形態の1つでは、検出ユニットは、さらに、固体表面を含む;そして、部分的な中性の一本鎖オリゴヌクレオチドは、固体表面に接着するか、または、近くに配置される。
【0034】
本明細書で使用するとき、用語「固体表面」は、ポリマー、紙、布、またはガラスを含む、固体の基板を指すが、これらに限定されない。採用する固体の表面は、検出される反応信号によって異なる。たとえば、検出に、信号をモニターする、電界効果トランジスタを採用するとき、固体表面は、電界効果トランジスタのトランジスタ表面である。検出が、表面プラズモン共鳴法を採用するとき、固体の表面は、表面プラズモン共鳴の金属表面である。検出が、マイクロ アレイの検出システムを採用するときは、固体の表面は、マイクロ アレイ基板(substrate)表面である。
【0035】
本発明の好ましい実施形態で、固体の表面の素材はシリコンで;好適には、多結晶シリコン、または、単結晶シリコン;より好ましくは、多結晶シリコンである。多結晶シリコンは、単結晶シリコンよりも安いが、しかし、多結晶は、より結晶粒界(grain boundary)があるので、欠陥は、通常、電子伝達を阻害する粒界で発生する。このような現象は、固体表面を凹凸にし、定量化を困難にする。さらに、イオンは、多結晶の粒界に浸透し、溶液において、検出エラーが発生する可能性がある。さらに、多結晶シリコンは空気中で安定ではない。しかし、上記の欠点は、本発明による、検出ユニットの機能と干渉しない。
【0036】
本発明の一実施形態では、検出ユニットは、さらに、信号検出コンポーネントを含む。ハイブリダイゼーションおよび/または結合が、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドとターゲット分子の間で発生するかどうかを検出するために、信号の検出コンポーネントが適用される。好ましくは、検出コンポーネントは、電界効果トランジスタ、表面プラズモン共鳴、顕微鏡、分光計、電気泳動デバイス、または電気化学センサーである。図2を参照する、本発明の一実施形態では、DNAまたはRNAの標的分子が、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドとハイブリダイズし、複合体を形成するとき、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドの荷電と比較して、DNAまたはRNAの標的分子が、豊富な負電荷を運ぶために、荷電が変化する。もし、ミスマッチが、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドと、一塩基多型検出のような目的分子の間で起きると、複合体は形成しない。信号検出コンポーネントは、電荷変更の検出と、ハイブリダイゼーションが発生したか否かの監視のために使用される。信号検出コンポーネントは、通常、固体表面の電圧を検出するために、固体表面と統合されている。当業者は、本発明に従って、検出コンポーネントを設計することができる。
【0037】
本発明の好ましい実施の形態の1つでは、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドは、固体表面に接着されている最初の部分を含み;当該最初の部分の長さは、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドの全長の約50%で;そして、最初の部分は、少なくとも1つの電気的に中性のヌクレオチドと、少なくとも1つの負荷電のヌクレオチドを含む;より好ましくは、最初の部分の長さは、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドの全長の約40%であり;更に一層好ましくは、最初の部分の長さは、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドの長さの合計の約30%である。
【0038】
本発明の好ましい実施の形態の1つにおいて、部分的に一本鎖のヌクレオチドは、さらに、最初の部分に隣接する、2番目の部分を含む。2番目の部分は、固体表面を基準にして、遠位端(distal end relative to the solid surface.)にある。2番目の部分には、少なくとも1つの電気的に中性のヌクレオチドと、少なくとも1つの負荷電のヌクレオチドを含む。電気的に中性のヌクレオチドと負荷電のヌクレオチドの説明は、最初の部分の説明と同じで、ここでは繰り返さない。
【0039】
部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドと、固体表面との接着方法は、固体表面の材料と部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドの種類に依存する。本発明の一の実施の形態では、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドは、固体表面と、共有結合によってリンクする。共有結合の例は、固体界面化学や、オリゴヌクレオチドの修飾に依存して、以下の方法を含むが、それらに限定されない。本発明の一実施形態では、酸化シリコンを、固体表面として使用する場合、固体表面は、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)を使用して修飾される。