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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-6112(P2017-6112A)
(43)【公開日】2017年1月12日
(54)【発明の名称】飲食用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/38 20060101AFI20161216BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20161216BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20161216BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20161216BHJP
【FI】
   A23L2/38 J
   A23L1/30 B
   A23L2/00 F
   A23L2/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-21905(P2016-21905)
(22)【出願日】2016年2月8日
(11)【特許番号】特許第5997854号(P5997854)
(45)【特許公報発行日】2016年9月28日
(31)【優先権主張番号】特願2015-30992(P2015-30992)
(32)【優先日】2015年2月19日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-130324(P2015-130324)
(32)【優先日】2015年6月29日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】398028503
【氏名又は名称】株式会社東洋新薬
(72)【発明者】
【氏名】石井 茉里子
(72)【発明者】
【氏名】永瀧 達大
(72)【発明者】
【氏名】山口 和也
(72)【発明者】
【氏名】高垣 欣也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏哉
(72)【発明者】
【氏名】鍔田 仁人
(72)【発明者】
【氏名】友澤 寛
(72)【発明者】
【氏名】吉本 雄
【テーマコード(参考)】
4B017
4B018
【Fターム(参考)】
4B017LC01
4B017LC02
4B017LC03
4B017LE01
4B017LG10
4B017LP18
4B018LB08
4B018LE03
4B018MD49
4B018ME14
4B018MF07
(57)【要約】
【課題】
本発明の課題は、大麦の茎葉を含有する食品であって、色が鮮やかであるため見た目が美しく、かつ、味や香りがよく、風味が良好で嗜好性が高く、安定性に優れた青汁用の飲食用組成物を提供することにある。
【解決手段】
本発明によれば、トヨノカゼ及びサチホゴールデンから選ばれる少なくとも1の品種の大麦の茎葉を用いた青汁用の飲食用組成物は、色が鮮やかであるため見た目が美しく、かつ、風味が良好で嗜好性が高く、安定性に優れている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大麦の茎及び/又は葉の粉末を用いた青汁用の飲食用組成物であって、
該大麦が、トヨノカゼ及びサチホゴールデンから選ばれる少なくとも1の品種の大麦であることを特徴とする、青汁用の飲食用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大麦の茎及び/又は葉の粉末を用いた青汁用の飲食用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
大麦は中央アジア原産とされ、イネ科に属する一年生又は越年生草本である。大麦は、穂形により、二条大麦と六条大麦などに大別される。二条大麦と六条大麦とでは、穂についている実の列数が異なり、穂を上から見ると二条大麦は2列に、六条大麦は6列に実がついている。六条大麦は、2〜3世紀に朝鮮を経て日本に渡来したとされ、雑穀として利用されるほか、麦茶の原料にも利用されている。一方、二条大麦は日本には欧米から明治時代に導入されたとされ、主に醸造用に用いられている。
【0003】
大麦の茎及び/又は葉(以下「茎葉」ともいう)は、ビタミン類、ミネラル類、食物繊維、アミノ酸、葉緑素、SOD酵素などに富む健康食品の素材として知られ、青汁、ゼリー、クッキー、ジンジャードリンク、ヨーグルト、サプリメントなどの飲食用組成物に用いられている。青汁用の飲食用組成物は、植物の緑葉を含む、粉砕末や搾汁粉末などの様々な加工物とした製品であり、簡易に野菜不足を補えるもの等として利用されている。
【0004】
しかしながら、消費者の間には、植物の緑葉を用いた飲食用組成物について、該緑葉に由来する青臭さ、えぐ味があるといったマイナスイメージが少なからず存在し、大麦の茎葉を用いた飲食用組成物についても同様であった。大麦の茎葉を用いた飲食用組成物について、このようなイメージを払拭するために、大麦の茎葉に由来する緑色を鮮やかにして見た目を美しくし、また、えぐ味や苦味、青臭さなどを低下させ、風味を向上させることが求められている。しかしながら、飲食品に用いられる大麦の茎葉は、色を鮮やかにしようとすると、甘さが低下したり、えぐ味が増したりしやすい傾向があるとの説もあり、このため、従来の大麦の茎葉を用いた飲食用組成物は、見た目の美しさと、風味の良好さとを両立させるという点で十分なものではなかった。
