特開2017-65862(P2017-65862A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 村田機械株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2017065862-糸巻取機 図000003
  • 特開2017065862-糸巻取機 図000004
  • 特開2017065862-糸巻取機 図000005
  • 特開2017065862-糸巻取機 図000006
  • 特開2017065862-糸巻取機 図000007
  • 特開2017065862-糸巻取機 図000008
  • 特開2017065862-糸巻取機 図000009
  • 特開2017065862-糸巻取機 図000010
  • 特開2017065862-糸巻取機 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-65862(P2017-65862A)
(43)【公開日】2017年4月6日
(54)【発明の名称】糸巻取機
(51)【国際特許分類】
   B65H 54/70 20060101AFI20170317BHJP
   D01H 1/36 20060101ALI20170317BHJP
   B65H 63/04 20060101ALI20170317BHJP
【FI】
   B65H54/70 B
   D01H1/36 D
   B65H63/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-192562(P2015-192562)
(22)【出願日】2015年9月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】豊田 貴大
【テーマコード(参考)】
3F115
4L056
【Fターム(参考)】
3F115CA24
3F115CB02
3F115CD05
3F115CE08
4L056CB04
4L056EB13
4L056EB18
4L056FB08
(57)【要約】
【課題】巻取ドラムに巻き付いた糸を解舒することが可能であるとともに、パッケージを無駄に回転させることを防止した糸巻取機を提供する。
【解決手段】糸巻取機は、巻取ドラムと、パッケージ保持部と、制御部と、を備える。巻取ドラムは、パッケージに接触して回転することによりパッケージを巻取方向に回転駆動する。パッケージ保持部は、パッケージを回転可能に保持する。制御部は、パッケージと巻取ドラムが非接触の状態において、初めに巻取方向にパッケージを回転駆動し、次に巻取方向とは反対方向に当該パッケージを回転駆動する第1制御と、初めに反対方向に当該パッケージを回転駆動する第2制御と、の何れかを選択して行う。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージに接触して回転することにより前記パッケージを巻取方向に回転駆動する巻取ドラムと、
前記パッケージを回転可能に保持するパッケージ保持部と、
前記パッケージと前記巻取ドラムが非接触の状態において、初めに前記巻取方向に前記パッケージを回転駆動し、次に前記巻取方向とは反対方向に当該パッケージを回転駆動する第1制御と、初めに前記反対方向に前記パッケージを回転駆動する第2制御と、の何れかを選択して行う制御部と、を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項2】
請求項1に記載の糸巻取機であって、
前記制御部は、前記パッケージの重さ又は当該重さに関連する値と、前記パッケージと前記巻取ドラムが非接触となった時から前記第1制御又は前記第2制御を開始するまでの時間と、に基づいて、前記第1制御又は前記第2制御の何れかを選択することを特徴とする糸巻取機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の糸巻取機であって、
前記制御部は、前記パッケージの重さ又は当該重さに関連する値と、前記パッケージの巻取速度と、に基づいて、前記巻取ドラムと非接触となった時から前記パッケージの慣性回転が終了するまでの時間である終了時間を求め、当該終了時間に基づいて、前記第1制御又は前記第2制御の何れかを選択することを特徴とする糸巻取機。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記パッケージに巻き取られる糸を供給する給糸装置と、
前記給糸装置と前記パッケージとの間で糸が分断状態となった場合に、前記給糸装置からの糸と、前記パッケージからの糸と、を継ぐ糸継動作を行う糸継装置と、
を備え、
前記制御部は、糸が分断状態となった後であって、前記糸継装置により糸継動作が行われる前に、前記第1制御又は前記第2制御を行うことを特徴とする糸巻取機。
【請求項5】
請求項1から4までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記パッケージと前記巻取ドラムが非接触となった後に、前記パッケージと前記巻取ドラムが非接触の状態で、当該パッケージを前記巻取方向及び前記反対方向に回転駆動することが可能な回転ローラを備え、
前記制御部は、前記回転ローラを制御することで、前記第1制御又は前記第2制御を行うことを特徴とする糸巻取機。
【請求項6】
