【実施例】
【0030】
(第1実施例)液状のシリカゾル(日産化学社製のスノーテックスXS、粒子径4〜6[nm])を電気炉等により乾燥させて粉末(以下、単に「シリカ粉末A」という。)としたものを1[g]と、未硬化のエポキシ樹脂(無溶剤、藤倉化成社製)にカーボンブラック(三菱化学社製)を3[重量%]添加したもの(以下、カーボン添加未硬化エポキシ樹脂)3[g]とを混合し、混練してペースト状とした。これを第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。具体的には、第1の電極11と第2の電極12のうちの一方の電極上に未硬化の上記ペースト状のものを塗布し、その表面を、ガラス棒等を用いて平坦化してから、他方の電極を覆うように被せた。このようにして形成した塗布物を軽く加圧し、第1の電極11、第2の電極12、粉粒分散樹脂材料13が相互に接着された状態になるように構成した。その後、恒温槽により100[℃]で1時間加熱し、粉粒分散樹脂材料13を焼成して硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約300[μm]であった。なお、上記カーボンブラック(三菱化学社製)は、導電性フィラーとして用いる製品、例えば、#3030B、#3050B、#3230B、#3400B(いずれも製品番号)などの電子顕微鏡画像などに基づく算術平均径が20〜60[nm]程度の粒径を有するものを用いることができる。
【0031】
(第2実施例)上記のシリカ粉末Aを1[g]と、上記のカーボン添加未硬化エポキシ樹脂を3[g]と、酸化アルミニウムα型の粉末(関東化学社製試薬製品番号01173-00、粒径35〜50[μm])を0.1[g]と、を混合し、混錬してペースト状とした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約500[μm]であった。
【0032】
(第3実施例)上記のシリカ粉末Aを0.5[g]と、上記のカーボン添加未硬化エポキシ樹脂を3[g]と、酸化スズIVの粉末(関東化学社製試薬製品番号37315-01)を0.1[g]と、を混合し、混錬してペースト状とした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約500[μm]であった。
【0033】
(第4実施例)上記のシリカ粉末Aを1[g]と、上記のカーボン添加未硬化エポキシ樹脂を3[g]と、シリコンカーバイドの粉末(信濃電気製錬社製品番号SER-10)を0.5[g]と、を混合し、混錬してペースト状とした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約600[μm]であった。なお、上記のシリコンカーバイドの粉末(信濃電気製錬社製品番号SER-10)は、マイクロトラック測定による平均粒径(体積平均径)が1.0[μm]、JIS R 6002の粒径測定方法により、10%で5.2[μm]、50%で1.0[μm]、90%で0.5[μm]となる粒度分布を備えている。
【0034】
(第5実施例)液状のシリカゾル(日産化学社製のスノーテックスC、粒径10〜15[nm])を電気炉等により乾燥させて粉末(以下、単に「シリカ粉末B」という。)としたものを1[g]と、上記のカーボン添加未硬化エポキシ樹脂を3[g]と、を混合し、混錬してペースト状とした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約600[μm]であった。
【0035】
(第6実施例)上記のシリカ粉末Bを1[g]と、上記のカーボン添加未硬化エポキシ樹脂を3[g]と、上記酸化アルミニウムα型の粉末(関東化学社製試薬製品番号01173-00)を0.1[g]と、を混合し、混錬してペースト状とした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約700[μm]であった。
【0036】
(第7実施例)粉末の二酸化珪素(関東化学社製品番号37049−10、沈降製、非晶質)を1[g]と、上記のカーボン添加未硬化エポキシ樹脂を3[g]と、を混合し、混錬してペースト状とした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約400[μm]であった。
【0037】
(第8実施例)粉末の二酸化珪素(関東化学社製品番号37049−10、沈降製、非晶質)を50[g]と酸化スズIVの粉末(関東化学社製試薬製品番号37315-01)を0.5[g]とを混合したもの1[g]を取り出して、上記未硬化のエポキシ樹脂(無溶剤、藤倉化成社製)3[g]に添加し、混錬してペースト状とした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約900[μm]であった。
