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特開2017-63119熱電変換用の粉粒分散樹脂材料、及び、熱電変換素子
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  • 特開2017063119-熱電変換用の粉粒分散樹脂材料、及び、熱電変換素子 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-63119(P2017-63119A)
(43)【公開日】2017年3月30日
(54)【発明の名称】熱電変換用の粉粒分散樹脂材料、及び、熱電変換素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 35/22 20060101AFI20170310BHJP
   H01L 35/34 20060101ALI20170310BHJP
   H01L 37/00 20060101ALI20170310BHJP
   H01L 35/26 20060101ALI20170310BHJP
【FI】
   H01L35/22
   H01L35/34
   H01L37/00
   H01L35/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-187630(P2015-187630)
(22)【出願日】2015年9月25日
(71)【出願人】
【識別番号】504318326
【氏名又は名称】株式会社エヌ・ティー・エス
(71)【出願人】
【識別番号】514004851
【氏名又は名称】有限会社イトウプリント
(74)【代理人】
【識別番号】100100055
【弁理士】
【氏名又は名称】三枝 弘明
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 伸
(72)【発明者】
【氏名】北澤 早苗
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 憲秀
(72)【発明者】
【氏名】折井 英二
(72)【発明者】
【氏名】征矢野 始
(57)【要約】
【課題】簡易な構造を有し、低コストで製造できるとともに、使用態様において高い自由度を備えた熱電変換用の粉粒分散樹脂材料及び熱電変換素子を提供する。
【解決手段】本発明の熱電変換素子10は、第1の電極11と、第2の電極12と、前記第1の電極11と前記第2の電極12の間に介在する粉粒分散樹脂材料13とを有し、前記粉粒分散樹脂材料13は、絶縁性の樹脂基材中に、Al,SiO,SnO,ZnO,MgO,In,ITOのいずれか少なくとも一種以上の金属酸化物の微粒子とがそれぞれ分散されていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の樹脂基材中に、炭素の微粒子と、Al,SiO,SnO,ZnO,MgO,In,ITOのいずれか少なくとも一種以上の金属酸化物の微粒子とがそれぞれ分散されていることを特徴とする熱電変換用の粉粒分散樹脂材料。
【請求項2】
抵抗率が1×10[Ωm]を越え、1×10[Ωm]未満であることを特徴とする請求項1に記載の熱電変換用の粉粒分散樹脂材料。
【請求項3】
前記絶縁性の樹脂基材はエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項2に記載の粉粒分散樹脂材料。
【請求項4】
導電性微粒子と非導電性微粒子の双方を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の粉粒分散樹脂材料。
【請求項5】
絶縁性の樹脂基材中に、シリコンカーバイドの微粒子が分散されていることを特徴とする熱電変換用の粉粒分散樹脂材料。
【請求項6】
抵抗率が1×10[Ωm]を越え、1×10[Ωm]未満であることを特徴とする請求項5に記載の熱電変換用の粉粒分散樹脂材料。
【請求項7】
前記絶縁性の樹脂基材はエポキシ樹脂であることを特徴とする請求項6に記載の粉粒分散樹脂材料。
【請求項8】
厚みが10[μm]以上5[mm]以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載の熱電変換用の粉粒分散樹脂材料。
【請求項9】
