(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-62899(P2017-62899A)
(43)【公開日】2017年3月30日
(54)【発明の名称】避雷針装置
(51)【国際特許分類】
H05F 3/04 20060101AFI20170310BHJP
【FI】
H05F3/04 G
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-186836(P2015-186836)
(22)【出願日】2015年9月24日
(71)【出願人】
【識別番号】503006095
【氏名又は名称】宮沢 強
(74)【代理人】
【識別番号】100088579
【弁理士】
【氏名又は名称】下田 茂
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 強
【テーマコード(参考)】
5G067
【Fターム(参考)】
5G067AA11
5G067DA32
(57)【要約】
【課題】 雷に基づく放電を分散させ、落雷時の衝撃を大幅に緩和するとともに、加えて、避雷針部における全体の小型化を図り、特に、一般住宅に設置して最適な避雷針装置を提供する。
【解決手段】 受雷部位に複数の突針部P…を配した避雷針部2及びこの避雷針部2で受けた雷に基づく雷電流Isを地中Eに流す導電部3を有する避雷針装置1を構成するに際して、中央に配した突針支持ブロック部5の底面部分5dを除く最外郭面Fo上に複数の突針部P…を立体的に支持してなる避雷針部2を備えて構成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受雷部位に複数の突針部を配した避雷針部及びこの避雷針部で受けた雷に基づく雷電流を地中に流す導電部を有する避雷針装置において、中央に配した突針支持ブロック部の底面部分を除く最外郭面上に複数の突針部を立体的に支持してなる避雷針部を備えることを特徴とする避雷針装置。
【請求項2】
前記突針支持ブロック部は、複数の支持プレート部を、中心軸を支点にして放射方向に突出させ、かつ周方向に所定角度間隔おきに配した形状に構成してなることを特徴とする請求項1記載の避雷針装置。
【請求項3】
前記支持プレート部により支持される突針部には、真上方向に突出した少なくとも一以上の突針部を含むグループ,斜め上方向に突出した少なくとも一以上の突針部を含むグループ,横方向に突出した少なくとも一以上の突針部を含むグループ,の一グループ又は二グループ以上を含むことを特徴とする請求項2記載の避雷針装置。
【請求項4】
前記導電部は、前記雷電流が流れる導線の周囲に配し、雷サージを吸収する磁性体によりドーナツ形に形成した少なくとも一以上のサージ吸収コアを備えることを特徴とする請求項1記載の避雷針装置。
【請求項5】
前記導電部は、前記サージ吸収コアに巻いた巻線部の両端に接続した放電抵抗を備えることを特徴とする請求項4記載の避雷針装置。
【請求項6】
一般住宅に設置することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の避雷針装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受雷部位に複数の突針部を配した避雷針部及びこの避雷針部で受けた雷に基づく雷電流を地中に流す導電部を有する避雷針装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ビルディング等の建築物には、上方に突出した一本の突針部を用いた避雷針が設置されており、特に、高さ20メートルを超える建築物には避雷針の設置が基本的に義務付けられている。ところで、避雷針は、落雷が建築物に直撃することを回避する機能を有するとともに、雷が避雷針に誘導された場合であっても、避雷針の周りの一定範囲を保護する機能が求められる。このため、避雷針の機能をより高めることを目的として複数本の突針部を設けた避雷針も提案されている。
【0003】
