【解決手段】果実トレイ(1)は、収容部(11b)の内側底面(11d)と柑橘類果実(レモン2)の果頂部(2b)または果梗部(2a)の一方との間に空間(第1空間11e)を形成し、収容部(11b)の外側底面(11f)から外側面形状の最頂部(支持底面12b)までの高さが、果実トレイ(1)から突出する柑橘類果実(レモン2)の部位の高さよりも高くなる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<果実トレイの概要>
まず、
図1および
図2を参照して、本発明の一実施形態に係る果実トレイ1の概要について説明する。なお、以下の説明では、便宜上、鉛直上側を上側、鉛直下側を下側、紙面に向かって下側を前方、紙面に向かって上側を後方、紙面に向かって右側を右方、紙面に向かって左側を左方とする。
【0011】
果実トレイ1は、レモン(柑橘類果実)2を収穫、保存、輸送および出荷等する際に、レモン2を収容するためのトレイである。果実トレイ1は、
図1の(a)に示すように、本体部1a、複数の果実収容用凹部(複数の凹部)11、支持部12およびストッパ13を備えている。なお、果実トレイ1の収容対象となる果実はレモン2に限定されず、みかん、オレンジ等の柑橘類果実であればよい。
【0012】
また、果実トレイ1はパルプモールド製である。パルプモールドは、バージンパルプの他、新聞、紙パック、段ボールまたはOA用紙等の古紙を原料とする、果実または野菜等を収容するトレイ等の材料として用いられる。果実トレイ1は、パルプモールドの原料として、新聞古紙(フリーネス:330ml〜380ml(カナダ標準法、温度20℃換算))を100%使用するのが好ましい。この場合、生産量375g(水分率60%)、乾燥重量120g±10g、膜厚1mmおよび比重3kg/m
3(非管理)の新聞古紙を使用するのがより好ましい。なお、果実トレイ1はパルプモールド製に限定されず、例えば、新聞古紙に薬品を混ぜたもの、樹脂または不織布等を材料にして製造してもよい。
【0013】
本体部1aの四隅のうちの一箇所には、
図1の(a)に示すような切り欠き部(果実トレイの四隅のうちの1つ)1bが設けられている。この切り欠き部1bは、果実トレイ1の全ての支持部12(後述する)上に他の果実トレイ1の果実収容用凹部11が1個ずつ配置されるように、果実トレイ1の上側に他の果実トレイ1を載置するための目印としての機能を果たす。
【0014】
具体的には、他の果実トレイ1を、図の(a)に示すような果実トレイ1の配置から平面視において180°回転させた状態にして、当該果実トレイ1の上側に載置する。すなわち、果実トレイ1における右側側面から距離Pの位置に、当該距離Pの位置と対角の位置にある、他の果実トレイ1における左側側面からの距離Qの位置が重なるようにする。同時に、果実トレイ1における後側側面からの距離Rの位置に、当該距離Rの位置と対角の位置にある、他の果実トレイ1における前側側面からの距離Sが重なるようにして、果実トレイ1の上側に載置すればよい。切り欠き部1bを目印として用いた、複数枚の果実トレイ1の積み重ね方法については後述する。
【0015】
なお、切り欠き部1bの形状は、
図1の(a)に示された形状に限定されず、任意に設計することができる。また、例えば、本体部1aにおける切り欠き部1bと対角の位置の隅に、当該切り欠き部1bと異なる形状の切り欠き部(図示せず)を設けてもよい。
【0016】
本体部1aにおける互いに対向する短手方向の2つの側面には、
図1の(a)に示すような、ユーザの指を係止できる程度の窪みからなる第1係止部1cおよび第2係止部1dが設けられている。これらの各係止部に指を係止することで、ユーザはより確実に果実トレイ1を運搬することができる。また、複数枚の果実トレイ1を積み重ねた場合でも、ユーザは確実に当該複数枚の果実トレイ1を運搬することができる。
【0017】
なお、
図1の(a)に示された本体部1aは、第1係止部1cの形状および大きさと第2係止部1dの形状および大きさとが異なっている。しかし、これら各係止部の形状等については
図1の(a)の場合に限定されず、ユーザの指を係止できる形状等であれば任意に設計することができる。また、本体部1aにおける互いに対向する長手方向の2つの側面に、第1係止部1cおよび第2係止部1dを設けてもよい。
【0018】
