【課題】人の視点が映像信号における物体等に追従して動くとき及び動かないときのどちらにおいてもディザリングにおける画質の劣化を抑制できる映像信号処理装置、表示装置及び映像信号処理方法を提供する。
【解決手段】映像信号が示すフレームの画素それぞれの動きベクトルからフレームにおける出現頻度が高い動きベクトルである支配的動きベクトルを選定する選定部110と、予め定められた複数のパターンデータのうち、映像信号の表示される領域のうちの所定の領域が支配的動きベクトルに従って動くとき、及び、所定の領域が動かないときのどちらにおいても、所定の領域のディザリングにおける画質の劣化を抑制するパターンデータを決定する決定部130と、決定部130が決定したパターンデータを用いて映像信号をディザリングするディザリング部140と、を備える。
ディザリングのパターンを示すパターンデータによって映像信号を時空間的にディザリングすることで映像信号に含まれる画素値を示すnビットデータをm(<n)ビットデータに変換する映像信号処理装置であって、
前記映像信号が示すフレームの画素それぞれの動きベクトルから当該フレームにおける出現頻度が高い動きベクトルである支配的動きベクトルを選定する選定部と、
予め定められた複数のパターンデータのうち、前記映像信号の表示される領域のうちの所定の領域が前記支配的動きベクトルに従って動くとき、及び、当該所定の領域が動かないときのどちらにおいても、当該所定の領域のディザリングにおける画質の劣化を抑制するパターンデータを決定する決定部と、
前記決定部が決定した前記パターンデータを用いて前記映像信号をディザリングするディザリング部と、を備える
映像信号処理装置。
さらに、前記複数のパターンデータと複数の動きベクトルとの組み合わせ毎に予め定められた、ディザリングにおける画質の劣化度合いを示す劣化度合いデータを記憶する記憶部を備え、
前記決定部は、前記劣化度合いデータに基づいて前記パターンデータを決定する
請求項1に記載の映像信号処理装置。
前記劣化度合いデータは、前記所定の領域が前記複数の動きベクトルに従ってそれぞれ動くときの、当該所定の領域において所定数の連続したフレームにおける平均画素値が所望の画素値となっている領域の面積占有率に応じて予め定められる
請求項2に記載の映像信号処理装置。
前記パターンデータは、前記nビットデータの上位mビットだけを取り出すことで当該nビットデータから前記mビットデータに変換する第1変換を行うか、当該nビットデータの上位mビットだけを取り出した値に1を加算することで当該nビットデータから当該mビットデータに変換する第2変換を行うかを決定するのに用いられる値であるディザリング値の変化のパターンを示すデータである
請求項1〜5のいずれか1項に記載の映像信号処理装置。
前記ディザリング部は、前記フレームの画素毎に、前記nビットデータの下位(n−m)ビットの値と、前記映像信号を構成するフレーム列における当該フレームの位置と、前記ディザリング値とに依存して、前記第1変換又は前記第2変換を行う
請求項6に記載の映像信号処理装置。
ディザリングのパターンを示すパターンデータによって映像信号を時空間的にディザリングすることで映像信号に含まれる画素値を示すnビットデータをm(<n)ビットデータに変換する映像信号処理方法であって、
前記映像信号が示すフレームの画素それぞれの動きベクトルから当該フレームにおける出現頻度が高い動きベクトルである支配的動きベクトルを選定する選定ステップと、
予め定められた複数のパターンデータのうち、前記映像信号の表示される領域のうちの所定の領域が前記支配的動きベクトルに従って動くとき、及び、当該所定の領域が動かないときのどちらにおいても、当該所定の領域のディザリングにおける画質の劣化を抑制するパターンデータを決定する決定ステップと、
前記決定ステップで決定した前記パターンデータを用いて前記映像信号をディザリングするディザリングステップと、を含む
映像信号処理方法。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(本発明の基礎となった知見)
まず、物体等の動きがない静止画の映像信号を時空間的にディザリングすることで、例えば、映像信号に含まれる画素値を示す8ビットデータを6ビットデータに変換する動作を説明する。
【0033】
図1は、ディザリングにより8ビットデータを6ビットデータで表現する方法を示す図である。
【0034】
図1では、4つの画素、及び、4つの連続するフレームを単位として、nビットデータを(n−2)ビットデータに変換するディザリングが行われる。ここではn=8として、8ビットデータを6ビットデータに変換するディザリングが行われる。
【0035】
図1では、4つの画素が1つの単位として扱われる。ここで、4つの画素の単位を画素単位とする。例えば、解像度が1920×1080のテレビでは、960×540個の画素単位がある。また、第1フレームから第4フレームの4つの連続するフレームが1つの単位として扱われる。ここで、第1フレームから第4フレームの4つの連続するフレームをフレーム単位とする。
図1では、フレーム単位の各フレームにおける1つの画素単位のディザリング値と画素値とが示されている。ディザリング値は、各フレームの画素単位に対応付けられる値であって、例えば、0又は1で表される。ディザリング値が0の場合、対応する画素は、8ビットデータの上位6ビットだけを取り出して6ビットデータに変換する第1変換が行われる。ディザリング値が1の場合、対応する画素は、8ビットデータの上位6ビットだけを取り出した値に1を加算して6ビットデータに変換する第2変換が行われる。つまり、10進数において4が加算されることになる。ディザリング値は、
図1に示されるように、フレーム単位の各フレームそれぞれに決められる。ここで、各フレームの画素単位に対応付けられるディザリング値の変化のパターンをパターンデータと呼ぶ。つまり、パターンデータは、例えば、フレーム単位として第1フレームから第4フレームの4つの連続するフレーム毎に繰り返し変化するディザリング値のパターンであり、実際の映像に対して周期的に適応される。
【0036】
図1に示される時間平均した画素値は、フレーム単位のフレーム毎に変化するディザリング値に対応した画素値を時間平均した時の画素値を示す。例えば、8ビット信号の下位2ビットが01の場合、左上の画素は第1フレームでは画素値52、第2フレームでは画素値48、第3フレームでは画素値48、第4フレームでは画素値48となり、これらをフレーム単位で時間平均すると画素値49となる。右上、左下及び右下の画素も同様にフレーム単位で時間平均すると49となる。
【0037】
8ビットデータでは1〜256までの256段階の画素値で階調が表現されるが、8ビットデータの上位6ビットでは4、8、12、・・・、256の64段階のみの画素値で階調が表現される。つまり、64段階の階調表現では、例えば画素値48と52との間の49、50及び51の階調が表現できない。しかし、
