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特開2017-65898糸掛け部材、糸貯留装置、及び糸巻取機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-65898(P2017-65898A)
(43)【公開日】2017年4月6日
(54)【発明の名称】糸掛け部材、糸貯留装置、及び糸巻取機
(51)【国際特許分類】
   B65H 57/24 20060101AFI20170317BHJP
   B65H 59/16 20060101ALI20170317BHJP
   B65H 51/22 20060101ALI20170317BHJP
【FI】
   B65H57/24
   B65H59/16
   B65H51/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-194857(P2015-194857)
(22)【出願日】2015年9月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】岡 正毅
【テーマコード(参考)】
3F051
3F110
3F111
【Fターム(参考)】
3F051AB03
3F051EA01
3F110AA08
3F110CA04
3F110DA03
3F111CC06
(57)【要約】
【課題】糸と接触する部分の摩耗の進行を抑制し、糸掛け部材の長寿命化を図ることができる糸掛け部材、糸貯留装置、及び糸巻取機を提供する。
【解決手段】糸貯留ローラ51に対して回転可能に取り付けられるアーム部64と、アーム部に設けられ当該アーム部から遠ざかる方向に延在する線状部材であり、糸貯留ローラ51から解舒される糸Yと接触する案内部65と、を備え、案内部の延在方向の少なくとも一部には、延在方向に直交する断面の少なくとも一部に形成される曲率半径が0.45mm以上5.00mm以下の円弧からなる糸案内面66が形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸貯留ローラに取り付けられる糸掛け部材であって、
前記糸貯留ローラに対して回転可能に取り付けられる支持部と、
前記支持部に設けられ当該支持部から遠ざかる方向に延在する線状部材であり、糸貯留ローラから解舒される糸と接触する案内部と、
を備え、
前記案内部の延在方向の少なくとも一部には、前記延在方向に直交する断面の少なくとも一部に形成される曲率半径が0.45mm以上5.00mm以下の円弧からなる糸案内面が形成されている、糸掛け部材。
【請求項2】
糸貯留ローラに取り付けられる糸掛け部材であって、
前記糸貯留ローラに対して回転可能に取り付けられる支持部と、
前記支持部に設けられ当該支持部から遠ざかる方向に延在する線状部材であり、前記糸貯留ローラから解舒される糸と接触する案内部と、
を備え、
前記案内部には、前記延在方向に直交する断面の曲率半径が第一寸法である第一部分と、曲率半径が前記第一寸法よりも小さい第二部分と、を設け、
前記糸と接触する糸案内面が前記第一部分に設けられている、糸掛け部材。
【請求項3】
糸貯留ローラに取り付けられる糸掛け部材であって、
前記糸貯留ローラに対して回転可能に取り付けられる支持部と、
前記支持部に設けられ当該支持部から遠ざかる方向に延在する線状部材であり、前記糸貯留ローラから解舒される糸と接触する案内部と、
を備え、
前記案内部の延在方向の少なくとも一部には、前記延在方向に直交する断面の少なくとも一部に形成される楕円曲線からなる糸案内面が形成されている、糸掛け部材。
【請求項4】
前記案内部の前記延在方向の一部にのみ前記糸案内面が形成されている、請求項1〜3の何れか一項記載の糸掛け部材。
【請求項5】
前記案内部には、前記延在方向に沿って中空となる中空部が形成されている、請求項1〜4の何れか一項記載の糸掛け部材。
【請求項6】
前記支持部は、前記案内部が設けられる先端部と、前記糸貯留ローラに固定されるボス部と、前記先端部と前記ボス部との間を一方向に延在する本体部と、前記本体部を補強する補強部と、を備える、請求項1〜5の何れか一項記載の糸掛け部材。
【請求項7】
前記補強部は、前記本体部の表面から突出するように設けられ、前記本体部が延在する方向に沿って延在する突出部を有する、請求項6記載の糸掛け部材。
【請求項8】
前記ボス部は、前記本体部から突出しており、
前記突出部は、前記本体部の前記ボス部が突出する側の前記表面において、前記ボス部が突出する方向及び前記本体部が延在する方向に交差する方向の中央領域に設けられており、前記本体部の延在方向において前記ボス部が設けられている側から所定の長さに渡って形成されている、請求項7記載の糸掛け部材。
【請求項9】
前記補強部は、前記本体部において、前記ボス部が突出する方向及び前記本体部が延在する方向に交差する方向における両端部のうちの少なくとも一方の端部に形成される増厚部を有する、請求項6〜8の何れか一項記載の糸掛け部材。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項記載の糸掛け部材と、
前記糸掛け部材が回転可能に取り付けられた糸貯留ローラと、
を備える、糸貯留装置。
【請求項11】