従来、このような複数本の突針部を設けた避雷針としては、特許文献1で開示されるリング付き避雷針及び特許文献2で開示される避雷針が知られている。特許文献1で開示されるリング付き避雷針は、従来の避雷針と比較して、低い高さ、或いは少ない本数で同等の避雷効果を得るとともに、避雷針の保護範囲の拡大を目的としたものであり、具体的には、導電性の水平状リング部分を底円とし導電性の鉛直棒状部分の先端を頂点とし、該頂点とリング状部分とを結んだ円錐の母線と垂直中心線との間の角度が60°以上かつ90°未満となるよう導電性の支持片を介して水平状リング部分が棒状部分の先端の下側部に取付けられたものである。また、特許文献2で開示される避雷針は、高さをできるだけ低くし、かつ、保護範囲をできるだけ広く確保できる避雷針の提供を目的としたものであり、具体的には、環状受雷部をその環状面を水平にして配置し、この環状受雷部の周縁に垂直上方に突出した環上突針を設け、環状受雷部の周縁を頂点とする保護角による円錐内と、環上突針の先端を頂点とする保護角による円錐内となる保護範囲を得るようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−121192号公報
【特許文献2】特開2006−164661号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した避雷針をはじめ、従来の多くの避雷針は、大型の建築物を想定したものであるため、次のような解決すべき課題も存在した。
【0006】
即ち、一般住宅であっても、例えば、高原に建てられ、雷の脅威に晒される環境に存在する住宅では避雷針の設置が望ましい。一方、このような住宅では、比較的容易に保護範囲を確保できるものの、建築物としての大きさが小さく、避雷針と居住者間の距離が短くなるため、落雷時の衝撃が大きな問題となる。このため、落雷を吸収し、保護範囲を確保することに加え、衝撃を如何に低減するは、一般住宅にとっての重要な課題となる。しかしながら、従来の避雷針には、このような落雷時の衝撃を緩和する機能に着目したものは何ら存在せず、一般住宅にとっての最適な避雷針を得る観点からは、更なる改善の余地があった。
【0007】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した避雷針装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するため、受雷部位に複数の突針部P…を配した避雷針部2及びこの避雷針部2で受けた雷に基づく雷電流Isを地中Eに流す導電部3を有する避雷針装置1を構成するに際して、中央に配した突針支持ブロック部5の底面部分5dを除く最外郭面Fo上に複数の突針部P…を立体的に支持してなる避雷針部2を備えることを特徴とする。
【0009】
この場合、発明の好適な態様により、突針支持ブロック部5は、複数の支持プレート部5p…を、中心軸Scを支点にして放射方向に突出させ、かつ周方向に所定角度Rf間隔おきに配した形状に構成することができる。また、支持プレート部5p…により支持される突針部P…には、真上方向に突出した少なくとも一以上の突針部Pu…を含むグループ,斜め上方向に突出した少なくとも一以上の突針部Ps…を含むグループ,横方向に突出した少なくとも一以上の突針部Ph…を含むグループ,の一グループ又は二グループ以上を含ませることができる。一方、導電部3には、雷電流Isが流れる導線3wの周囲に配し、雷サージを吸収する磁性体によりドーナツ状に形成した少なくとも一以上のサージ吸収コア11…を設けることができる。さらに、導電部3には、サージ吸収コア11…に巻いた巻線部12…の両端に接続した放電抵抗13…を設けることができる。なお、避雷針装置1は一般住宅Hに設置することが望ましい。
【発明の効果】
【0010】
このような構成を有する本発明に係る避雷針装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0011】
(1) 中央に配した突針支持ブロック部5の底面部分5dを除く最外郭面Fo上に複数の突針部P…を立体的に支持してなる避雷針部2を備えるため、雷に基づく放電を一点に集中させることなく、分散させることができ、落雷時の衝撃を緩和することができる。加えて、立体的に配した突針部P…により、複数の突針部P…を配する場合であっても避雷針部2の全体の小型化を図ることができる。したがって、用途としては、特に、一般住宅Hに設置して最適となる。
【0012】
(2) 好適な態様により、突針支持ブロック部5を構成するに際し、複数の支持プレート部5p…を、中心軸Scを支点にして放射方向に突出させ、かつ周方向に所定角度Rf間隔おきに配した形状に構成すれば、各支持プレート部5p…における最外郭面Foにより複数の突針部P…を支持可能になるため、避雷針部2の全体の機械的強度を確保しつつ各突針部P…を確実に支持することができる。しかも、各突針部P…を配置する際における立体化を容易に行うことができるとともに、十分な放熱性も確保できる。
【0013】