図1の時間平均した画素値に示されるように、8ビットデータで表現される49、50及び51の画素値が、8ビットデータの上位6ビットで表現される48及び52の画素値で表現されている。
【0038】
図1に示される8ビット信号の下位2ビットである01、10及び11はそれぞれ、49を2進数で表した00110001、50を2進数で表した00110010、及び、51を2進数で表した00110011の下位2ビットのことである。
【0039】
8ビット信号の下位2ビットが01の場合には、画素値49が、49(00110001)の上位6ビットだけを取り出した48(00110000)及び上位6ビットに1を加算した52(00110100)で表現される。つまり、フレーム毎に画素値48又は52で表示されていた画素が、フレーム単位で時間平均することで、人の目には画素値49で見られる。ここで、49(00110001)の上位6ビットだけを取り出すとは、8ビットのうちの上位6ビットを001100から変化させず、8ビットのうちの下位2ビットを00に固定することである。また、49(00110001)の上位6ビットに1を加算するとは、8ビットのうちの上位6ビットを001100に1を加算した001101にし、8ビットのうちの下位2ビットを00に固定することである。つまり8ビットのうちの上位6ビットに1を加算するとは、10進数において4を加算することになる。
【0040】
具体的には、以下のようにして8ビットデータが6ビットデータで表現される。
【0041】
第1フレームでは、左上の画素にディザリング値1、その他の画素にディザリング値0が対応付けられたディザリング値の集まりが決められる。このディザリング値の集まりにより、左上の画素は第2変換が行われ、その他の画素は第1変換が行われる。つまり、左上の画素の画素値は、画素値49から、49の上位6ビットに1を加算した(10進数において4を加算した)画素値52に変換される。その他の画素の画素値は、画素値49から、49の上位6ビットである画素値48に変換される。
【0042】
第2フレームでは、右下の画素にディザリング値1、その他の画素にディザリング値0が対応付けられたディザリング値の集まりが決められる。つまり、右下の画素の画素値は、画素値49から、画素値52に変換される。その他の画素の画素値は、画素値49から、画素値48に変換される。
【0043】
第3フレームでは、右上の画素にディザリング値1、その他の画素にディザリング値0が対応付けられたディザリング値の集まりが決められる。つまり、右上の画素の画素値は、画素値49から、画素値52に変換される。その他の画素の画素値は、画素値49から、画素値48に変換される。
【0044】
第4フレームでは、左下の画素にディザリング値1、その他の画素にディザリング値0が対応付けられたディザリング値の集まりが決められる。つまり、左下の画素の画素値は、画素値49から、画素値52に変換される。その他の画素の画素値は、画素値49から、画素値48に変換される。
【0045】
そして、フレーム単位の各フレームにおける画素単位の画素値を時間平均すると、画素単位の各画素の画素値は49となる。このようにフレーム単位で時間平均することで、画素単位の画素値は人の目からは時間平均的に8ビットデータの画素値である49の階調として見られる。
【0046】
同様に、8ビット信号の下位2ビットが10の場合、画素値50が、50(00110010)の上位6ビットである48及び上位6ビットに1を加算した(10進数において4を加算した)52で表現される方法が示される。8ビット信号の下位2ビットが11の場合、画素値51が、51(00110011)の上位6ビットである48及び上位6ビットに1を加算した(10進数において4を加算した)52で表現される方法が示される。このように、6ビットデータ(48及び52)で8ビットデータ(49〜51)の階調が表現される。
【0047】
なお、8ビット信号の下位2ビットが00の場合、すでに上位6ビットデータで表現されているため、ディザリングの処理は必要ない。
【0048】
このように、パターンデータに示されるディザリング値の変化のパターンによってディザリングすることで、高ビットデータの階調を低ビットデータの階調で表現することができる。
【0049】
次に、物体等の動きがない静止画の映像信号をディザリングする場合と同じように、物体等の動きがある動画の映像信号をディザリングする場合の画質の劣化について説明する。
【0050】
図2は、時間とともにディスプレイに映る物体が動いている様子を示す図である。例えば、1フレームに1画素の速度で物体が右に動いているとする。この物体を見ている人の視線が物体とともに動くことにより、物体は画質が劣化して見られる。ディザリングにおける物体等の動きがある動画の画質の劣化について、具体的には
図3の(a)、
図3の(b)及び
図4で示される。
【0051】
図3の(a)は、パターンデータの一例を示す図である。
図3の(a)に示されるように、フレーム毎にディザリングのパターンが変化していることがわかる。
図3の(a)に示されるパターンデータは、
図1の8ビット信号の下位2ビットが01の場合と同じように、8ビットデータの画素値49が、6ビットデータの下位2ビットを00に固定した画素値48及び52で表現されるように決められる。
【0052】
図3の(b)は、
図3の(a)に示されるパターンデータのディザリング値に対応付けられた画素値を示す図である。
図3の(a)に示されるディザリング値1に画素値52が対応付けられ、ディザリング値0に画素値48が対応付けられていることがわかる。
図3の(b)に示されるように、フレーム毎に画素値が変化していることがわかる。
【0053】
図4は、
図3の(a)に示されるパターンデータによるディザリングにおける画質の劣化を示す図である。
図4では、1フレームに1画素の速度で右に動いている物体を表示する画素のうち4つの画素に注目したときの、ディザリングにおける画質の劣化の様子が示される。
図4に示される左上から右下へ向けて引かれた2本の実線は、1フレームに1画素の速度で右に動いている物体(4つの画素)に追従して視線が動いていることを模式的に示している。また、
図4に示される上から下へ向けて引かれた2本の点線は、視線が動いていないことを模式的に示している。そして、静止画時の視線で見える画素値は、静止画時の視線で各フレームにおいて注目している4つの画素の画素値を示している。動画時の視線で見える画素値は、動画時の視線で各フレームにおいて注目している4つの画素の画素値を示している。具体的には、各フレームにおいて2本の点線で囲まれた4つの画素の画素値を静止画時の視線で見える画素値の列に記載している。また、各フレームにおいて左上から右下へ向けて引かれた2本の実線で囲まれた4つの画素の画素値を動画時の視線で見える画素値の列に記載している。
【0054】