繊維束をドラフトするドラフト装置と、
前記ドラフト装置でドラフトされた前記繊維束に撚りを与えて糸を生成する紡績装置と、
前記紡績装置で生成された前記糸を貯留する、請求項10記載の糸貯留装置と、
前記糸貯留ローラに貯留された前記糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取装置と、
を備える、糸巻取機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸掛け部材、糸貯留装置、及び糸巻取機に関する。
【背景技術】
【0002】
糸を一時的に貯留可能な糸貯留装置を備える繊維機械(例えば、紡績した糸を巻き取ってパッケージを形成する空気式紡績機等)が知られている。このような糸貯留装置として、例えば、特許文献1及び2には、糸貯留ローラ(弛み取りローラ)と、糸貯留ローラに対して相対回転可能な糸掛け部材(フライヤ)と、を備え、当該糸掛け部材に糸貯留ローラに対する回転抵抗が付与される構成の糸貯留装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−277946号公報
【特許文献2】特開2010−180023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
糸貯留装置の糸掛け部材は、糸が引っ掛けられることにより糸貯留ローラに糸を案内している。糸掛け部材において糸が引っ掛けられる部分は、糸との接触による摩耗が発生することがある。
【0005】
本発明は、糸と接触する部分の摩耗の進行を抑制し、糸掛け部材の長寿命化を図ることができる糸掛け部材、糸貯留装置、及び糸巻取機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の糸掛け部材は、糸貯留ローラに取り付けられる糸掛け部材であって、糸貯留ローラに対して回転可能に取り付けられる支持部と、支持部に設けられ当該支持部から遠ざかる方向に延在する線状部材であり、糸貯留ローラから解舒される糸と接触する案内部と、を備え、案内部の延在方向の少なくとも一部には、延在方向に直交する断面の少なくとも一部に形成される曲率半径が0.45mm以上5.00mm以下の円弧からなる糸案内面が形成されている。
【0007】
この構成の糸掛け部材では、糸の太さに対して、糸と糸案内面との接触面積が大きい。これにより、案内部の糸案内面が糸から受ける単位面積当たりの圧力(面圧)を抑制することができる。この結果、糸と接触する部分の摩耗の進行が抑制され、糸掛け部材の長寿命化を図ることができる。
【0008】
本発明の糸掛け部材では、糸貯留ローラに取り付けられる糸掛け部材であって、糸貯留ローラに対して回転可能に取り付けられる支持部と、支持部に設けられ当該支持部から遠ざかる方向に延在する線状部材であり、糸貯留ローラから解舒される糸と接触する案内部と、を備え、案内部には、延在方向に直交する断面の曲率半径が第一寸法である第一部分と、曲率半径が第一寸法よりも小さい第二部分と、を設け、糸と接触する糸案内面が第一部分に設けられている。
【0009】
この構成の糸掛け部材では、糸の太さに対して、糸と糸案内面との接触面積が大きい。これにより、案内部の糸案内面が糸から受ける単位面積当たりの圧力(面圧)を抑制することができる。この結果、糸と接触する部分の摩耗の進行が抑制され、糸掛け部材の長寿命化を図ることができる。更に、糸が接触しない第二部分の曲率半径を第一寸法よりも小さくすることで、案内部としてのサイズが大きくなることを抑制することができる。この結果、負荷(糸張力)の変動に対する糸掛け部材の反応性及び追従性が良好となる。
【0010】
本発明の糸掛け部材では、糸貯留ローラに取り付けられる糸掛け部材であって、糸貯留ローラに対して回転可能に取り付けられる支持部と、支持部に設けられ当該支持部から遠ざかる方向に延在する線状部材であり、糸貯留ローラから解舒される糸と接触する案内部と、を備え、案内部の延在方向の少なくとも一部には、延在方向に直交する断面の少なくとも一部に形成される楕円曲線からなる糸案内面が形成されている。
【0011】
糸が、上記のような糸案内面に接触する場合には、断面形状が円形の案内部と接触する場合と比べて、糸と糸案内面との接触面積が増加する。これにより、案内部の糸案内面が糸から受ける単位面積当たりの圧力(面圧)を抑制することができる。この結果、糸と接触する部分の摩耗の進行を抑制し、糸掛け部材の長寿命化を図ることができる。
【0012】
本発明の糸掛け部材では、案内部の延在方向の一部にのみ糸案内面が形成されていてもよい。
【0013】
この構成の糸掛け部材では、案内部全体に糸案内面を形成することに比べ、容易に糸案内面を形成することができる。
【0014】
本発明の糸掛け部材では、案内部には、延在方向に沿って中空となる中空部が形成されていてもよい。
【0015】
この構成の糸掛け部材では、案内部を軽量化することができる。これにより、案内部を移動させる際の自重による慣性力の影響を低減させることができる。この結果、負荷(糸張力)の変動に対する糸掛け部材の反応性及び追従性が良好となる。
【0016】
本発明の糸掛け部材では、支持部は、本体部が設けられる先端部と、糸貯留ローラに固定されるボス部と、先端部とボス部との間を一方向に延在する本体部と、本体部を補強する補強部と、を備えていてもよい。