第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された前記熱電変換用の粉粒分散樹脂材料とを有することを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の熱電変換素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱電変換用の粉粒分散樹脂材料及び熱電変換素子に係り、特に、熱エネルギーを電気エネルギーに変換する場合に用いる樹脂材料に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、熱電効果(ゼーベック効果)を利用した熱電発電素子やペルチェ効果を利用した熱電冷却素子などの熱電変換素子が、半導体を用いた熱電変換デバイスとして用いられている(例えば、特許文献1等参照)。また、熱電子発電を用いた熱電変換素子(例えば、特許文献2等参照)も知られている。さらに、このような熱電発電技術を用いる熱電変換デバイスとしては、上記のゼーベック効果や熱電子発電技術を利用するもののほかに、アルカリ金属熱電発電、熱磁気発電などを利用するものも知られている。
【0003】
一方、近年、携帯電話やスマートフォンなどの小型電子機器が盛んに利用されるようになってきたことから、これらの小型電子機器におけるコンパクトな冷却システムが必要とされている(例えば、特許文献3参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2008/061823
【特許文献2】国際公開2005/036662
【特許文献3】特開2007−42895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の半導体を用いた熱電変換デバイスでは、変換効率を高めるためにπ状のサブモジュールを構成するなど、高い形状精度や複雑な構造を形成する必要があるとともに、吸熱部と放熱部との間にある程度の温度差を必要とするため、構造が複雑で製造コストが大きくなるという問題があった。また、上記の熱電子発電を用いた変換素子では、高い温度が必要であるとともに、微細な真空の空間を形成したり特殊な薄膜構造を設けたりする必要があるため、使用箇所が制限されるとともに、製造コストが高いという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、簡易な構造を有し、低コストで製造できるとともに、使用態様において高い自由度を備えた熱電変換用の粉粒分散樹脂材料及び熱電変換素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
斯かる実情に鑑み、本発明に係る熱電変換用の粉粒分散樹脂材料は、絶縁性の樹脂基材中に、炭素の微粒子と、Al,SiO,SnO,ZnO,MgO,In,ITOのいずれか少なくとも一種以上の金属酸化物の微粒子とがそれぞれ分散されていることを特徴とする。また、これを用いた熱電変換素子は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極の間に介在する前記熱電変換用の粉粒分散樹脂材料とを有する。
【0008】
本発明において、前記炭素の微粒子は、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブなどの各種の炭素材料を用いることができる。また、前記金属酸化物の微粒子は、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、ITO、酸化マグネシウム等の種々の微粒子を用いることができる。
【0009】
上記の炭素及び金属酸化物の微粒子は、特に限定されるものではないが、5[nm]〜5[μm]の粒径範囲内の平均粒径を有する微粒子であることが好ましい。主としてキャリア密度や抵抗率に寄与するものは、5[nm]〜5[μm]の範囲内の粒径を有する微粒子であると考えられる。配合効率の観点から見ると、特に、10[nm]〜1[μm]の範囲内の平均粒径を有することが好ましく、さらに、上記10[nm]〜1[μm]の範囲内の粒径を有するものが60[重量%]以上を占めていることが望ましい。なお、本明細書で言及する平均粒径は、測定された粒径分布から求めた体積平均径とする。粒径分布の測定は、動的光散乱法やレーザ回折法などによって求めることが好ましい。上記の平均粒径及び粒径分布は、粉粒分散樹脂材料の電気的特性に関係し、微粒子の樹脂基材中の分散性や、樹脂材料中のキャリア密度、抵抗率などに影響する。
【0010】
