【課題】難聴、部分的聴力欠失、内耳有毛細胞の障害または欠失による前庭難聴、変形関節症及び異常細胞増殖の治療のための治療用薬剤としてのatonal関連核酸またはアミノ酸配列、又は任意のそのホモログまたはオーソログの特徴付け及び使用の提供。
【解決手段】動物において、治療用の内耳の機械的受容細胞増殖を促進するための、Atonal関連アミノ酸配列または核酸配列を含有する組成物であって、該Atonal関連アミノ酸配列は配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%同一性を有するポリペプチドを有し、または該Atonal関連核酸配列は、配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%同一性を有するポリペプチドをコードする、組成物。
前記検出可能な状態が有毛細胞の損失、小脳性顆粒ニューロン欠損症、聴覚障害、平衡失調、関節疾患、変形性関節症および細胞の異常増殖からなる群より選ばれる、請求項5に記載の動物。
動物における化合物のスクリーニング方法であって、前記化合物はatonal関連核酸配列の発現に影響を及ぼし、下記:前記化合物を前記動物に送達すること、ここで、前記動物は、異種核酸配列の挿入により不活性化されたatonal関連核酸配列の少なくとも1つの対立遺伝子を有し、前記異種核酸配列は、atonal関連調節配列の制御下にある;および前記atonal関連核酸配列の前記発現における変化を監視することを含む方法。
動物における化合物のスクリーニング方法であって、前記化合物は前記動物において検出可能な状態に影響を及ぼし、下記:前記化合物を前記動物に送達すること、ここで、前記動物におけるatonal関連核酸配列の少なくとも1つの対立遺伝子は、異種核酸配列の挿入により不活性化され、前記異種核酸配列は、atonal関連調節配列の制御下にある;および前記動物を検出可能な状態における変化について監視することを含む方法。
小脳性顆粒ニューロンまたはその前駆体における欠損を有する動物の治療方法であって、atonal関連アミノ酸配列または核酸配列の治療上有効量を前記動物の細胞に送達することを含む方法。
atonal関連核酸またはアミノ酸配列の機能損失の結果である疾患に関する動物の治療方法であって、atonal関連アミノ酸配列または核酸配列の治療上有効量を前記動物の細胞に送達することを含む方法。
前記アミノ酸配列または核酸配列が送達ビーイクルにより送達され、前記送達ビーイクルがアデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、プラスミド、リポソーム、核酸、ペプチド、脂質、炭水化物およびそれらの組合せからなる群より選ばれる、請求項18、19、20、21、22、23、24、25または26に記載の方法。
前記アミノ酸配列または核酸配列が送達ビーイクルにより送達され、前記送達ビーイクルがウイルスベクターまたは非ウイルスベクターからなる群より選ばれる、請求項18、19、20、21、22、23、24、25または26に記載の方法。
前記アミノ酸配列または核酸配列が送達ビーイクルにより送達され、前記送達ビーイクルが細胞である、請求項18、19、20、21、22、23、24、25または26に記載の方法。
前記アミノ酸配列が配列番号58(Hath1)の約20個のコンティグアミノ酸残基と少なくとも約80%の同一性を有する、請求項18、19、20、21、22、23、24、25または26に記載の方法。
前記核酸配列が配列番号58(Hath1)の約20個のコンティグアミノ酸残基と少なくとも約80%の同一性を有するポリペプチドをコードする、請求項18、19、20、21、22、23、24、25または26に記載の方法。
atonal関連アミノ酸配列または核酸配列を送達ビーイクルと組合せて含有する組成物であって、前記送達ビーイクルは、atonal関連核酸配列またはアミノ酸配列の治療上有効量の細胞への送達を導く組成物。
前記ベクターがアデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、プラスミド、リポソーム、タンパク質、脂質、炭水化物および前記ビーイクルの組合せからなる群より選ばれる、請求項41に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0034】
種々の実施形態および変更を、本発明の範囲および意図より逸脱することなく、本明細書で開示した発明になされてもよいことが当業者にて容易に明らかになる。
【0035】
本明細書で使用する、「異常増殖」なる用語は、細胞の任意の細胞型の任意の増殖と定義し、上記細胞は正常の細胞周期進行の強制下にはなく、上記増殖は、結果として癌または他の癌のような発達となる可能性がある。
【0036】
本明細書で使用する、「変化」なる用語は、核酸またはアミノ酸に対する任意の型の変化または改変として定義する。上記変化または改変には、突然変異、欠失、配置転換、核酸の添加が含まれる。これには、5’キャップの添加、イントロンプロセッシングおよびポリアデニル化のような転写後プロセッシングが含まれる。突然変異は、ナンセンス、ミスセンス、フレームシフトであり、または短くしたアミノ酸配列を導くことができ、またはアミノ酸の構造を変化させることができる。核酸に対する変化は、調節配列内に存在してもよく、トランス作動性因子に影響を与えてよい。また、多重変化が存在してもよい。また、上記変化または改変には、メチル化、ミリスチル化、アセチル化、グルコシル化を含むアミノ酸に対する変更、または細胞内または細胞間局在化シグナルおよび外来アミノ酸の開裂を含む上記アミノ酸のプロセッシングに関連したシグナルに対する変更が含まれる。また、上記変化は、上記タンパク質の変性または折り畳みにも影響を及ぼすことができる。
【0037】
本明細書で使用する「atonal関連」なる用語は、ショウジョウバエatonal核酸配列またはアミノ酸配列である任意の核酸配列またはアミノ酸配列、またはそれぞれ上記核酸またはアミノ酸配列と相同である任意の配列または類似性を有する特定の配列として定義する。配列は、哺乳動物および昆虫を含む任意の動物に存在し得る。本明細書で使用する有意な配列類似性は、25%より大きな類似性を意味し、他方の配列の任意の領域で生じ得る。atonal関連には、特に限定されないが、Math1(マウスatonalホモログ1(
mouse
atonal
homolog
1))、Cath1(チキンatonalホモログ (
chicken
atonal
homolog
1))、Hath1(ヒトatonalホモログ(
human
atonal
homolog
1))およびXath1(アフリカツメガエルatonalホモログ1(
Xenopus
atonal
homolog
1))が含まれる。さらに多重相同性または類似配列が動物内に存在し得る。
【0038】
本明細書で使用する「小脳顆粒ニューロン欠損症」なる用語は、小脳顆粒ニューロンに関連する任意の欠損症として定義し、小脳顆粒ニューロンの欠失、小脳顆粒ニューロン前駆体細胞の欠失、顆粒細胞増殖の欠如、顆粒細胞移動の欠如、小脳外部顆粒層細胞の欠如が含まれる。
【0039】
本明細書で使用する「欠損」なる用語は、atonal関連配列の発現の変更、突然変異、欠陥または欠失として定義する。当業者は、発現の欠失が、本技術分野での標準の方法にて有意でないかまたは検出可能でないatonal関連配列の発現レベルに関連することを承知している。当業者はまた、ヒトのような成体生物での発現レベルの欠失または欠乏は自然に生じ、長い間に聴力の傷害を導くことも承知している。したがって、本明細書で使用する「欠損」には、atonal関連配列の発現の自然な減少または欠失が含まれる。
【0040】
本明細書で使用する「送達すること」なる用語は、目的地まで移動することと定義し、治療的目的のためとして投与することが含まれる。
【0041】
本明細書で使用する「送達ビーイクル」なる用語は、他方の存在の移動に関連した存在物として定義する。上記送達ビーイクルは、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ベクター、プラスミド、リポソーム、核酸、ペプチド、脂質、炭水化物およびそれらの組合せからなる群より選択する。
【0042】
本明細書で使用する「検出可能状態」なる用語は、健康状態、または特定の発生学的、または病理学的症状によって特徴付けられる動物、器官または組織の状態として定義する。例としては、限定されないが、有毛細胞の欠失、小脳顆粒ニューロン欠損症、聴力障害、平衡失調、関節疾患、変形関節症および細胞の異常増殖が挙げられる。
【0043】
本明細書で使用する「異種の」なる用語は、特定の遺伝子座に天然には存在しない核酸配列、またはそれに関連する核酸配列として定義する。代替的な実施形態において、異種核酸配列は、特定の遺伝子座には天然に存在するが、しかし天然に存在する遺伝子座と比較して分子変化を含む。例えば、atonal関連配列の野生型遺伝子座を、同一の配列の欠陥コピーを置換するのに使用してよい。
【0044】
本明細書で使用する「平衡失調」なる用語は、生物が十分に機能を果たさない平衡を持つような医学的状態として定義する。詳細な実施形態において、失調は前庭起始の欠陥による。他方の詳細な実施形態において、失調は、メニエール病、めまいおよびlayrinthitisに限定されないが、これらを含む平衡認知の前庭失調である。
【0045】
本明細書で使用する「不活性化した」なる用語は、核酸配列の発現が減少しているかまたは完全に消滅している状態として定義する。上記不活性化は、他の核酸配列の輸送または挿入によって、または核酸配列の発現レベルに影響を及ぼすための、本技術分野で標準の任意の方法によって起こりうる。
【0046】
本明細書で使用する「前駆体」なる用語は、他の細胞がその由来および/または特性を得る始原細胞として定義する。
【0047】
本明細書で使用する「調節可能レポーター配列」なる用語は、他の配列の転写を指向する、そしてそれ自身が外来性因子または状態による調節制御下にある任意の配列として定義する。外来因子または状態には、限定はされないが、化学物質、核酸、タンパク質、ペプチド、脂質、炭水化物、糖、光、音、ホルモン、接触、または組織特異的環境への曝露等が含まれる。調節可能レポーター配列には、GALプロモーター配列およびテトラサイクリンプロモーター/トランスアクティベーター配列等が含まれる。
【0048】
本明細書で使用する「調節配列」なる用語は、直接的または間接的に他の配列の転写を制御する任意の配列として定義する。上記制御は転写の開始または停止に関するか、または転写の量または組織分布のいずれかであってよい。
【0049】
本発明で使用する「レポーター配列」なる用語は、調節配列による発現を実証する任意の配列として定義する。上記レポーター配列は、RNAの形態またはタンパク質でのマーカーとして使用できる。レポーター配列には、β−ガラクトシダーゼ、グリーンフルオレセインタンパク質(GFP)、ブルーフルオレセインタンパク質(BFP)、ネオマイシン、カナマイシン、ルシフェラーゼ、β−グルクロニダーゼおよびクロラムフェニコールトランスフェラーゼ(CAT)等が挙げられる。本発明の特定の局面において、レポーター配列産物の存在および量は、核酸であろうとまたはアミノ酸であろうと、それを調節するプロモーター配列による転写のレベルを反映する。
【0050】
本明細書で使用する「治療上有効」なる用語は、疾患に関連したいくつかの症状を改善するために必要な化合物の量として定義する。例えば、聴覚障害の治療において、任意の程度まで聴覚を改善し、または聴覚障害の任意の症状を抑える化合物が治療上有効である。関節疾患の治療において、健康または関節の動きを任意の程度まで改善し、または関節疾患の症状を抑える化合物が治療上有効である。細胞の異常増殖の治療において、増殖を減少させる化合物が治療上有効である。癌の治療において、例えば、細胞の増殖を減少させ、腫瘍の大きさを減少させ、転移を減少させ、上記癌に対する血管の増殖を減少させる、癌に対する免疫応答を促進する化合物が治療上有効である。化合物の治療上有効な量は、疾患を治すためには必要ではないが、しかし疾患に対する治療を提供する可能性がある。
【0051】
本明細書で使用する「ベクター」なる用語は、特定の存在物を送達するための生物学的ビーイクルとして定義する。詳細な実施形態において、上記存在物はatonal関連核酸である。
【0052】
本発明の1つの局面において、有毛細胞の欠失、小脳顆粒ニューロン欠損症、聴力障害、平衡失調、関節疾患、変形関節症および細胞の異常増殖のような検出可能な状態の治療用途のためのatonal関連核酸またはアミノ酸配列の使用を含む方法および薬剤がある。したがって、Cath1(チキンより)、Hath1(ヒトより)、Math1(マウスより)またはXath1(アフリカツメガエル(Xenopus)より)に限定されないがこれらを含む、ショウジョウバエ由来のatonalの任意のホモログまたはオーソログを本発明で使用してよい。好適な実施形態において、これらの配列は、上述した検出可能条件に対する動物、とりわけヒトの治療を指向している。それぞれ上記核酸またはアミノ酸配列に対して相同であるか、または有意な配列類似性を有する任意の配列を含むことは本発明の範囲内である。配列は、哺乳動物および昆虫を含む任意の動物で存在し得る。本明細書で使用したように、有意な配列類似性とは、類似性(アミノ酸残基または核酸塩基の同一性)が25%以上であり、配列の任意の領域で起こり得ることを意味する。他方の実施形態において、本明細書で使用するatonal関連配列は、約50%以上の配列類似性、約70%以上の類似性、または約80%以上の類似性を有する。
【0053】
本発明の範囲内には、atonal関連核酸配列またはアミノ酸配列を用いることが含まれ、ここで、塩基性HLH領域のような、活性に関して重要な領域が分子内に含まれ、さらに活性に重要な領域の部分ではなく、その機能に影響を与えない核酸またはアミノ酸配列の領域内での変更、変異、欠失または置換が含まれる。
【0054】
atonal関連物の例には、限定はされないが、Math1(マウスatonalホモログ1)、Cath1(チキンatonalホモログ)、Hath1(ヒトatonalホモログ)およびXath1(アフリカツメガエルatonalホモログ1)が含まれる。このような例は、他の物が関連する生物で存在する可能性が非常にあるが、配列番号1〜配列番号66で表す。当業者は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/Genbank/GenbankSearch.html上の、ワールドワイドウェブにある核酸およびアミノ酸配列のデータベースコレクションを検索することのような、有意に同一性を有するそのような配列を同定するための方法を認識している。
【0055】
本明細書で提供された配列および関連するジーンバンク受け入れ(GenbankAccession)番号は、以下のようにかっこ内で列記している。配列番号1(NM_005172)、配列番号2(NP_005163.1)、配列番号3(AW413228)、配列番号4(NM_009719)、配列番号5(NP_033849.1)、配列番号6(NM_009718)、配列番号7(NP_033848.1)、配列番号8(NM_009717)、配列番号9(NP_033847.1)、配列番号10(NM_007500)、配列番号11(NP_031526.1)、配列番号12(NM_007501)、配列番号13(AW280518)、配列番号14(AW236965)、配列番号15(AW163683)、配列番号16(AF134869)、配列番号17(AAD31451.1)、配列番号18(AJ012660)、配列番号19(CAA10106.1)、配列番号20(AJ012659)、配列番号21(CAA10105.1)、配列番号22(AF071223)、配列番号23(AAC68868.1)、配列番号24(U76208)、配列番号25(AAC53029.1)、配列番号26(U76210)、配列番号27(AAC53033.1)、配列番号28(U76209)、配列番号29(AAC53032.1)、配列番号30(U76207)、配列番号31(AAC53028.1)、配列番号32(AF036257)、配列番号33(AAC15969.1)、配列番号34(AF034778)、配列番号35(AJ001178)、配列番号36(CAA04572.1)、配列番号37(Y07621)、配列番号38(CAA68900.1)、配列番号39(AF024536)、配列番号40(AAB82272.1)、配列番号41(D85188)、配列番号42(BAA12738.1)、配列番号43(D44480)、配列番号44(BAA07923.1)、配列番号45(D43694)、配列番号46(BAA07791.1)、配列番号47(D85845)、配列番号48(BAA12880.1)、配列番号49(U93171)、配列番号50 (AAB58669.1)、配列番号51(U93170)、配列番号52(AAB58668.1)、配列番号53(U61152)、配列番号54(AAB41307.1)、配列番号55(U61151)、配列番号56(AAB41306.1)、配列番号57(U61148)、配列番号58(AAB41305.1)、配列番号59(U61149)、配列番号60(AAB41304.1)、配列番号61(U61150)、配列番号62(AAB41303.1)、配列番号63(L36646)、配列番号64(AAA21879.1)、配列番号69(AA625732)。
【0056】
本発明の局面において、異種核酸配列がatonal関連核酸配列の対立遺伝子を不活性化する条件下で、上記対立遺伝子を置換する異種核酸を含む動物が存在する。代替的な実施形態において、異種配列を、染色体外増殖のために細胞に送達する。他方の代替的な実施形態において、異種配列を、atonal関連核酸配列の遺伝子座以外の遺伝子座の細胞の染色体内に挿入する。好適な実施形態において、上記異種配列は、atonal関連調節配列の制御下で発現する。詳細な実施形態において、atonal関連対立遺伝子は両方置換される。さらに詳細な実施形態において、両方のatonal関連対立遺伝子は同一ではない異種核酸配列で置換される。トランスジェニック動物を産出する方法は、本技術分野で十分に公知である、当業者はGrosveldand Kollias(eds.)による
TransgenicAnimals、またはJacksonet al.(eds.)による
MouseGenetics andTransgenics:A Practical Approach等の参考文献を参照するであろう。
【0057】
さらなる実施形態において、本発明のトランスジェニック動物は検出可能な状態を有し、上記状態は、有毛細胞の欠失、小脳顆粒ニューロン欠損症、聴力障害、平衡失調、関節疾患、変形関節症および細胞の異常増殖からなる群より選択される。本発明の他方の実施形態において、異種核酸配列は、β−ガラクトシダーゼ、グリーンフルオレセインタンパク質(GFP)、ブルーフルオレセインタンパク質(BFP)、ネオマイシン、カナマイシン、ルシフェラーゼ、β−グルクロニダーゼおよびクロラムフェニコールトランスフェラーゼ(CAT)からなる群より選択されるレポーター配列である。他方の詳細な実施形態において、レポーター配列は調節可能であり、脳組織、神経組織、皮膚組織、非骨化軟骨細胞、関節軟骨細胞、メルケル細胞、内耳感覚上皮細胞および脳幹核で発現している。さらに詳細な実施形態において、上記atonal関連遺伝子座は、調節可能プロモーター配列または組織特定プロモーター配列の制御下で、atonal関連核酸配列に置換され、上記組織は、脳組織、神経組織、皮膚組織、非骨化軟骨細胞、関節軟骨細胞、メルケル細胞、内耳感覚上皮細胞および脳幹核からなる群より選択される。さらに詳細な実施形態において、トランスジェニック動物はマウス、ショウジョウバエ、カエル、ゼブラフィッシュ、ラット、モルモットまたはハムスターである。
【0058】
本発明の他方の実施形態は、動物における化合物のスクリーニング方法であって、前記化合物はatonal関連核酸配列の発現に影響を及ぼし、前記化合物を前記動物に送達すること、ここで、前記動物は、異種核酸配列の挿入により不活性化されたatonal関連核酸配列の少なくとも1つの対立遺伝子を有し、前記異種核酸配列は、atonal関連調節配列の制御下にある、および前記atonal関連核酸配列の前記発現における変化を監視することを含む。調節配列には、プロモーター配列、エンハンサーまたはサイレンサーが含まれ得る。
【0059】
詳細な実施形態において、atonal関連核酸配列の上記発現をアップレギュレートまたはダウンレギュレートする化合物が存在する。アップレギュレーションまたはダウンレギュレーションは、転写速度の増加またはmRNA分解速度の減少によってよい。
【0060】
本発明の他方の実施形態は、atonal関連核酸配列の発現に影響を及ぼす化合物である。詳細な実施形態において、上記化合物は、atonal関連核酸配列の発現をアップレギュレートまたはダウンレギュレートする。詳細な実施形態において、上記化合物は、動物での検出可能状態に影響を与え、上記状態は、有毛細胞の欠失、小脳顆粒ニューロン欠損症、聴力障害、平衡失調、関節疾患、変形関節症、細胞の異常増殖および癌の形成からなる群より選択される。
【0061】