パッケージに接触して回転することにより前記パッケージを巻取方向に回転駆動する巻取ドラムと、前記パッケージを回転可能に保持するパッケージ保持部と、をそれぞれが少なくとも備える複数の巻取ユニットと、
前記パッケージと前記巻取ドラムが非接触の状態で、初めに前記巻取方向に前記パッケージを回転駆動し、次に前記巻取方向とは反対方向に当該パッケージを回転駆動する第1制御と、初めに前記反対方向に当該パッケージを回転駆動する第2制御と、の何れかを選択して行う制御部と、
複数の前記巻取ユニットに対して移動可能であり、前記制御部の制御に基づいて、前記パッケージを前記巻取方向又は前記反対方向に回転駆動する作業台車と、
を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項7】
請求項6に記載の糸巻取機であって、
前記制御部は、パッケージの重さ又は当該重さに関連する値と、所定の前記巻取ユニットで前記パッケージと前記巻取ドラムが非接触となった時から前記作業台車が当該巻取ユニットに到着するまでの時間である到着時間と、に基づいて、前記第1制御又は前記第2制御の何れかを選択することを特徴とする糸巻取機。
【請求項8】
請求項6又は7に記載の糸巻取機であって、
所定の前記巻取ユニットで前記パッケージと前記巻取ドラムが非接触の状態において、前記制御部は、前記作業台車が当該巻取ユニットに到着した時に、当該巻取ユニットで前記パッケージが回転している場合は前記第1制御を選択し、当該巻取ユニットで前記パッケージの回転が停止している場合は前記第2制御を選択することを特徴とする糸巻取機。
【請求項9】
請求項6から8までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記制御部は、前記パッケージの重さ又は当該重さに関連する値と、前記パッケージと前記巻取ドラムが非接触となった時から前記第1制御又は前記第2制御を開始するまでの時間と、に基づいて、前記第1制御又は前記第2制御の何れかを選択することを特徴とする糸巻取機。
【請求項10】
請求項6から9までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記制御部は、前記パッケージの重さ又は当該重さに関連する値と、前記パッケージの巻取速度と、に基づいて、前記巻取ドラムと非接触となった時から前記パッケージの慣性回転が終了するまでの時間である終了時間を求め、当該終了時間に基づいて、前記第1制御又は前記第2制御の何れかを選択することを特徴とする糸巻取機。
【請求項11】
請求項6から10までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記複数の巻取ユニットのそれぞれは、前記パッケージに巻き取られる糸を供給する給糸装置を備え、
前記作業台車は、前記複数の巻取ユニットの1つにおいて、前記給糸装置と前記パッケージとの間で糸が分断状態となった場合に、前記給糸装置からの糸と、前記パッケージからの糸と、を継ぐ糸継動作を行う糸継装置を備え、
前記制御部は、前記複数の巻取ユニットの1つにおいて糸が分断状態となった後であって、前記糸継装置により糸継動作が行われる前に、前記第1制御又は前記第2制御を行うことを特徴とする糸巻取機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、パッケージを逆回転させる構成を有する糸巻取機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、複数の紡績ユニットと、紡績ユニットに対して走行可能な作業台車と、を備えた糸巻取機を開示する。紡績ユニットは、パッケージを回転させる駆動ローラ(巻取ドラム)と、パッケージを保持するクレードル(パッケージ保持部)と、を備える。
【0003】
何らかの理由により糸が分断状態となった場合、紡績ユニットは、巻取ドラムからパッケージを離間させる。巻取ドラムからパッケージを離間させた後においても、しばらくの間は、慣性力によってパッケージは回転を続ける。作業台車は、糸が分断状態となった紡績ユニットまで走行し、プレート(制動部)をパッケージに接触させることで当該パッケージの回転を停止させる。その後、作業台車は、パッケージからの糸と紡績装置からの糸とを捕捉し、これらの糸を継ぐ。作業台車は、パッケージからの糸を捕捉して引き出す際にパッケージを逆回転させる逆回転ローラを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−67484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
巻取ドラムからパッケージを離間させた場合、糸端を含む糸は通常はパッケージに巻き取られる。しかし、状況によっては、糸がパッケージに巻き取られずに巻取ドラムに巻き付いてしまうことがある。
【0006】
巻取ドラムに糸が巻き付いている場合、パッケージを巻取方向に回転することで、駆動ローラから糸を解舒することができる。しかし、パッケージを巻取方向に回転させる動作を毎回行う場合、駆動ローラに糸が巻き付いていないときは、パッケージを無駄に回転させることとなる。
【0007】
