特開2017-64625(P2017-64625A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-64625(P2017-64625A)
(43)【公開日】2017年4月6日
(54)【発明の名称】塗装ブース
(51)【国際特許分類】
   B05B 15/12 20060101AFI20170317BHJP
【FI】
   B05B15/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-192856(P2015-192856)
(22)【出願日】2015年9月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000110343
【氏名又は名称】トリニティ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100188226
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 俊達
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】橋本 敬史
(72)【発明者】
【氏名】高木 義文
【テーマコード(参考)】
4D073
【Fターム(参考)】
4D073AA01
4D073BB03
4D073DD03
4D073DD10
4D073DD28
(57)【要約】
【課題】従来より霧状塗料を内側面に付着し難くすることが可能な塗装ブースを提供する。
【解決手段】本発明の塗装ブース10は、台形送風部20のエアー側方噴出部20Sからは、塗装ブース10の内側面に向けて斜め下方にエアーが噴出される。これにより、エアーが強制的に塗装ブース10の内側面伝いに下方に向かって流れ、塗装ブース10の内側面近傍における霧状塗料の巻き上げが抑えられ、従来より霧状塗料を内側面に付着し難くすることが可能になる。しかも、塗装ブース10の内側面近傍のエアーの流下速度が、塗装ブース10の中央部におけるエアーの流下速度より速いので、霧状塗料が塗装ブース10の中央部から内側面側に近づくことを規制することができ、この点においても霧状塗料を塗装ブース10の内側面に付着し難くなる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
霧状塗料でワークの塗装を行う塗装処理領域を内側に備えると共に、天井部からエアーが流下して前記塗装処理領域内に余った霧状塗料を除去する塗装ブースにおいて、
前記天井部の外縁部に設けられ、前記塗装ブースの内側面に向けて斜め下方にエアーを噴出するエアー側方噴出部を備えた塗装ブース。
【請求項2】
前記天井部には、下方に突出した断面台形の筐体構造をなしかつエアーが通過可能なフィルターマットと前記フィルターマットを支持する支持部材とで構成された台形送風部が設けられ、
前記台形送風部の傾斜側面が前記エアー側方噴出部をなし、
前記台形送風部の内側が、前記台形送風部を通過させるための圧縮エアーを受け入れて加圧状態にされる天井裏部屋になっている請求項1に記載の塗装ブース。
【請求項3】
前記天井裏部屋には、前記台形送風部の下面の真上となる位置に開口して圧縮エアーを受け入れる上部エアー流入口と、前記上部エアー流入口と前記台形送風部の下面との間に配置されて、前記上部エアー流入口からのエアーの風圧を受ける風圧規制盤とが備えられている請求項2に記載の塗装ブース。
【請求項4】
前記風圧規制盤は、外縁部から上方に突出した環状壁を有するトレイ構造をなしかつ、上下に貫通した複数の貫通路を有する請求項3に記載の塗装ブース。
【請求項5】
前記風圧規制盤は、前記貫通路の開度を変更するための開度調整機構を備えている請求項4に記載の塗装ブース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井部からエアーを流下させて塗装処理領域内に余った霧状塗料を除去する塗装ブースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の塗装ブースとして、その天井部をフィルターマットと支持部材とで構成し、天井裏部屋を加圧状態にして、天井部から真下にエアーを流下させるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−159093号(図1図3