第1フレームでは、左上の画素にディザリング値1(画素値52)、その他の画素にディザリング値0(画素値48)が対応付けられた画素単位が並べられている。第2フレームでは、右上の画素にディザリング値1(画素値52)、その他の画素にディザリング値0(画素値48)が対応付けられた画素単位が並べられている。第3フレームでは、左下の画素にディザリング値1(画素値52)、その他の画素にディザリング値0(画素値48)が対応付けられた画素単位が並べられている。第4フレームでは、右下の画素にディザリング値1(画素値52)、その他の画素にディザリング値0(画素値48)が対応付けられた画素単位が並べられている。物体等の動きがない静止画の場合に、パターンデータにより決定された画素値で表示されたフレーム単位の各フレームにおける4つの画素が
図4に示されるように静止画時の視線で見られると、4つの連続するフレームを時間平均した4つの画素は問題なく所望の階調(画素値49)として見られる。しかし、物体等の動きがある動画の場合に、4つの画素が
図4に示されるように動画時の視線で見られると(つまり、4つの画素を見る視線がフレーム毎に1画素ずつ右にずれると)、4つの連続するフレームを時間平均した4つの画素のうちの左側の2つの画素は画素値50となり、右側の2つの画素は画素値48となる。つまり、人の目には、物体を表示する画素の階調がばらつき、画質が劣化して見られる。
【0055】
また、上述した人の視線が物体等の動きに応じて動くときに発生する画質の劣化を抑制するために、映像信号における動き情報に従ってパターンデータを変更した場合においても、ディザリングによる動画の画質の劣化が発生する。具体的には、映像信号において物体等が動き出す時に、人の視点は物体の動き始めからやや遅れて物体の動きに追従する。したがって、映像信号における動き情報に従ってパターンデータを変更する場合、人の視点が止まっているときにもパターンデータを変更してしまう。つまり、人の視点が止まっているときに見ている動画に、画質の劣化が発生してしまう。映像信号における動き情報に従ってパターンデータを変更した場合のディザリングにおける画質の劣化について、具体的には
図5の(a)、
図5の(b)及び
図6で説明する。
【0056】
図5の(a)は、映像信号における動き情報に従って変更したパターンデータを示す図である。
図5の(a)に示される左上から右下へ向けて引かれた2本の実線は、1フレームに1画素の速度で右に動いている物体(4つの画素)に追従して視線が動いていることを模式的に示している。そして、ハッチングが付された4つの画素は、1フレームに1画素の速度で右に動いている物体(4つの画素)の動きに応じてパターンデータを変更していることを示している。つまり、映像信号における動き情報に従ってパターンデータが変更されている。具体的には、動いている4つの画素を注目すると、第1フレームでは、左上の画素にディザリング値1、第2フレームでは、右上の画素にディザリング値1、第3フレームでは、左下の画素にディザリング値1、第4フレームでは、右下の画素にディザリング値1が対応付けられるように、パターンデータが変更される。
【0057】
図5の(b)は、
図5の(a)に示されるパターンデータのディザリング値に対応付けられた画素値を示す図である。
図5の(a)に示されるディザリング値1に画素値52が対応付けられ、ディザリング値0に画素値48が対応付けられていることがわかる。パターンデータの変更に伴い、対応する画素の画素値も変更される。これにより、人の視線が物体の動きに追従して動いた場合には、時間平均した画素値に示されるように問題なく所望の階調(画素値49)として見られる。
図6は、映像信号における動き情報に従ってパターンデータを変更した場合のディザリングにおける画質の劣化を示す図である。
図6は、
図5の(a)に示されるパターンデータでのディザリングにおける画質の劣化を示す図である。
図6では、1フレームに1画素の速度で右に動き始めた物体を表示する画素のうち4つの画素に注目したときの、ディザリングにおける画質の劣化の様子が示される。
図6に示される左上から右下へ向けて引かれた2本の実線は、1フレームに1画素の速度で右に動いている物体(4つの画素)に追従して視線が動いていることを模式的に示している。また、
図6に示される上から下へ向けて引かれた2本の点線は、視線が動いていないことを模式的に示している。そして、静止画時の視線で見える画素値は、静止画時の視線で各フレームにおいて注目している4つの画素の画素値を示している。動画時の視線で見える画素値は、動画時の視線で各フレームにおいて注目している4つの画素の画素値を示している。具体的には、各フレームにおいて2本の点線で囲まれた4つの画素の画素値を静止画時の視線で見える画素値の列に記載している。また、各フレームにおいて左上から右下へ向けて引かれた2本の実線で囲まれた4つの画素の画素値を動画時の視線で見える画素値の列に記載している。
【0058】
図6の動画時の視線に示されるように、人の視線が物体の動きに追従して動いた場合には、物体の動きに応じてパターンデータを変更しているため、動画時の視線で見える画素値の時間平均に示されるように、フレーム単位で時間平均した4つの画素は問題なく所望の階調(画素値49)として見られる。しかし、物体等の動きがある場合であっても、人の視点は物体の動き始めからやや遅れて物体の動きに追従するため、
図6の静止画時の視線に示されるように、物体の動きに追従して視線が動かないときがある。この場合に、4つの画素が
図6に示されるように静止画時の視線で見られると、静止画時の視線で見える画素値の時間平均に示されるように、フレーム単位で時間平均した4つの画素のうちの左側の2つの画素は画素値50となり、右側の2つの画素は画素値48となる。つまり、人の目には、物体を表示する画素の階調がばらつき、画質が劣化して見られる。
【0059】
そこで、本発明は、人の視点が映像信号における物体等に追従して動くとき及び動かないときのどちらにおいてもディザリングにおける画質の劣化を抑制できる映像信号処理装置、表示装置及び映像信号処理方法を提供する。
【0060】
以下、本発明の一態様に係る映像信号処理装置、表示装置及び映像信号処理方法について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0061】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、本発明の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、より好ましい形態を構成する任意の構成要素として説明される。
【0062】
なお、同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0063】
(実施の形態)
[1.表示装置の全体構成]
図7は、実施の形態に係る表示装置1の構成図である。
【0064】