果実収容用凹部11は、果実トレイ1において、実際にレモン2が収容される略凹型形状の部材である。また、果実収容用凹部11は、収容対象としてS級(縦径;90mm)およびM〜L級(縦径;95mm)のレモン2を想定した大きさに設計されている。
図1の(a)に示すように、平面視において、4行×6列の合計24個の果実収容用凹部11が本体部1aに格子状に配置されている。また、果実収容用凹部11は、
図1の(b)および(c)に示すように、収容壁部11aおよび収容部11bを備えており、両者は連なって形成されている。なお、果実収容用凹部11の個数および配置態様は上記のような4行×6列の格子状に場合に限定されず、任意に設計変更できる。また、果実収容用凹部11の大きさについても、様々な大きさのレモン2を収容できるように任意に設計変更できる。
【0019】
果実トレイ1にレモン2を収容した場合、
図2に示すように、果実収容用凹部11から果頂部2bおよび赤道部(側面)2cの果頂部側部分2c−2が突出する。なお、果実トレイ1へのレモン2の収容態様は、果実収容用凹部11から果頂部2bおよび赤道部2cの果頂部側部分2c−2が突出する場合に限定されない。果実収容用凹部11から果梗部2aおよび赤道部2cの果梗部側部分2c−1が突出するようにレモン2を収容してもよい(図示せず)。換言すれば、果実トレイ1は、柑橘類果実の果頂部または果梗部の一方が果実収容用凹部11から突出するように、当該柑橘類果実を収容できるものであればよい。
【0020】
収容壁部11aは、レモン2を支持する機能を有する。具体的には、
図2に示すように、レモン2の赤道部2cの果梗部側部分2c−1(柑橘類果実の側面)が、収容壁部11aの内面でありその形状が当該果梗部側部分2c−1の形状と略同一の支持内壁11cに接触することにより、レモン2は支持される。
【0021】
なお、支持内壁11cの形状は、赤道部2cの果梗部側部分2c−1と略同一の形状に限定されない。果実収容用凹部11から果梗部2aおよび赤道部2cの果梗部側部分2c−1が突出するようにレモン2を収容する場合であれば、赤道部2cの果頂部側部分2c−2の形状と略同一であってもよい(図示せず)。換言すれば、収容壁部11aは、支持内壁11cの形状が柑橘類果実の赤道部の一部、すなわち柑橘類果実の側面と接触するような形状であればよい。さらに付言すれば、果実収容用凹部11は、その内側の側面の一部(本実施形態では収容壁部11aの支持内壁11c)でレモン2を支えるような構造となっていればよい。
【0022】
収容部11bは、
図1の(b)および(c)に示すような略椀型の形状であり、その内部にレモン2の果梗部2aを収容するものである。果実トレイ1にレモン2を収容した場合、収容部11bの内側底面11dと当該果梗部2aとの間には、
図2に示すような第1空間(空間)11eが形成される。ここで、果梗部2aの頂点と内側底面11dとの間は、レモン2の縦径の2.5%〜5%程度離間していることが好ましい。本実施形態では、果実トレイ1の収容対象となるレモン2はS級およびM〜L級であることから、第1空間11eは、果梗部2aの頂点と内側底面11dとの間が2.5mm〜5mm程度離間するように形成される。
【0023】
なお、果実トレイ1から果梗部2aおよび赤道部2cの果梗部側部分2c−1が突出するようにレモン2を収容する場合であれば、収容部11bにはレモン2の果頂部2bが収容される。換言すれば、収容部11bには、柑橘類果実の果頂部または果梗部の他方が収容されていればよい。収容部11bにレモン2の果頂部2bが収容される場合、第1空間11eは、内側底面11dと当該果頂部2bとの間に形成される(図示せず)。また、収容部11bの形状は略椀型に限定されず、内側底面11dとレモン2の果梗部2aとの間に第1空間11eが形成されるように当該果梗部2aを収容できる形状のものであればよい。
【0024】
ここで、第1空間11eは、果梗部2aの一部と内側底面11dとが接触しない程度の広さがあればよい。具体的には、第1空間11eは、S級およびM〜L級のレモン2における果梗部2aの頂点からの鉛直方向の長さが約5mmに対応する領域が内側底面11dに接触しない程度の広さを確保していればよい。
【0025】
また、