本発明の主要な目的は、仮に巻取ドラムに糸が巻き付いていたとしても、当該糸を巻き取りドラムから解舒することが可能であるとともに、パッケージを無駄に回転させることを防止した糸巻取機を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の観点によれば、糸巻取機は、巻取ドラムと、パッケージ保持部と、制御部と、を備える。前記巻取ドラムは、パッケージに接触して回転することにより前記パッケージを巻取方向に回転駆動する。前記パッケージ保持部は、前記パッケージを回転可能に保持する。前記制御部は、前記パッケージと前記巻取ドラムが非接触の状態において、初めに前記巻取方向に前記パッケージを回転駆動し、次に前記巻取方向とは反対方向に当該パッケージを回転駆動する第1制御と、初めに前記反対方向に前記パッケージを回転駆動する第2制御と、の何れかを選択して行う。
【0009】
これにより、第1制御を行うことで、仮に巻取ドラムに糸が巻き付いていたとしても、巻取ドラムから糸を解舒した後に、パッケージを反対方向に回転(以下、逆回転)させることができる。巻取ドラムへの糸の巻付きが発生している可能性が低い場合は、第2制御を行うことで、パッケージを無駄に巻取方向に回転(以下、正回転)させることなく、パッケージを逆回転させることができる。
【0010】
前記の糸巻取機において、前記制御部は、前記パッケージの重さ又は当該重さに関連する値と、前記パッケージと前記巻取ドラムが非接触となった時から前記第1制御又は前記第2制御を開始するまでの時間と、に基づいて、前記第1制御又は前記第2制御の何れかを選択する。
【0011】
一般的に、パッケージが重くなるに連れてパッケージの慣性回転力が大きくなるため、パッケージの巻取方向への回転が停止するまでの時間が長くなる。パッケージが回転している間はパッケージに糸が巻き取られるため、巻取ドラムへの糸の巻付きが生じにくい。従って、パッケージの重さ又は当該重さに関連する値に基づいて、巻取ドラムへの糸の巻付きが生じるタイミングを予測することができる。そのため、第1制御又は第2制御の何れを行うかについて的確な選択を行うことができる。
【0012】
前記の糸巻取機において、前記制御部は、前記パッケージの重さ又は当該重さに関連する値と、前記パッケージの巻取速度と、に基づいて、前記巻取ドラムと非接触となった時から前記パッケージの慣性回転が終了するまでの時間である終了時間を求め、当該終了時間に基づいて、前記第1制御又は前記第2制御の何れかを行うかを選択する。
【0013】
これにより、パッケージの巻取速度に基づいて、パッケージの慣性回転が終了する終了時間をより正確に求めることができる。従って、第1制御又は第2制御の何れを行うかについて一層的確な選択を行うことができる。
【0014】
前記の糸巻取機は、給糸装置と、糸継装置と、を備える。前記給糸装置は、前記パッケージに巻き取られる糸を供給する。前記糸継装置は、前記給糸装置と前記パッケージとの間で糸が分断状態となった場合に、前記給糸装置からの糸と、前記パッケージからの糸と、を継ぐ糸継動作を行う。前記制御部は、糸が分断状態となった後であって、前記糸継装置により糸継動作が行われる前に、前記第1制御又は前記第2制御を行う。
【0015】
これにより、第1制御又は第2制御を行ってパッケージを逆回転させることで、パッケージから糸を引き出すことができるので、分断された糸同士を継ぐことができる。
【0016】
前記の糸巻取機において、糸巻取機は、前記パッケージと前記巻取ドラムが非接触となった後に、前記パッケージと前記巻取ドラムが非接触の状態で、当該パッケージを前記巻取方向及び前記反対方向に回転駆動することが可能な回転ローラを備える。前記制御部は、前記回転ローラを制御することで、前記第1制御又は前記第2制御を行う。
【0017】
これにより、1つの回転ローラでパッケージを正回転及び逆回転させることができるので、第1制御をスムーズに行うことができる。
【0018】
本発明の別の観点によれば、糸巻取機は、複数の巻取ユニットと、制御部と、作業台車と、を備える。前記巻取ユニットは、パッケージに接触して回転することにより前記パッケージを巻取方向に回転駆動する巻取ドラムと、前記パッケージを回転可能に保持するパッケージ保持部と、をそれぞれが少なくとも備える。前記制御部は、前記パッケージと前記巻取ドラムが非接触の状態で、初めに前記巻取方向に前記パッケージを回転駆動し、次に前記巻取方向とは反対方向に当該パッケージを回転駆動する第1制御と、初めに前記反対方向に当該パッケージを回転駆動する第2制御と、の何れかを選択して行う。前記作業台車は、複数の前記巻取ユニットに対して移動可能であり、前記制御部の制御に基づいて、前記パッケージを前記巻取方向又は前記反対方向に回転駆動する。
【0019】
これにより、第1制御を行うことで、仮に巻取ドラムに糸が巻き付いていたとしても、巻取ドラムから糸を解舒した後に、パッケージを逆回転させることができる。巻取ドラムへの糸の巻付きが発生する可能性が低い場合は、第2制御を行うことで、パッケージを無駄に正回転させることなく、パッケージを逆回転させることができる。
【0020】
前記の糸巻取機は、パッケージの重さ又は当該重さに関連する値と、所定の前記巻取ユニットで前記パッケージと前記巻取ドラムが非接触となった時から前記作業台車が当該巻取ユニットに到着するまでの時間である到着時間と、に基づいて、前記第1制御又は前記第2制御の何れかを選択する。
【0021】
これにより、作業台車が到着した際にパッケージが回転し続けているか否かを予測することができるので、第1制御又は第2制御の何れを行うかについて的確な選択を行うことができる。