本発明において、炭素の微粒子や導電性の金属酸化物の微粒子のうちの導電性微粒子を添加すると粉粒分散樹脂材料内のキャリア密度が増大するとともに粉粒分散樹脂材料の抵抗率が低下する。ここで、熱起電力を確保することができるだけのキャリアを確保しつつ、第1の電極と第2の電極の短絡を回避することによって、起電力を高めるために、5[nm]〜5[μm]の範囲内の粒径を有する導電性微粒子の添加量を0.5[重量%]以上5[重量%]以下にすることが好ましい。特に、上記添加量は1[重量%]以上4[重量%]以下であることが望ましく、2[重量%]以上3[重量%]以下であることがさらに望ましい。
【0011】
本発明において、前記粉粒分散樹脂材料は、導電性微粒子と非導電性微粒子の双方を含むことが好ましい。本願発明者が鋭意実験したところによると、導電性微粒子と非導電性微粒子の双方を含むことによって、キャリア密度を高めつつ抵抗率の低下を抑制することができ、結果として、起電力が高められると考えられる。特に、前記金属酸化物の微粒子として、導電性微粒子と非導電性微粒子の双方を含むことがさらに望ましい。例えば、樹脂基材中の微粒子の挙動は必ずしも明らかではなく、粒径によっても異なる状態となる可能性もあるが、一般的には、カーボンブラックは導電性微粒子と考えられ、金属酸化物のうちの酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In)、ITOなどは半導体特性を有し、導電性微粒子と考えられる。一方、二酸化珪素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化マグネシウム(MgO)などは比較的導電性が低く、非導電性微粒子と考えられる。
【0012】
次に、本発明に係る別の熱電変換用の粉粒分散樹脂材料は、絶縁性の樹脂基材中に、シリコンカーバイド(SiC)の微粒子が分散されていることを特徴とする。また、これを用いた熱電変換素子は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置された前記熱電変換用の粉粒分散樹脂材料とを有する。
【0013】
本発明において、シリコンカーバイドの微粒子は、特に限定されるものではないが、5[nm]〜60[μm]の粒径範囲内の平均粒径を有する微粒子であることが好ましい。特に、10[nm]〜10[μm]の範囲内の平均粒径を有することが好ましく、さらに、上記10[nm]〜10[μm]の範囲内の粒径を有するものが70[重量%]以上を占めていることが望ましい。上記の平均粒径及び粒径分布は、粉粒分散樹脂材料の電気的特性を関わり、シリコンカーバイドの微粒子の樹脂基材中の分散性や、樹脂材料中のキャリア密度、抵抗率などに影響する。上記10[nm]〜10[μm]の範囲内の粒径を有する微粒子が主としてキャリア密度に寄与するものと考えられる。
【0014】
上記各発明において、樹脂基材としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン樹脂)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)などのフッ素樹脂などが挙げられる。特に、100[℃]を越える耐熱性、1010[Ωm]を越える体積抵抗率や15[kV/mm]を越える絶縁耐力を有する高い電気絶縁性を有するものが好ましい。特に、エポキシ樹脂であることが望ましい。
【0015】
上記各発明において、上記の第1の電極及び第2の電極の材料は特に限定されないが、例えば、第1の電極の材料としては、Al、Alを主体とする合金、ITO(インジウムスズ酸化物)、Mg、Mgを主体とする合金などを用いることができる。また、上記第2の電極の材料としては、Cu、Cuを主体とする合金、ステンレス鋼(SUS304)、炭素材料などを用いることができる。
【0016】
上記各発明において、上記の粉粒分散樹脂材料の抵抗率は、1×10[Ωm]を越え、1×10[Ωm]未満であることが好ましい。特に、上記抵抗率は1×10[Ωm]以上であることが望ましく、1×10[Ωm]以上であることがさらに望ましい。また、上記抵抗率は5×10[Ωm]以下であることが望ましく、1×10[Ωm]以下であることがさらに望ましい。一般的には、高い抵抗率を有する粉粒分散樹脂材料を用いると高い起電力を得ることができる。
【0017】