(3) 好適な態様により、支持プレート部5p…により支持される突針部P…に、真上方向に突出した少なくとも一以上の突針部Pu…を含むグループ,斜め上方向に突出した少なくとも一以上の突針部Ps…を含むグループ,横方向に突出した少なくとも一以上の突針部Ph…を含むグループ,の一グループ又は二グループ以上を含ませれば、各突針部P…の突出方向を、いわば半球面内における放射方向に向けることができるため、各突針部P…における突出方向の分散均一化を容易に実現できる。
【0014】
(4) 好適な態様により、導電部3に、雷電流Isが流れる導線3wの周囲に配し、雷サージを吸収する磁性体によりドーナツ状に形成した少なくとも一以上のサージ吸収コア11…を設ければ、雷電流Isが地中Eに流れる前に、サージ吸収コア11…により雷サージの少なくとも一部、特に、雷サージの高周波成分を含む衝撃波を吸収できるため、地中Eに流れる雷電流Isを減少させ、雷に基づく弊害、即ち、電子機器等に悪影響が生じる弊害を低減できる。
【0015】
(5) 好適な態様により、導電部3に、サージ吸収コア11…に巻いた巻線部12…の両端に接続した放電抵抗13…を設ければ、サージ吸収コア11…により吸収しきれない雷サージを巻線部12…と放電抵抗13…のループ回路により吸収できるため、より効果的なサージ吸収機能を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の好適実施形態に係る避雷針装置の全体を示す一部断面正面図、
【
図3】同避雷針装置における避雷針部の一部を破断して示す分解構成図、
【
図4】同避雷針装置における導電部の一部を拡大した断面正面図、
【
図5】同避雷針装置の導電部に備えるサージ吸収コアの外観斜視図、
【
図6】同避雷針装置を一般住宅に使用した例を示す使用説明図、
【
図7】同避雷針装置における導電部の変更例を示す外観斜視図、
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0018】
まず、本実施形態に係る避雷針装置1の構成について、
図1〜
図5を参照して具体的に説明する。
【0019】
本実施形態に係る避雷針装置1は、
図1に示すように、大別して、上端に位置することにより、受雷部位に複数の突針部P…を配してなる避雷針部2と、この避雷針部2から下方に位置することにより、避雷針部2で受けた雷に基づく雷電流Isを地中Eに流す導電部3からなる。
【0020】
この場合、避雷針部2は、中央に配した突針支持ブロック部5を備える。例示の突針支持ブロック部5は、
図2及び
図3に示すように、一定の厚さを有する二枚のプレート部材5x,5yにより構成する。例示のプレート部材5x,5yは、いずれも厚さを30〔mm〕程度、横幅を30〔cm〕程度に選定した。また、形成素材としては銅素材を使用した。
【0021】
一方のプレート部材5xは、上端辺を半円形に形成し、上端辺の中央位置から下方に、矩形状の係合溝21を形成するとともに、下端辺の中央位置から上方に、後述する導線3wの上端を差し込んで結合するための結合孔部22を形成する。係合溝21は、幅寸法をプレート部材5yの厚さとほぼ同じに選定し、かつ深さ寸法をプレート部材5xの中央位置における全長の1/2に選定する。また、他方のプレート部材5yは、上端辺を半円形に形成し、下端辺の中央位置から上方に、矩形状の係合溝23を形成する。係合溝23は、幅寸法をプレート部材5xの厚さとほぼ同じに選定し、かつ深さ寸法をプレート部材5yの中央位置における全長の1/2に選定する。
【0022】
これにより、
図3に示す点線矢印Dsのように、プレート部材5yの係合溝23を、直交方向に配したプレート部材5xの係合溝21に嵌め込み、溶接等により固定すれば、一体化した突針支持ブロック部5を得ることができる。この場合、プレート部材5xにおける両側の縦端辺と上端辺の外面,及びプレート部材5yにおける両側の縦端辺と上端辺と外面は、それぞれ突針支持ブロック部5における最外郭面Foを構成するとともに、この最外郭面Foの除く端辺の面が底面部分5dを構成する。
【0023】
また、このようにして得られる避雷針部2は、
図2に示す中心軸Scを支点にして放射方向に突出した複数の支持プレート部5p…を備えるとともに、支持プレート部5p…は、周方向に所定角度Rf間隔で配される形状となる。例示の場合、支持プレート部5p…の枚数は四枚、所定角度Rfは90〔°〕となる。即ち、上述したプレート部材5x,5yf、それぞれ二枚の支持プレート部5p…を含むことになる。
【0024】
