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特開2017-65871糸張力付与部材、ゲート式糸張力付与装置、及び自動ワインダ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-65871(P2017-65871A)
(43)【公開日】2017年4月6日
(54)【発明の名称】糸張力付与部材、ゲート式糸張力付与装置、及び自動ワインダ
(51)【国際特許分類】
   B65H 59/28 20060101AFI20170317BHJP
   B65H 57/04 20060101ALI20170317BHJP
【FI】
   B65H59/28
   B65H57/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-193138(P2015-193138)
(22)【出願日】2015年9月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
【テーマコード(参考)】
3F110
3F111
【Fターム(参考)】
3F110AA01
3F110DA03
3F110DB04
3F110DB11
3F110DB12
3F111CA11
(57)【要約】
【課題】糸張力付与部材の部品寿命を長くして、部品交換の頻度を少なく抑える。
【解決手段】固定櫛歯65は、第1ベース部81と、第1取付部82と、第1糸接触部84a及び第2糸接触部84bと、を備える。第1取付部82は、第1ベース部81の一側に設けられ、ゲート式糸張力付与装置の第1被取付部59に着脱可能である。第1糸接触部84a及び第2糸接触部84bは、第1ベース部81の他側に設けられ、糸に接触する。第1取付部82は、第1取付状態と、当該第1取付状態に対して向きを反転させた第2取付状態と、の何れかの状態で第1被取付部59に取付け可能に構成される。第1糸接触部84aは、第1取付状態において糸に接触する。第2糸接触部84bは、第2取付状態において糸に接触する。第1取付状態における第1糸接触部84aの形状及び位置は、第2取付状態における第2糸接触部84bの形状及び位置と一致する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート式糸張力付与装置に取り付けられて糸に張力を付与する糸張力付与部材において、
ベース部と、
当該ベース部の一側に設けられ、前記ゲート式糸張力付与装置に対して着脱可能な取付部と、
前記ベース部の他側に設けられ、糸に接触する第1糸接触部及び第2糸接触部と、
を備え、
前記取付部は、第1取付状態と、当該第1取付状態に対して向きを反転させた第2取付状態と、の何れかの状態で前記ゲート式糸張力付与装置に取付け可能に構成され、
前記第1糸接触部は、前記第1取付状態において糸に接触し、
前記第2糸接触部は、前記第2取付状態において糸に接触し、
前記第1取付状態における前記第1糸接触部の形状及び位置は、前記第2取付状態における前記第2糸接触部の形状及び位置と一致することを特徴とする糸張力付与部材。
【請求項2】
ゲート式糸張力付与装置に取り付けられて糸に張力を付与する糸張力付与部材において、
ベース部と、
当該ベース部の一側に設けられ、前記ゲート式糸張力付与装置に対して着脱可能な取付部と、
前記ベース部の他側から延びるように設けられる少なくとも1つの歯部と、
を備え、
前記歯部の一側には、糸に作用する凹状の第1糸作用部が形成され、
前記歯部の他側には、糸に作用する凹状の第2糸作用部が形成され、
前記取付部は、第1取付状態と、当該第1取付状態に対して向きを反転させた第2取付状態と、の何れかの状態で前記ゲート式糸張力付与装置に取付け可能に構成され、
前記第1糸作用部は、前記第1取付状態において糸に作用し、
前記第2糸作用部は、前記第2取付状態において糸に作用し、
前記第2取付状態においては、前記第1取付状態における前記第1糸作用部があった位置及び形状と同一となるように、前記第2糸作用部が配置されることを特徴とする糸張力付与部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の糸張力付与部材であって、
前記取付部が180°回転対称な形状に形成されていることを特徴とする糸張力付与部材。
【請求項4】
請求項2に記載の糸張力付与部材であって、
前記歯部は1つの前記ベース部に対して複数備えられ、
前記複数の歯部は、全体として180°回転対称に設けられていることを特徴とする糸張力付与部材。
【請求項5】
ゲート式糸張力付与装置に取り付けられて糸に張力を付与する糸張力付与部材において、
板状に形成されるベース部と、
当該ベース部の一側に突出して設けられる取付部と、を備え、
前記ベース部の他側には、曲線状に窪んだ凹部が形成され、
前記取付部及び前記凹部は、前記ベース部の一側から他側に向かう方向に延びる中心線に対して180°回転対称な形状に形成されていることを特徴とする糸張力付与部材。
【請求項6】
ゲート式糸張力付与装置に取り付けられて糸に張力を付与する糸張力付与部材において、
一方向に長いブロック状に形成されるベース部と、
当該ベース部の一側に突出して設けられる取付部と、
前記ベース部の他側に前記一方向に等間隔に設けられる複数の歯部と、
を備え、
それぞれの前記歯部は、前記ベース部の一側から他側に向かう方向に延びるように形成され、
それぞれの前記歯部の一側には、曲線状の凹状の第1糸作用部が形成され、
それぞれの前記歯部の他側には、曲線状の凹状の第2糸作用部が形成され、
前記取付部、前記第1糸作用部及び前記第2糸作用部は、前記ベース部の一側から他側に向かう方向に延びる中心線に対して180°回転対称な形状に形成されている
ことを特徴とする糸張力付与部材。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の糸張力付与部材であって、当該糸張力付与部材はセラミック製であることを特徴とする糸張力付与部材。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の糸張力付与部材を備え、前記糸を前記糸張力付与部材に接触させることにより屈曲させて張力を付与することを特徴とするゲート式糸張力付与装置。
【請求項9】
請求項8に記載のゲート式糸張力付与装置であって、
請求項1に記載の糸張力付与部材である第1糸張力付与部材と、請求項2に記載の糸張力付与部材である第2糸張力付与部材と、を備え、
前記糸を前記第1糸張力付与部材と前記第2糸張力付与部材とに交互に接触させることにより屈曲させることを特徴とするゲート式糸張力付与装置。
【請求項10】
請求項9に記載のゲート式糸張力付与装置であって、
前記第1糸張力付与部材に対して前記第2糸張力付与部材が移動することにより、前記糸の屈曲の強さを変更可能であることを特徴とするゲート式糸張力付与装置。
【請求項11】
請求項8から10までの何れか一項に記載のゲート式糸張力付与装置を備える自動ワインダであって、
給糸ボビンを支持する給糸部と、
前記給糸部の前記給糸ボビンから解舒された糸を巻き取る糸巻取部と、
を更に備え、