図2に示すように、互いに隣り合う2つの果実収容用凹部11の外側面11gにより形成される外側面形状は、果実トレイ1から突出する、果頂部2bおよび赤道部2cの果頂部側部分2c−2(柑橘類果実の部位)の形状に対応する形状に形成されている。さらに、果実トレイ1は、収容部11bの外側底面11fから後述する支持底面(外側面形状の最頂部)12bまでの高さが、当該果実トレイ1から突出するレモン2の部位(柑橘類果実の部位)の高さよりも高くなるように成形されている。
【0026】
具体的には、外側底面11fから支持底面12bまでの高さは、同一形状の果実トレイ1を2枚重ねた場合における、下段の果実トレイ1に収容されたレモン2の果梗部2aの頂点から上段の果実トレイ1における支持底面12bまでの仮想高さが、レモン2の縦径に当該縦径の5%〜10%の長さを加えた値になるように設計されることが好ましい。本実施形態では、果実トレイ1の収容対象となるレモン2はS級およびM〜L級であることから、上記仮想高さが100mmになるように、外側底面11fから支持底面12bまでの高さを設計している。
【0027】
なお、果実トレイ1から果梗部2aおよび赤道部2cの果梗部側部分2c−1が突出するようにレモン2を収容する場合であれば、外側面形状は、果梗部2aおよび赤道部2cの果梗部側部分2c−1の形状に対応する形状に形成する。
【0028】
支持部12は、果実トレイ(第1果実トレイ)1の上側に同一形状の他の果実トレイ(第2果実トレイ)1を載置する際、当該他の果実トレイ1を支持するための部材である。
図1の(a)に示すように、平面視において4行×6列の合計24個の支持部12が、果実収容用凹部11によって四方を取り囲まれるように、本体部1aに格子状に配置されている。
【0029】
なお、支持部12の個数および配置態様は、果実収容用凹部11によって四方を取り囲まれるように4行×6列の格子状に配置される場合に限定されず、果実収容用凹部11の個数および配置態様に併せて設計変更できる。すなわち、支持部12の個数と果実収容用凹部11の個数とが同数となり、かつ、果実トレイ1の上側に他の果実トレイ1を載置させた状態において、果実トレイ1の全ての支持部12上に他の果実トレイ1の果実収容用凹部11が1個ずつ配置されるような支持部12の配置態様になっていればよい。
【0030】
また、支持部12は、
図1の(b)および(c)に示すような支持上面12aを備えている。そして、
図2に示すように、支持上面12aと他の果実トレイ1における収容部11bの外側底面11fとが接触するように果実トレイ1の上側に他の果実トレイ1を載置することで、支持部12は当該他の果実トレイ1を支持する。
【0031】
ストッパ13は、果実トレイ1の購入先に当該果実トレイ1を出荷する際、果実トレイ1を複数枚(例えば、100枚程度)積み重ねることにより出荷することが可能となった出荷状態において、果実トレイ1を単体で使用する場合に、各果実トレイ1を剥離するときの剥離性を確保するために設けられる略壁形状の部材である。このストッパ13があることによって、互いに重なり合う2枚の果実トレイ1のうちの一方が、他方に嵌り込むことを防止することができる。それゆえ、購入先への納入時において各果実トレイ1を剥離する際、作業性が向上するとともに、果実トレイ1の変形および破れを防止することができる。
図1の(a)に示すように、ストッパ13は、互いに隣接する2つの支持部12の間に、果実収容用凹部11に四方を取り囲むように設けられている。
【0032】
<複数枚の果実トレイの積み重ね>
次に、
図2を参照して、本発明の一実施形態に係る果実トレイ1の上側に他の果実トレイ1を載置した場合における、レモン2の収容状態について説明する。
【0033】
図2に示すように、果実トレイ1にレモン2を収容した状態で、果実トレイ1の上側に他の果実トレイ1を載置した場合、他の果実トレイ1における外側底面11fから支持部12の支持底面12bまでの高さが、果実トレイ1から突出するレモン2の部位の高さよりも高くなる。したがって、他の果実トレイ1における互いに隣り合う2つの果実収容用凹部11の外側面11gおよび支持底面12bと、レモン2の部位である果頂部2bおよび赤道部2cの果頂部側部分2c−2との間には第2空間11hが形成される。
【0034】