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の塗装ブースでは、天井部から真下に流下するエアーに対して、塗装ブースの内側面伝いに上昇する対流(以下、「上昇対流」という)が発生し、その上昇対流によって塗装ブースの下部の霧状塗料が巻き上げられて塗装ブースの内側面に付着するという問題が生じていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、従来より霧状塗料を内側面に付着し難くすることが可能な塗装ブースの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明は、霧状塗料でワークの塗装を行う塗装処理領域を内側に備えると共に、天井部からエアーが流下して前記塗装処理領域内に余った霧状塗料を除去する塗装ブースにおいて、前記天井部の外縁部に設けられ、前記塗装ブースの内側面に向けて斜め下方にエアーを噴出するエアー側方噴出部を備えた塗装ブースである。
【0007】
請求項2の発明は、前記天井部には、下方に突出した断面台形の筐体構造をなしかつエアーが通過可能なフィルターマットと前記フィルターマットを支持する支持部材とで構成された台形送風部が設けられ、前記台形送風部の傾斜側面が前記エアー側方噴出部をなし、前記台形送風部の内側が、前記台形送風部を通過させるための圧縮エアーを受け入れて加圧状態にされる天井裏部屋になっている請求項1に記載の塗装ブースである。
【0008】
請求項3の発明は、前記天井裏部屋には、前記台形送風部の下面の真上となる位置に開口して圧縮エアーを受け入れる上部エアー流入口と、前記上部エアー流入口と前記台形送風部の下面との間に配置されて、前記上部エアー流入口からのエアーの風圧を受ける風圧規制盤とが備えられている請求項2に記載の塗装ブースである。
【0009】
請求項4の発明は、前記風圧規制盤は、外縁部から上方に突出した環状壁を有するトレイ構造をなしかつ、上下に貫通した複数の貫通路を有する請求項3に記載の塗装ブースである。
【0010】
請求項5の発明は、前記風圧規制盤は、前記貫通路の開度を変更するための開度調整機構を備えている請求項4に記載の塗装ブースである。
【発明の効果】
【0011】
[請求項1の発明]
請求項1の塗装ブースでは、天井部の外縁部に設けられたエアー側方噴出部が、斜め下方の塗装ブースの内側面に向けてエアーを噴出するので、エアーが強制的に塗装ブースの内側面伝いに下方に向かって流れる。これにより、霧状塗料の巻き上げが抑えられ、従来より霧状塗料を内側面に付着し難くすることが可能になる。
【0012】
[請求項2の発明]
請求項2の塗装ブースでは、天井裏部屋が圧縮エアーを受け入れて加圧状態になり、天井部の台形送風部を構成するフィルターマットを通過してエアーが流下する。その際、台形送風部の下面から真下に流下するエアーにより、ワークの周囲で余った霧状塗料を排除することができると共に、エアー側方噴出部としての台形送風部の傾斜側面から斜め下方に噴出したエアーにより塗装ブースの内側面沿いに流下する気流が発生し、塗装ブースの内側面に霧状塗料が付着し難くすることが可能になる。
【0013】
[請求項3の発明]
請求項3の塗装ブースでは、上部エアー流入口と台形送風部の下面との間に風圧規制盤を設けたことで、上部エアー流入口からのエアーによって台形送風部の下面が受ける風圧(動圧)が抑えられる。これにより、台形送風部からエアーの流量が主として天井裏部屋の内圧(静圧)によって制御することが可能になり、エアーの流量管理が容易になる。
【0014】
[請求項4の発明]
請求項4の塗装ブースでは、風圧規制盤がトレイ構造をなしているので、上部エアー流入口からのエアーが風圧規制盤に衝突して勢いを維持した状態で側方に流れることを規制し、台形送風部の傾斜側面に大きな風圧がかかることを防ぐことができる。これにより、エアー側方噴出部としての台形送風部の傾斜側面から流下するエアーの流量管理が容易になる。
【0015】
[請求項5の発明]
請求項5の塗装ブースでは、風圧規制盤が備える開度調整機構で貫通路の開度を変更して、台形送風部の下面から流下するエアーの流量を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1実施形態に係る塗装ブースの側断面図
図2】塗装ブースの平断面図
図3】エアー分配装置の側断面図
図4】風圧規制盤の斜視図
図5】流水盤の斜視図
図6】サイクロン機構部の斜視図
図7】本発明の第2実施形態に係る塗装ブースの側断面図