【0005】
これらの課題を解決するため、本出願人は下記の提案を行っている。大麦の茎葉を含有する青汁として、例えば、特定の六条大麦の葉を用いた青汁用の飲食用組成物を提案した(特許文献1)。
【0006】
特許文献1によると、前記課題を解決しうる大麦の品種は非常に限られていた。しかしながら、大麦の普及品種は収量、病虫害抵抗性の基準等に基づき変遷するため、種子の入手困難性やそれに基づく大麦の茎葉の安定供給の困難性等の問題が生じることから、前記課題を解決しうるような更なる大麦品種の探索が求められていた。一方、大麦には3万種以上の膨大な数の品種が知られており(非特許文献1)、前記課題を解決しうる新たな大麦品種の探索は容易ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2014−230520号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】米国農務省管轄下の遺伝資源データベース「Germplasm Resources Information Network」における大麦の学名「Hordeum vulgare」の検索結果<https://npgsweb.ars-grin.gov/gringlobal/view2.aspx?dv=web_taxonomyspecies_view_accessionlist&params=:taxonomyid=19333>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、大麦の茎葉を含有する食品であって、色が鮮やかであるため見た目が美しく、かつ、味や香りがよく、風味が良好で嗜好性が高く、安定性に優れた青汁用の飲食用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究したところ、驚くべきことに、3万種以上ある大麦の品種の中でも、トヨノカゼ及びサチホゴールデンから選ばれる少なくとも1の品種の大麦の茎葉の粉末を用いた青汁用の飲食用組成物は、前記従来の青汁用の飲食用組成物と比較して、色が鮮やかであるため見た目が美しく、かつ、風味が良好で嗜好性が高いことを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]大麦の茎及び/又は葉の粉末を用いた青汁用の飲食用組成物であって、
前記大麦が、トヨノカゼ及びサチホゴールデンから選ばれる少なくとも1の品種の大麦であることを特徴とする、青汁用の飲食用組成物。
[2]前記大麦の茎及び/又は葉の粉末が、乾燥粉末、粉砕末、搾汁末のいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする、[1]に記載の青汁用の飲食用組成物。
[3]前記大麦の茎及び/又は葉の含有量が乾燥質量で0.1質量%以上であることを特徴とする、[1]又は[2]のいずれかに記載の青汁用の飲食用組成物。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、トヨノカゼ及びサチホゴールデンから選ばれる少なくとも1の品種の大麦の茎葉の粉末を用いた青汁用の飲食用組成物は、色が鮮やかであるため見た目が美しく、かつ、風味が良好で嗜好性が高く、安定性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ニシノホシ、イチバンボシ、シュンライ、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末の「色の鮮やかさ」及び「香りの良さ」についての実施例及び比較例における官能評価の結果を示すグラフである。
図2】ニシノホシ、イチバンボシ、シュンライ、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末の「甘さ」、「えぐ味の弱さ」、「苦味の弱さ」、「青臭さ」、「舌触りの良さ」、「粉っぽさのなさ」、「コク」、「味の濃さ」、「口当たりの良さ」、「のどごし」及び「後味」についての実施例及び比較例における官能評価の結果を示すグラフである。
図3】加熱前のニシノホシの粉砕末、加熱後のニシノホシ、イチバンボシ、シュンライ、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末の「色の鮮やかさ」及び「香りの良さ」についての実施例及び比較例における官能評価の結果を示すグラフである。
図4】加熱前のニシノホシの粉砕末、加熱後のニシノホシ、イチバンボシ、シュンライ、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末の「甘さ」、「えぐ味の弱さ」、「苦味の弱さ」、「青臭さ」、「舌触りの良さ」、「粉っぽさのなさ」、「コク」、「味の濃さ」、「口当たりの良さ」、「のどごし」及び「後味」についての実施例及び比較例における官能評価の結果を示すグラフである。