上記各発明において、上記の粉粒分散樹脂材料の厚みは、10[μm]〜5[mm]の範囲内であることが好ましい。特に、100[μm]〜1[mm]の範囲内であることが望ましい。上記粉粒分散樹脂材料の厚みがこれらの範囲を上回ると、熱電変換自体は可能であるものの、粉粒分散樹脂材料の厚みによって第1の電極11と第2の電極12の間の熱伝導性が低下するため、冷却作用を得ることが難しくなるとともに、厚み寸法の増大や可撓性が低下することから、薄膜素子としての使用態様に制約が生じやすくなる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易な構造を有し、低コストで製造できるとともに、使用態様において高い自由度を備えた熱電変換用の粉粒分散樹脂材料及び熱電変換素子を提供できるという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る熱電変換素子の実施形態の断面構造を測定状態において模式的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。最初に、図1を参照して、本発明に係る実施形態の熱電変換素子10の構造について説明する。
【0021】
本実施形態の熱電変換素子10においては、第1の電極11と第2の電極12の間に粉粒分散樹脂材料13が介在する。第1の電極11と第2の電極12は金属や炭素などの導電性材料からなり、第1の電極11と第2の電極12に粉粒分散樹脂材料13が直接に密着している。
【0022】
第1の電極11は、 電極として機能する十分な導電性を有するものであれば特に限定されないが、AlやAlを主体(好ましくは70重量%以上)とするAl合金よりなり、多くの場合には金属箔などの薄膜状、薄板状の材料で構成される。第1の電極11の厚みは1[μm]〜1[mm]の範囲内であることが好ましく、特に、10〜100[μm]の範囲、例えば、30〜50[μm]の厚みであることが望ましい。第1の電極11を構成する他の材料としては、ITO(インジウムスズ酸化物)や、MgやMgを主体(70重量%以上)とする合金(Al,Zn,Caなどを添加したものなど)を用いることができる。
【0023】
第2の電極12も、電極として機能する十分な導電性を有するものであれば特に限定されないが、CuやCuを主体(好ましくは70重量%以上)とするCu合金よりなり、多くの場合には金属箔などの薄膜状、薄板状の材料で構成される。第2の電極12の厚みは1[μm]〜1[mm]の範囲内であることが好ましく、特に、3〜50[μm]の範囲、例えば、5〜20[μm]の厚みであることが望ましい。第2の電極12を構成する他の材料としては、ステンレス鋼(SUS304)、グラファイト、カーボン繊維、カーボンブラックなどの炭素材料などを用いることができる。
【0024】
粉粒分散樹脂材料13は、炭素の微粒子と、Al,SiO,SnO,ZnO,MgO,In,ITOのいずれか少なくとも一種以上の金属酸化物の微粒子とが絶縁性の樹脂基材中に分散されたものである。粉粒分散樹脂材料13は、図示例では、第1の電極11と第2の電極12とに接触した薄膜状に構成されている。絶縁性の樹脂基材としては、前述のように十分な絶縁性を有するものであればよく、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂が好ましい。ただし、フェノール樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン樹脂)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)などのフッ素樹脂などを用いることも可能である。エポキシ樹脂としては、無溶剤の樹脂を熱硬化したものが望ましい。また、シリコーン樹脂としては、一液性の室温硬化型の樹脂を硬化させたものが望ましい。各樹脂基材において、少なくとも硬化前に粘着性や接着性を有する場合には、硬化前の粉粒分散樹脂材料13を第1の電極11と第2の電極12の間に介在させた状態とし、その後、粉粒分散樹脂材料13を硬化させることが好ましい。
【0025】
粉粒分散樹脂材料13の抵抗率は、1×10〜1×10[Ωm]の範囲に入るように設定されることが好ましい。特に、上記抵抗率は1×10[Ωm]以上であることが望ましく、1×10[Ωm]以上であることがさらに望ましい。また、上記抵抗率は5×10[Ωm]以下であることが望ましく、1×10[Ωm]以下であることがさらに望ましい。最も好適な範囲は1×10〜1×10[Ωm]である。抵抗率が上記の範囲を越えると、キャリア密度が低くなることによって熱電効果を得ることが難しくなり、十分な起電力が得られにくくなる場合がある。逆に、抵抗率が上記の範囲を下回ると、導電性が高くなり過ぎることによって起電力が低下する場合がある。また、抵抗率が上記の範囲を下回る場合には、粉粒分散樹脂材料13の熱伝導率も高くなるため、第1の電極11と第2の電極12の間の熱伝導性が良好となり過ぎ、温度差に起因する熱電効果が低下する場合がある。
【0026】