具体的には、第2空間11hは、S級およびM〜L級のレモン2における果梗部2aの頂点と他の果実トレイ1の支持底面12bとが接触しない程度の高さとなっている。また、第2空間11hは、果頂部2bの一部と外側面11gおよび支持底面12bとが接触しない程度の広さがあればよい。具体的には、S級およびM〜L級のレモン2における果頂部2bの頂点からの鉛直方向の長さが約5mmに対応する領域が外側面11gおよび支持底面12bに接触しない程度の広さが確保されていればよい。
【0035】
次に、
図3および
図4を参照して、複数枚の果実トレイ1の積み重ね方法について説明する。なお、
図3および
図4では、説明の便宜上、複数枚の果実トレイ1に含まれる2つの果実トレイ1のそれぞれを第1果実トレイ100および第2果実トレイ200とし、第1果実トレイ100の上側に第2果実トレイ200を載置する場合を例に挙げて説明している。
【0036】
図3に示すように、第1果実トレイ100を図中の配置から平面視において180°回転させた場合に、第1果実トレイ100の切り欠き部100bが位置する箇所の上側に第2果実トレイ200の切り欠き部200bが配置されるよう、第2果実トレイ200を第1果実トレイ100の上側に載置する。
【0037】
この積み重ね方法で第1果実トレイ100および第2果実トレイ200を積み重ねることにより、
図4に示すように、第1果実トレイ100の全ての支持部120上に第2果実トレイ200の果実収容用凹部210が1個ずつ配置される。換言すれば、この積み重ね方法によって、第1果実トレイ100に収容された全てのレモン2を第2果実トレイ200で覆うことができる。
【0038】
第1果実トレイ100および第2果実トレイ200以外の他の果実トレイ1についても上記と同様の積み重ね方法で積み重ねていくことで、収容対象となるレモン2の個数が多い場合でも、複数枚の果実トレイ1を用いて収容対象となるレモン2の全てを収容することができる。
【0039】
なお、複数枚の果実トレイ1は、収容対象となるレモン2の個数が多い場合に使用される、同一形状の果実トレイ1を複数枚含む果実トレイセットとして使用することができる。この場合、第1果実トレイ100および第2果実トレイ200の積み重ね方法は、果実トレイセットを用いたレモン2の収穫方法(柑橘類果実の収穫方法)および果実トレイセットを用いたレモン2の貯蔵方法(柑橘類果実の保存方法)に適用することができる。
【0040】
具体的には、果実トレイセットを用いたレモン2の収穫方法は、第1果実トレイ100にレモン2を収容する果実収容工程と、第2果実トレイ200を第1果実トレイ100の上側に載置する果実トレイ載置工程とで構成される。そして、複数枚の果実トレイ(各果実トレイ)1のそれぞれの果実収容用凹部11の全てにレモン2を収容するまで果実収容工程および果実トレイ載置工程を繰り返すことにより、収穫対象のレモン2を収穫する。
【0041】
また、果実トレイセットを用いたレモン2の貯蔵方法は、複数枚の果実トレイ1のそれぞれの果実収容用凹部11に保存対象のレモン2を収容した状態で、各果実トレイ1を全て積み重ねる貯蔵準備工程(保存準備工程)と、レモン2の保存期間が満了するまで各果実トレイ1を全てが積み重ねられた状態を維持する貯蔵状態維持工程(保存状態維持工程)とで構成される。
【0042】
さらに、レモン2の果梗部2aまたは果頂部2bの一方が突出するようにレモン2を収容する複数の果実収容用凹部11を備えた果実トレイ1は、以下の方法によって製造することができる。
【0043】
(1)古紙を原料とする原料液に、果実トレイ1と同一形状の成形型面を有する成形型(図示せず)を浸漬することによって、レモン2の赤道部2cの果梗部側部分2c−1に接触してレモン2を支持する支持内壁11cと、収容部11bの内側底面11dとレモン2の果梗部2aまたは果頂部2bの他方との間に第1空間11eを形成するように当該果梗部2aまたは果頂部2bの一方を収容する収容部11bと、が互いに連なるように、複数の果実収容用凹部11の内面を成形する(凹部内面成形工程)。
【0044】
(2)凹部内面成形工程と略同時進行で、複数の果実収容用凹部11のうち互いに隣り合う果実収容用凹部11の外側面11gにより形成される外側面形状が、果実トレイ1から突出するレモン2の部位の形状に対応する形状となり、かつ、収容部11bの外側底面11fから支持部12の支持底面12bまでの高さが、果実トレイ1から突出するレモン2の部位の高さよりも高くなるように、複数の果実収容用凹部11の外面および支持部12の支持底面12bを成形する(凹部外面等成形工程)。