図5】ニシノホシ、イチバンボシ、シュンライ、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの搾汁末の「色の鮮やかさ」及び「香りの良さ」についての実施例及び比較例における官能評価の結果を示すグラフである。
図6】ニシノホシ、イチバンボシ、シュンライ、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの搾汁末の「甘さ」、「えぐ味の弱さ」、「苦味の弱さ」、「青臭さ」、「舌触りの良さ」、「粉っぽさのなさ」、「コク」、「味の濃さ」、「口当たりの良さ」、「のどごし」及び「後味」についての実施例及び比較例における官能評価の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0015】
[1.大麦の茎及び/又は葉の粉末]
大麦の品種としては実に3万種以上の品種があることが知られているところ、本発明においては、トヨノカゼ及びサチホゴールデン(以下、「特定品種」ともいう)から選ばれる少なくとも1の品種の大麦の茎及び/又は葉の粉末を用いる。
【0016】
特定品種の大麦は、例えば精麦用として、具体的には、麦味噌、麦茶、焼酎、ビールなどの原料として一般的に用いられているものである。本発明においては、これらの品種のうち1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。大麦の茎葉の粉末は、大麦の葉、茎又はその両方であり、葉及び茎はそれぞれその一部又は全部であってもよい。
【0017】
特定品種の大麦の茎葉は、成熟期前、すなわち分けつ開始期から出穂開始前期に収穫されることが好ましい。大麦の茎葉は、収穫後、直ちに処理されることが好ましい。処理までに時間を要する場合、大麦の茎葉の変質を防ぐために低温貯蔵などの当業者が通常用いる貯蔵手段により貯蔵される。
【0018】
本発明で用いる特定品種の大麦の茎葉として、該茎葉から得られる各種の加工物、すなわち、特定品種の大麦の加工物を用いることができる。そのような加工物としては、例えば、茎葉の乾燥粉末、茎葉の粉砕物及びその乾燥粉末(以下、粉砕物の乾燥粉末のことを「粉砕末」ともいう)、茎葉の細片化物及びその乾燥粉末(以下、細片化物の乾燥粉末のことを「細片化末」ともいう)、茎葉の搾汁及びその乾燥粉末(以下、搾汁の乾燥粉末のことを「搾汁末」ともいう)、茎葉のエキス及びその乾燥粉末(以下、エキスの乾燥粉末のことを「エキス末」ともいう)などが挙げられる。なお、本願明細書で「粉末」と言う場合は、乾燥粉末、粉砕末、細片化末、搾汁末、エキス末を含むものである。
【0019】
大麦の茎葉を粉砕物及びその乾燥粉末化するには従来公知の方法を用いることができる。そのような方法としては、大麦の茎葉に対して、乾燥処理及び粉砕処理を組み合わせた方法を用いることができる。乾燥処理及び粉砕処理はいずれを先に行ってもよいが、乾燥処理を先に行うことが好ましい。乾燥粉末化は、この方法に、さらに必要に応じブランチング処理、殺菌処理などの処理から選ばれる1種又は2種以上の処理を組み合わせてもよい。また、粉砕処理を行う回数は1回でも、2回以上の処理を組合せてもよいが、粗粉砕処理を行った後に、より細かく粉砕する微粉砕処理を組合せることが好ましい。
【0020】
ブランチング処理とは、茎葉の緑色を鮮やかに保つための処理であり、ブランチング処理の方法としては、熱水処理や蒸煮処理などが挙げられる。
【0021】
熱水処理としては、例えば、80〜100℃、好ましくは90〜100℃の熱水又は水蒸気中で、大麦の茎葉を60〜180秒間、好ましくは90〜120秒間処理する方法などが挙げられる。また、熱水処理に際して、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩や炭酸水素ナトリウムなどの炭酸水素塩を用いることが好ましく、炭酸水素の塩を熱水に溶解することにより、大麦の茎葉の緑色をより鮮やかにすることができる。
【0022】
蒸煮処理としては、常圧又は加圧下において、大麦の茎葉を水蒸気により蒸煮する処理と冷却する処理とを繰り返す間歇的蒸煮処理が好ましい。間歇的蒸煮処理において、水蒸気により蒸煮する処理は、例えば、20〜40秒間、好ましくは30秒間行われる。蒸煮処理後の冷却処理は、直ちに行われることが好ましく、その方法は特に限定されないが、冷水への浸漬、冷蔵、冷風による冷却、温風による気化冷却、温風と冷風とを組み合わせた気化冷却などが用いられる。このうち温風と冷風とを組み合わせた気化冷却が好ましい。このような冷却処理は、大麦の茎葉の品温が、好ましくは60℃以下、より好ましくは50℃以下、さらに好ましくは40℃以下となるように行われる。また、ビタミン、ミネラル、葉緑素などの栄養成分に富んだ大麦の茎葉の粉末を製造するためには、間歇的蒸煮処理を2〜5回繰り返すことが好ましい。
【0023】
殺菌処理は当業者に通常知られている処理であれば特に限定されないが、例えば、温度、圧力、電磁波、薬剤などを用いて物理的又は化学的に微生物を殺滅させる処理であるということができる。乾燥処理及び粉砕処理に追加してブランチング処理を行う場合、ブランチング処理は乾燥処理の前に行われることが好ましい。また乾燥処理及び粉砕処理に追加して殺菌処理を行う場合、殺菌処理は、乾燥処理の後か、粉砕処理の前又は後に行われることが好ましい。
【0024】