APTESの分子における、ケイ素原子は、水酸基の酸素原子と共有結合を実行し、そして、表面のシラノール基(SiOH)をアミンに変換する;そして、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドの、5’−アミノ基を、固体表面アミン基と、グルタルアルデヒドによって、共有結合する(Roey Elnathan、モリア Kwiat、アレクサンダー Pevzner、ヨーニ エンゲル、ラリサ バースタイン アルティアム Khatchtourints、アミール リキテンスタイン、ライサ KantaevおよびFernando Patolsky,、生体認識層エンジニアリング:Overcoming Screening Limitations of Nanowire-Based FET Devices, Nano letters, 2012, 12, 5245-5254)。本発明の1つの他の実施態様において、固体表面は、様々な化学反応によって、部分的な中性の一本鎖オリゴヌクレオチドの様々な官能基と共有結合でリンクするための、異なった官能基を持つ自己組織化単分子膜分子(self-assembly monolayer molecules)に修飾される(Srivatsa Venkatasubbarao, Microarrays - status and prospects, TRENDS in Biotechnology Vol.22 No.12 December 2004; Ki Su Kim, Hyun-Seung Lee, Jeong-A Yang, Moon-Ho Jo and Sei Kwang Hahn, The fabrication, characterization and application of aptamer-functionalized Si-nanowire FET biosensors,Nanotechnology 20 (2009))。
【0040】
1つの別の好ましい実施形態発明では、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドは、固体表面近くに位置する。固体表面の電圧変動を監視するために、検出コンポーネントが適用されている点において、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドは、部分的な中性の一本鎖オリゴヌクレオチドと固体表面間の距離が、十分に短くて、検出コンポーネントが電圧変化を検出できる場合には、固体表面に直接結合する必要はない。好ましくは、固体表面と部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドとの間の距離は、約0〜約10nm;より好ましくは、約0〜約5nmである。
【0041】
本発明の好ましい実施の形態の1つでは、本発明の検出ユニットは、さらに、信号増幅器を含む。本発明による信号増幅器は、好ましくは、固体表面の電圧変化の検出を強化するコンポーネントを指す。たとえば、信号増幅器は、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドの一方の端に接着されている、ナノ金粒子である。
【0042】
本発明の好ましい実施の形態の1つでは、検出ユニットは、さらに、約50mMより低い、イオン強度を有するバッファーを含む:より好ましくは、約40mM、30mM、20mMまたは10mMよりも低い。理論によって制限されないが、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドを適用すると、部分的に荷電された半中性の一本鎖オリゴヌクレオチドとそのターゲット間の静電気の反発力を抑制することがなく、ターゲットのDNAまたはRNA分子と、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチド間のハイブリダイゼーションが、起こることが推量される。ハイブリダイゼーションは、その後、塩基の組み合わせ(base pairing)と各ストランドの積み重ねの力(stacking force)によって制御(driven)される。その結果より、低い塩状態でハイブリダイゼーションを実行できる。FETでは、より低いイオン強度が、検出長(デバイ長)を増加させ、次に、検出感度を向上させる。
【0043】
本発明の好ましい実施の形態の1つでは、検出ユニットは、さらに、検出ユニットの適用を拡大するために生体分子を含む。生体分子の例として、一本鎖DNAの分子、一本鎖RNA分子、ポリペプチドやタンパク質を含むが、これらに限定されない。
【0044】
本発明の1つのより好ましい実施の形態では、検出ユニットは、さらに、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドにリンクされたタンパク質を含む。この分野の当業者は、たとえば、特定の親和性結合により、タンパク質と部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドとのリンクを完了できる。様々なタンパク質へのリンクを通じて、検出システムは、リンクされたタンパク質とのターゲットの相互作用を検出するために、改良されたハイブリダイゼーション特異性を有する蛋白質チップとして機能する。
【0045】