このように、突針支持ブロック部5を構成するに際し、複数の支持プレート部5p…を、中心軸Scを支点にして放射方向に突出させ、かつ周方向に所定角度Rf間隔おきに配した形状に構成すれば、各支持プレート部5p…における最外郭面Foにより複数の突針部P…を支持可能になるため、避雷針部2の全体の機械的強度を確保しつつ各突針部P…を確実に支持することができる。しかも、各突針部P…を配置する際における立体化を容易に行うことができるとともに、十分な放熱性も確保できる利点がある。
【0025】
そして、この突針支持ブロック部5に、複数の突針部P…が立体的に位置するように固定する。まず、
図3に示すように、プレート部材5xの両側に位置する一方の縦端辺には、上下に離間し、かつ横方向に突出した二本の突針部P(Ph)…を固定するとともに、他方の縦端辺にも、上下に離間し、かつ横方向に突出した二本の突針部P(Ph)…を固定する。また、係合溝21の一方側における上端辺上には、斜め上方向に突出した一本の突針部P(Ps)を固定するとともに、係合溝21の他方側における上端辺上にも、斜め上方向に突出した一本の突針部Pを固定する。
【0026】
同様に、プレート部材5yの両側に位置する一方の縦端辺には、上下に離間し、かつ横方向に突出した二本の突針部P(Ph)…を固定するとともに、他方の縦端辺にも、上下に離間し、かつ横方向に突出した二本の突針部P(Ph)…を固定する。また、上端辺の中央には、真上に突出した一本の突針部P(Pu)を固定する。さらに、この突針部P(Pu)の一方側における上端辺上には、斜め上方向に突出した一本の突針部P(Ps)を固定するとともに、突針部P(Pu)の他方側における上端辺上にも、斜め上方向に突出した一本の突針部P(Ps)を固定する。
【0027】
この場合、突針部Pを最外郭面Foに固定するには、突針部Pの付根部位(先端の反対側)にネジ部を形成し、最外郭面Foに形成したネジ孔部に螺着することにより固定することができる。また、各突針部P…は、融点の高い導電性を有する金属素材(例えば、タングステン等)により一体形成するとともに、先端は尖形状に形成する。例示の突針部Pは、長さ(突出長)を10〔cm〕程度、付根部位の径を20〔mm〕程度に選定した。避雷針部2をこのように構成すれば、中央に配した突針支持ブロック部5の底面部分5dを除く最外郭面Fo上に複数の突針部P…が立体的に支持されることになる。
【0028】
しかも、例示の場合、支持プレート部5p…により支持される突針部P…として、真上方向に突出した少なくとも一以上の突針部Pu…を含むグループ,斜め上方向に突出した少なくとも一以上の突針部Ps…を含むグループ,横方向に突出した少なくとも一以上の突針部Ph…を含むグループ,の一グループ又は二グループ以上を含ませたため、各突針部P…の突出方向を、いわば半球面内における放射方向に向けることができ、この結果、各突針部P…における突出方向の分散均一化を容易に実現できる利点がある。
【0029】
他方、導電部3は、避雷針部2で受けた雷に基づく雷電流Isを地中Eに流す機能を備えるため、避雷針部2と地中Eを接続する導線3wを備える。例示の導線3wは、直径5〔mm〕程度の銅線を選定した。したがって、導線3wの上端部は、
図1及び
図3に示すように、前述したプレート部材5xの下端辺に形成した結合孔部22に差し込み、溶接等により結合するとともに、導線3wの下端部には、
図1に示すように、アース板31を接続し、このアース板31は、地面Gから所定の深さに埋め込む。
【0030】
さらに、導電部3には、雷電流Isが流れる導線3wの周囲に配し、雷サージを吸収する磁性体によりドーナツ状に形成した少なくとも一以上のサージ吸収コア11…を設ける。サージ吸収コア11は、パーマロイや珪素鋼等の金属磁性体、フェライト等の酸化物磁性体などの各種磁性体(強磁性体)により一体形成する。
図4及び
図5に、サージ吸収コア11を抽出して示す。サージ吸収コア11は、
図1に示すように、導線3wの周囲に同軸上に配することができれば、形状及び大きさが特定されるものではない。したがって、ドーナツ状には、例示のような偏平形状を適用してもよいし、軸方向に長い筒形状を適用してもよく、各種ドーナツ形状を含めるひとができる。
【0031】
また、サージ吸収コア11…を配設する場合には、一例として、
図1に示すような絶縁管32を利用することができる。絶縁管32は、セラミック等の絶縁素材により形成し、内部に、導線3w及びサージ吸収コア11…を収容できる内径を確保する。そして、例えば、