通常、粉粒分散樹脂材料13において、導電性微粒子と非導電性微粒子のいずれもが含まれていることが好ましい。導電性微粒子の添加量を増大させるとキャリア密度は増大するが、抵抗率は低下する。ところが、非導電性微粒子を添加すると、抵抗率の低下を抑制することができる。このため、導電性微粒子と非導電性微粒子を共に添加し、樹脂基材中に分散させることによって、抵抗率の低下を抑制しつつ、熱電効果を高めることができることから、高い起電力を実現することが可能になったものと考えられる。特に、金属酸化物の微粒子として導電性微粒子と非導電性微粒子の双方を含むことが望ましい。
【0027】
導電性微粒子は、5[nm]〜5[μm]の粒径を有するものが主としてキャリア密度に寄与するものと考えられる。この範囲を下回る粒径の微粒子を構成することは容易でなく、しかも、上記範囲を下回る粒径の微粒子を高い割合で製造することは高いコストを必要とする。また、上記範囲を上回る粒径の微粒子は、キャリア密度に対する寄与率が添加量に比べて低くなる。導電性微粒子の配合効率を高める上では、特に、10[nm]〜1[μm]の範囲内の平均粒径を有することが好ましい。また、この範囲内の粒径を備える微粒子が70[重量%]以上含まれることが望ましい。炭素の微粒子の添加量については0.5〜3.5[重量%]の範囲内が好ましく、1.5〜2.5[重量%]の範囲内であることが望ましい。金属酸化物の微粒子のうち、導電性微粒子についてはSnO、ZnO、SiCなどの少なくとも一種以上が挙げられるが、その添加量は、合計で、0.1〜30[重量%]の範囲内であることが好ましく、0.3〜25[重量%]であることが望ましい。高い起電力を得るには、上記添加量は、0.1〜10[重量%]の範囲内であることがさらに望ましい。
【0028】
非導電性微粒子は、導電性を抑制し、熱伝導率を低下させる上で5[nm]〜5[μm]の粒径を有するものが有効であると考えられる。この範囲を下回る粒径の微粒子を構成することは容易でなく、しかも、上記範囲を下回る粒径の微粒子を高い割合で製造することは高いコストを必要とする。また、上記範囲を上回る粒径の微粒子は、上記効果に対する寄与率が添加量に比べて低くなる。非導電性微粒子の配合効率を高める上では、特に、10[nm]〜1[μm]の範囲内の平均粒径を有することが好ましい。また、この範囲内の粒径を備える微粒子60重量%以上含まれることが望ましい。金属酸化物のうちの非導電性微粒子はSiO、Al、MgOなどの少なくとも一種以上が挙げられるが、その添加量は、合計で、5〜35[重量%]の範囲内であることが好ましく、特に、15〜30[重量%]の範囲内であることが望ましい。
【0029】
上記実施形態では、樹脂基材中に炭素の微粒子と金属酸化物の微粒子とを分散させたが、シリコンカーバイド(SiC)の微粒子を上記の樹脂基材中に分散させることによっても、高い起電力を実現することができる。シリコンカーバイドの微粒子は、樹脂基材中に適度なキャリア密度を生じさせると同時に、粉粒分散樹脂材料13の導電性を調整する機能をも有すると考えられる。このような効果を実現する上では、シリコンカーバイドの粒径が重要と考えられる。シリコンカーバイドの微粒子は、5[nm]〜60[μm]の範囲内に平均粒径を有することが好ましい。特に、シリコンカーバイドの微粒子は、上記粒径範囲内において、10[nm]〜10[μm]の範囲内の粒径を備える微粒子が主としてキャリア密度や導電性、熱伝導性に寄与するものと考えられる。配合効率を高めるためには、10[nm]〜10[μm]の範囲内に平均粒径を有することが好ましく、また、当該範囲の粒径を備える微粒子が70[重量%]以上含まれることが望ましい。特に、起電力を高める上では、5[μm]以下の粒径を備えた微粒子の寄与が大きいものと考えられる。シリコンカーバイドの添加量は、10〜50[重量%]の範囲内であることが好ましく、特に、20〜40[重量%]の範囲内であることが望ましい。
【実施例】
【0030】
(第1実施例)液状のシリカゾル(日産化学社製のスノーテックスXS、粒子径4〜6[nm])を電気炉等により乾燥させて粉末(以下、単に「シリカ粉末A」という。)としたものを1[g]と、未硬化のエポキシ樹脂(無溶剤、藤倉化成社製)にカーボンブラック(三菱化学社製)を3[重量%]添加したもの(以下、カーボン添加未硬化エポキシ樹脂)3[g]とを混合し、混練してペースト状とした。これを第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。具体的には、第1の電極11と第2の電極12のうちの一方の電極上に未硬化の上記ペースト状のものを塗布し、その表面を、ガラス棒等を用いて平坦化してから、他方の電極を覆うように被せた。