【実施例】
【0120】
[製造例]
製造例1.大麦茎葉の粉砕末試料
原料として、出穂前に刈り取ったニシノホシの茎葉を用いた。これを水洗いし、付着した泥などを除去し、5〜10cm程度の大きさに切断する前処理を行った。前処理した茎葉を、90〜100℃の熱湯で90秒間〜120秒間、1回のみブランチング処理し、その後、冷水で冷却した。続いて、得られた茎葉を、水分量が5質量%以下となるまで、乾燥機中で、20分間〜180分間、80℃〜130℃の温風にて乾燥させた。乾燥した茎葉を約1mmの大きさに粉砕処理した。得られた大麦の茎葉を、200メッシュ区分を90%以上が通過するように粉砕処理し、ニシノホシ茎葉の粉砕末試料を得た。
【0121】
ニシノホシの代わりに、カシマムギ、マンネンボシ、はるしずく、ダイシモチ、イチバンボシ及びシュンライを用いた以外は、ニシノホシ茎葉の粉砕末試料を得たのと同様にして、各大麦品種茎葉の粉砕末試料を得た。
【0122】
製造例2.大麦の搾汁液試料
原料として、出穂前に刈り取ったイチバンボシの茎葉を用いた。この茎葉に付着した泥などを除去した。得られた茎葉を、ジューサーを用いて搾汁することにより茎葉の搾汁液試料を得た。
【0123】
イチバンボシの代わりに、カシマムギ、マンネンボシ及びはるしずくを用いた以外は、イチバンボシ茎葉の搾汁液試料を得たのと同様にして、各大麦品種茎葉の搾汁液試料を得た。
【0124】
製造例3.大麦茎葉の搾汁末試料
原料として、出穂前に刈り取ったイチバンボシの茎葉を用いた。「2.大麦の搾汁液試料」の製造において得られた搾汁液を凍結乾燥することにより、茎葉の搾汁末試料を得た。
【0125】
イチバンボシの代わりに、カシマムギ、マンネンボシ及びはるしずくを用いた以外は、イチバンボシ茎葉の搾汁末試料を得たのと同様にして、各大麦品種茎葉の搾汁末試料を得た。
【0126】
[実施例1]大麦茎葉末の官能評価(1)
(1)サンプルの調製
製造例1で得た大麦茎葉の粉砕末試料(ニシノホシ、イチバンボシ、カシマムギ、マンネンボシ及びはるしずくの5品種)1.8g及び製造例3で得たイチバンボシの搾汁末試料1.8gを、水100mLと混合して各サンプルを得た。これらのサンプルのうち、ニシノホシ茎葉の粉砕末試料から得られたサンプルを、標準品とした。なお、本評価においては、カシマムギ、マンネンボシ及びはるしずくの粉砕末を実施例サンプルとし、ニシノホシ、イチバンボシの粉砕末及びイチバンボシの搾汁末を比較例サンプルとした。
【0127】
被験者として、健常な成人5名を無作為に選出した。これらの被験者5名に対し、以下の評価例1−1〜1−2の官能評価を実施した。
【0128】
(2)評価例1−1(色の鮮やかさ及び香りの良さ)
前記の被験者5名に、上記(1)で調製した各サンプルについて、標準品と比較して色が鮮やかであるか否か、標準品と比較して香りが良いか否かを答えさせた。各サンプルについての「標準品と比較して緑色が鮮やかである」「標準品と比較して香りが良い」とそれぞれ答えた人の数を、色の鮮やかさ及び香りの良さの評価点として、
図1のグラフに示す。
図1に示すように、イチバンボシの粉砕末はニシノホシの粉砕末と比較して色の鮮やかさ、香りの良さで優れているが、カシマムギ、マンネンボシ、はるしずくの粉砕末は、ニシノホシ及びイチバンボシのいずれの粉砕末と比較しても、色の鮮やかさ、香りの良さのいずれも優れていることがわかった。また、カシマムギ、マンネンボシ、はるしずく及びイチバンボシの粉砕末はイチバンボシの搾汁末と比較して、色の鮮やかさ、香りの良さのいずれも優れていることがわかった。
【0129】
(3)評価例1−2(甘さ、えぐ味の弱さ、苦味の弱さ、青臭さ、舌触り、粉っぽさ、コク、味の濃さ、口当たりの良さ)
前記の5名の被験者に、上記(1)で調製した各サンプルを、標準品と飲み比べさせ、標準品と比較して、甘い、えぐ味が弱い、苦味が弱い、青臭くない、舌触りが良い、粉っぽさがない、コクがある、味が濃い、口当たりが良いと感じるか否かについて、それぞれ答えさせた。各サンプルについての「標準品と比較して甘い」、「標準品と比較してえぐ味が弱い」、「標準品と比較して苦味が弱い」、「標準品と比較して青臭くない」、「標準品と比較して舌触りが良い」、「標準品と比較して粉っぽさがない」、「標準品と比較してコクがある」、「標準品と比較して味が濃い」及び「標準品と比較して口当たりが良い」とそれぞれ答えた人の数を、甘さ、えぐ味の弱さ、苦味の弱さ、青臭さ、舌触り、粉っぽさ、コク、味の濃さ、口当たりの良さの評価点として、
図2のグラフに示す。
図2に示すように、イチバンボシの粉砕末はニシノホシの粉砕末と比較して甘さ、えぐ味の弱さ、苦味の弱さ、粉っぽさ、コク、味の濃さ、口当りの良さが優れていることがわかった。一方、カシマムギ、マンネンボシ及びはるしずくの粉砕末を用いたサンプルは、ニシノホシの粉砕末と比較して、全ての評価項目において優れていることがわかった。さらに、カシマムギ、マンネンボシ及びはるしずくの粉砕末は、イチバンボシの粉砕末と比較して、全ての評価項目において優れており、特に、青臭さ、舌触り、粉っぽさ、コク、口当りの良さが優れていることがわかった。また、カシマムギ、マンネンボシ、はるしずく及びイチバンボシの粉砕末は、イチバンボシの搾汁末と比較して全ての評価項目において優れていることがわかった。
【0130】
以上、
図1及び
図2より、カシマムギ、マンネンボシ及びはるしずくの粉砕末は、ニシノホシの粉砕末と比較して色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であることがわかった。また、イチバンボシの粉砕末は、ニシノホシの粉砕末と比較して色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であるが、カシマムギ、マンネンボシ及びはるしずくの粉砕末はイチバンボシの粉砕末と比較して、より色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であることがわかった。さらに、カシマムギ、マンネンボシ、はるしずく及びイチバンボシの粉砕末は、イチバンボシの搾汁末と比較しても、いずれの項目も優れており、大麦茎葉を粉砕末とすることでより色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物を得られることがわかった。
【0131】
[実施例2]大麦茎葉末の官能評価(2)
(1)サンプルの調製