図8】変形例に係る流水盤の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明の一実施形態を図1図6に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態の塗装ブース10は、1台の塗装ロボット11を収容している。塗装ロボット11は、支持台12の上に据え付けられている。支持台12は、水平方向に延びた直方体状をなし、その長手方向の中央に塗装ロボット11が配置されている。以下の説明において、支持台12が延びた水平方向を「第1水平方向H1」(図2参照)といい、それと直交する水平方向を「第2水平方向H2」ということとする。また、塗装ロボット11は、図1に示した原点姿勢で第2水平方向H2の一方側を向き、その塗装ロボット11が原点姿勢で向く方向を「前側」又は「前方」等といい、その反対側を「後側」又は「後方」等ということとする。
【0018】
図1に示すように、塗装ブース10内には、塗装ロボット11及び支持台12の前方には塗装処理領域R1が備えられている。また、支持台12の前面12Fにおける上部からは、片持ち梁状の治具13が突出し、その治具13にワークWが保持されている。そして、塗装ロボット11のアーム11Aが塗装処理領域R1内に突入し、アーム11Aの先端に備えた塗装ガン11Bから下方に向けて塗料を噴霧してワークWを塗装する。その際、ワークWに付着しなかった余剰霧状塗料を外部に漏らさずに回収するために、塗装処理領域R1の全体が塗装ブース10の第1側壁14、第2側壁15、第3側壁17、上壁18等によって包囲されている。
【0019】
具体的には、図2に示すように、塗装ブース10のうち塗装処理領域R1を挟んで第1水平方向H1で対向する1対の第1側壁14,14は鉛直平坦な内面を有し、支持台12の前面12F及び上面12Jに対して直交している。また、一方の第1側壁14には、ワークWを塗装ブース10内の治具13に受け渡すための図示しないワーク搬入口が形成される一方、他方の第1側壁14には、ワークWを塗装ブース10内の治具13から受け取るための図示しないワーク搬出口が形成され、それらワーク搬入口及びワーク搬出口には、扉が備えられていて開閉されるようになっている。また、支持台12上で、1対の第1側壁14,14の後端部の間に備えた第2側壁15は、その両側縁部を除いた全体が後方に膨らんだロボット包囲部16になっている。
【0020】
ロボット包囲部16のうち塗装ロボット11に対して第1水平方向H1の両側に配置された1対の側部は、平坦でかつ鉛直方向と平行な内面を有すると共に、後方に向かって互いに接近するように傾斜している。また、ロボット包囲部16の後部は、平坦でかつ鉛直方向と平行な内面を有し、1対の側部の後端間を連絡している。さらに、ロボット包囲部16の上部は、内面が後方と両側方に向かって下るように傾斜している。
【0021】
図1に示すように、第3側壁17は、塗装処理領域R1を挟んで塗装ロボット11と反対側に配置され、塗装ブース10の上下方向の中間位置で概ねクランク状に屈曲し、その屈曲部分より下側部分(以下、これを「下側壁17B」という)が上側部分(以下、これを「上側壁17A」という)より外側にずれた配置になっている。上側壁17Aは、平坦でかつ鉛直方向と平行な内面を有する。また、塗装処理領域R1を上方から覆う上壁18は、図2に示すように、第2水平方向H2より第1水平方向H1が僅かに大きな四角形をなし、その上壁18の3辺の外縁部に第3側壁17及び第1側壁14,14が接続されている。さらには、上壁18の残り一辺の外縁部には、その両側部に第2側壁15が接続され、両側部以外の部分にロボット包囲部16が接続されている。
【0022】
下側壁17Bは、上下方向の中間部上端寄り位置でクランク状に僅かに屈曲して、下側壁17Bの下側部分が上側部分より僅かに内側にずれた配置になっている。また、図5に示すように、下側壁17Bの内面上端部には、給水タンク17Fが備えられている。給水タンク17Fは、下側壁17Bの横方向(第1水平方向H1)の全体に亘って延びかつ上面が開放した角溝形構造をなしている。その給水タンク17Fのうち下側壁17Bから離れた側の下側角部からは、流水盤30が斜め下方に垂下され、その下端部が塗装ブース10内の下面に対して隙間を空けて突き合わされている。その流水盤30の鉛直方向に対する傾斜角は、例えば3〜15度になっていて、流水盤30の下端部は、概ね上側壁17Aの内面の延長線上に位置している。また、第3側壁17全体及び流水盤30全体の両側部が1対の第1側壁14,14に接続されている。これにより、塗装ブース10内の空間が閉塞されると共に、下側壁17Bと流水盤30との間に吸気室32が形成されている。
【0023】