乾燥処理は特に限定されないが、例えば、大麦の茎葉の水分含量が10%以下、好ましくは5%以下となるように乾燥する処理が挙げられる。乾燥処理は、例えば、熱風乾燥、高圧蒸気乾燥、電磁波乾燥、凍結乾燥などの当業者に公知の任意の方法により行われ得る。加熱による乾燥は、例えば、40℃〜140℃、好ましくは80℃〜130℃にて加温により茎葉が変色しない温度及び時間で行われ得る。
【0025】
粉砕処理は特に限定されないが、例えば、クラッシャー、ミル、ブレンダー、石臼などの粉砕用の機器や器具などを用いて、当業者が通常使用する任意の方法により植物体を粉砕する処理が挙げられる。粉砕された大麦の茎葉は、必要に応じて篩にかけられ、例えば、30〜250メッシュを通過するものを大麦の茎葉の粉末として用いることが好ましい。粒径が250メッシュ通過のもの以下とすることで、さらなる加工時に大麦の茎葉の粉末が取り扱いやすくなり、粒径が30メッシュ通過以上のものとすることで、大麦の茎葉の粉末と他の素材との均一な混合が容易になる。
【0026】
具体的な粉砕末の製造方法としては、例えば、大麦の茎葉を切断した後、ブランチング処理を行い、次いで水分含量が10質量%以下、好ましくは5質量%以下となるように乾燥し、その後粉砕する方法が挙げられる(特開2004−000210号公報を参照)。この他にも、例えば、大麦の茎葉を切断した後、ブランチング処理を行い、次いで揉捻し、その後、乾燥し、粉砕する方法(特開2002−065204号公報、特許第3428956号公報を参照);大麦の茎葉を乾燥し、粗粉砕した後、110℃以上で加熱し、さらに微粉砕する方法(特開2003−033151号公報、特許第3277181号公報を参照)などが挙げられる。
【0027】
大麦の茎葉を細片化する方法は特に限定されないが、例えば、スライス、破砕、細断などの当業者が植物体を細片化する際に通常使用する方法を用いることができる。細片化の一例として、スラリー化してもよい。スラリー化は、大麦の茎葉をミキサー、ジューサー、ブレンダー、マスコロイダーなどにかけ、大麦の茎葉をどろどろした粥状(液体と固体との懸濁液)にすることにより行う。このようにスラリー化することにより、茎葉は、細片の80質量%以上が、好ましくは平均径1mm以下、より好ましくは0.5mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下、なおさらに好ましくは0.05mm以下となるように細片化され、流動性を有するようになる。細片化物は凍結乾燥や熱風乾燥などの処理を行い、乾燥粉末(細片化末)とすることもできる。
【0028】
大麦の茎葉の搾汁液を得る方法は特に限定されないが、例えば、大麦の茎葉又はその細片化物を圧搾する方法、大麦の茎葉の細片化物を遠心やろ過する方法などを挙げることができる。具体的な搾汁液の製造方法の例としては、ミキサー、ジューサーなどの機械的破砕手段によって搾汁し、必要に応じて、篩別、濾過などの手段によって粗固形分を除去することにより搾汁液を得る方法が挙げられる。より具体的には、特開平08−245408号公報、特開平09−047252号公報、特開平5−7471号公報、特開平4−341153号公報などに記載の方法が挙げられ、これらの公知の方法を当業者が適宜選択して実施できる。搾汁液は、必要に応じて濃縮してもよいし、凍結乾燥や熱風乾燥、噴霧乾燥などの処理を行い、乾燥粉末(搾汁末)とすることもできる。
【0029】
大麦の茎葉のエキスを得る方法は特に限定されないが、例えば、大麦の茎葉又はその細片化物に、エタノール、水、含水エタノールなどの当業者が通常用いる抽出溶媒を加え、必要に応じて撹拌や加温して抽出する方法などを挙げることができる。抽出物は、必要に応じて濃縮してもよいし、凍結乾燥や熱風乾燥、噴霧乾燥などの処理を行い、乾燥粉末(エキス末)とすることもできる。
【0030】
大麦の茎葉の粉末の特性は特に限定されないが、例えば、その安息角について、20°〜80°が好ましく、30°〜70°がより好ましく、40°〜60°がさらに好ましく、45°〜55°がなおさらに好ましい。なお、安息角の測定方法は、安息角測定器(アズワン、ASK−01)を用いて、サンプル約50gを高度12cmから半径4.3cmのシャーレ中央に落下させ、次いで山型に堆積したサンプルの高さを測定し、次いでシャーレの半径及び堆積したサンプルの高さから下記式にて安息角を算出できる。
安息角=tan−1(b/a)×180÷π(式中、a=シャーレ半径、b=堆積したサンプルの高さを表わす。)
【0031】
本発明に用いられる特定品種の大麦の茎葉の粉末は、水不溶性食物繊維を含み得る。粉末に含まれる水不溶性食物繊維は、乾燥質量換算で20質量%以上、好ましくは30質量%以上含有することが好ましく、20〜80質量%、好ましくは30〜70質量%、より好ましくは35〜60質量%含有することがより好ましい。
【0032】
[2.青汁用の飲食用組成物]
本発明は、大麦の茎葉の粉末を含有する青汁用の飲食用組成物に関するものである。
【0033】
本発明の青汁用の飲食用組成物は、大麦の茎及び/又は葉の粉末を原料の一つとして用いている。本発明の青汁用の飲食用組成物に含有される大麦はトヨノカゼ及びサチホゴールデン(特定品種)から選ばれる少なくとも1の品種の大麦である。
【0034】