図4に示すように、絶縁管32の内周面から複数の支持片33…を中心方向に突出させ、この支持片33…によりサージ吸収コア11を支持することができる。例示の絶縁管32は、
図1に示すように、導線3wの保護機能、サージ吸収コア11の支持機能、上述した避雷針部2の支持機能を兼用することになる。
【0032】
このようなサージ吸収コア11…を設ければ、雷電流Isが地中Eに流れる前に、サージ吸収コア11…により雷サージの少なくとも一部、特に、雷サージの高周波成分を含む衝撃波を吸収できるため、地中Eに流れる雷電流Isを減少させ、雷に基づく弊害、即ち、電子機器等に悪影響が生じる弊害を低減できる利点がある。
【0033】
次に、このような構成を有する本実施形態に係る避雷針装置1の使用方法(設置方法)について、
図1〜
図6を参照して説明する。
【0034】
図6中、Hは一般住宅であり、この一般住宅Hに、本実施形態に係る避雷針装置1を設置した状態を示している。避雷針装置1を設置するに際しては、まず、必要な長さの絶縁管32を用意する。そして、
図1及び
図4に示すように、絶縁管32の内部に、複数のサージ吸収コア11…を前述した方法に従って配設する。サージ吸収コア11…の数量及び配設間隔等は実情に応じて任意に選択できる。
図1は、配設された六個のサージ吸収コア11…を示している。
【0035】
次いで、サージ吸収コア11…を配設した絶縁管32を、一般住宅Hにおける壁面等に、所定の取付金具等を利用して固定する。この際、絶縁管32の上端位置は、屋根Hrの上端よりも所定高さだけ高い位置に設定するとともに、絶縁管32の下端位置は、地面Gから所定の深さに位置させる。したがって、地面Gには、予め、絶縁管32の下端位置よりも下方にアース板31を配することができる大きさの穴を掘っておく。
【0036】
また、導線3wの上端を接続した避雷針部2を用意する。この場合、避雷針部2は、予め組付けを終了し、完成品として用意する。そして、避雷針部2における底面部分5dから導出される導線3wを、絶縁管32の上端開口から内部に挿入する。なお、導線3wの長さは、予め絶縁管32の長さに対応した長さに切断しておく。これにより、避雷針部2を、絶縁管32の上端開口に位置させ、導線3wを絶縁管32に完全に挿入させた際には、導線3wの下端が、絶縁管32の下端開口から所定長さ突出するようにする。
【0037】
この後、絶縁管32の下端開口から突出した導線3wの下端には、溶接或いはネジ止め等によりアース板31を接続固定する。以上の作業が終了したなら、掘った穴を土により埋め戻し、アース板31及び絶縁管32の下端を地中Eに埋設する。これにより、本実施形態に係る避雷針装置1は、
図1に示すように組付けられるとともに、
図6に示すように設置される。なお、図示を省略したが、避雷針部2と絶縁管32の上端開口は、ボルトナット等により固定可能な連結金具等を用いて連結固定する。
【0038】
このように、本実施形態に係る避雷針装置1は、基本的な構成として、中央に配した突針支持ブロック部5の底面部分5dを除く最外郭面Fo上に複数の突針部P…を立体的に支持してなる避雷針部2を備えるため、立体的に配した突針部P…により、複数の突針部P…を配する場合であっても避雷針部2の全体の小型化を図ることができる。したがって、用途としては、特に、一般住宅Hに設置して最適となる。
【0039】
次に、本実施形態に係る避雷針装置1の機能(作用)について、
図1及び
図6を参照して説明する。
【0040】
今、避雷針装置1(避雷針部2)が落雷を受けた場合を想定する。この場合、避雷針部2は、中央に配した突針支持ブロック部5の底面部分5dを除く最外郭面Fo上に複数の突針部P…を立体的に配してなるため、雷に基づく放電は、一点に集中することなく、立体的に配した各突針部P…に分散する。この結果、各突針部P…に付加される放電エネルギは、単一の突針部Pに集中することなく分散されることになり、落雷時の衝撃が大幅に緩和される。
【0041】
また、避雷針部2が落雷を受けることにより、避雷針部2と地面Gの電位差により、雷電流Isが避雷針部2から導線3wを通り地中Eに流れる。なお、通常の落雷では、避雷針部2に付加される電圧は概ね200万〜2億〔V〕程度となり、これにより、流れる雷電流Isは概ね1000〜20万〔A〕となることが知られている。したがって、雷電流Isは、基本的に導線3wを流れた後、地中Eに流れ込む。
【0042】