製造例1で得た大麦茎葉のうち、イチバンボシ、カシマムギ、マンネンボシ及びはるしずくの粉砕末試料1.8gを、アルミフィルムバックに入れて密封し、60℃で3日間加熱した。加熱後、得られた粉末試料を水100mLと混合して各サンプルを得た。なお、標準品として、ニシノホシの加熱前の粉砕末試料1.8gと水100mLを混合したものを使用した。なお、本評価においては、加熱後のカシマムギ、マンネンボシ及びはるしずくの粉砕末を実施例サンプルとし、加熱前のニシノホシ及び加熱後のイチバンボシの粉砕末を比較例サンプルとした。
【0132】
被験者として、健常な成人5名を無作為に選出した。これらの被験者5名に対し、以下の評価例2−1〜2−2の官能評価を実施した。
【0133】
(2)評価例2−1(色の鮮やかさ及び香りの良さ)
前記の被験者5名に、上記(1)で調製した各サンプルについての「標準品と比較して緑色が鮮やかである」「標準品と比較して香りが良い」とそれぞれ答えた人の数を、色の鮮やかさ及び香りの良さの評価点として、
図3のグラフに示す。
図3に示すように、加熱後のイチバンボシの粉砕末は加熱前のニシノホシの粉砕末と比較して色の鮮やかさは優れているものの、香りの良さが劣っているという結果であった。一方、加熱後のカシマムギ、マンネンボシ、はるしずくの粉砕末は、加熱前のニシノホシの粉砕末と比較して、色の鮮やかさ、香りの良さで優れていることがわかった。さらに、加熱後のカシマムギの粉砕末は加熱後のイチバンボシの粉砕末と比較して色の鮮やかさは同等であったが、香りの良さが優れており、加熱後のマンネンボシ、はるしずくの粉砕末は加熱後のイチバンボシの粉砕末と比較して、色の鮮やかさ、香りの良さのいずれも優れていることがわかった。
【0134】
(3)評価例2−2(甘さ、えぐ味の弱さ、苦味の弱さ、青臭さ、舌触り、粉っぽさ、コク、味の濃さ、口当たりの良さ)
前記の5名の被験者に、上記(1)で調製した各サンプルを、標準品と飲み比べさせ、標準品と比較して、甘い、えぐ味が弱い、苦味が弱い、青臭くない、舌触りが良い、粉っぽさがない、コクがある、味が濃い、口当たりが良いと感じるか否かについて、それぞれ答えさせた。各サンプルについての「標準品と比較して甘い」、「標準品と比較してえぐ味が弱い」、「標準品と比較して苦味が弱い」、「標準品と比較して青臭くない」、「標準品と比較して舌触りが良い」、「標準品と比較して粉っぽさがない」、「標準品と比較してコクがある」、「標準品と比較して味が濃い」及び「標準品と比較して口当たりが良い」とそれぞれ答えた人の数を、甘さ、えぐ味の弱さ、苦味の弱さ、青臭さ、舌触り、粉っぽさ、コク、味の濃さ、口当たりの良さの評価点として、
図4のグラフに示す。
図4に示すように、加熱後のイチバンボシの粉砕末は、加熱前のニシノホシの粉砕末と比較して甘さ、えぐみの弱さ、苦味の弱さ、青臭さ、コク、味の濃さ、口当りのよさで優れているものの、舌触り、粉っぽさで劣る結果であった。一方、加熱後のカシマムギ、マンネンボシ、はるしずくの粉砕末は、加熱前のニシノホシの粉砕末と比較して、全ての評価項目において優れていることがわかった。さらに、加熱後のカシマムギ、マンネンボシの粉砕末は加熱後のイチバンボシと比較しても、全ての評価項目で優れており、加熱後のはるしずくの粉砕末は加熱後のイチバンボシの粉砕末と比較して、えぐみの弱さ、苦味の弱さ、青臭さ、舌触り、粉っぽさ、コク、味の濃さ、口当りの良さで優れていることがわかった。
【0135】
以上より、加熱後のイチバンボシの粉砕末は加熱前のニシノホシの粉砕末と比較して香りの良さ、舌触り、粉っぽさが劣るものであったが、加熱後のカシマムギ、マンネンボシ及びはるしずくの粉砕末は、加熱前のニシノホシの粉砕末、及び、加熱後のイチバンボシの粉砕末と比較して色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であることがわかった。
【0136】
(4)評価例2−3(加熱前後の各項目の比較)
イチバンボシ、カシマムギ、マンネンボシ及びはるしずくの粉砕末について、加熱前のニシノホシの粉砕末を基準とした嗜好性の評価の比較を実施した。評価項目は、色の鮮やかさ、香りの良さ、甘さ、えぐ味の弱さ、苦味の弱さ、青臭さ、舌触り、粉っぽさ、コク、味の濃さ、口当たりの良さである。各項目において、加熱前のニシノホシの粉砕末と比較して優れていると評価した人数を集計し、各評価項目の合計人数に対する割合を算出した。結果を表1に示す。
【0137】
【表1】
【0138】
表1より、加熱前のカシマムギ、マンネンボシ、はるしずくの粉砕末は、加熱前のニシノホシの粉砕末や、加熱前及び加熱後のイチバンボシの粉砕末と比較して嗜好性が高いものであることがわかった。また、加熱前後の評価結果の推移を見ると、加熱後のカシマムギ、マンネンボシ、はるしずくの粉砕末の嗜好性は、加熱前と比較していずれも劣化するものの、加熱後のイチバンボシの粉砕末の嗜好性の劣化の程度と比較して小さいものであった。さらに、加熱後のカシマムギ、マンネンボシ及びはるしずくの粉砕末の嗜好性は、加熱前より劣化したとはいえ、加熱後においても加熱前のニシノホシの粉砕末の6倍以上、加熱前のイチバンボシの粉砕末の2倍以上、加熱後のイチバンボシの粉砕末の4倍以上優れていた。以上より、カシマムギ、マンネンボシ、はるしずくの粉砕末は、ニシノホシ、イチバンボシの粉砕末との品種間の比較において優れているのみならず、同一品種の熱安定性の比較においても優れた品種であることがわかった。
【0139】
[実施例3]大麦茎葉末の官能評価(3)
(1)サンプルの調製
製造例3で得た大麦茎葉の搾汁末試料(イチバンボシ、カシマムギ、マンネンボシ、はるしずくの4品種)1.8gを、水100mLと混合して各サンプルを得た。これらのサンプルのうち、イチバンボシ茎葉の搾汁末試料から得られたサンプルを、標準品とした。なお、本評価においては、カシマムギ、マンネンボシ及びはるしずくの搾汁末を実施例サンプルとし、イチバンボシの搾汁末を比較例サンプルとした。
【0140】
被験者として、健常な成人5名を無作為に選出した。これらの被験者5名に対し、以下の評価例3−1〜3−2の官能評価を実施した。
【0141】
(2)評価例3−1(色の鮮やかさ及び香りの良さ)
前記の被験者5名に、上記(1)で調製した各サンプルについて、標準品と比較して色が鮮やかであるか否か、標準品と比較して香りが良いか否かを答えさせた。各サンプルについての「標準品と比較して緑色が鮮やかである」「標準品と比較して香りが良い」とそれぞれ答えた人の数を、色の鮮やかさ及び香りの良さの評価点として、