【0045】
<レモンを収容した果実トレイを複数枚積み重ねることによる効果>
次に、
図5および
図6を参照して、レモン2を収容した果実トレイ1を複数枚積み重ねる収穫方法を採用した場合に得られる効果について説明する。
【0046】
図5は、レモン2を栽培するレモン圃場(図示せず)内に、慣行区および衝撃緩和対策区を設け、これらの各区でそれぞれレモン2を収穫した際の、レモン2に加わる最大衝撃強度を棒グラフにしたものである。なお、図中の棒グラフ上端の縦線は標準誤差を示す。また、「**」は、1%の危険率で有意差がある(t検定)ことを示す。
【0047】
図6は、慣行区および衝撃緩和対策区のそれぞれにおいて、2012年12月20日に収穫したレモン2について、12月25日から貯蔵を開始し、2013年1月18日から約1か月間隔でレモン2の累積腐敗および果皮障害果率を調査し、その推移を折れ線グラフにしたものである。また、図中の「ns」は、5%の危険率で有意差がない(t検定)ことを示し、「*」は、5%、「**」は、1%の危険率で有意差がある(t検定)ことを示す。
【0048】
ここで、慣行区は、従来のコンテナ容器(図示せず)を地面に置き、収穫したレモン2を当該容器にバラ積みする一般的な収穫方法(以下、「従来法」とする)によってレモン2を収穫した区域を指す。また、衝撃緩和対策区は、複数枚の果実トレイ1を用いた収穫方法(以下、「衝撃緩和法」とする)によってレモン2を収穫した区を指す。
【0049】
図5に示すように、衝撃緩和対策区で収穫されたレモン2に加わる最大衝撃強度は、慣行区で収穫されたレモン2に加わる最大衝撃強度の約5分の1となる。また、
図6に示すように、レモン2の累積腐敗・果皮障害果率についても6月の収穫日以降、衝撃緩和法の有意性が認められる。
【0050】
次に、
図7および表1〜表3を参照して、レモン2を収容した果実トレイ1を複数枚積み重ねる貯蔵方法を採用した場合に得られる効果について説明する。なお、以下の説明は、2014年5月9日から10月2日までの期間を貯蔵期間(保存期間)として、低温貯蔵庫(図示せず)内に果実トレイ1を複数枚積み重ねる貯蔵方法にてレモン2を保存した場合の調査例に基づいている。貯蔵期間中における、レモン2の腐敗果率および品質変化、果実トレイ1の含水率を調査対象とした。また、貯蔵期間中における低温貯蔵庫内の湿度および温度は、
図7に示すように、湿度については最高103.5%〜最低42.5%で推移し、温度については最高16.0℃〜最低4.4℃で推移した。
【0051】
まず、貯蔵期間中のレモン2の腐敗果率は表1に示すような結果となった。具体的には、貯蔵期間終了後(10月2日)における、衝撃緩和容器区の腐敗果率は7.6%となり、バラ積み区の腐敗果率の19.8%(うち、共腐れ果率は6.5%)と比べて腐敗果率が低く、なおかつ、共腐れ果率については0%であった。ここで、バラ積み区は、従来のコンテナ容器にレモン2をバラ積みした状態で貯蔵する貯蔵方法を採用した低温貯蔵庫内の区域を指す。また、衝撃緩和容器区は、複数枚の果実トレイ1を用いた貯蔵方法を採用した低温貯蔵庫内の区域を指す。さらに、表中の腐敗果率は、Arcsin変換した値を統計処理したものであり、表中の合計は、緑かび病、青かび病および軸腐れ病の和を求めることにより算出した値である。
【0053】
また、貯蔵期間中のレモン2の品質変化は表2に示すような結果となった。具体的には、レモン2の酸度について、バラ積み区が6.2%と貯蔵前の酸度(6.47%)よりも低くなっているのに対して、衝撃緩和容器区は6.6%と貯蔵前の酸度よりも高くなっており、品質面においても衝撃緩和容器区の有意性が認められた。ここで、レモン2の貯蔵前の酸度は5月9日時点のものである。また、表中の差は、貯蔵期間経過後(10月2日)の各値から貯蔵前(5月2日)の対応する各値を引いたものであり、表中の果皮色およびヘタの色は、ハンディー色差計(NR−3000;日本電色工業株式会社製)でレモン2の赤道部2cの1箇所およびヘタの中央部を、それぞれ任意に測定した値である。
【0055】
また、貯蔵期間中の果実トレイ1の含水率は表3に示すような結果となった。具体的には、貯蔵期間終了後(10月2日)における果実トレイ1の含水率は平均13.8%であり、貯蔵前の乾燥状態に比べて湿気を多く含んでいた。このことから、果実トレイ1をレモン2の貯蔵に使用することにより、湿気によるレモン2の腐敗を抑制する効果があるといえる。なお、表中の各値は、貯蔵期間終了後、送風式乾燥機から65℃の温風を5日間送風することにより果実トレイ1を乾燥させて測定したものである。