【0022】
前記の糸巻取機において、所定の前記巻取ユニットで前記パッケージと前記巻取ドラムが非接触の状態において、前記制御部は、前記作業台車が当該巻取ユニットに到着した時に、当該巻取ユニットで前記パッケージが回転している場合は前記第1制御を選択し、当該巻取ユニットで前記パッケージの回転が停止している場合は前記第2制御を選択する。
【0023】
これにより、作業台車が到着した時にパッケージが回転しているか否かに基づいて、第1制御又は第2制御の何れを行うかについて的確な選択を行うことができる。
【0024】
前記の糸巻取機において、前記制御部は、前記パッケージの重さ又は当該重さに関連する値と、前記パッケージと前記巻取ドラムが非接触となった時から前記第1制御又は前記第2制御を開始するまでの時間と、に基づいて、前記第1制御又は前記第2制御の何れかを選択する。
【0025】
これにより、パッケージの重さ又は当該重さに関連する値に基づいて、巻取ドラムへの糸の巻付きが生じるタイミングを予測することができる。そのため、第1制御又は第2制御の何れを行うかについて的確な選択を行うことができる。
【0026】
前記の糸巻取機において、前記制御部は、前記パッケージの重さ又は当該重さに関連する値と、前記パッケージの巻取速度と、に基づいて、前記巻取ドラムと非接触となった時から前記パッケージの慣性回転が終了するまでの時間である終了時間を求め、当該終了時間に基づいて、前記第1制御又は前記第2制御の何れかを選択する。
【0027】
これにより、パッケージの巻取速度に基づいて、パッケージの慣性回転が終了する終了時間をより正確に求めることができる。従って、第1制御又は第2制御の何れを行うかについて一層的確な選択を行うことができる。
【0028】
前記の糸巻取機において、前記複数の巻取ユニットのそれぞれは、前記パッケージに巻き取られる糸を供給する給糸装置を備える。前記作業台車は、前記複数の巻取ユニットの1つにおいて、前記給糸装置と前記パッケージとの間で糸が分断状態となった場合に、前記給糸装置からの糸と、前記パッケージからの糸と、を継ぐ糸継動作を行う糸継装置を備える。前記制御部は、前記複数の巻取ユニットの1つにおいて糸が分断状態となった後であって、前記糸継装置により糸継動作が行われる前に、前記第1制御又は前記第2制御を行う。
【0029】
これにより、第1制御又は第2制御を行ってパッケージを逆回転させることで、パッケージから糸を引き出すことができるので、分断された糸同士を継ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明の一実施形態に係る精紡機の全体的な構成を示す正面図。
図2】紡績ユニットの側面図。
図3】紡績糸が分断状態となった場合に台車制御部が行う制御を示すフローチャート。
図4】パッケージの慣性回転が終了するまでの時間とパッケージのエネルギーの関係を示すグラフ。
図5】紡績糸が分断状態となった直後の様子を示す側面図。
図6】制動部材をパッケージに接触させている様子を示す側面図。
図7】逆回転ローラによってパッケージを正回転させる様子を示す側面図。
図8】逆回転ローラによってパッケージを逆回転させながらパッケージからの糸を引き出す様子を示す側面図。
図9】糸継台車が紡績糸の糸端を糸継装置に案内する様子を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、本発明の一実施形態に係る精紡機(糸巻取機)について、図面を参照して説明する。図1に示す糸巻取機としての精紡機1は、並べて配置された複数の紡績ユニット(巻取ユニット)2と、糸継台車(作業台車)3と、ブロアボックス80と、原動機ボックス5と、を備えている。精紡機1は、機台制御装置4によって制御されている。精紡機1は、1台の糸継台車3を備えるが、複数台の糸継台車3を備えていても良い。
【0032】
図1に示すように、各紡績ユニット2は、上流から下流へ向かって順に配置された、ドラフト装置7と、紡績装置(給糸装置)9と、糸貯留装置12と、巻取装置13と、を備えている。図2に示すユニットコントローラ50は、所定数(2以上)の紡績ユニット2毎に設けられている。ユニットコントローラ50は、1つの紡績ユニット2毎に設けられていても良い。図1及び図2の説明において「上流」及び「下流」とは、紡績時でのスライバ15、繊維束8及び紡績糸10の走行(搬送)方向における上流及び下流を意味する。
【0033】
ドラフト装置7は、精紡機1が備えるフレーム6の上端近傍に設けられている。ドラフト装置7は、上流側から順に、バックローラ対16、サードローラ対17、ミドルローラ対19、及びフロントローラ対20の4つのローラ対を備えている。ミドルローラ対19には、エプロンベルト18が各ローラに対して設けられている。ドラフト装置7は、図略のスライバケースから供給されるスライバ15を、所定の太さになるまでドラフトする。ドラフト装置7でドラフトされた繊維束8は、紡績装置9に供給される。
【0034】
紡績装置9は、繊維束8を挿通させることが可能な旋回流発生室(図略)を備える。紡績装置9は、旋回流発生室の内部に図略のノズルから圧縮空気を噴射することにより、当該旋回流発生室内に旋回流を発生させる。紡績装置9は、旋回流によって繊維束8に撚りを与えて紡績糸10を生成する。
【0035】
紡績装置9の下流には、糸貯留装置12が設けられている。糸貯留装置12は、図2に示すように、糸貯留ローラ14と、当該糸貯留ローラ14を回転駆動するモータ25と、を備えている。