【0017】
この構成の糸掛け部材では、支持部により案内部を安定して支持することができる。
【0018】
本発明の糸掛け部材では、補強部は、本体部の表面から突出するように設けられ、本体部が延在する方向に沿って延在する突出部を有していてもよい。
【0019】
この構成の糸掛け部材では、補強部を容易に形成することができる。
【0020】
本発明の糸掛け部材では、ボス部は、本体部から突出しており、突出部は、本体部のボス部が突出する側の表面において、ボス部が突出する方向及び本体部が延在する方向の両方に交差する方向の中央領域に設けられており、本体部の延在方向においてボス部が設けられている側から所定の長さに渡って形成されていてもよい。
【0021】
この構成の糸掛け部材では、簡単な構成により、支持部により本体部を安定して支持することができる。
【0022】
本発明の糸掛け部材では、補強部は、本体部において、ボス部が突出する方向及び本体部が延在する方向の両方に交差する方向の両端部のうちの少なくとも一方の端部に形成される増厚部を有していてもよい。
【0023】
この構成の糸掛け部材では、支持部により本体部を安定して支持することができる。
【0024】
本発明の糸貯留装置は、上記糸掛け部材と、糸掛け部材が回転可能に取り付けられた糸貯留ローラと、を備える。
【0025】
本発明の糸巻取機は、繊維束をドラフトするドラフト装置と、ドラフト装置でドラフトされた繊維束に撚りを与えて糸を生成する紡績装置と、上記糸貯留装置と、糸貯留ローラに貯留された糸をパッケージに巻き取る巻取装置と、を備えている。
【0026】
この構成の糸貯留装置及び糸巻取機では、糸と接触する部分の摩耗の進行を抑制し、長寿命化を図ることができる糸掛け部材が採用されるので、糸貯留装置における糸掛け部材の交換サイクルを長くすることができる。この結果、糸貯留装置及び糸巻取機の稼働効率を向上することができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、糸と接触する部分の摩耗の進行を抑制し、糸掛け部材の長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第一実施形態の紡績機の正面図である。
図2図1の紡績機の紡績ユニットの側面図である。
図3図1の糸貯留装置近傍を拡大して示した側面図である。
図4図3の糸掛け部材の斜視図である。
図5】(A)は、図4の糸掛け部材の案内部をV−V線で切断した断面図であり、(B)はその変形例に係る糸掛け部材の案内部をV−V線で切断した断面図である。
図6】(A)は、第二実施形態に係る糸掛け部材の案内部をV−V線で切断した断面図であり、(B)はその変形例に係る糸掛け部材の案内部をV−V線で切断した断面図である。
図7】(A)及び(B)は、第二実施形態の更なる変形例に係る糸掛け部材の案内部をV−V線で切断した断面図である。
図8】更なる別の変形例に係る糸掛け部材の斜視図である。
図9】変形例に係るアーム部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0030】
(第一実施形態)
図1に示されるように、紡績機1は、複数の紡績ユニット(糸巻取機)2と、糸継台車3と、第1エンドフレーム5Aと、第2エンドフレーム5Bと、を備えている。複数の紡績ユニット2は、一列に配列されている。なお、以下の説明では、糸Yが走行する経路(すなわち、糸道)において、糸Yが生成される側を上流側といい、糸Yが巻き取られる側を下流側という。
【0031】
各紡績ユニット2は、糸Yを生成してパッケージPに巻き取る。ある紡績ユニット2で糸Yが切断されたり、何らかの理由で糸Yが切れたりした場合、糸継台車3は、当該紡績ユニット2で糸継動作を行う。
【0032】
第1エンドフレーム5Aには、紡績ユニット2の各部において旋回空気流などを発生させるための空気供給源及び/又は紡績ユニット2の各部において吸引空気流を発生させるための吸引源などが収容されている。
【0033】
第2エンドフレーム5Bには、紡績ユニット2の各部に動力を供給するための駆動モータなどが収容されている。第2エンドフレーム5Bには、機台制御装置11と、表示部Dと、入力キーKと、が設けられている。
【0034】
機台制御装置11は、紡績機1の各部を集中的に管理及び制御する。表示部Dは、紡績ユニット2の設定内容及び/又は状態に関する情報などを表示することができる。オペレータが入力キーKを用いて適宜の操作を行うことにより、紡績ユニット2の設定作業を行うことができる。
【0035】
図1及び図2に示されるように、各紡績ユニット2は、糸Yの走行方向において上流側から順に、ドラフト装置6と、空気紡績装置7と、糸監視装置8と、テンションセンサ9と、糸貯留装置50と、ワキシング装置12と、巻取装置13と、を備えている。ユニットコントローラ10は、所定数の紡績ユニット2ごとに設けられており、紡績ユニット2の動作を制御する。
【0036】
