【解決手段】外部床2の防水構造1では、床下地4の上に断熱材11,12を設けることにより、断熱材11,12より上の層については湿潤した床下地4の影響を受けることをなくし、防水シート20が接着された密着工法においても、工程が天候の影響を受けにくくする。また、断熱材11,12および断熱材押さえ板13を、固定ビス16によって床下地4に対して固定することにより、床下地4に対する断熱材11,12や断熱材押さえ板13の固定にあたり接着剤を不要とし、さらに複数層の断熱材を固定する。よって、断熱材押さえ板13と防水シート20との間の接着剤17を用意するのみでよく、接着剤の管理を容易とする。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、各図面は説明用のために作成されたものであり、説明の対象部位を特に強調するように描かれている。そのため、図面における各部材の寸法比率は、必ずしも実際のものとは一致しない。
【0011】
図1は、第1実施形態に係る防水構造1の断面図である。
図1に示すように、防水構造1は、ベランダや陸屋根等の建物の外部床2および外部床2の周縁部2aに沿って立ち上がるパラペット3に、防水シート20が設けられた構造である。防水構造1の防水シート20は、外部床2の全面および外部床2の周縁からパラペット3の内側面3aにおける所定の高さまでを覆うことにより、外部床2の防水層を形成している。
【0012】
防水構造1は、外部床2と、パラペット3と、外部床2上及びパラペット3の内側面3aに接着された防水シート20と、を有している。また、外部床2は、鉄骨梁9によって支持された床下地4と、床下地4上で2層に敷設された断熱材11,12と、断熱材12上に敷設された断熱材押さえ板13と、を有している。
【0013】
床下地4は、平坦な面を有しており、外部床2の自重および外部床2に作用する積載荷重等を受けて鉄骨梁9を含む架構に伝達するものである。床下地4は、例えばH形鋼からなる鉄骨梁9に架け渡された複数のALC(軽量気泡コンクリート)パネル6と、複数のALCパネル6間に形成された目地部に充填された目地モルタル7と、パラペット3を構成する外壁パネル10とALCパネル6との間の空隙に充填された目地モルタル8と、からなっている。目地モルタル8は、床下地4の周縁部に相当する。ALCパネル6は、長方形板状をなしている。ALCパネル6の内部の略直方体状の領域6a(
図1の二点鎖線参照)が、上下2段に配設された井桁状の補強鉄筋で囲まれている。
【0014】
断熱材11,12は、建物内の温熱環境を改善するためのものである。断熱材11,12のそれぞれは、板状に成形された発泡プラスチック系の断熱材である。断熱材11,12は、例えば、フェノールフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム等によって形成される。断熱材11,12は、床下地4に対して略全面的に敷設されている。断熱材11,12は、後述する固定ビス16によって床下地4に対し固定されているため、床下地4と断熱材11,12との間には、接着剤は設けられていない。
【0015】
断熱材押さえ板13は、断熱材11,12を押さえると共に、防水シート20を固定するための下地となるものである。断熱材押さえ板13としては、各種の板材を用いることができる。例えば、断熱材押さえ板13として、集成材(GL)、単板積層材(LVL)、合板(PW)、構造用合板、配向性ストランドボード(OSB)、パーティクルボード(PB)、低密度パーティクルボード(LPB)、ハードボード(HB)、中密度ファイバーボード(MDF)、インシュレーションボード(IB)、珪酸カルシウム板、スレート板、スラグ石膏ボード、石膏パーティクルボード(GPB)、木片セメント板(CPB)、硬質木片セメント板(センチュリーボード)、パルプ混入セメント板、木毛セメント板などを用いることができる。断熱材押さえ板13としては、粘りがあり、面剛性の高い材料が適している。これは、負圧が作用するなどして断熱材押さえ板13に対し上向きの力が作用した場合に、ビスによって固定された部分が破壊されること(ビス抜け)を抑制できるようにするためである。断熱材押さえ板13は、断熱材12の上面に略全面的に敷設されている。断熱材押さえ板13は、後述する固定ビス16によって床下地4に対し固定されているため、断熱材12と断熱材押さえ板13との間には、接着剤は設けられていない。
【0016】