前記ゲート式糸張力付与装置は、前記給糸部から前記糸巻取部に向かって走行する糸に張力を付与することを特徴とする自動ワインダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行する糸に張力を付与する糸張力付与部材に関する。詳細には、糸張力付与部材の部品寿命を長くするための構成に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動ワインダ等の繊維機械に備えられる糸張力付与装置において、走行する糸に張力を付与するための糸張力付与部材を有しているものが知られている。特許文献1は、この種の糸張力付与部材を開示する。この特許文献1で開示されている糸張力付与部材は、具体的には一対の固定櫛歯と可動櫛歯とで構成されており、この固定櫛歯と可動櫛歯とが互いの間に走行する糸を挟み込んで、当該糸を屈曲させることで、張力付与作用を行う。可動櫛歯は、固定櫛歯と噛合せ状態又は固定櫛歯から解放状態になるように、ロータリ式のソレノイドにより回動するように構成されている。このソレノイドは、糸の屈曲を強める方向、即ち、糸に対して付与する張力を増大させる方向に可動櫛歯を押圧することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−86044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
糸張力付与装置においては糸が高速で走行しながら固定櫛歯及び可動櫛歯に対して接触するため、糸種によって、固定櫛歯及び可動櫛歯において糸に接触する部分が摩耗した場合には、これらの櫛歯を新しいものに交換する必要がある。メンテナンスの観点からは、交換の頻度はできるだけ少ない方が望ましい。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、糸張力付与部材の部品寿命を長くして、部品交換の頻度を少なく抑えることにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の糸張力付与部材が提供される。即ち、この糸張力付与部材は、ゲート式糸張力付与装置に取り付けられて糸に張力を付与する。この糸張力付与部材は、ベース部と、取付部と、第1糸接触部及び第2糸接触部と、を備える。前記取付部は、当該ベース部の一側に設けられ、前記ゲート式糸張力付与装置に対して着脱可能である。前記第1糸接触部及び前記第2糸接触部は、前記ベース部の他側に設けられ、糸に接触する。前記取付部は、第1取付状態と、当該第1取付状態に対して向きを反転させた第2取付状態と、の何れかの状態で前記ゲート式糸張力付与装置に取付け可能に構成される。前記第1糸接触部は、前記第1取付状態において糸に接触する。前記第2糸接触部は、前記第2取付状態において糸に接触する。前記第1取付状態における前記第1糸接触部の形状及び位置は、前記第2取付状態における前記第2糸接触部の形状及び位置と一致する。
【0008】
これにより、第1糸接触部が摩耗して糸に所望の張力を付与できなくなったら、第1糸接触部と第2糸接触部の位置を入れ替えるように糸張力付与部材の向きを反転させて取付部をゲート式糸張力付与装置に取り付けることで、第1糸接触部に代えて第2糸接触部を糸に接触させることができる。これにより、糸張力付与部材の部品寿命を延ばすことができる。
【0009】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の糸張力付与部材が提供される。即ち、この糸張力付与部材は、ゲート式糸張力付与装置に取り付けられて糸に張力を付与する。この糸張力付与部材は、ベース部と、取付部と、少なくとも1つの歯部と、を備える。前記取付部は、当該ベース部の一側に設けられ、前記ゲート式糸張力付与装置に対して着脱可能である。前記歯部は、前記ベース部の他側から延びるように設けられる。前記歯部の一側には、糸に作用する凹状の第1糸作用部が形成される。前記歯部の他側には、糸に作用する凹状の第2糸作用部が形成される。前記取付部は、第1取付状態と、当該第1取付状態に対して向きを反転させた第2取付状態と、の何れかの状態で前記ゲート式糸張力付与装置に取付け可能に構成される。前記第1糸作用部は、前記第1取付状態において糸に作用する。前記第2糸作用部は、前記第2取付状態において糸に作用する。前記第2取付状態においては、前記第1取付状態における前記第1糸作用部があった位置及び形状と同一となるように、前記第2糸作用部が配置される。
【0010】
これにより、第1糸作用部が摩耗して糸に所望の張力を付与できなくなったら、第1糸作用部と第2糸作用部の位置を入れ替えるように糸張力付与部材の向きを反転させて取付部をゲート式糸張力付与装置に取り付けることで、第1糸作用部に代えて第2糸作用部を糸に作用させることができる。これにより、糸張力付与部材の部品寿命を延ばすことができる。
【0011】
前記の糸張力付与部材においては、前記取付部が180°回転対称な形状に形成されていることが好ましい。
【0012】
これにより、糸張力付与部材の向きを反転させたときも、ゲート式糸張力付与装置に設けられる、糸張力付与部材の取付部を嵌め込んで取り付ける部分である被取付部の向き等を変更することなく、そのまま取付部をゲート式糸張力付与装置の被取付部に取り付けることができる。これにより、一方の糸接触部又は糸作用部が摩耗したときに簡単な作業で他方の糸接触部又は糸作用部を糸に接触させるように切り替えて使用することができる。
【0013】
前記の糸張力付与部材においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記歯部は1つの前記ベース部に対して複数備えられる。前記複数の歯部は、全体として180°回転対称に設けられている。
【0014】
これにより、糸張力付与部材の向きを反転させたときも、被取付部の位置や向き等を変更することなく、そのまま取付部をゲート式糸張力付与装置に取り付けることができる。また、複数の歯部の向きを一括して反転させることができ、一方の糸接触部又は糸作用部が摩耗したときにもう一方の糸接触部又は糸作用部に切り替える作業を、複数の歯部について一括して簡単に行うことができる。
【0015】
本発明の第3の観点によれば、以下の構成の糸張力付与部材が提供される。即ち、この糸張力付与部材は、ゲート式糸張力付与装置に取り付けられて糸に張力を付与する。この糸張力付与部材は、ベース部と、取付部と、を備える。前記ベース部は、板状に形成される。前記取付部は、前記ベース部の一側に突出して設けられる。前記ベース部の他側には、曲線状に窪んだ凹部が形成される。前記取付部及び前記凹部は、前記ベース部の一側から他側に向かう方向に延びる中心線に対して180°回転対称な形状に形成されている。
【0016】
これにより、凹部の底から一方の端点までの一側の曲面を糸が接触する第1糸接触部とし、凹部の底から他方の端点までの他側の曲面を糸が接触する第2接触部として、糸張力付与部材をゲート式糸張力付与装置に取り付けて用いることができる。これにより、第1糸接触部が摩耗して糸に所望の張力を付与できなくなったら、第1糸接触部と第2糸接触部の位置を入れ替えるように糸張力付与部材の向きを反転させて取付部をゲート式糸張力付与装置に取り付けることで、第1糸接触部に代えて第2糸接触部を糸に接触させることができる。これにより、糸張力付与部材の部品寿命を延ばすことができる。また、糸張力付与部材を、簡単な対称形状で構成することができる。
【0017】
本発明の第4の観点によれば、以下の構成の糸張力付与部材が提供される。即ち、この糸張力付与部材は、ゲート式糸張力付与装置に取り付けられて糸に張力を付与する。この糸張力付与部材は、ベース部と、取付部と、複数の歯部と、を備える。前記ベース部は、一方向に長いブロック状に形成される。前記取付部は、前記ベース部の一側に突出して設けられる。前記複数の歯部は、前記ベース部の他側に前記一方向に等間隔に設けられる。それぞれの前記歯部は、前記ベース部の一側から他側に向かう方向に延びるように形成される。それぞれの前記歯部の一側には、曲線状の凹状の第1糸作用部が形成される。それぞれの前記歯部の他側には、曲線状の凹状の第2糸作用部が形成される。前記取付部、前記第1糸作用部及び前記第2糸作用部は、前記ベース部の一側から他側に向かう方向に延びる中心線に対して180°回転対称な形状に形成されている。
【0018】