【0036】
糸貯留ローラ14は、その外周面に一定量の紡績糸10を巻き付けて一時的に貯留する。糸貯留ローラ14は、外周面に紡績糸10を巻き付けた状態で所定の回転速度で回転することにより、紡績装置9から紡績糸10を所定の速度で引き出して下流側に搬送する。糸貯留装置12は、糸貯留ローラ14の外周面に紡績糸10を一時的に貯留することができるので、一種のバッファとして機能する。これにより、紡績装置9における紡績速度と、巻取速度(パッケージ45へ巻き取られる紡績糸10の走行速度)と、が何らかの理由により一致しない不具合(例えば紡績糸10の弛み等)を解消することができる。
【0037】
紡績装置9と糸貯留装置12との間には、ヤーンクリアラ59が設けられている。紡績装置9で生成された紡績糸10は、糸貯留装置12で巻き取られる前にヤーンクリアラ59を通過する。ヤーンクリアラ59は走行する紡績糸10の太さ及び/又は異物の混入を監視する。ヤーンクリアラ59は、紡績糸10の糸欠陥を検出した場合、ユニットコントローラ50へ糸欠陥検出信号を送信する。
【0038】
ユニットコントローラ50は、ヤーンクリアラ59から糸欠陥検出信号を受信すると、紡績装置9の駆動を停止させて紡績糸10を切断させ、巻取装置13による巻取り等を停止させる。ユニットコントローラ50は、糸継台車3を制御する台車制御部(制御部)70に制御信号を送る。台車制御部70は、糸継台車3を当該紡績ユニット2まで走行(移動)させる。その後、ユニットコントローラ50は、糸継台車3による糸継動作の完了後、紡績装置9を再び駆動し、巻取装置13による巻取りを再開させる。
【0039】
巻取装置13は、クレードルアーム(パッケージ保持部)71と、巻取ドラム72と、トラバースガイド76と、を備えている。クレードルアーム71は、支軸73まわりに揺動可能に支持されており、紡績糸10を巻き取るためのボビン48(即ちパッケージ45)を回転可能に支持することができる。巻取ドラム72は、前記ボビン48又はパッケージ45の外周面に接触した状態で回転することでパッケージ45を巻取方向に回転駆動する。巻取装置13は、トラバースガイド76を図略の駆動手段によって往復動させながら巻取ドラム72を図略の電動モータによって駆動する。これにより、紡績糸10を綾振りしつつ、紡績糸10をパッケージ45に巻き取る。
【0040】
糸継台車3は、図1及び図2に示すように、糸継装置43と、サクションパイプ44と、サクションマウス46と、逆回転駆動機構49と、制動部材95と、を備えている。逆回転駆動機構49は、糸継台車3から巻取装置13に対して進退可能に構成された支持アーム91と、この支持アーム91の先端に支持された逆回転ローラ(回転ローラ)92と、を備える。糸継台車3が備える各部は台車制御部70によって制御されている。紡績装置9とパッケージ45との間で紡績糸10が分断状態となった場合に糸継台車3が行う処理の詳細は後述する。
【0041】
次に、図3から図9までを参照して、1つの紡績ユニット2で紡績糸10が分断状態となった場合に精紡機1が行う処理について説明する。
【0042】
ユニットコントローラ50は、ヤーンクリアラ59の検出結果に基づき紡績糸10の異常を検出すると、紡績装置9を停止させて紡績糸10を切断する(図5を参照)。これにより、紡績ユニット2において紡績糸10が分断状態となる。ユニットコントローラ50は、ドラフト装置7によるドラフトも停止させる。
【0043】
更に、ユニットコントローラ50は、巻取装置13における巻取りを停止させる。具体的には、クレードルアーム71が図略のシリンダによって傾けられることにより、回転している巻取ドラム72からパッケージ45が離れて非接触となる(図6を参照)。パッケージ45は、巻取ドラム72に対して非接触となった後においても、慣性力によって回転を続ける(以下、慣性回転)。
【0044】
切断された箇所よりも下流側の紡績糸10は、糸貯留装置12を経由して、パッケージ45にいったん巻き取られる。このときパッケージ45に巻き取られる紡績糸10には、ヤーンクリアラ59で検出された異常箇所が含まれている。紡績糸10は、全ての部分がパッケージ45の表面に巻き付く(貼り付く)とは限られず、糸端を含む一部の部分がパッケージ45の表面に巻き付かない場合もある(図6を参照)。この場合、パッケージ45が慣性回転を続けている間は、紡績糸10が巻取ドラム72の表面に接触した場合でも、巻取ドラム72への紡績糸10の巻付きは生じない。しかし、パッケージ45の慣性回転が終了してパッケージ45の回転が停止すると、パッケージ45に巻き付いていない紡績糸10が巻取ドラム72に巻き付く可能性がある。
【0045】
ユニットコントローラ50は、台車制御部70に対して、ある紡績ユニット2で紡績糸10が分断状態となったことを通知する。台車制御部70は、紡績糸10が分断状態となったことの通知を受けると(図3のS101)、糸継台車3をレール41に沿って当該紡績ユニット2まで走行させて停止させる(S102)。次に、台車制御部70は、制動部材95を巻取装置13に向けて移動させて、制動部材95をパッケージ45に接触させる(S103)。これにより、パッケージ45の慣性回転を停止させることができる。
【0046】