本実施の形態における表示装置1は、画質の劣化を抑制しながら、nビットの映像信号をnビットと同等の階調で表現されるm(<n)ビットの映像信号に変換して表示する表示装置であり、映像信号処理装置100、動きベクトル検出部20、フレーム記憶部30、フレームカウンター40及び表示部50を備える。
【0065】
映像信号処理装置100は、ディザリングのパターンを示すパターンデータによって映像信号を時空間的にディザリングすることで映像信号に含まれる画素値を示すnビットデータをmビットデータに変換する映像信号処理装置であり、選定部110、記憶部120、決定部130及びディザリング部140を備える。本実施の形態では、映像信号処理装置100は、8ビットデータを6ビットデータに変換する(n=8、m=6)。
【0066】
選定部110は、映像信号が示すフレームの画素それぞれの動きベクトルからフレームにおける出現頻度が高い動きベクトルである支配的動きベクトルを選定する。なお、選定部110は、出現頻度が最も高い支配的動きベクトルをフレーム毎に1つだけ選定してもよい。また、選定部110は、出現頻度が高い順番に優先順位を対応付けて支配的動きベクトルをフレーム毎に複数選定してもよい。本実施の形態では、選定部110は、出現頻度が高い順番に優先順位を対応付けて複数の支配的動きベクトルを選定する。選定部110の動作の詳細については、後述する
図9で詳細に説明する。
【0067】
記憶部120は、複数のパターンデータと複数の動きベクトルとの組み合わせ毎に予め定められた、画質の劣化度合いを示す劣化度合いデータを記憶する、例えば不揮発性メモリである。ここで、パターンデータについて説明する。
【0068】
パターンデータは、後述するディザリング部140が第1変換又は第2変換を行うかを決定するのに用いられる値であるディザリング値の変化のパターンを示すデータである。第1変換では、nビットデータの上位mビットだけを取り出すことでnビットデータをmビットデータに変換する。第2変換では、nビットデータの上位mビットだけを取り出した値に1を加算することでnビットデータをmビットデータに変換する。ここで、1を加算するとは、単に10進数における下一桁に1を加算することではなく、2進数のnビットデータのmビット目の桁に1を加算することを意味する。本実施の形態では、第1変換では、8ビットデータの上位6ビットだけを取り出すことで8ビットデータを6ビットデータに変換する。第2変換では、8ビットデータの上位6ビットだけを取り出した値に1を加算する(10進数において4を加算する)ことで8ビットデータを6ビットデータに変換する(n=8、m=6)。ディザリング値は、限定されないが、
図1、
図4及び
図6で説明したように、例えばディザリング値が0の場合に第1変換が行われ、ディザリング値が1の場合に第2変換が行われる。また、映像信号が示すフレームの画素には、例えば、2
iの画素毎にディザリング値の集まりが対応付けられる。例えば、
図4及び
図6に示されるように、第1フレームの画素には、4つ(i=2)の画素毎に左上の画素に対応するディザリング値が1であり、残りの画素に対応するディザリング値が0であるディザリング値の集まりが対応付けられる。第2フレームから第4フレームについても、2
iの画素毎にディザリング値の集まりが対応付けられている。このように、パターンデータは、フレーム毎のディザリング値の変化のパターンを示す。
【0069】
記憶部120が記憶する劣化度合いデータについては、後述する
図10〜
図14で詳細に説明する。
【0070】
決定部130は、予め定められた複数のパターンデータのうち、映像信号の表示される領域のうちの所定の領域が支配的動きベクトルに従って動くとき、及び、所定の領域が動かないときのどちらにおいても、所定の領域のディザリングにおける画質の劣化を抑制するパターンデータを決定する。決定部130の動作の詳細については、後述する
図15で詳細に説明する。
【0071】
ディザリング部140は、決定部130が決定したパターンデータを用いて映像信号をディザリングする。具体的には、ディザリング部140は、フレームの画素毎に、nビットデータの下位(n−m)ビットの値と、映像信号を構成するフレーム列におけるフレームの位置と、ディザリング値とに依存して、第1変換又は第2変換を行う。本実施の形態では、ディザリング部140は、フレームの画素毎に、8ビットデータの下位2ビットの値と、映像信号を構成するフレーム列における現在のフレームの位置と、ディザリング値とに依存して、第1変換又は第2変換を行う(n=8、m=6)。8ビットデータの下位2ビットは、例えば
図1に示されるように、01、10又は11である。また、ディザリング部140は、後述するフレームカウンター40によって、映像信号を構成するフレーム列における現在のフレームの位置を認識することができる。
【0072】
また、ディザリング部140は、2
iの画素、及び、2
iの連続する映像信号が示すフレームを単位として、nビットデータを(n−i)ビットデータに変換するディザリングをする。本実施の形態では、ディザリング部140は、4つの画素、及び、4つの連続するフレームを単位として、8ビットデータを6ビットデータに変換するディザリングを行う(n=8、i=2)。つまり、ディザリング部140は、少ないビット数のデータを、空間的に4つの画素、時間的に4つの連続するフレームに散らして多くのビット数と同等の階調表現を行う。本実施の形態では、4つの画素を画素単位、4つの連続するフレームをフレーム単位とする。
【0073】
動きベクトル検出部20は、映像信号の現在のフレームと後述するフレーム記憶部30に記憶された現在のフレームの1つ前のフレームとの間のそれぞれの画素の動き量を測定し、1フレームにおける画素それぞれの動きベクトル(Motion Vector:MV)を生成する。動きベクトルはFRC(Frame Rate Conversion)等で活用されており、動きベクトルの検出方法は一般的に知られている。したがって、ここでは、動きベクトルの検出方法についての詳細な説明は省略する。また、動きベクトル検出部20は、フレームの開始を示すフレーム開始信号を選定部110に送り、フレームの終了を示すフレーム終了信号を選定部110及び決定部130に送る。
【0074】
フレーム記憶部30は、映像信号から動きベクトル検出部20が動きベクトルを生成するために必要な前フレームを記憶する、例えば揮発性メモリである。
【0075】
フレームカウンター40は、映像信号を構成するフレーム列における現在のフレームの位置を判定するために、フレーム数をカウントする。本実施の形態では、現在のフレームがフレーム単位のうちのどのフレームであるかを判定するために、フレームカウンター40は、フレーム数をカウントする。
【0076】
表示部50は、映像信号処理装置100で映像信号に含まれる画素値を示すnビットデータをmビットデータに変換された映像信号を表示する。本実施の形態では、表示部50は、映像信号処理装置10で映像信号に含まれる画素値を示す8ビットデータを6ビットデータに変換された映像信号を表示する(n=8、m=6)。
