(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-66172(P2017-66172A)
(43)【公開日】2017年4月6日
(54)【発明の名称】異音防止処理用組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 23/00 20060101AFI20170317BHJP
C08L 83/04 20060101ALI20170317BHJP
C08L 23/06 20060101ALI20170317BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20170317BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20170317BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L83/04
C08L23/06
C08L33/04
C08K3/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-189245(P2015-189245)
(22)【出願日】2015年9月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000135265
【氏名又は名称】株式会社ネオス
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本多 勇作
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AE03W
4J002BB03W
4J002BB03X
4J002BB25W
4J002BG02X
4J002CP03X
4J002FD310
4J002GH01
4J002GN00
4J002HA07
(57)【要約】
【課題】ポリウレタンフォームなどの樹脂発泡体と硬質部材の摩擦による異音の発生を防止するために、樹脂発泡体に塗布して異音防止性能を発揮し、かつ耐久性に優れた異音防止処理用組成物を提供する。
【解決手段】ワックス及び粒子が水性媒体中に分散されてなる異音防止処理用組成物であって、粒子の平均粒子径が20μm以下である異音防止処理用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワックス及び粒子が水性媒体中に分散されてなる異音防止処理用組成物であって、粒子の平均粒子径が20μm以下である異音防止処理用組成物。
【請求項2】
粒子が、シリコーン粒子、シリカ粒子、ポリエチレン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子からなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の異音防止処理用組成物。
【請求項3】
粒子がシリコーン粒子である請求項2に記載の異音防止処理用組成物。
【請求項4】
粒子が、シリコーンレジン、シリコーンゴム、シリコーンエラストマー及びこれらの複合体から選ばれる粒子である請求項1〜3のいずれか1項に記載の異音防止処理用組成物。
【請求項5】
ワックスと粒子の比率が質量比で80 : 20 〜 30 : 70である請求項1〜4のいずれか1項に記載の異音防止処理用組成物。
【請求項6】
ワックスエマルションと粒子の水分散液を混合して製造する請求項1〜5のいずれか1項に記載の異音防止処理用組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異音防止処理用組成物及びその製造方法に関し、詳しくはポリウレタンフォーム等の樹脂発泡体と硬質の樹脂あるいは金属との擦れによる軋み音などの異音の発生を防止する組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車等の車両シートをはじめとした内装材としてポリウレタンフォームなどの樹脂発泡体が用いられている。このようなポリウレタンフォームは走行時の振動やシート上の人や荷物の動きによって金属フレーム等の他部材と擦れ合うと、異音が発生することがあり問題となっている。
【0003】
この異音の発生を防止するため、様々な試みがなされている。特許文献1では、シリコーン変性アクリル樹脂とウレタン樹脂からなる異音防止処理剤を提案している。この異音防止処理剤は溶剤を含む塗料の形態で使用されているが、作業環境の点からは溶剤を使用しない水系の形態が望ましい。特許文献2ではポリウレタンフォームからなるシート本体裏面のうちバネやシートフレームと接触する部分に不織布を設ける方法が提案されている。しかしながらこのようにシートフレーム等との接触部に不織布を設ける場合、一体発泡成形もしくは接着剤を使用し後接着する必要があり、成形効率の低下やコスト高につながるという問題点がある。また、特許文献3では、ワックスと流動点が―10℃以下の鉱物性油を水性分散媒体に分散させたエマルションからなる擦れ音防止剤を、発泡樹脂成型体の表面に塗布する方法が提案されている。しかしながら、液状のオイル成分を用いるため、他部材との接触時に有効成分が移行しやすく、他部材の汚染及び耐久性に問題がある。シリコーンオイル類を含む異音防止剤の提案もなされているが同様の理由で他部材の汚染および耐久性に問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3606929号
【特許文献2】特開平5-138782
【特許文献3】特許第5609245号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、当該分野の上記の現状に鑑み、ポリウレタンフォームなどの樹脂発泡体と硬質部材の摩擦による異音の発生を防止するために、樹脂発泡体に塗布して異音防止性能を発揮し、かつ耐久性に優れた異音防止処理用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の異音防止処理用組成物及びその製造方法を提供するものである。
項1. ワックス及び粒子が水性媒体中に分散されてなる異音防止処理用組成物であって、粒子の平均粒子径が20μm以下である異音防止処理用組成物。
項2. 粒子が、シリコーン粒子、シリカ粒子、ポリエチレン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子からなる群から選択される1種以上である、項1に記載の異音防止処理用組成物。
項3. 粒子がシリコーン粒子である項2に記載の異音防止処理用組成物。
項4. 粒子が、シリコーンレジン、シリコーンゴム、シリコーンエラストマー及びこれらの複合体から選ばれる粒子である項1〜3のいずれか1項に記載の異音防止処理用組成物。