図5のグラフに示す。
図5に示すように、カシマムギ、マンネンボシ、はるしずくの搾汁末は、イチバンボシの搾汁末と比較して、色の鮮やかさ、香りの良さのいずれも優れていることがわかった。
【0142】
(3)評価例3−2(甘さ、えぐ味の弱さ、苦味の弱さ、青臭さ、舌触り、粉っぽさ、コク、味の濃さ、口当たりの良さ)
前記の5名の被験者に、上記(1)で調製した各サンプルを、標準品と飲み比べさせ、標準品と比較して、甘い、えぐ味が弱い、苦味が弱い、青臭くない、舌触りが良い、粉っぽさがない、コクがある、味が濃い、口当たりが良いと感じるか否かについて、それぞれ答えさせた。各サンプルについての「標準品と比較して甘い」、「標準品と比較してえぐ味が弱い」、「標準品と比較して苦味が弱い」、「標準品と比較して青臭くない」、「標準品と比較して舌触りが良い」、「標準品と比較して粉っぽさがない」、「標準品と比較してコクがある」、「標準品と比較して味が濃い」及び「標準品と比較して口当たりが良い」とそれぞれ答えた人の数を、甘さ、えぐ味の弱さ、苦味の弱さ、青臭さ、舌触り、粉っぽさ、コク、味の濃さ、口当たりの良さの評価点として、
図6のグラフに示す。
図6に示すように、カシマムギ、マンネンボシ及びはるしずくの搾汁末を用いたサンプルは、イチバンボシの搾汁末と比較して、甘さ、えぐ味の弱さ、苦味の弱さ、青臭さ、舌触り、粉っぽさ、コク、味の濃さ、口当たりの良さの全ての項目において優れており、嗜好性が高いことがわかった。
【0143】
以上より、カシマムギ、マンネンボシ及びはるしずくの搾汁末はイチバンボシの搾汁末と比較して色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であることがわかった。
【0144】
[参考例]大麦茎葉搾汁液の官能評価(4)
(1)サンプルの調製
製造例2で得た大麦茎葉の搾汁液(イチバンボシ、カシマムギ、マンネンボシ、はるしずくの4品種)を用いた。これらのサンプルのうち、イチバンボシ搾汁液を、標準品とした。なお、本評価においては、カシマムギ、マンネンボシ及びはるしずくの搾汁液を参考例サンプルとし、イチバンボシの搾汁液を比較参考例サンプルとした。
【0145】
被験者として、健常な成人5名を無作為に選出した。これらの被験者5名に対し、以下の評価例4−1〜4−2の官能評価を実施した。
【0146】
(2)評価例4−1(色の鮮やかさ及び香りの良さ)
前記の被験者5名に、上記(1)で調製した各サンプルについて、標準品と比較して色が鮮やかであるか否か、標準品と比較して香りが良いか否かを答えさせた。各サンプルについての「標準品と比較して緑色が鮮やかである」「標準品と比較して香りが良い」とそれぞれ答えた人の数を、色の鮮やかさ及び香りの良さの評価点として、
図7のグラフに示す。
図7に示すように、カシマムギ、マンネンボシ、はるしずくの搾汁液は、イチバンボシの搾汁液と比較して、色の鮮やかさ、香りの良さのいずれも優れていることがわかった。
【0147】
(3)評価例4−2(甘さ、えぐ味の弱さ、苦味の弱さ、青臭さ、舌触り、粉っぽさ、コク、味の濃さ、口当たりの良さ)
前記の5名の被験者に、上記(1)で調製した各サンプルを、標準品と飲み比べさせ、標準品と比較して、甘い、えぐ味が弱い、苦味が弱い、青臭くない、舌触りが良い、粉っぽさがない、コクがある、味が濃い、口当たりが良いと感じるか否かについて、それぞれ答えさせた。各サンプルについての「標準品と比較して甘い」、「標準品と比較してえぐ味が弱い」、「標準品と比較して苦味が弱い」、「標準品と比較して青臭くない」、「標準品と比較して舌触りが良い」、「標準品と比較して粉っぽさがない」、「標準品と比較してコクがある」、「標準品と比較して味が濃い」及び「標準品と比較して口当たりが良い」とそれぞれ答えた人の数を、甘さ、えぐ味の弱さ、苦味の弱さ、青臭さ、舌触り、粉っぽさ、コク、味の濃さ、口当たりの良さの評価点として、
図8のグラフに示す。
図8に示すように、カシマムギ、マンネンボシ及びはるしずくを用いたサンプルは、イチバンボシと比較して、甘さ、えぐ味の弱さ、苦味の弱さ、青臭さ、舌触り、粉っぽさ、コク、味の濃さ、口当たりの良さの全ての項目において優れており、嗜好性が高いことがわかった。
【0148】
以上より、カシマムギ、マンネンボシ及びはるしずくの搾汁液はイチバンボシの搾汁液と比較して色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であることがわかった。
【0149】
[製造例]
製造例4.大麦茎葉の粉砕末試料
原料として、出穂前に刈り取ったニシノホシの茎葉を用いた。これを水洗いし、付着した泥などを除去し、5〜10cm程度の大きさに切断する前処理を行った。前処理した茎葉を、90〜100℃の熱湯で90秒間〜120秒間、1回のみブランチング処理し、その後、冷水で冷却した。続いて、得られた茎葉を、水分量が5質量%以下となるまで、乾燥機中で、20分間〜180分間、80℃〜130℃の温風にて乾燥させた。乾燥した茎葉を約1mmの大きさに粉砕処理した。得られた大麦の茎葉を、200メッシュ区分を90%以上が通過するように粉砕処理し、ニシノホシ茎葉の粉砕末試料を得た。
【0150】
ニシノホシの代わりに、イチバンボシ、シュンライ、トヨノカゼ及びサチホゴールデンを用いた以外は、ニシノホシ茎葉の粉砕末試料を得たのと同様にして、各大麦品種茎葉の粉砕末試料を得た。
【0151】
製造例5.大麦茎葉の搾汁末試料
原料として、出穂前に刈り取ったニシノホシの茎葉を用いた。得られた茎葉を、ジューサーを用いて搾汁することにより茎葉の搾汁液を得た。得られた搾汁液を凍結乾燥することにより、茎葉の搾汁末試料を得た。
【0152】
ニシノホシの代わりに、イチバンボシ、シュンライ、トヨノカゼ及びサチホゴールデンを用いた以外は、ニシノホシ茎葉の搾汁末試料を得たのと同様にして、各大麦品種茎葉の搾汁末試料を得た。
【0153】
[実施例4]大麦茎葉末の官能評価(4)
(1)サンプルの調製
製造例4で得た大麦茎葉の粉砕末試料(ニシノホシ、イチバンボシ、シュンライ、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの5品種)1.8gを、水100mLと混合して各サンプルを得た。これらのサンプルのうち、ニシノホシ茎葉の粉砕末試料から得られたサンプルを、標準品とした。なお、本評価においては、トヨノカゼ、サチホゴールデンの粉砕末を実施例サンプルとし、ニシノホシ、イチバンボシ、シュンライの粉砕末を比較例サンプルとした。