制動部材95をパッケージ45に接触させるときには、既にパッケージ45の慣性回転が終了していることがある。本実施形態では、パッケージ45の慣性回転の終了の有無を問わず制動部材95をパッケージ45に接触させるが、パッケージ45が慣性回転していない場合は、制動部材95をパッケージ45に接触させる動作を省略しても良い。
【0047】
その後、台車制御部70は、制動部材95をパッケージ45から離間させて糸継台車3内の元の位置に戻す。次に、台車制御部70は、紡績ユニット2で巻取ドラム72とパッケージ45が非接触となった時からパッケージ45の慣性回転が自然に終了するまでの時間である終了時間を算出する(S104)。終了時間の算出は、更に早いタイミング(例えば紡績糸10が分断状態となった紡績ユニット2が台車制御部70に通知された直後)で行っても良い。
【0048】
慣性回転の終了時間は、図4に示す式(1)に基づいて算出される。具体的には、慣性回転の終了時間は、パッケージ45が有するエネルギーに比例する。パッケージ45が有するエネルギーは、重さ、及び、巻取速度(巻取方向の回転速度)の2乗に比例する。
【0049】
パッケージ45の重さは、ボビン48の重さと巻き取られた紡績糸10の重さとの和である。ボビン48の重さは既知であるため、例えば、ボビン48の重さを機台制御装置4等に入力して台車制御部70に記憶させておくことができる。ボビン48の重さは小さいので無視しても良い。巻き取られた紡績糸10の重さは、巻き取られた紡績糸10の長さと、紡績糸10の種類(太さ)と、に基づいて求められる。紡績糸10の長さは、ヤーンクリアラ59によって計測することができる。紡績糸10の種類は予め機台制御装置4等に設定されている。これにより、台車制御部70は、パッケージ45の重さ又は当該重さに関連する値を算出することができる。パッケージ45の重さ又は当該重さに関連する値の算出は、機台制御装置4又はユニットコントローラ50が行っても良い。この場合、台車制御部70は、機台制御装置4又はユニットコントローラ50から、パッケージ45の重さ又は当該重さに関連する値を受信する。
【0050】
精紡機1は予め設定した速度で紡績糸10を巻き取るため、機台制御装置4等に設定した巻取速度として設定した値を、終了時間を算出する際の参考値として用いることができる。精紡機1は、パッケージ45の巻取速度として設定した値を用いる構成に限られない。パッケージ45に巻き取られる紡績糸10の走行速度を検出する糸速度センサを各紡績ユニット2に設け、精紡機1はその検出値をパッケージ45の巻取速度として終了時間を算出する際の参考値として用いても良い。
【0051】
以上のように、台車制御部70は、パッケージ45の重さと巻取速度を算出することができるので、それら算出値に基づいて、慣性回転の終了時間を算出することができる。
【0052】
次に、台車制御部70は、ある紡績ユニット2でパッケージ45と巻取ドラム72が非接触となった時から糸継台車3が当該紡績ユニット2に到着するまでの時間である到着時間を計測又は算出する(S105)。台車制御部70は、ある紡績ユニット2で紡績糸10が分断状態となったことの通知を受けてから、糸継台車3が該当する紡績ユニット2に実際に到着するまでの時間の長さに基づいて、到着時間を計測できる。台車制御部70は、糸継台車3の現在位置から該当する紡績ユニット2での作業位置までの距離と、前記通知を受けてから糸継台車3が現在位置からの走行を開始するまでの時間(例えば、糸継台車3が別の紡績ユニット2に対して糸継動作を行っている場合、当該糸継動作が終わるまでの時間)と、に基づいて、到着時間を算出(予測)することができる。
【0053】
台車制御部70は、ステップS104で求めた終了時間が、ステップS105で求めた到着時間よりも短いか否かを判定する(S106)。台車制御部70は、終了時間が到着時間よりも短い場合、第1制御を選択する。台車制御部70は、終了時間が到着時間以上である場合、第2制御を選択する。以下、第1制御及び第2制御について詳細に説明する。
【0054】
終了時間が到着時間よりも短い場合、該当する紡績ユニット2に糸継台車3が到着した時に、パッケージ45の慣性回転が終了している。この場合、パッケージ45の表面に巻き付いていなかった紡績糸10が巻取ドラム72に巻き付いている可能性がある。従って、台車制御部70は、支持アーム91を巻取装置13に向けて進出させ、逆回転ローラ92をパッケージ45の外周面に接触させる。台車制御部70は、逆回転ローラ92とパッケージ45が接触している状態で、初めにパッケージ45が巻取方向に回転(正回転)するように逆回転ローラ92を駆動(正回転駆動)する(S107、図7を参照)。これにより、仮に巻取ドラム72に紡績糸10が巻き付いていたとしても、当該紡績糸10を巻取ドラム72から解舒することができる。次に、台車制御部70は、逆回転ローラ92をパッケージ45の外周面に接触させた状態で、パッケージ45が巻取方向とは反対方向に回転(逆回転)するように逆回転ローラ92を駆動(逆回転駆動)する(S107、図8を参照)。第1制御は、以上のようにして行われる。
【0055】
ステップS106の判断において、パッケージ45の径が大きい場合、パッケージ45が慣性回転する時間が長いため、紡績糸10の糸端がパッケージ45の表面に巻き取られている可能性が高い。しかし、パッケージ45の慣性回転が終了してからある程度時間が経過している場合、紡績糸10の糸端がパッケージ45から離れている可能性もある。従って、パッケージ45の径が大きい場合でも、パッケージ45を正回転駆動してから逆回転駆動する(第1制御を行う)。これにより、仮に巻取ドラム72に紡績糸10が巻き付いていたとしても、当該紡績糸10を巻取ドラム72から解舒することができる。