図6に示すように、下側壁17Bの外面から給水タンク17F内に給水管33が貫通している。そして、給水管33から給水タンク17F内に水が送給されて、給水タンク17Fの長手方向の全体からオーバーフローした水が流水盤30を流下する。これにより、流水盤30における塗装処理領域R1側を向いた表側面を伝わって水が流下し、その流水盤30側の表側面全体が水の膜で覆われた状態になる。
【0024】
図1に示すように、塗装ブース10内の下部は、水を貯留可能な槽構造になっていている。また、塗装ブース10の下面には、下側壁17Bの下方に排水溝34が形成されている。排水溝34は、図5に示すように、第1水平方向H1に延び、その排水溝34の幅方向の中間部に下側壁17Bの下端部が位置している。また、排水溝34のうち塗装ブース10の外部に位置した部分には、図示しない排水パイプが接続されている。そして、塗装ブース10の下部全体が水で覆われかつ、下側壁17Bの下端部が水に浸かった状態(図1に示した状態)に維持されるように排水パイプから排出される水量が制御されている。なお、治具13の下方には、メンテナンス時に足場となる架台27が水面より上方に位置するように設けられている。
【0025】
図1に示すように、下側壁17Bの上部には、排気口17Xが形成されていて、その排気口17Xに下側壁17Bの外側からサイクロン機構部40が接続されている。そして、そのサイクロン機構部40を介して吸気ダクト44が塗装ブース10の吸気室32に連絡されている。詳細には、図6に示すように、サイクロン機構部40は、外筒体41の中心部に内筒体43を備えている。外筒体41は、上側が円筒部41Aをなし、その円筒部41Aより下側が下方に向かって縮径したテーパー部41Bになっている。
【0026】
外筒体41の底壁からは排水管40Hが垂下され、その排水管40Hの下端部が排水溝34内の水に突入することで閉塞されている。また、外筒体41の上面壁の中央には内筒体43が貫通していて、その内筒体43の上端部に吸気ダクト44が接続されている。一方、内筒体43の下端部は、外筒体41の内側下面に対して上方に離れた位置に配置されている。さらには、外筒体41から導入ダクト42が張り出し、導入ダクト42の端部が下側壁17Bの排気口17Xに接続されている。導入ダクト42は、内側面42A,42Aを延長した面が内筒体43と交差しないように配置されている。そして、吸気ダクト44に接続された図示しないファンが駆動されると、吸気室32内のエアーが、導入ダクト42から外筒体41と内筒体43との間に取り込まれて回転しながら下方に進み、この間に作用する遠心力により霧状の水及び塗料が外筒体41の内面に押し付けられてエアーから分離される。そして、エアーだけが導入ダクト42の下端部から内筒体43を通って内筒体43に吸い込まれ、例えば、外気に放出される。
【0027】
さて、図1に示すように、上壁18の内面(下面)のうち外縁部を除く全体は、本発明に係る台形送風部20によって覆われている。台形送風部20全体は、下方に向かって窄んだ角錐台形状をなしている。台形送風部20は、図3に示すように、骨組部20Hにネット23及びフィルターマット24を取り付けてなる。その骨組部20Hは、図2に示すように、四角形の枠状板部材22Fの内縁四隅から角錐台の稜線に沿って4つの傾斜支持材22Aを斜め下方に延ばし、隣り合った傾斜支持材22A,22Aの下端部間をそれぞれ梁22Bで連絡した構造になっている。そして、骨組部20Hの下面及び全側面にネット23が張られ、そのネット23の内側にフィルターマット24が敷設されている。なお、本実施形態では、骨組部20Hとネット23とから本発明に係る「支持部材」が構成されている。
【0028】
図3に示すように、台形送風部20は、枠状板部材22Fが上壁18の下面外縁部に重ねられた状態に取り付けられ、台形送風部20のうち枠状板部材22Fより内側部分の開口部が上壁18によって覆われている。また、図1に示すように、上壁18の中央部に、角筒状の送風ダクト19が取り付けられて、その送風ダクト19から真下に向けてエアーが送給される。これにより、台形送風部20内の圧力が高くなり、フィルターマット24及びネット23を通して、台形送風部20の側面と下面とからエアーが排出される。なお、本実施形態では、上記した上壁18と台形送風部20とから本発明に係る「天井部」が構成され、送風ダクト19の下端開口が本発明に係る「エアー流入口」をなしている。
【0029】
図3に示すように、枠状板部材22Fの下面には、外縁部に角材22Cが沿わせた状態に取り付けられている。角材22Cは骨組部20Hから離して配置され、角材22Cの側面と枠状板部材22Fの側面とは面一になって第1側壁14及び第3側壁17の内側面に重ねられている。また、図1に示すように、ロボット包囲部16の上部内面と、角材22Cの下面とは面一に配置されている。