パラペット3は、周縁部2aの下方に位置する鉄骨梁9及び目地モルタル8に沿って起立した外壁パネル10からなる。すなわち、パラペット3は、目地モルタル8(床下地4の周縁部)に沿って立ち上がっている。外壁パネル10は、例えばALCパネルである。外壁パネル10は、外部床2の上方に一定の長さ突出している。
【0017】
外部床2およびパラペット3に設けられた防水シート20は、例えば、塩化ビニルシート、加硫ゴムシート、アスファルトシート、オレフィンシート等からなる。
【0018】
本実施形態の防水構造1にあっては、断熱材11,12および断熱材押さえ板13は、断熱材押さえ板13の上面側から床下地4に到達するようにねじ込まれた固定ビス16によって、床下地4に対して固定されている。さらに、防水シート20は、断熱材押さえ板13の上面の略全面、および、外部床2の周縁部2aからパラペット3の内側面3aにかけて、接着剤17によって接着されている。すなわち、防水構造1では、防水シート20に関しては密着工法を採用すると共に、防水シート20の下層の部分に関しては接着剤を用いず、固定ビス16による固定を採用している。
【0019】
固定ビス16は、ALCパネル6内の補強鉄筋で囲まれた領域6aに設けられている。すなわち、固定ビス16の先端は、領域6aに到達している。これにより、固定ビス16を打ち込んだ際、その衝撃力によりALCパネル6に割れ等が生じるといった事が防止されており、断熱材11,12および断熱材押さえ板13は、固定ビス16によって確実に固定されている。
【0020】
固定ビス16の頭部と断熱材押さえ板13との間には、ワッシャ14が配置されている。ワッシャ14は、円板状であり、中央に固定ビス16を挿通する為のビス挿通穴が設けられ、ビス挿通穴の周囲には、固定ビス16の頭部(扁平な円錐形)のテーパに対応する凹部が形成され、ワッシャ14の上面と固定ビス16の頭部の上面とが略面一となるように構成されている。ワッシャ14を噛ませることで、負圧が作用するなどして断熱材押さえ板13に上向きの力が作用した際の、固定ビス16一箇所あたりの反力が大きくとれ、固定ビス16のピッチを大きく設定することができる。
【0021】
接着剤17としては、粘性を有する接着剤、すなわち粘着剤が用いられる。例えば、接着剤17としては、ネオプレーンゴム系、ニトリルゴム系、アクリルゴム系、ブチルゴム系、シリコンゴム系、ウレタンゴム系、ゴムアスファルト系などの接着剤を用いることができる。接着剤17として粘着剤を用いることにより、断熱材押さえ板13と固定ビス16との間、或いは断熱材押さえ板13とワッシャ14との間に段差が生じている場合や、地震時に両者の間にズレが生じた場合であっても、接着性能が確実に維持される。なお、接着剤17として、粘性を有しない(硬化する)接着剤、例えば、エポキシ系、アクリル系、ウレタン系の接着剤を用いてもよい。
【0022】
防水構造1においては、塩化ビニルシートからなる防水シート20、ニトリルゴム系の接着剤17、及び構造用合板(または硬質木片セメント板)からなる断熱材押さえ板13の組み合わせとすることが好ましい。または、塩化ビニルシートからなる防水シート20、ネオプレーンゴム系の接着剤17、及び構造用合板(または硬質木片セメント板)からなる断熱材押さえ板13の組み合わせとすることが好ましい。
【0023】
パラペット3の内側面3aには、外部床2の上面から所定の高さ位置において、横方向に延在する溝部3bが形成されている。防水シート20は、この溝部3bの近傍まで敷設される。防水シート20の上端部20aは、内側面3aおよび溝部3bに沿って配置された防水鋼板18によって接着・固定される。この防水鋼板18は、溝部3bにおいて、ビス19によって外壁パネル10に対して固定される。防水鋼板18は、表面に塩ビコーティングが施されてなる。防水鋼板18は、溶剤を用いた溶着もしくは加熱による融着によって防水シート20を表面に接着し、これによって防水シート20を固定する。
【0024】
以上説明した本実施形態の防水構造1によれば、床下地4に直接的に接するのは断熱材11であるので、例えば降雨の直後において床下地4が湿潤した状態であっても、床下地4の上に断熱材11,12を設けることで、断熱材11,12より上の層については湿潤した床下地4の影響を受けることがなく、防水シート20が接着された密着工法においても、工程が天候の影響を受けにくくなっている。また、断熱材11,12および断熱材押さえ板13は、固定ビス16によって床下地4に対して固定されるので、床下地4に対する断熱材11,12や断熱材押さえ板13の固定にあたり接着剤は不要とされている。よって、断熱材押さえ板13と防水シート20との間の接着剤17を用意するのみでよく、接着剤の管理が容易である。