【0038】
(第9実施例)粉末の二酸化珪素(関東化学社製品番号37049−10、沈降製、非晶質)を20[g]と上記のカーボンブラック(三菱化学社製)を2[g]を混合したもの1[g]を取り出して、上記未硬化のエポキシ樹脂(無溶剤、藤倉化成社製)3[g]に添加し、混錬してペースト状とした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約700[μm]であった。
【0039】
(第10実施例)上記のシリコンカーバイドの粉末(信濃電気製錬社製品番号SER-10)4[g]を、上記未硬化のエポキシ樹脂(無溶剤、藤倉化成社製)8[g]に混合し、混錬してペースト状とした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約600[μm]であった。
【0040】
(第11実施例)シリコンカーバイドの粉末(太平洋ランダム社製品名NG)4[g]を、上記未硬化のエポキシ樹脂(無溶剤、藤倉化成社製)8[g]に混合し、混錬してペースト状とした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約200[μm]であった。なお、上記のシリコンカーバイドの粉末(太平洋ランダム社製品名NG)の粒度分布は、75[μm]が10%、53[μm]が48%、45[μm]が20%、45[μm]未満が22%であった。
【0041】
(第12実施例)上記の酸化アルミニウムα型の粉末(関東化学社製試薬製品番号01173-00)1[g]を、上記のカーボン添加未硬化エポキシ樹脂3[g]に添加し、混錬してペースト状にした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約500[μm]であった。
【0042】
(第13実施例)上記の酸化アルミニウムα型の粉末(関東化学社製試薬製品番号01173-00)を6.6[g]と、上記のカーボンブラック(三菱化学社製)を0.6[g]とを、上記の未硬化のエポキシ樹脂(無溶剤、藤倉化成社製)20[g]に添加し、混錬してペースト状にした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約500[μm]であった。
【0043】
(第14実施例)上記の酸化アルミニウムα型の粉末(関東化学社製試薬製品番号01173-00)40[g]と上記のカーボンブラック(三菱化学社製)2[g]とを混合したものを1[g]取り出して、上記の未硬化のエポキシ樹脂(無溶剤、藤倉化成社製)3[g]に添加し、混錬してペースト状にした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約500[μm]であった。
【0044】
(第15実施例)上記の酸化アルミニウムα型の粉末(関東化学社製試薬製品番号01173-00)10[g]と上記のカーボンブラック(三菱化学社製)0.3[g]とを混合したものを1[g]取り出して、上記の未硬化のエポキシ樹脂(無溶剤、藤倉化成社製)3[g]に添加し、混錬してペースト状にした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約400[μm]であった。
【0045】
(第16実施例)上記の酸化スズIVの粉末(関東化学社製試薬製品番号37315-01)1[g]を、上記のカーボン添加未硬化エポキシ樹脂3[g]に添加し、混錬してペースト状にした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約400[μm]であった。
【0046】
(第17実施例)酸化亜鉛の粉末(関東化学社製製品番号48020−00)1[g]を、上記のカーボン添加未硬化エポキシ樹脂3[g]に添加し、混錬してペースト状にした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約700[μm]であった。
【0047】
以上のように、第1〜第17実施例の熱電変換素子10を作成した。熱電変換素子10の粉粒分散樹脂材料13中の樹脂基材の種類、導電性微粒子の種類と重量%、非導電性微粒子の種類と重量%について、以下の表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
上記の熱電変換素子10を、それぞれ、第1の電極11が放熱板16に接する姿勢で、