【0154】
被験者として、健常な成人6名を無作為に選出した。これらの被験者6名に対し、以下の評価例5−1〜5−2の官能評価を実施した。
(2)評価例5−1(色の鮮やかさ及び香りの良さ)
前記の被験者6名に、上記(1)で調製した各サンプルについて、標準品と比較して色が鮮やかであるか否か、標準品と比較して香りが良いか否かをアンケートに記入させた。具体的には、標準品と同等であるものを基準(4点)として、非常に良いものを7点、非常に悪いものを1点とした7段階で評価させた。
1点(非常に悪い)←――――4点(標準品と同等)―――――→7点(非常に良い)
【0155】
各サンプルについて、被験者の点数の平均点を算出し、その合計点を本評価の評価点とした。結果を
図9のグラフに示す。
図9に示すように、イチバンボシ及びシュンライの粉砕末はニシノホシの粉砕末と比較して色の鮮やかさ、香りの良さで優れているが、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末は、ニシノホシ、イチバンボシ及びシュンライのいずれの粉砕末と比較しても、色の鮮やかさ、香りの良さのいずれも優れていることがわかった。
【0156】
(3)評価例5−2(甘さ、えぐ味の弱さ、苦味の弱さ、青臭さ、舌触りの良さ、粉っぽさのなさ、コク、味の濃さ、口当たりの良さ、のどごし、後味)
前記6名の被験者に、上記(1)で調製した各サンプルを、標準品と飲み比べさせ、標準品と比較して、甘い、えぐ味が弱い、苦味が弱い、青臭くない、舌触りが良い、粉っぽさがない、コクがある、味が濃い、口当たりが良い、のどごしが良い、後味が良いと感じるか否かについて、ニシノホシの粉砕末サンプルを基準として、評価例5−1と同様の7段階の評価方法にて比較させ、アンケートに記入させた。各サンプルについての評価の平均点を算出し、その合計点を本評価の評価点とした。結果を
図10のグラフに示す。
図10に示すように、イチバンボシ及びシュンライの粉砕末はニシノホシの粉砕末と比較して全ての評価項目で優れているが、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末は、ニシノホシ、イチバンボシ及びシュンライのいずれの粉砕末と比較しても、全ての評価項目で優れており、特に、苦味の弱さ、コク、味の濃さは高い評価であることがわかった。
【0157】
以上より、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末は、ニシノホシの粉砕末と比較して色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であることがわかった。また、イチバンボシ及びシュンライの粉砕末は、ニシノホシの粉砕末と比較して色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であるが、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末はイチバンボシやシュンライの粉砕末と比較して、より色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であることがわかった。
【0158】
[実施例5]大麦茎葉末の官能評価(5)
(1)サンプルの調製
製造例1で得た大麦茎葉(ニシノホシ、イチバンボシ、シュンライ、トヨノカゼ及びサチホゴールデン)の粉砕末試料1.8gを、アルミフィルムバックに入れて密封し、60℃で3日間加熱した。加熱後、得られた粉末試料を水100mLと混合して各サンプルを得た。なお、標準品として、ニシノホシの加熱前の粉砕末試料1.8gと水100mLを混合したものを使用した。なお、本評価においては、加熱後のトヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末を実施例サンプルとし、加熱前のニシノホシ及び加熱後のニシノホシ、イチバンボシ、シュンライの粉砕末を比較例サンプルとした。
(2)評価例6−1(色の鮮やかさ及び香りの良さ)
前記の被験者6名に、上記(1)で調製した各サンプルについて、標準品と比較して色が鮮やかであるか否か、標準品と比較して香りが良いか否かをアンケートに記入させた。具体的には、標準品と同等であるものを基準(4点)として、非常に良いものを7点、非常に悪いものを1点とした7段階で評価させた。
1点(非常に悪い)←――――4点(標準品と同等)―――――→7点(非常に良い)
【0159】
各サンプルについて、被験者の点数の平均点を算出し、その合計点を本評価点として、
図11のグラフに示す。
図11に示すように、加熱後のニシノホシの粉砕末は加熱前のニシノホシの粉砕末と比較して色の鮮やかさ、香りの良さのいずれもが悪い結果であった。また、加熱後のイチバンボシ及びシュンライの粉砕末についても、加熱後のニシノホシの粉砕末と比較して全ての項目で優れているものの、加熱前のニシノホシの粉砕末と比較すると全ての項目で悪い結果であった。一方、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末は加熱後のニシノホシ、イチバンボシ、シュンライの粉砕末のみでなく、加熱前のニシノホシの粉砕末と比較しても優れたものであり、特に、香りの良さは評価であることがわかった。
【0160】
(3)評価例6−2(甘さ、えぐ味の弱さ、苦味の弱さ、青臭さ、舌触りの良さ、粉っぽさのなさ、コク、味の濃さ、口当たりの良さ、のどごし、後味)
前記6名の被験者に、上記(1)で調製した各サンプルを、標準品と飲み比べさせ、標準品と比較して、甘い、えぐ味が弱い、苦味が弱い、青臭くない、舌触りが良い、粉っぽさがない、コクがある、味が濃い、口当たりが良い、のどごしが良い、後味が良いと感じるか否かについて、加熱前のニシノホシの粉砕末サンプルを基準として、評価例5−1と同様の7段階の評価方法にて比較させ、アンケートに記入させた。各サンプルについての評価の平均点を算出し、その合計点を本評価の評価点とした。結果を
図12に示す。