本発明の他方の実施形態は、動物における化合物のスクリーニング方法であって、前記化合物は前記動物において検出可能な状態に影響を及ぼし、前記化合物を前記動物に送達すること、ここで、前記動物におけるatonal関連核酸配列の少なくとも1つの対立遺伝子は、異種核酸配列の挿入により不活性化され、前記異種核酸配列は、atonal関連調節配列の制御下にある、および前記動物を検出可能な状態における変化について監視することを含む。詳細な実施形態において、上記検出可能状態は、有毛細胞の欠失、小脳顆粒ニューロン欠損症、聴力障害、平衡失調、関節疾患、変形関節症、および細胞の異常増殖からなる群より選択される。他方の実施形態において、上記化合物の上記送達は、上記異種核酸配列の発現に影響を及ぼす。詳細な実施形態において、上記異種核酸配列の上記発現はアップレギュレートまたはダウンレギュレートされる。さらに詳細な実施形態において、動物はマウス、ショウジョウバエ、カエル、ゼブラフィッシュ、ラット、ハムスターまたはモルモットである。
【0062】
本発明の他方の実施形態は、本発明のトランスジェニック動物での検出可能状態に影響を及ぼす化合物である。詳細な実施形態において、上記化合物は異種核酸配列の発現に影響を及ぼす。さらに詳細な実施形態において、上記化合物は異種核酸配列の発現をアップレギュレートまたはダウンレギュレートする。
【0063】
本発明の別の実施形態は、小脳顆粒ニューロン欠如のために、機械的受容細胞増殖を促進するために、有毛細胞を産出するために、聴覚異常または平衡失調疾病を治療するために、関節疾患を治療するために、細胞の異常増殖を治療するために、および機能性atonal関連核酸またはアミノ酸配列の欠失の結果である疾患の治療のために、ヒトを含む動物を治療する方法である。上記方法には、治療的効果的な量のatonal関連核酸またはアミノ酸配列を投与することが含まれる。詳細な実施形態において、上記投与は、ウイルスベクター(バクテリオファージ、動物および植物ウイルスを含む)、プラスミド、コスミド、または任意の他の核酸に基づくベクター、リポソーム、核酸、ペプチド、脂質、炭水化物および上記ベクターのそれらの組合せからなる群より選択したベクターによる。詳細な実施形態において、上記ベクターは、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、またはレンチウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター、アルファウイルスベクターなどを含むアデノ随伴ベクターである。したがって、ベクターはウイルス性または非ウイルス性であってよい。好適な実施形態において、上記ベクターは、サイトメガロウイルスIEプロモーター配列およびSV40初期ポリアデニル化シグナル配列を含むアデノウイルスベクターである。他方の詳細な実施形態において、上記細胞はヒト細胞である。さらに詳細な実施形態において、上記関節疾患は変形関節症である。他の特定の実施様態において、細胞は、atonal関連アミノ酸配列に改変を含有し、上記アミノ酸配列は、配列番号58の約20個の連続アミノ酸残基と、少なくとも約80%の同一性を有する。
【0064】
詳細な実施形態において、本発明はまた、小脳顆粒ニューロン欠損症、聴覚障害、平衡失調、関節疾患に対する治療を必要とする、または機械的受容性細胞増殖を促進することが必要である動物の、または機能的atonal関連核酸またはアミノ酸配列の欠失の結果である疾患の治療方法を提供する。この方法には、配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに対して少なくとも約70%同一、好ましくは少なくとも約80%同一、および最も好ましくは少なくとも約90%同一であるアミノ酸を有する転写因子を、動物内の細胞に送達することが含まれる。いくつかの実施形態において、動物における細胞は、その動物の内耳に局在する。好ましくは、転写因子はDaughterlessタンパク質への結合に対してatonalと競合し(Jarmanら,1993)、Math−1のE47タンパク質への結合に対して競合する(Akazawaら,1995)。
【0065】
本発明の実施形態において、機能的atonal関連核酸またはアミノ酸配列の欠失の結果である疾患に対して、生物を治療するための方法を提供する。当業者は、この欠失が成人ヒトで起こる有意な(または検出可能なレベルまでの)発現の自然な減少または欠失による可能性があることを認識している。
【0066】
本発明の別の実施形態において、細胞内のatonal関連核酸またはアミノ酸濃度を変更することを含む、細胞の異常増殖に関して動物を治療するための方法を提供する。詳細な実施形態において、上記変更は減少であり、また、上記核酸またはアミノ酸配列は変更を含有する。
【0067】
本発明の好適な実施形態において、本明細書で論ずる、種々の医学的状態にある生物を治療するための組成物であって、送達ビーイクルと組合わせてatonal関連核酸配列またはアミノ酸配列を含む組成物であり、上記生物は、atonal関連核酸配列中に欠損を含む。当業者は、成人ヒトのような成体生物は、自然に有意なまたは検出可能なレベルまでatonalが発現していないが、代わりに、発生の胚段階においてはatonalが発現することを認識している(実施例参照)。したがって、好適な実施形態において、本明細書で論ずるような生物を治療するための組成物には、atonal核酸またはアミノ酸配列中に突然変異を含有しないが、有意なまたは検出可能なレベルにまでは発現しないatonalを自然に有する生物を治療するための組成物が包含される。
【0068】
本発明の別の実施形態は、送達ビーイクルと組合わせてatonal関連アミノ酸配列または核酸配列を含む組成物であって、上記ビーイクルは、細胞内に治療上有効量のatonal関連核酸配列またはアミノ酸配列を送達する。詳細な実施形態において、上記ビーイクルは、微生物毒素または任意の融合分子のレセプター結合領域であり、また、タンパク質形質導入領域である。詳細な実施形態において、上記タンパク質形質導入領域はHIVTATペプチドに由来する。
【0069】
本発明の別の実施形態においては、有毛細胞が欠失した生物を治療するための組成物が存在し、上記生物は、atonal関連核酸配列中に欠損を含む。詳細な実施形態において、欠損は、上記atonal関連核酸配列の突然変異または変更である。他方の詳細な実施形態において、欠損は、上記atonal関連核酸配列の調節配列に影響を及ぼす。本発明のさらなる実施形態においては、有毛細胞が欠失した生物を治療するための組成物が存在し、上記生物は、atonal関連核酸配列の調節に関連する核酸配列中に欠損を含む。本発明のさらなる実施形態においては、有毛細胞が欠失した生物を治療するための組成物が存在し、上記生物は、atonal関連核酸配列の調節に関連するアミノ酸配列中に欠損を含む。
【0070】
本発明の別の実施形態においては、小脳顆粒ニューロンが欠如した生物を治療するための組成物が存在し、上記生物は、atonal関連核酸配列中に欠損を含む。詳細な実施形態において、欠損は上記atonal関連核酸配列の突然変異または変更である。他方の詳細な実施形態において、欠損は、上記atonal関連核酸配列の調節配列に影響を及ぼす。本発明のさらなる実施形態においては、小脳顆粒ニューロンが欠如した生物を治療するための組成物が存在し、上記生物は、atonal関連核酸配列の調節に関連する核酸配列中に欠損を含む。本発明のさらなる実施形態においては、小脳顆粒ニューロンが欠如した生物を治療するための組成物が存在し、上記生物は、atonal関連核酸配列の調節に関連するアミノ酸配列中に欠損を含む。
【0071】
本発明の別の実施形態においては、聴覚障害の生物を治療するための組成物が存在し、上記生物は、atonal関連核酸配列中に欠損を含む。詳細な実施形態において、欠損は、上記atonal関連核酸配列の突然変異または変更である。他方の詳細な実施形態において、欠損は、上記atonal関連核酸配列の調節配列に影響を及ぼす。本発明のさらなる実施形態においては、聴覚障害の生物を治療するための組成物が存在し、上記生物は、atonal関連核酸配列の調節に関連する核酸配列中に欠損を含む。本発明のさらなる実施形態においては、聴覚障害の生物を治療するための組成物が存在し、上記生物は、atonal関連核酸配列の調節に関連するアミノ酸配列中に欠損を含む。
【0072】
本発明の別の実施形態においては、平衡失調の生物を治療するための組成物が存在し、上記生物は、atonal関連核酸配列中に欠損を含む。詳細な実施様態において、欠損は、上記atonal関連核酸配列の突然変異または変更である。他方の詳細な実施形態において、欠損は、上記atonal関連核酸配列の調節配列に影響を及ぼす。本発明のさらなる実施形態においては、平衡失調の生物を治療するための組成物が存在し、上記生物は、atonal関連核酸配列の調節に関連する核酸配列中に欠損を含む。本発明のさらなる実施形態においては、平衡失調の生物を治療するための組成物が存在し、上記生物は、atonal関連核酸配列の調節に関連するアミノ酸配列中に欠損を含む。
【0073】
本発明の別の実施形態においては、変形関節症の生物を治療するための組成物が存在し、上記生物は、atonal関連核酸配列中に欠損を含む。詳細な実施形態において、欠損は、上記atonal関連核酸配列の突然変異または変更である。他方の詳細な実施形態において、欠損は、上記atonal関連核酸配列の調節配列に影響を及ぼす。本発明のさらなる実施形態においては、変形関節症の生物を治療するための組成物が存在し、上記生物は、atonal関連核酸配列の調節に関連する核酸配列中に欠損を含む。本発明のさらなる実施形態においては、変形関節症の生物を治療するための組成物が存在し、上記生物は、atonal関連核酸配列の調節に関連するアミノ酸配列中に欠損を含む。
【0074】
本発明の別の実施形態においては、関節疾患の生物を治療するための組成物が存在し、上記生物は、atonal関連核酸配列中に欠損を含む。詳細な実施形態において、欠損は、上記atonal関連核酸配列の突然変異または変更である。他方の詳細な実施形態において、欠損は、上記atonal関連核酸配列の調節配列に影響を及ぼす。本発明のさらなる実施形態においては、関節疾患の生物を治療するための組成物が存在し、上記生物は、atonal関連核酸配列の調節に関連する核酸配列中に欠損を含む。本発明のさらなる実施形態においては、関節疾患の生物を治療するための組成物が存在し、上記生物は、atonal関連核酸配列の調節に関連したアミノ酸配列中に欠損を含む。
【0075】
本発明の別の実施形態において、細胞が異常増殖した生物を治療するための組成物が存在し、上記生物は、atonal関連核酸配列中に欠損を含む。詳細な実施形態において、欠損は、上記atonal関連核酸配列の突然変異または変更である。他方の詳細な実施形態において、欠損は、上記atonal関連核酸配列の調節配列に影響を及ぼす。本発明のさらなる実施形態においては、細胞が異常増殖した生物を治療するための組成物が存在し、上記生物は、atonal関連核酸配列の調節に関連する核酸配列中に欠損を含む。本発明のさらなる実施形態においては、細胞が異常増殖した生物を治療するための組成物が存在し、上記生物は、atonal関連核酸配列の調節に関連するアミノ酸配列中に欠損を含む。
【0076】
本発明のさらなる実施形態においては、癌の生物を治療するための組成物が存在し、上記生物は、atonal関連核酸配列中に欠損を含む。詳細な実施形態において、欠損は、上記atonal関連核酸配列の突然変異または変更である。他方の詳細な実施形態において、欠損は、上記atonal関連核酸配列の調節配列に影響を及ぼす。本発明のさらなる実施形態においては、癌の生物を治療するための組成物が存在し、上記生物は、atonal関連核酸配列の調節に関連する核酸配列中に欠損を含む。本発明のさらなる実施形態においては、癌の生物を治療するための組成物が存在し、上記生物は、atonal関連核酸配列の調節に関連するアミノ酸配列中に欠損を含む。詳細な実施形態において、上記癌は髄芽腫である。
【0077】
核酸に基づく発現系
1.ベクター
当業者は、両方とも参考文献にて本明細書に組み込まれている、Sambrookら,1989およびAusubelら,1994に記載の標準的組換え技術によりベクターを構築する準備が十分に整うことであろう。
【0078】
「発現ベクター」なる用語は、転写可能である遺伝子産物の少なくとも一部をコードする核酸配列を含有するベクターを指す。場合によっては、RNA分子は次に、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチドに翻訳される。別の場合では、これらの配列は、例えばアンチセンス分子またはリボザイムの産出において翻訳されない。発現ベクターは、種々の「制御配列」を含有することができ、この用語は、特定の宿主生物中に操作可能に結合したコード配列の転写あるいは翻訳に必要とされる核酸配列を指す。ベクターおよび発現ベクターは、転写および翻訳を管理する制御配列に加えて、さらに他の機能を有する、以下に記載の核酸配列を含有してもよい。
【0079】
a.プロモーターおよびエンハンサー
「プロモーター」は、転写の開始および速度を制御する核酸配列の領域である制御配列である。これは、調節タンパク質および分子がRNAポリメラーゼおよび他の転写因子のように結合可能である遺伝的エレメントを含有してもよい。プロモーターは、核酸配列の転写活性化に関わるcis作動調節配列を指す「エンハンサー」と共に使用してもよく、または使用しなくてもよい。
【0080】
通常、発現するために選択された細胞型、オルガネラおよび生物におけるDNAセグメントの発現を効果的に指向するプロモーターおよび/またはエンハンサーを使用することが重要である。分子生物学の当業者は一般的に、タンパク質発現のためのプロモーター、エンハンサーおよび細胞型を組合わせて使用することを知っている。例えば、本明細書で参考文献にて組み込んだSambrookら(1989)を参照のこと。使用したプロモーターは、適切な条件の下で、構成的、組織特異的、誘導可能および/または有用であり、組み換えタンパク質および/またはペプチドの大規模な産出に有利である、導入したDNAセグメントの発現を高レベルで指向する。プロモーターは、異種性または内因性であってもよい。
【0081】
組織特異的プロモーターまたはエレメントの同一性、並びにそれらの活性を特性化するためのアッセイは、当業者に公知である。そのような領域としては、ヒトLIMK2遺伝子(Nomotoら1999)、ソマトスタチンレセプター2遺伝子(Krausら,1998)、ネズミ精巣上体レチノイン酸結合遺伝子(Lareyreら,1999)、ヒトCD4(Zhao−Emonetら,1998)、マウスアルファ2(XI)コラーゲン(Tsumakiら,1998)、D1Aドーパミン性レセプター遺伝子(Leeら,1997)、インスリン様成長因子II(Wuら,1997)、ヒト血小板上皮細胞接着分子−1(Almendroら,1996)などが挙げられる。
【0082】
b.開始シグナルおよび内部リボソーム結合部位
また、特定の開始シグナルも、コード配列の効率的な転写のために必要とされる。これらのシグナルには、ATG開始コドンまたは近接配列が包含される。ATG開始コドンを包含する外来転写制御シグナルを提供する必要がある。当業者ならば、これを決定し、必要なシグナルを容易に提供することができるであろう。開始コドンは、すべての挿入物の翻訳を確実に行うために、望ましいコード配列の読みとり枠を使用する「インフレーム」でなければならないことは公知である。外来翻訳制御シグナルおよび開始コドンは、天然のものであっても、合成したものであってもよい。適切な転写エンハンサーエレメントを挿入することで、発現の効率を向上させることができる。
【0083】
本発明のある実施形態において、内部リボソーム侵入部位(IRES)エレメントを、多重遺伝子、またはポリシストロン性メッセージを作製するのに使用する。IRESエレメントは、異種オープンリーディングフレームと連結させることができる。マルチオープンリーディングフレームは共に転写され、IRESによってそれぞれ分離され、ポリシストロン性メッセージを作製する。IRESエレメントによって、それぞれのオープンリーディングフレームが、効率的に翻訳するためにリボソームに近づくことが可能となる。多重遺伝子は、単一メッセージを転写するために、単一プロモーター/エンハンサーを用いて効率的に発現させることができる(参考文献として本明細書に組み込まれている、米国特許第5,925,565号および第5,935,819号参照)。
【0084】
c.マルチクローニング部位
ベクターには、マルチクローンニング部位(MCS)が包含されており、これは多数の制限酵素部位を含有する核酸領域で、任意のものは、標準的組換え技術と共に使用して、ベクターを消化する(参考文献として本明細書に組み込まれている、Carbonelliら,1999、Levensonら,1998およびCocea,1997参照)。
【0085】
d.スプライシング部位
転写された真核生物RNA分子は、そのほとんどが初期転写物からイントロンを除去するためにRNAスプライシングを受ける。遺伝的真核生物配列を含有するベクターは、ドナーおよび/またはアクセプタースプライシング部位を必要とし、タンパク質を発現させる適切な転写処理を確実に行う(参考文献として本明細書に組み込んだ、Chandlerら,1997参照)。
【0086】
e.ポリアデニル化シグナル
発現においては、転写物の適切なポリアデニル化に効果的な、ポリアデニル化シグナルが典型的に包含される。詳細な実施形態には、適切でおよび/または種々の標的細胞内で十分に機能することが知られている、SV40ポリアデニル化シグナルおよび/またはウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナルが包含される。
【0087】
f.複製の起点
宿主細胞内でベクターを増殖させるために、複製が開始される特定の核酸配列である、1つまたはそれ以上の複製部位の起点(しばしば「ori」と呼ばれる)を含有することができる。
【0088】
g.選択可能および選別可能マーカー
本発明のある実施形態において、細胞は本発明の核酸構造を含有し、発現ベクター中にマーカーを含有することによって、細胞はinvitroおよび/またはin vivoで同定することができる。このようなマーカーは、細胞に同定可能な変化を与え、発現ベクターを含有する細胞の簡単な同定を許容する。一般的には、選択可能なマーカーは、選択を許容する特性を与えるものである。正の選択可能マーカーは、マーカーの存在がその選択を可能にするものであり、一方で負の選択可能マーカーはその存在がその選択を妨げるものである。正の選択可能マーカーとしては、薬剤耐性マーカー等が挙げられる。
【0089】
通常、薬剤選択マーカーの導入は、形質転換物のクローニングおよび同定を補助し、例えばネオマイシン、プロマイシン、ハイグロマイシン、DHFR、GPT、ゼオシンおよびヒスチジノールに対する耐性を与える遺伝子が有用な選択可能マーカーである。状態の履行に基づいた形質転換物の区別を許容する表典型を与えるマーカーに加えて、その基礎が比色解析であるGFPまたは増強GFPのような選別可能マーカーを包含する他の型のマーカーも企図される。あるいは、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(tk)またはクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)のような選別可能酵素が使用可能である。当業者は、おそらくFACS解析とともに、免疫学的マーカーの使用方法も公知であろう。選択および選別可能マーカーについてのさらなる例は、当業者には公知のものである。
【0090】
2.発現系
上記組成物の少なくとも一部またはすべてを含む、多くの発現系が存在する。原核生物および/または真核生物に基づく系を、本発明とともに使用して、核酸配列、またはそれらの同起源ポリペプチド、タンパク質およびペプチドを産出することができる。多くのそのような系は商業的に広く入手可能である。
【0091】
昆虫細胞/バキュロウイルス系は、両方とも本明細書中参考文献にて組み込まれている米国特許第5,871,986号および第4,879,236号に記載されているように、高レベルの異種核酸セグメントのタンパク質発現を産出することができ、たとえばインビトロジェン(INVITROGEN(登録商標))からのMAXBAC(登録商標)2.0、およびクロンテック(CLONTECH(登録商標))からのBACKPACK
TM BACULOVIRUSEXPRESSION SYSTEMの名で購入できる。発現系の他の例は、本技術分野では公知のものである。
【0092】
核酸検出