このようにして形成した塗布物を軽く加圧し、第1の電極11、第2の電極12、粉粒分散樹脂材料13が相互に接着された状態になるように構成した。その後、恒温槽により100[℃]で1時間加熱し、粉粒分散樹脂材料13を焼成して硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約300[μm]であった。なお、上記カーボンブラック(三菱化学社製)は、導電性フィラーとして用いる製品、例えば、#3030B、#3050B、#3230B、#3400B(いずれも製品番号)などの電子顕微鏡画像などに基づく算術平均径が20〜60[nm]程度の粒径を有するものを用いることができる。
【0031】
(第2実施例)上記のシリカ粉末Aを1[g]と、上記のカーボン添加未硬化エポキシ樹脂を3[g]と、酸化アルミニウムα型の粉末(関東化学社製試薬製品番号01173-00、粒径35〜50[μm])を0.1[g]と、を混合し、混錬してペースト状とした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約500[μm]であった。
【0032】
(第3実施例)上記のシリカ粉末Aを0.5[g]と、上記のカーボン添加未硬化エポキシ樹脂を3[g]と、酸化スズIVの粉末(関東化学社製試薬製品番号37315-01)を0.1[g]と、を混合し、混錬してペースト状とした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約500[μm]であった。
【0033】
(第4実施例)上記のシリカ粉末Aを1[g]と、上記のカーボン添加未硬化エポキシ樹脂を3[g]と、シリコンカーバイドの粉末(信濃電気製錬社製品番号SER-10)を0.5[g]と、を混合し、混錬してペースト状とした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約600[μm]であった。なお、上記のシリコンカーバイドの粉末(信濃電気製錬社製品番号SER-10)は、マイクロトラック測定による平均粒径(体積平均径)が1.0[μm]、JIS R 6002の粒径測定方法により、10%で5.2[μm]、50%で1.0[μm]、90%で0.5[μm]となる粒度分布を備えている。
【0034】
(第5実施例)液状のシリカゾル(日産化学社製のスノーテックスC、粒径10〜15[nm])を電気炉等により乾燥させて粉末(以下、単に「シリカ粉末B」という。)としたものを1[g]と、上記のカーボン添加未硬化エポキシ樹脂を3[g]と、を混合し、混錬してペースト状とした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約600[μm]であった。
【0035】
(第6実施例)上記のシリカ粉末Bを1[g]と、上記のカーボン添加未硬化エポキシ樹脂を3[g]と、上記酸化アルミニウムα型の粉末(関東化学社製試薬製品番号01173-00)を0.1[g]と、を混合し、混錬してペースト状とした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約700[μm]であった。
【0036】
(第7実施例)粉末の二酸化珪素(関東化学社製品番号37049−10、沈降製、非晶質)を1[g]と、上記のカーボン添加未硬化エポキシ樹脂を3[g]と、を混合し、混錬してペースト状とした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約400[μm]であった。
【0037】
(第8実施例)粉末の二酸化珪素(関東化学社製品番号37049−10、沈降製、非晶質)を50[g]と酸化スズIVの粉末(関東化学社製試薬製品番号37315-01)を0.5[g]とを混合したもの1[g]を取り出して、上記未硬化のエポキシ樹脂(無溶剤、藤倉化成社製)3[g]に添加し、混錬してペースト状とした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約900[μm]であった。
【0038】
(第9実施例)粉末の二酸化珪素(関東化学社製品番号37049−10、沈降製、非晶質)を20[g]と上記のカーボンブラック(三菱化学社製)を2[g]を混合したもの1[g]を取り出して、上記未硬化のエポキシ樹脂(無溶剤、藤倉化成社製)3[g]に添加し、混錬してペースト状とした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約700[μm]であった。
【0039】