図12に示すように、加熱後のニシノホシの粉砕末は加熱前のニシノホシの粉砕末と比較して全ての項目で悪い結果であった。また、加熱後のイチバンボシ及びシュンライの粉砕末についても、加熱後のニシノホシの粉砕末と比較して全ての項目で優れているものの、加熱前のニシノホシの粉砕末と比較すると全ての項目で悪い結果であった。一方、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末は加熱後のニシノホシ、イチバンボシ、シュンライの粉砕末のみでなく、加熱前のニシノホシの粉砕末と比較しても嗜好性に優れたものであった。特に、甘さ、コク、味の濃さ、後味は高い評価であることがわかった。
【0161】
以上より、加熱後のニシノホシ、イチバンボシ、シュンライの粉砕末は加熱前のニシノホシの粉砕末と比較して嗜好性が劣るものであったが、加熱後のトヨノカゼ、及びサチホゴールデンの粉砕末は、加熱前のニシノホシの粉砕末、及び、加熱後のイチバンボシ、シュンライの粉砕末と比較して色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であることがわかった。
【0162】
(4)評価例6−3(加熱前後の各項目の比較)
ニシノホシ、イチバンボシ、シュンライ、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末について、5−1,5−2で評価した加熱前の各粉砕末の各評価値を1とした場合の6−1,6−2で評価した加熱後の各評価値の割合を算出し、加熱による各評価項目の程度を比較した。結果を表2に示す。表2において、数値が大きいほど加熱前と同等の嗜好性であり、加熱による劣化が小さいことを示す。
【0163】
【表2】
【0164】
表2より、加熱後のニシノホシの粉砕末は、加熱前と比較すると、各項目の値は50〜71%と低いものであり、加熱による劣化が大きいことがわかった。また、加熱後のイチバンボシ、シュンライの粉砕末は、加熱前と比較すると各項目の値は60〜79%であり、ニシノホシの粉砕末ほどではないものの、加熱により劣化していることがわかった。一方、加熱後のトヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末は、各項目の値は78%以上と高いものであり、加熱前と比較していずれも劣化するものの、加熱後のニシノホシ、イチバンボシ及びシュンライの粉砕末の嗜好性の劣化の程度と比較して小さいものであった。特に、えぐ味の弱さ、舌触り、コク、味の濃さにおいては加熱前と比較しても劣化が小さいものであった。
【0165】
以上より、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの粉砕末は、ニシノホシ、イチバンボシ及びシュンライの粉砕末との品種間の比較において優れているのみならず、同一品種の熱安定性の比較においても優れた品種であることがわかった。
【0166】
[実施例6]大麦茎葉末の官能評価(6)
(1)サンプルの調製
製造例5で得た大麦茎葉の搾汁末試料(ニシノホシ、イチバンボシ、シュンライ、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの5品種)1.8gを、水100mLと混合して各サンプルを得た。これらのサンプルのうち、ニシノホシ茎葉の搾汁末試料から得られたサンプルを、標準品とした。なお、本評価においては、トヨノカゼ、サチホゴールデンの搾汁末を実施例サンプルとし、ニシノホシ、イチバンボシ、シュンライの搾汁末を比較例サンプルとした。
【0167】
被験者として、健常な成人6名を無作為に選出した。これらの被験者6名に対し、以下の評価例7−1〜7−2の官能評価を実施した。
(2)評価例7−1(色の鮮やかさ及び香りの良さ)
前記の被験者6名に、上記(1)で調製した各サンプルについて、標準品と比較して色が鮮やかであるか否か、標準品と比較して香りが良いか否かをアンケートに記入させた。具体的には、標準品と同等であるものを基準(4点)として、非常に良いものを7点、非常に悪いものを1点とした7段階で評価させた。
1点(非常に悪い)←――――4点(標準品と同等)―――――→7点(非常に良い)
【0168】
各サンプルについて、被験者の点数の平均点を算出し、その合計点を本評価点として、
図13のグラフに示す。
図13に示すように、イチバンボシ及びシュンライの搾汁末はニシノホシの搾汁末と比較して色の鮮やかさ、香りの良さで優れているが、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの搾汁末は、ニシノホシ、イチバンボシ及びシュンライのいずれの搾汁末と比較しても、色の鮮やかさ、香りの良さのいずれも優れていることがわかった。
【0169】
(3)評価例7−2(甘さ、えぐ味の弱さ、苦味の弱さ、青臭さ、舌触りの良さ、粉っぽさのなさ、コク、味の濃さ、口当たりの良さ、のどごし、後味)
前記6名の被験者に、上記(1)で調製した各サンプルを、標準品と飲み比べさせ、標準品と比較して、甘い、えぐ味が弱い、苦味が弱い、青臭くない、舌触りが良い、粉っぽさがない、コクがある、味が濃い、口当たりが良い、のどごしが良い、後味が良いと感じるか否かについて、ニシノホシの搾汁末を基準として、評価例7−1と同様の7段階の評価方法にて比較させ、アンケートに記入させた。各サンプルについての評価の平均点を算出し、その合計点を本評価の評価点とした。結果を
図14のグラフに示す。
図14に示すように、イチバンボシ及びシュンライの搾汁末はニシノホシの搾汁末と比較して全ての評価項目で優れているが、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの搾汁末は、ニシノホシ、イチバンボシ及びシュンライのいずれの搾汁末と比較しても、全ての評価項目で優れており、特に、甘さ、苦味のなさ、のどごし、後味は高い評価であることがわかった。
【0170】
以上、
図13及び
図14より、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの搾汁末は、ニシノホシの搾汁末と比較して色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であることがわかった。また、イチバンボシ及びシュンライの搾汁末は、ニシノホシの搾汁末と比較して色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であるが、トヨノカゼ及びサチホゴールデンの搾汁末はイチバンボシの搾汁末と比較して、より色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れた組成物であることがわかった。