ドラフト装置6は、スライバ(繊維束)Sをドラフトする。ドラフト装置6は、スライバSの走行方向において上流側から順に、バックローラ対14と、サードローラ対15と、ミドルローラ対16と、フロントローラ対17と、を有している。各ローラ対14,15,16及び17は、ボトムローラと、トップローラと、を有している。ボトムローラは、第2エンドフレーム5Bに設けられた駆動モータ又は各紡績ユニット2に設けられた駆動モータにより回転駆動される。ミドルローラ対16のトップローラに対しては、エプロンベルト16Aが設けられている。ミドルローラ対16のボトムローラに対しては、エプロンベルト16Bが設けられている。
【0037】
空気紡績装置7は、ドラフト装置6でドラフトされた繊維束Fに旋回空気流によって撚りを与えて糸Yを生成する。より詳細には(ただし、図示省略)、空気紡績装置7は、紡績室と、繊維案内部と、旋回空気流発生ノズルと、中空ガイド軸体と、を有している。繊維案内部は、上流側のドラフト装置6から供給された繊維束Fを紡績室内に案内する。旋回空気流発生ノズルは、繊維束Fが走行する経路の周囲に配置されている。旋回空気流発生ノズルから空気が噴射されることにより、紡績室内に旋回空気流が発生する。この旋回空気流によって、繊維束Fを構成する複数の繊維の各繊維端が反転されて旋回させられる。中空ガイド軸体は、糸Yを紡績室内から空気紡績装置7の外部に案内する。
【0038】
糸監視装置8は、空気紡績装置7と糸貯留装置50との間に配置されている。糸監視装置8は、走行する糸Yに光を照射することにより糸Yの状態を検出する光学式の糸監視装置である。糸監視装置8は、走行する糸Yの状態を監視し、糸欠陥の有無を検出する。糸監視装置8は、糸欠陥を検出した場合、糸欠陥検出信号をユニットコントローラ10に送信する。糸監視装置8は、糸欠陥として、例えば、糸Yの太さ異常及び/又は糸Yに含有されている異物を検出する。糸監視装置8は、糸切れなども検出する。
【0039】
テンションセンサ9は、空気紡績装置7と糸貯留装置50との間において、走行する糸Yのテンションを測定し、テンション測定信号をユニットコントローラ10に送信する。糸監視装置8及び/又はテンションセンサ9の検出結果に基づきユニットコントローラ10が異常有りと判断した場合、紡績ユニット2において、糸Yが切断される。具体的には、空気紡績装置7への空気の供給が停止されて、糸Yの生成が中断されることにより、糸Yが切断される。或いは、別途設けられたカッタにより糸Yが切断されるようにしてもよい。
【0040】
ワキシング装置12は、糸貯留装置50と巻取装置13との間において、糸Yにワックスを付与する。
【0041】
糸貯留装置50は、空気紡績装置7と巻取装置13との間において、糸Yの弛みを取る。糸貯留装置50は、空気紡績装置7から糸Yを安定して引き出す機能、糸継台車3による糸継動作時などに空気紡績装置7から送り出される糸Yを滞留させて糸Yが弛むのを防止する機能、及び糸貯留装置50よりも下流側の糸Yのテンションの変動が空気紡績装置7に伝わるのを防止する機能を有している。なお、糸貯留装置50の詳細な構成については後段にて詳述する。
【0042】
巻取装置13は、糸YをボビンBに巻き取ってパッケージPを形成する。巻取装置13は、クレードルアーム21と、巻取ドラム22と、トラバースガイド23と、を有している。
【0043】
クレードルアーム21は、ボビンBを回転可能に支持する。クレードルアーム21は、支軸24によって揺動可能に支持されており、ボビンBの表面又はパッケージPの表面を巻取ドラム22の表面に適切な圧力で接触させる。第2エンドフレーム5Bに設けられた駆動モータ(図示省略)が、複数の紡績ユニット2の巻取ドラム22を一斉に駆動する。これにより、各紡績ユニット2において、ボビンB又はパッケージPが巻取方向に回転させられる。各紡績ユニット2のトラバースガイド23は、複数の紡績ユニット2で共有されるシャフト25に設けられている。第2エンドフレーム5Bの駆動モータがシャフト25を巻取ドラム22の回転軸方向に往復駆動することによって、回転するボビンB又はパッケージPに対してトラバースガイド23が糸Yを所定幅でトラバースする。
【0044】
糸継台車3は、ある紡績ユニット2において糸Yが切断されたり、何らかの理由で糸Yが切れたりした場合、当該紡績ユニット2まで走行して、糸継動作を行う。糸継台車3は、サクションパイプ31と、糸継装置37と、サクションマウス38と、を有している。
【0045】
サクションパイプ31は、支軸31Aによって回動可能に支持されており、空気紡績装置7からの糸Yを捕捉して糸継装置37に案内する。サクションマウス38は、支軸38Aによって回動可能に支持されており、巻取装置13からの糸Yを捕捉して糸継装置37に案内する。糸継装置37は、案内された糸Y同士の糸継ぎを行う。糸継装置37は、圧縮空気を用いるスプライサ、種糸を用いるピーサー、又は糸Yを機械的に継ぐノッターなどである。
【0046】
糸継台車3が糸継ぎ動作を行うとき、パッケージPを反巻取方向に回転(逆回転)させる。このときには、パッケージPが巻取ドラム22から離間するようにクレードルアーム21がエアーシリンダ(図示省略)によって移動させられ、糸継台車3に設けられた逆回転用ローラ36によってパッケージPが逆回転させられる。
【0047】
上述した糸貯留装置50について、より詳細に説明する。図3に示されるように、糸貯留装置50は、糸貯留ローラ51と、糸掛け部材60と、を備えている。糸貯留装置50は、貯留量センサ56と、上流側ガイド57と、下流側ガイド59と、糸外し部材71と、を更に備えていてもよい。