(第10実施例)上記のシリコンカーバイドの粉末(信濃電気製錬社製品番号SER-10)4[g]を、上記未硬化のエポキシ樹脂(無溶剤、藤倉化成社製)8[g]に混合し、混錬してペースト状とした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約600[μm]であった。
【0040】
(第11実施例)シリコンカーバイドの粉末(太平洋ランダム社製品名NG)4[g]を、上記未硬化のエポキシ樹脂(無溶剤、藤倉化成社製)8[g]に混合し、混錬してペースト状とした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約200[μm]であった。なお、上記のシリコンカーバイドの粉末(太平洋ランダム社製品名NG)の粒度分布は、75[μm]が10%、53[μm]が48%、45[μm]が20%、45[μm]未満が22%であった。
【0041】
(第12実施例)上記の酸化アルミニウムα型の粉末(関東化学社製試薬製品番号01173-00)1[g]を、上記のカーボン添加未硬化エポキシ樹脂3[g]に添加し、混錬してペースト状にした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約500[μm]であった。
【0042】
(第13実施例)上記の酸化アルミニウムα型の粉末(関東化学社製試薬製品番号01173-00)を6.6[g]と、上記のカーボンブラック(三菱化学社製)を0.6[g]とを、上記の未硬化のエポキシ樹脂(無溶剤、藤倉化成社製)20[g]に添加し、混錬してペースト状にした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約500[μm]であった。
【0043】
(第14実施例)上記の酸化アルミニウムα型の粉末(関東化学社製試薬製品番号01173-00)40[g]と上記のカーボンブラック(三菱化学社製)2[g]とを混合したものを1[g]取り出して、上記の未硬化のエポキシ樹脂(無溶剤、藤倉化成社製)3[g]に添加し、混錬してペースト状にした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約500[μm]であった。
【0044】
(第15実施例)上記の酸化アルミニウムα型の粉末(関東化学社製試薬製品番号01173-00)10[g]と上記のカーボンブラック(三菱化学社製)0.3[g]とを混合したものを1[g]取り出して、上記の未硬化のエポキシ樹脂(無溶剤、藤倉化成社製)3[g]に添加し、混錬してペースト状にした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約400[μm]であった。
【0045】
(第16実施例)上記の酸化スズIVの粉末(関東化学社製試薬製品番号37315-01)1[g]を、上記のカーボン添加未硬化エポキシ樹脂3[g]に添加し、混錬してペースト状にした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約400[μm]であった。
【0046】
(第17実施例)酸化亜鉛の粉末(関東化学社製製品番号48020−00)1[g]を、上記のカーボン添加未硬化エポキシ樹脂3[g]に添加し、混錬してペースト状にした。これを、第1実施例と同様に、第1の電極11としての厚み40[μm]のアルミニウム箔と、第2の電極12としての厚み10[μm]の銅箔との間に介在させ、加熱することによって未硬化のエポキシ樹脂を硬化させた。粉粒分散樹脂材料13の厚みは約700[μm]であった。
【0047】
以上のように、第1〜第17実施例の熱電変換素子10を作成した。熱電変換素子10の粉粒分散樹脂材料13中の樹脂基材の種類、導電性微粒子の種類と重量%、非導電性微粒子の種類と重量%について、以下の表1に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
上記の熱電変換素子10を、それぞれ、第1の電極11が放熱板16に接する姿勢で、図1に示す三端子レギュレータ15の放熱板16上に接着した。そして、電源17から三端子レギュレータ15の端子に電圧3.5[V]を供給し、電流0.4[A]を流して発熱させた。温度センサ18は、放熱板16の温度を測定した。放熱板16の温度は、放熱板16を熱電変換素子10に接着する前では92〜96[℃]であったが、熱電変換素子10を放熱板16に接着すると81〜87[℃]となった。なお、放熱板16の代わりに放熱用シリコーングリス(シリコーンオイルに熱伝導性の粉末を添加したもの。例えば、サンハヤト社製の放熱用シリコーン)などの熱伝導性材料を介して、三端子レギュレータ15を熱電変換素子10に接触させてもよい。また、三端子レギュレータ15は発熱体の一例であり、本実施形態の熱電変換素子10は、任意の発熱体に接触させて吸熱作用を生じさせることができる。