【0077】
なお、本実施の形態では、表示装置1は、映像信号処理装置100、動きベクトル検出部20、フレーム記憶部30、フレームカウンター40及び表示部50を備えるが、これに限らない。例えば、表示装置1は、少なくとも映像信号処理装置100及び表示部50を備えればよい。
【0078】
[2.表示装置の動作]
次に、本実施の形態に係る表示装置1について、その動作を以下に説明する。
【0079】
図8は、実施の形態に係る映像信号処理装置100の動作を示すフローチャートである。
【0080】
まず、選定部110は、支配的動きベクトルを選定する(ステップS11)。選定部110の動作について、
図9を用いて説明する。
【0081】
図9は、実施の形態に係る選定部110の構成図である。
【0082】
デコーダ111は、動きベクトル検出部20が生成した1フレームにおける画素それぞれの動きベクトルを受け取り、当該動きベクトルをデコードする。デコーダ111は、動きベクトルカウンタ112a〜nのうち、動きベクトル検出部20から受け取った動きベクトルそれぞれに対応する動きベクトルカウンタにインクリメント指示を示す信号を送る。例えば、
図9に示される動きベクトルカウンタ112aは、1フレームに1画素分右へ動く動きベクトルをカウントする。同様に、動きベクトルカウンタ112bは、1フレームに1画素分下へ動く動きベクトルをカウントし、動きベクトルカウンタ112nは、1フレームにn画素分右、m画素分下へ動く動きベクトルをカウントする。例えば、あるフレームにおいて、1画素分右へ動く動きベクトルを有する画素が100個あった場合、デコーダ111は、動きベクトルカウンタ112aに100回インクリメント指示信号を送り、動きベクトルカウンタ112aのカウント数は100となる。なお、動きベクトルカウンタ112a〜nは、フレーム開始信号を受けることで、カウント数がリセットされる。つまり、動きベクトルカウンタ112a〜nは、1フレームにおける画素毎の動きベクトルの出現数をカウントする。
【0083】
比較器113は、動きベクトルカウンタ112a〜nのカウント数を比較し、最もカウント数の多い動きベクトル、2番目にカウント数の多い動きベクトル、・・・、k番目にカウント数の多い動きベクトルを比較することで選定し、フリップフロップ(F/F)114へ送る。
【0084】
そして、F/F114は、フレーム終了信号を受けると、最もカウント数の多い動きベクトル、つまり、フレームにおける出現頻度が最も高い動きベクトルを第1支配的動きベクトルとして出力する。同様に、F/F114は、フレームにおける出現頻度が2番目に高い動きベクトルを第2支配的動きベクトル、フレームにおける出現頻度がk番目に高い動きベクトルを第k支配的動きベクトルとして選定し、決定部130へ出力する。このように、F/F114(選定部110)は、出現頻度が高い順番に例えば1からkの優先順位を対応付けて、複数の支配的動きベクトルを選定する。
【0085】
次に、決定部130は、予め定められた複数のパターンデータのうち、映像信号の表示される領域のうちの所定の領域が支配的動きベクトルに従って動くとき、及び、所定の領域が動かないときのどちらにおいても、所定の領域のディザリングにおける画質の劣化を抑制するパターンデータを決定する(ステップS12)。具体的には、決定部130は、記憶部120に記憶された劣化度合いデータに基づいてパターンデータを決定する。劣化度合いデータは、上述したように、複数のパターンデータと複数の動きベクトルとの組み合わせ毎に予め定められた、画質の劣化度合いを示すデータである。詳細は後述する
図10〜
図14で説明するが、劣化度合いデータは、所定のパターンデータによってディザリングされている映像信号の表示される領域のうちの所定の領域が複数の動きベクトルに従ってそれぞれ動くときの、所定の領域において所定数の連続したフレームにおける平均画素値が所望の画素値となっている領域の面積占有率に応じて予め定められるデータである。つまり、所定の領域において平均画素値が所望の画素値になっている領域が多い場合、画質の劣化度合いは低く、平均画素値が所望の画素値になっていない領域が多い場合、画質の劣化度合いは高くなる。なお、本実施の形態では、所定の領域を例えば2×2の4つの画素(画素単位)の大きさを有する領域とする。また、所定数の連続したフレームを4つの連続したフレーム(フレーム単位)とする。
【0086】
図10は、複数のパターンデータと複数の動きベクトルとの組み合わせ毎に予め定められた劣化度合いデータの一例を示す図である。
【0087】
図10のパターンデータの列に示される第1パターンデータ、第2パターンデータ、・・・は、予め定められた複数のパターンデータである。また、動きベクトルの列に示されるように、動きベクトル(n,m)を1フレームにn画素分右、m画素分下へ動く動きベクトルとする。そして、複数のパターンデータと複数の動きベクトルとの組み合わせ毎に劣化度合いデータが予め定められ、
図10の劣化度合いデータの列に示されるように、劣化度合いデータは、数値で表される。劣化度合いデータは、画質の劣化度合いが低い順番に例えば0〜3の数値で表される。つまり、劣化度合いデータの数値が小さいほど画質の劣化度合いが低くなる。劣化度合いデータが0のとき、所望の画素値となっている領域の面積占有率を例えば100%とする。劣化度合いデータが1のとき、所望の画素値となっている領域の面積占有率を例えば50%以上100%未満とする。劣化度合いデータが2のとき、所望の画素値となっている領域の面積占有率を例えば0%より大きく50%未満とする。劣化度合いデータが3のとき、所望の画素値となっている領域の面積占有率を例えば0%とする。劣化度合いデータが0〜3になるパターンデータと動きベクトルとの組み合わせについては、後述する
図11〜
図14で詳細に説明する。
【0088】
図10に示されるように、動きベクトル(0,0)と予め定められた複数のパターンデータとの組み合わせにおける劣化度合いデータは0となっている。所定の領域が動きベクトル(0,0)に従って動く、言い換えると、所定の領域が動かないときには、どのパターンデータと動きベクトル(0,0)との組み合わせであっても劣化度合いデータは0となる。つまり、所定の領域が動かないときには、どのパターンデータであっても画質の劣化は発生しない。なお、画質の劣化が発生しないとは、完全に画質の劣化が発生しない状態に限らず、人の目にはわからない程度の劣化が発生している状態も含んでもよい。決定部130が予め定められた複数のパターンデータから決定するパターンデータは、所定の領域が動かないときには画質の劣化が発生しないパターンデータである。ここで、劣化度合いデータが0〜3になるパターンデータと動きベクトルとの組み合わせの一例について、
図11〜
図14を用いて説明する。
【0089】
図11は、劣化度合いデータが0になるパターンデータと動きベクトルとの組み合わせの一例を示す図である。
