特開2017-62057(P2017-62057A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-62057(P2017-62057A)
(43)【公開日】2017年3月30日
(54)【発明の名称】食材処理装置及び食材処理ユニット
(51)【国際特許分類】
   F25D 23/00 20060101AFI20170310BHJP
【FI】
   F25D23/00 302Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-186626(P2015-186626)
(22)【出願日】2015年9月24日
(71)【出願人】
【識別番号】515266016
【氏名又は名称】株式会社TRYセル
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】沖 充雅
【テーマコード(参考)】
3L345
【Fターム(参考)】
3L345AA06
3L345AA16
3L345AA25
3L345GG17
3L345GG22
3L345GG40
3L345KK01
3L345KK04
3L345KK05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】冷凍時の品質低下を抑制すると共に、冷凍時間を短縮できる食材処理装置及び食材処理ユニットを提供する。
【解決手段】食材2を収容する収容空間12に冷風Yを供給する冷風供給装置14と、収容空間12にマイナスイオンZを供給するマイナスイオン発生装置31とを有する食材処理装置1に、食材2に含まれる水分と共振する低音波Xを収容空間12に発生させる低音波発生源32を設ける。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食材を収容する収容空間に冷風を供給する冷風供給装置と、前記収容空間にマイナスイオンを供給するマイナスイオン発生装置とを有する食材処理装置において、
前記食材に含まれる水分と共振する低音波を前記収容空間に発生させる低音波発生源を有すること、
を特徴とする食材処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載する食材処理装置において、
前記低音波の周波数が5ヘルツ以上100ヘルツ以下であること
を特徴とする食材処理装置。
【請求項3】
食材処理装置の収容空間に着脱自在に取り付けられること、
マイナスイオンを発生するマイナスイオン発生装置と、食材に含まれる水分と共振する低音波を発生させる低音波発生源とを有すること
を特徴とする食材処理ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食材を収容する収容空間に冷風を供給する冷風供給装置と、マイナスイオンを発生するマイナスイオン発生装置とを有する食材処理装置及び食材処理ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、冷凍庫は、肉や魚や生鮮野菜等の食材を収容する収容空間に、例えば−40℃の冷風を供給して収容空間の内部温度を所定の冷凍温度に維持する。近年、マイナスイオンの抗菌性や除菌性に着目し、マイナスイオンを収容空間に循環させる冷凍庫が市場に出回っている。
【0003】
例えば、特許文献1には、冷凍や解凍をする場合に食材の劣化を防止するために、マイナスイオンを食材の内部に浸透させる方法が記載されている。具体的には、食材を載せるトレイや収容空間の内壁に負電圧印加装置を接続し、トレイや収容空間の内壁に負電圧を印加することにより、収容空間の内部で負電圧とマイナスイオンを反発させ、その反発力によりマイナスイオンを食材の内部に浸透させる。