atonol関連タンパク質、ポリペプチドおよび/またはペプチドの発現を指向することにおけるそれらの使用に加えて、本明細書で開示した核酸配列には様々な他の使用法がある。例えば、これらはプローブまたはプライマーとして、または核酸ハイブリッド形成、核酸配列の増幅、核酸の検出、その他のアッセイを含む実施形態に関する任意の方法で有用である。当業者は、これらの方法の詳細に関連する以下の特許を認識している。すなわち、米国特許第5,840,873号、米国特許第5,843,640号、米国特許第5,843,650号、米国特許第5,843,651号、米国特許第5,843,663号、米国特許第5,846,708号、米国特許第5,846,709号、米国特許第5,846,717号、米国特許第5,846,726号、米国特許第5,846,729号、米国特許第5,846,783号、米国特許第5,849,481号、米国特許第5,849,483号、米国特許第5,849,486号、米国特許第5,849,487号、米国特許第5,849,497号、米国特許第5,849,546号、米国特許第5,849,547号、米国特許第5,851,770号、米国特許第5,851,772号、米国特許第5,853,990号、米国特許第5,853,993号、米国特許第5,853,992号、米国特許第5,856,092号、米国特許第5,858,652号、米国特許第5,861,244号、米国特許第5,863,732号、米国特許第5,863,753号、米国特許第5,866,331号、米国特許第5,866,336号、米国特許第5,866,337号、米国特許第5,900,481号、米国特許第5,905,024号、米国特許第5,910,407号、米国特許第5,912,124号、米国特許第5,912,145号、米国特許第5,912,148号、米国特許第5,916,776号、米国特許第5,916,779号、米国特許第5,919,626号、米国特許第5,919,630号、米国特許第5,922,574号、米国特許第5,925,517号、米国特許第5,925,525号、米国特許第5,928,862号、米国特許第5,928,869号、米国特許第5,928,870号、米国特許第5,928,905号、米国特許第5,928,906号、米国特許第5,929,227号、米国特許第5,932,413号、米国特許第5,932,451号、米国特許第5,935,791号、米国特許第5,935,825号、米国特許第5,939,291号、米国特許第5,942,391号、欧州出願第320308号、欧州出願第329 822号、GB出願第2202 328号、PCT出願第PCT/US87/00880号、PCT出願第PCT/US89/01025号、PCT出願WO88/10315号、PCT出願WO89/06700号およびPCT出願WO90/07641号。
【0093】
キット
1つの試料中に、配列番号1〜配列番号66より選択した配列を検出するために必要な必須の物質および/または試薬のすべてをキット内で一緒にアセンブルできる。これには一般的に、配列番号1〜配列番号66の核酸配列のような本発明の実施において、対象の個々の核酸に特異的にハイブリッド形成するように設計したプローブまたはプライマーが包含される。また、種々のポリメラーゼ(逆転写酵素、Taqなど)、デオキシヌクレオチドおよび緩衝液を包含する、核酸を増幅させるのに適した酵素を包含して、増幅のために必要な反応混合液を提供することができる。また、そのようなキットは、特定の核酸または増幅産物の検出に好適である酵素および他の試薬を包含することもできる。そのようなキットは一般的に、好適な手段で、それぞれ個々の試薬または酵素、並びにそれぞれのプローブまたはプライマー対に対する異なる容器を含む。
【0094】
atonal関連核酸
A.核酸およびその使用 「核酸」なる語は一般的に、例えばDNA中に見られる、天然に存在するプリンまたはピリミジン塩基(例えばアデニン「A」、グアニン「G」、チミン「T」およびシトシン「C」)またはRNA(例えばA、G、ウラシル「U」およびC)等の少なくとも1つの核酸塩基からなる、DNAの少なくとも1つの分子または鎖、RNAまたはそれらの誘導体または類似体を指す。「核酸」なる語は、「オリゴヌクレオチド」および「ポリヌクレオチド」なる語を包含する。「オリゴヌクレオチド」なる語は、長さが約3〜100核酸塩基の間である少なくとも1つの分子を指す。「ポリヌクレオチド」なる語は、長さが約100核酸塩基以上の少なくとも1つの分子を指す。これらの定義は一般的に、少なくとも1つの一本鎖分子を指すが、詳細な実施形態においてはまた、部分的に、実質的にまたは全体的に少なくとも1つの一本鎖分子と相補的な少なくとも1つのさらなる鎖をも包含する。したがって、核酸は、1つまたはそれ以上の相補鎖(類)、または分子の鎖を備える特定の配列の「相補物(類)」を含む、少なくとも1つの二本鎖分子または少なくとも1つの三本鎖分子を包含することができる。本明細書で使用するように、一本鎖核酸は識別コード「ss」によって表すことができ、二本鎖核酸は識別コード「ds」にて、そして三本鎖核酸は識別コード「ts」にて表すことができる。
【0095】
したがって、本発明はまた、atonal関連核酸と相補的である少なくとも1つの核酸を包含することもできる。特定の実施形態において、本発明は、核酸配列である配列番号1〜配列番号66で列記した核酸配列と相補的である、少なくとも1つの核酸または核酸セグメントを包含する。「相補的な」または「相補物(類)」である核酸(類)は、標準のワトソン−クリック、フーグスティーンまたは逆フーグスティーン結合相補性ルールにしたがって塩基対を形成することができるものである。また、本明細書で使用するように、「相補的」または「相補物(類)」なる語は、上記の同様のヌクレオチド比較によって査定できるような、実質的に相補的である核酸(類)を指す。「実質的に相補的」なる語は、少なくとも1つの連続核酸塩基または半連続核酸塩基からなる核酸を指し、または1つまたはそれ以上の核酸塩基部分が分子内に存在しない場合、すべて以下の核酸塩基が相対物核酸塩基と塩基対を形成しない場合でさえも、少なくとも1つの核酸鎖または二本鎖とハイブリッド形成可能である。
【0096】
本明細書のある実施形態において、「遺伝子」は、転写する核酸を指す。本明細書で使用する場合、「遺伝子セグメント」は遺伝子の核酸セグメントである。ある局面において、遺伝子には、転写、またはメッセージ産出または組成物に関わる調節配列が包含される。特定の実施形態において、遺伝子は、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードする、転写配列を含む。別の特定の局面において、遺伝子は、atonal関連核酸を含み、および/またはatonal関連ポリペプチドまたはペプチドコード配列をコードする。本明細書で記載の用語法を保持して、「単離した遺伝子」は、他の天然に存在する遺伝子、調節配列、ポリペプチドまたはペプチドコード配列等の、別のこのような配列から実質的に単離した、転写した核酸(類)、調節配列、コード配列を含むことができる。この局面において、「遺伝子」なる語は容易に使用され、転写されたヌクレオチド配列およびその相補物からなる核酸を指す。特定の局面において、転写ヌクレオチド配列は、少なくとも1つの機能的タンパク質、ポリペプチドおよび/またはペプチドコードユニットを含む。当業者にて理解されるであろう「遺伝子」なる機能語には、ゲノム配列、RNAまたはcDNA配列または遺伝子の非転写部位の核酸セグメントを含み、遺伝子の非転写プロモーターまたはエンハンサー領域を限定しないが含む、より小さな遺伝子工学的に改変した核酸セグメントが含まれる。より小さな遺伝子工学的に改変した遺伝子核酸セグメントは、核酸操作技術、タンパク質、ポリペプチド、ドメイン、ペプチド、融合タンパク質、変異体および/またはそれに類似のものを用いて発現でき、または発現するように適合させることができる。
【0097】
ある実施形態において、核酸配列は、核酸または核酸セグメントである。本明細書で使用する場合、「核酸セグメント」なる語は、非限定的な例として、atonal関連ペプチドまたはポリペプチド配列の部分のみをコードしている、核酸の小さな断片である。したがって「核酸セグメント」は、atonal関連ペプチドまたはポリペプチドコード領域の約2ヌクレオチド〜全長の、atonal関連遺伝子配列(類)の任意の部分を含むことができる。ある実施形態において、「核酸セグメント」は、全長atonal関連遺伝子(類)配列を包含する。特定の実施形態において、核酸は、配列番号1〜配列番号66に開示した配列の約2ヌクレオチド〜全長の、配列番号1〜配列番号66の任意の部分を含む。
【0098】
ある実施形態において、核酸セグメントは、プローブまたはプライマーである。本明細書で使用する場合、「プローブ」は、他の核酸を検出するために使用される核酸であり、長さは、一般的に少なくとも約10ヌクレオチドである。本明細書で使用する場合、「プライマー」は、他の核酸をポリマー化するために使用する核酸であり、長さは、一般的に約10ヌクレオチドである。これの非限定例としては、様々な長さの核酸セグメントの作製および、核酸配列である配列番号1〜配列番号66に開示した配列に基づくプローブおよびプライマーの配列組成物の作製である。
【0099】
本発明の核酸(類)は、配列それ自体の長さに関わらず、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化シグナル、制限酵素部位、多重クローニング部位、コードセグメント等に限定されないがそれらを含む別の核酸配列と組み合わせて、1つまたはそれ以上の核酸構築物を作製することができる。本明細書で使用する場合、「核酸構築物」は、異なる核酸配列の少なくとも2つのセグメントからなる組換え体分子である。全長は、核酸配列構築物間で相当変化し得る。したがって、ほとんど任意の長さの核酸セグメントを使用でき、全長は、好ましくは意図した核酸プロトコルでの調製または使用の簡便さによって制限される。
【0100】
ある実施様態において、核酸構築物は組換え体ベクターである。本明細書で使用する場合、「組換えベクター」は、対象の核酸配列に対するビーイクルとして使用した核酸のマルチセグメントを含む核酸である。ある局面において、組換えベクターは発現カセットである。本明細書で使用する場合、発現カセットは、本技術分野では公知の方法によって、異なる組換えベクター間で送達可能である対象の遺伝子を含む核酸のセグメントである。
【0101】
特定の実施形態において、本発明は、ヒトまたはMus musculus atonal関連配列に対応している、アミノ酸配列である配列の、配列番号2〜配列番号66に従って、または本質的に記載された、連続アミノ酸配列をそのアミノ酸配列内に含むatonal関連タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードしている核酸配列からなる、1つまたはそれ以上の組換え体ベクター(類)に関する。別の実施形態において、本発明は、そのアミノ酸配列内に、アミノ酸配列である配列番号2〜配列番号66に従って、または本質的に記載された、連続アミノ酸配列を含むatonal関連タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードする他の種からの核酸配列からなる組換えベクター(類)に関する。特定の局面において、組換えベクターはDNAベクターである。
【0102】
アミノ酸配列または核酸配列が、付加的なN−またはC−末端アミノ酸または5’または3’配列、またはそのさまざまな組合せのような、付加的残基を含むことが可能であり、配列が、タンパク質組成物の発現が関連する生物学的タンパク質、ポリペプチドまたはペプチド活性の保持を含む、前記した基準に適合する限り、まだ本質的に本明細書で開示した配列の1つに記載したようであり得ることも理解されるであろう。末端配列の付加は、とりわけ、たとえばコード領域の5’および/または3’部分のいずれかに隣接している様々な非コード配列を含むことができる配列を提供し、または、遺伝子内で存在することが知られている、様々な内部配列、すなわちイントロンを含むことができる。
【0103】
本発明が、アミノ酸配列である配列番号〜配列番号66の特定の核酸配列またはアミノ酸配列に限定されないことも理解されるであろう。組換えベクターおよび単離核酸セグメントは、したがって、これらのコード領域それ自身、基礎的コード領域内に選択的変更または改変を有する様々なコード領域を含むことができ、これらは、やはりそのようなコード領域を含むより大きなポリペプチドまたはペプチドをコードすることができ、または変異アミノ酸配列を有する生物学的に等価なタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドをコードすることができる。
【0104】
本発明の核酸は、生物学的機能が等価なatonal関連タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドまたはatonal関連タンパク質、ポリペプチドまたはポリペプチドを含有する。そのような配列は、核酸配列またはコードするタンパク質、ポリペプチドまたはペプチド内に天然に存在することが知られているコドン重複または機能的等価性の結果として発生しうる。あるいは、機能的に等価なタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドは、変更するアミノ酸の特性の考慮に基づいて、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチド構造の変化を遺伝子工学的にする、組換えDNA技術の適用を介して作製することができる。人間によって設計された変化は、たとえばタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの抗原性の改善または変更を誘導するために、または分子レベルでのatonal関連タンパク質、ポリペプチドまたはペプチド活性を試験するために変異体を試験するために、たとえば本明細書以下で論ずるような、部位特異的変異導入技術の適用を介して導入できる。
【0105】
融合タンパク質、ポリペプチドまたはペプチドを、たとえばatonal関連コード領域が、望ましい機能を有する他のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドと同一の発現ユニット内で並んでいるように調製できる。そのような発現配列の望ましい機能の非限定例には、付加した発現配列に関する精製または免疫検出目的、例えば、それぞれ欧州特許EP第266,032号またはFroehleret al.,Nucl.AcidsRes.,14:5399−5407,1986に記載されているようなデオキシヌクレオシドH−リン酸中間体を介した、アフィニティークロマトグラフィーにて精製できるタンパク質組成物、またはコード領域の酵素標識化が含まれる。
【0106】
本明細書で使用する場合、「生物」は、原核生物、真核生物、およびウイルス等であり得る。本明細書で使用する場合、「配列」なる語は、「核酸」および「タンパク質性」または「タンパク質性組成物」なる語の両方を包含する。本明細書で使用する場合、「タンパク質性組成物」なる語は、「タンパク質」、「ポリペプチド」および「ペプチド」なる語を包含する。本明細書で使用する場合、「人工的配列」は、遺伝子座の天然の配列から由来しない核酸の配列、並びにそのような核酸によってコードされた任意のタンパク質、ポリペプチドまたはペプチドの配列を指す。「合成配列」は、invitroでの酵素的産出(すなわち「酵素的に産出した」配列)またはin vivoでの生物学的産出(すなわち「生物学的に産出した」配列)よりも、in vitroでの化学合成にて産出された核酸またはタンパク質性組成物を指す。
【0107】
癌治療
本発明が、異常細胞増殖を治療するための方法および組成物を指向していることを考えると、異常細胞増殖の状態である癌の治療の議論が保証される。
【0108】
放射線治療、手術、化学治療および遺伝子治療のような様々な癌治療が当業者には公知であり、本発明の方法および組成物に関して使用できる。
【0109】
放射治療薬剤
放射治療薬剤および因子には、DNA障害を誘導する放射および波、たとえばg照射、X線、UV照射、マイクロ波、電子放射、および放射性同位体等が包含される。治療は、局在化した腫瘍部位に、上述した形態の放射能を照射することで実施することができる。
【0110】
X線に関する用量範囲は、長期間(3〜4週間)の50〜200レントゲンの1日用量から、2000〜6000レントゲンの単一投与までである。放射性同位体に関する用量範囲は、広く変化し、同位体の半減期、放射される放射線の強度および型、新生物細胞による取り込みに依存する。
【0111】
手術
癌性増殖を除去するための外科的処置は、一般的に腫瘍および癌の治療に関する標準の手順である。これは、癌性増殖すべてを除去することを試みる。しかしながら、手術は一般的に、任意の残っている新生性、または悪性細胞の破壊を確かにするために、化学治療および/または放射線治療と組み合わせる。したがって、手術は、本発明に関連して使用できる。
【0112】
化学治療薬剤
これらは、たとえば直接DNAを架橋する薬剤、DNA内に挿入する薬剤、または核酸合成に影響を及ぼすことで染色体および有糸分裂異常を導く薬剤であり得る。
【0113】
核酸、特にDNAを直接架橋する薬剤が、相乗的抗新生性結合を導くDNA障害となるように、本明細書で構想され、示される。シスプラチンのような薬剤、および他のDNAアルキル化剤を使用できる。
【0114】
DNAに障害を与える薬剤にはまた、DNA複製、有糸分裂および染色体分離を干渉する化合物が含まれる。これらの化合物の例には、アドリアマイシン(またはドキソルビシンとして知られている)、VP−16(またはエトポシドとして知られている)、ベラパミル、ポドフィロトキシン等が含まれる。新生物を治療するための臨床的設定で広く使用されるこれらの化合物は、アドリアマイシンに関して、25〜75mg/m
2の容量範囲で21日の間隔で静脈内にボーラス注射することで、またエトポシドに関しては、静脈内または経口で35〜100mg/m
2投与する。
【0115】
癌治療にはまた、化学的および他の型の処置両方でのさまざまな組合せ治療も含まれる。化学治療には、例えば、シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イフォスファミド、メルファラン、クロラムブチル、ブスルファン、ニトロソ尿素、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲンレセプター結合剤、タキソール、ゲンシタビエン、ナベルビン、ファルネシル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、トランスプラチナ、5−フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチンおよびメトトレキサート、またはそれらの任意の類似物または誘導体変体が挙げられる。
【0116】
遺伝子
遺伝子治療投与
遺伝子治療に関して、当業者は、使用されるベクターが、プロモーターに操作可能に連結した対象の遺伝子、またはその好適な断片を含有しなければならないことを認識するであろう。アンチセンス遺伝子治療に関して、対象の遺伝子のアンチセンス配列またはその好適な断片が、プロモーターに操作可能に連結する。当業者は、ある例において、3’UTR調節配列等の別の配列が、対象の遺伝子を発現する場合に有用であることを認識している。適切な場所で、遺伝子治療ベクターを、その代表的な投与経路に関して本技術分野では公知の方法にて、固体、準固体、液体または気体形態で調製品内に処方できる。本技術分野では公知の方法を、標的器官に到達するまで、組成物の放出および吸収を防止するため、または組成物の時間放出を確かにするために使用できる。医薬的に許容可能な剤型を、本発明の組成物が実現不可能でないように使用すべきである。医薬的投与剤型において、組成物を、単独で、または他の薬理学的に活性な化合物と好ましい関連で、および組合せで使用できる。治療的核酸配列を含んだ十分量のベクターを、遺伝子産物の薬理学的に効果的な用量を提供するために投与しなければならない。
【0117】
当業者は、異なる送達方法が、ベクターを細胞内に投与するために使用できることを認識している。例には、(1)力学的方法、たとえばエレクトロポレーション(電気的)、遺伝子銃(力学的力)または多量の液体の添加(圧力)を用いた方法、(2)上記ベクターがリポソーム、ウイルスベクターまたはトランスポーター分子のような他の存在物と複合体形成する方法が含まれる。
【0118】
したがって、本発明は治療的遺伝子を宿主に運ぶ方法を提供し、それには本発明のベクターを、任意の前述の投与経路または当業者に公知の他の経路、および特定の適用に関して好ましい経路のいずれかを用いて、好ましくは組成物の一部として投与することが含まれる。本発明にしたがった宿主細胞へのベクターの効果的な輸送は、治療的効果(たとえば治療している特定の疾患に関連したいくつかの症状の緩和)によって、またはさらに輸送した遺伝子または遺伝子の宿主内での発現(たとえばシークエンシング、ノザンまたはサザンハイブリッド形成、または宿主細胞中の核酸を検出するための転写アッセイとの組合せでのポリメラーゼ連鎖反応を用いて、または免疫ブロット解析、抗体仲介検出、mRNAまたはタンパク質半減期研究、または輸送した核酸によってコードされたタンパク質またはポリペプチドを検出するための特殊化アッセイ、またはそのような輸送によるレベルまたは機能における影響)にしたがって監視できる。
【0119】
本明細書で記載したこれらの方法は、すべてを包含しているわけではなく、特定の適用に適したさらなる方法が当業者に対して明らかであろう。また、有効量の組成物を、類推を介して、望ましい効果が働くことが公知の化合物に近づけることができる。
【0120】