【0048】
糸貯留ローラ51は、電動モータ55の駆動軸55Aに固定されており、電動モータ55によって回転させられる。糸貯留ローラ51は、糸貯留部52と、基端側テーパ部53と、先端側テーパ部54と、を有している。糸貯留部52は、糸Yが巻き付けられる円筒状の部分であり、先端側に向かって僅かに先細りに形成されている。糸貯留部52は、糸Yの巻付け開始側である基端部52aと、糸Yが解舒される側である先端部52bとを有する。基端側テーパ部53は、基端部52aから上流側に向かって末広がりとなっている。先端側テーパ部54は、先端部52bから下流側に向かって末広がりとなっている。
【0049】
基端側テーパ部53は、上流側から糸貯留ローラ51に導入される糸Yを受けて基端部52aに円滑に案内する。これにより、糸貯留部52には、基端側から先端側に向かって整然と糸Yが巻き付けられていく。糸貯留部52に巻き付けられた糸Yは、糸貯留部52上において糸層を形成する。糸層は、糸貯留部52において糸Y同士が略平行となるように巻き付けられている部分である。先端側テーパ部54は、糸貯留ローラ51から糸Yが解舒される際に、糸貯留部52に巻き付けられた糸Yが一度に抜け落ちる輪抜け現象の発生を防止しつつ、糸貯留ローラ51から下流側に糸Yを円滑に導出する。
【0050】
貯留量センサ56は、糸貯留ローラ51に貯留されている糸Yの貯留量を非接触式で検出する。貯留量センサ56は、検出した貯留量をユニットコントローラ10に送信する。
【0051】
上流側ガイド57は、糸貯留ローラ51の上流側に配置されている。上流側ガイド57は、糸貯留ローラ51の外周面に対して糸Yを適切に案内する。上流側ガイド57は、空気紡績装置7から伝播される糸Yの撚りが当該上流側ガイド57よりも下流側に伝わることを防止する。
【0052】
下流側ガイド59は、糸貯留ローラ51の下流側に配置されている。下流側ガイド59は、糸Yの軌道を規制し、下流側ガイド59より下流側の走行経路を安定させて糸Yを案内する。
【0053】
糸掛け部材60は、図2に示されるように、糸貯留ローラ51の先端側に設けられ、糸Yを引っ掛けて糸貯留ローラ51に巻き付ける部材である。図3に示されるように、糸掛け部材60は、フライヤ軸61と、フライヤ63と、を有している。フライヤ軸61は、糸貯留ローラ51と同一軸回りに回転可能に設けられている。フライヤ63は、フライヤ軸61の先端に固定されており、その先端部が糸貯留ローラ51の先端側テーパ部54上に位置するように湾曲する形状に形成されている。糸掛け部材60を糸貯留ローラ51に対して相対回転させるために、糸貯留ローラ51とフライヤ軸61との間には、所定値以上のトルクを生じるような磁力発生手段が設けられている。
【0054】
糸外し部材71は、糸掛け部材60から糸Yを外す部材であり、糸貯留ローラ51の先端側テーパ部54近傍に配置されている。糸外し部材71は、その先端部が下降位置と上昇位置との間で揺動可能となるように、支軸71Aによって支持されている。下降位置は、糸道から退避した位置であり、上昇位置は、糸道上の糸Yを押し上げて糸掛け部材60から糸Yを外す位置である。糸外し部材71は、ばね(図示省略)によって下降位置側に付勢されている。糸外し部材71は、通常は下降位置に位置しており、糸継動作時等には、糸継台車3に設けられた空気圧シリンダ(図示省略)によって上昇位置に移動させられる。
【0055】
図4に示されるように、フライヤ63は、アーム部(支持部)64と、案内部65と、を有している。アーム部64は、フライヤ軸61の先端部に取り付けられ、フライヤ軸61と共に回転可能に構成されている。アーム部64はボス部64aを備えており、当該ボス部64aにフライヤ軸61を取り付けることができる。アーム部64は、ボス部64aから糸貯留ローラ51の径方向に延びるように細長く形成されている。
【0056】
案内部65は、アーム部64に固定されており、アーム部64の先端部からアーム部64から遠ざかる方向に延在する。案内部65は、例えば、セラミック、鉄又はピアノ線により形成される線状部材である。案内部65の延在方向に直交する断面形状は円形である。案内部65は、線状部材を折り曲げることにより、糸貯留ローラ51の外周面(糸貯留部52)に向かって適宜湾曲する形状に形成されている。
【0057】
案内部65の延在方向の一部には、径大部65aが形成されている。径大部65aは、図5(A)に示されるように、案内部65の延在方向に直交する断面形状が円形であり、直径D1が0.9mm以上1.2mm以下である。案内部65には、当該径大部65aの外周面66aからなる糸案内面66が形成されている。言い換えれば、案内部65の延在方向における一部に形成された径大部65aの外周面66aによって糸案内面66が形成されている。すなわち、糸案内面66は、曲率半径が0.45mm以上0.60mm以下の円弧からなる。糸案内面66は、糸Yと接触して(糸Yを引っ掛けて)糸Yを糸貯留部52に案内する部分である。これにより、案内部65は、糸Yと係合して(糸Yを引っ掛けて)、当該糸Yを糸貯留ローラ51の外周面(糸貯留部52)へ案内することができる。
【0058】