また、収容空間の内壁に設置された超音波照射装置から収容空間の空気を介して食材に超音波を照射し、マイナスイオンや食材を超音波振動させることで、マイナスイオンを食材の内部に浸透させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5596818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の食材処理装置は、マイナスイオンのみで食材を冷凍する場合より、変色やドリップ発生量を抑制して食材の品質を維持できると共に、冷凍時間を短縮できていたが、更に、これらの効果を向上させることが望まれている。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するものであり、冷凍時の品質低下を抑制すると共に、冷凍時間を短縮できる食材処理装置及び食材処理ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、次のような構成を有している。
(1)食材を収容する収容空間に冷風を供給する冷風供給装置と、前記収容空間にマイナスイオンを供給するマイナスイオン発生装置とを有する食材処理装置において、前記食材に含まれる水分と共振する低音波を前記収容空間に発生させる低音波発生源を有すること、を特徴とする。
【0008】
発明者は、低音波とマイナスイオンを収容空間内で発生しながら冷風を収容空間に供給し、収容空間に収容される食材を冷凍する場合と、超音波とマイナスイオンを収容空間内で発生しながら冷風を収容空間に供給し、収容空間に収容される食材を冷凍する場合について、冷凍時間を測定した。その結果、前者は、後者より食材を短時間で冷凍できた。また、前者は、後者より食材の変色が抑制された。変色は、冷凍時に食材の細胞が破壊されて色成分を流出させることにより生じるので、変色が抑制されることは、食材の品質が維持されていることを意味する。更に、発明者は、低音波とマイナスイオンを発生しながら冷凍した食材と、超音波とマイナスイオンを発生しながら冷凍した食材をそれぞれ自然解凍する実験を行った。その結果、前者は後者よりドリップ発生量が抑制された。ドリップは、食材の破壊された細胞から流出するうま味成分や色成分を含んでおり、ドリップが抑制されることは、冷凍前の食材の品質が維持されていることを意味する。よって、上記構成によれば、超音波照射しながら食材を冷凍する場合より、冷凍時の品質低下を抑制すると共に、冷凍時間を短縮できることが、実験により裏付けられた。
【0009】
この理由を発明者は次のように考えている。
低音波は、超音波より音圧が高い。そのため、低音波は、超音波より、食材の表面から深い位置にある水分まで届き、食材の広範囲において水分と共振する。この水分の振動は、食材の中心部へ向かって伝播する。そのため、冷風の熱が食材の中心部に伝わりやすく、冷凍効率が向上される。
また、冷凍効率が良いので、食材に含まれる水分が短時間で氷結し、氷結晶が大きくなりにくい。これに加え、食材に含まれるほぼ全ての水分が、低音波と共振し、水分子同士の結合を分断されて細分化されるので、氷結晶が大きくなりにくい。よって、食材の細胞は、その周りに位置する水分の氷結晶に破壊されにくく、変色やドリップ発生量が抑制される。
【0010】
これに対して、超音波は、低音波に比べて音圧が低いので、食材の表面付近までしか届かない。そのため、食材は、表面付近の水分しか超音波と共振せず、その振動が中心部の水分に伝わりにくい。よって、超音波により食材を振動させても、冷風の熱が食材の中心部に伝わりにくく、冷凍効率が悪い。
また、冷凍効率が悪いことにより、食材の中心部付近に存在する水分は、氷結に時間がかかり、氷結晶を大きくしやすい。これに加え、食材は、中心部付近に存在する水分が十分に振動せず、水分子同士の結合を細かく分断しないため、氷結晶が大きくなる。よって、食材の細胞は、大きい氷結晶に圧迫されて破壊される。この細胞破壊により、食材は、色味成分やうま味成分が細胞から流出し、冷凍時に変色したり、解凍時にドリップを生じやすくなる。
【0011】
(2)(1)に記載する構成において、前記低音波の周波数が5ヘルツ以上100ヘルツ以下であることが好ましい。
【0012】