さらに、実際の用量およびスケジュールは、組成物が他の医薬組成物との組合せで投与されるかどうかによって、または薬物動態学、薬物素因、および代謝における個体間の差異によって変化し得る。同様に、量は、使用した特定の細胞株(たとえば細胞表面上に存在するベクターレセプターの数、または細胞株中で複製するために遺伝子送達を使用した特定のベクターの能力に基づいて)によって、invitro適用で変化し得る。さらに、細胞あたり添加すべきベクターの量は、ベクター内に挿入した治療遺伝子の長さおよび安定性、および配列の性質によっても変化する可能性があり、とりわけ経験的に決定される必要があるパラメータであり、本発明の方法に対して固有ではない因子によって変化し得る(例えば、合成に関するコスト)。当業者は、特定の状況の緊急性にしたがって任意の必要性適合を簡単に行うことができる。
【0121】
治療的遺伝子を含有する細胞はまた、自殺遺伝子(すなわち、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼのような、細胞を破壊するために使用できる産物をコードしている遺伝子)を含有することができる。多くの遺伝子治療状態において、宿主細胞内での治療目的のための遺伝子を発現することが可能であることが望ましいが、一旦治療が完了し、制御不能になるか、または予想可能または望ましい結果を導かない場合、宿主細胞を破壊する能力を有することも必要である。したがって、宿主細胞での治療遺伝子の発現は、上記自殺遺伝子の産物が、プロドラッグのない状態では無害のままであるけれども、プロモーターによって駆動できる。いったん治療が完了し、もはや望ましくなく、必要でない場合、プロドラッグの投与により、自殺遺伝子産物が細胞に対して致死的になることを引き起こす。使用できる自殺遺伝子/プロドラッグ組合せの例は、単純ヘルペスウイルス−チミジンキナーゼ(HSV−tk)とガンシクロビル、アシクロビルまたはFLAU、オキシドレダクターゼとシクロヘキシミド、シトシンデアミナーゼと5−フルオロシトシン、チミジンキナーゼチミジレートキナーゼ(Tdk::Tmk)とAZT、およびデオキシシチジンキナーゼとシトシンアラビノシドである。
【0122】
細胞治療の方法を、Math1の核酸配列またはアミノ酸配列のコピーを含有する培養した細胞を導入する、本技術分野で公知の方法にて使用することができる。
【0123】
また他方の実施形態において、二次治療は、二次治療ポリヌクレオチドを、atonal関連ポリペプチドの部分のすべてをコードしている第1治療ポリヌクレオチドの前、後、または同時に投与する二次遺伝子治療である。他の遺伝子産物をコードしている第2ベクターとの組合せでの、全長または部分的atonal関連ポリペプチドいずれかをコードしているベクターの送達は、標的組織において組み合わされた抗過増殖性効果を有する可能性がある。あるいは、両方の遺伝子をコードしている単一ベクターを使用できる。
【0124】
免疫治療 免疫治療は、一般的に、癌細胞を標的にし、破壊するための、免疫エフェクター細胞および分子の使用を頼みにしている。免疫エフェクターは、たとえば腫瘍細胞の表面上のいくつかのマーカーに対して特異的な抗体であり得る。抗体単独で、治療のエフェクターとして役に立つことが可能であり、または細胞殺傷に実際に影響を及ぼすために他の細胞を起用することが可能である。抗体は、薬物または毒素(化学治療的、放射性核種、リシンA鎖、コレラ毒素、百日咳毒素など)とコンジュゲート化可能であり、単に標的化薬剤として役に立つ。あるいは、エフェクターは、腫瘍細胞標的と、直接的または間接的いずれかで相互作用する表面分子を持っているリンパ球であり得る。さまざまなエフェクター細胞には、細胞傷害性T細胞およびNK細胞が含まれる。
【0125】
免疫治療はしたがって、Ad−mda7遺伝子治療と組合わせて、混合治療の一部として使用できるだろう。混合治療に関する一般的アプローチは、以下で論ずる。一般的に、腫瘍細胞は標的化に対して影響を受けやすい、すなわち他の細胞の大部分で存在しないいくつかのマーカーを持っていなければならない。多くの腫瘍マーカーが存在し、これらの中で任意のものは、本発明に関連して、標的化に好適であり得る。共通の腫瘍マーカーには、癌胎児性抗原、前立腺特異的抗原、泌尿器腫瘍関連抗原、胎児抗原、チロシナーゼ(p97)、gp68、TAG−72、HMFG、シアリルルイス抗原、MucA、MucB、PLAP、エストロゲンレセプター、ラミニンレセプター、erbBおよびp155が包含される。
【0126】
混合治療 本発明を使用することにおいて、組成物を、抗癌剤のような過形成疾患の治療で効果的な他の薬剤と組み合わせることが望ましい。「抗癌」剤は、たとえば癌細胞を殺すこと、癌細胞内でアポトーシスを誘導すること、癌細胞の増殖速度を減少させること、転移の発生または数を減少させること、腫瘍サイズを減少させること、腫瘍増殖を阻害すること、腫瘍または癌細胞への血液供給を減少させること、癌細胞または腫瘍に対して免疫反応を促進させること、癌の進行を防ぐまたは阻害すること、または癌を患う対象の寿命を増加させることによって、対象中の癌に負の効果を与えることができる。さらに一般的には、これらの別の組成物は、殺すか、または細胞の増殖を阻害するために効果的な組合せ量で提供される。この方法には、細胞を同時に、発現構築物および薬剤(類)または多重因子(類)と接触させることを含むことができる。このことは、細胞を、両方の薬剤を含む単一組成物または薬理学的処方物と接触させることによって、または細胞を、2つの異なる組成物または処方物と同時に接触させることによって実施でき、ここで一方の組成物は発現構築物を含み、他方は第2薬剤(類)を含む。
【0127】
化学治療および放射治療剤に対する腫瘍細胞の耐性は、臨床的腫瘍学において主要な問題を提示している。現在の癌研究の1つの目標は、それを遺伝子治療と組み合わせることで、化学治療および放射治療の効果を改善する方法を探すことである。例えば、単純ヘルペス−チミジンキナーゼ(HS−tk)遺伝子は、レトロウイルスベクター系にて脳腫瘍に送達したときに、首尾良く抗ウイルス剤ガンシクロビルに対する感受性を誘導した(Culver,etal.,1992)。本発明に関連して、mda−7遺伝子治療は、別の前アポトーシスまたは細胞周期調節剤に加えて、化学治療、放射治療または免疫治療干渉と組み合わせて、同様に使用できる。
【0128】
あるいは、遺伝子治療を、数分〜数週間の範囲の間隔にて、他の薬剤治療に先んじるか、または追随することができる。他の薬剤および発現構築物を別々に細胞に適用した実施形態において、一般的に、薬剤および発現構築物が細胞において有利に混合効果を発揮できるように、有意な期間が各送達時間の間で終了しないことを確認するであろう。そのような例において、細胞を、互いに約12〜24時間以内に、好ましくは互いに約6〜12時間以内に、両方のモダリティーで接触できることが企図されている。いくつかの状態において、治療の時間を有意に引き延ばすことが望ましいが、しかし、それぞれの投与の数日間(2、3、4、5、6または7日間)〜数週間(1、2、3、4、5、6、7、または8週間)経過である。
【0129】
さまざまな組合せを使用することができ、遺伝子治療は「A」とし、放射治療または化学治療のような第2薬剤は「B」とする。
【0130】
A/B/A B/A/BB/B/A A/A/B A/B/B B/A/A A/B/B/BB/A/B/B B/B/B/A B/B/A/B A/A/B/B A/B/A/BA/B/B/A B/B/A/A B/A/B/A B/A/A/B A/A/A/BB/A/A/A A/B/A/A A/A/B/A
本発明の治療的発現構築物の患者への投与は、もしあるならば、ベクターの毒性を考慮して、化学治療の投与に関する一般的プロトコルに従う。治療周期を必要に応じて繰り返すことが予期される。また、種々の標準治療、並びに外科的介入を、記載した過増殖細胞治療と組み合わせて適用できる。
【0131】
細胞増殖の阻害
腫瘍抑制遺伝子は、過度の細胞増殖を阻害するように機能する。これらの遺伝子の不活性化は、その阻害活性を破壊し、結果として調節されない増殖を引き起こす。腫瘍サプレッサーp53、p16およびC−CAMは、本発明で使用した詳細な実施形態である。本発明に従って使用できる他の遺伝子には、Rb、APC、DCC、NF−1、NF−2、WT−1、MEN−1、MEN−II、zac1、p73、VHL、MMAC1/PTEN、DBCCR−1、FCC、rsk−3、p27、p27/p16融合体、p21/p27融合体、抗血栓性遺伝子(例えばCOX−1、TFP1)、PGS、Dp、E2F、ras、myc、neu、raf、erb、fms、trk、ret、gsp、hst、abl、EIA、p300、血管新生に関する遺伝子(例えばVEGF、FGF、トロンボスポンジン、BAI−1、GDAIF、またはそれらのレセプター)およびMCCが挙げられる。
【0132】
プログラムされた細胞死の調節
アポトーシス、またはプログラムされた細胞死は、正常の胚発生、成体組織中のホメオスタシスの保持、および眼下の抑制に関して本質的なプロセスである(Kerret al.,1972)。タンパク質のBcl−2ファミリーおよびICE様プロテアーゼが、他の系にてアポトーシスの重要なレギュレーターおよびエフェクターであることが示された。濾胞性リンパ腫に関連して発見されたBcl−2タンパク質は、逆アポトーシス刺激に応じて、アポトーシスの制御および細胞生存の促進で顕著な役割を果たす(Bakhshiet al.,1985、Clearyand Sklar,1985、Clearyet al.,1986、Tsujimotoet al.,1985、Tsujimotoand Croce,1986)。進化上保存されたBcl−2タンパク質は、現在、関連タンパク質のファミリーのメンバーであると認識されており、死アゴニストまたは死アンタゴニストとして分類分けできる。異なるファミリーのメンバーが、Bcl−2と同様の機能を有するか(例えばBclXL、BclW、BclS、Mcl−1、A1、Bfl−1)、またはBcl−2の機能をうち消し、細胞死を促進させる(例えばBax、Bak、Bik、Bim、Bid、Bad、Harakiri)ことが示された。
【0133】
他の薬剤
他の薬剤を本発明と組み合わせて使用して、治療の治療効果を向上させることが企図される。これらの追加的な薬剤には、免疫調整剤、細胞表面レセプターおよびGAPジャンクションのアップレギュレーションに影響を及ぼす薬剤、細胞増殖抑制性および分化薬剤、細胞接着の阻害剤、または過増殖細胞のアポトーシス誘導剤への感受性を増加させる薬剤が含まれる。
【0134】
用量および処方
本発明の核酸配列およびアミノ酸配列(活性成分)を、活性成分の動物の体内での薬剤の作用部位との接触をおこす任意の方法にて様々な疾患状態の治療のために処方し、投与することができる。これらは、個々の治療的活性成分として、または治療的活性成分の組合せでのいずれかで、薬剤と共に使用することが可能である従来の方法にて投与できる。これらは単独で、または選択した投与経路、および標準の医薬的実施に基づいて選択した医薬的に許容可能な担体と共に投与できる。
【0135】
投与する用量は、活性成分の治療上有効量であり、もちろん特定の活性成分の薬物動態学的特性、その様式、投与経路、レシピエントの年齢、性別、健康状態および体重、症状の特徴および程度、同時治療の種類、治療の頻度および望ましい効果等の公知の因子に依存して変化する。
【0136】
活性成分は、カプセル、錠剤および粉末等の固体投与形態で、またはエリキセル、シロップ、エマルションおよび懸濁液等の液体投与形態で、経口にて投与できる。活性成分はまた、注射、急速点滴、鼻咽頭吸収または皮膚吸収による非経口での投与を行う処方もあり得る。薬剤は、筋肉内、静脈内または坐薬として投与できる。さらに、非経口溶液は、塩化ベンザコニウム、メチルパラベンまたはプロピルパラベンおよびクロロブタノール等の保存剤を含有することが可能である。好適な医薬的担体は、本技術分野で標準の参考文献である、Remington’s PharmaceuticalScienceに記載されている。
【0137】
さらに、標準の医薬的方法を使用して、作用の持続期間を制御することができる。これらは、本技術分野では周知であり、制御放出調節物が含まれ、適切な高分子、たとえばポリマー、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニル、ピロリドン、エチレンビニル酢酸、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたは硫酸プロタミンが包含される。高分子濃度および挿入方法は、放出を制御するために調節されうる。さらに、薬剤を、ポリエステル、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ(乳酸)またはエチレンビニル酢酸コポリマー等の重合性物質の粒子中に組み込むことができる。組み込むことに加えて、これらの薬剤はまた、マイクロカプセル中に化合物を捕獲するのに使用できる。
【0138】
本発明の組成物の投与に関する有用な医薬的投与形態は以下のように表すことができる。
【0139】
カプセル:カプセルは、それぞれ治療上有効量の粉末化活性成分、175ミリグラムのラクトース、24ミリグラムのタルク、および6ミリグラムのステアリン酸マグネシウムで、標準の二部分硬質ゼラチンカプセルを満たすことで調製する。
【0140】
軟質ゼラチンカプセル:ダイズ油中の活性成分の混合液を調製し、陽性置換ポンプの方法にて、ゼラチンに注入し、治療上有効量の活性成分を含む軟質ゼラチンカプセルを形成させる。次いでこのカプセルを洗浄し、乾燥させる。
【0141】
錠剤:錠剤を、投与ユニットが治療上有効量の活性成分であるように、従来の手順にて調製する。0.2ミリグラムのコロイド二酸化シリコン、5ミリグラムのステアリン酸マグネシウム、27.5ミリグラムの微晶質セルロース、11ミリグラムのトウモロコシデンプンおよび98.8ミリグラムのラクトースである。適切なコーティングを、嗜好性を高めるため、または吸収を遅らせるために適用できる。
【0142】
注射;注射にて投与するために好適である非経口組成物は、ポリエチレングリコールおよび水10%中で、活性成分の1.5重量%を攪拌することで調製する。この溶液を塩化ナトリウムで等張にし、滅菌する。
【0143】
懸濁液:水溶懸濁液を、それぞれ5ミリメーターが治療的に活性量の微細に分割された活性成分、200ミリグラムのナトリウムカルボキシメチルセルロース、5ミリグラムの安息香酸ナトリウム、1.0グラムのソルビトール溶液U.S.P.および0.025ミリメーターのバニリンを含有するように、経口投与のために調製する。
【0144】
したがって、特定の効果を実施するために、本発明の医薬的組成物を、様々な経路で、および様々な部位へ送達することができる(例えばRosenfeldet al.(1991)上記、Rosenfeldet al.,Clin.Res.,39(2).311A(1991a)、Jaffeet al.,上記、Berkner、上記参照)。当業者は、1つ以上の投与経路を投与のために使用できるが、特定の経路が、他の経路よりもより穏やかで、より効果的な反応を提供できることを認識するであろう。局所または全身性送達を、塗布、体腔内への処方の点滴注入、エアロゾルの吸引または吸入によって、または筋肉内、静脈内、腹膜、皮下、皮内、局所適用を含む非経口導入によって実施できる。
【0145】
本発明の組成物は、それぞれの投与ユニット、例えば少量の、錠剤、溶液または坐薬が、先に決定した量の組成物を、単独で、または他の活性成分との好ましい組合せで含む、ユニット投与形態を提供することができる。本明細書で使用する場合、「ユニット投与形態(unitdosage form)」なる語は、ヒトおよび動物対象に対する一体投与として好適である物理的に分離したユニットを指し、それぞれは先に決定した量の本発明の組成物を、望ましい効果を産出するのに十分な量で算出した、単独で、または他の活性成分と組合わせて含むユニットである。本発明のユニット投与形態に関する詳細は、実施すべき特定の効果、および特定の宿主での医薬的組成物に関連した特定の薬物動態学に依る。
【0146】
本明細書に記載のこれらの方法は、すべて包括的な意味ではなく、特定の適用に合うさらなる方法が当業者に明らかであろう。また、効果適量の組成物を、望ましい効果を発揮することが知られている化合物の類推を介してさらに最適化できる。
【0147】
以下の実施例は、例示するだけで、任意の様式で本発明の意図を制限することはない。
【0148】
(実施例)
実施例1 マウスatonalホモログ1(Math1)
聴覚障害を処置するための現在の方法は、直接的に問題、すなわち聴覚器官有毛細胞集団の再生を扱うことができないことが見出された。本発明は、好ましい実施形態において、bHLHファミリーのメンバー、Math1遺伝子または他のatonal関連核酸配列を指向し、小脳顆粒ニューロンおよび内耳有毛細胞の生成に関するその必要性を指向している。この発見は、以下に記述したように、神経発生の理解のためだけでなく、様々な一般的な障害に対する治療のための広い波及効果を有する。
【0149】
マウスatonalホモログ1(Math1)は、小脳顆粒ニューロンの前駆体、発生脊髄の背側での少数の細胞、内耳、メルケル細胞(皮膚上の感覚受容器)および関節に発現している。さもなければ分化した細胞内でのMath1の過剰発現が、前駆体または成熟内耳有毛細胞様細胞の形成またはそれへの分化を誘導することができる。
【0150】
小脳顆粒ニューロンの前駆体内でのMath1発現は、それが小脳および脳での機能に必要であることを示唆している。小脳は、優れた運動協調および姿勢に重要であり、その不全は、平衡、言語および指運動を混乱させる。脳発生は典型的に、菱脳中の少数の細胞集団が、外部顆粒層、脳幹、および脳橋ニューロンを形成するために、増殖し、口の周りに移動する、およそ胚日9.5(E9.5)にて始まる。このニューロン先祖の集団は、Math1を発現し続けており、小脳および脳における有力なニューロン集団である小脳顆粒ニューロンを形成するために、さらに増殖し、内部に移動する。Math1を発現していないマウスは、完全に小脳顆粒ニューロンおよびその前駆体を欠く。したがって、Math1はこれらのニューロンの産出に必須であり、10億まで増殖し、次いで分化する能力を有し、E9.5でのニューロンの極めて散在している集団を提供する(Ben−Arieet al.,1997)。これらの機能は両方とも医学的に極めて重要なものである。正常の増殖を理解するために、癌で観察されるような、異常増殖を洞察する必要性がある。始原神経外胚葉型(たとえば髄芽腫)の小脳腫瘍は、子供において、最も一般的な固体悪性物である。Math1発現細胞はこれらの腫瘍に対して明らかに一因となっている。
【0151】
Math1は、典型的に変形関節症で退化する、非骨化関節軟骨(
図6参照)で発現している。これは関節炎の最も多い形態であり、40歳以上の90%のヒトが1つまたはそれ以上の関節で、ある程度の変形関節症を示している。細胞産出および増殖でのMath1の特性を考えると、影響を及ぼす関節でのその人工的な発現は、非骨化軟骨を構成する細胞の再生を可能にすることができる。
【0152】
Math1遺伝子、そのヒトホモログ(Hath1)または任意のそのホモログ、オーソログ、キメラ融合タンパク質または任意の好適なatonal関連核酸配列の誘導体、または任意の他のatonal関連核酸配列を使用する組成物および方法が本明細書に開示されている。哺乳動物でのMath1の機能について知るために、Math1遺伝子を、Math1を発現している細胞の検出を可能にする戦略を用いてマウスより欠失させた。内耳有毛細胞、またはMath1発現が関連している他の細胞でのMath1の発現を減少させるかまたは増加させるのに使用できる化合物の選別に使用できるマウスの作製および特性化が開示されている。
【0153】
また、Math1発現が小脳顆粒ニューロンの産出および増殖に関して必須であるため、神経外胚葉起源の新生物増殖の研究、特性化および治療に関する方法が開示されている。また、Math1が、変形関節症の発達に関連している、非骨化関節軟骨産出する細胞の発生において役割を果たすことが発見された。これらの発見は、内耳有毛細胞欠失および変形関節症のようなMath1機能的欠損のために起こる他の疾患の治療に関して有用である化合物のスクリーニングの方法を提供する。
【0154】
より詳細には、本発明は、Math1遺伝子の不活性かまたは他のatonal関連核酸配列に関する動物ヘテロ接合体を提供し、そこで少なくとも1つのMath1対立遺伝子または他のatonal関連核酸配列が異種核酸配列の挿入によって置換され、そこでMath1またはatonal関連配列の不活性化が、Math1またはatonal関連対立遺伝子の発現を抑制する。マウスはさらに、Math1または他のatonal関連配列遺伝子不活性化のためにマウスホモ接合体を作製するために使用され、さらに、第2ヘテロ接合体核酸配列を含むことが可能であり、そこで少なくとも1つの異種遺伝子が、Math1またはatonal関連配列調節エレメントによって駆動される発現を検出するのに使用される。機能的Math1またはatonal関連配列の完全な、または部分的な不活性化は、たとえば固有受容(proprioreceptory)細胞、顆粒ニューロンおよびその先祖細胞、または非骨化軟骨細胞中に検出することができる。
【0155】
異種核酸配列の例は、β−ガラクトシダーゼ、グリーンフルオレセインタンパク質(GFP)、ブルーフルオレセインタンパク質(BFP)、ネオマイシン、カナマイシン、ルシフェラーゼ、β−グルクロニダーゼおよびクロラムフェニコールトランスフェラーゼ(CAT)である。Math1またはatonal関連配列はまた、調節可能プロモーター配列の制御下で置換され、または組織特異的プロモーター配列であり得る。上記プロモーター配列は、部分的または全プロモーターを含むことができる。