なお、径大部65aは、案内部65の他の部分と一体的に形成されていてもよいし、別体として、案内部65の本体に着脱可能に設けられていてもよい。径大部65aが別体として設けられている場合、径大部65aの材質は、案内部65の他の部分の材質と異なっていてもよいし、同じでもよい。
【0059】
図5(B)に示されるように、案内部65には延在方向に延在する中空部67が形成されていてもよい。中空部67は、アーム部64に固定される基端側から反対側の先端側まで案内部65全体に延びていてもよいし、延在方向に部分的に形成されていてもよい。例えば、案内部65の外径D1が1.1mmのときは、案内部65の内径D2は0.45mm以上0.63mm以下である。例えば、外径D1が1.2mmのときは、内径D2を0.63mm以上0.79mm以下である。例えば、外径D1が1.3mmのときは、内径D2を0.83mm以上0.94mm以下である。このような構成の糸掛け部材60では、案内部65を軽量化することができる。これにより、案内部65を移動させる際の自重による慣性力の影響を低減させることができる。この結果、負荷(糸張力)の変動に対する糸掛け部材60の反応性及び追従性が良好となる。
【0060】
上記第一実施形態の糸掛け部材60では、糸Yの太さに対して、糸Yと糸案内面66との接触面積が大きい。これにより、糸案内面66が糸Yから受ける単位面積当たりの圧力(面圧)を抑制することができる。この結果、糸Yと接触する部分の摩耗の進行が抑制され、糸掛け部材60の長寿命化を図ることができる。
【0061】
一般的に、糸貯留ローラ51に貯留される糸Yの直径は、0.1mm以上0.4mm以下である。したがって、このような直径を有する糸Yが接触する案内部65の直径を0.9mm以上1.2mm以下とすることにより、糸案内面66の面圧を抑制することができる。
【0062】
なお、第一実施形態では、曲率半径が0.45mm以上0.60mm以下の円弧からなる糸案内面66を例に挙げて説明したが、これに限定されない。例えば、糸案内面66の曲率半径は、5.00mm以下(直径は、10.0mm以下)であればよく、好ましくは1.50mm以下であり、更に好ましくは、第一実施形態のとおり0.60mm以下である。
【0063】
(第二実施形態)
次に、第二実施形態に係る糸掛け部材160を備える紡績機101について説明する。第二実施形態に係る糸掛け部材160は、案内部65に形成される糸案内面166の形状が第一実施形態に係る糸案内面66の形状とは異なるのみであり、その他の点については、第一実施形態に係る糸掛け部材60と同様である。案内部65に形成される糸案内面166について詳細に説明し、その他の点については説明を省略する。
【0064】
案内部65の延在方向の一部には、図6(A)に示されるように、延在方向に直交する断面の一部に形成される楕円曲線からなる糸案内面166が形成されている。一例として、案内部65の延在方向の一部には、延在方向に直交する断面形状が半楕円形状の外周面166aの一部からなる糸案内面166が形成されている。言い換えれば、糸掛け部材160では、糸Yは、断面形状が半楕円形状の外周面166aからなる糸案内面166に接触することにより案内される。本実施形態の半楕円は、長軸と短軸との長さの比が2:1である。糸案内面166となる側と反対側の外周面167aは、延在方向に直交する断面形状が円形状となっている。言い換えれば、案内部65の延在方向における一部に形成された加工部165aの外周面166aによって糸案内面166が形成されている。糸案内面166は、糸貯留ローラ51から解舒される糸Yと接触する部分である。このような糸案内面166は、例えば、延在方向に直交する断面形状が円形であり、その直径D1が0.9mm以上1.2mm以下の案内部65の外周面の一部をプレスすることによって形成することができる。
【0065】
上記第二実施形態の糸掛け部材160では、糸Yが、上記のような糸案内面166に接触する場合には、断面形状が円形の案内部と接触する場合と比べて、糸Yと糸案内面166との接触面積が増加する。これにより、糸案内面166が糸Yから受ける単位面積当たりの圧力(面圧)を抑制することができる。この結果、糸Yと接触する部分の摩耗の進行を抑制し、糸掛け部材160の長寿命化を図ることができる。
【0066】
他の例として、図6(B)に示されるように、案内部65の延在方向の一部は、延在方向に直交する断面形状が楕円形状に形成されていてもよい。また、図7(A)に示されるように、糸案内面166となる側と反対側の外周面167aは、平坦に形成されていてもよいし、図7(B)に形成されるように、凹状に形成されていてもよい。これらの何れの場合であっても、糸Yは、断面形状が半楕円形状の外周面166aからなる糸案内面166に接触することにより案内される。
【0067】
これらの何れの場合であっても、糸Yが接触しない第二部分S2の曲率半径を第一部分S1の曲率半径よりも小さくしているので、案内部65としてのサイズが大きくなることを抑制することができる。この結果、負荷(糸張力)の変動に対する糸掛け部材160の反応性及び追従性が良好となる。
【0068】
これらの何れの場合であっても、図5(B)に示されるように、案内部65には延在方向に延在する中空部67が形成されていてもよい。中空部67は、アーム部64に固定される基端側から反対側の先端側まで延びていてもよいし、部分的に形成されていてもよい。