食材は、例えば肉や魚であれば6割〜7割の水分を含み、青果であれば7割〜8割の水分を含む。この食材に含まれる水分は、アミノ酸やミネラル等の栄養素を含む。そのため、食材に含まれる水分の固有振動数は、水分に含まれる栄養素の種類や量によって異なる。大半の食材に含まれる水分の固有振動数は、5ヘルツ以上100ヘルツ以下の範囲に収まる。そこで、上記構成のように、低音波発生源が発生する低音波の周波数が5ヘルツ以上100ヘルツ以下の場合には、大半の食材に含まれる水分を低音波と共振させることができる。
【0013】
(3)本発明の食材処理ユニットは、食材処理装置の収容空間に着脱自在に取り付けられること、マイナスイオンを発生するマイナスイオン発生装置と、食材に含まれる水分と共振する低音波を発生させる低音波発生源とを有することを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、既存の冷凍庫や解凍庫の収容空間に食材処理ユニットを取り付ければ、上記食材処理装置と同様の作用効果を既存の冷凍庫や解凍庫に安価に付加できる。
【発明の効果】
【0015】
よって、本発明によれば、冷凍時の品質低下を抑制すると共に、冷凍時間を短縮できる食材処理装置及び食材処理ユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係る食材処理装置の概略構成図である。
図2】低音波が食材に伝播する状態を示す図である。
図3】冷凍前の食材における細胞の状態を示す図である。
図4図1に示す食材処理装置を用いて冷凍した食材の細胞の状態を示す図である。
図5】マイナスイオンと低音波を発生しながら食材を冷凍する場合と、マイナスイオンと超音波を発生しながら食材を冷凍する場合と、マイナスイオンのみを発生しながら食材を冷凍する場合について、一定時間毎に測定した食材の中心温度(℃)と収容空間の庫内温度(℃)を示す表である。
図6】超音波を照射しながら冷凍した食材の細胞の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明に係る食材処理装置及び食材処理ユニットの実施形態について図面に基づいて説明する。図1に、本発明に係る食材処理装置1の概略構成図を示す。図2に、低音波Xが食材2に伝播する状態を示す。図3に、冷凍前の食材2における細胞21の状態を示す図である。図4に、図1に示す食材処理装置1を用いて冷凍した食材2の細胞21の状態を示す。図5は、マイナスイオンZと低音波Xを発生しながら食材2を冷凍する場合と、マイナスイオンZと超音波を照射しながら食材2を冷凍する場合と、マイナスイオンZのみを発生しながら食材2を冷凍する場合について、一定時間毎に測定した食材2の中心温度(℃)と収容空間12の庫内温度(℃)とを示す表である。図6に、超音波を照射しながら冷凍した食材2の細胞の状態を示す。
【0018】
<食材処理装置1及び食材処理ユニット3の概略構成>
図1に示す食材処理装置1は、例えば食材2の流通過程における冷凍工程や運搬工程や解凍工程や保存工程に使用され、食材2の冷凍や解凍、保冷を行う。食材処理装置1は、筐体11の内部に、食材2を収容する収容空間12が形成されている。収容空間12には、食材2を設置するための設置部13が設けられている。食材処理装置1は、収容空間12に冷風Yを供給する冷風供給装置14を備える。収容空間12の内壁には、食材処理ユニット3がマグネットや接着剤等により着脱自在に取り付けられている。
【0019】
食材処理ユニット3は、マイナスイオン発生装置31と低音波発生源32が収容ボックス30に収容されている。マイナスイオン発生装置31と低音波発生源32は、接続配線33を介して図示しない電源に接続されている。
【0020】
マイナスイオン発生装置31は、マイナスイオンZを発生するものである。食材処理ユニット3は、冷風供給装置14の前方に設置され、冷風供給装置14が吹き出す冷風Yに向かって、マイナスイオン発生装置31が発生したマイナスイオンZを供給する。