【0156】
本発明はまた、化合物のスクリーニングのための方法として、またはその一部として使用でき、化合物の投与は、発生および/または病理学状態が、Math1またはatonal関連配列の発現の減少の結果であるような上記状態に影響を与え、化合物をMath1またはatonal関連配列不活性化についてホモ接合体であるトランスジェニックマウスに投与すること、および発生学的および/または病理学的状態の変化に関して上記マウスをモニタすることを含み、そこで少なくとも1つのMath1またはatonal関連対立遺伝子が、異種核酸配列の挿入にて不活性化されており、Math1またはatonal関連配列の不活性化が、Math1またはatonal関連遺伝子の発現を防止する。試験可能な病理学的状態の型には、有毛細胞の欠失、小脳顆粒ニューロンまたはその前駆体の欠失、顆粒細胞増殖または遊走の欠失、小脳外部顆粒層細胞の欠失、聴力障害、平衡失調、関節疾患、変形関節症、新生物神経外胚葉細胞の異常増殖および髄芽細胞腫の形成が、限定はされないが、含まれる。本明細書で使用するように、スクリーニングが、異種核酸配列の発現をアップレギュレートすることによる、生のエフェクターである化合物に関して、および異種核酸配列の発現をダウンレギュレートすることによる、負のエフェクターである化合物に関して提供される。
【0157】
本発明の他の実施形態は、機械的受容細胞増殖を促進する方法であり、これには、細胞を、上記細胞が内耳有毛細胞マーカーを発現することを引き起こすのに効果的な量で、Math1またはatonal関連タンパク質または遺伝子と接触させることが含まれる。本方法で使用される有毛細胞マーカーには、カルレチニンが挙げられる。細胞を、Math1またはatonal関連核酸配列またはアミノ酸配列を発現しているベクターと接触させることができる。Math1またはatonal関連核酸配列発現組換えベクターには、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ベクター、プラスミド、または任意の他の核酸に基づいたベクター、リポソーム、核酸、ペプチド、脂質、炭水化物および上記ベクターのそれらの組合わせが包含される。Math1またはatonal関連配列は、例えばサイトメガロウイルスIEプロモーター配列またはサイトメガロウイルスIEプロモーター配列とSV40初期ポリアデニル化シグナル配列、または好ましいプロモーター配列、エンハンサー配列、およびポリアデニル化を任意の他の組み合わせの制御下で存在し得る。
【0158】
さらに、方法が、聴覚喪失または平衡失調のヒトを含む動物に、治療上有効量のMath1またはatonal関連アミノ酸配列または核酸配列を投与することを含む、聴覚障害または平衡失調を治療するために開示されている。聴覚または平衡失調は、完全であるかまたは部分的であり、1つの耳または両方の耳のいずれかに影響を与えてもよい。好ましい実施形態において、聴覚の本質的な障害が存在する。聴覚または平衡障害は、治療対象の動物内で別々に、または同時に影響を受けてよく、上記聴覚および/または平衡失調は、外傷、疾患、年齢関連状態の結果としてであり、または任意の理由による有毛細胞の欠失による。
【0159】
本発明はまた、送達ビーイクルと組み合わせて、Math1またはatonal関連タンパク質または遺伝子を含む組成物を指向しており、上記送達ビーイクルは、治療上有効量のMath1またはatonal関連配列を細胞内に送達させる。送達ビーイクルはさらに、動物細胞内のMath1またはatonal関連アミノ酸配列または核酸配列を含むベクターとして定義できる。上記ベクターはレトロウイルスまたはアデノウイルスベクター、または医薬的に許容可能な処方内に分散できる任意の他の核酸に基づいたベクターであり、病変内局注投与のために使用する。組成物は、Math1またはatonal関連タンパク質の細胞内への進入を促進するリポソーム、タンパク質、脂質または炭水化物を用いて送達する、部分的または完全な精製タンパク質である。送達ビーイクルとして使用できるタンパク質の例として、エキソトキシンA、コレラ毒素およびリシン毒素等の微生物毒素のレセプター結合領域(非触媒領域)、またはHIVTATタンパク質からなるタンパク質形質導入領域が挙げられる(Schwarze et al.,1999)(実施例22参照)。Math1を送達するための組成物は、融合タンパク質であってもよい。
【0160】
当業者は、本発明で開示したように、動物を治療する方法が、in vitroで、または誕生の後のいずれかでであり得ることを認識している。治療は、胚に施すことができ、またはex vivoまたはin vivoいずれかで実施できる。
【0161】
実施例2 変形関節症に関する動物モデル
変形関節症を制御する遺伝子の欠損に関する効果的な動物モデルは、胚発生を通して、1つまたはそれ以上の組織が機能的野生型対立遺伝子に戻ることができないように、安定に不活性化された両対立遺伝子をしばしば持つ可能性がある。遺伝子型を変えた動物の産出の1つの方法は、遺伝子ターゲッティングであり(Mansour et al.,1993)、そこで、新規に導入したDNA配列(すなわち標的化配列または構築物)および染色体に存在する特定の標的化DNA配列が、結果として新規に導入したDNA配列の一部分の標的化染色体DNA配列内への挿入となる。この方法は、任意の望ましい遺伝子型の動物の産出することができ、選択可能マーカーを遺伝子内に挿入するか、または完全に遺伝子を他のヌクレオチド配列に置換することによって、特定の染色体遺伝子配列での、遺伝子破壊(すなわち「ノックアウト」に)に関してとりわけ有用である。
【0162】
ゲノム配列をノックアウトするために、クローン化した断片が入手可能でなければならず、断片内のイントロン−エクソン境界が定義される(Mansouret al.,1993)。典型的には、標的化構築物には、染色体標的DNAに対して相同的な配列に隣接したNeo(ネオマイシン耐性、Mansouret al.,1993参照)等の選択可能マーカーを含み、1つのこれらの隣接する配列は、単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(HSV−TK、一般的には、McKnightet al.,1980参照)である。結果的に、標的化構築物は、相同組換えが標的化染色体DNA配列内にネオマイシン耐性マーカーの挿入となるがHSV−TK遺伝子は挿入されない胚由来幹(ES)細胞内に、たとえばエレクトロポレーションにて導入される。改変したES細胞はネオマイシン耐性およびHSV−TK耐性であり、よって、G418およびガンシクロビル抗生物質両方の存在下で増殖することができる。ランダム挿入物にはHSV−TK遺伝子が含まれ、したがってガンシクロビルに感受性である(Mansour,etal.)。次いで陽性ESクローンを芽細胞内にマイクロインジェクトして、生殖系列キメラマウスを作製し、次いでこれを交配させて、ノックアウト遺伝子に関してホモ接合体である子孫を得た。ノックアウト動物を作製するこのような一般的な方法は、マウスを用いて明らかにされている。ラット、モルモット、アレチネズミ、ハムスターおよびウサギのような他の動物の遺伝子も、好ましい標的化構造を対象の遺伝子をノックアウトするために作製するために十分なDNA配列データが入手可能であるならば使用できる。
【0163】
atoおよびMath1は高い程度の配列保存を共有しているが、発現パターンと、その機能欠失の結果の間に明らかな不一致が存在した。atoは主にハエのPNSに発現し、その欠損はほぼすべてのCHOの欠失を引き起こすが(Jarmanet al.,1993)、Math1はCNSに発現しており、その欠失は、CNSでの最大のニューロン集団である小脳顆粒ニューロンに欠損を導く(Ben−Arieet al.,1997)。atoとMath1間の機能的関連をより理解するために、本発明は、Math1コード領域のβ−ガラクトシダーゼ(lacZ)での置換によるマウス内の第2Math1ヌル対立遺伝子(Math1
b-gal/b-gal )の産出およびショウジョウバエでのatoのCNS発現に関する続く検索の実施を記載する。本実施例は、atoとMath1間の機能的関連を記載しており、atoはハエの脳に発現し、Math1調節エレメント(Math1/lacZ)の制御下でのlacZ発現は、CNS中の公知の発現パターン(すなわち神経管、脊髄および小脳)を複製はせず、ネズミPNSの多くの他の細胞で見られる。ショウジョウバエでのMath1の過剰発現は、正常の位置ではないところでCHO形成を引き起こし、これは、atoおよびMath1が機能的に保存されているさらなる証拠を提供している。
【0164】
ショウジョウバエ内のatonalおよびマウス内のMath1間の関係の一貫性および整合性は、本技術分野でのモデル系としてのこれらの使用が正しいことを示唆している。ホモログのファミリーが、MATH1,2,3,4A、4B、4Cおよび5を含むマウスでクローン化され、解析された(Azakawaet al.,1995、Bartholomaand Nave,1994、Ben−Arieet al.,1997、Ben−Arieet al.,1996、Fodeet al.,1998、Maet al.,1998、McCormicket al.,1996,Shimizuet al.,1995、Takebayashiet al.,1997)。アフリカツメガエルatonalホモログXath1は、ショウジョウバエでは、正常ではない場所に発現し、atoと同様に振る舞うことが示された(Kimet al.,1997)。さらに、Math1の正常ではない位置でのCHO形成を誘導する能力、およびCHOをato変異体胚に復帰させる能力(実施例13参照)は、Math1、とりわけその塩基性領域が、atoによってコードされたものとは同一ではない整列同一性情報をコードしており、Math1を発現している哺乳動物細胞が、機能的に、atoを必要とするショウジョウバエ細胞と同一で、おそらく進化的に関連することの強力な証拠である。したがって、ショウジョウバエでのatonalと、アフリカツメガエルでのXath1およびマウスでのMath1の間の類似性は、これらの動物が比較可能な動物モデル系であることを示唆している。さらに、とりわけヒトに関するモデル系としてのマウスの広範囲な使用もまた、ヒトでの本発明の使用を同様に許容することを示唆している。
【0165】
現在の本技術分野での標準である分子遺伝学の進展とともに、ヒトおよび他の種からの配列を、さまざまな生物で交換可能に使用できうる。たとえば、ラット誘導可能hsp70遺伝子を、誘導可能hsp70を過剰発現しているトランスジェニックマウスを産出するために使用し、これは、トランスジェニックマウスからの組織を、ラットhsp70の増加による虚血障害より保護する(Marberet al.,J.Clin.Invest.95:1446−1456(1995))。他の動物での配列が、ヒト疾病、すなわち神経変性疾病を研究するために、齧歯類モデルを開発させるために、ヒトおよび齧歯類間を含んで変換可能された。1つのそのような例は、ヒトSCA1遺伝子の発現であり、これはマウス内でataxin−1をコードしている(Burright,E.N.etal.Cell 82:937−948(1995))。トランスジェニックマウスが、正常またはCAG区間が拡張したかのいずれかのヒトSCA1遺伝子を発現して作製された。データは、拡張したCAG繰り返しが、十分量プリキンエ細胞中に発現しており、再生および運動失調を産出したことを例示した。この例は、マウスモデルが、常染色体優性遺伝神経学的疾患である、1型脊髄小脳性運動失調を研究するために確立されうることを示している。マウスモデルの開発に加えて、ショウジョウバエが本技術分野で顕著なモデル系である。Warricket al.(1999)は、ヒトhsp70とヒト変異体ポリグルタミン(MJDtr−Q78)を共発現しているトランスジェニックハエを産出した。ハエでのヒト変異体ポリグルタミンMJDtr−Q78のみの発現は、結果としてニューロンの大きな集合体の形成となる。しかしながら、ヒトhsp70との共発現では、結果として集合体は抑制される。これらの例は、遺伝子の互換性が、分子遺伝学の領域で慣例的であり、モデル系は遺伝子機能を特性化するための強力なツールを提供することを示している。
【0166】
実施例3 トランスジェニックMath1マウスの作製
RNA insituハイブリッド形成によって同定できないかすかなMath1発現パターンを検出し、したがってさらに胚発生の間の本遺伝子の役割を明らかにするために、Math1ヌル対立遺伝子(Math1β
-Gal/ β
-Gal)を、Math1コード領域をβ−ガラクトシダーゼ(β−Gal)で置換することで作製した。
【0167】
lacZカセットおよびPKG−neoカセット(
図7A)を含む標的化構築物を、Math1コード領域を置換するために使用した。Math1の全コード領域の欠失するために、標的化構築物を、pSAbgal/PGK−neoカセット(Friedrichand Soriano,1991)に隣接した先に記載したような(Ben−Arieet al.,1997)5’および3’ゲノム隣接断片を含むように作製した。構築物は、lacZ発現が内因性Math1コントロールエレメントによって操作され、一方でPGKプロモーターが選択可能マーカーneoの発現を操作するように設計した。
【0168】
構築物をES細胞内にエレクトロポレートし、neoに対する選択をG418にて実施した。76のうち14(18%)のクローンが相同組換えが起こっていた。ES細胞、卵黄嚢および尾DNAの遺伝子型決定を、EcoRI消化DNAおよび上記プローブ(Ben−Arieet al.,1997)のサザン解析を用いて実施した。標的構築物を胚幹(ES)細胞内にエレクトロポレートし、14/76(18%)のクローンがMath1遺伝子座の位置に正しい相同組換えを示した(
図7B)。
【0169】
Math1
+/b-gal 対立遺伝子を持つ3つのES細胞株を宿主胚芽細胞に注入し、キメラマウスを作製した。Math
+/b-gal マウスを同定し、内部交配してホモ接合体を作製した(
図7C)。Math1欠失を、隣接および内部プローブ両方を用いて、サザン解析により確認した(
図7A)。
【0170】
Math1β
-Gal/β
-Galマウスは、Math1
-/- マウスで報告された(Ben−Arie et al.,1997、2000)表現型特徴をすべて示した。
【0171】
実施例4 X−gal染色、組織学的および免疫組織学的解析
E0.5と称するプラグの初期で、胚を膣栓にてステージ決定した。胚を子宮より切り裂き、胚外膜より分離し、冷リン酸緩衝食塩水(PBS)中に置いた。次いで胚をPBS中の4%パラホルムアルデヒド(PFA)内で30分間固定し、冷PBSで洗浄した。卵黄嚢または尾をDNA抽出および表現型決定のために固定前に回収した。染色薬剤の浸透性を改善するために平衡化を、PBS中の0.02%NP40、0.01%デオキシコレート内で、室温にて10分間実施した。X−gal(Bonnerotand Nicolas,1993)による全体染色を、5mMフェリシアン化カリウム、5mM フェロシアン化カリウム、および40mg/mkX−gal(DMSO中に溶解)も含む、同一の平衡化緩衝液中で浸透しながら30℃にて16〜24時間実施した。望ましい強度の染色が実施されると、通常18時間以内であるが、胚をPBSで洗浄し、30分間干渉化ホルマリンで後固定し、連続的に25、50および70%エタノールで脱水し、4℃にて保存した。
【0172】
組織学的解析のために、胚をさらに80、90および100%エタノールで脱水し、Histoclear(ナショナルダイアゴノスティックス)で処理し、Paraplast(オックスフォード ラブウェア)内に包埋した。7〜20μm切片を、マイクロトン(マイクローム)を用いて切断した。対比染色をニュークリアーファストレッド(ベクターラボラトリーズ)を用いて実施した。免疫組織学を上述のように(Ben−Arieet al.,1997)実施した。抗体:抗サイトケラチン18(DAKO)1:20、抗ヒトクロモグラニンA(DAKO)1:100、抗−MATH1(以下参照)1:200。
【0173】
実施例5 トランスジェニックMath1マウスでの発現パターン
予想したように、小脳および背側脊髄でのβ−Gal発現は、Math1のものと同一であり、興味深いことに、β−Galはまた、E12.5にて耳胞上皮hのいたるところで、そしてE14.5およびE15.5にて卵形嚢、球形嚢、半規管および渦巻き管の感覚上皮でも発現した。卵形嚢はC57BL/129SVEVマウスより得た。
【0174】
全妊娠期間の1日前のE18.5でのMath1β
-Gal/ β
-Galマウスの内耳の肉眼形態学的解析により、野生型(wt)同腹子と比較して、全構造およびサイズに明らかな欠陥はなにもないことが明らかになった。VIII
th脳神経の分岐が存在し、上皮に達しているが、有毛細胞がないために退化している。
【0175】
感覚上皮を詳細に試験した。野生型、Math1
+/β
-Gal、およびMath1β
-Gal/ β
-Galマウスの卵形嚢、うずまき管をノマルスキー光学器によって感覚上皮が見ることができるように切断した。毛束が野生型およびヘテロ接合体の両方の器官で存在したが、Math1ヌル同腹子では完全になかった。渦巻き管および前庭器官の走査型電子顕微鏡図(SEM)により、ヌルマウスでの毛束がないことを確認した(
図2A〜
図2F)。毛束の欠失が、有毛細胞がないことに関係があるかどうかを決定するために、光学顕微鏡および透過型顕微鏡(それぞれLMおよびTEM)を用いて、すべての内耳器官の感覚上皮の切片を試験した(
図3A〜
図3F)。LMおよびTEMを上述のように(Lysakowskiand Goldberg,1997)実施した。SEMに関する組織調製は、オスミウム酸染色(カコジル酸緩衝液中1%OsO
4 )、脱水、臨界点乾燥、金によるスパッターコーティング、およびJEOL35S電子顕微鏡での試験からなる。
【0176】
光学顕微鏡により、ヌルマウスでの感覚上皮は明らかに薄く、細胞核の正常層状構造を欠き、不均一に染まり、これらはすべて有毛細胞がないことと関連する。TEMは、明らかに正常卵形嚢での有毛細胞と支持細胞を見分ける。有毛細胞は毛束、低電子密度細胞質、より先端の核を持ち、分泌顆粒を持たない(
図4Aおよび4B)。ヌル変異体の感覚上皮は、有毛細胞を完全に欠き、しかし電子密度細胞質、基底部核および分泌顆粒を含む正常な形の支持細胞は持つ(Rusch,etal.,1998)。しかしながら、ヘテロ接合体Math1
+/b-Gal マウスは有毛細胞を残している。
【0177】
実施例6 トランスジェニックMath1マウスでの有毛細胞特異的マーカーの発現
E18.5での有毛細胞の欠失は、POU領域転写因子Brn3cのない状態で観察されたような、(1)感覚細胞先祖の欠失、(2)有毛細胞に分化する先祖の不能性、または(3)分化状態を維持する有毛細胞の不能性のためであり得る。第1の可能性は、先祖が、有毛細胞および支持細胞両方を作り出すから可能性がないようである。残っている可能性を評価するために、有毛細胞特異的マーカー、カルレチニンおよびミオシンVIの発現を試験した。カルレチニンはタンパク質のカルシウム結合ファミリーのメンバーであり、分化有毛細胞(毛束形成の前)および成熟内耳および聴覚有毛細胞で発現しているが、支持細胞には発現していない。Math1β
-Gal/ β
-Galおよび野生型マウスでのカルレチニン発現を、E15.5、E16.5およびE18.5胚の冠状切片上の免疫蛍光検査にて研究した(
図5A〜
図5F)。
【0178】
免疫蛍光検査に関して、胚を1.5時間、4%パラホルムアルデヒド/PBS中で、4℃にて固定し、5時間、15%スクロース/PBS、次いで一晩30%スクロース/PBSを介して浸潤させ、2−メチルブタン乾燥氷浴中で素早く凍結させた。14μm切片を、クリオスタット上で切断し、ゼラチンコートスライド上に載置した。切片をスライド上で、ストレック(Streck)組織定着剤(ストレックラボラトリーズ)中に10分間浸し、風乾することで固定化した。切片を、PBS中の30%正常ヒツジ血清および0.3%トライトンX−100中で、室温(RT)にて1時間ブロッキングした。ラビット抗カルレチニンポリクローナル抗体(ケミコンラボラトリーズ)をブロッキング溶液中で1:200に希釈し、4℃にて切片上で一晩インキュベートした。切片をリン酸緩衝食塩水(PBS)中でRTにて3回(それぞれ20分間)洗浄した。二次抗体抗ラビット抗体、アレキサ(Alexa)488(モレキュラープローブス)をブロッキング溶液中で1:400に希釈し、カルレチニンの検出に使用した。切片を覆い、RTにて2時間インキュベートし、DAPI含有ベクタシールド(Vectashield)(ベクター)中で洗浄および載置した。共焦点顕微鏡のために、切片を25μg/mlのRNAseと共に処理し、50μg/mlのヨウ化プロピジウムで対比染色し、DAPIを含まないベクタシールド(Vectashield)中でマウントした。染色した切片をバイオラッド(Bio−Rad)1024共焦点顕微鏡下で観察した。
【0179】
カルレチニン陽性細胞は、野生型マウスの半規管および卵形嚢の感覚上皮にて明らかに見ることができるが、しかしMath1β
-Gal/ β
-Gal胚はすべての3つの状態でカルレチニンの発現を欠いている。本明細書で開示したマウスモデルを用いて、本発明者等は、有毛細胞がMath1β
-Gal/ β
