【実施例】
【0041】
[製造例]
製造例1.大麦茎葉の粉砕末試料
原料として、出穂前に刈り取ったニシノホシの茎葉を用いた。これを水洗いし、付着した泥などを除去し、5〜10cm程度の大きさに切断する前処理を行った。前処理した茎葉を、90〜100℃の熱湯で90秒間〜120秒間、1回のみブランチング処理し、その後、冷水で冷却した。続いて、得られた茎葉を、水分量が5質量%以下となるまで、乾燥機中で、20分間〜180分間、80℃〜130℃の温風にて乾燥させた。乾燥した茎葉を約1mmの大きさに粉砕処理した。得られた大麦の茎葉を、200メッシュ区分を90%以上が通過するように粉砕処理し、ニシノホシ茎葉の粉砕末試料を得た。
【0042】
ニシノホシの代わりに、イチバンボシ、シュンライ、トヨノカゼ及びサチホゴールデンを用いた以外は、ニシノホシ茎葉の粉砕末試料を得たのと同様にして、各大麦品種茎葉の粉砕末試料を得た。
【0043】
製造例2.大麦茎葉の搾汁末試料
原料として、出穂前に刈り取ったニシノホシの茎葉を用いた。得られた茎葉を、ジューサーを用いて搾汁することにより茎葉の搾汁液を得た。得られた搾汁液を凍結乾燥することにより、茎葉の搾汁末試料を得た。
【0044】
ニシノホシの代わりに、イチバンボシ、シュンライ、トヨノカゼ及びサチホゴールデンを用いた以外は、ニシノホシ茎葉の搾汁末試料を得たのと同様にして、各大麦品種茎葉の搾汁末試料を得た。
【0045】
[実施例1]大麦茎葉末の官能評価(1)
(1)サンプルの調製
製造例1で得た大麦茎葉の粉砕末試料(ニシノホシ、イチバンボシ、シュンライ、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの5品種)1.8gを、水100mLと混合して各サンプルを得た。これらのサンプルのうち、ニシノホシ茎葉の粉砕末試料から得られたサンプルを、標準品とした。なお、本評価においては、トヨノカゼ、サチホゴールデンの粉砕末を実施例サンプルとし、ニシノホシ、イチバンボシ、シュンライの粉砕末を比較例サンプルとした。
【0046】
被験者として、健常な成人6名を無作為に選出した。これらの被験者6名に対し、以下の評価例1−1〜1−2の官能評価を実施した。
(2)評価例1−1(色の鮮やかさ及び香りの良さ)
前記の被験者6名に、上記(1)で調製した各サンプルについて、標準品と比較して色が鮮やかであるか否か、標準品と比較して香りが良いか否かをアンケートに記入させた。具体的には、標準品と同等であるものを基準(4点)として、非常に良いものを7点、非常に悪いものを1点とした7段階で評価させた。
1点(非常に悪い)←――――4点(標準品と同等)―――――→7点(非常に良い)
【0047】
各サンプルについて、被験者の点数の平均点を算出し、その合計点を本評価の評価点とした。結果を
図1のグラフに示す。
図1に示すように、イチバンボシ及びシュンライの粉砕末はニシノホシの粉砕末と比較して色の鮮やかさ、香りの良さで優れているが、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末は、ニシノホシ、イチバンボシ及びシュンライのいずれの粉砕末と比較しても、色の鮮やかさ、香りの良さのいずれも優れていることがわかった。
【0048】
(3)評価例1−2(甘さ、えぐ味の弱さ、苦味の弱さ、青臭さ、舌触りの良さ、粉っぽさのなさ、コク、味の濃さ、口当たりの良さ、のどごし、後味)
前記6名の被験者に、上記(1)で調製した各サンプルを、標準品と飲み比べさせ、標準品と比較して、甘い、えぐ味が弱い、苦味が弱い、青臭くない、舌触りが良い、粉っぽさがない、コクがある、味が濃い、口当たりが良い、のどごしが良い、後味が良いと感じるか否かについて、ニシノホシの粉砕末サンプルを基準として、評価例1−1と同様の7段階の評価方法にて比較させ、アンケートに記入させた。各サンプルについての評価の平均点を算出し、その合計点を本評価の評価点とした。結果を
図2のグラフに示す。
図2に示すように、イチバンボシ及びシュンライの粉砕末はニシノホシの粉砕末と比較して全ての評価項目で優れているが、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末は、ニシノホシ、イチバンボシ及びシュンライのいずれの粉砕末と比較しても、全ての評価項目で優れており、特に、苦味の弱さ、コク、味の濃さは高い評価であることがわかった。
【0049】
以上より、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末は、ニシノホシの粉砕末と比較して色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であることがわかった。また、イチバンボシ及びシュンライの粉砕末は、ニシノホシの粉砕末と比較して色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であるが、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末はイチバンボシやシュンライの粉砕末と比較して、より色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であることがわかった。