図3を参照する、本発明の別の実施形態では、検出ユニットは、さらに、通常のプローブとして、一本鎖DNAを含み、そして、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドは、回復プローブ(recovery probe)として機能する。通常のプローブとしての、一本鎖DNAは、修飾された(modified)一本鎖DNAまたは修飾されていない一本鎖DNAであってもよく;好ましくは、部分的に中性の一本鎖DNAである。回復プローブと標準プローブの両方は、ターゲットへの結合親和性がある;より好ましくは、回復プローブは、通常のプローブよりもターゲットに対して高い親和性を持つ。回復プローブは、通常のプローブとターゲットで形成された複合体において、通常のプローブと競合する。このような変位(displacement)は、たとえば、電界効果トランジスタで容易に観察できる。本発明の一実施形態で、通常のプローブは、ターゲットの存在を検出するように設計されており、そして、回復プローブは、ミスマッチの塩基との一塩基多型の存在を検出するように設計されている。通常のプローブは、まず、ターゲットと複合体を形成して、そして、回復プローブは、その複合体のターゲットに結合する。信号は監視され、回復プローブとターゲットの間にミスマッチがあるかどうかを検出する。
【0046】
本発明の1つの、より好ましい実施形態では、図4に示すように、回復プローブは、信号を増幅するために、ナノ金粒子にリンクする。
【0047】
本発明は、また、前述のように、検出ユニットで検出を実行することを含む、検出の方法を提供する。
【0048】
本発明による方法の様々な適用を提供される。検出は、非標識の遺伝子発現、ポリメラーゼの連鎖反応、in situ ハイブリダイゼーション、一塩基多型(SNP)の検出、RNA検出、DNA複合タンパク質およびタンパク質の検出を含むが、これらに限定されない。
【0049】
特に、本発明に従って、検出ユニットを適用すると、目的分子の非常に少ない量が、ポリメラーゼの連鎖反応において、目的分子を増幅せずに、サンプル中で、検出することができる。検出は、好適には、サンプルにおいて、10−9モルより少ないターゲットを検出することを含み、そして、その方法は、ポリメラーゼの連鎖反応はしない。
【0050】
本発明の一実施の形態では、遺伝子検出において、改良されたハイブリダイゼーション特異性は、従来の検出に比べて、FET検出の2つの側面を中心に見ることができる。最初に、完全にマッチとミスマッチ(perfect match and mismatch)の溶融温度差がより高いことである。第二に、バッファーが低い塩条件を有し、FET検出長(デバイ長)が増加する。これらの両方の違いが、検出感度の改善の結果を齎す。
【0051】
本発明のまだ別の実施形態では、電界効果トランジスタ マイクロ アレイまたは表面プラズモン共鳴マイクロ アレイにおいて設計された、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドは、非標識および高スループットでの、定量的な、遺伝子発現、タンパク質およびSNP検出を提供する。
【0052】
次の実施例は、本発明を実施するときに、当業者を支援するために提供される。
【0053】
実施例
実施例1:部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドの合成
デオキシ シチジン(n−ac)p−メトキシ ホスホロアミダイト、チミジン p−メトキシ ホスホロアミダイト、デオキシ グアノシン(n−ibu) p−メトキシ ホスホロアミダイトおよびデオキシ アデノシン(n−bz) p−メトキシ ホスホロアミダイト(全ては、ChemGenes株式会社、米国から購入した)を、固相ホスホトリエステル(phosphotriester)合成に基づいて、またはアプライド バイオ システムズ社の3900 高スループット DNA シンセサイザー(Biosci & Tech or Mission BiotechのGenomics(R)で提供される)、指定された配列に従って、オリゴヌクレオチドを合成するために使用された。
【0054】
合成オリゴヌクレオチドを、24時間、常温で、トルエン中で、弱アルカリと反応させ、そして、そのサンプルを、pH値を7に調整するために、イオン交換クロマトグラフィーに付した。サンプルを濃縮して、乾燥後、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドが得られた。
【0055】
実施例2:FET検出に適用された、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチド
相補的な H1:
5’−CCATTGTGACTGTCCTCAAGTAGGTTGACAGAGTGTG−3’(配列番号(SEQ ID)1)
相補的でない(Noncomplementary)H5:
5’−TGATAACCAATGCAGATTTG−3’(配列番号(SEQ ID)2)
DNAプローブ:5’−NH−C6−CACACTCTGTCAACCTAC−3’(配列番号(SEQ ID)3)
nDNAプローブ:5’−NH−C6−CACACTCTGTCAACCTAC−3’(すべて中性)(配列番号(SEQ ID)4)
部分的に中性の一本鎖プローブ 1(以下「変更1"modified 1"」と呼ばれる):
5’−NH−C6−CACACTCTGTCAACCTAC−3’ (配列番号(SEQ ID)5)
部分的に中性の一本鎖プローブ 2(以下「変更2"modified 2"」と呼ばれる): 5’−NH−C6−CACACTCTGTCAACCTAC−3’(配列番号(SEQ ID)6)