【0069】
案内部65には、糸案内面166が設けられた、曲率半径の大きな(曲率が小さな)部分(第一部分)S1と、糸案内面166よりも曲率半径の小さな(曲率が大きな)部分(第二部分)S2と、が設けられている。糸Yが第一部分S1の外周面と接触する場合には、例えば、糸Yが第二部分S2の外周面と接触する場合と比べて、糸Yと糸案内面166との接触面積が増加する。これにより、糸案内面166が糸Yから受ける単位面積当たりの圧力(面圧)を抑制することができる。
【0070】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されない。
【0071】
<変形例1>
上記実施形態(第一及び第二実施形態)では、案内部65の延在方向における一部に形成された径大部65a又は加工部165aの外周面66a,166aによって糸案内面66,166が形成されている例を挙げて説明したが、本発明はこれに限定されない。
【0072】
例えば、図8に示されるように、案内部265は、延在方向において基端側から反対側の先端側までの全てが、図5(A)に示されるような、延在方向に直交する断面形状が円形かつ、その直径が0.9mm以上10.0mm以下(好ましくは、3.00mm以下、更に好ましくは、1.20mm以下)の線状部材であってもよい。糸案内面266は、案内部265の延在方向の一部に形成されており、当該案内部265の外周面265a(曲率半径が0.45mm以上5.00mm以下(好ましくは、1.50mm以下、更に好ましくは、0.60mm以下)の円弧)により形成されている。この場合も、案内部265は、図5(B)に示されるような中空部67を有していてもよい。第一実施形態において説明した図5(A)及び図5(B)に示されるような断面形状を有する案内部265だけでなく、上記第二実施形態で説明した図6(A)、図6(B)、図7(A)及び図7(B)の何れかに示されるような断面形状を有する案内部365であってもよい。糸案内面366は、案内部365の延在方向の一部に、案内部365の外周面365aにより形成されている。
【0073】
これらの場合であっても、糸Yと接触する部分の摩耗の進行を抑制し、糸掛け部材60,160の長寿命化を図ることができる。
【0074】
<変形例2>
上記説明では、延在方向に直交する断面の曲率半径が第一寸法である第一部分S1と、曲率半径が第一寸法よりも小さい第二部分S2とを有する案内部として、第二実施形態(案内部65の延在方向の一部には、延在方向に直交する断面の少なくとも一部に形成される楕円曲線からなる糸案内面166が形成されている。)を例に挙げて説明したが、これに限定されない。当該案内部は、延在方向に直交する断面が、例えば、0.45mm以上5.0mm以下(好ましくは、1.50mm以下、更に好ましくは、0.60mm以下)(第一寸法)の曲率半径の円弧(第一部分)と、0.20mm以上0.45mm未満の曲率半径の円弧(第二部分)とを有するように構成されていてもよい。
【0075】
<その他の変形例>
上記実施形態又は変形例に係る案内部65,265,365の表面には、一層又は二層以上の被覆層が形成されていてもよい。一層の被膜層が形成される場合には、当該被覆層は、DLC(Diamond-like Carbon)コーティングにより形成されていてもよい。二層の被覆膜が形成される場合には、案内部65,265,365を形成する本体部(ピアノ線、又は、ばね鋼等の鋼材)を硬質クロムにより形成される層で覆い、当該硬質クロムにより形成される層をDLCにより形成される層で覆ってもよい。これにより、案内部65,265,365において、糸Yと接触する部分の摩耗の進行を抑制し、糸掛け部材60,160の長寿命化を図ることができる。糸案内面66,166,266,366の表面を滑らかにすることができるので、糸Yの品質を高めることができる。
【0076】
上記実施形態又は変形例では、糸掛け部材60,160を糸貯留ローラ51に対して相対回転させるために、糸貯留ローラ51とフライヤ軸61との間には、所定値以上のトルクを生じさせるような磁力発生手段を設ける例を挙げて説明したが、糸掛け部材60,160と糸貯留ローラ51とは別のモータを用いてそれぞれ独立して回転させるようにしてもよい。
【0077】
上記実施形態又は変形例に係る糸掛け部材60,160は、アーム部64と案内部65,265,365とが別体として形成された例を挙げて説明したが、一体的に形成されていてもよい。
【0078】
前記糸貯留ローラ51の形状は、上記実施形態で説明した形状及び図3に図示した形状には限定されない。例えば、先端側テーパ部54は省略してもよい。
【0079】
上記実施形態又は変形例に係るアーム部64は、図4又は図8に図示されている形状とは異なる形状を有していてもよい。例えば、図9に示されるように、アーム部(支持部)464は、案内部65,265,365が設けられる先端部401と、糸貯留ローラ51に固定されるボス部403と、先端部401とボス部403との間を一方向に延在する本体部402と、本体部402を補強する補強部としての突出部404と、を備えていてもよい。突出部404が本体部402に設けられることにより、案内部65,265,365による糸Yの案内動作が安定する。なお、図9では、案内部65,265,365が設けられる先端部401のみ記載し、案内部65,265,365の記載は省略する。