図1に示す三端子レギュレータ15の放熱板16上に接着した。そして、電源17から三端子レギュレータ15の端子に電圧3.5[V]を供給し、電流0.4[A]を流して発熱させた。温度センサ18は、放熱板16の温度を測定した。放熱板16の温度は、放熱板16を熱電変換素子10に接着する前では92〜96[℃]であったが、熱電変換素子10を放熱板16に接着すると81〜87[℃]となった。なお、放熱板16の代わりに放熱用シリコーングリス(シリコーンオイルに熱伝導性の粉末を添加したもの。例えば、サンハヤト社製の放熱用シリコーン)などの熱伝導性材料を介して、三端子レギュレータ15を熱電変換素子10に接触させてもよい。また、三端子レギュレータ15は発熱体の一例であり、本実施形態の熱電変換素子10は、任意の発熱体に接触させて吸熱作用を生じさせることができる。
【0050】
また、熱電変換素子10の第1の電極11と第2の電極12を測定器に接続し、電圧値Vと抵抗値Rを測定した。このときの電圧値Vが熱電変換素子10の起電力を示し、抵抗値Rが第1の電極11と第2の電極12を介した粉粒分散樹脂材料13の実質的な抵抗値を示す。この抵抗値Rと、粉粒分散樹脂材料13の厚みd及び面積S(縦1.5[cm]×横2.8[cm])から抵抗率ρ=R×S/d[Ωm]を算出した。また、この測定時における放熱板16の温度は73〜80[℃]となった。なお、放熱板16の温度は、上記測定時と、第1の電極11と第2の電極12との間にコンデンサや抵抗を接続した場合とでほとんど変わらなかった。以上のように、熱電変換素子10においては、冷却(吸熱)対象となる部位に第1の電極11と第2の電極12の一方を熱的に接触させるとともに、第1の電極11と第2の電極12を電気的負荷に接続することにより、熱エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。電気的負荷は、例えば、コンデンサ、抵抗、バッテリー等の充電回路などである。
【0051】
上記のように形成した第1実施例〜第17実施例の熱電変換素子10について、起電力V、抵抗率ρ、三端子レギュレータ15単独のときの放熱板16の温度と測定時の放熱板16の温度との差ΔTを以下の表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
上記のように、いずれの熱電変換素子10でも温度差が10度以上となり、熱エネルギーから電気エネルギーへの変換に起因する冷却作用が得られていることがわかる。また、いずれも数[mV]以上の起電力が得られている。特に、粉粒分散樹脂材料13の抵抗率が1×10
5[Ωm]以上になると100[mV]以上の起電力が得られている。また、抵抗率が1×10
6[Ωm]以上になるとさらに高くなる傾向がみられる。
【0054】
また、導電性微粒子と非導電性微粒子の双方を添加した粉粒分散樹脂材料13を用いた第1実施例〜第9実施例、第12実施例〜第15実施例では、10[mV]以上の比較的高い起電力が得られる。一方、第16実施例と第17実施例は非導電性微粒子の添加がないが、この場合には、非導電性微粒子を添加した場合に比べて起電力が比較的低い。
【0055】
一方、シリコンカーバイド(SiC)の微粒子を添加した粉粒分散樹脂材料13を用いた第10実施例及び第11実施例では、いずれも十分な起電力が得られている。ただし、第11実施例では、第10実施例と同様に或る程度高い抵抗率であるにも関わらず、第10実施例よりも起電力が低下している。ここで、第10実施例において添加したシリコンカーバイド(SiC)の微粒子が1[μm]前後の粒径を備えた細かな微粒子が多かったのに対して、第11実施例に用いたシリコンカーバイド(SiC)の微粒子は、45[μm]より小さな粒径の微粒子が20%程度と少ない。したがって、シリコンカーバイド(SiC)の細かな微粒子の数が主としてキャリア密度に貢献するために、第10実施例のキャリア密度が第11実施例のキャリア密度より高くなったことから、第10実施形態の起電力が第11実施形態の起電力よりも大きくなったものと考えられる。
【0056】
以上のように、本実施形態では、樹脂基材中に炭素の微粒子と金属酸化物の微粒子とを分散させた粉粒分散樹脂材料13を用いることにより、或いは、樹脂基材中にシリコンカーバイド(SiC)の微粒子を分散させた粉粒分散樹脂材料13を用いることにより、熱電変換素子として高い性能を得ることができる。また、これらの熱電変換素子は、第1の電極11と第2の電極12の間に上記の粉粒分散樹脂材料13を介在させただけであるので、構造が極めて簡単であるとともに、実質的に樹脂の硬化工程のみで製造できるなど、製造方法も容易であり、製造コストも低減することができる。さらに、上記の粉粒分散樹脂材料13は樹脂基材がベースとなるため、任意の形状に構成することができ、可撓性を持たせることも可能になるので、状況に合わせて用いることができるなど、使用態様として高い自由度を備えている。特に、シート状、フィルム状に薄く形成しても十分な効果を得ることができるため、近年の小型携帯機器に用いる場合に好適である。