【0025】
また、粘着性のある粘着剤を用いて防水シートを接着することで、断熱材押さえ板13と固定ビス16との間の段差や、地震時に両者の間にズレが生じた場合であっても、接着性能が確実に維持される。
【0026】
ALCパネル6は多孔質の素材であるため、接着剤が付着しにくく、湿潤状態にあっては、接着剤がさらに付着しにくいが、床下地4に接着剤を直接用いることがない防水構造1によれば、床下地4がALCパネル6を有してなる場合であっても、上記の作用・効果が好適に発揮される。
【0027】
ここで、仮に断熱材11,12および断熱材押さえ板13を固定するための固定ビス16が、目地モルタル8や、ALCパネル6内の補強鉄筋で囲まれていない領域(
図1の領域A)に設けられた場合、例えば目地モルタル8とALCパネル6のずれ等が生じて所定の機能を発揮できないおそれがある。しかし、防水構造1によれば、固定ビス16は、ALCパネル6の内部における補強鉄筋で囲まれた領域6aに設けられるので、固定ビス16が適正に機能し、断熱材11,12、断熱材押さえ板13、および断熱材押さえ板13に接着された防水シート20が確実に固定される。また、外部床2の周縁部2aにおいては、防水シート20は、固定ビス16が用いられることなく、接着剤17により確実に固定される。よって、品質を安定させることができる。
【0028】
例えば、
図14に示すような、絶縁工法を用いた従来の防水構造100では、防水シート120を固定するにあたり、防水鋼板114を固定するための固定ビス116を領域Aに打てないため、固定ビス116がパラペット3から遠くならざるを得ず、結果として防水鋼板114の幅が広くなってしまっていた。この場合、材料費の増大は避けられなかった。
【0029】
また、防水構造100におけるような材料費の増大を避けるため、ALCパネルをパラペットに当接するように配置し、固定ビスをパラペット近傍に打つことで防水鋼板を小型化する構造も考えられるが、この場合、剛床固定ができなくなるといった問題がある。
【0030】
これに対し、防水構造1によれば、外部床2の全面にわたって密着工法を採用しているので、材料費が低減されており、施工コストの増大が抑えられている。また、剛床固定が可能になる。
【0031】
図2は、第2実施形態に係る防水構造1Aの断面図である。この防水構造1Aが
図1に示した防水構造1と違う点は、断熱材押さえ板13に代えて、パラペット3側の端部13aに勾配が設けられた断熱材押さえ板13Aを用いた点である。断熱材押さえ板13Aの端部13aの厚みすなわち高さは、パラペット3に近づくにつれて漸減している。この防水構造1Aによれば、防水構造1と同様の作用・効果を得ることができると共に、雨水等を外部床2の周縁部2aに好適に排水する排水機能をもたせることができる。なお、
図2以降の図面においては、目地モルタル7の図示は省略されている。
【0032】
図3は、第3実施形態に係る防水構造1Bの断面図であり、
図4は、
図3の要部を拡大して示す断面図であり、
図5は、
図3のV−V線に沿っての断面図である。この防水構造1Bが
図1に示した防水構造1と違う点は、断熱材11,12のパラペット3側に勾配断熱材21を配置した点と、勾配断熱材21上に敷設された断熱材押さえ板13の周縁部13bの浮き上がりを防止する押さえ金物22を設けた点である。勾配断熱材21は、断熱材11,12と同じ材料からなる。勾配断熱材21の厚みすなわち高さは、パラペット3から最も遠い部分(
図3の右側端部)では断熱材11および断熱材12を合わせた高さに等しいが、パラペット3に近づくにつれて漸減している。また、勾配断熱材21の厚みすなわち高さは、パラペット3に沿う横方向においても漸減している(
図5参照)。
【0033】
押さえ金物22は、パラペット3の内側面3aに固定されている。押さえ金物22は、断面L字状のアングル材からなる。
図4に示すように、押さえ金物22は、パラペット3の内側面3aに当接される垂直片22aと、垂直片22aの端縁に連設されて略水平に延びる水平片22bと、からなる。垂直片22aは、内側面3aと断熱材押さえ板13の周縁部13bとの間に配置されている。水平片22bは、断熱材押さえ板13の周縁部13bの裏面側に配置されている。垂直片22aは、ビス23によってパラペット3の内側面3aに固定され、水平片22bは、断熱材押さえ板13上から打ち込まれるビス24によって、断熱材押さえ板13の周縁部13bと勾配断熱材21との間で固定される。押さえ金物22は、パラペット3に沿う横方向に延在してもよいし、ビス23,24の位置においてスポットで設けられてもよい。断熱材押さえ板13の周縁部13bは、押さえ金物22およびビス24によって、勾配を有する勾配断熱材21の上面に沿うようにして下方に屈曲されている。
