(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-63925(P2017-63925A)
(43)【公開日】2017年4月6日
(54)【発明の名称】団扇
(51)【国際特許分類】
A45B 27/00 20060101AFI20170317BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20170317BHJP
【FI】
A45B27/00 B
B32B3/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-190898(P2015-190898)
(22)【出願日】2015年9月29日
(71)【出願人】
【識別番号】000180346
【氏名又は名称】四国団扇株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】508127074
【氏名又は名称】信和工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390003160
【氏名又は名称】ニダイキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111257
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 栄二
(74)【代理人】
【識別番号】100110504
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 孝治
(72)【発明者】
【氏名】横尾 信一郎
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 聡
(72)【発明者】
【氏名】山田 大機
【テーマコード(参考)】
3B104
4F100
【Fターム(参考)】
3B104ZC00
3B104ZC03
4F100AJ02
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK04A
4F100AK04B
4F100AT00A
4F100AT00B
4F100DC11A
4F100DC11B
4F100DC30C
4F100DD07A
4F100DD07B
4F100DH00C
4F100HB31A
4F100HB31B
4F100JL10A
4F100JL10B
4F100JN22A
4F100JN22B
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】
【課題】特別な涼風機構部を装備させることなく、一般的な団扇のように軽くて扇ぎやすいものであって涼風や涼風感を得ることができる団扇を提供する。
【解決手段】団扇1は、風を起こす扇部3の扇面に水又は氷を保持させるための微小孔部又は微小凹部7を多数有するものである。例えば、扇部3は、骨体31と、骨体31に対して表裏面にそれぞれ貼り合わせる表面シート61及び裏面シート62により形成されるシート体32とを備え、微小孔部又は微小凹部7は、表面シート61と裏面シート62とに別々に設けられている多数の微小貫通孔71,72により構成されるようにすることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
風を起こす扇部の扇面に水又は氷を保持させるための微小孔部又は微小凹部を多数有する団扇。
【請求項2】
請求項1に記載の団扇において、
上記扇部は、扇面に配設されるものであって樹脂製シートを有するシート体を備え、
上記微小孔部又は上記微小凹部は、上記シート体に設けられている団扇。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の団扇において、
上記扇部は、骨体と、骨体に対して表裏面にそれぞれ貼り合わせる表面シート及び裏面シートにより形成されるシート体とを備え、
上記微小孔部又は上記微小凹部は、上記表面シートと上記裏面シートとに別々に設けられている多数の微小貫通孔により構成されている団扇。
【請求項4】
請求項3に記載の団扇において、
上記表面シート及び上記裏面シートは、積層シートで構成され、
上記積層シートは、表基材となる外側シートが無地もしくは印刷を施した樹脂製シートで構成され、裏基材となる内側シートがパール調シートで構成されている団扇。
【請求項5】
請求項3に記載の団扇において、
上記表面シート及び上記裏面シートは、積層シートで構成され、
上記積層シートは、表基材となる外側シートが樹脂製シートで構成され、裏基材となる内側シートが保水性シートで構成されている団扇。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の団扇において、