【0056】
終了時間が到着時間以上である場合、該当する紡績ユニット2に糸継台車3が到着した時に、パッケージ45の慣性回転が継続している。この場合、パッケージ45の表面に紡績糸10の糸端までが巻き取られていない場合であっても、当該紡績糸10は巻取ドラム72には巻き付いていない。従って、台車制御部70は、初めに(正回転駆動等をせずに)、パッケージ45を逆回転駆動するように逆回転ローラ92を制御する(S108、図8を参照)。第2制御は、以上のようにして行われる。
【0057】
糸継台車3は、到着時間が経過した後に第1制御又は第2制御を行うため、到着時間は、「パッケージ45と巻取ドラム72が非接触となった時から第1制御又は第2制御を開始するまでの時間」に該当する。なお、到着時間に、「糸継台車3が到着してから制動部材95がパッケージ45に接触するまでの時間」を加えて「パッケージ45と巻取ドラム72が非接触となった時から第1制御又は第2制御を開始するまでの時間」としても良い。
【0058】
台車制御部70は、第1制御又は第2制御を行う前後において、サクションパイプ44を上方向に回動させた後に吸引流を発生させる。これと同時に、ユニットコントローラ50は、ドラフト装置7及び紡績装置9の駆動を再開する。これにより、サクションパイプ44は、紡績装置9から送出される紡績糸10を捕捉することができる。台車制御部70は、第1制御又は第2制御を行う前後において、サクションマウス46を下方向に回動させた後に吸引流を発生させる。これにより、サクションマウス46は、パッケージ45からの紡績糸10を捕捉することができる。
【0059】
次に、台車制御部70は、紡績装置9から送出される紡績糸10を吸引させたまま、サクションパイプ44を下方に回動させて、紡績糸10を糸継装置43に案内させる(図9を参照)。台車制御部70は、パッケージ45から吸引した紡績糸10を吸引させたまま、サクションマウス46を上方に回動させて、紡績糸10を糸継装置43に案内させる(図9を参照)。パッケージ45は、逆回転ローラ92によって逆回転させられているため、サクションマウス46は、パッケージ45から紡績糸10を引き出しつつ、上方に回動できる。糸継装置43は、このようにして案内された紡績装置9からの紡績糸10と、パッケージ45からの紡績糸10と、を継ぐ(糸継動作、S109)。
【0060】
その後、傾けられていたクレードルアーム71が元に戻されることにより、パッケージ45が巻取ドラム72に接触し、パッケージ45への紡績糸10の巻取りが再開される(図2を参照)。
【0061】
以上に説明したように、精紡機1は、巻取ドラム72と、クレードルアーム71と、台車制御部70と、を備える。巻取ドラム72は、パッケージ45に接触して回転することによりパッケージ45を正回転駆動する。クレードルアーム71は、パッケージ45を回転可能に保持する。台車制御部70は、パッケージ45と巻取ドラム72が非接触の状態において、初めにパッケージ45を正回転駆動し、次に逆回転駆動する第1制御と、初めにパッケージ45を(正回転駆動せずに)逆回転駆動する第2制御と、の何れかを選択して行う。
【0062】
これにより、第1制御を行うことで、仮に巻取ドラム72に紡績糸10が巻き付いていたとしても、巻取ドラム72から紡績糸10を解舒した後に、パッケージ45を逆回転させることができる。巻取ドラム72への紡績糸10の巻付きが発生している可能性が低い場合は、第2制御を行うことで、パッケージ45を無駄に正回転させることなく、パッケージ45を逆回転させることができる。その結果、パッケージ45の巻取りが中断している時間を短縮することができ、紡績ユニット2の運転効率を向上することができる。
【0063】
本実施形態の精紡機1において、台車制御部70は、パッケージ45の重さ又は当該重さに関連する値と、パッケージ45と巻取ドラム72が非接触となった時から第1制御又は第2制御を開始するまでの時間と、に基づいて、第1制御又は第2制御の何れかを選択する。
【0064】
一般的に、パッケージ45が重くなるに連れてパッケージ45の慣性回転力が大きくなるため、パッケージ45の回転が停止するまでの時間が長くなる。パッケージ45が回転している間はパッケージ45に紡績糸10が巻き取られているため、巻取ドラム72への紡績糸10の巻付きが生じにくい。従って、パッケージ45の重さ又は当該重さに関連する値に基づいて、巻取ドラム72への紡績糸10の巻付きが生じるタイミングを予測することができる。そのため、第1制御又は第2制御の何れを行うかについて的確な選択を行うことができる。
【0065】
本実施形態の精紡機1において、台車制御部70は、パッケージ45の重さ又は当該重さに関連する値と、パッケージ45の巻取速度と、に基づいて、巻取ドラム72と非接触となった時からパッケージ45の慣性回転が終了するまでの時間である終了時間を求め、当該終了時間に基づいて、第1制御又は第2制御の何れかを行うかを選択する。
【0066】
これにより、パッケージ45の巻取速度に基づいて、巻取ドラム72と非接触となった時からパッケージ45の慣性回転が終了するまでの終了時間をより正確に求めることができる。従って、第1制御又は第2制御の何れを行うかについて一層的確な選択を行うことができる。