【0057】
なお、
図8は果実トレイ1の6面図である。
図8の(a)は果実トレイ1の平面図、
図8の(b)は果実トレイ1の正面図、
図8の(c)は果実トレイ1の左側面図、
図8の(d)は果実トレイ1の背面図、
図8の(e)は果実トレイ1の右側面図、
図8の(f)は果実トレイ1の底面図、
図8の(g)は果実トレイ1のA−A線矢視断面図である。
【0058】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る果実トレイ(1、第1果実トレイ100、第2果実トレイ200)は、柑橘類果実(レモン2)の果頂部(2b)または果梗部(2a)の一方が突出するように上記柑橘類果実を収容する複数の凹部(果実収容用凹部11)を備えた果実トレイであって、上記複数の凹部のそれぞれは、上記柑橘類果実の側面(赤道部2c)に接触して上記柑橘類果実を支持する支持内壁(11c)と、上記柑橘類果実の果頂部または果梗部の他方を収容するための収容部(11b)と、が連なって形成され、上記収容部の内側底面(11d)と上記柑橘類果実の果頂部または果梗部の他方との間には空間(第1空間11e)が形成され、上記複数の凹部のうち互いに隣り合う凹部の外側面(11g)により形成される外側面形状が、上記果実トレイから突出する上記柑橘類果実の部位の形状に対応する形状に形成され、上記収容部の外側底面(11f)から上記外側面形状の最頂部(支持底面12b)までの高さが、上記果実トレイから突出する上記柑橘類果実の部位の高さよりも高く形成されている。
【0059】
上記構成によれば、本発明に係る果実トレイに設けられた複数の凹部のそれぞれは、柑橘類果実の側面に接触して柑橘類果実を支持する支持内壁を有している。また、支持内壁と、柑橘類果実の果頂部または果梗部の一方を収容するための収容部とが連なって形成されており、当該収容部の内側底面と柑橘類果実の果頂部または果梗部の一方との間には空間が形成される。
【0060】
したがって、本発明に係る果実トレイは、柑橘類果実の果頂部または果梗部の一方を収容部の内側底面に接触させることなく、柑橘類果実を凹部に収容することができる。それゆえ、果頂部または果梗部の一方が収容部の内側底面に接触することによって、柑橘類果実の自重または接触箇所で生じる摩擦等により果頂部または果梗部の一方が傷つくことを防止することができる。ひいては、果頂部または果梗部の一方からの柑橘類果実の腐敗発生を抑制することができる。
【0061】
また、上記構成によれば、互いに隣り合う凹部の外側面により形成される外側面形状が、果実トレイから突出する柑橘類果実の部位(柑橘類果実の果頂部または果梗部の一方を含む)の形状に対応しており、収容部の外側底面から上記外側面形状の最頂部までの高さが、果実トレイから突出する上記部位の高さよりも高く形成されている。
【0062】
したがって、例えば、本発明に係る果実トレイを複数枚積み重ねて使用する場合、特定の果実トレイに収容された柑橘類果実の上記突出する部位が、当該特定の果実トレイの上側に載置された他の果実トレイの上記外側面に接触する可能性は低くなる。それゆえ、上側の果実トレイにおける凹部の外側面と接触することによって、下側の果実トレイから突出する果頂部または果梗部の一方が傷つくことを低減することができる。また、上側の果実トレイに収容された柑橘類果実の荷重がかかることによって、下側の果実トレイから突出する果頂部または果梗部の一方が傷つくことも低減することができる。
【0063】
以上より、柑橘類果実が収容された状態の本発明に係る果実トレイを複数枚積み重ねた場合であっても、果頂部および果梗部からの柑橘類果実の腐敗発生を抑制することができる。
【0064】
本発明の態様2に係る果実トレイは、上記態様1において、上記果実トレイの材料は、パルプモールドであることが好ましい。
【0065】
上記構成によれば、パルプモールドは紙を原料とする他の材料よりも硬く強度が高いことから、例えば、果実トレイに柑橘類果実を長期間収容した場合に、上記他の材料とするよりも柑橘類果実の自重によって凹部が折れる等の果実トレイの破損を抑制することができる。また、パルプモールドは樹脂よりも水分の吸収率が高いことから、例えば、果実トレイに柑橘類果実を長期間収容した場合に、樹脂製とするよりも湿気等の水分を原因とする柑橘類果実の腐敗を抑制することができる。さらに、樹脂製のものと比較して、果実トレイの軽量化を図ることができる。