一方、雷電流Isが導線3wを流れる際には、導線3wの周りに同心円状の磁界が発生する。そして、高磁性体により形成したサージ吸収コア11…の内側空間を通過する際には、雷サージの少なくとも一部が吸収され、熱エネルギに変換される。通常、雷電流Isは、インパルスであり、DC成分から10〔MHz〕程度の成分まで、様々な周波数成分の混合電流として成り立っている。したがって、雷サージの高周波成分を含む衝撃波は、サージ吸収コア11…により吸収される。この結果、雷に基づく衝撃が緩和されることと併せ、地中Eに流れる雷電流Isは、サージ吸収コア11…による吸収分だけ減少し、雷に基づく弊害、即ち、電子機器等が悪影響を受ける弊害も低減される。
【0043】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0044】
例えば、突針支持ブロック部5として、四つの支持プレート部5p…を、中心軸Scを支点にして放射方向に突出させ、かつ周方向に90〔°〕間隔おきに配した形状に構成する場合を例示したが、支持プレート部5p…の数量は任意である。したがって、三つの支持プレート部5p…を120〔°〕の角度間隔で配してもよいし、六つの支持プレート部5p…を60〔°〕の角度間隔で配してもよいなど、任意の枚数及び角度間隔により実施できる。
【0045】
一方、導電部3に、雷電流Isが流れる導線3wの周囲に配し、雷サージを吸収する磁性体によりドーナツ状に形成した複数のサージ吸収コア11…を設けた場合を示したが、必ずしも設けることを要しない。他方、変更例として、
図7に示すように、サージ吸収コア11…に、1ターン(ターン数は任意)の巻線部12を設け、この巻線部12の両端に放電抵抗13を接続した形態により実施してもよい。このように、導電部3に、サージ吸収コア11…に巻いた巻線部12…の両端に接続した放電抵抗13…を設ければ、サージ吸収コア11…により吸収しきれない雷サージを巻線部12…と放電抵抗13…のループ回路により吸収できるため、より効果的なサージ吸収機能を発揮させることができる利点がある。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明に係る避雷針装置1は、建築物への落雷を回避する避雷手段として一般住宅をはじめ、各種の建築物に利用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1:避雷針装置,2:避雷針部,3:導電部,3w:導線,5:突針支持ブロック部,5d:突針支持ブロック部の底面部分,5p…:支持プレート部,11…:サージ吸収コア,12:巻線部,13:放電抵抗,P…:突針部,Pu(P)…:真上方向に突出した突針部,Pd(P)…:斜め上方向に突出した突針部,Pd(P)…:横方向に突出した突針部,Is:雷電流,E:地中,Fo:突針支持ブロック部の底面部分を除く最外郭面,Sc:中心軸,Rf:所定角度,H:一般住宅
【手続補正書】
【提出日】2016年12月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受雷部位に複数の突針部を配した避雷針部及びこの避雷針部で受けた雷に基づく雷電流を地中に流す導電部を有する避雷針装置において、中央に配した突針支持ブロック部の底面部分を除く最外郭面上に複数の突針部を立体的に支持してなる避雷針部を備えるとともに、前記雷電流が流れる導線の周囲に配し、雷サージを吸収する磁性体によりドーナツ形に形成した少なくとも一以上のサージ吸収コア及びこのサージ吸収コアに巻いた巻線部の両端に接続した放電抵抗を有する導電部を備えることを特徴とする避雷針装置。
【請求項2】
前記突針支持ブロック部は、複数の支持プレート部を、中心軸を支点にして放射方向に突出させ、かつ周方向に所定角度間隔おきに配した形状に構成してなることを特徴とする請求項1記載の避雷針装置。
【請求項3】
前記支持プレート部により支持される突針部には、真上方向に突出した少なくとも一以上の突針部を含むグループ,斜め上方向に突出した少なくとも一以上の突針部を含むグループ,横方向に突出した少なくとも一以上の突針部を含むグループ,の一グループ又は二グループ以上を含むことを特徴とする請求項2記載の避雷針装置。
【請求項4】
一般住宅に設置することを特徴とする請求項1,2又は3記載の避雷針装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するため、受雷部位に複数の突針部P…を配した避雷針部2及びこの避雷針部2で受けた雷に基づく雷電流Isを地中Eに流す導電部3を有する避雷針装置1を構成するに際して、中央に配した突針支持ブロック部5の底面部分5dを除く最外郭面Fo上に複数の突針部P…を立体的に支持してなる避雷針部2を備えるとともに、雷電流Isが流れる導線3wの周囲に配し、雷サージを吸収する磁性体によりドーナツ形に形成した少なくとも一以上のサージ吸収コア11…及びこのサージ吸収コア11…に巻いた巻線部12…の両端に接続した放電抵抗13…を有する導電部3を備えることを特徴とする