【0067】
本実施形態の精紡機1は、紡績装置9と、糸継装置43と、を備える。紡績装置9は、パッケージ45に巻き取られる紡績糸10を供給する。糸継装置43は、紡績装置9とパッケージ45との間で紡績糸10が分断状態となった場合に、紡績装置9からの紡績糸10と、パッケージ45からの紡績糸10と、を継ぐ糸継動作を行う。台車制御部70は、紡績糸10が分断状態となった後であって、糸継装置43により糸継動作が行われる前に、第1制御又は第2制御を行う。
【0068】
これにより、第1制御又は第2制御を行ってパッケージ45を逆回転させることで、パッケージ45から紡績糸10を引き出すことができるので、分断された紡績糸10同士を継ぐことができる。
【0069】
本実施形態の精紡機1において、精紡機1は、パッケージ45と巻取ドラム72が非接触となった後に、当該パッケージ45を巻取方向及び反対方向に回転駆動することが可能な逆回転ローラ92を備える。台車制御部70は、逆回転ローラ92を制御することで、第1制御又は第2制御を行う。
【0070】
これにより、1つの逆回転ローラ92で巻取方向及び反対方向にパッケージ45を回転させることができるので、第1制御をスムーズに行うことができる。
【0071】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0072】
上記実施形態では、1つの逆回転ローラ92でパッケージ45を正回転及び逆回転させているが、パッケージ45を正回転させる回転ローラと、パッケージ45を逆回転させるローラと、を別々に設けても良い。
【0073】
上記実施形態では、慣性回転の終了時間を算出しているが、パッケージ45等の回転を検出する回転センサを設け、当該回転センサの検出結果に応じて慣性回転の終了の有無を判定しても良い。この場合、台車制御部70は、糸継台車3が該当する紡績ユニット2に到着した時に、慣性回転の終了の有無を判定し、慣性回転が終了していた場合は第1制御を行い、慣性回転が終了していなかった場合は第2制御を行う。
【0074】
上記実施形態では、「終了時間」、「到着時間」、「第1制御又は第2制御を開始するまでの時間」の開始時点を「パッケージ45と巻取ドラム72が非接触となった時」としているが、「ヤーンクリアラ59からの糸欠陥検出信号を受け付けた時点」であっても良い。
【0075】
上記実施形態では、図3のフローチャートを用いて台車制御部70が行う制御を説明したが、フローチャートの処理の順序は例であり、処理の順序を変更したり、複数の処理を同時に行ったりしても良い。例えば、終了時間及び到着時間を算出する処理(S103及びS104)は、糸継台車3が該当する紡績ユニット2に到着する前に行っても良い。図3では、サクションパイプ44及びサクションマウス46に関する処理については省略しているが、当該処理は、第1制御又は第2制御の前に行っても良いし、後で行っても良い。例えば、第1制御において、パッケージ45を正回転させている間に、サクションマウス46に吸引流を発生させても良い。
【0076】
上記実施形態では、糸継台車3を制御する台車制御部70が第1制御又は第2制御を行うが、機台制御装置4又はユニットコントローラ50が第1制御又は第2制御を行っても良い。上記実施形態では、図3に示す制御の全ての処理を台車制御部70が行うものとして説明したが、複数の処理の全て又は一部を機台制御装置4及び/又はユニットコントローラ50が行うようにしても良い。機台制御装置4と、ユニットコントローラ50と、台車制御部70と、により、図3に示す制御の処理を行っても良い。
【0077】
上記実施形態では、パッケージ45に巻き取った紡績糸10の長さに基づいてパッケージ45の重さを算出している。しかし、パッケージ45の半径、直径、又は糸層の厚さ等の重さに関連する値を計測又は検出し、計測結果又は検出結果に応じてパッケージ45の重さを算出しても良い。
【0078】
上記実施形態では、パッケージ45を巻取ドラム72から離間させることでパッケージ45と巻取ドラム72とを非接触としているが、巻取ドラム72をパッケージ45から離間させることで非接触としても良い。
【0079】
上記実施形態では、紡績装置9を停止させることで紡績糸10を切断するが、紡績ユニット2にカッタを設け、カッタにより紡績糸10を切断しても良い。
【0080】
上記実施形態で説明したヤーンクリアラ59に加えて、又は代えて、紡績糸10のテンションを測定することにより紡績糸10の糸欠陥を検出するテンションセンサが紡績ユニット2に設けられていても良い。
【0081】
上記実施形態では、逆回転ローラ92が糸継台車3に設けられているが、別の機能を有する台車に逆回転ローラ92が設けられていても良い。逆回転ローラ92は、台車に限られず、各紡績ユニット2に設けられていても良い。
【0082】
本発明の構成は上記のような精紡機に限られず、例えばオープンエンド精紡機、自動ワインダ、撚糸機、合糸機等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1 精紡機(糸巻取機)
2 紡績ユニット
9 紡績装置(給糸装置)
10 紡績糸
43 糸継装置
45 パッケージ
70 台車制御部(制御部)
71 クレードルアーム(パッケージ保持部)
72 巻取ドラム
92 逆回転ローラ(回転ローラ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9