【0066】
本発明の態様3に係る果実トレイは、上記態様2において、上記パルプモールドの原料は、新聞古紙であることが好ましい。
【0067】
上記構成によれば、新聞古紙は他の紙よりも硬く強度が高いことから、例えば、果実トレイに柑橘類果実を長期間収容した場合に、他の紙を原料とするよりも柑橘類果実の自重によって凹部が折れる等の果実トレイの破損を抑制することができる。また、新聞古紙は樹脂よりも水分の吸収率が高いことから、例えば、果実トレイに柑橘類果実を長期間収容した場合に、樹脂を原料とするよりも湿気等の水分を原因とする柑橘類果実の腐敗を抑制することができる。さらに、樹脂が原料である場合と比較して、果実トレイの軽量化を図ることができる。
【0068】
本発明の態様4に係る果実トレイは、上記態様1から3のいずれかにおいて、上記柑橘類果実は、レモンであることが好ましい。
【0069】
レモンは、オレンジ等の他の柑橘類果実よりも果頂部および果梗部の先端付近が突出した形状となっている。したがって、レモンの果頂部および果梗部は、他の柑橘類果実の果頂部および果梗部と比較して外部から受ける衝撃等に弱い。その点、上記構成によれば、本発明に係る果実トレイをレモンの収容に用いることにより、果頂部および果梗部からのレモンの腐敗発生をより効果的に抑制することができる。
【0070】
本発明の態様5に係る果実トレイは、上記態様1から4のいずれかにおいて、上記複数の凹部は、上記外側面形状の最頂部の四方を取り囲むように、格子状に配置され、上記果実トレイの四隅のうちの1つ(切り欠き部1b)の形状が、他の3つの形状と異なっていることが好ましい。
【0071】
上記構成によれば、果実トレイは、複数の凹部が外側面形状の最頂部の四方を取り囲むように格子状に配置された形状となっている。したがって、同一形状の果実トレイを2枚重ねる場合、下段の果実トレイの配置を基準として上段の果実トレイを同じ配置から平面視において180°回転させることにより、上段の果実トレイの全ての凹部を、下段の果実トレイにおける上記外側面形状の最頂部と反対側の面に1個ずつ載置させることができる。
【0072】
このようにして2枚の果実トレイを重ねた状態においては、下段の果実トレイにおける四隅のうちの他の3つと異なる形状の部分と対角の位置に、上段の果実トレイにおける前記他の3つと異なる形状の部分が配置されることとなる。したがって、果実トレイにおける四隅のうちの他の3つと異なる形状の部分は、下段の果実トレイにおける上記最頂部と反対側の面に上段の果実トレイの全ての凹部が1個ずつ配置されるように2枚の果実トレイを重ねるための目印としての機能を果たす。そのため、複数の果実トレイを積み重ねる場合に、果実トレイにおける四隅のうちの他の3つと異なる形状の部分を目印とすることによって、下段の果実トレイと上段の果実トレイとがずれた状態で重なることを効果的に防止することができる。
【0073】
本発明の態様6に係る果実トレイセットは、同一形状の果実トレイを複数枚含む果実トレイセットであって、上記果実トレイセットに含まれる各果実トレイは、柑橘類果実の果頂部または果梗部の一方が突出するように上記柑橘類果実を収容する複数の凹部を備え、上記複数の凹部のそれぞれは、上記柑橘類果実の側面に接触して上記柑橘類果実を支持する支持内壁と、上記柑橘類果実の果頂部または果梗部の他方を収容するための収容部と、が連なって形成され、上記収容部の内側底面と上記柑橘類果実の果頂部または果梗部の他方との間には第1空間が形成され、上記果実トレイセットに含まれる2つの果実トレイのそれぞれを、第1果実トレイ(100)および第2果実トレイ(200)とする場合、上記第2果実トレイを上記第1果実トレイの上側に載置した状態において、上記第2果実トレイに設けられた上記複数の凹部(果実収容用凹部210)のうち互いに隣り合う凹部の外側面と、上記第1果実トレイから突出する上記柑橘類果実の部位との間には第2空間(11h)が形成される。
【0074】