これにより、第1糸作用部が摩耗して糸に所望の張力を付与できなくなったら、第1糸作用部と第2糸作用部の位置を入れ替えるように糸張力付与部材の向きを反転させて取付部をゲート式糸張力付与装置に取り付けることで、第1糸作用部に代えて第2糸作用部を糸に作用させることができる。これにより、糸張力付与部材の部品寿命を延ばすことができる。また、複数の歯部が1つのベース部に設けられているので、複数の歯部を一括して反転させることができる。また、糸張力付与部材を、180°回転対称の簡単な形状で構成することができる。
【0019】
前記の糸張力付与部材においては、当該糸張力付与部材はセラミック製であることが好ましい。
【0020】
これにより、糸張力付与部材を、摩耗が生じにくい素材で構成することができ、部品寿命が更に改善される。
【0021】
本発明の第5の観点によれば、前記の糸張力付与部材を備え、前記糸を前記糸張力付与部材に接触させることにより屈曲させて張力を付与するゲート式糸張力付与装置が提供される。
【0022】
これにより、ゲート式糸張力付与装置において、糸張力付与部材の部品寿命を長くすることができ、このゲート式糸張力付与装置の部品交換の頻度を少なく抑えることができる。
【0023】
前記のゲート式糸張力付与装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記ゲート式糸張力付与装置は、前記の第1の観点により提供される糸張力付与部材と、前記の第2の観点により提供される糸張力付与部材と、を備える。前記ゲート式糸張力付与装置は、前記糸を前記第1糸張力付与部材と前記第2糸張力付与部材とに交互に接触させることにより屈曲させる。
【0024】
これにより、それぞれの糸張力付与部材の部品寿命を延ばすことができる。
【0025】
前記のゲート式糸張力付与装置においては、前記第1糸張力付与部材に対して前記第2糸張力付与部材が移動することにより、前記糸の屈曲の強さを変更可能であることが好ましい。
【0026】
これにより、糸に付与する張力を状況に応じて適切に変更することができる。
【0027】
本発明の第6の観点によれば、以下の構成の自動ワインダが提供される。即ち、この自動ワインダは、前記のゲート式糸張力付与装置を備える。この自動ワインダは、給糸部と、糸巻取部と、を更に備える。前記給糸部は、給糸ボビンを支持する。前記糸巻取部は、前記給糸部の前記給糸ボビンから解舒された糸を巻き取る。前記ゲート式糸張力付与装置は、前記給糸部から前記糸巻取部に向かって走行する糸に張力を付与する。
【0028】
これにより、糸張力付与部材の部品寿命を長くすることができるので、自動ワインダの部品交換の頻度を少なく抑えることができ、効率よく糸の巻取りを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係る糸張力付与部材を有するゲート式糸張力付与装置を備える、自動ワインダの糸巻取ユニットを示す正面図。
図2】ゲート式糸張力付与装置において櫛歯同士が開放状態である様子を示す平面視の断面図。
図3】ゲート式糸張力付与装置において櫛歯同士が噛合せ状態である様子を示す平面視の断面図。
図4】ゲート式糸張力付与装置の構成を示す側面視の断面図。
図5】糸張力付与部材としての固定櫛歯の構成を示す斜視図。
図6】糸張力付与部材としての可動櫛歯ブロックの構成を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
次に、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0031】
図1に示す糸巻取ユニット10は、給糸ボビン21から解舒される糸20をトラバースさせながら巻取ボビン22に巻き付けて、所定長で所定形状のパッケージ30を形成するものである。本実施形態の自動ワインダ(繊維機械)は、並べて配置された複数の糸巻取ユニット10と、その並べられた方向の一端に配置された図略の機台制御装置と、を備えている。
【0032】
それぞれの糸巻取ユニット10は、正面視で左右一側に設けられた図略のユニットフレームと、このユニットフレームの側方に設けられた巻取ユニット本体16と、を備えている。前記ユニットフレームの内部には、糸巻取ユニット10の各部を制御するためのユニット制御部50が備えられる。
【0033】
糸巻取ユニット10の下部(最上流部)には給糸部18が構成されている。この給糸部18には、トレイ56に装着した状態の給糸ボビン21が図略の給糸ボビン装置によって供給される。給糸部18にセットされた給糸ボビン21は、糸20を下流側へ供給する。なお、給糸部18は、トレイ式の構成に替えて、公知のマガジン式容器を備えた構成であっても良い。
【0034】
巻取ユニット本体16は、巻取ボビン22を保持可能に構成されたクレードル23と、糸20をトラバースさせるとともに前記巻取ボビン22を回転させるための巻取ドラム(綾振ドラム)24と、を有する糸巻取部17を備えている。クレードル23は、巻取ドラム24に対し近接又は離間する方向に揺動可能に構成されており、これによって、パッケージ30が巻取ドラム24に対して近接又は離間される。図1に示すように、巻取ドラム24の外周面には螺旋状の綾振溝27が形成されており、糸20は当該綾振溝27によってトラバースされながら巻取ボビン22に巻き取られる。なお、糸巻取部17の構成はこれに限定されない。糸巻取部17は、例えば、糸をトラバースさせるアーム式のトラバース装置と、巻取ボビン22と相対回転不能に連結されたモータと、巻取ボビン22(パッケージ30)の周面に接触して巻取ボビン22(パッケージ30)に従動回転する接触ローラと、を有する構成であっても良い。
【0035】
巻取ユニット本体16は、給糸部18と糸巻取部17との間の糸走行経路中に、給糸部18側から順に、解舒補助装置12と、ゲート式糸張力付与装置(糸張力付与装置)13と、糸継装置14と、糸監視装置15と、を配置した構成となっている。なお、以後の説明において、糸20の走行方向の上流側及び下流側を単に「上流側」及び「下流側」と称する場合がある。
【0036】
解舒補助装置12は、給糸ボビン21の芯管に被さることが可能な規制部材40と、当該規制部材40を上下動させることが可能な図略のアクチュエータと、を備えている。規制部材40は、給糸ボビン21から解舒された糸20の回転と遠心力によって給糸ボビン21上部に形成されたバルーンに対し接触し、当該バルーンに適切なテンションを付与することによって糸20の解舒を補助する。解舒補助装置12は、給糸ボビン21からの糸20の解舒と連動して前記アクチュエータを駆動し、規制部材40を下降させるように構成されている。具体的には、給糸ボビン21のチェース部を検出するための図略のセンサが規制部材40の近傍に備えられており、このセンサが前記チェース部の下降を検出すると前記アクチュエータを駆動して規制部材40を下降させる制御が行われる。
【0037】
ゲート式糸張力付与装置13は、走行する糸20に適宜の張力(テンション)を付与するものであり、糸20を挟んで対向するように対で配置される固定ゲート体45と可動ゲート体46とを備えている。即ち、ゲート式糸張力付与装置13は、張力付与部としてのゲート対を備えた構成となっている。
【0038】
固定ゲート体45には、固定櫛歯(第1糸張力付与部材、糸張力付与部材)65が複数備えられている。可動ゲート体46には、可動櫛歯(歯部)66が複数備えられている。固定櫛歯65と可動櫛歯66とは、糸20の走行方向での位置(具体的には、高さ)を異ならせるように交互に配置される。固定櫛歯65と可動櫛歯66とはそれぞれ、相手側の部材(可動櫛歯66又は固定櫛歯65)との間で糸20を挟み込むことによって、当該糸20に張力を付与する。より具体的には、固定櫛歯65と可動櫛歯66は、互いの間を走行している糸20に接触して屈曲させることで張力付与作用を行う。