上付き文字のnは、電気的に中性のヌクレオチドを表す。
プローブ固定化のための表面改質
【0056】
プローブの固定は、SiNW表面層(SiO)の高機能化(by functionalization)によって行われた。最初に、表面を修飾するために、(3−アミノプロピル)トリエトキシシラン(APTES)が使用された。APTESの分子の、ケイ素原子は、水酸基の酸素と共有結合を行い、表面のシラノール基(SiOH)をアミンに変換した。サンプルは 2%APTES(99%エタノール)に、30分浸され(immersed)、そして、10分、120℃で加熱した。この手順の後、アミノ基(NH)は、表面から末端のユニット(terminal units)であった。
【0057】
次に、グルタルアルデヒドは、DNAの固定化のためのグラフティングエージェント(grafting agent)として使用された。グルタルアルデヒドの結合は、そのアルデヒド基(COH)を通して、APTESのアミノ基と共有結合を確認するために行われた。この工程において、サンプルは、12.5%のグルタルアルデヒド(10mMリン酸ナトリウム緩衝)液に、室温で、1時間浸された。プローブ固定化のために、DNA鎖の5’−アミノ基は、リンカーのアルデヒド基にリンクされた。1μmolのDNAプローブの500μLのドロップ ソリューションは、18時間、NWsの上にデポジットされた。
標的DNAハイブリダイゼーションと検出(sensing)
【0058】
プローブ固定後、PDMS(ポリジメチルシロキサン)流体システム(fluidic system)は、DNAプローブのハイブリダイズするナノワイヤ表面に DNAターゲットをポンピング(pumping)するため開発された。相補および非相補的なターゲットが、ビス−トリス プロパン[1,3−ビス(トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミノ)プロパン]溶液で希釈した、様々な濃度で使用された。ハイブリダイゼーションのための30分後、サンプルは、過剰な目的物を除去するために、10分間、ビス―トリス バッファーで洗浄された。最後に、ケースレー 2400を、NWFET電気特性(Id対Vg曲線)を検出するために使用された。
【0059】
イオン強度の影響の結果は、図5に示す。低塩濃度における、nDNAと、部分的に中性の一本鎖DNAは、DNAのΔVにおいて、高塩濃度におけるよりも、高感度のFETを有する。3’端の修飾を有する、部分的に中性の一本鎖 DNAは、最も高いFET感度を有する。
【0060】
1mMのビス−トリスにおける、異なったターゲット濃度を検出する結果は、図6に示す。nDNAと部分的に中性の一本鎖DNAプローブは、特に、低いターゲットの濃度範囲において、より高い濃度感度(Vの対濃度の傾き)を有する。
【0061】
1mMのビス−トリスにおける、極めて低い(ultralow)目標濃度を検出した結果は、図7に示す。部分的に中性な一本鎖DNAプローブを、FETで用いると、0.1fMの低い濃度で、ターゲット濃度を検出できる。
【0062】
H5Tと非特異的なハイブリダイゼーションが発生した場合に、特異性を評価した(assayed)。結果は表1のとおり。
【0063】
【表1】
【0064】
表1に示されているように、H5TのΔV/mV(非特異的なハイブリダイゼーションを示す)は、nDNAをプローブとして使用する場合は、より高い。低塩濃度で、部分的に中性のDNAプローブを、使用するとき、非特異的なハイブリダイゼーションは減少する。
【0065】
実施例3:
ポリメラーゼの連鎖反応に適用された、部分的に中性な一本鎖オリゴヌクレオチド
部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドは、ポリメラーゼの連鎖反応(PCR)およびSYBRTM グリーン システムの定量的なポリメラーゼの連鎖反応 (qPCR)に適用された。
テンプレート: pUC19
プロダクト長さ: 202bp
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
【表4】
【0069】
PCRの結果を、図8Aおよび8Bに示す。DNAを用いた結果と、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドを使用した結果を比較すると(図8A:通常DNAプライマー(Regular DNA primer)(表2のFP−RとRP−R)対、中和DNA修飾プライマー(neutralized DNA modifications primer)(表2の FP−n 10、14):図8B:通常DNAプライマー(Regular DNA primer)(表2のFP−RとRP−R)対、中和DNA修飾プライマー(neutralized DNA modifications primer)(表2のFP−n 11、13))、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチドのプライマーの特異性が大幅に向上した。
【0070】
qPCR の結果は、図9と表5に示される。
【0071】
【表5】
【0072】
DNAを使用した結果と、部分的に中性な一本鎖オリゴヌクレオチドを使用した結果を比較すると、部分的に中性な一本鎖オリゴヌクレオチドのプライマーの特異性が顕著に改善された。
【0073】