本発明においては、加工、貯蔵、運搬などの容易性や使用形態の汎用性といった観点から、大麦の茎葉の乾燥粉末、粉砕末、搾汁末、細片化末、エキス末であることが好ましく、特に、茎葉の粉砕末又は搾汁末を用いることが、本発明において、青汁用の飲食用組成物をより一層色が鮮やかで風味が良好なものとできる点や、食物繊維の豊富なものとできる点などから好ましい。
【0035】
本発明の青汁用の飲食用組成物は特定品種から選ばれる少なくとも1の品種の大麦の茎葉の粉末を用いることによって、呈味、色、香りが改善されたものとなる。具体的に説明すると、本発明の青汁用の飲食用組成物は、前記従来の青汁用の飲食用組成物と比較して、大麦の茎葉の粉末に由来して、緑色が鮮やかであり、香りが良いうえに、甘さ、えぐ味の弱さ、苦味の弱さ、青臭さ、舌触り、粉っぽさ、コク、味の濃さ、口当たりの良さの点が優れており、美味しく摂取することができる。
【0036】
本発明の青汁用の飲食用組成物の固形分中、特定品種の大麦の茎葉の含有量は、乾燥質量で、下限値としては、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、10質量%以上がなおさらに好ましく、20質量%以上が特に好ましい。特定品種の大麦の茎葉の含有量を0.1質量%以上とすることにより、本発明の効果を十分に発揮できる。本発明の青汁用の飲食用組成物の一実施態様において、特定品種の大麦の茎葉の含有量は、例えば、後述するその他の成分を併用する場合は全体量に対して、10〜80質量%であり、好ましくは20〜70質量%である。
【0037】
本発明において、青汁用の飲食用組成物は、特定品種の大麦の茎葉以外に、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、ビタミンA、ビタミンB、ビタミンC、ビタミンEなどのビタミン類;ゼラチン、コラーゲンペプチド、植物由来タンパク質などのタンパク質;難消化性デキストリン、ペクチン、アルギン酸、グアーガム、グアーガム加水分解物、グルコマンナン、ガラクトマンナン、ポリデキストロース、カラギーナンなどの水溶性食物繊維;ラクチュロース、パラチノース、パラチノースオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ラフィノース、キシロオリゴ糖、マルトオリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、トレハロース、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、大豆オリゴ糖、ビートオリゴ糖、ゲンチオオリゴ糖、ニゲロオリゴ糖、スクロース、ラクトース、マルトース及びシクロデキストリンなどのオリゴ糖;カルシウム、マグネシウム、鉄などのミネラル類;N−アセチルグルコサミン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸などのムコ多糖類;乳、発酵乳、脱脂粉乳などの乳製品;豆乳、豆乳粉末などの豆乳製品;レモン、リンゴ、明日葉、ケール、甘藷、甘藷茎葉、じゃがいも、ニンジン、カボチャ、ニガウリ、トマト、グリーンピース、モロヘイヤ、スピルリナ、抹茶などの植物又は植物加工品;乳酸菌、納豆菌、酪酸菌、麹菌、酵母などの微生物などが挙げられる。さらに必要に応じて通常食品分野で用いられる、デキストリン、ブドウ糖、乳糖、ショ糖、麦芽糖(マルトース)、果糖、エリスリトール、トレハロース、マルチトール、キシリトール、でんぷんなどの糖類;ステビア、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、ソーマチン、還元麦芽糖などの甘味料;クエン酸、乳酸、グルコン酸、リンゴ酸などの酸味料;酸化チタンなどの着色料;アラビアガム、キサンタンガムなどの増粘剤;シェラックなどの光沢剤;タルク、二酸化ケイ素、セルロース、ステアリン酸カルシウムなどの製造用剤などを配合することもできる。その他の成分としては、これら以外にも、種々の賦形剤、結合剤、滑沢剤、安定剤、希釈剤、増量剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料などを挙げることができる。その他の成分の含有量は、青汁用の飲食用組成物の形態などに応じて適宜選択することができる。
【0038】
本発明の青汁用の飲食用組成物は、任意の形態とすることができる。本発明の青汁用の飲食用組成物の形態としては、例えば、飲食などの経口摂取に適した形態、具体的には、粉末状、粒状、顆粒状、錠状、棒状、板状、ブロック状、固形状、丸状、液状、飴状、ペースト状、クリーム状、ハードカプセルやソフトカプセルのようなカプセル状、カプレット状、タブレット状、ゲル状、ゼリー状、グミ状、ウエハース状、ビスケット状、クッキー状、ケーキ状、チュアブル状、シロップ状、スティック状などの各形態が挙げられる。
【0039】
本発明の青汁用の飲食用組成物の具体例としては、清涼飲料などの各種飲料、パン・菓子類、麺類などの各種食品、調理品などを挙げることができる。ここでいう飲料には、青汁や、青汁に果汁や野菜、乳製品などを添加してジュース、シェイク、スムージーにしたもの、清涼飲料、炭酸飲料やそれらのもとなどの形態としたものなどを挙げることができる。ここでいう飲料には、液体状の組成物だけでなく、固形状の組成物であって、飲用時に水などの溶媒と混合して液体状の飲料とするものが含まれる。