図11では、所望の画素値として8ビットデータの下位2ビットが01(例えば、49(00110001))の場合を一例として説明する。つまり、映像信号処理装置100に入力された映像信号に含まれる画素における8ビットデータの下位2ビットが01の場合を一例として説明する。なお、後述する
図12〜
図14においても同様に、映像信号処理装置100に入力された映像信号に含まれる画素における8ビットデータの下位2ビットが01の場合を一例として説明する。また、
図11では、パターンデータに示されるディザリング値に応じて第1変換又は第2変換された画素値が示されている。つまり、ディザリング値が1に対応する画素には、画素値52が示され、ディザリング値が0に対応する画素には、画素値48が示されている。後述する
図12〜
図14においても、同様に、パターンデータに示されるディザリング値に応じて第1変換又は第2変換された画素値が示されている。また、
図11では、動きベクトルを1フレームに1画素分右に動く動きベクトル(1,0)とする。
【0090】
図11に示されるように、第1フレームでは画素単位のうちの左上の画素の画素値が52になり、その他の画素の画素値が48になる。第2フレームでは画素単位のうちの左下の画素の画素値が52になり、その他の画素の画素値が48になる。第3フレームでは画素単位のうちの右上の画素の画素値が52になり、その他の画素の画素値が48になる。第4フレームでは画素単位のうちの右下の画素の画素値が52になり、その他の画素の画素値が48になる。
図11には、このように画素値を変化させるパターンデータが示される。なお、
図11〜
図14に示されるパターンデータは、それぞれ同じパターンデータであり、例えば、
図10に示される第1パターンデータである。
【0091】
図11に示される静止画時の視線で所定の領域として例えば4つの画素が見られると、フレーム単位で時間平均した所定の領域は問題なく所望の階調(画素値49)として見られる。言い換えると、所定の領域が動かないときには、どのパターンデータであっても画質の劣化は発生しないため、所定の領域に対する所望の画素値49となっている領域の面積占有率は100%となり、劣化度合いデータが0となる。後述する
図12〜
図14においても、上述したように、同様のパターンデータが示され、静止画時の視線では劣化度合いデータは0となるため、
図12〜
図14では、静止画時の画素値の図示を省略し、説明を省略する。
【0092】
一方、
図11に示される動画時の視線で所定の領域が見られるとフレーム単位で時間平均した所定の領域は問題なく所望の階調(画素値49)として見られる。言い換えると、所定の領域が動きベクトル(1,0)に従って動くときに、所定の領域に対する所望の画素値49となっている領域の面積占有率は100%となり、劣化度合いデータは0となる。
【0093】
このように、
図11に示されるようなパターンデータと動きベクトルとの組み合わせに対して劣化度合いデータ0が予め定められ、記憶部120に記憶されている。
【0094】
図12は、劣化度合いデータが1になるパターンデータと動きベクトルとの組み合わせを示す図である。
図12では、動きベクトルを1フレームに0.9画素分右に動く動きベクトル(0.9,0)とする。
【0095】
図12に示される動画時の視線で所定の領域が見られると、フレーム単位で時間平均した所定の領域には、画素値49として見られる領域と見られない領域とがある。
図12に示されるように、所定の領域に対する画素値49として見られる領域の面積占有率は50%以上100%未満となり、劣化度合いデータは1となる。
【0096】
このように、
図12に示されるようなパターンデータと動きベクトルとの組み合わせに対して劣化度合いデータ1が予め定められ、記憶部120に記憶されている。
【0097】
図13は、劣化度合いデータが2になるパターンデータと動きベクトルとの組み合わせを示す図である。
図13では、動きベクトルを1フレームに0.3画素分右に動く動きベクトル(0.3,0)とする。
【0098】
図13に示される動画時の視線で所定の領域が見られると、フレーム単位で時間平均した所定の領域には、画素値49として見られる領域と見られない領域とがある。
図13に示されるように、所定の領域に対する画素値49として見られる領域の面積占有率は0%より大きく50%未満となり、劣化度合いデータは2となる。
【0099】
このように、
図13に示されるようなパターンデータと動きベクトルとの組み合わせに対して劣化度合いデータ2が予め定められ、記憶部120に記憶されている。
【0100】
図14は、劣化度合いデータが3になるパターンデータと動きベクトルとの組み合わせを示す図である。
図14では、動きベクトルを1フレームに1画素分下に動く動きベクトル(0,1)とする。
【0101】
図14に示される動画時の視線で所定の領域が見られると、フレーム単位で時間平均した所定の領域には、画素値49として見られる領域がない。
図14に示されるように、所定の領域に対する画素値49として見られる領域の面積占有率は0%となり、劣化度合いデータは3となる。
【0102】
このように、
図14に示されるようなパターンデータと動きベクトルとの組み合わせに対して劣化度合いデータ3が予め定められ、記憶部120に記憶されている。
【0103】
図11〜
図14で説明したように、パターンデータと動きベクトルとの組み合わせに応じて、劣化度合いデータが予め定められ、当該劣化度合いデータは記憶部120に記憶されている。なお、記憶部120には、
図11〜
図14に示されるような、映像信号に含まれる画素における8ビットデータの下位2ビットが01のとき(例えば、49(00110001))のパターンデータと動きベクトルとの組み合わせに応じた劣化度合いデータの他に、8ビットデータの下位2ビットが10のとき(例えば、50(00110010))のパターンデータと動きベクトルとの組み合わせに応じた劣化度合いデータ、及び、8ビットデータの下位2ビットが11のとき(例えば、51(00110011))のパターンデータと動きベクトルとの組み合わせに応じた劣化度合いデータが記憶されている。つまり、記憶部120は、複数のパターンデータと複数の動きベクトルとの組み合わせ毎に予め定められた劣化度合いデータを記憶している。例えば、8ビットデータの下位2ビットが01のときのパターンデータが24個、8ビットデータの下位2ビットが10のときのパターンデータが6個、8ビットデータの下位2ビットが11のときのパターンデータが24個あるとし、複数の動きベクトルが10個あるとする。この場合、記憶部120は、54個のパターンデータと10個の動きベクトルとの組み合わせに応じて、540個の予め定められた劣化度合いデータを記憶している。
【0104】
次に、決定部130の動作について、
図15を用いて説明する。なお、以下では、映像信号に含まれる画素における8ビットデータの下位2ビットが01のときの決定部130の動作を一例として説明する。
【0105】
図15は、実施の形態に係る決定部130の構成図である。