実施例4:in situハイブリダイゼーションによる、miRNAの検出に適用された、部分的に中性な一本鎖オリゴヌクレオチド
試験細胞:mimic miR−524−5pでトランスフェクトしたSK MEL19細胞および、miR−67でトランスフェクトしたSK MEL19細胞(ネガティブ コントロール)
プローブ:
ネガティブ コントロール miRNAs (Cel−miR−67):
TCACAACCTCCTAGAAAGAGTAGA(配列番号SEQ ID No.14)
Mimic miR−524−5p:CUACAAAGGGAAGCACUUUCUC(配列番号SEQ ID No.15)
MiR−524−5p LNAプローブ:EX−38630−05−LNA検出プローブ、hsa−miR−524−5p、250pmol 3`−DIGラベル化
MiR−524−5p 7N−DNAプローブ:
5’−GAGAAAGTGCTTCCCTTTGTAG−3’Dig(配列番号SEQ ID No.16)。上付き文字 n は、電気的に中性のヌクレオチドを示す。
MiR−524−5p 全(All)nDNAプローブ:5’GAGAAAGTGCTTCCCTTTGTAG/3’Dig/(配列番号SEQ ID No.17)
MiR−524−5p DNAプローブ: 5’−GAGAAAGTGCTTCCCTTTGTAG−3’Dig(配列番号SEQ ID No.18)
【0074】
in situのハイブリダイゼーションは、in situハイブリダイゼーションキットのISHyb(BioChain、ニューアーク、カリフォルニア州、米国)の製造者の手順を実行した。テスト細胞は、20分、4%パラホルムアルデヒド(DEPC−PBS)で固定され、そして、次いで、3回(各5分)、DEPC−PBSで洗浄された。テスト細胞は、プロテアーゼ(10μg/ml)で、8分処理され、5分間、DEPC−PBSで洗浄された。細胞は、さらに、4%PFA(DEPC−PBS)で、15分、固定され、それから、DEPC−PBSで、3回、洗浄された(各5分)。洗浄された試験細胞は、65℃で、4時間、プレハイブリダイゼーション(prehybridization)の溶液(BioChain、ニューアーク、カリフォルニア州、米国)で処理された。その後、濃度の異なるプローブを追加して、55℃で、12〜16時間、反応させた。サンプルを、45℃で10分、2xSSCで、45℃、10分、1.5xSSCで、そして、37℃、20分、0.2xSSCで洗浄した。ハイブリダイゼーションは、1xブロッキング溶液(BioChain、ニューアーク、カリフォルニア州、米国)で、1時間、ブロックされた。抗体溶液(1: 200)(BioChain、ニューアーク、カリフォルニア州、米国)を、反応のために、4時間加え、そして、試験細胞は、DEPC−PBSで、3回(各10分)洗浄し、そして、その後、アルカリホスファターゼ バッファー(BioChain、ニューアーク、カリフォルニア州、米国)で、2回(各5分間)洗浄した。NBT/BCIP(ニトロ ブルー テトラゾリウム/5−ブロモ−4−クロロ−3―インドリル リン酸)6.6μl NBT + 3.3μl BCIP)溶液を、2〜20時間追加した。サンプルを水で洗浄し、顕微鏡下で観察した。
【0075】
図10Aから13Cに結果を示す。プローブの高い濃度は、これら4つの異なるプローブ(DNA、すべてのnDNA、7nDNA、LNA)において、プローブのより低い濃度よりも、より良い染色像(staining image)を作り出すことができる。これらの結果は、すべての4つのプローブが、細胞で、特に、miR−524−5pの発現を検出できることを示す。7nDNAプローブは、LNA、すべてのnDNAおよびDNAプローブよりも、miR−524−5p発現に最も感受性を生み出すことに留意する。細胞が、7nDNAプローブに適用されたとき、同じ濃度のLNAまたはnDNAプローブと比較して、より強力な強度イメージが観察されるからである。
【0076】
実施例5:miRNAの検出に適用された、部分的に中性の一本鎖オリゴヌクレオチド
ターゲット miRNA:
miR107(1pM):AGCAGCAUUGUACAGGGCUAUCA(配列番号SEQ ID No.19)
miR579−3p(1pM):UUCAUUUGGUAUAAACCGCGAUU(配列番号SEQ ID No.20)
miR885−5p(1pM):UCCAUUACACUACCCUGCCUCU(配列番号SEQ ID No.21)
プローブは、表6に示す。
【0077】
【表6】
【0078】
プローブ固定化のための表面改質は、実施例2で説明されている。ビス―トリス(Bis−tris)プロパン バッファーによる、1pMのmiRNA(プローブと相補的)の1つが、30分間、反応させるために、プローブを固定化したチップに追加された。チップは、10分間、ビス−トリス プロパン バッファーで洗浄された。信号は、実施例2で説明されているように、モニターされた。
【0079】
この結果は、図14に示される。部分的に一本鎖オリゴヌクレオチドのプローブのΔV/mVは、DNAプローブのそれよりも高い。部分的に中性の一本鎖プローブは感度がより高い。
【0080】
本発明は、上述の特定の実施形態と組み合わせて記載されたが、多くのそれらの選択肢及び、それらの修飾および変更は、当業者に明らかである。このようなすべての選択肢、修飾および変更は、本発明の範囲に含まれるものとみなされる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]
【外国語明細書】