【0039】
可動櫛歯66を備える可動ゲート体46は、固定櫛歯65と可動櫛歯66とが噛合せ状態又は開放状態になるように、駆動機構70により回動することができる。この駆動機構70は、糸20の屈曲の強さを増減させる方向(即ち、糸20に対して付与する張力を増大させる方向及び減少させる方向)に可動櫛歯66を駆動することができる。なお、ゲート式糸張力付与装置13の詳細な構成については後述する。
【0040】
糸継装置14は、糸監視装置15が糸欠陥を検出して行う糸切断時、又は給糸ボビン21からの解舒中の糸切れ時等に、給糸ボビン21側の下糸とパッケージ30側の上糸とを糸継ぎするものである。糸継装置14としては、圧縮空気等の流体を用いるもの又は機械式のもの等を使用することができる。
【0041】
糸監視装置15は、糸20の太さを適宜のセンサで検出することで糸欠陥を検出するように構成されており、この糸監視装置15のセンサからの信号をアナライザ52で処理することで、スラブ等の糸欠陥を検出可能に構成されている。なお、糸監視装置15は、単に糸20の有無を検知するセンサとしても機能させることができる。糸監視装置15には、当該糸監視装置15が糸欠陥を検出したときに直ちに糸20を切断するための図略のカッタが付設されている。
【0042】
糸継装置14の下側及び上側には、給糸ボビン21側の下糸を捕捉して糸継装置14に案内する第1糸捕捉装置25と、パッケージ30側の上糸を捕捉して糸継装置14に案内する第2糸捕捉装置26と、が設けられている。第1糸捕捉装置25の先端には吸引口32が形成され、第2糸捕捉装置26の先端にはサクションマウス34が備えられている。2つの糸捕捉装置25,26には適宜の負圧源がそれぞれ接続されており、吸引口32及びサクションマウス34に吸引流を作用させることができる。
【0043】
この構成で、糸切れ時又は糸切断時においては、第1糸捕捉装置25の吸引口32が図1で示す位置で下糸を捕捉し、その後、軸33を中心にして上方へ回動することで糸継装置14に下糸を案内する。また、これとほぼ同時に、第2糸捕捉装置26が図1に示す位置から軸35を中心として上方へ回動し、ドラム駆動モータ53によって逆回転されるパッケージ30表面上に存在する上糸をサクションマウス34によって捕捉する。続いて、第2糸捕捉装置26が軸35を中心として下方へ回動することで、糸継装置14に上糸を案内する。
【0044】
給糸ボビン21から解舒された糸は、糸継装置14の上方(下流側)に配置される巻取ボビン22に巻き取られる。巻取ボビン22は、当該巻取ボビン22に対向して配置される巻取ドラム24が回転駆動することにより駆動される。図1に示すように、この巻取ドラム24はドラム駆動モータ53の出力軸に連結されており、このドラム駆動モータ53の動作はモータ制御部54により制御される。このモータ制御部54は、ユニット制御部50からの運転信号を受けて前記ドラム駆動モータ53を運転及び停止させる制御を行うように構成している。
【0045】
以上の構成で、給糸ボビン21が糸巻取ユニット10の下部(給糸部18)に供給されると、巻取ボビン22が駆動され、給糸ボビン21から糸20を解除して巻取ボビン22に巻き取ることで所定長のパッケージ30を形成することができる。
【0046】
次に、ゲート式糸張力付与装置13の詳細な構成について、図2から図4までを参照して説明する。図2は、ゲート式糸張力付与装置13において櫛歯同士が開放状態である様子を示す平面断面図である。図3は、ゲート式糸張力付与装置13において櫛歯同士が噛合せ状態である様子を示す平面断面図である。図4は、ゲート式糸張力付与装置13の構成を示す側面断面図である。
【0047】
ゲート式糸張力付与装置13は、上述した固定ゲート体45と、可動ゲート体46と、を備えるほか、ケーシング48、第1ブラケット61、第2ブラケット62、及び駆動機構70等を備えている。
【0048】
図2に示すケーシング48は、固定ゲート体45、可動ゲート体46、及び駆動機構70等を収容する。ケーシング48の上端には、第1ブラケット61が設けられている。ケーシング48の下端には、第2ブラケット62が設けられている。
【0049】
第1ブラケット61は、金属製の薄い板状の部材であり、その厚みを上下方向(即ち、固定櫛歯65及び可動櫛歯66が糸20に接触しない状態において糸20が走行する方向に平行な方向)に向けて配置される。なお、櫛歯同士が噛合せ状態の場合は糸20はジグザグ状に走行するが、以下の説明で「糸20の走行方向」というときは、特に説明がない限り、固定櫛歯65及び可動櫛歯66が糸20に接触しない状態(開放状態)において糸20が走行する方向を意味するものとする。図4に示すように、第1ブラケット61には、正面側が開放された第1導入溝61aが形成される。当該第1導入溝61aは、前後方向に長いスリット状の溝であり、開放側から糸20を挿入できるようになっている。
【0050】
第2ブラケット62も、金属製の薄い板状の部材であり、その厚みを上下方向に向けて配置される。図4に示すように、第2ブラケット62には、正面側が開放された第2導入溝62aが形成される。当該第2導入溝62aは、前後方向に長いスリット状の溝であり、開放側から糸20を挿入できるようになっている。
【0051】
平面視において(即ち、糸20の走行方向に沿って見たとき)、第1導入溝61aと第2導入溝62aとは互いに略一致するように、第1導入溝61a及び第2導入溝62aの形状及び位置が定められている。櫛歯同士を開放状態として第1導入溝61a及び第2導入溝62aに糸20を挿入することにより、糸20を固定ゲート体45と可動ゲート体46の間に案内することができる。
【0052】
図4に示すように、固定ゲート体45及び可動ゲート体46は、第1ブラケット61及び第2ブラケット62の間に配置される。固定櫛歯65及び可動櫛歯66が糸20に接触しない状態において、可動ゲート体46は、糸道(糸20が走行する経路)を挟んで固定ゲート体45とは反対側に配置される。言い換えれば、固定ゲート体45と可動ゲート体46とは、糸道を挟んで対向するように配置される。
【0053】
固定ゲート体45は、ケーシング48に固定されて移動不能に設けられる。一方、可動ゲート体46は、固定ゲート体45に対して揺動可能に設けられる。具体的には、図2及び図3に示すように、可動ゲート体46は、ゲート対の櫛歯同士が噛合せ状態となる噛合せ位置から、ゲート対の櫛歯同士が開放状態となる開放位置までの範囲において揺動可能となっている。
【0054】
図4に示すように、固定ゲート体45はベース63を備え、このベース63には第1被取付部(被取付部)59が設けられる。固定櫛歯65は、この第1被取付部59に着脱可能に取り付けられる。一方、可動ゲート体46の回動軸(支点軸)をなす軸67にはボス68が装着され、このボス68には第2被取付部(被取付部)69が設けられる。可動櫛歯66は、この第2被取付部69に着脱可能に取り付けられる。なお、固定櫛歯65、可動櫛歯66、及びそれぞれの被取付部59,69の構成については、後に詳述する。
【0055】
図2に示すように、固定ゲート体45の固定櫛歯65に対して可動ゲート体46の可動櫛歯66が離間した状態となるように可動ゲート体46が回動されているとき、即ち可動ゲート体46が開放位置にあるときは、固定櫛歯65と可動櫛歯66との間に糸20が挿入されるのを待機している状態である。一方、図3に示すように、固定ゲート体45の固定櫛歯65に対して可動ゲート体46の可動櫛歯66が噛合せ状態となるように可動ゲート体46が回動されているとき、即ち可動ゲート体46が噛合せ位置にあるときは、固定櫛歯65と可動櫛歯66とが互いの間に糸20を挟み込み、走行する糸20を屈曲させることで当該糸20に張力を付与する。
【0056】