【0040】
本発明の青汁用の飲食用組成物は、粉末状(粉末、顆粒などの粉の形態)であって、水と混合した混合物を経口摂取する形態であると、腐敗を防ぎ長期保存に適するとともに、この青汁用の飲食用組成物が水と混合したときに色が鮮やかであることから好ましい。また本発明の青汁用の飲食用組成物が固体の形態である場合、上述したように、これを水と混合した液状体となし、該液状体を飲用するなどの経口摂取することができるが、摂取する者の好みなどに応じて、固体のまま経口摂取してもよい。水だけでなく、牛乳、豆乳、果汁飲料、乳清飲料、清涼飲料、ヨーグルト、ホットケーキミックスなどに添加して使用してもよい。また、機能性食品、栄養機能表示食品、特定保健用食品として用いても良いことは言うまでもない。
【実施例】
【0041】
[製造例]
製造例1.大麦茎葉の粉砕末試料
原料として、出穂前に刈り取ったニシノホシの茎葉を用いた。これを水洗いし、付着した泥などを除去し、5〜10cm程度の大きさに切断する前処理を行った。前処理した茎葉を、90〜100℃の熱湯で90秒間〜120秒間、1回のみブランチング処理し、その後、冷水で冷却した。続いて、得られた茎葉を、水分量が5質量%以下となるまで、乾燥機中で、20分間〜180分間、80℃〜130℃の温風にて乾燥させた。乾燥した茎葉を約1mmの大きさに粉砕処理した。得られた大麦の茎葉を、200メッシュ区分を90%以上が通過するように粉砕処理し、ニシノホシ茎葉の粉砕末試料を得た。
【0042】
ニシノホシの代わりに、イチバンボシ、シュンライ、トヨノカゼ及びサチホゴールデンを用いた以外は、ニシノホシ茎葉の粉砕末試料を得たのと同様にして、各大麦品種茎葉の粉砕末試料を得た。
【0043】
製造例2.大麦茎葉の搾汁末試料
原料として、出穂前に刈り取ったニシノホシの茎葉を用いた。得られた茎葉を、ジューサーを用いて搾汁することにより茎葉の搾汁液を得た。得られた搾汁液を凍結乾燥することにより、茎葉の搾汁末試料を得た。
【0044】
ニシノホシの代わりに、イチバンボシ、シュンライ、トヨノカゼ及びサチホゴールデンを用いた以外は、ニシノホシ茎葉の搾汁末試料を得たのと同様にして、各大麦品種茎葉の搾汁末試料を得た。
【0045】
[実施例1]大麦茎葉末の官能評価(1)
(1)サンプルの調製
製造例1で得た大麦茎葉の粉砕末試料(ニシノホシ、イチバンボシ、シュンライ、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの5品種)1.8gを、水100mLと混合して各サンプルを得た。これらのサンプルのうち、ニシノホシ茎葉の粉砕末試料から得られたサンプルを、標準品とした。なお、本評価においては、トヨノカゼ、サチホゴールデンの粉砕末を実施例サンプルとし、ニシノホシ、イチバンボシ、シュンライの粉砕末を比較例サンプルとした。
【0046】
被験者として、健常な成人6名を無作為に選出した。これらの被験者6名に対し、以下の評価例1−1〜1−2の官能評価を実施した。
(2)評価例1−1(色の鮮やかさ及び香りの良さ)
前記の被験者6名に、上記(1)で調製した各サンプルについて、標準品と比較して色が鮮やかであるか否か、標準品と比較して香りが良いか否かをアンケートに記入させた。具体的には、標準品と同等であるものを基準(4点)として、非常に良いものを7点、非常に悪いものを1点とした7段階で評価させた。
1点(非常に悪い)←――――4点(標準品と同等)―――――→7点(非常に良い)
【0047】
各サンプルについて、被験者の点数の平均点を算出し、その合計点を本評価の評価点とした。結果を図1のグラフに示す。図1に示すように、イチバンボシ及びシュンライの粉砕末はニシノホシの粉砕末と比較して色の鮮やかさ、香りの良さで優れているが、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末は、ニシノホシ、イチバンボシ及びシュンライのいずれの粉砕末と比較しても、色の鮮やかさ、香りの良さのいずれも優れていることがわかった。
【0048】
(3)評価例1−2(甘さ、えぐ味の弱さ、苦味の弱さ、青臭さ、舌触りの良さ、粉っぽさのなさ、コク、味の濃さ、口当たりの良さ、のどごし、後味)
前記6名の被験者に、上記(1)で調製した各サンプルを、標準品と飲み比べさせ、標準品と比較して、甘い、えぐ味が弱い、苦味が弱い、青臭くない、舌触りが良い、粉っぽさがない、コクがある、味が濃い、口当たりが良い、のどごしが良い、後味が良いと感じるか否かについて、ニシノホシの粉砕末サンプルを基準として、評価例1−1と同様の7段階の評価方法にて比較させ、アンケートに記入させた。各サンプルについての評価の平均点を算出し、その合計点を本評価の評価点とした。結果を図2のグラフに示す。図2に示すように、イチバンボシ及びシュンライの粉砕末はニシノホシの粉砕末と比較して全ての評価項目で優れているが、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末は、ニシノホシ、イチバンボシ及びシュンライのいずれの粉砕末と比較しても、全ての評価項目で優れており、特に、苦味の弱さ、コク、味の濃さは高い評価であることがわかった。
【0049】