低音波発生源32は、食材2に含まれる水分22と共振する低音波Xを発生させるものであり、市販のオーディオスピーカで構成されている。市販のオーディオスピーカは小型なので、後付けする場合でも収容空間12を広く確保できる。このオーディオスピーカは、周波数を広範囲で調整できるようになっている。低音波Xの周波数は、大半の食材に含まれる水分の固有振動数を含む5ヘルツ以上100ヘルツ以下にすることが好ましい。
【0021】
<動作説明:冷凍動作の説明>
次に、食材処理装置1の動作を説明する。まず、冷凍動作について説明する。
冷風供給装置14は、例えば−40℃の冷風Yを収容空間12に供給する。このとき、マイナスイオン発生装置31が、マイナスイオンZを発生し、そのマイナスイオンZが冷風Yと共に収容空間12に循環する。マイナスイオンZは、収容空間12の空気を除菌や消臭する。また、マイナスイオンZは、食材2に接触して食材2の酸化や腐敗を防止する。これと同時に、食材処理装置1は、低音波発生源32が、低音波Xを発生し、マイナスイオンZや食材2を低音波Xと共振させる。図2に示すように、食材2は、低音波Xが表面23から深部に位置する水分22に伝わって、これらの水分22を共振させる。その振動は、食材2の中心部24に伝達される。よって、冷風Yのマイナスカロリーが食材2の中心部24に伝わりやすく、冷凍時間が短縮される。また、図4に示すように、食材2は、食材2の中心部に位置する細胞21が水分22の氷結晶220によって破壊されにくく、変色が抑制される。更に、食材2は、低音波Xと共振することにより、マイナスイオンZが表面23から中心部24へ浸透して細胞21を包み、細胞21の酸化が防止される。
【0022】
<解凍動作の説明>
次に、上記のように冷凍した食材2を解凍する動作を説明する。
冷風供給装置14は、収容空間12に−数℃の冷風Yを供給する。このとき、マイナスイオン発生装置31が、マイナスイオンZを発生し、そのマイナスイオンZが冷風Yと共に収容空間12に循環する。またこのとき、低音波発生源32が、低音波Xを発生し、マイナスイオンZや食材2を低音波Xと共振させる。冷凍された食材2は、低音波Xと共振する状態で冷風Yからプラスカロリーを加えられ、短時間で解凍される。食材2は、冷凍時と同様にマイナスイオンZが表面23から中心部24に浸透して細胞21を保護するため、細胞21の酸化が防止されると共に、うま味やまろやかさなどが向上する。解凍された食材2は、ドリップの量が少なく、冷凍前の色成分やうま味成分等の品質が維持される。
【0023】
<保冷動作の説明>
次に、食材2を保冷する動作を説明する。
冷風供給装置14は、収容空間12に0℃から数℃の冷風Yを供給する。食材2は、低音波Xと共振する状態で冷風Yと熱交換し、保冷される。また、食材2は、マイナスイオンZが浸透して細胞21を保護するため、細胞21の酸化や劣化が防止されるとともに、うま味やまろやかさが向上する。
【0024】
<複数の食材からなる食品を冷凍又は解凍する場合について>
ところで、例えば、弁当やケーキ等の食品は、様々な食材2を組み合わせて作られている。5ヘルツ以上100ヘルツ以下の周波数は、大半の食材2に含まれる水分22の固有振動数を含む。そのため、本実施形態の食材処理装置1は、低音波発生源32が5ヘルツ以上100ヘルツ以下の低音波を発生するため、様々な食材2で作られた食品でも、均一に冷凍したり、解凍したり、保冷したりでき、冷凍時間や解凍時間を短縮できる。また、マイナスイオンZを食品に均一に浸透させ、食品の品質を維持若しくは向上させることができる。
【0025】
<食材処理装置1及び食材処理ユニット3の作用効果について>
以上説明したように、本実施形態の食材処理装置1は、食材2を収容する収容空間12に冷風Yを供給する冷風供給装置14と、収容空間12にマイナスイオンZを供給するマイナスイオン発生装置31とを有する食材処理装置1において、食材2に含まれる水分22と共振する低音波Xを収容空間12に発生させる低音波発生源32を有すること、を特徴とする。
【0026】