図2及び図3に示す駆動機構70は、回転型の第1ソレノイドアクチュエータ71及び第2ソレノイドアクチュエータ72を備える。また、駆動機構70は、第1レバー73、第2レバー74、第1ロッド75、及び第2ロッド76等を備える。
【0057】
第1レバー73は、V字状に形成され、その屈曲部分が第1ソレノイドアクチュエータ71の回転軸に固定されている。第2レバー74は、第2ソレノイドアクチュエータ72の回転軸に固定されている。第1ロッド75は、V字状の第1レバー73の一方の先端と、第2レバー74の先端と、を連動するように連結している。第2ロッド76は、第1レバー73の他方の先端と、ボス68に設けられた第3レバー77の先端と、を連動するように連結している。
【0058】
第1ソレノイドアクチュエータ71及び第2ソレノイドアクチュエータ72の駆動は、糸巻取ユニット10の各部を制御するユニット制御部50(図1を参照)によって制御される。第1ソレノイドアクチュエータ71が駆動されると、第1レバー73に連結された第2ロッド76が第3レバー77を押すので、可動ゲート体46の位置が図2の開放位置から図3の噛合せ位置へ切り替えられる。一方、第2ソレノイドアクチュエータ72が駆動されると、第2レバー74に連結された第1ロッド75が第1レバー73を引っ張って回転させ、この第1レバーに連結された第2ロッド76が第3レバー77を引っ張るので、可動ゲート体46の位置が図3の噛合せ位置から図2の開放位置へ切り替えられる。なお、駆動機構70の構成は、ここで説明する構成に限定されない。
【0059】
続いて、本発明に係る糸張力付与部材の実施の一形態に係る固定櫛歯65の構成について、図5を参照して詳細に説明する。図5は、固定櫛歯65の構成を示す斜視図である。
【0060】
固定櫛歯65は、ほぼ一様な厚みを有する板状のセラミック製の部材であり、固定ゲート体45のベース63の第1被取付部59に着脱可能に取り付けられる。本実施形態では、図4に示すように、7つの固定櫛歯65が糸走行方向に沿って等間隔で並ぶように設けられる。固定櫛歯65は、その厚み方向が第1ブラケット61及び第2ブラケット62の厚み方向と平行となるように取り付けられる。
【0061】
固定櫛歯65は、第1ベース部(ベース部)81と、第1取付部(取付部)82と、第1糸接触部84aと、第2糸接触部84bと、を備える。
【0062】
第1ベース部81は、概ね台形状に形成されており、長辺をベース側に、短辺を糸道側にそれぞれ向けて、ベース63の被取付部59に取り付けられる。
【0063】
第1取付部82は、第1ベース部81の長辺側から突出するように一体的に形成されている。第1取付部82が突出する向きは、第1取付部82の長辺に垂直で、かつ、第1ベース部81の厚み方向に垂直な向きとなっている。第1取付部82は幅広状に形成され、その基部には、第1取付部82の幅に平行な直線状の溝82aが形成されている。なお、図5には溝82aが1つだけ示されているが、第1ベース部81の厚み方向において当該溝82aと反対側にも同一形状の溝が形成されている。
【0064】
固定ゲート体45のベース63には、第1取付部82を嵌め込むことが可能な第1被取付部59が設けられる。第1被取付部59は、糸走行方向に沿って等間隔で並ぶように7つ配置されている。それぞれの第1被取付部59は、弾性変形可能な部材(例えば、合成樹脂)により構成されている。また、それぞれの第1被取付部59には、第1取付部82に設けられた1対の溝82aに対応する1対の係合突起59aが設けられている。係合突起59aは、互いに対向する向きに突出している。
【0065】
この構成で、第1取付部82を第1被取付部59に押し込んで、係合突起59aを溝82aに係合させることにより、固定櫛歯65を第1被取付部59に取り付けることができる。また、係合突起59aと溝82aとの係合を解除して第1取付部82を第1被取付部59から引き抜くことにより、固定櫛歯65を第1被取付部59から取り外すことができる。このように、固定櫛歯65は、特別な締結部材等を用いることなく、第1被取付部59に対して容易に着脱することができる。なお、第1被取付部59が設けられるベース63は、ゲート式糸張力付与装置13の一部であるので、固定櫛歯65はゲート式糸張力付与装置13の第1被取付部59に対して着脱可能であるということができる。
【0066】
第1取付部82は、180°回転対称な形状に形成されている。言い換えれば、第1取付部82は、突出状に形成された当該第1取付部82の中心軸を中心として180°回転させたとき、回転させる前と同一の形状となる。
【0067】
従って、固定櫛歯65の第1取付部82は、互いに180°異なる2つの向きで第1被取付部59に嵌め込むことができる。以下では、ある向きで固定櫛歯65を第1被取付部59に取り付けた状態を「第1取付状態」といい、第1取付状態から180°回転させた向きで固定櫛歯65を第1被取付部59に取り付けた状態を「第2取付状態」ということがある。このように、固定櫛歯65は、第1取付状態と、当該第1取付状態に対して向きを反転させた第2取付状態と、の何れかの状態で第1被取付部59に取付け可能である。
【0068】
本実施形態の第1ベース部81において、第1取付部82が設けられている側とは反対側(台形状の第1ベース部81の短辺側)には、2つの凸部83,83と、1つの凹部84と、が第1ベース部81と一体的に設けられる。2つの凸部83,83は、短辺の中点を挟むように配置され、それぞれが長辺から遠ざかる向きに滑らかな曲線状に突出するように形成される。言い換えれば、2つの凸部83,83は、第1ベース部81を台形とみなしたときの短辺の中心に向かうに従って、外側に張り出すように形成される。凹部84は、両側の凸部83,83の間で相対的に凹むように形成され、滑らかな曲線状に形成されている。第1ベース部81の短辺の中点に相当する位置で、凹部84は最も凹んでいる。
【0069】
固定櫛歯65において、台形状の第1ベース部81の短辺側のうち、一方の凸部83において最も突出している部分から凹部84において最も凹んだ部分(底)にかけての、滑らかな曲線部分が、糸20に接触する第1糸接触部84aをなす。一方、他方の凸部83において最も突出している部分から凹部84において最も凹んだ部分(底)にかけての、滑らかな曲線部分が、糸20に接触する第2糸接触部84bをなす。このように、第1糸接触部84aと第2糸接触部84bとは、固定櫛歯65の異なる位置に設けられている。
【0070】
第1糸接触部84a及び第2糸接触部84bとは互いに対称となるように形成されており、その対称軸は、第1取付部82の中心軸と一致する。従って、固定櫛歯65の第1取付状態において糸20が第1糸接触部84aに接触する場合、固定櫛歯65をひっくり返した第2取付状態では、糸20は第2糸接触部84bに接触する。そして、第1取付状態における第1糸接触部84aの形状及び位置は、第2取付状態における第2糸接触部84bの形状及び位置と一致する。
【0071】
なお、第1糸接触部84a及び第2糸接触部84bは、第1ベース部81の厚み方向に沿う平面で切った断面の輪郭が滑らかな曲線状となるように形成されている。これにより、第1糸接触部84a又は第2糸接触部84bに糸20が接触しても、引っ掛かりにより糸20が切断されてしまうおそれがない。
【0072】