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
この場合、発明の好適な態様により、突針支持ブロック部5は、複数の支持プレート部5p…を、中心軸Scを支点にして放射方向に突出させ、かつ周方向に所定角度Rf間隔おきに配した形状に構成することができる。また、支持プレート部5p…により支持される突針部P…には、真上方向に突出した少なくとも一以上の突針部Pu…を含むグループ,斜め上方向に突出した少なくとも一以上の突針部Ps…を含むグループ,横方向に突出した少なくとも一以上の突針部Ph…を含むグループ,の一グループ又は二グループ以上を含ませることができる。なお、避雷針装置1は一般住宅Hに設置することが望ましい。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
(2) 導電部3には、雷電流Isが流れる導線3wの周囲に配し、雷サージを吸収する磁性体によりドーナツ状に形成した少なくとも一以上のサージ吸収コア11…を設けたため、雷電流Isが地中Eに流れる前に、サージ吸収コア11…により雷サージの少なくとも一部、特に、雷サージの高周波成分を含む衝撃波を吸収でき、地中Eに流れる雷電流Isを減少させ、雷に基づく弊害、即ち、電子機器等に悪影響が生じる弊害を低減することができる。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
(3) 導電部3には、サージ吸収コア11…に巻いた巻線部12…の両端に接続した放電抵抗13…を設けたため、サージ吸収コア11…により吸収しきれない雷サージを巻線部12…と放電抵抗13…のループ回路により吸収でき、より効果的なサージ吸収機能を発揮させることができる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
(4) 好適な態様により、突針支持ブロック部5を構成するに際し、複数の支持プレート部5p…を、中心軸Scを支点にして放射方向に突出させ、かつ周方向に所定角度Rf間隔おきに配した形状に構成すれば、各支持プレート部5p…における最外郭面Foにより複数の突針部P…を支持可能になるため、避雷針部2の全体の機械的強度を確保しつつ各突針部P…を確実に支持することができる。しかも、各突針部P…を配置する際における立体化を容易に行うことができるとともに、十分な放熱性も確保できる。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
(5) 好適な態様により、支持プレート部5p…により支持される突針部P…に、真上方向に突出した少なくとも一以上の突針部Pu…を含むグループ,斜め上方向に突出した少なくとも一以上の突針部Ps…を含むグループ,横方向に突出した少なくとも一以上の突針部Ph…を含むグループ,の一グループ又は二グループ以上を含ませれば、各突針部P…の突出方向を、いわば半球面内における放射方向に向けることができるため、各突針部P…における突出方向の分散均一化を容易に実現できる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
この場合、
図7に示すように、サージ吸収コア11…には、1ターン(ターン数は任意)の巻線部12を設け、この巻線部12の両端に放電抵抗13を接続する。このように、導電部3に、サージ吸収コア11…に巻いた巻線部12…の両端に接続した放電抵抗13…を設けることにより、サージ吸収コア11…により吸収しきれない雷サージを巻線部12…と放電抵抗13…のループ回路により吸収できるため、より効果的なサージ吸収機能を発揮させることができる利点がある。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
例えば、突針支持ブロック部5として、四つの支持プレート部5p…を、中心軸Scを支点にして放射方向に突出させ、かつ周方向に90〔°〕間隔おきに配した形状に構成する場合を例示したが、支持プレート部5p…の数量は任意である。したがって、三つの支持プレート部5p…を120〔°〕の角度間隔で配してもよいし、六つの支持プレート部5p…を60〔°〕の角度間隔で配してもよいなど、任意の枚数及び角度間隔により実施できる。