-Galマウスの感覚上皮内では発生しないことを示した。(支持細胞によってところどころで分泌された)蓋膜および平衡砂膜の存在は、TEMの結果と共に、Math1β
-Gal/ β
-Galマウスの感覚上皮での残っている細胞が機能的な支持細胞であることを示唆している。
【0180】
実施例7 Math1/lacZ発現は、発生CNS中のMath1発現を模倣するMath1
+/b-gal およびMath1β
-Gal/β
-GalマウスにおけるE14.5および誕生日0(P0)での発生している小脳をRNAin situ ハイブリッド形成解析にて解析した。
【0181】
解析は、lacZ遺伝子の発現パターンが、上述した(Akazawa et al.,1995,Ben−Arie et al.,1996)RNA in situハイブリッド解析によって観察されたMath1発現パターンを正確に再産出していることを示した(
図2A、B、E、G)。さらに、Math1β
-Gal/ β
-Galマウスでの小脳表現型(
図8Fおよび8H)は、Math1ヌルマウスで観察されたもの(Ben−Arieet al.,1997)と同一であった。E14.5において、EGLの前駆体が、そこより小脳原基上を移動し、EGLを構成する、菱唇に存在する(
図8E)。変異体マウスは、ヘテロ接合体マウスよりもこれらの細胞をより少なく提示している(
図8F)。P0において、外部顆粒層(EGL)のニューロンは完全に欠失していた(
図8H)。
【0182】
発生菱脳および脊髄でのMath1/lacZ発現は、Math1の発現パターンを同様に再産出した(
図8C、8D)。insituハイブリッド形成とlacZ染色によって示された発現パターンの唯一の顕著な差は、b−GALタンパク質の安定性のために、b−ガラクトシダーゼ発現が脊髄の分化または誘導細胞で持続していることである(
図8D)。要約すると、ニューロン組織発現パターンおよびMath1コード領域のlacZによる置換に関連した小脳表現型は、Math1発現において先に発行されたデータ(Akazawaet al.,1995、Ben−Arieet al.,1997、Ben−Arieet al.,1996、Helmsand Johnson,1988)と一致し、外来制御エレメントがlacZ遺伝子の挿入によって崩壊しないことを示唆している。さらに、多くの先には検出されていないlacZ発現細胞のクラスターが、Math1
+/b-Gal マウスの全胚および切片のX−gal染色にて明らかになった(以下参照)。より早期の研究で、転写物を検出するために使用したRNAin situハイブリッド形成技術の空間的分解能の制限が、発現のこれらの部位を識別することから妨げた可能性がある(Akazawaet al.,1995、Ben−Arieet al.,1996)。あるいは、lacZ遺伝子産物の安定性およびシグナル増幅による感受性の増加が、相対的に低発現レベルの部位を同定することを可能にした。
【0183】
実施例8 Math1/lacZは内耳感覚上皮に発現する
内耳の感覚器官は、Math1/lacZ発現の新規に同定した部位内であり、実施例2で記載した方法を用いて示した。耳胞での発現がまずE12.5で検出され、ほとんどの感覚上皮のいたるところでE18.5まで続いた(Berminghamet al.,1999)(
図9A、9B)。ヌル変異体は、胚発生を通して内耳でMath1/lacZを提示した(
図9C)。Math1ヌル変異体は、すべての感覚器官で有毛細胞を欠いているが(Berminghamet al.,1999)、しかし支持細胞、他の感覚上皮由来細胞を保持している(
図9C)。これらの支持細胞は、その形態学およびそれらの細胞にて部分的に分泌された重なり合った膜の存在に基づいて、機能的であるように見えた。内耳感覚上皮でのMath1の発現が、RNAin situハイブリッド形成解析にて示されなかったが、ヌル変異体での内耳有毛細胞の完全な欠失では、Math1/lacZ発現パターンの忠実性については、なんの疑いも残していない。
【0184】
Math1は、内耳での有毛細胞発生に対して明らかに必須である。その発現パターンおよびinvivoでの機能は、Math1全ニューロンホモログ、atonal(ato)のものと類似している(A.P.Jarman,Y.Grau,L.Y.Jan,Y.N.Jan,Cell73,1307−21(1994))。atoは、ショウジョウバエの触覚ディスク内の上皮細胞の環に発現している。これらの上皮細胞のいくつかは、続いてジョンストン(Johnston)器官内で機械的受容体に発達し、これは聴覚および負の走化性に必要である。興味深いことに、機械的受容体始原細胞がato変異体では存在せず、一方で、Math1ヌルマウスではその先祖ではなく機械的受容体のみが存在しないことが明らかになった。
【0185】
本明細書で行った観察に基づき、本発明は、Math1が内耳有毛細胞の特性化に必要であることが認識された。ある意味、Math1は、発生感覚上皮において、「プロ有毛細胞遺伝子」として働く。2つの最近の研究に関連して、本発明者らは、本明細書で提供された結果が、有毛細胞と支持細胞を決定する外側阻害モデル(Haddonet al.,1998、Adam,etal.,1998)を支持する証拠を提供し、そこでは、Delta、NotchおよびSerratelの相互作用が結果として、有能な細胞のクラスターからの個々の有毛細胞分泌となる。そのようなモデルは、感覚上皮が、その機能が有毛細胞運命特定化に必須である「プロ有毛細胞遺伝子」を発現していることを理論的必然として意味する。
【0186】
ショウジョウバエでのatoおよびアフリカツメガエルでのそのホモログXath1の正常ではない位置での発現(Kimet al.,1997)は、特定のニューロン運命へ上皮細胞を招き入れることが可能であり、内耳上皮でのMath1の発現は、機能的Math1遺伝子の欠失が、難聴および前庭不全の共通の原因である可能性があることを示唆している。
【0187】
実施例9 Math1/lacZは脳幹核に発現している
脳幹において、Math1/lacZ染色が、橋核に相当する領域での腹側橋で、E18.5〜P7で見られた(
図9Dおよび挿入図)。この発見は、Akazawaとその共同研究者らの、発生菱脳中のMath1−陽性細胞が延髄橋ニューロンの前駆体であるという仮説と一致している(Akazawaet al.,1995)。そのような染色は、ヌル変異体では見られない(
図9Eおよび挿入図)。これらのデータは、橋核中のlacZ染色の欠如が、その前駆体の遊走、増殖および/または分化の失敗による可能性を高める。腹側橋核を、切片のヘマトキシリンおよびエオシン染色にて試験し、ヌルマウスの脳幹で見えなくなっていることがわかった(
図9F、
図9G)。さらに、ヌルマウス新生児の呼吸不全は、これらの脳幹ニューロンの欠如による可能性がありうる。
【0188】
実施例10 Math1/lacZは軟骨細胞で発現しているMath1
+/b-Gal ヘテロ接合体は、関節軟骨中のMath1の発現を提示している(
図6Aおよび
図6B)。
図6Aは、前肢のすべての関節での発現を示している。肘関節のより近い試験において、Math1は、非骨化関節軟骨細胞で独占的に発現していることが示された。
【0189】
Math1/lacZの発現が、早ければE12.5に、尻および肩のもののような発生近位関節で検出された(
図10A)。X−gal陽性染色は、続く発生ステージにて、正常の関節の発生と平行した連続的な近位−遠位パターンで検出された(
図10B)。関節において、Math1/lacZ発現は、間葉凝縮の直後に続き、それはE11.5に始まる。凝縮した間葉細胞は軟骨に分化する(Bi et al.,1999、Horton et al.,1993、Karsenty,1998)。
【0190】
軟骨細胞は、骨形成の間、3つの主要な相、すなわち、静止、増殖および肥大にて分化する。関節軟骨を構成する静止している軟骨細胞は、関節軟骨細胞として呼ばれる(Buckwaklterand Mankin,1998、Poole,1997)。誕生より前、静止軟骨細胞は、関節において全軟骨細胞集団を構成している。どの細胞がMath1/lacZを発現しているか確立するために、E18.5〜P7のMath1
+/b-gal マウスからの切片をX−galで染色した。Math1/lacZは、E18.5にて解析したすべての関節の静止軟骨細胞で発現しており、肘関節中の静止軟骨細胞を
図10Cで示し、
図10DはP7マウスの静止している、増殖しているそして関節軟骨細胞を示している。
【0191】
E18.5胚の関節を、以下の方法で調製した抗MATH1抗体で試験した。Math1オープンリーディングフレームのN末端156アミノ酸をコードしているEcoI−HindIII断片(Math1D)をpET28a+発現ベクター(ノバジェン)内にクローン化した。Math1D断片は、Hisタグ融合タンパク質として発現した。可溶性MATH1Dタンパク質を、Hisタグキット説明書(ノバジェン)に従って精製し、2mgのタンパク質をチキンズ(Chickens)(コカリコバイオロジカルズ社)を免疫するのに使用した。
【0192】
発現は、静止軟骨細胞で見ることができ、一方ヌル胚では何の発現も観察されなかった。すべての関節軟骨細胞がMath1/lacZを発現していないことに気づくべきである(
図10E)。Math1ヌル変異体でのMath1/lacZ発現は、E18.5でのヘテロ相同体マウスのそれと同一であり、このことはMath1が静止軟骨細胞発生に必要ではないことを示している。
【0193】
実施例11 Math1/lacZはメルケル細胞に発現している
E14.5までに、Math1/lacZ陽性細胞が、震毛周辺およびほとんどの体の皮膚で見られた(
図10B)。体幹において、染色された細胞が、表皮隆起によって規定された縦縞パターンで整列した。この染色は、無毛皮膚ではなく、毛深い皮膚でのみ見られた。側鼻、上顎および4つの大毛を含むすべての一次(神秘的な)震毛がMath1/lacZに対して陽性である。染色はまた、口唇、おとがい下、鼻および単離した眼窩(上方−、下方−および後眼窩)を含む第二震毛にて検出された(Yamakadoand Yohro,1979)。E15.5まで、染色が、フットパットでの細胞のクラスターで見られた(
図10B)。
【0194】
震毛、フットパッド、および毛深皮膚でMath1/lacZ陽性細胞を同定するために、本発明者等はMath1
+/b-gal マウス由来の組織学的切片を試験した(
図11A−11D)。震毛を介した切片は、染色された細胞が、毛シャフトのよりアピカル側に局在しており、毛自体中ではないことを示した。フットパッドを介した横断切片は、上皮層での細胞のクラスターの染色を示した(
図11B、
図11C)。
図11Dに示したように、幹皮膚を介した切片はMath1/lacZ染色細胞のクラスターを同定した。染色された細胞は、毛深い皮膚での増加したボタン様構造内に中心を置く、蹄鉄型パターンに配置された。これらのボタン様構造は、接触ドームまたはハールシェイベン(Pinkus,1905)として同定され、厚い上皮および毛細ネットワークを備えた皮膚乳頭の増加にて特徴づけられる。接触ドームは、コート中の多の毛型間に分散している大保護毛に関連している。Math1/lacZ染色細胞の空間的分布、E14.5でのその発生のタイミングと、毛深い皮膚での震毛の神秘的なパッドおよび接触ドーム内での局在は、これらの細胞がメルケル細胞、ゆっくりと適応する神経突起とのI型機械的受容体複合体を形成する上皮中の特性化された細胞(Munger,1991)に相当することを示唆している。
【0195】
ヘテロ接合体およびホモ接合体E16.5動物でのMath1/lacZ発現パターンの比較解析の結果を、
図11E〜
図11Lに表している。Math1
b-gal/b-gal 胚は、震毛およびフットパッドでのMath1
+/b-gal のものと同様の染色パターンを示した(
図11E〜
図11G、
図11I〜
図11K)。反対に、毛深い皮膚の接触ドーム中の染色は、Math1
b-gal/b-gal 胚でわずかに検出可能であった(
図11H、L)。ヌル動物での染色の減少が、E18.5にて観察された。
【0196】
皮膚でのMath1/lacZ陽性細胞をさらに規定するために、Math1
+/b-gal マウスをTabbyマウスと交配した。Tabby(Ta)は、ヘミ接合体オスおよびホモ接合体メスで類似の表現型を示している自発的なX連結変異体である(Fergusonet al.,1997)。Tabby変異体は、毛穴(チロトリック)、体幹の毛深い皮膚での接触ドームに関連するメルケル細胞亜種(Vielkindet al.,1995)、および頭上の5つの第2震毛の内のいくつか(Gruneberg,1971)を欠いている。したがって、Ta/Taメスをヘテロ接合体Math1
+/b-gal オスと掛け合わせることで、50%のオス子孫がTa/Y:Math1
+/b-gal であり、このことはMath1/lacZ陽性細胞がメルケル細胞に相当するかどうかを査定することができる。
【0197】
Ta/TaメスをMath
1+/b-galオスと定期交配させ、胚をE16.5の時点で回収した。それぞれの子供の性を、染色体Xからの320bpの産物および染色体Yからの300bpの産物を産出するプライマー(フォワード5’−TGAAGCTTTTGGCTTTGAG−3’、配列番号67、およびリバース5’−CCGCTGCCAAATTCTTTGG−3、’配列番号68)を用いて尾DNAにおけるPCR(Liu et al.,1999)にて決定した。増幅条件は、94℃で7分間の初期変性工程、72℃で7分間の最終伸張工程を持つ、92℃/1分間、55℃/1分間、72℃/1分間の32サイクルであった。増幅産物を2%アガロースゲル上で分離した。X−gal染色胚を、独立して2つの個体によってスコア化し、次いで決定した性と結果が適合する。
【0198】
Math1
+/b-gal 対立遺伝子を持っているTabbyメスおよびオスは、震毛およびフットパッドでX−gel染色を示した(
図12A、
図12B)。第2震毛の数におけるTabby変位の影響はとても明白であり、ヘミ接合体オスは、第2震毛で、そして体幹上で(
図12E)Math1/lacZ陽性細胞を完全に欠く(典型的にはTa変異体での欠失)。Tabbyに関してヘテロ接合体であるメスは、ランダムX染色体不活性化を受けている遺伝子内の変異を持つメスで予想されるべきように(wtよりも少ないが)接触ドームで、一様ではない染色を示す(
図12C、
図12D)。陽性細胞の局在化および分布、ならびにTabbyオスの選択した震毛および体幹中でのその欠乏は、Math1が、毛深い皮膚の接触ドーム内の小胞の保護に関連するメルケル細胞中に発現していることを強く示唆している。
【0199】
Math1/lacZ染色パターンは、正常のMath1発現パターンを反映するかどうかを確かめるため、MATH1の免疫組織化学的解析を腹部皮膚(実施例2参照)からの切片で実施した。
図13Aおよび
図13Bで見られるように、MATH1陽性細胞は、Math1
b-gal/b-gal マウスではなく、Math1
+/+ マウスの毛小胞の周りに検出された。2つのメルケル細胞マーカーに対する抗体を、さらなる解析のために選択した。単純上皮に発現している抗サイトケラチン18と、神経内分泌、内分泌およびニューロン組織の分泌顆粒に局在しているクロモグラニンである。サイトケラチン18(
図13C、
図13D)およびクロモグラニンA(
図13E、
図13F)両方とも、メルケル細胞と同様にMath1/lacZ陽性細胞の同定を確かにするが、Math1
b-gal/b-gal マウスでの染色異常を明らかにはしなかった。したがって、Math1は神経内分泌メルケル細胞の発生に必須であるようには見えず、一方で純粋なニューロン細胞様小脳EGLおよび橋核の発生には必須であるように見える。Math1ヌル変異体が生誕時に死亡するので、本発明者らは、メルケル細胞の全クラスターが形成され、またはこれらの変異体でのメルケル細胞の機能的完全性が影響を受けるかどうか査定することはできない。
【0200】
実施例12Math1は、atoが検出されたハエで、チャイニーズハムスター卵巣細胞を部分的に救出する本実施例は、atonal関連遺伝子が、自然のatonal関連遺伝子または遺伝子産物を欠失している動物中のCNSの発生を誘導できることを示している。本実施例はまた、atonal関連遺伝子が、それらはもともと発現していない種において、治療的に機能できることを示している。
【0201】
atoとMath1、およびその同一の塩基領域の発現パターンの明らかな類似性を考えると、Math1を、以下の方法にて記載したように、正常ではない位置での弦音器官を産出することでのato過剰発現の効果を模倣するかどうかを見るために試験した。ywハエとしても知られる野生型を、記載したような(Brand and Perrimon,1993)UAS−Math1構築物で形質転換した。野生型ハエywでMath1を過剰発現させるために、UAS−Math1ハエをHS−Gal4ハエと交配した。子孫を上述のように(Jarmanet al.,1993)ヒートショックにかけた。ato変異体ハエ、w;UAS−Math1/UAS−Math1中の弦音器官の欠失を回復させるために、atol/TM6ハエを、w;HS−Gal4/CyO;ato1/TM6ハエと交配した。胚を3時間で回収し、3時間加齢させ、30分間、37℃でヒートショックにかけ、ついで12〜15時間発生させた。胚を50%ヘプタンを含むPBS中の4%ホルムアミド中で固定した。胚を100%エタノールで洗浄し、PBTに移し、上述したように(Kaniaet al.,1995)、mAb22C10で染色し、PNSニューロンを検出した。弦音器官ニューロンをその異なる形態および位置より同定した。
【0202】
UAS−Gal4系(Brand and Perrimon,1993)を用いたヒートショックによるさなぎ発生の間のMath1の発現は、結果として、ato(Jarmanet al.,1993)およびAchaete−Scutecomplex(AS−C)遺伝子(Brand and Perrimon,1993、Rodriguez et al.,1990)に関して報告されたように、胸背板(
図14A、
図14B)および羽根上の不必要な外部感覚器官となる。atoと同じように、ハエでのMath1発現は、効率はよくないが、正常ではない場所での弦音器官を産出する(
図8G)。しかしながら、AS−C遺伝子の過剰発現は、結果として正常ではない場所での弦音器官とはならない(Jarmanet al.,1993)。したがって、Math1はatoと同一の機能的特異性を持っている。
【0203】
いくつかのatoエンハンサーが、ato依存的であるので(Sun et al.,1998)、これらはMath1によって活性化され得、次いで正常ではない場所のCHO特定化を導く。Math1が、ハエでのato機能を置換できるかどうかを決定するため、およびMath1によるCHOの産出がato活性化によるものである可能性を明らかにするために、Math1をato変異体胚に発現させた。変異体はすべての弦音ニューロンを欠いたが(
図14C)、Math1の過剰発現は、atoと同様の様式で、これらのニューロンの欠失を部分的に回復させた。
【0204】
実施例13 CNSおよびPNSでのatonalおよびMath1の重要性
過去数年間にわたり、明らかな進展が、脊椎動物神経発生におけるbHLHの役割を解明することに注がれてきた。atoまたはAS−C遺伝子のようなショウジョウバエホモログが、神経発生に必要であることが先に示されたので(Anderson,1995、Guillemot,10461995、Lee,1997、Takebayashi et al.,1997)、神経脊椎動物bHLHコード遺伝子が単離され、特性化された。実際、いくつかの遺伝子が、それらの欠損が神経芽細胞または感覚器官前駆体(SOP)特性化の失敗を引き起こすので、前神経性であることが示され、一方、その過剰発現が不必要な神経前駆体の増加を導く(Ghysenand Dambly−Chaudiere,1989)。ニューロゲニン(Ngn)1および2を除いて(Fodeet al.,1998、Maet al.,1998)、どの脊椎動物ホモログが、そのショウジョウバエ相対物と同様の役割を果たすのか、そしてどの正確な役割の異なるbHLHタンパク質が神経発生で機能するのかまだわかっていないままである。ショウジョウバエにおいて、atoは感覚器官の特定の部分集合、弦音器官の発生に必要である(Jarmanet al.,1993)。CHOは、PNS(McIver)の内部機械的感覚器である。そこで、atoとCHOは、前神経遺伝子の機能に関して、脊椎動物と脊椎動物神経発生の分子的および発生的相関だけでなく、感覚器官機能および特性化の遺伝的保存も確かにするための優れた系を提供する。7つのatoホモログをマウス中でクローン化し、解析した。マウスatonalホモログ(MATH)1、2、3、4A(Ngn2としても知られている)、4B(Ngn3)、4C(Ngn1)および5である(Akazawaet al.,1995、Bartholomaand Nave,1994、Ben−Arieet al.,1997、Takebayashiet al.,1997)。ほとんどが、CNSおよびPNS両方での神経発生の間に発現した。これらのホモログは、その配列保存の程度が異なっており、3つの群に分類できる。最も遠い関連群は、ニューロゲニンであり、Ngn1、2および3が含まれる。これらの遺伝子産物は、bHLH領域に置いて、ATOと平均して53%同一性を共有する。これらは、広く有糸分裂CNSおよび感覚神経節始原細胞で発現している。最近の研究により、これらの遺伝子が、神経芽決定で役割し、したがって正確な前神経遺伝子であることが示された(Fodeet al.,1998、Maet al.,1998)。第2の群はMATH2およびMATH3を含み、これらはATOと、bHLH領域に置いて、57%同一性を共有している。これらのタンパク質は、有糸分裂後神経細胞で機能することが仮定された(Bartholomaand Nave,1994、Shimizuet al.,1995)。Math2発現はCNSに対して確認され、一方Math3はCNSおよび三叉神経と背側根神経節両方で発現している。第3の群にはMATH1およびMATH5が含まれ、これらはそれぞれATOのbHLH領域と67%および71%同一性を共有する。両方の遺伝子がATOのものと同一の塩基性領域をコードしていることに注目すべきである。興味深いことに、ATOの塩基性領域は、他の前神経タンパク質(SCUTE)に関して、ato機能の欠失を置換するのに十分であるように見えた(Chienet al.,1996)。Math1はまず、小脳のEGLの前駆体、および背側脊髄で発現していることが示された(Ben−Arieet al.,1997、1996)。Math5は、発生網膜での分割前駆体、および迷走神経節で発現している(Brownet al.,1998)。神経網膜でのMath5発現を除いて、これらの観察は逆説を提示する。どの脊椎動物ホモログも、atoが発現している場所と類似の末梢器官または組織で発現していない。Jarmanet al.(1993)は、atoがCNSで発現していることを報告した。本明細書に記載の実施例において、眼葉の内部増殖中心に加えて、atoは、それぞれの脳葉の細胞の小さな前方内側パッチで発現している(