以上の構成で、オペレータは初めに、新品の固定櫛歯65の第1取付部82を第1取付状態となるように第1被取付部59に取り付けて、ゲート式糸張力付与装置13を使用する。一般的に、糸20の走行速度は高速であるため(例えば、600m/分以上)、固定櫛歯65が比較的耐久性の高い部材(具体的には、セラミック)で構成されていたとしても、可動櫛歯66と協働して糸20に接触して張力を付与し続けた場合、糸種によっては、固定櫛歯65の第1糸接触部84aが次第に摩耗する。第1糸接触部84aが摩耗してそれ以上使用することができなくなった場合、オペレータは、固定櫛歯65の第1取付部82を第1被取付部59から引き抜き、180°回転させた状態で、当該固定櫛歯65の第1取付部82を第1被取付部59に再び取り付ける。この状態(第2取付状態)でゲート式糸張力付与装置13を使用した場合、第1糸接触部84aに代えて第2糸接触部84bが糸20に接触することとなる。第2糸接触部84bの形状及び位置は、向きを反転させる前の第1糸接触部84aと一致するので、糸20の屈曲状態に影響を与えることはない。これにより、第2糸接触部84bが摩耗してそれ以上使用することができなくなるまで、固定櫛歯65を新しいものに交換する必要がなくなる。即ち、固定櫛歯65の部品寿命が長くなり(本実施形態の場合、従来の2倍の部品寿命になり)、部品交換の頻度を抑えることができる。
【0073】
次に、可動櫛歯ブロック(第2糸張力付与部材、糸張力付与部材)90の構成について、図6を参照して詳細に説明する。図6は、可動櫛歯ブロック90の構成を示す斜視図である。
【0074】
本実施形態の可動櫛歯ブロック90は、セラミック製のブロック状の部材であり、可動ゲート体46が備える第2被取付部69に着脱可能に取り付けられる。本実施形態では、3つの可動櫛歯66が1つの可動櫛歯ブロック90に設けられている。図4に示すように、この可動櫛歯ブロック90が2つ、糸走行方向に並べて取り付けられて、それにより6つの可動櫛歯66が糸走行方向に沿って等間隔で並ぶように設けられる。それぞれの可動櫛歯66は、可動ゲート体46のボス68から遠ざかる向きに直線状に突出している。また、それぞれの可動櫛歯66は細長い板状に形成されており、その厚み方向は、糸20の走行方向と平行となっている。
【0075】
可動櫛歯ブロック90は、第2ベース部(ベース部)91と、第2取付部(取付部)92と、3つの可動櫛歯(歯部)66と、を備える。
【0076】
第2ベース部91は、細長いブロック状(概ね直方体状)に形成されている。第2ベース部91は、その長手方向が可動ゲート体46の軸67と平行となるように、かつ、細長い長方形状の側面のうちの1つをボス68側に向けて、ボス68の第2被取付部69に取り付けられる。
【0077】
第2取付部92は、第2ベース部91の一側に設けられる。詳細には、第2取付部92は、第2ベース部91の細長い長方形状の側面のうちの1つから短く突出するように一体的に形成されている。第2取付部92の突出する向きは、第2ベース部91の長手方向に垂直で、かつ、可動櫛歯66の突出する方向に平行な向きとなっている。第2取付部92は幅広状に形成され、その基部には、第2取付部92の幅に平行な1対の直線状の溝92aが形成されている。
【0078】
可動ゲート体46のボス68には、第2取付部92を嵌め込むことが可能な第2被取付部69が設けられる。第2被取付部69は、糸走行方向に沿って2つ並べて配置される。それぞれの第2被取付部69は、弾性変形可能な部材(例えば、合成樹脂)により構成されている。また、それぞれの第2被取付部69には、第2取付部92に設けられた1対の溝92aに対応する係合突起69aが設けられている。係合突起69aは、互いに対向する向きに突出している。
【0079】
この構成で、第2取付部92を第2被取付部69に押し込んで、係合突起69aを溝92aに係合させることにより、可動櫛歯66を第2被取付部69に取り付けることができる。なお、第2被取付部69の位置は、2つの第2取付部92をそれぞれの第2被取付部69に取り付けたとき、図4に示すように計6つの可動櫛歯66が等間隔で並ぶように定められている。
【0080】
また、係合突起69aと溝92aとの係合を解除して第2取付部92を第2被取付部69から引き抜くことにより、可動櫛歯ブロック90を第2被取付部69から取り外すことができ、それにより3つの可動櫛歯66を一括でまとめて取り外すことができる。
【0081】
このように、可動櫛歯66は、特別な締結部材等を用いることなく、第2被取付部69に対して容易に着脱することができる。しかも、3つの可動櫛歯66を1つのブロックとしてまとめて着脱することができる。なお、第2被取付部69が設けられるボス68は、ゲート式糸張力付与装置13の一部であるので、可動櫛歯66はゲート式糸張力付与装置13の第2被取付部69に対して着脱可能であるということができる。
【0082】
第2取付部92は、180°回転対称な形状に形成されている。言い換えれば、第2取付部92は、突出状に形成された当該第2取付部92の中心軸を中心として180°回転させたとき、回転させる前と同じ形状となる。
【0083】
従って、可動櫛歯ブロック90の第2取付部92は、互いに180°異なる2つの向きで第2被取付部69に嵌め込むことができる。以下では、ある向きで可動櫛歯ブロック90を第2被取付部69に取り付けた状態を「第1取付状態」といい、第1取付状態から180°回転させた向きで可動櫛歯ブロック90を第2被取付部69に取り付けた状態を「第2取付状態」ということがある。このように、可動櫛歯ブロック90は、第1取付状態と、当該第1取付状態に対して向きを反転させた第2取付状態と、の何れかの状態で第2被取付部69に取付け可能である。
【0084】
本実施形態の第2ベース部91において、第2取付部92が設けられている側とは反対側には、可動櫛歯(歯部)66が等間隔で3つ設けられる。各可動櫛歯66は、細長い板状に形成されており、その厚み方向を第2ベース部91の長手方向と平行な方向に向けて配置されている。また、それぞれの可動櫛歯66は、第2ベース部91から第2取付部92が突出する方向とは反対の向きに突出している。
【0085】
第2取付部92を第2被取付部69に取り付けた状態の可動櫛歯66は、前述したとおり、駆動機構70によって軸67を中心にして回転する。そして、それぞれの可動櫛歯66において、その回転方向一側の縁部には、図6に示すように、糸20に作用(接触)する緩やかな円弧状の第1糸作用部66aが形成される。一方、可動櫛歯66の回転方向他側の縁部には、糸20に作用(接触)する緩やかな円弧状の第2糸作用部66bが形成される。第1糸作用部66a及び第2糸作用部66bは、細長く突出する可動櫛歯66の中途部において最も凹んだ部分となるように形成される。このように、第1糸作用部66aと第2糸作用部66bとは、可動櫛歯66の異なる位置に設けられている。
【0086】
3つの可動櫛歯66,66,66は、全体として対称となるように形成されており、その対称軸は、第2取付部92の中心軸と一致する。従って、可動櫛歯ブロック90の第1取付状態において糸20がそれぞれの可動櫛歯66の第1糸作用部66aに接触する場合、可動櫛歯ブロック90をひっくり返した第2取付状態では、糸20はそれぞれの可動櫛歯66の第2糸作用部66bに接触する。そして、第1取付状態における3つの第1糸作用部66aの形状及び位置は、第2取付状態における3つの第2糸作用部66bの形状及び位置と一致する。
【0087】
なお、第1糸作用部66a及び第2糸作用部66bは、可動櫛歯66の突出方向に垂直な平面で切った断面の輪郭が滑らかな曲線状となるように形成されている。これにより、第1糸作用部66a又は第2糸作用部66bに糸20が接触しても、引っ掛かりにより糸20が切断されてしまうおそれがない。
【0088】