【0171】
[実施例7]特定成分を含有する飲食用組成物
1.組成物の調整
以下の表3〜表6に示す配合を有する組成物を製造した。数値については、特に断りがない限り、質量%を表わす。同表中、大麦としては、大麦茎葉の粉砕末を用いた。水溶性食物繊維としては、難消化性デキストリンを用いた。オリゴ糖としては、イソマルトオリゴ糖を用いた。乳酸菌としては、Enterococcus faecalis(Streptococcus faecalis)を用いた。同表に記載の各成分のうち、大麦茎葉粉末は、製造例1に記載の方法で製造した。水溶性食物繊維、オリゴ糖及び乳酸菌は、市販品を用いた。
【0172】
本試験に使用したサンプルの概要は以下のとおりである。
(ア)大麦茎葉の粉砕末、水溶性食物繊維、オリゴ糖、乳酸菌の4成分全てを含有するもの(サンプルA〜B、1〜28)
(イ)大麦茎葉の粉砕末、水溶性食物繊維、オリゴ糖、乳酸菌の4成分のうち、いずれか3成分を含有するもの(サンプルC〜O)
サンプルの詳細を表3〜6に示す。
【0173】
【表3】
【0174】
【表4】
【0175】
【表5】
【0176】
【表6】
【0177】
2.官能評価(I)
(1)サンプルの調製
上記表2及び3に記載のサンプルA〜O及びサンプル1〜4について、各サンプル3gを、水100mLと混合して各試験サンプルを得た。これらの試験サンプルのうち、サンプルAを標準品とした。
【0178】
被験者として、健常な成人5名を無作為に選出した。これらの被験者5名に対し、以下の評価例8−1〜8−2の官能評価を実施した。
【0179】
(2)評価例8−1(色の鮮やかさ及び香りの良さ)
前記の被験者5名に、上記(1)で調製した各サンプルについて、標準品と比較して色が鮮やかであるか否か、標準品と比較して香りが良いか否かをアンケートに記入させた。具体的には、標準品と同等であるものを基準(4点)として、非常に良いものを7点、非常に悪いものを1点とした7段階で評価させた。
1点(非常に悪い)←――――4点(標準品と同等)―――――→7点(非常に良い)
【0180】
各サンプルについて、被験者の点数の平均点を算出し、各項目の平均点と基準点(4点)の差を算出し、その合計点を本評価点として、
図15のグラフに示す。
図15において、標準品と比較して高評価であった項目はプラスで表記され、低評価であったものはマイナスで表記される。
図15に示すように、大麦茎葉の粉砕末、乳酸菌、オリゴ糖、水溶性食物繊維のうち、いずれかを含有していないサンプル(C〜O)はサンプルA及びBと比較して色の鮮やかさ、香りの良さで劣るものであることがわかった。また、大麦茎葉の粉砕末、水溶性食物繊維、オリゴ糖、乳酸菌の4成分を含有するサンプルBはサンプルAと比較して色の鮮やかさで優れているが、香りの良さで劣るものであった。一方、サンプル1〜4は、サンプルA〜Oのいずれのサンプルと比較しても、色の鮮やかさ、香りの良さのいずれも優れていることがわかった。
【0181】
(3)評価例8−2(甘さ、えぐ味の弱さ、苦味の弱さ、青臭さ、コク、味の濃さ、口当たりの良さ、のどごし、後味)
前記5名の被験者に、上記(1)で調製した各サンプルを、標準品と飲み比べさせ、標準品と比較して、甘い、えぐ味が弱い、苦味が弱い、青臭くない、コクがある、味が濃い、口当たりが良い、のどごしが良い、後味が良いと感じるか否かについて、サンプルAを基準として、評価例1−1と同様の7段階の評価方法にて比較させ、アンケートに記入させた。各サンプルについての評価の平均点を算出し、各項目の平均点と基準点(4点)の差を算出し、その合計点を本評価の評価点として、
図16のグラフに示す。
図16において、標準品と比較して高評価であった項目はプラスで表記され、低評価であったものはマイナスで表記される。
図16に示すように、大麦茎葉の粉砕末、乳酸菌、オリゴ糖、水溶性食物繊維のうち、いずれかを含有していないサンプルのうち、C〜I,K〜Nは、サンプルAと比較して全ての項目で同等又は劣るものであり、サンプルJは苦味の弱さ、青臭さの項目で優れているものの、その他の項目で劣るものであり、サンプルOは青臭さの項目で優れているものの、その他の項目で同等又は劣るものであることがわかった。また、大麦茎葉の粉砕末、水溶性食物繊維、オリゴ糖、乳酸菌の4成分を含有するサンプルBはサンプルAと比較して、甘さ、えぐ味、青臭さ、コクの項目で優れていたが、口当たりの良さ、のどごしの項目で劣るものであることがわかった。一方、サンプル1〜4は、サンプルA〜Oのいずれのサンプルと比較しても、全ての項目で優れていた。
【0182】
以上の結果より、カシマムギ、マンネンボシ、ダイシモチ及びはるしずくのいずれかの大麦茎葉の粉砕末、水溶性食物繊維、オリゴ糖及び乳酸菌の4成分を全て含有する本発明の飲食用組成物は、大麦の茎葉の粉砕末、水溶性食物繊維、オリゴ糖及び乳酸菌のうちいずれか3成分を含有する場合や、大麦の茎葉の粉砕末としてニシノホシやイチバンボシのいずれかを用いた場合と比較して、色が鮮やかで香りが良く、嗜好性に優れる組成物であった。すなわち、本発明の飲食用組成物の嗜好性は特定成分の組み合わせのみでなく、大麦の品種にも大きく影響を受けるものであり、特定品種の大麦を使用することにより嗜好性に優れた飲食用組成物が得られることがわかった。
【0183】
2.官能評価(II)
(1)サンプルの調製
上記表3〜5に記載のサンプル1〜28について、各サンプル3gを、水100mLと混合して各サンプルを得た。これらのサンプルのうち、表3に記載のサンプル1〜4を、標準品とした。
【0184】
被験者として、健常な成人5名を無作為に選出した。これらの被験者5名に対し、以下の評価例9−1〜9−2の官能評価を実施した。
【0185】
(2)評価例9−1(色の鮮やかさ及び香りの良さ)
前記被験者5名に、上記(1)で調製した各サンプルについて、標準品と比較して色が鮮やかであるか否か、標準品と比較して香りが良いか否かをアンケートに記入させた。具体的には、標準品と同等であるものを基準(4点)として、非常に良いものを7点、非常に悪いものを1点とした7段階で評価させた。
1点(非常に悪い)←――――4点(標準品と同等)―――――→7点(非常に良い)
【0186】
各サンプルについて、被験者の点数の平均点を算出し、その合計点を色の鮮やかさ及び香りの良さの評価点として、
図17、19、21及び23のグラフに示す。