上記微小孔部又は上記微小凹部の口径は、10μm〜2000μmであり、
上記扇面の片面において上記多数の微小孔部又は微小凹部の総面積が扇面の片面の全面積に対して0.01%〜50%の割合を有する団扇。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、涼風又は涼風感を得ることができる団扇に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な団扇は、手に持つ柄と、柄の先端に設ける扇部とを備え、身体に向けて扇いで扇部で風を起こして夏場に涼をとるものとして利用されるが、風を起こすだけの道具なので、気温が高い場合には涼風は得られない。
【0003】
従来、涼風を得るための団扇として、例えば、特許文献1、2には、柄の部分に水をためるケースや水タンク等の特別な部材を具備させて扇部の表面や扇部先端で水分を気化させるようにした団扇が開示され、また、特許文献3、4には、扇部に保冷剤を備え付けた団扇が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−128717号公報
【特許文献2】特開2012−205869号公報
【特許文献3】実用新案登録第3057386号公報
【特許文献4】実開平5−91421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記各特許文献に記載の団扇では、水タンクや保冷剤等のような特別な部材を備え付けているために、構造が複雑であり、団扇自体も重くなり、一般的な団扇に比べて扇ぎにくく、またコストも高く付くという問題があった。
【0006】
本発明は、特別な部材を装備させることなく、一般的な団扇のように軽くて扇ぎやすいものであって涼風や涼風感を得ることができる団扇を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る団扇は、風を起こす扇部の扇面に水又は氷を保持させるための微小孔部又は微小凹部を多数有するものである。
【0008】
上記扇部は、扇面に配設されるものであって樹脂製シートを有するシート体を備え、上記微小孔部又は上記微小凹部は、上記シート体に設けるようにすることができる。
上記扇部は、骨体と、骨体に対して表裏面にそれぞれ貼り合わせた表面シート及び裏面シートにより形成されたシート体とを備え、上記微小孔部又は上記微小凹部は、上記表面シートと上記裏面シートとに別々に設けられている多数の微小貫通孔により構成されていることが望ましい。
上記表面シート及び上記裏面シートは、積層シートで構成され、上記積層シートは、表基材となる外側シートが無地もしくは印刷を施した樹脂製シートで構成され、裏基材となる内側シートがパール調シートで構成されるようにすることができる。
また、上記表面シート及び上記裏面シートは、積層シートで構成され、上記積層シートは、表基材となる外側シートが樹脂製シートで構成され、裏基材となる内側シートが保水性シートで構成されるようにすることができる。
上記微小孔部又は上記微小凹部の口径は、10μm〜2000μmであり、上記扇面の片面において上記多数の微小孔部又は微小凹部の総面積が扇面の片面の全面積に対して0.01%〜50%の割合を有することが望ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る団扇によれば、扇部の微小孔部又は微小凹部に水や氷を強固に保持させることができる。従って、従来のように特別な部材を装備せずとも、扇部に水や氷を付着させた状態で団扇を扇ぐと扇部の表面に付着した水又は氷により水滴を含む風や外気よりも冷えた風を起こすことができる。よって、一般的な団扇のように軽くて扇ぎやすく、またコスト高とならずに、涼風又は涼風感を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】実施形態の団扇における扇部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書において「シート」(○○シート、シート体を含む。)の用語は、厚さ〇〇ミクロン未満がフィルムで、それ以上がシートのように厳格に区別して解釈されるものではなく、一般に、シートやフィルムと称されるものを含むように広く解釈される。
図1に示すように、実施形態の団扇1は、手で持つための柄2と、柄2の先端部に連設されて風を起こすための扇部3とを備え、扇部3は、柄2に連設する骨体31と、骨体31に貼り合わせて扇面を形成するシート体32とを有する。
【0012】
柄2は、偏平な平柄であるが、棒状の丸柄とするものでもよい。また、柄2は、扇部3の骨体31と一体形成されているが、扇部3の下端部に差し込む差柄とするものでもよい。
【0013】