【0034】
このような構成により、防水構造1Bでは、パラペット3に近づくにつれて下方に傾斜すると共に、パラペット3に沿う横方向においても傾斜した集水溝26(
図5参照)が形成される。防水構造1Bでは、断熱材押さえ板13の端部(周縁部13bや勾配断熱材21)を加工するだけで容易に集水溝26を形成できる。
【0035】
この防水構造1Bによれば、防水構造1,1Aと同様の作用・効果を得ることができる。ここで、パラペット3とALCパネル6との間の空隙に目地モルタル8が充填される場合、パラペット3に近い部分では、ビスが利きにくいため、断熱材11,12および断熱材押さえ板13の固定が難しいが、防水構造1Bによれば、断熱材押さえ板13の周縁部13bの浮き上がりを防止する押さえ金物22がパラペット3の内側面3aに固定されているため、風などによって断熱材押さえ板13の周縁部13bに負圧がはたらいた場合であっても、押さえ金物22によって、断熱材押さえ板13の周縁部13bの浮き上がりが防止される。また、断熱材押さえ板13や防水シート20が煽られて破損することを防止できる。さらにまた、
図5に示すように、パラペット3に沿う横方向に(
図5の右側から左側に向けて)雨水等を集水する機能をもたせ、雨水等を効果的に集水し外部に排出することができる。
【0036】
図6は、第4実施形態に係る防水構造1Cの断面図であり、
図7は、
図6のVII−VII線に沿っての断面図である。この防水構造1Cが
図3〜
図5に示した防水構造1Bと違う点は、押さえ金物22の水平片22bを断熱材押さえ板13の周縁部13bの表面側に配置した点である。この水平片22bは、ビス24によって、防水シート20と断熱材押さえ板13の周縁部13bとの間で固定される。
【0037】
この防水構造1Cによれば、防水構造1,1A,1Bと同様の作用・効果を得ることができる。
図7に示すように、パラペット3に沿う横方向に(
図7の右側から左側に向けて)雨水等を集水する機能をもたせ、雨水を効果的に集水し外部に排出することができる。
【0038】
図8は、第5実施形態に係る防水構造1Dの断面図であり、
図9は、
図8のIX−IX線に沿っての断面図である。この防水構造1Dが
図3〜
図5に示した防水構造1Bと違う点は、押さえ金物22の垂直片22aをパラペット3の内側面3aと勾配断熱材21との間に配置した点である。この垂直片22aは、勾配断熱材21の設置前に打ち込まれるビス23によって内側面3aに固定される。
【0039】
この防水構造1Dによれば、防水構造1,1A,1Bと同様の作用・効果を得ることができる。
図9に示すように、パラペット3に沿う横方向に(
図9の右側から左側に向けて)雨水等を集水する機能をもたせ、雨水を効果的に集水し外部に排出することができる。
【0040】
図10は、第6実施形態に係る防水構造1Eの断面図であり、
図11は、
図10のXI−XI線に沿っての断面図である。この防水構造1Eが
図3〜
図5に示した防水構造1Bと違う点は、押さえ金物22の水平片22bを断熱材押さえ板13の周縁部13bの表面側に配置した点と、押さえ金物22の垂直片22aをパラペット3の内側面3aと勾配断熱材21および断熱材押さえ板13の周縁部13bとの間に配置した点である。この垂直片22aは、勾配断熱材21および断熱材押さえ板13の設置前に打ち込まれるビス23によって内側面3aに固定される。
【0041】
この防水構造1Eによれば、防水構造1,1A,1Bと同様の作用・効果を得ることができる。
図11に示すように、パラペット3に沿う横方向に(
図11の右側から左側に向けて)雨水等を集水する機能をもたせ、雨水を効果的に集水し外部に排出することができる。
【0042】
図12は、第7実施形態に係る防水構造1Fの断面図である。この防水構造1Fが
図1に示した防水構造1と違う点は、断熱材11,12に代えて三層構造の断熱材41,42,43を用いた点、防水鋼板44を用いた点、および目地テープ50を用いた点である。
【0043】