図8F)。しかしながら、正確にatoがどんな役割をショウジョウバエCNS発生で果たしているのかはっきりしていないままであるので、atoとその脊椎動物類似体が機能的保存を示しているのかを論ずることは難しい。本発明者等の実験は、前もって特性化されていないMath1の発現部位を明らかにしている。予想したように、本発明者等は、Math1の発現に相当する、CNS中でのMath1/lacZの発現を発見したが、しかし本発明者等はまた、Math1が、ハエでのato発現と著しく平行して、皮膚、関節および内耳に発現することを発見した。さらに、耳(感覚上皮)および皮膚(メルケル細胞)での発現は、その機能が機械的刺激を神経電気化学的シグナルに変換することである感覚構造に限られている。ショウジョウバエにおいて、atoが同時に2つの機能を果たしているように見られることを指摘することが重要である。CHOの前駆体を選別すること(前ニューロンの役割)のみでなく、CHO前駆体としてこれらの前駆体を特性化すること(系列同定の役割)を必要とする(Jarmanand Ahmed,1998、Jarmanet al.,1993)。末梢でのMath1発現の特異性は、それがまた、他の感覚構造より機能的にそれらを区別するために、非常に特異的な系列同一性を持つ特定の細胞を与えることができるとの推測を促進する。Math1の、正常ではない位置でのCHO形成を誘導し、ato変異体胚に対してCHOを回復させる能力は、Math1、およびとりわけその塩基性領域が、atoによってコードされているものとは異なる系列同一性形成をコードしているといる概念を支持する。このことは、少なくとも耳および皮膚でMath1を発現している哺乳動物細胞は機能的に類似であり、おそらく進化上atoを必要とするショウジョウバエ細胞と関連している。さらに神経網膜におけるMath5の発現が、ハエでのatonalの機能が、マウスでの2つの遺伝子によって実施されていることを示しており、いくつかの機械的受容体がMath1の制御下で、網膜発生がおそらくMath5の制御下である。完全に配列決定された線虫、C.elegansにおいて、ただ1つのatonalの類似物、lin−32が同定された(Zhaoand Emmons,1995)ことに言及することは興味深いことである。lin−32のu282対立遺伝子を持つ変異体は、感覚不感受性であり、機械的受容体でのatonal機能の遺伝的保存に関する主張を強固にする。橋核でのMath1/lacZ発現のパターンは、この領域がヌル変異体にて慎重に評価すべきであることを示唆している。Math1ヌルマウスの橋にはなんの欠陥も本来検出されなかったが(Ben−Arieet al.,1997)、より近い解析により、この部分での橋核の欠如が明らかになった。これらのニューロンは、Math1ヌルマウスでまた欠失しているEGLニューロンのように、菱唇より由来する(Altmanand Bayer,1996)。皮膚および耳でのMath1とato発現間で類似であるけれども、それが関節の場合当てはまるかは、明らかではない。ハエ関節でのato発現は、脚CHOの形成に必要である。反対に、Math1は、ニューロン機能が記載されておらず、ハエにおいて対応するものが存在しない制止および関節軟骨細胞で発現している。軟骨でのMath1発現が、機械的受容体遺伝子に関する新規の役割を示唆しているとしてよく、または様々なMath1発現細胞型の発生の基礎をなしている分子事象での類似性を簡単に反映している可能性がある。あるいは、CHOはまた、ハエでの関節構造要素として機能し、または関節軟骨は、記述された機械受容性または形質導入能力を有する。現時点で、これらの可能性の1つまたは他を支持する証拠は存在しない。atoおよびMath1の機能の解析により、神経発生および感覚機能の進化的保存に関する我々の理解が深まるであろう。Math1発現の部位および特異性は、加齢関連または環境障害による聴覚欠損および変形関節炎のような疾病に対する遺伝子治療または遺伝子活性化アプローチのツールとして好適なものとする。
【0205】
実施例14 アデノウイルスを用いたatonal関連核酸送達
ヒトアデノウイルスは、およそ36kbのゲノムサイズの二本鎖DNA腫瘍ウイルスである。真核生物遺伝子発現に対するモデル系として、アデノウイルスが広く研究されており、十分に特性化されており、遺伝子伝達系としてアデノウイルスの発達に関する魅力的な系となる。このウイルス群は、増殖および取り扱いが簡単であり、これらはinvitroおよびin vivoで広い宿主範囲を示している。細胞溶解性に感染した細胞において、アデノウイルスは宿主タンパク質合成を停止させること、多量のウイルスタンパク質を合成することへ細胞機能を指向すること、および多量のウイルスのコピーを産出することが可能である。
【0206】
ゲノムのE1領域には、ウイルスゲノムの転写調節を引き受けるタンパク質をコードしているE1AおよびE1B、および数個の細胞遺伝子が含まれる。E2AおよびE2Bを含むE2発現はウイルスの複製機能、たとえばDNA結合タンパク質、DNAポリメラーゼ、および複製の元となる末端タンパク質の合成を可能にする。E3遺伝子産物は、細胞傷害性T細胞および腫瘍壊死因子による細胞溶解を防ぎ、ウイルス増殖に重要である。E4タンパク質に関連した機能には、DNA複製、遅延遺伝子発現、および宿主細胞停止が包含される。遅延遺伝子産物には、ほとんどのビリオンカプシドタンパク質が含まれ、これらは、主要な遅延プロモーターからの単一初期転写物のほとんどの処理が起こった後のみに発現する。主要遅延プロモーター(MLP)は、感染の後期の間高い効率を示す。
【0207】
ウイルスの小さな部分のみがcisにて必要であるので、アデノウイルス由来ベクターは、293細胞のような細胞株と共に使用する場合、大きなDNA断片を置換する優れた潜在能力を提供する。Ad5−形質転換ヒト胎児肝臓細胞株が、intransで必要なウイルスタンパク質を提供するために開発された。したがって、本発明者等は、アデノウイルスの特徴が、invivoでのMath1欠損細胞の標的化における使用のよい候補であることを示すと結論付けた。他の実施形態において、これらの構築物にはHath1または任意のatonal関連核酸配列が含まれる。
【0208】
外来タンパク質を細胞に送達するためのアデノウイルス系の特定の利点には、(i)外来DNAによって、比較的大きなDNA部分を置換する能力、(ii)組換えアデノウイルスの構造的安定性、(iii)ヒトへのアデノウイルス投与の安全性、(iv)アデノウイルス感染の、癌または悪性物との任意の公知の関連がないこと、(v)高力価の組換えウイルスを得る能力、(vi)アデノウイルスの高感染性が含まれる。
【0209】
レトロウイルスに対するアデノウイルスの1つの利点は、より高いレベルでの遺伝子の発現である。さらに、アデノウイルス複製は、レトロウイルス配列とは違い、宿主遺伝子複製に依存しない。E1領域でのアデノウイルス形質転換遺伝子は簡単に削除でき、まだ十分な発現ベクターを提供でき、アデノウイルスベクターからの癌遺伝子リスクは無視できると考えられる。
【0210】
一般的に、アデノウイルス遺伝子送達系は、E1のようなそのゲノムの一部分を削除することで複製不能を与え、まだその感染能力は保っている、組換え体、遺伝子工学的に改変したアデノウイルスに基づく。比較的大きな外来タンパク質を、アデノウイルスゲノムでさらなる除去を行うと、発現できる。例えば、E1およびE3領域両方を欠失したアデノウイルスは、10Kbまでの外来DNAを運ぶことが可能であり、293内で高い力価まで増殖できる。驚くべきことに、アデノウイルス感染後の導入遺伝子の持続発現が可能である。アデノウイルス遺伝子送達系の使用は、関節の発生期の、または傷害を受けた軟骨での細胞へのMath1の送達により有用であり得る。とりわけ、Math1アデノウイルスがMath1を送達し、変形関節症の結果として傷害を受けた非骨化関節軟骨中でのMath1遺伝子発現を与えるために使用できる。
【0211】
実施例15 Math1アデノウイルス構築物
Math1の制御発現のための組換え体ウイルスを、高力価、広い標的範囲、効率のよい形質導入、および有毛細胞への細胞の形質転換に関する標的細胞中への組込みのようなアデノウイルスベクターの利点を利用して構築できる。1つの実施様態において、これらの構築物には、Hath1または任意のatonal関連核酸配列が含まれる。本発明の1つの実施形態において、複製不全、ヘルパー非依存性アデノウイルスを、ヒトサイトメガロウイルスプロモーターまたはメタロチロネインプロモーターの制御下で野生型Math1配列を発現するように作製した。
【0212】
発現ベクター上の制御機能はしばしば、発現が哺乳動物細胞で望ましい場合にウイルスより提供される。たとえば、一般的に使用されるプロモーターは、ポリオーマ、アデノウイルス2、シミアンウイルス40(SV40)に由来する。両方ともSV40ウイルス複製起源をも含む断片としてウイルスより簡単に入手できるので、SV40ウイルスの初期および後期プロモーターがとりわけ有用である。より小さな、またはより大きなSV40断片もまた、ウイルス複製起源に局在するHindIII部位からBglI部位まで延びているおよそ250bp配列を含むという条件で使用できる。さらに、そのような制御配列が宿主細胞系または標的細胞と適合可能であるという条件で、通常Math1遺伝子配列と関連するプロモーターまたは制御配列、すなわちMath1プロモーターと呼ばれるものを使用することも可能であり、しばしば望ましい。1つのそのような標的細胞は、内耳有毛細胞が必要であるヒト患者での内耳に局在する。
【0213】
複製起源は、SV40または他のウイルス(たとえばポリオーマ、アデノ、VSV、BPV)源より由来可能なような、外来起源を含むようにベクターを構築することによって提供可能であり、または宿主細胞染色体複製機構によって提供可能である。ベクターが宿主細胞染色体内に挿入される場合、後者がしばしば十分である。
【0214】
実施例16 レトロウイルスを用いたatonal関連核酸送達
遺伝子送達の他のアプローチは、ウイルスが細胞内に入り、その自己の遺伝的物質をそれらに運ぶ本来の能力を利用している。レトロウイルスは、その遺伝子を宿主ゲノム内に組込む、多数の外来遺伝的物質を移送する、広範囲の種および細胞型に感染する能力により、そしてこれらが特別の細胞株に簡単にパッケージされるので、遺伝子移送ベクターとして見込みがある。レトロウイルスは、Math1の発現を減少させた、またはMath1の過剰発現が必要である、内耳有毛細胞内へのMath1の送達のためにとりわけ有用である。
【0215】
実施例17 Math1レトロウイルス構築物
Math1オープンリーディングフレーム(ORF)を、EcoRI−XbaI消化によりpBluescriptから切り出した。この断片をゲル精製し、KlenowDNAポリメラーゼにより平滑末端化した。レトロウイルスベクターpLNCX(クローンテック(CLONTECH)より購入)をHpaIで直線化し、Math1ORF断片とライゲーションした。このライゲーション物を形質転換コンピテント大腸菌(E.coli)細胞に形質転換した。得られた抗生物質抵抗性コロニーを、正しい構築物の存在に関してアッセイした。
【0216】
クローニング、再産出および増殖レトロウイルス発現ベクターは、当業者によく知られている。Math1を発現するのに使用したレトロウイルス遺伝子移送および発現系の1つの例は、クローンテックpLNCX、pLXSNおよびLAPSN発現ベクターである。これらベクターの増幅のために、PT67およびEcoPackパッケージング細胞株を使用できる。哺乳動物細胞培養におけるさらなる情報のために、以下の一般的な参考文献を使用できる。Cultureof Animal Cells、Third Edition,R.I.Freshneyによる編集(Wiley−Liss,1993)、およびCurrentProtocols in Molecular Biology,F.M.Ausubelによる編集(Greene Publishing Associates and Wiley &Sons,1994)。相当する部分は参照により本明細書に組み込まれる。
【0217】
別の態様において、これらの構築物は、Hath1またはいかなるatonal関連核酸配列でも構築することができるだろう。
【0218】
実施例18 パッケージング細胞株の維持
293およびPT67パッケージング細胞株等のパッケージング細胞株の維持を、簡単に記載する。凍結細胞のバイアルを、液体窒素から、ちょうど融解するまで37℃の水浴に移す。細胞への浸透圧ショックを避け、細胞の生存率を最大にするためには、1mlのDMEM(ダルベッコの改変イーグル培地)をチューブに加え、混合物を15mlのチューブに移す。さらに5mlのDMEMを加え、細胞を混合する。これらの工程を繰り返した後、チューブ内の最終容量は約12mlにすべきである。次いで、細胞を500×gで10分間遠心分離する。最後に、上清を除去して、次の工程で記載された維持培地に再懸濁する。一般的に、10%ウシ胎児血清(FBS)および4mMのL−グルタミンを含有するDMEM(高グルコース:4.5g/L)で維持される。所望ならば、または必要により、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシンを加えることができる。100mmプレート当たり3〜5×10
5 で播種し、70〜80%コンフルエンシー(コンフルエンスは100mmプレート当たり3〜4×10
6 である)に達したときに、2〜3日毎に分割することが推奨される。例えば、PT67細胞株は、非常に短い2倍化時間(<16h)を有し、コンフルエントになる前に分割しなければらない。Eco−Pack293細胞の2倍化時間は、24〜36hである。
【0219】
細胞は、培地を除去し、PBSで1回細胞を洗うことにより分割する。1〜2mlのトリプシン−EDTAで0.5〜1分間処理した後、5〜10mlの培地と血清を加えてトリプシン処理を停止させる。細胞を、ピペット操作によりやさしく、しかし完全に分散させ、再懸濁させる。あるいは、前もって決定した細胞の一部を100mmプレートに10mlの培地中に入れた後、プレートを回転または震盪させ、細胞を均等に分散させる。PT67またはEco−Pack293細胞については、1:20までの比率が通常である。
【0220】
一般的に、レトロウイルスベクターをパッケージング可能なPT67またはEco−Pack293細胞のパーセントは、細胞株の連続的な継代とともに徐々に低下する。したがって、パッケージング細胞は、培養液中での2月間の生育後には再び選択しなければならない。あるいは、ウイルスの収量を増加させるためには、新しい高力価の細胞をCLONTECH等から購入することができるし、継代数の低いストックを凍結させて、貯蔵し、融解することができる。
【0221】
実施例19 レトロウイルスベクターを用いる方法
以下のプロトコールを用いて、ウイルス産生、標的細胞の感染および安定なクローンの選択のためのレトロウイルスベクターをトランスフェクトする。参照により本明細書に取り込まれるRetroviruses, J. M. Coffin & H. E. Varmus 編 (1996, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY)および Current Protocols in Molecular Biology, F. M. Ausubelら編 (1994, Greene Publishing Associates and Wiley & Sons)に記載されたもの等の他の方法およびベクターを本発明で用いて、Math1を発現させることもできる。
【0222】
要約すると、レトロウイルスベクターのPT67細胞へのトランスフェクションは、以下のように行った。上記したように、Math1をpLNXにクローニングした。パッケージング細胞を、トランスフェクションの12〜24時間前に100mmプレート当たり5〜7×10
5 細胞の密度で播種した。トランスフェクションの1〜2時間前に、培地を新鮮な培地と交換した。25μMクロロキンをトランスフェクションの直前に添加することができる。クロロキンは、トランスフェクションの効率を2〜3倍増加させる。クロロキンの25mM貯蔵溶液を蒸留水で作製し、濾過滅菌することができる。
【0223】
100mmプレートのそれぞれに、所望の方法により、例えば、標準リン酸カルシウム手法(CalPhosMammalian TransfectionKit,#K2050−1)等を用いて10〜15μgのプラスミドDNAをトランスフェクトする。トランスフェクション混合物の最終容量は、1mlを越えてはならない。トランスフェクション溶液を培地に添加して、プレートを揺動させて均一な分散を確実にする。トランスフェクションの8時間後、グリセロールショック処理を行い、DNAの取り込みを増加させることができる。トランスフェクションの10〜24時間後、培地を除去し、細胞をPBSで2回洗浄した後、10%FBSを含むDMEMを5ml加えた。培養物をさらに12〜48時間インキュベートして、ウイルスの力価を増加させた。ウイルスの力価は、トランスフェクション後約48時間で最大に達し、一般的に、トランスフェクション後24ないし72時間の間で最大値の少なくとも30%である。
【0224】
あるいは、安定なウイルス産生細胞株を選択することもできる。安定なウイルス産生細胞株を得るためには、トランスフェクトしたパッケージング細胞を、トランスフェクションの2〜3日後に選択培地中に播種する。ネオマイシン耐性のG418選択については、細胞を1週間G418(0.5mg/ml「活性」)の存在下で選択する。Puro、BleoまたはHyg等の他の選択可能マーカーを保持するベクターを用いて、同様に安定なウイルス産生細胞集団を得ることができる。1ml当たり10
5 〜10
6 個の組換えウイルス粒子の力価を生じるビリオンを産生する細胞集団が普通である。一般的に、1ml当たり10
5 〜10
6 個の組換えウイルス粒子がほとんどの目的に適する。いくつかの研究について、より高い力価のクローンを要求することができる。この場合、抗生物質の選択後、増殖させる前に、クローンシリンダーまたは限界希釈等を用いて個々のクローンを選択する。
【0225】
ウイルスの力価は、様々な方法で決定することができる。そのような方法の1つを下記に記載する。一過性にトランスフェクトしたまたは安定なウイルス産生パッケージング細胞株により産生されたウイルス力価は、以下のように決定する。すなわち、NIH3T3細胞を力価手法の開始1日前に播種する。細胞は、ウエル当たり5×10
4 〜1×10
5 細胞の密度で6ウエルプレートに播種し、ウエル当たり4mlの培地を加える。ウイルス含有培地をパッケージング細胞から回収し、ポリブレンを4μg/mlの最終濃度に加える。培地を、0.45μmのフィルターを通過させて濾過滅菌する。ポリブレンは、ウイルスと細胞膜との間の電荷の反発を低下させるポリカチオンである。前記フィルターは、酢酸セルロースまたはポリスルホン(低タンパク質結合性)でなければならず、ニトロセルロースであってはならない。ニトロセルロースは、タンパク質をレトロウイルスの膜に結合させ、その結果、ウイルスを破壊させる。以下のようにして、連続希釈物を調製する。すなわち、通常6回の連続10倍希釈で十分である。ウイルスを希釈するためには、4μg/mlのポリブレンを含有する新鮮な培地を用いる。次いで、ウエルに対してウイルス含有培地を加えることにより、NIH3T3標的細胞を感染させる。48時間後、前記NIH3T3細胞を染色する。ウイルスの力価は、コロニーを含有する最高の希釈度に存在するコロニーの数に希釈ファクターをかけた数に相当する。例えば、10
5 希釈中の4つのコロニーの存在は、4×10
5 のウイルス力価を示す。