【0106】
シーケンサ131は、フレーム終了信号を受けると、選定部110による支配的動きベクトルの選定が完了したとして、動作を開始する。シーケンサ131は、次のフレームが開始するまで(例えば、垂直帰線区間の間)に、パターンデータを決定する。シーケンサ131は、選択部132、重み付け設定部133、F/F136、138、139、及び記憶部120を制御する。
【0107】
シーケンサ131は、記憶部120に所定のパターンデータを指定する。上述したように、例えば、8ビットデータの下位2ビットが01のときのパターンデータが24個の場合、シーケンサ131は、記憶部120に所定のパターンデータとして24個のパターンデータのうちの1つのパターンデータを指定する。24個のパターンデータを第1パターンデータから第24パターンデータとした場合、シーケンサ131は、記憶部120に例えば第1パターンデータを指定する。また、シーケンサ131は、選択部132に、選定部110から受け付けた支配的動きベクトルのうち所定の支配的動きベクトルを選択させる。例えば、シーケンサ131は、選択部132にまず第1支配的動きベクトルを選択させることで、選択部132は、記憶部120に第1支配的動きベクトルを指定する。そして、記憶部120は、指定された第1支配的動きベクトルと第1パターンデータとの組み合わせによって予め定められた劣化度合いデータを乗算部134に出力する。
【0108】
重み付け設定部133は、シーケンサ131が選択部132に選択させた支配的動きベクトルに対応付けられた第1から第kの優先順位に応じて、乗算部134に出力された劣化度合いデータに重み付けをする。選択部132は、第1支配的動きベクトルを選択しているため、重み付け設定部133は、第1の優先順位に応じて劣化度合いデータに重み付けをする。重み付け設定部133は、劣化度合いデータへの重み付けとして、優先順位が高い支配的動きベクトルほど、乗算部134において劣化度合いデータに大きい値を掛け合わせる。そして、乗算部134は、重み付けされた劣化度合いデータを加算部135に出力する。
【0109】
シーケンサ131は、記憶部120に所定のパターンデータを指定したときに、F/F136が保存するデータをリセットする。例えば、F/F136には、所定のパターンデータが選択された当初には、0が保存されている。
【0110】
加算部135では、乗算部134で重み付けされた劣化度合いデータとF/F136に保存されたデータとが足し合わされて、F/F136に保存される。つまり、所定のパターンデータが選択された当初には、加算部135では、乗算部134で重み付けされた劣化度合いデータとF/F136に保存された0とが足し合わされて、乗算部134で重み付けされた劣化度合いデータがF/F136に保存される。
【0111】
次に、シーケンサ131は、選択部132に第2支配的動きベクトルを選択させることで、選択部132は、記憶部120に第2支配的動きベクトルを指定する。そして、記憶部120は、指定された第2支配的動きベクトルと第1パターンデータとの組み合わせによって予め定められた劣化度合いデータを乗算部134に出力する。選択部132は、第2支配的動きベクトルを選択しているため、重み付け設定部133は、第2の優先順位に応じて劣化度合いデータに重み付けをし、乗算部134は、重み付けされた劣化度合いデータを加算部135に出力する。加算部135では、乗算部134で重み付けされた劣化度合いデータとF/F136に保存された第1支配的動きベクトルが選択されたときの劣化度合いデータとが足し合わされて、F/F136に保存される。
【0112】
このようにして、同様の動作が第k支配的動きベクトルまで行われ、第1パターンデータにおける第1支配的動きベクトルが選択されたときの劣化度合いデータから第k支配的動きベクトルが選択されたときの劣化度合いデータが足し合わされ、足し合わされた劣化度合いデータが比較器137に出力される。ここで、足し合わされた劣化度合いデータをスコアデータと呼ぶ。
【0113】
シーケンサ131は、フレーム終了信号を受け付けたときに、F/F138が保存するデータをセットする。例えば、F/F138には、シーケンサ131がフレーム終了信号を受け付けた当初には、F/F138が表現可能な最大値が保存されている。
【0114】
比較器137では、F/F136から出力されたスコアデータとF/F138に保存されたデータとが比較される。つまり、シーケンサ131がフレーム終了信号を受け付けた当初には、比較器137では、F/F136から出力されたスコアデータとF/F138に保存された最大値とが比較される。F/F136から出力されたスコアデータがF/F138に保存されたデータよりも小さい場合、F/F138は、F/F136から出力されたスコアデータを保存し、F/F139は、シーケンサ131から受けている所定のパターンデータを指定するデータを保存する。F/F136から出力されたスコアデータは、F/F138に保存された最大値よりも小さいため、F/F138は、F/F136から出力されたスコアデータを保存し、F/F139は、第1パターンデータを指定するデータを保存する。
【0115】
次に、シーケンサ131は、記憶部120に24個のパターンデータのうち、例えば、第2パターンデータを指定する。そして、第1パターンデータにおけるスコアデータと同様に、第2パターンデータにおける第1支配的動きベクトルが選択されたときの劣化度合いデータから第k支配的動きベクトルが選択されたときの劣化度合いデータが足し合わされ、スコアデータが比較器137に出力される。比較器137では、F/F136から出力された第2パターンデータにおけるスコアデータとF/F138に保存された第1パターンデータにおけるスコアデータとが比較される。F/F136から出力されたスコアデータがF/F138に保存されたスコアデータよりも小さい場合、F/F138は、第2パターンデータにおけるスコアデータを保存する。また、F/F139は、第2パターンデータを指定するデータを保存する。F/F136から出力されたスコアデータがF/F138に保存されたスコアデータよりも大きい場合、F/F138は、第1パターンデータにおけるスコアデータを保持し、F/F139は、第1パターンデータを指定するデータを保持する。
【0116】
このようにして、同様の動作が第24パターンデータまで行われ、決定部130は、第1パターンデータにおけるスコアデータから第24パターンデータにおけるスコアデータのうち最も小さいスコアデータを有するパターンデータを決定する。上述したように、重み付け設定部133は、劣化度合いデータへの重み付けとして、優先順位が高い支配的動きベクトルほど、乗算部134において劣化度合いデータに大きい値を掛け合わせる。これにより、優先順位が高い支配的動きベクトルと所定のパターンデータとの組み合わせにおける劣化度合いデータの値が大きい場合(例えば劣化度合いデータが3の場合)、優先順位が高い支配的動きベクトルほど、大きい値が掛け合わされるため、スコアデータの値も大きくなる。したがって、決定部130は、優先順位が高い支配的動きベクトルにおいて劣化度合いデータの値が大きくなるパターンデータを決定しにくくなる。