以上より、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末は、ニシノホシの粉砕末と比較して色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であることがわかった。また、イチバンボシ及びシュンライの粉砕末は、ニシノホシの粉砕末と比較して色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であるが、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末はイチバンボシやシュンライの粉砕末と比較して、より色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であることがわかった。
【0050】
[実施例2]大麦茎葉末の官能評価(2)
(1)サンプルの調製
製造例1で得た大麦茎葉(ニシノホシ、イチバンボシ、シュンライ、トヨノカゼ及びサチホゴールデン)の粉砕末試料1.8gを、アルミフィルムバックに入れて密封し、60℃で3日間加熱した。加熱後、得られた粉末試料を水100mLと混合して各サンプルを得た。なお、標準品として、ニシノホシの加熱前の粉砕末試料1.8gと水100mLを混合したものを使用した。なお、本評価においては、加熱後のトヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末を実施例サンプルとし、加熱前のニシノホシ及び加熱後のニシノホシ、イチバンボシ、シュンライの粉砕末を比較例サンプルとした。
(2)評価例2−1(色の鮮やかさ及び香りの良さ)
前記の被験者6名に、上記(1)で調製した各サンプルについて、標準品と比較して色が鮮やかであるか否か、標準品と比較して香りが良いか否かをアンケートに記入させた。具体的には、標準品と同等であるものを基準(4点)として、非常に良いものを7点、非常に悪いものを1点とした7段階で評価させた。
1点(非常に悪い)←――――4点(標準品と同等)―――――→7点(非常に良い)
【0051】
各サンプルについて、被験者の点数の平均点を算出し、その合計点を本評価点として、図3のグラフに示す。図3に示すように、加熱後のニシノホシの粉砕末は加熱前のニシノホシの粉砕末と比較して色の鮮やかさ、香りの良さのいずれもが悪い結果であった。また、加熱後のイチバンボシ及びシュンライの粉砕末についても、加熱後のニシノホシの粉砕末と比較して全ての項目で優れているものの、加熱前のニシノホシの粉砕末と比較すると全ての項目で悪い結果であった。一方、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末は加熱後のニシノホシ、イチバンボシ、シュンライの粉砕末のみでなく、加熱前のニシノホシの粉砕末と比較しても優れたものであり、特に、香りの良さは高い評価であることがわかった。
【0052】
(3)評価例2−2(甘さ、えぐ味の弱さ、苦味の弱さ、青臭さ、舌触りの良さ、粉っぽさのなさ、コク、味の濃さ、口当たりの良さ、のどごし、後味)
前記6名の被験者に、上記(1)で調製した各サンプルを、標準品と飲み比べさせ、標準品と比較して、甘い、えぐ味が弱い、苦味が弱い、青臭くない、舌触りが良い、粉っぽさがない、コクがある、味が濃い、口当たりが良い、のどごしが良い、後味が良いと感じるか否かについて、加熱前のニシノホシの粉砕末サンプルを基準として、評価例2−1と同様の7段階の評価方法にて比較させ、アンケートに記入させた。各サンプルについての評価の平均点を算出し、その合計点を本評価の評価点とした。結果を図4に示す。図4に示すように、加熱後のニシノホシの粉砕末は加熱前のニシノホシの粉砕末と比較して全ての項目で悪い結果であった。また、加熱後のイチバンボシ及びシュンライの粉砕末についても、加熱後のニシノホシの粉砕末と比較して全ての項目で優れているものの、加熱前のニシノホシの粉砕末と比較すると全ての項目で悪い結果であった。一方、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末は加熱後のニシノホシ、イチバンボシ、シュンライの粉砕末のみでなく、加熱前のニシノホシの粉砕末と比較しても嗜好性に優れたものであった。特に、甘さ、コク、味の濃さ、後味は高い評価であることがわかった。
【0053】
以上より、加熱後のニシノホシ、イチバンボシ、シュンライの粉砕末は加熱前のニシノホシの粉砕末と比較して嗜好性が劣るものであったが、加熱後のトヨノカゼ、及びサチホゴールデンの粉砕末は、加熱前のニシノホシの粉砕末、及び、加熱後のイチバンボシ、シュンライの粉砕末と比較して色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であることがわかった。
【0054】
(4)評価例2−3(加熱前後の各項目の比較)
ニシノホシ、イチバンボシ、シュンライ、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末について、1−1,1−2で評価した加熱前の各粉砕末の各評価値を1とした場合の2−1,2−2で評価した加熱後の各評価値の割合を算出し、加熱による各評価項目の変化を比較した。結果を表1に示す。表1において、数値が大きいほど加熱前と同等の嗜好性であり、加熱による劣化が小さいことを示す。
【0055】
【表1】
【0056】