【0226】
細胞の感染に関して、以下の手法を続けた。標的細胞を、感染の12〜18時間前に100mmプレート当たり3〜5×10
5 の細胞密度で播種した。生物学的アッセイに用いられうる細胞の感染に関しては、対照細胞を、同一の条件下で産生する挿入物を含まないウイルスで処理することができる。通常、細胞のウイルスへの暴露の5〜6時間後に、最大感染の半値が起こり、最大の感染は、暴露の約24時間後に起こる。レトロウイルスの実際の逆転写およびインテグレーションは、感染の24〜36時間内に起こり、細胞成長の動態力学に依存する。24時間で発現を観察することができ、約48時間で最高に達する。あるいは、感染を約12時間間隔で連続的に行うことができる。一般に、連続感染は感染の効率を高め、ウイルスのコピー数も増加させる。ウイルスのエンベロープにより細胞のレセプターを占領させないことを確かにするためには、各感染の間隔は、最小12時間が推奨される。
【0227】
実施例20 スクリーニングアッセイ
最後に、本発明は、全細胞アッセイ、インビボ分析および形質転換もしくは不死化細胞株に基づく、候補物質のスクリーニング方法も提供する。本方法では、レポーター遺伝子を用いて、その組換え宿主に容易に検出可能な表現型を付与する。前記表現型は、Math1が発現予定、過不足発現または過剰発現される条件下でのみ現れる一般的に、レポーター遺伝子は、他の点では宿主細胞により製造されないポリペプチドをコードし、前記ポリペプチドは、発色、蛍光、放射性同位体または分光光度分析等の分析により検出可能である。本発明では、Math1遺伝子は、マウスにおいてβ−ガラクトシダーゼで置換された。
【0228】
本発明のスクリーニングアッセイの例をここに表す。Math1が発現している細胞をマイクロタイターウエル中で生育させた後、一連のウエルに小分子の候補物質を連続的なモル比率で加え、例えば、化合物を再懸濁または溶解するために使用されるビーイクル単独でインキュベートした対照でのカルレチニン発現を示すのに十分なインキュベーション期間後にシグナルレベルを決定する。次いで、種々の比率の候補物質を含むウエルを、シグナル活性化について評価する。次いで、レポーター遺伝子の転写または発現の用量に相関した増進を示す候補物質を、治験治療剤としてのさらなる評価のために選択する。転写の刺激を、発現したMath1の非存在下で観察することができる。この場合、候補化合物は、有毛細胞の分化の正の刺激剤であるかもしれない。あるいは、候補化合物は、Math1二量体の形成またはMath1と1以上の転写因子との相互作用を安定化するように機能すると示唆されるであろう低レベルのMath1の存在下でのみ、刺激を与えるかもしれない。いずれかのクラスの候補化合物は、内耳有毛細胞の産生を刺激し、そうすることにより聴覚の欠失または平衡制御の障害をもつ患者の要求に取り組む有用な治療剤であろう。
【0229】
実施例21 Math1レトロウイルスベクターでの細胞のトランスフェクション
本発明は、Math1をコードするポリヌクレオチドで形質転換したまたはトランスフェクトした組換え宿主細胞、ならびに前記形質転換したまたはトランスフェクトした細胞に由来するトランスジェニック細胞を提供する。別の態様において、これらの構築物は、Hath1またはいかなるatonal関連核酸配列でも構築することができるであろう。本発明の組換え宿主細胞を、機能的Math1核酸配列またはキメラMath1遺伝子を含むポリヌクレオチドでトランスフェクトする。DNA分子のような外来性ポリヌクレオチドで細胞を形質転換またはトランスフェクトする方法は、当該技術分野で公知であり、リン酸カルシウムもしくはDEAE−デキストラン介在トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソーム介在トランスフェクション、直接マイクロインジェクションおよびアデノウイルス感染のような技術を含む。
【0230】
組換え構築物を用いるMath1発現は、その必要のある細胞へのMath1の送達を標的化するために使用することができる。当業者であれば、異なるプロモーター−ベクターの組合せを選択して、異なる細胞型でのMath1発現を操作することができる。いくつかの場合において、所望の結果がタンパク質ではなくRNAでありうるし、組換えベクターは順方向または逆方向のいずれかで存在する挿入物を有するものを含むであろう。また、例えば、レトロウイルスまたは人工的な組換え系等のいくつかのベクターを設計して、タンパク質もしくはRNAの構成的または誘導的発現を達成するために、細胞のゲノムまたはウイルスゲノム内に配列を取り込むことができる。
【0231】
多くのベクターおよび宿主は、市販品が利用可能であり、発現またはそれに続く精製を容易にする特異的な特徴を有する。例えば、タンパク質として発現されるDNAは、ポリヒスチジンタグ、もしくはHA、FLAG、myc、免疫化学的精製および検出のためのその他のエピトープタグ、もしくはリン酸化部位、もしくはプロテアーゼ認識部位、もしくはグルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)、マルトース結合タンパク質(MBP)(New England Biolabs )等の精製を容易にする追加のタンパク質ドメインをコードする無関係の配列との融合物として存在することが多い。イントロンとエキソンを含む天然に存在するゲノムDNA配列の取り込みがなされてプロセッシングできるように、または無関係なイントロンその他の調節シグナルが成熟した翻訳可能なRNAの生成に先立ってRNAのプロセッシングを要求するように、ポリアデニル化、スプライシングおよび終止に関するエレメントを含むベクターを設計することも可能である。前記した系で製造されたタンパク質は、グリコシル化、リン酸化、非特異的もしくは特異的プロテオリシスまたはプロセッシング等の種々の翻訳後修飾に供される。
【0232】
実施例22 アミノ酸配列としてのMath1の送達
HIV由来のペプチド(11アミノ酸)は、全長のタンパク質と融合してマウスに注射した場合に身体のすべての細胞の核に迅速に分散が可能になるということが最近報告された(Schwarzeら、1999)。Schwarzeらは、15〜120kDaのサイズにまたがるTatとの融合タンパク質を作製した。彼らは、動物全体の細胞の核への融合タンパク質の迅速な取り込みを詳細に証明し、前記タンパク質の機能的活性は保持された。
【0233】
本発明の1つの態様において、Math1核酸配列と操作可能に連結しているTatまたはTat−HA核酸配列を含む構築物が存在する。別の態様において、これらの構築物は、Hath1またはいかなるatonal関連核酸配列をも含む。ベクターを細菌培養物で発現させ、融合タンパク質を精製する。この精製されたTat−Math1タンパク質またはTat−Hath1タンパク質を動物に注射して、内耳、皮膚、小脳、脳幹、脊椎および関節へのTat送達系の効率を決定する。分析を行って、有毛細胞および神経再生におけるTat−Math1/Tat−Hath1タンパク質の能力を決定する。これは、それ自身の権利または他の方法もしくは遺伝子との関連のいずれかにおいて、実現性のある治療アプローチである。
【0234】
Math1転写にはどんな上流のエフェクターが必要であるかを知ることが実用的であるので、本明細書に開示されたMath1発現に影響を及ぼす化合物のスクリーニング方法は有用であるにもかかわらず、有効な候補物質を見出せないことを理解すべきである。
【0235】
参考文献 すべての特許および刊行物は、それぞれ個々の刊行物が具体的かつ個別的に参照により取り込まれたことを示した場合と同じ程度まで、本明細書において参照により取り込まれる。
【0236】
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atent No. 5,843,663, 発行日 Dec. 1, 1998 U. S. Patent No. 5,846,708, 発行日 Dec. 8, 1998 U. S. Patent No. 5,846,709, 発行日 Dec. 8, 1998 U. S. Patent No. 5,846,717, 発行日 Dec. 8, 1998 U. S. Patent No. 5,846,726, 発行日 Dec. 8, 1998 U. S. Patent No. 5,846,729, 発行日 Dec. 8, 1998 U. S. Patent No. 5,846,783, 発行日 Dec. 8, 1998 U. S. Patent No. 5,849,481, 発行日 Dec. 15, 1998U. S. Patent No. 5,849,483, 発行日 Dec. 15, 1998U. S. Patent No. 5,849,486, 発行日 Dec. 15, 1998U. S. Patent No. 5,849,487, 発行日 Dec. 15, 1998U. S. Patent No. 5,849,497, 発行日 Dec. 15, 1998U. S. Patent No. 5,849,546, 発行日 Dec. 15, 1998U. S. Patent No. 5,849,547, 発行日 Dec. 15, 1998U. S. Patent No. 5,851,770, 発行日 Dec. 22, 1998U. S. Patent No. 5,851,772, 発行日 Dec. 22, 1998U. S. Patent No. 5,853,990, 発行日 Dec. 29, 1998U. S. Patent No. 5,853,993, 発行日 Dec. 29, 1998U. S. Patent No. 5,853,992, 発行日 Dec. 29, 1998U. S. Patent No. 5,856,092, 発行日 Jan. 5, 1999 U. S. Patent No. 5,858,652, 発行日 Jan. 12, 1999U. S. Patent No. 5,861,244, 発行日 Jan. 19, 1999U. S. Patent No. 5,863,732, 発行日 Jan. 26, 1999U. S. Patent No. 5,863,753, 発行日 Jan. 26, 1999U. S. Patent No. 5,866,331, 発行日 Feb. 2, 1999 U. S. Patent No. 5,866,336, 発行日 Feb. 2, 1999 U. S. Patent No. 5,866,337, 発行日 Feb. 2, 1999 U. S. Patent No. 5,900,481, 発行日 May 4, 1999U. S. Patent No. 5,905,024, 発行日 May 18, 1999 U. S. Patent No. 5,910,407, 発行日 June 8, 1999 U. S. Patent No. 5,912,124, 発行日 June 15, 1999U. S. Patent No. 5,912,145, 発行日 June 15, 1999U. S. Patent No. 5,912,148, 発行日 June 15, 1999U. S. Patent No. 5,916,776, 発行日 June 29, 1999U. S. Patent No. 5,916,779, 発行日 June 29, 1999U. S. Patent No. 5,919,626, 発行日 July 6, 1999 U. S. Patent No. 5,919,630, 発行日 July 6, 1999 U. S. Patent No. 5,922,574, 発行日 July 13, 1999U. S. Patent No. 5,925,517, 発行日 July 20, 1999U. S. Patent No. 5,925,525, 発行日 July 20, 1999U. S. Patent No. 5,928,862, 発行日 July 27, 1999U. S. Patent No. 5,928,869, 発行日 July 27, 1999U. S. Patent No. 5,928,870, 発行日 July 27, 1999U. S. Patent No. 5,928,905, 発行日 July 27, 1999U. S. Patent No. 5,928,906, 発行日 July 27, 1999U. S. Patent No. 5,929,227, 発行日 July 27, 1999U. S. Patent No. 5,932,413, 発行日 Aug. 3, 1999 U. S. Patent No. 5,932,451, 発行日 Aug. 3, 1999 U. S. Patent No. 5,935,791, 発行日 Aug. 10, 1999U. S. Patent No. 5,935,825, 発行日 Aug. 10, 1999U. S. Patent No. 5,939,291, 発行日 Aug. 17, 1999U. S. Patent No. 5,942,391, 発行日 Aug. 24, 1999European Application No. 320 308European Application No. 329 822GB Application No. 2 202 328PCT Application No. PCT/US87/00880PCT Application No. PCT/US89/01025PCT Application WO 88/10315 PCT Application WO 89/06700 PCT Application WO 90/07641 。
【0237】
当業者であれば、本発明の目的を実行し、本明細書に記載された結果と有利性、ならびに本明細書に内在するものを得るために、本発明が十分適応されることを容易に認識する。本明細書に記載された配列、突然変異、複合体、方法、治療、医薬組成物、手段および技術は、好ましい態様の代表例を表し、例示を意図するものであり、本配列の範疇を制限するものとして意図されたものではない。そこでの変更およびその他の使用は、当業者に見出されるものであり、本発明の精神内に包含されるかまたは係属中の請求の範囲により規定されるものである。
動物において、治療用の内耳の機械的受容細胞増殖を促進するための、Atonal関連アミノ酸配列または核酸配列を含有する組成物であって、該Atonal関連アミノ酸配列は配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%同一性を有するポリペプチドを有し、または該Atonal関連核酸配列は、配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%同一性を有するポリペプチドをコードする、組成物。
内耳の有毛細胞の治療上の生成のための、Atonal関連アミノ酸配列または核酸配列を含有する組成物であって、該Atonal関連アミノ酸配列は配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%同一性を有するポリペプチドを有し、または該Atonal関連核酸配列は、配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%同一性を有するポリペプチドをコードする、組成物。
動物の聴覚障害治療のための、Atonal関連アミノ酸配列または核酸配列を含有する組成物であって、該Atonal関連アミノ酸配列は配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%同一性を有するポリペプチドを有し、または該Atonal関連核酸配列は、配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%同一性を有するポリペプチドをコードする、組成物。
動物の平衡失調の治療のための、Atonal関連アミノ酸配列または核酸配列を含有する組成物であって、該Atonal関連アミノ酸配列は配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%同一性を有するポリペプチドを有し、または該Atonal関連核酸配列は、配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%同一性を有するポリペプチドをコードする、組成物。
動物において、関節疾患の治療のための、Atonal関連アミノ酸配列または核酸配列を含有する組成物であって、該Atonal関連アミノ酸配列は配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%同一性を有するポリペプチドを有し、または該Atonal関連核酸配列は、配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%同一性を有するポリペプチドをコードする、組成物。
前記送達ビーヒクルが、アデノウイルスベクター、レトロウイルスベクター、アデノ随伴ベクター、プラスミド、リポソーム、核酸、ペプチド、脂質、炭水化物、およびそれらの組合せからなる群より選ばれる、請求項8に記載の組成物。
atonal関連アミノ酸配列またはatonal関連核酸配列を、送達ビヒクルとしてのウィルスベクターとの組み合わせで含む組成物であって、該送達ビヒクルによって、該Atonal関連アミノ酸配列または該Atonal関連核酸配列を治療上の有効量細胞に送達することになり、該Atonal関連アミノ酸配列は配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%同一性を有するポリペプチドであり、または該Atonal関連核酸配列は、配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%同一性を有するポリペプチドをコードする、組成物。
(a)atonal関連アミノ酸配列と送達ビヒクルとの組み合わせであって、該送達ビヒクルが、細菌毒素のレセプター結合ドメインまたはタンパク質形質導入ドメインを含み、ここで、該送達ビヒクルによって、該Atonal関連アミノ酸配列を治療上の有効量細胞に送達することになり、該Atonal関連アミノ酸配列は配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%同一性を有するポリペプチドである、または
(b)該Atonal関連アミノ酸配列および該送達ビヒクルをコードする塩基配列
を含む組成物。
Atonal関連アミノ酸配列またはそのフラグメントおよび所望のアミノ酸配列を含む融合タンパク質であって、該Atonal関連アミノ酸配列は、配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%同一性を有するアミノ酸配列である、融合タンパク質。
動物において、治療用の内耳の機械的受容細胞増殖を促進するための医薬を製造する為の、Atonal関連アミノ酸配列または核酸配列の使用であって、該Atonal関連アミノ酸配列は配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%同一性を有するポリペプチドを有し、または該Atonal関連核酸配列は、配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%同一性を有するポリペプチドをコードする、使用。
内耳の有毛細胞の治療上の生成のための医薬を製造するための、Atonal関連アミノ酸配列または核酸配列の使用であって、該Atonal関連アミノ酸配列は配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%同一性を有するポリペプチドを有し、または該Atonal関連核酸配列は、配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%同一性を有するポリペプチドをコードする、使用。
動物の聴覚障害治療のための医薬を製造するための、Atonal関連アミノ酸配列または核酸配列の使用であって、該Atonal関連アミノ酸配列は配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%同一性を有するポリペプチドを有し、または該Atonal関連核酸配列は、配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%同一性を有するポリペプチドをコードする、使用。
動物の平衡失調の治療のための医薬を製造するための、Atonal関連アミノ酸配列または核酸配列の使用であって、該Atonal関連アミノ酸配列は配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%同一性を有するポリペプチドを有し、または該Atonal関連核酸配列は、配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%同一性を有するポリペプチドをコードする、使用。
動物において、関節疾患の治療のための医薬を製造するための、Atonal関連アミノ酸配列または核酸配列の使用であって、該Atonal関連アミノ酸配列は配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%同一性を有するポリペプチドを有し、または該Atonal関連核酸配列は、配列AANARERRRMHGLNHAFDQLRに少なくとも80%同一性を有するポリペプチドをコードする、使用。