断熱材41は、ポリスチレンフォームからなる発泡プラスチック系の断熱材であり、後述する断熱材42,43と比較して弾性に富む材質となっており、ALCパネル6および目地モルタル8上に凹凸が存在していても、破壊されることなく凹凸を吸収することができる。断熱材41は、外部床2に水勾配を形成する機能をも備えており、床下地4の上面の略全面に敷設されている。外部床2の周縁部2aにおける断熱材41は、略台形状の断面を有しており、その上面がパラペット3に近づくにつれて下方に傾斜している。具体的には、周縁部2aにおける断熱材41の高さは、パラペット3から最も遠い部分では、隣接する断熱材41の高さに等しく、パラペット3に近づくにつれて漸減している。周縁部2a以外の領域における断熱材41は、周縁部2aの断熱材41よりも傾斜が緩やかであり、全体として、
図13に示すように、外部床2に寄棟形状の水勾配が形成されるように構成されている。
【0044】
断熱材42,43は、断熱材11,12同様、それぞれ板状に成形された、フェノールフォーム、ポリエチレンフォーム等からなる発泡プラスチック系の断熱材であり、断熱材41と同等、または断熱材41よりも高い断熱性能を有する。断熱材42,43は断熱材41の上面の略全面に敷設されている。
【0045】
断熱材押さえ板13は、断熱材43の上面の略全面に敷設されている。断熱材押さえ板13は、断熱材41、42、43を貫通して先端が床下地4に到達する固定ビス16で固定されており、断熱材41、42、43は、断熱材押さえ板13によって、接着剤を用いることなく床下地4に固定されている。
【0046】
防水シート20は、断熱材押さえ板13上面の略全面、パラペット3の内側面3a、および、パラペット3の上端面にわたって設けられており、断熱材押さえ板13の上面、内側面3a、およびパラペット3の上端面の内周側部分に、接着剤17によって接着されている。また、パラペット3の上端面の外周側部分には、防水鋼板44が設けられている。防水鋼板44は、略L字状のアングル材であり、表面に塩ビコーティングが施されてなる。防水鋼板44は、パラペット3の上端面における接着剤17が塗布された部分に連続してパラペット3の外周側に延び、パラペット3の外周側の端部で下方に折り曲げられるように設けられている。
【0047】
また、本実施形態の防水構造1Fにあっては、断熱材押さえ板13の目地部に、周縁部2aにおける断熱材42,43および断熱材押さえ板13と、それらの内側に隣接する断熱材42,43および断熱材押さえ板13との間に形成される隙間Sを覆うように、目地テープ50が貼られている。すなわち、目地テープ50は、断熱材押さえ板13の目地部上部に貼られている。目地テープ50は、例えばポリエチレン製であり、一方の面には接着剤が塗布されている。
【0048】
このように、複数の断熱材押さえ板13の目地部が目地テープ50で覆われることで、例えば、歩行者や重力物によって防水シート20の上面に圧力が加わった場合に、断熱材押さえ板13の角部が防水シート20を傷つけることを防止することができる。
【0049】
また、目地テープ50が貼られていない場合は、複数の断熱材押さえ板13が互いに伸縮して隙間Sの間隔が変化し、防水シート20に局部的な応力が繰り返し発生して損傷する、いわゆるゼロスパンテンションが発生する可能性があるが、本実施形態の防水構造1Fでは、目地テープ50によって断熱材押さえ板13間に形成された隙間Sが覆われているため、断熱材押さえ板13の伸縮によって防水シート20に局部的な応力が発生することが防止でき損傷を回避することができる。
【0050】
また、目地テープ50が貼られていない場合は、隙間Sに接着剤17等が溜まることがあり、この接着剤17に残存する有機溶剤や水分により、防水シート20が膨潤して膨れ上がるという問題が発生することがあるが、本実施形態の防水構造1Fでは、目地テープ50が隙間Sの上部に貼られることによって、隙間Sに接着剤17が溜まらなくなるため、接着剤17によって防水シート20が膨れる問題を防止することができる。
【0051】
ところで、従来から、断熱材を多数重ねることが可能な高外断熱工法として機械固定工法(絶縁工法、浮かし貼り工法)が用いられてきたが、この機械固定方法では、例えばパラペット近傍等の周縁部2aに多くの防水鋼板を用いる必要があり、多大なコストがかかるという問題がある。また、複雑な形状の防水鋼板にシートを溶着することには高い技能を要するという問題もある。
【0052】
これに対して、上記実施形態の防水構造1,1A〜1Fによれば、周縁部2aにおいて防水鋼板が不要となり、材料コストを抑えることができ、また、高い技能が不要な工法とすることができる。