発明者は、マイナスイオンZと低音波Xを発生しながら食材2を冷凍する場合(以下「実験1」という。)と、マイナスイオンZと超音波照射しながら食材2を冷凍する場合(以下「実験2」という。)について、食材2の中心温度(℃)と、庫内温度(℃)を、所定時間毎に測定する実験を行った。実験1,2では、肉厚がある鶏モモ肉を食材2の一例とした。鶏モモ肉は、それぞれ100gとし、肉厚を2.5cmとした。実験1では、マイナスイオンZを発生しながら−40℃の冷風Yを収容空間12に供給して収容空間12を−30℃以下に冷却した状態で、5.27ヘルツの低音波Xを収容空間12に発生させ、鶏モモ肉を収容空間12に設置した。そして、5分毎に鶏モモ肉の中心温度と収容空間12の庫内温度を測定した。実験2は、低音波Xに変えて40キロヘルツの超音波を照射する点を除き、実験1と同様に行った。この実験の結果を図5に示す。尚、5分間隔で測定したデータを全て記載すると表が見難くなるので、図5には、主に10分間隔で測定したデータを記載する。
【0027】
伝熱効率は、温度差が大きいほど、高い。そこで、鶏モモ肉の温度と冷風Yの温度との差が最も大きい実験開始から10分経過後の中心温度と庫内温度を比較する。
【0028】
図5に示すように、実験1では、実験開始から10分経過する間に、庫内温度が実験開始時の庫内温度より2℃上昇し、鶏モモ肉の中心温度が16.7℃低くなった。
実験2では、実験開始後、実験開始から10分経過する間に、庫内温度が実験開始時の庫内温度より2℃低下すると共に、鶏モモ肉の中心温度が13.2℃低くなった。
【0029】
このように、実験1は、庫内温度が上昇し、実験2より中心温度の降下率が高い。よって、低音波Xを発生しながら鶏モモ肉を冷凍すると、超音波照射しながら鶏モモ肉を冷凍する場合より、冷風Yのマイナスカロリーが鶏モモ肉の中心部に伝わりやすく、冷凍効率が良いことが分かった。
【0030】
次に、鶏モモ肉の中心温度が−5℃以下になる冷凍時間を比較する。食品(食材)の冷凍とは食品(食材)中の水分が凍結することをいい、一般に、食品(食材)に含まれる水分は−1℃あたりから凍り始め、−5℃程度でほぼ凍結するため、中心温度が−5℃以下になれば鶏モモ肉の冷凍が完了したことになるからである。
【0031】
図5に示すように、実験1では、実験開始から30分経過すると約−5℃になった。
実験2では、実験開始から40分近く経過すると中心温度が−5℃になった。
【0032】
このように、実験1は、冷凍時間を実験2より約10分間短縮できた。よって、低音波Xを発生しながら鶏モモ肉を冷凍すると、超音波照射しながら鶏モモ肉を冷凍する場合より、冷凍時間を短縮でき、冷凍にかかるエネルギーやコストを低減できることが分かった。
【0033】
次に、中心温度が−1℃〜−5℃の温度帯を通過する時間を比較する。食品(食材)に含まれる水分は、−1℃〜−5℃の温度帯を通過する間に氷結晶となり、この温度帯を通過する時間が長いと、氷結晶が大きくなり、食品(食材)の細胞が大きく破壊されるからである。
【0034】
図5に示すように、実験1では、実験開始後から20分経過したときに鶏モモ肉の中心温度が−1℃になり、実験開始から30分経過すると約−5℃になった。よって、実験1は、中心温度が−1℃〜−5℃の温度帯を通過するのに約10分間かかった。
実験2では、実験開始から20分超経過したときに鶏モモ肉の中心温度が−1℃になり、実験開始から40分近く経過すると中心温度が−5℃になった。よって、実験2は、中心温度が−1℃〜−5℃の温度帯を通過するのに15分〜20分間かかった。
【0035】
このように、実験1は、中心温度が−1℃〜−5℃の温度帯を通過する時間が、実験2より5分〜10分程度短い。よって、低音波Xを発生しながら鶏モモ肉を冷凍すると、超音波照射しながら冷凍する場合より、鶏モモ肉の中心部に存在する氷結晶が大きくなりにくく、鶏モモ肉の細胞破壊を抑制できることがわかった。
【0036】
次に、鶏モモ肉の中心温度が−20℃以下になる時間を比較する。食品は、冷凍温度が低い程、保存期間が長くなるが、コストがかかるため、食品を冷凍保存する際の世界的な冷凍基準温度は、12ヶ月の保存が可能になる−18℃以下とされているからである。