【0080】
突出部404は、本体部402の表面402aから突出するように設けられ、本体部402が延在する方向(図9に示す方向L)に沿って延在する。ボス部403は、本体部402から突出している。突出部404は、本体部402においてボス部403が突出する側の表面402aにおいて、ボス部403が突出する方向及び本体部402が延在する方向に直交(交差)する方向(図9に示す方向W)の中央領域に設けられている。突出部404は、本体部402の延在方向においてボス部403が設けられている側から所定の長さ(図9に示す例では、本体部402の延在方向における長さの1/2)に渡って形成されている。突出部404の上記長さは、図9に示されている長さに限定されず、先端部の近傍付近まで至るように、すなわち、本体部402の延在方向における長さと同等の長さに形成されていてもよい。また、図9に示す例では、本体部402の表面402aからの突出量が、ボス部403から先端部401に向かって徐々に小さくなる例を挙げて説明したが、これに限定されず、段階的に小さくなってもよいし、一定であってもよい。
【0081】
補強部としての突出部404に加えて、或いは突出部404に代えて、本体部402においてボス部403が突出する方向及び本体部402が延在する方向の両方に直交(交差)する方向(短手方向)における両端部に形成される増厚部405A,405Bを有していてもよい。増厚部405A,405Bは、本体部402の上記短手方向における両端部に形成されるだけでなく、一方の端部のみに形成されてもよい。増厚部405A,405Bの上記延在方向Lの長さは、図9に示されている長さに限定されず、先端部の近傍付近まで至るように(すなわち、本体部402の延在方向における長さと同等の長さに)形成されていてもよい。また、図9に示す例では、本体部402の表面402aからの増厚量(本体部402において増厚部405A,405Bが形成されていない中央領域を基準とする増厚量)が、ボス部403から先端部401に向かって徐々に小さくなっている。しかし、当該増厚量は当該例に限定されず、ボス部403から先端部401に向かって段階的に小さくなってもよいし、一定であってもよい。
【0082】
上記実施形態又は変形例では、空気紡績装置は、繊維束の撚りが空気紡績装置の上流側に伝わるのを防止するために、繊維案内部に保持されて紡績室内に突出するように配置されたニードルを更に備えていてもよい。また、空気紡績装置は、そのようなニードルに代えて、繊維案内部の下流側端部によって、繊維束の撚りが空気紡績装置の上流側に伝わるのを防止するものであってもよい。更に、空気紡績装置は、上記の構成に代えて、互いに反対方向に繊維束に撚りを掛ける一対のエアージェットノズルを備えていてもよい。
【0083】
上記実施形態又は変形例では、紡績ユニット2は、糸貯留装置50が空気紡績装置7から糸Yを引き出す機能を有していたが、デリベリローラとニップローラを設け、デリベリローラとニップローラとが空気紡績装置7から糸Yを引き出してもよい。
【0084】
上記実施形態又は変形例では、紡績機1は、機台高さ方向において、上側で供給された糸Yが下側で巻き取られるように各装置が配置されていた。上記の構成に代えて、下側で供給された糸が上側で巻き取られるように各装置が配置されていてもよい。
【0085】
上記実施形態又は変形例では、紡績機1は、ドラフト装置6のボトムローラの少なくとも一つ及びトラバースガイド23が、第2エンドフレーム5Bからの動力によって(すなわち、複数の紡績ユニット2共通で)駆動されていた。上記の構成に代えて、紡績ユニット2の各部(例えば、ドラフト装置、紡績装置、巻取装置等)が紡績ユニット2ごとに独立して駆動されてもよい。
【0086】
上記実施形態又は変形例では、糸Yの走行方向において、テンションセンサ9が糸監視装置8の上流側に配置されてもよい。ユニットコントローラ10は、紡績ユニット2ごとに設けられてもよい。紡績ユニット2において、ワキシング装置12、テンションセンサ9及び糸監視装置8は、省略されてもよい。
【0087】
図1では、紡績機1は、チーズ形状のパッケージPを巻き取るように図示されているが、コーン形状のパッケージを巻き取ることも可能である。コーン形状のパッケージの場合、糸のトラバースにより糸の弛みが発生するが、当該弛みは、糸貯留装置50で吸収することができる。各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。
【符号の説明】
【0088】
1,101…紡績機、2…紡績ユニット(糸巻取機)、3…糸継台車、50…糸貯留装置、51…糸貯留ローラ、52…糸貯留部、55…電動モータ、57…上流側ガイド、59…下流側ガイド、60,160…糸掛け部材、61…フライヤ軸、63…フライヤ、64,464…アーム部(支持部)、65,265,365…案内部、65a…径大部、66,166,266,366…糸案内面、66a,166a…外周面、67…中空部、165a…加工部、401…先端部、402…本体部、403…ボス部、404…突出部、405A,405B…増厚部、S1…第一部分、S2…第二部分。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9