【0050】
また、熱電変換素子10の第1の電極11と第2の電極12を測定器に接続し、電圧値Vと抵抗値Rを測定した。このときの電圧値Vが熱電変換素子10の起電力を示し、抵抗値Rが第1の電極11と第2の電極12を介した粉粒分散樹脂材料13の実質的な抵抗値を示す。この抵抗値Rと、粉粒分散樹脂材料13の厚みd及び面積S(縦1.5[cm]×横2.8[cm])から抵抗率ρ=R×S/d[Ωm]を算出した。また、この測定時における放熱板16の温度は73〜80[℃]となった。なお、放熱板16の温度は、上記測定時と、第1の電極11と第2の電極12との間にコンデンサや抵抗を接続した場合とでほとんど変わらなかった。以上のように、熱電変換素子10においては、冷却(吸熱)対象となる部位に第1の電極11と第2の電極12の一方を熱的に接触させるとともに、第1の電極11と第2の電極12を電気的負荷に接続することにより、熱エネルギーを電気エネルギーに変換することができる。電気的負荷は、例えば、コンデンサ、抵抗、バッテリー等の充電回路などである。
【0051】
上記のように形成した第1実施例〜第17実施例の熱電変換素子10について、起電力V、抵抗率ρ、三端子レギュレータ15単独のときの放熱板16の温度と測定時の放熱板16の温度との差ΔTを以下の表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
上記のように、いずれの熱電変換素子10でも温度差が10度以上となり、熱エネルギーから電気エネルギーへの変換に起因する冷却作用が得られていることがわかる。また、いずれも数[mV]以上の起電力が得られている。特に、粉粒分散樹脂材料13の抵抗率が1×10[Ωm]以上になると100[mV]以上の起電力が得られている。また、抵抗率が1×10[Ωm]以上になるとさらに高くなる傾向がみられる。
【0054】
また、導電性微粒子と非導電性微粒子の双方を添加した粉粒分散樹脂材料13を用いた第1実施例〜第9実施例、第12実施例〜第15実施例では、10[mV]以上の比較的高い起電力が得られる。一方、第16実施例と第17実施例は非導電性微粒子の添加がないが、この場合には、非導電性微粒子を添加した場合に比べて起電力が比較的低い。
【0055】
一方、シリコンカーバイド(SiC)の微粒子を添加した粉粒分散樹脂材料13を用いた第10実施例及び第11実施例では、いずれも十分な起電力が得られている。ただし、第11実施例では、第10実施例と同様に或る程度高い抵抗率であるにも関わらず、第10実施例よりも起電力が低下している。ここで、第10実施例において添加したシリコンカーバイド(SiC)の微粒子が1[μm]前後の粒径を備えた細かな微粒子が多かったのに対して、第11実施例に用いたシリコンカーバイド(SiC)の微粒子は、45[μm]より小さな粒径の微粒子が20%程度と少ない。したがって、シリコンカーバイド(SiC)の細かな微粒子の数が主としてキャリア密度に貢献するために、第10実施例のキャリア密度が第11実施例のキャリア密度より高くなったことから、第10実施形態の起電力が第11実施形態の起電力よりも大きくなったものと考えられる。
【0056】
以上のように、本実施形態では、樹脂基材中に炭素の微粒子と金属酸化物の微粒子とを分散させた粉粒分散樹脂材料13を用いることにより、或いは、樹脂基材中にシリコンカーバイド(SiC)の微粒子を分散させた粉粒分散樹脂材料13を用いることにより、熱電変換素子として高い性能を得ることができる。また、これらの熱電変換素子は、第1の電極11と第2の電極12の間に上記の粉粒分散樹脂材料13を介在させただけであるので、構造が極めて簡単であるとともに、実質的に樹脂の硬化工程のみで製造できるなど、製造方法も容易であり、製造コストも低減することができる。さらに、上記の粉粒分散樹脂材料13は樹脂基材がベースとなるため、任意の形状に構成することができ、可撓性を持たせることも可能になるので、状況に合わせて用いることができるなど、使用態様として高い自由度を備えている。特に、シート状、フィルム状に薄く形成しても十分な効果を得ることができるため、近年の小型携帯機器に用いる場合に好適である。
【符号の説明】
【0057】
10…熱電変換素子、11…第1の電極、12…第2の電極、13…粉粒分散樹脂材料、14…測定器、15…三端子レギュレータ、16…放熱板、17…電源、18…温度センサ
図1