以上の構成で、オペレータは、まず初めに、新品の可動櫛歯ブロック90の第2取付部92を第1取付状態となるように第2被取付部69に取り付けて、ゲート式糸張力付与装置13を使用する。前述のように、一般的に糸20の走行速度は高速であるため、可動櫛歯66が比較的耐久性の高い部材で構成されていたとしても、固定櫛歯65と協働して糸20に接触して張力を付与し続けた場合、糸種によっては、可動櫛歯66の第1糸作用部66aが次第に摩耗する。第1糸作用部66aが摩耗してそれ以上使用することができなくなった場合、オペレータは、可動櫛歯ブロック90の第2取付部92を第2被取付部69から引き抜き、180°回転させた状態で、当該可動櫛歯ブロック90の第2取付部92を第2被取付部69に再び取り付ける。この状態(第2取付状態)でゲート式糸張力付与装置13を使用した場合、第1糸作用部66aに代えて第2糸作用部66bが糸20に接触することとなる。ただし、可動櫛歯66のそれぞれが糸走行方向に並ぶ順番は、第1取付状態と第2取付状態とで逆となる。第2糸作用部66bの形状及び位置は、向きを反転させる前の第1糸作用部66aと一致するので、糸20の屈曲状態に影響を与えることはない。これにより、第2糸作用部66bが摩耗してそれ以上使用することができなくなるまで、可動櫛歯ブロック90(可動櫛歯66)を新しいものに交換する必要がなくなる。即ち、可動櫛歯66の部品寿命が長くなり(本実施形態の場合、従来の2倍の部品寿命になり)、部品交換の頻度を抑えることができる。
【0089】
また、本実施形態では3つの可動櫛歯66が1つの可動櫛歯ブロック90の第2ベース部91に対して設けられているため、可動櫛歯ブロック90の向きを反転させることにより、3つの可動櫛歯66の向きを一括して反転させることができ、作業の手間を軽減することができる。
【0090】
本実施形態のゲート式糸張力付与装置13は、上述のような構成の固定櫛歯65と可動櫛歯66とが対となるように備えられている。以下では、このゲート式糸張力付与装置13が使用される場合について、具体例を挙げて説明する。
【0091】
例えば、パッケージ30を作成中に糸20に糸欠陥が発見されて、糸欠陥部分が糸監視装置15に付設されるカッタで切断された場合、第1糸捕捉装置25及び第2糸捕捉装置26は、切断された糸20を吸引して捕捉する。ユニット制御部50は、第2ソレノイドアクチュエータ72により可動ゲート体46を駆動し、当該可動ゲート体46の位置を噛合せ位置から開放位置へ切り替える。
【0092】
続いて、第1糸捕捉装置25を上方へ旋回させて、糸20を、ゲート式糸張力付与装置13の第1ブラケット61及び第2ブラケット62の第1導入溝61a及び第2導入溝62aを介して、開放位置にある可動ゲート体46と固定ゲート体45との間へ導入する。その後、ユニット制御部50は、第1ソレノイドアクチュエータ71を駆動して、可動ゲート体46を開放位置から噛合せ位置へ切り替える。この結果、糸20は、固定ゲート体45の固定櫛歯65,65・・・及び可動ゲート体46の可動櫛歯66,66・・・でジグザグに挟み込まれた状態で走行する。固定櫛歯65及び可動櫛歯66は、第1糸接触部84a(第2糸接触部84b)及び第1糸作用部66a(第2糸作用部66b)で走行する糸20の位置を規定しながら、糸20に張力を付与する。
【0093】
なお、固定櫛歯65における第1糸接触部84a及び第2糸接触部84bは凹部84の部分に形成されているとともに、可動櫛歯66における第1糸作用部66a及び第2糸作用部66bは凹状の緩やかな円弧状に形成されている。これにより、固定櫛歯65及び可動櫛歯66に接触する糸20のブレを抑えることができるので、張力を安定して付与することができる。
【0094】
以上に説明したように、本実施形態の糸張力付与部材である固定櫛歯65は、ゲート式糸張力付与装置13に取り付けられて糸20に張力を付与する。この固定櫛歯65は、第1ベース部81と、第1取付部82と、第1糸接触部84a及び第2糸接触部84bと、を備える。第1取付部82は、第1ベース部81の一側(糸走行経路から遠い側)に設けられ、ゲート式糸張力付与装置13に対して着脱可能である。第1糸接触部84a及び第2糸接触部84bは、第1ベース部81の他側(糸走行経路に近い側)に設けられ、糸20に接触する。第1取付部82は、第1取付状態と、当該第1取付状態に対して向きを反転させた第2取付状態と、の何れかの状態でゲート式糸張力付与装置13に取付け可能に構成される。第1糸接触部84aは、第1取付状態において糸20に接触する。第2糸接触部84bは、第2取付状態において糸20に接触する。第1取付状態における第1糸接触部84aの形状及び位置は、第2取付状態における第2糸接触部84bの形状及び位置と一致する。
【0095】
これにより、第1糸接触部84aが摩耗して糸20に所望の張力を付与できなくなったら、第1糸接触部84aと第2糸接触部84bの位置を入れ替えるように固定櫛歯65の向きを反転させた状態で第1取付部82をゲート式糸張力付与装置13に取り付けて、第1糸接触部84aに代えて第2糸接触部84bを糸20に接触させることができる。これにより、固定櫛歯65の部品寿命を延ばすことができる。
【0096】
また、本実施形態の糸張力付与部材である可動櫛歯ブロック90は、ゲート式糸張力付与装置13に取り付けられて糸20に張力を付与する。この可動櫛歯ブロック90は、第2ベース部91と、第2取付部92と、3つの可動櫛歯66と、を備える。第2取付部92は、第2ベース部91の一側に設けられ、ゲート式糸張力付与装置13に対して着脱可能である。可動櫛歯66は、第2ベース部91の他側から延びるように設けられる。それぞれの可動櫛歯66の一側には、糸20に作用する凹状の第1糸作用部66aが形成される。それぞれの可動櫛歯66の他側には、糸20に作用する凹状の第2糸作用部66bが形成される。第2取付部92は、第1取付状態と、当該第1取付状態に対して向きを反転させた第2取付状態と、の何れかの状態でゲート式糸張力付与装置13に取付け可能に構成される。第1糸作用部66aは、第1取付状態において糸20に作用する。第2糸作用部66bは、第2取付状態において糸20に作用する。第2取付状態においては、第1取付状態における第1糸作用部66aがあった位置及び形状と同一となるように、第2糸作用部66bが配置される。
【0097】
これにより、第1糸作用部66aが摩耗して糸20に所望の張力を付与できなくなったら、第1糸作用部66aと第2糸作用部66bの位置を入れ替えるように可動櫛歯ブロック90の向きを反転させた状態で第2取付部92をゲート式糸張力付与装置13に取り付けることで、第1糸作用部66aに代えて第2糸作用部66bを糸20に作用させることができる。これにより、可動櫛歯66の部品寿命を延ばすことができる。
【0098】
また、本実施形態の固定櫛歯65及び可動櫛歯ブロック90においては、第1取付部82(第2取付部92)が180°回転対称な形状に形成されている。
【0099】
これにより、固定櫛歯65(可動櫛歯ブロック90)の向きを反転させたときも、そのまま第1取付部82(第2取付部92)をゲート式糸張力付与装置13に取り付けることができる。これにより、一方の糸接触部(第1糸接触部84a)又は糸作用部(第1糸作用部66a)が摩耗してしまったときに簡単な作業で他方の糸接触部(第2糸接触部84b)又は糸作用部(第2糸作用部66b)を糸20に接触させるように切り替えて使用することができる。
【0100】
また、本実施形態の可動櫛歯ブロック90においては、可動櫛歯66は1つの前記第2ベース部91に対して3つ備えられる。当該3つの可動櫛歯66,66,66は、全体として180°回転対称に設けられている。
【0101】
これにより、可動櫛歯ブロック90の向きを反転させたときも、そのまま第2取付部92をゲート式糸張力付与装置13に取り付けることができる。また、それにより3つの可動櫛歯66,66,66の向きを一括して反転させることができ、第1糸作用部66aが摩耗してしまったときに第2糸作用部66bに切り替える作業を、3つの可動櫛歯66について一括して簡単に行うことができる。
【0102】
また、本実施形態の固定櫛歯65は、ゲート式糸張力付与装置13に取り付けられて糸20に張力を付与する。この固定櫛歯65は、第1ベース部81と、第1取付部82と、を備える。第1ベース部81は板状に形成される。第1取付部82は第1ベース部81の一側に突出して設けられる。第1ベース部81の他側には、曲線状に窪んだ凹部84が形成される。第1取付部82及び凹部84は、第1ベース部81の一側から他側に向かう方向に延びる中心線に対して180°回転対称な形状に形成されている。