図17、19、21及び23に示すように、カシマムギ、マンネンボシ、ダイシモチ及びはるしずくのいずれかの大麦茎葉の粉砕末、水溶性食物繊維、オリゴ糖及び乳酸菌の4成分を全て含有する本発明の飲食用組成物は、各成分の配合比を特定の割合で変化させた場合であっても、基準サンプルと同等の評価結果を示しており、色が鮮やかであり、かつ、香りが良いものであることがわかった。
【0187】
(3)評価例9−2(甘さ、えぐ味の弱さ、苦味の弱さ、青臭さ、コク、味の濃さ、口当たりの良さ、のどごし、後味)
前記5名の被験者に、上記(1)で調製した各サンプルを、標準品と飲み比べさせ、標準品と比較して、甘い、えぐ味が弱い、苦味が弱い、青臭くない、コクがある、味が濃い、口当たりが良い、のどごしが良い、後味が良いと感じるか否かについて、サンプルAを基準として、評価例8−1と同様の7段階の評価方法にて比較させ、アンケートに記入させた。各サンプルについての評価の平均点を算出し、合計点を本評価の評価点として、
図18、20、22及び24のグラフに示す。
図18、20、22及び24に示すように、カシマムギ、マンネンボシ、ダイシモチ及びはるしずくのいずれかの大麦茎葉の粉砕末、水溶性食物繊維、オリゴ糖及び乳酸菌の4成分を全て含有する本発明の飲食用組成物は、各成分の配合比を特定の割合で変化させた場合であっても、基準サンプルと同等の評価結果を示しており、嗜好性に優れたものであることがわかった。
【0188】
以上の結果より、カシマムギ、マンネンボシ、ダイシモチ及びはるしずくのうち少なくとも1種の大麦茎葉の粉砕末、水溶性食物繊維、オリゴ糖及び乳酸菌の4成分を用いる本発明の飲食用組成物は、各成分配合比を特定の割合で変化させた場合であっても、色が鮮やかであり、香りが良く、嗜好性に優れた飲食用組成物として適したものであることが示された。
【0189】
[実施例8]乳酸菌増殖評価
製造例1に記載の方法にてマンネンボシ、はるしずく、ダイシモチ、カシマムギ、ニシノホシ及びシュンライの茎葉の粉砕末試料を得、得られた各大麦の粉砕末試料について、生体内での乳酸菌増殖効果のモデル試験として、以下の乳酸菌増殖試験を実施した。本発明の実施例として、マンネンボシ、はるしずく、ダイシモチ及びカシマムギを用い、比較例としてニシノホシ及びシュンライを用いた。
【0190】
(乳酸菌用培地の作成)
各粉末試料0.1gをそれぞれ試験管に量りとり、食品衛生検査指針に準じて作製したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)10mLで懸濁させた。これをオートクレーブにて121℃、20minの条件で滅菌し、乳酸菌用培地を得た。
【0191】
(乳酸菌の培養)
乳酸菌として、CELL BIOTECH製 Enterococcus faecalis(Streptococcus faecalis)の乾燥菌体(白色微粉末) 1×10
11個/gを使用した。この乾燥菌体約10mgを試験管にとり、MRS Broth(MERCK社製)10mLで懸濁させ、37℃で約18時間培養した。得られた懸濁液を10000倍まで段階希釈したもの0.1mLを、前記で得られた各乳酸菌用培地10mLに添加し、37℃、4時間の条件で静置培養を行った。これらの培養液について、培養開始より0、4時間時点の菌数測定(CFU/mL)を行った。CFU測定は、具体的には、MRS Ager(MERCK社製)の寒天プレートに、適宜希釈した各培養時点の培養液100μlを付したものを、35℃で24時間インキュベートした後、コロニー数を計数することによって行った。菌数測定値(CFU/mL)を、乳酸菌数として下記の表7に示す。
【0192】
【表7】
【0193】
表7に示す結果から、比較例であるニシノホシ及びシュンライの茎葉の粉砕末と比較して、本願発明の実施例であるマンネンボシ、はるしずく、ダイシモチ及びカシマムギの茎葉の粉砕末を用いて乳酸菌を培養すると、乳酸菌が良好に増殖することがわかった。特に、乳酸菌増殖効果が知られている大麦の品種であるシュンライと比較して、本発明の実施例であるマンネンボシ、はるしずく、ダイシモチ及びカシマムギは1.7〜6.3倍、増加しており、これらの大麦の茎葉から得られる粉砕末は、優れた乳酸菌増殖能を有することがわかった。
【0194】
[実施例9]熊本県阿蘇地域又は佐賀県鳥栖地域で栽培された大麦の茎葉の粉末中の成分含有量評価
(1)総アミノ酸量
2015年春に阿蘇地域及び鳥栖地域において栽培した、はるしずく、ダイシモチ、マンネンボシ、イチバンボシ及びニシノホシの茎葉について、アミノ酸の含有量(各アミノ酸量、総アミノ酸量)を測定した。播種から60〜67日間栽培し、茎葉を収穫した。これを製造例1の方法にて加工し、各大麦の茎葉の粉砕末を得た。本試験においては、実施例として阿蘇地域で栽培したはるしずく、ダイシモチ、マンネンボシ、イチバンボシを用い、比較例として鳥栖地域で栽培したはるしずく、ダイシモチ、マンネンボシ、イチバンボシ、ニシノホシ及び阿蘇地域で栽培したニシノホシを用いた。
【0195】
得られた茎葉の粉砕末100g当たりのアミノ酸の含有量(総アミノ酸量)を、HPLCを用いた自動プレカラム誘導体化法で測定した。なお、上記した茎葉の粉砕末500mLに0.1N HCl 500μLを加え、よく混ぜ、15,000rpm、10分間遠心分離し、上清を0.45μmのメンブレンフィルターでろ過したものを試料溶液とした。結果を表8に示す。
【0196】
【表8】
【0197】
表8より、鳥栖地域で栽培した大麦の茎葉と比較して阿蘇地域で栽培した大麦の茎葉のほうが、総アミノ酸量及びアスパラギン酸、セリン、アルギニン、アラニン、チロシン、システイン及びフェニルアラニンの各アミノ酸のいずれも多いという結果であった。このことから、鳥栖地域と比較して阿蘇地域のほうが栄養価の高い大麦の茎葉を得られることがわかった。また、同じ阿蘇地域で栽培された大麦の茎葉について比較したところ、ニシノホシと比較して、はるしずく、ダイシモチ、マンネンボシ及びイチバンボシは総アミノ酸量や、各種アミノ酸量のいずれも多いという結果であった。このことから、同じ阿蘇地域で栽培した場合であっても、特定の品種(はるしずく、ダイシモチ、マンネンボシ及びイチバンボシ)のほうがニシノホシと比較して各種アミノ酸や総アミノ酸の含有量が多く、栄養価の高い大麦の茎葉を得られることがわかった。
【0198】
(2)総クロロフィル量