上記構成によれば、本発明に係る果実トレイセットに含まれる各果実トレイを複数枚積み重ねて使用した場合、最上段の果実トレイ以外の各果実トレイに収容された柑橘類果実の下側および上側にはそれぞれ空間が形成される(第1空間および第2空間)。また、最上段の果実トレイに収容された柑橘類果実の下側には第1空間が形成されるとともに、その上側は開放される。それゆえ、果頂部および果梗部からの柑橘類果実の腐敗発生を抑制しつつ、1枚の果実トレイに柑橘類果実を収容する場合と比較してより多くの柑橘類果実を収容することができる。
【0075】
本発明の態様7に係る柑橘類果実の収穫方法は、同一形状の果実トレイを複数枚含む果実トレイセットを用いた柑橘類果実の収穫方法であって、上記果実トレイセットに含まれる各果実トレイは、上記柑橘類果実の果頂部または果梗部の一方が突出するように上記柑橘類果実を収容する複数の凹部を備え、上記複数の凹部のそれぞれは、上記柑橘類果実の側面に接触して上記柑橘類果実を支持する支持内壁と、上記柑橘類果実の果頂部または果梗部の他方を収容するための収容部と、が連なって形成され、上記収容部の内側底面と上記柑橘類果実の果頂部または果梗部の他方との間には第1空間が形成され、上記果実トレイセットに含まれる2つの果実トレイのそれぞれを、第1果実トレイおよび第2果実トレイとする場合、上記第2果実トレイを上記第1果実トレイの上側に載置した状態において、上記第2果実トレイに設けられた上記複数の凹部のうち互いに隣り合う凹部の外側面と、上記第1果実トレイから突出する上記柑橘類果実の部位との間には第2空間が形成され、上記第1果実トレイに上記柑橘類果実を収容する果実収容工程と、上記第2果実トレイを上記第1果実トレイの上側に載置する果実トレイ載置工程と、を含み、上記果実収容工程と上記果実トレイ載置工程とを繰り返すことにより、収穫対象の柑橘類果実を収穫する。
【0076】
上記構成によれば、果実トレイセットに含まれる各果実トレイのそれぞれに設けられた複数の凹部に収穫対象の柑橘類果実を収容するまで、果実収容工程と果実トレイ載置工程とを繰り返した場合、最上段の果実トレイ以外の各果実トレイに収容された柑橘類果実の下側および上側にはそれぞれ空間が形成される(第1空間および第2空間)。また、最上段の果実トレイに収容された柑橘類果実の下側には第1空間が形成されるとともに、その上側は開放される。それゆえ、果頂部および果梗部からの柑橘類果実の腐敗発生を抑制しつつ、1枚の果実トレイを用いて柑橘類果実を収穫する場合と比較してより多くの柑橘類果実を収穫することができる。
【0077】
本発明の態様8に係る柑橘類果実の保存方法は、同一形状の果実トレイを複数枚含む果実トレイセットを用いた柑橘類果実の保存方法であって、上記果実トレイセットに含まれる各果実トレイは、上記柑橘類果実の果頂部または果梗部の一方が突出するように上記柑橘類果実を収容する複数の凹部を備え、上記複数の凹部のそれぞれは、上記柑橘類果実の側面に接触して上記柑橘類果実を支持する支持内壁と、上記柑橘類果実の果頂部または果梗部の他方を収容するための収容部と、が連なって形成され、上記収容部の内側底面と上記柑橘類果実の果頂部または果梗部の他方との間には第1空間が形成され、上記果実トレイセットに含まれる2つの果実トレイのそれぞれを、第1果実トレイおよび第2果実トレイとする場合、上記第1果実トレイを上記第2果実トレイの上側に載置した状態において、上記第1果実トレイに設けられた上記複数の凹部のうち互いに隣り合う凹部の外側面と、上記第2果実トレイから突出する上記柑橘類果実の部位との間には第2空間が形成され、上記各果実トレイのそれぞれに設けられた上記複数の凹部に保存対象の柑橘類果実を収容した状態で、上記各果実トレイを積み重ねる保存準備工程と、上記各果実トレイが積み重ねられた状態を維持する保存状態維持工程と、を含む。
【0078】
上記構成によれば、果実トレイセットに含まれる各果実トレイのそれぞれに設けられた複数の凹部に保存対象の柑橘類果実を収容した状態で、上記各果実トレイを積み重ねた場合(保存準備工程)、最上段の果実トレイ以外の各果実トレイに収容された柑橘類果実の下側および上側にはそれぞれ空間が形成される(第1空間および第2空間)。また、最上段の果実トレイに収容された柑橘類果実の下側には第1空間が形成されるとともに、その上側は開放される。それゆえ、果頂部および果梗部からの柑橘類果実の腐敗発生を抑制しつつ、1枚の果実トレイを用いて柑橘類果実を収穫する場合と比較してより多くの柑橘類果実を保存することができる。