【0030】
図3に示すように、台形送風部20の傾斜側面は、本発明に係るエアー側方噴出部20Sになっている。詳細には、台形送風部20の傾斜側面のうち側方から視認可能なネット23の露出部分が、エアー側方噴出部20Sになっている。また、台形送風部20の下面において下方から視認可能なネット23の露出部分は、エアー下方噴出部20Kになっている。そして、エアー下方噴出部20Kから真下にエアーが噴出される。一方、エアー側方噴出部20Sからは、塗装ブース10の内側面に向けて斜め下方(即ち、台形送風部20の傾斜側面の法線方向)にエアーが噴出される。すると、そのエアーは、第1及び第3の側壁14,17においては、それらの内側面伝いに下方に向かって流下する。その際、第1側壁14等の内側面伝いに流下するエアーの流下速度は、エアー下方噴出部20Kから真下に噴出されるエアーの流下速度より大きくなる。なぜなら、エアー側方噴出部20Sの下端部と第1側壁14等の内側面との間の水平なエアー通過面の幅L1に比べ、エアー側方噴出部20Sの幅L2が大きくっているので、上記した水平なエアー通過面から真下に流れるエアーの流量が、エアー下方噴出部20Kから真下に流れるエアーが流量より多くなるからである。また、前述したようにロボット包囲部16の上部内面は、エアー側方噴出部20Sの上端部より下方に位置しているので、ロボット包囲部16の内側面伝いには、エアー側方噴出部20Sからのエアーがスムーズに流れる。
【0031】
台形送風部20内で、エアー下方噴出部20Kに大きな内圧がかからないようにするために、台形送風部20の内側には、送風ダクト19から送給されるエアーを受ける風圧規制盤25が備えられている。図4に示すように、風圧規制盤25はトレイ構造をなし、その平面形状は送風ダクト19の下端開口より一回り大きな四角形になっている。また、風圧規制盤25の底面には、第1水平方向H1に延びた複数のスリット25S(本発明の「貫通路」に相当する)が第2水平方向H2に分散配置して備えられている。また、図示しないが、風圧規制盤25の底面上には、各スリット25Sの側方にスライド板がそれぞれ重ねて備えられ、各スライド板に形成された長孔に蝶螺子が通されて、風圧規制盤25に形成された図示しない雌螺子孔に締め付けられている。これにより、スライド板を任意のスライド位置に移動して固定し、スリット25Sの開口幅を任意の大きさに調整することができる。そして、風圧規制盤25は、上壁18又は骨組部20Hから延びた図示しない支持部材に支持されて、台形送風部20の上下方向の中央に浮いた状態になっていて送風ダクト19の下端開口と対向している。
【0032】
本実施形態の塗装ブース10の構成に関する説明は以上である。次にこの塗装ブース10の作用効果について説明する。塗装ブース10内で塗装ロボット11がワークWを塗装しているときには、流水盤30伝いに水が流下された状態に維持され、送風ダクト19から台形送風部20にエアーが供給されて台形送風部20内が加圧状態に維持され、さらに、吸気室32内のエアーが吸気ダクト44に吸引されて吸気室32内が負圧状態に維持されている。そして、図1の矢印で例示したように、台形送風部20のエアー側方噴出部20S及びエアー下方噴出部20Kからエアーが噴出されて塗装ブース10内を全体をエアーが降下する。
【0033】
その降下したエアーの一部は、流水盤30の周囲の塗装処理領域R1から流水盤30側に向かい、流水盤30の表側面を流れる水に衝突してから、流水盤30の通気孔31を通って吸気室32に取り込まれる。その際に、流水盤30伝いに流れる水が霧状になり、霧状塗料と結合する。また、塗装ブース10の下部まで到達したエアーは、流水盤30の下端部から流れ落ちる水の間を通って吸気室32に取り込まれる。そして、吸気室32に取り込まれた塗料は、水に混じって排水溝34に回収されるか、排気口17Xから排出される。排水溝34に回収された水は、公知な方法で、水と塗料とに分離されて、水のみが再利用される。また、排気口17Xから排出されたエアーはサイクロン機構部40を通過して外気へと排出され、水及び塗料が排水溝34に回収される。
【0034】