2015年春に阿蘇地域及び鳥栖地域において栽培した、はるしずく、マンネンボシ、イチバンボシ及びニシノホシの茎葉について、総クロロフィル量を測定した。播種から60〜67日間栽培し、茎葉を収穫した。これを製造例1の方法にて加工し、各大麦の茎葉の粉砕末を得た。本試験においては、実施例として阿蘇地域で栽培したはるしずく、マンネンボシ、イチバンボシを用い、比較例として鳥栖地域で栽培したはるしずく、マンネンボシ、イチバンボシ、ニシノホシ及び阿蘇地域で栽培したニシノホシを用いた。
【0199】
上記茎葉の粉砕末について、総クロロフィル量を測定した。上記した茎葉の粉砕末200μgにアセトン800μLと炭酸カルシウムを少量加え、よく混ぜ、1日暗室に静置した。遠心分離(15,000rpm、5分間)を行い、上澄みを試料原液とした。試料原液を80vol%アセトンで希釈したものを試料溶液とし、200μLずつ96ウェルプレートに分注した。バリオスキャンにて750nmで、663nm及び645nmの吸光度を測定した。クロロフィル量[mg/100g]は以下の計算式で求めた。
クロロフィルa[μg/mL]=12.7×(A
663−A
750)−2.59×(A
645−A
750)
クロロフィルb[μg/mL]=−4.67×(A
663−A
750)+22.9×(A
645−A
750)
クロロフィル量[mg/100g]=(クロロフィルa+b)[μg/mL]×希釈倍率×0.1
A
750:750nmの吸光度
A
663:663nmの吸光度
A
645:645nmの吸光度
結果を表9に示す。
【0200】
【表9】
【0201】
表9より、ニシノホシは鳥栖地域で栽培したものと比較して阿蘇地域で栽培したもののほうが、総クロロフィル量が少ないという結果であった。一方、はるしずく、マンネンボシ及びイチバンボシは鳥栖地域で栽培したものと比較して阿蘇地域で栽培したもののほうが、総クロロフィル量が多いという結果であった。以上より、はるしずく、マンネンボシ及びイチバンボシは阿蘇地域で栽培することにより色が鮮やかな大麦の茎葉を得られることがわかった。また、同じ阿蘇地域で栽培した場合であっても、特定の品種(はるしずく、マンネンボシ及びイチバンボシ)のほうが、ニシノホシと比較して総クロロフィル量が多く、栄養価の高い大麦の茎葉を得られることがわかった。
【0202】
(3)総ポリフェノール量
2015年春に阿蘇地域及び鳥栖地域において栽培した、ダイシモチ、マンネンボシ、イチバンボシ及びニシノホシの茎葉について、総ポリフェノール量を測定した。播種から60〜67日間栽培し、茎葉を収穫した。これを製造例1の方法にて加工し、各大麦の茎葉の粉砕末を得た。本試験においては、実施例として阿蘇地域で栽培したダイシモチ、マンネンボシ、イチバンボシを用い、比較例として鳥栖地域で栽培したダイシモチ、マンネンボシ、イチバンボシ、ニシノホシ及び阿蘇地域で栽培したニシノホシを用いた。
【0203】
上記茎葉の粉砕末について、Folin−Denis法(財団法人日本食品分析センター編集、五訂日本食品標準成分表分析マニュアルの解説)により総ポリフェノール量を測定した。具体的には、アミノ酸分析用試料溶液と同様の調製方法にて得られた溶液を純水にて100倍希釈したものを総ポリフェノール用の試料溶液とした。試料溶液 300μLとFolin試薬 300μLを混合し、3分間放置した後、10wt%炭酸ナトリウム水溶液 300μLを加え、暗所にて1時間放置した。各試験溶液を遠心分離(13,000rpm、20分間)し、上清を200μLずつ96ウェルプレートに分注した。バリオスキャンにて吸光度730nmで、標準品としてクロロゲン酸を使用して、相対値として総ポリフェノール量(%)を測定した。結果を表10に示す。
【0204】
【表10】
【0205】
表10より、鳥栖地域で栽培したものと比較して阿蘇地域で栽培したもののほうが、総ポリフェノール量が多いという結果であった。さらに、ダイシモチ、マンネンボシ及びイチバンボシは総ポリフェノール量が200mg/100g以上であり、同じ阿蘇地域で栽培されたニシノホシと比較して総ポリフェノール量が多いという結果であった。このことより、ダイシモチ、マンネンボシ、イチバンボシについては阿蘇地域で栽培することにより、ポリフェノール含有量が多く、栄養価の高い大麦の茎葉が得られることがわかった。
【0206】
これらの結果から、阿蘇地域で栽培された特定の品種(はるしずく、ダイシモチ、マンネンボシ及びイチバンボシ)の茎葉は、鳥栖地域で栽培されたものよりも、栄養が豊富であり、かつ、風味が良好であり、見た目が美しいことから嗜好性が高いことがわかった。また、これらの品種の大麦の茎葉は同じ阿蘇地域で栽培したニシノホシの茎葉に比べて栄養価が高く、かつ、風味が良好であり、見た目が美しいことから嗜好性が高いことがわかった。したがって、阿蘇地域で栽培されたマンネンボシ、ダイシモチ、イチバンボシ、はるしずくの茎葉から得られる乾燥粉末は、栄養が豊富であり、かつ、風味が良好であり、見た目が美しいことから嗜好性が高いため、青汁用の飲食用組成物に適していることがわかる。
【0207】
[実施例10]黒ボク土又は赤土を用いて栽培した大麦の栽培適正評価
1.黒ボク土を用いた栽培
プランターに黒ボク土を入れ、プランター毎に、ニシノホシ、カシマムギ、マンネンボシ及びダイシモチの4品種の種4.8g(20g/m
2)を播種した。給水や雑草管理などの通常の植物栽培法により、上記4品種の大麦を栽培した。
【0208】
2.赤土を用いた栽培
黒ボク土の代わりに、赤土を用いた以外は、上記1と同様にして、大麦を栽培した。なお、赤土は、天日干しにより乾燥させ、固まっている部分を破砕したものを用いた。
【0209】
黒ボク土及び赤土の土壌分析データの一例は表11のとおりである。
【0210】
【表11】
【0211】
栽培中のニシノホシ、カシマムギ、マンネンボシ及びダイシモチについて、播種後28日目に、丈(長さ)、葉幅(幅)及び色を測定した。丈、葉幅は数値が大きいほど生育度が高いことを示し、色は葉色スケールを使用し、数値が大きいほど色合いが良いことを示す。黒ボク土及び赤土の測定値を表12に示す。
【0212】
【表12】
【0213】
表12に示されているとおり、黒ボク土で栽培したカシマムギ、マンネンボシ及びダイシモチの丈、葉幅及び色は、赤土で栽培したものと比較して優れているばかりか、驚くべきことに黒ボク土で栽培したニシノホシのものよりも優れていた。また、このような結果から、カシマムギ、マンネンボシ及びダイシモチについては、黒ボク土で栽培する方が、赤土で栽培するよりも、生育度を高めることができることがわかった。