【0103】
これにより、凹部84の底から一方の端点までの一側の曲面を糸が接触する第1糸接触部とし、凹部84の底から他方の端点までの他側の曲面を糸が接触する第2接触部として、固定櫛歯65をゲート式糸張力付与装置13に取り付けて用いることができる。これにより、第1糸接触部(凹部84の底から一方の端点までの一側の曲面)が摩耗して糸20に所望の張力を付与できなくなったら、凹部84の一側の曲面と凹部84の他側の曲面の位置を入れ替えるように固定櫛歯65の向きを反転させて第1取付部82をゲート式糸張力付与装置13(の第1被取付部59)に取り付けることで、第1糸接触部に代えて第2糸接触部(凹部84の底から他方の端点までの他側の曲面)を糸20に接触させることができる。これにより、固定櫛歯65の部品寿命を延ばすことができる。また、固定櫛歯65を簡単な対称形状で構成することができる。
【0104】
また、本実施形態の可動櫛歯ブロック90は、ゲート式糸張力付与装置13に取り付けられて、糸20に張力を付与する。この可動櫛歯ブロック90は、第2ベース部91と、第2取付部92と、3つの歯部(可動櫛歯66)と、を備える。第2ベース部91は、一方向に長いブロック状に形成される。第2取付部92は、第2ベース部91の一側に突出して設けられる。3つの歯部(可動櫛歯66)は、第2ベース部91の他側に前記一方向に等間隔に設けられる。それぞれの歯部(可動櫛歯66)は、第2ベース部91の一側から他側に向かう方向に延びるように形成される。それぞれの歯部(可動櫛歯66)の一側には、曲線状の凹状の第1糸作用部66aが形成される。それぞれの歯部(可動櫛歯66)の他側には、曲線状の凹状の第2糸作用部66bが形成される。第2取付部92、第1糸作用部66a及び第2糸作用部66bは、第2ベース部91の一側から他側に向かう方向に延びる中心線に対して180°回転対称な形状に形成されている。
【0105】
これにより、第1糸作用部66aが摩耗して糸20に張力を付与できなくなったら、第1糸作用部66aと第2糸作用部66bの位置を入れ替えるように可動櫛歯ブロック90の向きを反転させて第2取付部92をゲート式糸張力付与装置13(の第2被取付部69)に取り付けることで、第1糸作用部66aに代えて第2糸作用部66bを糸20に作用させることができる。これにより、可動櫛歯ブロック90の部品寿命を延ばすことができる。また、3つの可動櫛歯66が1つのブロック(可動櫛歯ブロック90)に設けられているので、3つの可動櫛歯66を一括して反転させることができる。また、可動櫛歯ブロック90を、180°回転対称の簡単な対称形状で構成することができる。
【0106】
また、本実施形態の固定櫛歯65及び可動櫛歯ブロック90(可動櫛歯66)は、セラミック製である。
【0107】
これにより、固定櫛歯65及び可動櫛歯ブロック90(可動櫛歯66)を、摩耗が生じにくい素材で構成することができ、部品寿命が更に改善される。
【0108】
また、本実施形態のゲート式糸張力付与装置13は、上記の固定櫛歯65及び可動櫛歯ブロック90を備え、糸20を固定櫛歯65及び可動櫛歯ブロック90に接触させることにより屈曲させて張力を付与する。
【0109】
これにより、ゲート式糸張力付与装置13において、固定櫛歯65及び可動櫛歯ブロック90の部品寿命を長くすることができ、このゲート式糸張力付与装置13の部品交換の頻度を少なく抑えることができる。
【0110】
また、本実施形態のゲート式糸張力付与装置13は、上記の固定櫛歯65及び可動櫛歯ブロック90を備える。ゲート式糸張力付与装置13は、糸20を固定櫛歯65と可動櫛歯ブロック90とに交互に接触させることにより屈曲させる。
【0111】
これにより、固定櫛歯65及び可動櫛歯66の部品寿命を延ばすことができる。
【0112】
また、本実施形態のゲート式糸張力付与装置13においては、固定櫛歯65に対して可動櫛歯ブロック90が移動することにより、糸20の屈曲の強さを変更可能である。
【0113】
これにより、糸20に付与する張力を状況に応じて適切に変更することができる。
【0114】
また、本実施形態の自動ワインダは、上記のゲート式糸張力付与装置13を備える。この自動ワインダは、給糸部18と、糸巻取部17と、を更に備える。給糸部18は、給糸ボビン21を支持する。糸巻取部17は、給糸部18の給糸ボビン21から解舒された糸20を巻取ボビン22に巻き取る。そして、ゲート式糸張力付与装置13は、給糸部18から糸巻取部17に向かって走行する糸20に張力を付与する。
【0115】
これにより、固定櫛歯65及び可動櫛歯66の部品寿命を長くすることができるので、自動ワインダ(各糸巻取ユニット10)の部品交換の頻度を少なく抑えることができ、効率よく糸20の巻取りを行うことができる。
【0116】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0117】
上記の実施形態では、ゲート式糸張力付与装置13の1対の糸張力付与部材の何れも、本発明に係る糸張力付与部材(固定櫛歯65及び可動櫛歯ブロック90)となっている。しかしながら、必ずしもこれに限定されるものではなく、1対の糸張力付与部材のうちの一方にのみ本発明を適用しても良い。
【0118】
上記の実施形態では、固定櫛歯65は7つ、可動櫛歯66は6つ、それぞれ備えられている。しかしながら、個数はこれに限るものではなく、固定櫛歯及び可動櫛歯の何れについても、上記より多く又は少なく備えられても良い。
【0119】
上記の実施形態の糸張力付与部材においては、取付部と糸接触部(糸作用部)とは何れも、ベース部と一体的に設けられている。しかしながら、必ずしもこれに限るものではなく、例えば取付部をベース部とは別の部材として、この取付部をベース部に対して接着剤等により装着することとしても良い。また、取付部の形状は上記の実施形態の形状に限定されず、180°回転対称な形状に形成されていれば良い。あるいは、取付部は180°回転対称な形状に形成されず、取付部が取り付けられる被取付部が180°回転可能に構成されていても良い。
【0120】
上記の実施形態の糸張力付与部材においては、糸接触部(糸作用部)は、比較的広い範囲にわたって配置される緩やかな曲線で構成されている。しかしながら、これに限るものではなく、例えば糸接触部(糸作用部)を狭い溝状(例えば、U字形状の溝)に構成してもよい。糸接触部(糸作用部)は、少なくとも曲線状に形成されていることが好ましい。
【0121】
図5の固定櫛歯65の構成に代えて、複数の固定櫛歯を並べて一体的に連結した固定櫛歯ブロックとして構成され、当該複数の固定櫛歯が全体として180°回転対称に設けられても良い。
【0122】
図6の可動櫛歯ブロック90の構成に代えて、1つの棒状の可動櫛歯に1つの取付部が設けられて、それぞれ単独に可動ゲート体46のボス68に取付け可能としても良い。
【0123】
固定櫛歯側に図6の構成を適用しても良い。また、可動櫛歯側に図5の構成を適用しても良い。
【符号の説明】
【0124】
13 ゲート式糸張力付与装置
20 糸
59 第1被取付部(被取付部)
65 固定櫛歯(第1糸張力付与部材、糸張力付与部材)
66 可動櫛歯(歯部)
66a 第1糸作用部
66b 第2糸作用部
69 第2被取付部(被取付部)
81 第1ベース部(ベース部)
82 第1取付部(取付部)
84a 第1糸接触部
84b 第2糸接触部
90 可動櫛歯ブロック(第2糸張力付与部材、糸張力付与部材)
91 第2ベース部(ベース部)
92 第2取付部(取付部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6