【0037】
図5に示すように、実験1では、実験開始から55分経過後に、中心温度が−22℃になった。
実験2では、実験開始から70分経過後に中心温度が−20℃になった。
【0038】
このように、実験1は、中心温度が冷凍基準温度に達する時間を、実験2より20分近く短縮できた。よって、低音波Xを発生しながら鶏モモ肉を冷凍すると、超音波照射しながら鶏モモ肉を冷凍する場合より冷凍基準温度に達する時間を短くして、作業効率を向上させることが可能になる。
【0039】
ここで、冷凍基準温度まで冷凍した実験1,2の鶏モモ肉を見ると、実験2の鶏モモ肉は、実験1の鶏モモ肉より冷凍焼けして変色していた。変色は、食材の細胞が破壊されて色成分を流出させることにより生じる。よって、低音波Xを発生しながら鶏モモ肉を冷凍すると、超音波照射しながら鶏モモ肉を冷凍する場合より、冷凍前の鶏モモ肉の品質を維持できることを視認できた。
【0040】
次に、発明者は、低音波Xを発生しながら冷凍した食材2を解凍した場合に生じたドリップの量を測定する実験(以下「実験3」という。)と、超音波を照射しながら冷凍した食材2を解凍する場合に生じたドリップの量を測定する実験(以下「実験4」という。)を行った。ドリップは、食材2の細胞から色成分やうま味成分が流出したものであり、ドリップが少ないことは、食材2の品質が維持されていることを意味するからである。実験3,4では、ドリップが生じやすい鶏レバーを食材2の一例に使用した。実験3,4では、外気温を25℃に設定し、冷凍した鶏レバーを自然解凍した。そして、発生したドリップの量をそれぞれ測定した。その結果、実験3で生じたドリップの量は、実験4で生じたドリップの量の約3分の2であった。よって、低音波Xを発生しながら冷凍した食材2は、超音波を照射しながら冷凍した食材2より、ドリップの量が少なく、冷凍前の品質が維持されることがわかった。
【0041】
以上の通り、低音波Xを発生しながら食材2を冷凍すると、超音波を照射しながら食材2を冷凍する場合より、食材2の品質低下を抑制すると共に、冷凍時間を短縮できることが、実験により裏付けられた。
【0042】
この理由を発明者は次のように考えている。低音波Xは、超音波より音圧が高い。そのため、図2に示すように、低音波Xは、超音波より、食材2の表面23から深い位置まで届き、食材2の広範囲において水分22と共振する。この水分22の振動は、食材2の中心部24へ向かって伝播する。そのため、冷風Yの熱が食材2の中心部に伝わりやすく、冷凍効率又は解凍効率が向上される。
また、食材2に含まれるほぼ全ての水分22が、低音波Xと共振し、水分子同士の結合を分断されて細分化される。細分化された水分22は、−1℃に達するまでは、図3に示すように配列された細胞21の間を水分子が自由に移動する。このとき、細胞21は、水分子の移動によって配列を整えられ、食材2の鮮度を復活させる。
上述のように、食材2に含まれるほぼ全ての水分22が低音波Xと共振して、冷風Yの熱が食材2の中心部に存在する水分22に伝わりやすい。そのため、食材2は、均一に熱伝達されて、氷結を開始する−1℃から氷結を完了させる−5℃の温度帯を通過する時間が短くて済み、すなわち、水分22の氷結時間が短くなり、図4に示すように、氷結晶220が大きくなりにくい。しかも、食材2に含まれる水分22は、氷結し始める前に、水分子同士の結合を細かく分断されているので、氷結晶220が大きくなりにくい。よって、食材2の細胞21は、その周りに発生する氷結晶220に破壊されにくく、変色やドリップ発生量が抑制される。また、食材2は、氷結晶220が小さい大きさでほぼ均一にされ、細胞21を変形させにくいので、劣化が抑制される。更に、食材2は、水分22が細胞21の間を移動しながら細胞21の配列を整えた後に氷結するので、鮮度や味、形状、歯触りなどの品質が維持若しくは向上する。
【0043】
これに対して、超音波は、低音波Xより音圧が低いので、食材2の表面付近までしか届かない。そのため、食材2は、表面23付近の水分22しか超音波と共振せず、その振動が中心部24に存在する水分22に伝わりにくい。よって、冷風Yの熱が食材2の中心部24に伝わりにくく、冷凍効率が悪い。