【0053】
また、上記のような防水鋼板等の固定金具を使わない工法としては、接着剤を用いて断熱材等を接着させる接着工法が挙げられるが、接着工法は、接着剤の管理が難しく、また高外断熱工法を実現できず、機械固定工法と比較して断熱性が低いという点で改善の余地がある。
【0054】
これに対して、上記実施形態の防水構造1,1A〜1Fによれば、ALCパネル6の上部に、断熱材11,12または断熱材41,42,43と断熱材押さえ板13とが設けられ、断熱材11,12または断熱材41,42,43と断熱材押さえ板13とが固定ビス16によって床下地4に対して固定されるため、接着剤の管理が容易になるとともに高外断熱工法を実現できる。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、断熱材は、2枚の断熱材11,12からなる二層構造や、3枚の断熱材41,42,43からなる三層構造に限られず、1枚の断熱材からなる一層構造や、4枚以上の断熱材からなる複層構造であってもよい。押さえ金物22を固定するためのビスは、ドリルネジやナイロンプラグビスであってもよい。床下地は、ALCパネル6からなる場合に限られず、PC(プレキャストコンクリート)パネルからなってもよい。また、鋼製のデッキプレートや折板屋根、RC(鉄筋コンクリート造)建物においてはRCスラブ、木造建物においては構造用合板等の木質パネルからなってもよい。さらにまた、パラペット3が設けられない場合であっても、本発明は適用可能である。
【0056】
特に、デッキプレートからなる床下地に対し本発明に係る防水構造を適用することで、以下の通り高い防水品質を維持することができる。すなわち、デッキプレートからなる床下地に対し機械固定工法(絶縁工法、浮かし貼り工法)にて防水シートを施工した場合、防水シートが浮いているため、台風等の強風時にシートにばたつきが発生し、このばたつき振動が固定ビスに伝わる。デッキプレートの鋼板が薄い(例えば1mm以下)と、回転に対する抵抗力が小さいために、ばたつき振動によって固定ビスが回転してゆるみ、最終的には固定ビスが抜けて防水シートが飛んでしまうおそれがある。また、固定ビスの回転が進行し、ある程度経過すると、固定ビスによる固定度が低いのでシートディスク部の上下振動が大きくなり、これを繰り返すことで防水シートにビス頭が何度もぶつかって傷つけ、ついにはビス頭が防水シートを突き破って漏水するおそれがある。これに対して、本発明に係る防水構造では、防水シートが断熱材押さえ板に略全面的に接着される。従って、床下地がデッキプレートからなる場合であっても、強風時に防水シートがばたつくことはなく、固定ビスの回転に起因した上記のような現象は発生せず、高い防水品質を維持することができる。
【0057】
なお、第2〜6実施形態において、押さえ金物22を断熱材押さえ板13の周縁部13bに配置した例について説明したが、第2実施形態のように断熱材押さえ板13の周縁部を屈曲させない形態であり、且つ、断熱材押さえ板13が所定の粘りと強度を有する場合(例えば、厚さ9mm以上の構造用合板、厚さ12mm以上のOSB、厚さ9mm以上のMDF、厚さ15mm以上のパーティクルボード、厚み12mm以上の硬質木片セメント板、厚み12mm以上のパルプ混入セメント板等)には、押さえ金物22は必要なく、第1実施形態のように、固定ビス16のみで断熱材押さえ板13を固定することができる。
【0058】
また、第2〜第7実施形態の防水構造1A〜1Fでは、周縁部2aにおいて、断熱材41の上面がパラペット3に近づくにつれて下方に傾斜しているため、雨水等を周縁部2aに好適に排水する排水機能をもたせることができるが、周縁部2aのパラペットに沿う方向にも勾配を設けることにより、より好適に排水機能を発揮させることができる。
【0059】
具体的には、例えば
図13の変形例に示すように、断熱材41の高さをパラペット3に沿う横方向についても漸減するようにして、最水下部に設けたドレーンXに雨水が集まるように構成することで、周縁部2aの上面に水溜まりが形成されにくくなり、雨水等をより好適にドレーンXに排出させることができる。なお、周縁部2aの長さが長すぎることにより所定の勾配を有する周縁部2aの防水シート面の高さが限度を超えてしまうような場合は、周縁部2aの断熱材41の一部については、パラペット3に沿う横方向については傾斜させないようにしたり、ドレーンXを適宜増設することで対応することができる。