【0050】
[実施例2]大麦茎葉末の官能評価(2)
(1)サンプルの調製
製造例1で得た大麦茎葉(ニシノホシ、イチバンボシ、シュンライ、トヨノカゼ及びサチホゴールデン)の粉砕末試料1.8gを、アルミフィルムバックに入れて密封し、60℃で3日間加熱した。加熱後、得られた粉末試料を水100mLと混合して各サンプルを得た。なお、標準品として、ニシノホシの加熱前の粉砕末試料1.8gと水100mLを混合したものを使用した。なお、本評価においては、加熱後のトヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末を実施例サンプルとし、加熱前のニシノホシ及び加熱後のニシノホシ、イチバンボシ、シュンライの粉砕末を比較例サンプルとした。
(2)評価例2−1(色の鮮やかさ及び香りの良さ)
前記の被験者6名に、上記(1)で調製した各サンプルについて、標準品と比較して色が鮮やかであるか否か、標準品と比較して香りが良いか否かをアンケートに記入させた。具体的には、標準品と同等であるものを基準(4点)として、非常に良いものを7点、非常に悪いものを1点とした7段階で評価させた。
1点(非常に悪い)←――――4点(標準品と同等)―――――→7点(非常に良い)
【0051】
各サンプルについて、被験者の点数の平均点を算出し、その合計点を本評価点として、
図3のグラフに示す。
図3に示すように、加熱後のニシノホシの粉砕末は加熱前のニシノホシの粉砕末と比較して色の鮮やかさ、香りの良さのいずれもが悪い結果であった。また、加熱後のイチバンボシ及びシュンライの粉砕末についても、加熱後のニシノホシの粉砕末と比較して全ての項目で優れているものの、加熱前のニシノホシの粉砕末と比較すると全ての項目で悪い結果であった。一方、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末は加熱後のニシノホシ、イチバンボシ、シュンライの粉砕末のみでなく、加熱前のニシノホシの粉砕末と比較しても優れたものであり、特に、香りの良さは高い評価であることがわかった。
【0052】
(3)評価例2−2(甘さ、えぐ味の弱さ、苦味の弱さ、青臭さ、舌触りの良さ、粉っぽさのなさ、コク、味の濃さ、口当たりの良さ、のどごし、後味)
前記6名の被験者に、上記(1)で調製した各サンプルを、標準品と飲み比べさせ、標準品と比較して、甘い、えぐ味が弱い、苦味が弱い、青臭くない、舌触りが良い、粉っぽさがない、コクがある、味が濃い、口当たりが良い、のどごしが良い、後味が良いと感じるか否かについて、加熱前のニシノホシの粉砕末サンプルを基準として、評価例2−1と同様の7段階の評価方法にて比較させ、アンケートに記入させた。各サンプルについての評価の平均点を算出し、その合計点を本評価の評価点とした。結果を
図4に示す。
図4に示すように、加熱後のニシノホシの粉砕末は加熱前のニシノホシの粉砕末と比較して全ての項目で悪い結果であった。また、加熱後のイチバンボシ及びシュンライの粉砕末についても、加熱後のニシノホシの粉砕末と比較して全ての項目で優れているものの、加熱前のニシノホシの粉砕末と比較すると全ての項目で悪い結果であった。一方、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末は加熱後のニシノホシ、イチバンボシ、シュンライの粉砕末のみでなく、加熱前のニシノホシの粉砕末と比較しても嗜好性に優れたものであった。特に、甘さ、コク、味の濃さ、後味は高い評価であることがわかった。
【0053】
以上より、加熱後のニシノホシ、イチバンボシ、シュンライの粉砕末は加熱前のニシノホシの粉砕末と比較して嗜好性が劣るものであったが、加熱後のトヨノカゼ、及びサチホゴールデンの粉砕末は、加熱前のニシノホシの粉砕末、及び、加熱後のイチバンボシ、シュンライの粉砕末と比較して色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であることがわかった。
【0054】
(4)評価例2−3(加熱前後の各項目の比較)