また、冷凍効率が悪いことにより、食材2の中心部24付近に存在する水分22は、−1℃〜−5℃の温度帯を通過するのに時間がかかり、すなわち、氷結時間が長くなり、氷結晶を大きくしやすい。これに加え、食材2は、中心部24付近に存在する水分が十分に振動せず、水分子同士の結合を細かく分断しないため、氷結晶が大きくなる。よって、図6に示すように、食材2の細胞21は、大きい氷結晶221に圧迫されて破壊される。この細胞破壊により、食材2は、うま味成分や色成分が細胞から流出し、品質が低下する。
また、食材2は、冷凍時に水分22の氷結晶221,222の大きさがまちまちになり、細胞21が変形したり、図3に示す冷凍前の細胞21の配列を図6に示すように乱されたりする。この細胞21の変形、配列の乱れ等により、食材2の鮮度や味、形状、歯触り等の品質が低下する。
【0044】
また、上記食材処理装置1では、食材2に含まれるほぼ全ての水分22が低音波Xと共振するので、マイナスイオンZを食材2全体に均一に浸透させることができる。そのため、従来の食材処理装置のように、負電圧を印加する負電圧印加装置を収容空間12に設置する必要がない。よって、食材2を収容空間12に出し入れする際に静電気が発生せず、食材2の取扱性が良い。
【0045】
また、上記食材処理装置1では、低音波Xの周波数が5ヘルツ以上100ヘルツ以下である。食材2は、例えば肉や魚であれば6割〜7割の水分を含み、青果であれば7割〜8割の水分を含む。この食材2に含まれる水分は、アミノ酸やミネラル等の栄養素を含む。そのため、食材2に含まれる水分22の固有振動数は、水分22に含まれる栄養素の種類や量によって異なる。大半の食材2に含まれる水分22の固有振動数は、5ヘルツ以上100ヘルツ以下の範囲に収まる。そこで、上記実施形態のように、低音波発生源32が発生する低音波Xの周波数が5ヘルツ以上100ヘルツ以下の場合には、大半の食材2に含まれる水分22を低音波Xと共振させることができる。
【0046】
ここで、発明者は、実験により、低音波Xの周波数は5ヘルツ以上100ヘルツ以下に設定すると、大半の食材2の冷凍時間が、超音波照射しながら冷凍する場合の冷凍時間より短縮されることを、確認した。この実験から、低音波Xの周波数を5ヘルツ以上100ヘルツ以下に設定すると、大半の食材2に含まれる水分22が低音波Xとよく共振することが分かった。
【0047】
また、本実施形態の食材処理ユニット3は、食材処理装置1の収容空間12に着脱自在に取り付けられること、マイナスイオンZを発生するマイナスイオン発生装置31と、食材2に含まれる水分22と共振する低音波Xを発生する低音波発生源32とを有することを特徴とするので、既存の冷凍庫や解凍庫の収容空間12に食材処理ユニット3を取り付ければ、上記食材処理装置1と同様の作用効果を既存の冷凍庫や解凍庫に安価に付加できる。
【0048】
よって、本実施形態によれば、冷凍時の品質低下を抑制すると共に、冷凍時間を短縮できる食材処理装置1及び食材処理ユニット3を提供することができる。
【0049】
尚、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
上記実施形態では、マイナスイオン発生装置31と低音波発生源32を収容ボックス30に収容することにより食材処理ユニット3を設けたが、マイナスイオン発生装置31と低音波発生源32を別個に設けて食材処理ユニットとしても良い。
また、マイナスイオン発生装置31が供給するマイナスイオンZの量や低音波発生源32が発生する低音波Xの周波数を制御する制御手段や、可変する可変手段を食材処理ユニット3に設けても良い。
【符号の説明】
【0050】
1 食材処理装置
2 食材
3 食材処理ユニット
12 収容空間
14 冷風供給装置
22 水分
31 マイナスイオン発生装置
32 低音波発生源
X 低音波
Y 冷風
Z マイナスイオン
図1
図2
図3
図4
図5
図6