ところで、本実施形態では、図3に示すように、台形送風部20のエアー側方噴出部20Sからは、塗装ブース10の内側面(詳細には、第1と第3の側壁14,17の内側面)に向けて斜め下方にエアーが噴出される。これにより、エアーが強制的に塗装ブース10の内側面伝いに下方に向かって流れ、塗装ブース10の内側面近傍における霧状塗料の巻き上げが抑えられ、従来より霧状塗料を内側面に付着し難くすることが可能になる。しかも、上述したように、塗装ブース10の内側面近傍のエアーの流下速度が、塗装ブース10の中央部におけるエアーの流下速度より速いので、霧状塗料が塗装ブース10の中央部から内側面側に近づくことを規制することができ、この点においても霧状塗料を塗装ブース10の内側面に付着し難くなる。
【0035】
また、台形送風部20の内部には、送風ダクト19の下端開口と対向する風圧規制盤25が設けられているので、塗装ブース10からのエアーによって台形送風部20の下面が受ける風圧(動圧)が抑えられる。これにより、台形送風部20からエアーの流量が主として台形送風部20内の内圧(静圧)によって制御することが可能になり、エアーの流量管理が容易になる。また、風圧規制盤25は、図4に示すようにトレイ構造をなしているので、送風ダクト19からのエアーが風圧規制盤25に衝突して勢いを保った状態で側方に流れることが規制され、エアー側方噴出部20Sに大きな風圧がかかることが防がれる。これにより、エアー側方噴出部20Sから流下するエアーの流量管理が容易になる。さらには、風圧規制盤25に備えた開度調整機構でスリット25Sの開度を変更して、エアー下方噴出部20Kから流下するエアーの流量を変更することもできる。
【0036】
[第2実施形態]
本実施形態の塗装ブース10Vは、図7に示されており、上から順番に天井室50、塗装室51、床下室52、吸引室53を備えた階層構造をなしている。塗装室51と天井室50との間は天井パネル54で区画され、その天井パネル54は、メッシュ構造で板状の支持部材の上にフィルターマットを重ねてなる。また、塗装室51と床下室52との間は、スノコ板56によって区画され、床下室52と吸引室53との間は板部材57によって区画されている。その板部材57には複数のベンチュリー部58が取り付けられ、それらベンチュリー部58を介して床下室52と吸引室53とが連通している。また、板部材57の上面には水が張られている。そして、天井室50の側部に接続された送給ダクト55から天井室50内にエアーが供給されて天井パネル54全体から下方にエアーが噴出されると共に、吸引室53の側部に接続された吸引ダクト59からエアーが吸引され、塗装室51内で使用されなかった霧状塗料をエアーと共に下方に引き、板部材57上の水に衝突させて回収すると共に、ベンチュリー部58で発生させた霧状の水に吸収させて吸引室53側に回収する。
【0037】
さて、この塗装ブース10Vには、天井パネル54の外縁部に沿って複数のエアー側方噴出ノズル60(本発明の「エアー側方噴出部」に相当する)が備えられている。それらエアー側方噴出ノズル60は、天井パネル54全体から流下するエアーより高い流速で、塗装ブース10Vの内側面に向けて斜め下方にエアーを噴出するようになっている。これにより、塗装ブース10Vの内側面伝いに流下する気流を強制的に発生させて、塗装ブース10Vの内側面に霧状塗料が付着することを規制している。
【0038】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0039】
(1)前記実施形態の塗装ブース10は、塗装ロボット11が1台のみ収容されていたが、例えば、複数の塗装ロボットを並べて塗装ラインを構成し、その塗装ラインに合わせて長く延びた塗装ブースに本発明を適用してもよい。
【0040】
(2)なお、前記実施形態の流水盤30は、鉛直方向に対して傾斜していたが、流水盤が鉛直方向に対して平行になるように配置され、その流水盤伝いに水が流される構成にしてもよい。また、図8に示した流水盤30Wのように、横方向に延びた複数の帯板53が上下に並べられると共に、各帯板53の上縁部が、それら各帯板53の上隣の帯板53の下縁部によって塗装処理領域側から覆われた、所謂、ブラインド構造のものを使用して、帯板53,53同士の間の隙間から吸気室側にエアーを吸引する構成としてもよい。このような構成とすれば、帯板53,53間を水が通過する際にエアーと水とが容易に接触し、塗料を効率良く回収することができる。
【符号の説明】
【0041】
10,10V 塗装ブース
14 第1側壁
15 第2側壁
17 第3側壁
18 上壁(天井部)
20 台形送風部
20H 骨組部(支持部材)
20S エアー側方噴出部
23 ネット(支持部材)
24 フィルターマット
25 風圧規制盤
25S スリット(貫通路)
60 エアー側方噴出ノズル(エアー側方噴出部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8