扇部3の骨体31は、柄2の先端から放射状に広がる複数の穂骨部53と、柄2の先端付近の要となる部分から左右に湾曲して延びる弓部51と、弓部51の左右端を連結する円弧状の糸山部52と、糸山部52の左右端から上に略円形状に延びて各穂骨部53の先端と連結する外縁部54とで構成されている。なお、骨体31の構成は、上記のものに限らず、種々の構成とすることができる。また、柄2と骨体31は、樹脂製の一体成形品であるが、例えば、竹を切り割る等して作製したものでもよく、柄2や骨体31の素材は特に限定するものではない。
【0014】
扇部3のシート体32は、骨体31の糸山部52より上の穂骨部53を全体的に覆うように穂骨部53の表面側と裏面側のそれぞれに表面シート61と裏面シート62とを貼り合わせて形成される。
【0015】
シート体32は、素材に樹脂製シートを有し、
図2に示すように、水又は氷を保持させるための多数の円形の微小凹部7が設けられている。各微小凹部7は、シート体32を貫通するものではなく表裏の各扇面上に凹みとなるように設けられている。すなわち、シート体32を形成する表面シート61と裏面シート62とには、予めそれぞれ別々に微小貫通孔71,72が設けられており、これら表面シート61と裏面シート62とを骨体31の表面側と裏面側とに貼り合わせることにより、表面シート61と裏面シート62との互いの各微小貫通孔71,72が位置ずれしてシート体32の表裏面において凹状の微小凹部7を形成することとなる。なお、微小凹部7の形状は、円形に限らず、楕円、四角形等その他種々の形状とすることができる。
【0016】
微小凹部7は、口径が10μm〜2000μm、好ましくは200μm〜1500μmであり、また、扇面の片面において扇面の片面の全面積に対して多数の微小凹部7の総面積(開口率)が0.01%〜50%、好ましくは、0.06%〜10%の割合を有する。なお、微小凹部7の数は、2500個/m
2〜890000個/m
2程度とするのが好ましく、また、各微小凹部7は、各種のパターンで形成できるが、この場合、各微小凹部7の縦横方向での間隔は、1.5mm〜42mm程度とするのが好ましい。
微小凹部7の口径が上記範囲内の大きさであれば、微小凹部7内の全体に水が溜まり、水の表面張力により微小凹部7内に水を比較的強固に保持することができる。そして、扇部3に水を付着させて凍らせると、各微小凹部7内で凍った氷を微小凹部7内に強固に固着させることができ、また、微小凹部7内の氷とともに微小凹部7の周辺で凍った氷をもアンカー効果により扇面上に強固に保持させることができる。なお、微小凹部7の口径は、微小凹部7が円形の場合は円の直径であるが、円形以外の場合は微小凹部の外径全周における各直径の平均値とする。
また、扇面の片面における多数の微小凹部7の総面積(開口率)、個数、間隔が上記範囲内であれば、微小凹部7でのアンカー効果により微小凹部7の周辺の氷を比較的広範囲にわたって強固に保持させることができる。
また、微小凹部7の口径を2000μmより大きくしたり、また、多数の微小凹部7の総面積を50%より大きくしたりすると、外側シートに印刷を施した場合には印刷抜けを起こし得るのであまり好ましくない。
【0017】
以上の構成を備える団扇1の使用例の一つとして、扇部3を水に浸けたり扇部3に水を掛けたりして扇面に水を付着させるとともに各微小凹部7内に水を保持させ、これを冷凍庫に入れて扇部3に付着した水を凍らせる。扇部3上で凍った氷は、各微小凹部7によるアンカー効果によって強固に固着されるので、柄2を持って扇部3を揺動させても簡単に剥がれ落ちることはない。従って、この冷凍後の団扇1でもって通常どおり身体に向けて扇いで風を起こすと、扇部3に凍り付いた氷やこの氷で冷えている扇部3により扇部3周辺の空気が冷やされるので、扇部3の揺動によって発生する風は、涼風として得られる。
【0018】
また、この団扇1の他の使用例として、扇部3に水を付着させただけの状態で団扇1を扇いで風を起こすようにしてもよい。この場合、扇部3に付着した水は、各微小凹部7での水の表面張力によって比較的に強固に扇面上に保持されるので、扇部3の揺動によって扇面に付着した水は、水滴となって徐々に飛散される。また、扇部3の揺動によって扇面上の水が蒸発して気化熱で扇部3周辺の空気が冷やされる。従って、扇部3の揺動によって発生する風には比較的長い時間で扇面から飛散する水滴を含ませることができ、また、揺動によって発生する風が気化熱で冷やされて涼風として得られる。その結果、顔などには水滴を含む涼風があたり涼風感を得ることができる。
【0019】
以上より、実施形態の団扇1によれば、従来のように水タンクや保冷剤等の特別部材を装備せずとも、団扇1を扇ぐと氷又は水が付着した扇部3により外気よりも冷えた涼風や水滴を含む風を起こすことができる。よって、一般的な団扇のように軽くて扇ぎやすく、またコスト高とならずに、涼風又は涼風感を得ることができる。