表1より、加熱後のニシノホシの粉砕末は、加熱前と比較すると、各項目の値は50〜71%と低いものであり、加熱による劣化が大きいことがわかった。また、加熱後のイチバンボシ、シュンライの粉砕末は、加熱前と比較すると各項目の値は60〜79%であり、ニシノホシの粉砕末ほどではないものの、加熱により劣化していることがわかった。一方、加熱後のトヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末は、各項目の値は78%以上と高いものであり、加熱前と比較していずれも劣化するものの、加熱後のニシノホシ、イチバンボシ及びシュンライの粉砕末の嗜好性の劣化の程度と比較して小さいものであった。特に、えぐ味の弱さ、舌触り、コク、味の濃さにおいては加熱前と比較しても劣化が小さいものであった。
【0057】
以上より、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末は、ニシノホシ、イチバンボシ及びシュンライの粉砕末との品種間の比較において優れているのみならず、同一品種における熱安定性の比較においても優れた品種であることがわかった。
【0058】
[実施例3]大麦茎葉末の官能評価(3)
(1)サンプルの調製
製造例5で得た大麦茎葉の搾汁末試料(ニシノホシ、イチバンボシ、シュンライ、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの5品種)1.8gを、水100mLと混合して各サンプルを得た。これらのサンプルのうち、ニシノホシ茎葉の搾汁末試料から得られたサンプルを、標準品とした。なお、本評価においては、トヨノカゼ、サチホゴールデンの搾汁末を実施例サンプルとし、ニシノホシ、イチバンボシ、シュンライの搾汁末を比較例サンプルとした。
【0059】
被験者として、健常な成人6名を無作為に選出した。これらの被験者6名に対し、以下の評価例3−1〜3−2の官能評価を実施した。
(2)評価例3−1(色の鮮やかさ及び香りの良さ)
前記の被験者6名に、上記(1)で調製した各サンプルについて、標準品と比較して色が鮮やかであるか否か、標準品と比較して香りが良いか否かをアンケートに記入させた。具体的には、標準品と同等であるものを基準(4点)として、非常に良いものを7点、非常に悪いものを1点とした7段階で評価させた。
1点(非常に悪い)←――――4点(標準品と同等)―――――→7点(非常に良い)
【0060】
各サンプルについて、被験者の点数の平均点を算出し、その合計点を本評価点として、図5のグラフに示す。図5に示すように、イチバンボシ及びシュンライの搾汁末はニシノホシの搾汁末と比較して色の鮮やかさ、香りの良さで優れているが、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの搾汁末は、ニシノホシ、イチバンボシ及びシュンライのいずれの搾汁末と比較しても、色の鮮やかさ、香りの良さのいずれも優れていることがわかった。
【0061】
(3)評価例3−2(甘さ、えぐ味の弱さ、苦味の弱さ、青臭さ、舌触りの良さ、粉っぽさのなさ、コク、味の濃さ、口当たりの良さ、のどごし、後味)
前記6名の被験者に、上記(1)で調製した各サンプルを、標準品と飲み比べさせ、標準品と比較して、甘い、えぐ味が弱い、苦味が弱い、青臭くない、舌触りが良い、粉っぽさがない、コクがある、味が濃い、口当たりが良い、のどごしが良い、後味が良いと感じるか否かについて、ニシノホシの搾汁末を基準として、評価例3−1と同様の7段階の評価方法にて比較させ、アンケートに記入させた。各サンプルについての評価の平均点を算出し、その合計点を本評価の評価点とした。結果を図6のグラフに示す。図6に示すように、イチバンボシ及びシュンライの搾汁末はニシノホシの搾汁末と比較して全ての評価項目で優れているが、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの搾汁末は、ニシノホシ、イチバンボシ及びシュンライのいずれの搾汁末と比較しても、全ての評価項目で優れており、特に、甘さ、苦味のなさ、のどごし、後味は高い評価であることがわかった。
【0062】
以上、図5及び図6より、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの搾汁末は、ニシノホシの搾汁末と比較して色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であることがわかった。また、イチバンボシ及びシュンライの搾汁末は、ニシノホシの搾汁末と比較して色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であるが、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの搾汁末はイチバンボシの搾汁末と比較して、より色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明によれば、特定品種の大麦の茎葉の粉末を用いることにより、色が鮮やかであるため見た目が美しく、かつ、風味が良好で嗜好性が高く、安定性に優れた青汁用の飲食用組成物を提供することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6