【0117】
そして、F/F139は、最終的に保存しているパターンデータを指定するデータをディザリング部140に送る。
【0118】
以上のように、決定部130は、所定の領域が支配的動きベクトルに従って動くときの劣化度合いデータに基づくスコアデータが最適となるパターンデータを決定する。具体的には、決定部130は、優先順位に応じて劣化度合いデータに重み付けをし、劣化度合いデータに基づくスコアデータとして、複数の支配的動きベクトル毎の重み付けをした劣化度合いデータを足し合わせたデータが最適となるパターンデータを決定する。
【0119】
なお、映像信号に含まれる画素における8ビットデータの下位2ビットが01のときの決定部130の動作を一例として説明したが、8ビットデータの下位2ビットが10のとき、及び、8ビットデータの下位2ビットが11のときにも同様に動作する。例えば、8ビットデータの下位2ビットが10のときのパターンデータが6個の場合、シーケンサ131は、記憶部120に6個のパターンデータからそれぞれ指定していき、決定部130は、6個のパターンデータからスコアデータが最適となるパターンデータを決定する。例えば、8ビットデータの下位2ビットが11のときのパターンデータが24個の場合、シーケンサ131は、記憶部120に24個のパターンデータからそれぞれ指定していき、決定部130は、24個のパターンデータからスコアデータが最適となるパターンデータを決定する。
【0120】
そして、ディザリング部140は、決定部130が決定したパターンデータを用いて映像信号をディザリングする(ステップS13)。
【0121】
このように、映像信号処理装置100は、パターンデータによって映像信号を時空間的にディザリングすることで映像信号に含まれる画素値を示すnビットデータ(本実施の形態では8ビットデータ)をmビットデータ(本実施の形態では6ビットデータ)に変換する。
【0122】
最後に、表示部50は、映像信号処理装置100で変換された映像信号を表示する。
【0123】
[3.効果]
本実施の形態における映像信号処理装置100、表示装置1及び映像信号処理方法では、人の視点が映像信号における物体等に追従して動くとき及び動かないときのどちらにおいてもディザリングにおける画質の劣化を抑制できる。
【0124】
(実施の形態の変形例)
以上、本発明の映像信号処理装置及び映像信号処理方法について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、この実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、及び、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。
【0125】
例えば、本実施の形態では、記憶部120は、映像信号に含まれる画素における8ビットデータの下位2ビットが01、10及び11のときのパターンデータと動きベクトルとの組み合わせにおける劣化度合いデータをそれぞれ記憶しているが、これに限らない。例えば、8ビットデータの下位2ビットが01、10及び11のときのパターンデータと動きベクトルとの組み合わせにおける劣化度合いデータをそれぞれ異なる記憶部が記憶していてもよい。同様に、映像信号に含まれる画素における8ビットデータの下位2ビットが01、10及び11のときにそれぞれ異なる決定部が動作してもよい。つまり、映像信号処理装置100は、映像信号に含まれる画素における8ビットデータの下位2ビットに応じてそれぞれ記憶部及び決定部を備えてもよい。
【0126】
また、例えば、本実施の形態では、選定部110は、複数の支配的動きベクトルを選定したが、これに限らない。例えば、選定部110は、フレームにおける出現頻度が最も高い第1支配的動きベクトルだけを選定してもよい。この場合には、劣化度合いデータに基づくスコアデータとして、複数の支配的動きベクトル毎の重み付けをした劣化度合いデータを足し合わせる必要がないため、スコアデータは、劣化度合いデータになる。つまり、決定部130は、所定の領域が支配的動きベクトルに従って動くときの劣化度合いデータが最適となるパターンデータを決定する。
【0127】
また、例えば、本実施の形態では、ディザリング部140は、少ないビット数のデータを、空間的に4つの画素、時間的に4つの連続するフレームに散らして多くのビット数と同等の階調表現を行ったが、これに限らない。例えば、少ないビット数のデータを空間的に4つの画素よりも多い、例えば16個の画素に散らすことで、多くのビット数と同等の階調表現が行われてもよい。また、時間的に4つの連続するフレームよりも多い、例えば16個の連続するフレームに散らすことで、多くのビット数と同等の階調表現が行われてもよい。
【0128】
また、例えば、本実施の形態では、8ビットデータは、8ビットデータよりも2ビット少ない6ビットデータに変換されたが、これに限らない。例えば、8ビットデータは、8ビットデータよりも4ビット少ない(16分の1の大きさの)4ビットデータに変換されてもよい。このとき、4ビットデータは、例えば、空間的に16個の画素、時間的に16個の連続するフレームに散らされてもよく、16個の画素、及び、16個の連続するフレームが1つの単位として扱われてもよい。
【0129】
また、例えば、本実施の形態では、8ビットデータが6ビットデータに変換されたが、これに限らない。8ビットデータより小さい、例えば6ビットデータが4ビットデータに変換されてもよく、また、8ビットデータより大きい、例えば10ビットデータが8ビットデータに変換されてもよい。
【0130】
なお、本発明の包括的または具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたはコンピュータ読み取り可能なCD−ROMなどの記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラムまたは記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。例えば、本発明は、上記映像信号処理方法をコンピュータに実行させるためのプログラムとして実現されてもよい。また、そのプログラムを示す情報、データ又は信号として実現することもできる。そして、それらプログラム、情報、データ及び信号は、インターネット等の通信ネットワークを介して配信してもよい。更に、本発明を適用した映像信号自体をそのまま記録媒体に保存してもよく、また、映像配信してもよい。
【0131】
その他、実施の形態に対して当業者が思いつく各種変形を施して得られる形態や、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本発明に含まれる。