【0020】
また、表面シート61と裏面シート62とには、予め微小貫通孔71,72を設けることにより、扇部3の骨体31に表面シート61と裏面シート62とを圧着して貼り合わせる際には、表面シート61と裏面シート62との間の空気が微小貫通孔71,72を通して外部に抜くことができる。従って、扇部3のシート体32の内部に空気溜りが形成されずに綺麗な扇面の扇部3を簡単に作製することができる。
【0021】
ところで、扇部3のシート体32を構成する表面シート61及び裏面シート62は、樹脂製の単一シートで構成されてもよいが、樹脂製シートを有する積層シートで構成することができる。積層シートの場合、扇面の最外面に配置される表基材となる外側シートには防水性、耐久性等を考慮して樹脂製のシートが使用されるが、裏基材となる内側シートには樹脂製シートのみならず、不織布、化繊紙等が使用されてもよい。外側シートには、透明又は半透明の樹脂製シートの表面又は/及び裏面にデザイン、企業ロゴ等の印刷を施してこの印刷が外観できるものとすることができ、また、無地(無模様一色)や所定の地色とともに模様を施したもの、無色・有色の透明又は半透明のもの等とすることができる。なお、上記の外側シートや内側シートは、団扇1の扇部3に使用できるものであれば、特に限定されず、その素材や、模様・色等の有無も含めて自由に選択することができる。
【0022】
上記外側シートとなる樹脂製シートは、例えば、包装・工業用フィルムに用いられるものを使用することができ、また、上記内側シートとなる樹脂製シートは、例えば、シーラントフィルムに用いられるものを使用することができる。上記の外側シートや内側シートを構成する樹脂製シートは、例えば、ポリエチレン、エチレン酢酸ビニル、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ナイロン(ポリアミド)等の各種のシート材が使用される。
【0023】
上記積層シートとして、例えば、 外側シートを裏面又は/及び表面に印刷を施した透明又は半透明の樹脂製シートで構成し、内側シートをパール色又は乳白色を有するパール調樹脂製シートで構成することができる。この場合、内側シートのパール調樹脂製シートが遮光性のあるパール色又は乳白色を有するので、外側シートの透明樹脂製シートに施した印刷を色鮮やかに見せることができ、また、外側シートの透明樹脂製シートには下地印刷としての白色印刷を施さなくてもよいからインクの使用量を大幅に削減することができる。
【0024】
また、上記積層シートとして、例えば、外側シートを樹脂製シートで構成し、内側シートを保水性シートで構成することができる。この場合、保水性シートの内側にさらにシール性の樹脂製シートを配置して保水性シートを外側シートとシール性樹脂製シートとの間に配置するようにしてもよい。上記保水性シートは、水を吸い込んで保持する保水機能を有するものが使用され、例えば、保冷剤袋の基材フィルムに外装されるような不織布層を含む吸水性シート、様々な不織布、また、ポリエステルペーパーやレーヨン紙等の化繊紙等が例示される。また、この保水性シートは、さらには抗菌性を有するものが好ましく使用される。このような保水性シートを設けた積層シートによれば、扇部3を水に浸ける等すると、外側シートの樹脂製シートにおける多数の微小貫通孔を通して内部に浸透した水が保水性シートに吸収されるので、水を扇面に付着させる場合よりも多くの水を長時間にわたって保水することができる。また、保水性シートに水を吸収させた状態で凍らせることもできる。従って、長時間にわたり水又は氷により水滴を含む風や外気よりも冷えた風を起こすことができる。また、保水性シートが抗菌性を有することにより何度でも衛生的に水を吸収させて使用することができる。
【0025】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変更を施すことが可能である。
例えば、シート体32には、微小凹部7に代えて、シート体32の表裏に貫通する微小孔部を設けるようにしてもよく、この場合でも上記実施形態と同様の作用効果が得られる。
シート体32は、骨体31の片面にだけ樹脂製シートを貼り付けて形成したものでもよい。この場合、樹脂製シートに設けられた微小貫通孔が上記微小孔部として機能する。
扇部3は、上記の微小凹部7又は微小孔部を多数設けた樹脂製の一枚物の薄板で形成して骨体31を設けないものでもよい。
団扇1は、柄2を有しない扇部3だけで構成したものでもよい。
また、本発明の団扇1は、水や氷を付着させずに通常どおりに扇いで使用することができる。
【符号の説明】
【0026】
1 団扇
2 柄
3 扇部
7 微小凹部
31 骨体
32 シート体
51 弓部
52 糸山部
53 穂骨部
54 外縁部
61 表面シート
62 裏面シート
71 微小貫通孔
72 微小貫通孔