ニシノホシ、イチバンボシ、シュンライ、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末について、1−1,1−2で評価した加熱前の各粉砕末の各評価値を1とした場合の2−1,2−2で評価した加熱後の各評価値の割合を算出し、加熱による各評価項目の変化を比較した。結果を表1に示す。表1において、数値が大きいほど加熱前と同等の嗜好性であり、加熱による劣化が小さいことを示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1より、加熱後のニシノホシの粉砕末は、加熱前と比較すると、各項目の値は50〜71%と低いものであり、加熱による劣化が大きいことがわかった。また、加熱後のイチバンボシ、シュンライの粉砕末は、加熱前と比較すると各項目の値は60〜79%であり、ニシノホシの粉砕末ほどではないものの、加熱により劣化していることがわかった。一方、加熱後のトヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末は、各項目の値は78%以上と高いものであり、加熱前と比較していずれも劣化するものの、加熱後のニシノホシ、イチバンボシ及びシュンライの粉砕末の嗜好性の劣化の程度と比較して小さいものであった。特に、えぐ味の弱さ、舌触り、コク、味の濃さにおいては加熱前と比較しても劣化が小さいものであった。
【0057】
以上より、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末は、ニシノホシ、イチバンボシ及びシュンライの粉砕末との品種間の比較において優れているのみならず、同一品種における熱安定性の比較においても優れた品種であることがわかった。
【0058】
[実施例3]大麦茎葉末の官能評価(3)
(1)サンプルの調製
製造例5で得た大麦茎葉の搾汁末試料(ニシノホシ、イチバンボシ、シュンライ、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの5品種)1.8gを、水100mLと混合して各サンプルを得た。これらのサンプルのうち、ニシノホシ茎葉の搾汁末試料から得られたサンプルを、標準品とした。なお、本評価においては、トヨノカゼ、サチホゴールデンの搾汁末を実施例サンプルとし、ニシノホシ、イチバンボシ、シュンライの搾汁末を比較例サンプルとした。
【0059】
被験者として、健常な成人6名を無作為に選出した。これらの被験者6名に対し、以下の評価例3−1〜3−2の官能評価を実施した。
(2)評価例3−1(色の鮮やかさ及び香りの良さ)
前記の被験者6名に、上記(1)で調製した各サンプルについて、標準品と比較して色が鮮やかであるか否か、標準品と比較して香りが良いか否かをアンケートに記入させた。具体的には、標準品と同等であるものを基準(4点)として、非常に良いものを7点、非常に悪いものを1点とした7段階で評価させた。
1点(非常に悪い)←――――4点(標準品と同等)―――――→7点(非常に良い)
【0060】
各サンプルについて、被験者の点数の平均点を算出し、その合計点を本評価点として、
図5のグラフに示す。
図5に示すように、イチバンボシ及びシュンライの搾汁末はニシノホシの搾汁末と比較して色の鮮やかさ、香りの良さで優れているが、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの搾汁末は、ニシノホシ、イチバンボシ及びシュンライのいずれの搾汁末と比較しても、色の鮮やかさ、香りの良さのいずれも優れていることがわかった。
【0061】
(3)評価例3−2(甘さ、えぐ味の弱さ、苦味の弱さ、青臭さ、舌触りの良さ、粉っぽさのなさ、コク、味の濃さ、口当たりの良さ、のどごし、後味)
前記6名の被験者に、上記(1)で調製した各サンプルを、標準品と飲み比べさせ、標準品と比較して、甘い、えぐ味が弱い、苦味が弱い、青臭くない、舌触りが良い、粉っぽさがない、コクがある、味が濃い、口当たりが良い、のどごしが良い、後味が良いと感じるか否かについて、ニシノホシの搾汁末を基準として、評価例3−1と同様の7段階の評価方法にて比較させ、アンケートに記入させた。各サンプルについての評価の平均点を算出し、その合計点を本評価の評価点とした。結果を
図6のグラフに示す。
図6に示すように、イチバンボシ及びシュンライの搾汁末はニシノホシの搾汁末と比較して全ての評価項目で優れているが、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの搾汁末は、ニシノホシ、イチバンボシ及びシュンライのいずれの搾汁末と比較しても、全ての評価項目で優れており、特に、甘さ、苦味のなさ、のどごし、後味は高い評価であることがわかった。
【0062】
以上、
図5及び
図6より、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの搾汁末は、ニシノホシの搾汁末と比較して色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であることがわかった。また、イチバンボシ及びシュンライの搾汁末は、ニシノホシの搾汁末と比較して色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であるが、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの搾汁末はイチバンボシの搾汁末と比較して、より色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であることがわかった。