項5. ワックスと粒子の比率が質量比で80 : 20 〜 30 : 70である項1〜4のいずれか1項に記載の異音防止処理用組成物。
項6. ワックスエマルションと粒子の水分散液を混合して製造する項1〜5のいずれか1項に記載の異音防止処理用組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の水性異音防止処理用組成物を用いることにより、ポリウレタンフォーム等の塗布対象表面と金属等の他部材との摩擦により生じる異音を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】異音防止性評価および摺動試験の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明で使用するワックスとしては、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、酸化ワックスがあげられる。好ましくは、ポリエチレンワックス及び酸化ワックスである。ワックスはエマルションの形態で水性媒体中に分散されている。
【0010】
本発明における粒子は、平均粒子径は、20μm以下であることが好ましく、5μm以下であることがより好ましい。平均粒子径が20μmを超えると水への分散が難しく、異音防止処理剤の液安定性が低下し粒子がポリウレタンフォーム表面に均一に塗布されないために異音防止性能が低下するおそれがある。
【0011】
粒子としては、シリコーン粒子、シリカ粒子、ポリエチレン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子などから選択される1種以上を用いることができる。
【0012】
シリコーン粒子としてはシリコーンレジン、シリコーンゴム、シリコーンエラストマー等のパウダー、シリコーンゴムパウダーの表面をシリコーンレジンで被覆した複合シリコーンパウダーを用いることができる。また、ポリスチレン、アクリル、ポリウレタン、シリカ等のコア粒子の表面をシリコーンレジンで被覆した粒子を用いることができる。
【0013】
アクリル樹脂粒子としては、(架橋)ポリメタクリル酸メチル樹脂粒子、(架橋)ポリメタクリル酸ブチル樹脂粒子、(架橋)ポリアクリル酸エステル樹脂粒子を挙げることができる。
【0014】
粒子として好ましくはシリコーン粒子であり、シリコーンレジン、シリコーンゴム、シリコーンエラストマー及びこれらの組合せからなるパウダーがより好ましい。市販品としては例えば、信越化学工業株式会社のKMPシリーズや東レ・ダウコーニング株式会社のEPシリーズ等の公知のシリコーンパウダーを使用できる。
【0015】
前記ワックスと粒子の配合量は、該粒子の粒径およびワックス成分の種類等に応じて適宜選定すればよいが、通常は、ワックスと粒子の比率が質量比で80 : 20 〜 30 : 70になるようにする。該粒子の配合量が上記範囲より少ない場合には異音防止効果が不十分となるおそれがあり、また、上記範囲よりも多くなると、耐久性が不十分となるおそれがある。
【0016】
本発明の組成物の調製方法は前記ワックスを乳化させたワックスエマルションと、粒子を水に分散させた水分散液を混合することにより調製することが好ましい。
【0017】
ワックスエマルションは、水に分散したワックスおよび乳化剤を転相乳化法によって乳化させることにより調製することができる。乳化剤は、公知の界面活性剤を使用すればよく、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤のいずれも使用することができる。
【0018】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、アルキルアンモニウム塩等が挙げられる。また、ノニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルエーテルや脂肪酸グリセリンエステル等が挙げられる。ワックスエマルションは、各種の市販品を用いることができる。
【0019】
粒子は水に分散した水性分散液として使用することが好ましい。水性分散液は市販品を使用してもよいが、各種粒子を分散剤を用いて水中に分散させて製造してもよい。分散剤は、公知の界面活性剤を使用すればよく、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤のいずれも使用することができる。
【0020】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキルスルホン酸塩等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩、アルキルアンモニウム塩等が挙げられる。また、ノニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルエーテルや脂肪酸グリセリンエステル等が挙げられる。
【0021】
本発明の組成物は、性能を損なわない範囲で界面活性剤などの濡れ性向上剤、防腐剤、顔料、帯電防止剤等を配合してもよい。
【0022】
本発明の組成物は、樹脂発泡体などの処理対象表面に組成物を塗布し、乾燥させて使用する。樹脂発泡体は、特に限定されないが、自動車、車両などの輸送用機器のシートをはじめとした内装材が異音防止の好ましい対象である。
【0023】
本発明の組成物が塗布される対象物は、特に樹脂発泡体を対象とし、ポリウレタンフォーム等の樹脂からなる発泡体を例示できる。
【0024】
本発明の組成物の塗布方法は、スプレー塗布、刷毛塗り、ローラー塗り、浸漬などが選択される。
【0025】
乾燥方法としては、常温で風乾すればよいが、加熱して乾燥させてもよい。
【0026】
本発明の組成物を塗布した場合の膜厚は、特に問わないが、通常ワックス及び粒子の固形分合計量で0.5〜50g / m
2程度を塗布する。
【0027】
異音防止剤100質量部に対する上記ワックス及びシリコーンパウダーの配合量としては該シリコーンパウダーの粒径およびワックス成分の種類等に応じて適宜選定すればよいが、通常は、60質量部以下になるようにする。該ワックス及びシリコーンパウダーの配合量が上記範囲よりも多くなると安定な異音防止剤を調製することが困難である。
【実施例】
【0028】
以下、本発明を実施例によって説明する。ただし、以下の実施例は本発明を何等制限するものではない。
【0029】
[実施例1]
ポリエチレンワックス(ベーカー・ペトロライト社製 ポリワックス 500)5質量部とポリオキシエチレンアルキルエーテル 1.5質量部(3質量%)を用い、転相乳化法によって調製しワックスエマルション50質量部を調製した。(ワックス:10質量%)
【0030】
次に、粒子としてのシリコーンゴム・シリコーンレジン複合パウダー(信越化学工業(株)製 KMP −605(平均粒径:2 μm)) 5質量部を、ポリオキシエチレンアルキルエーテル0.5質量部(1質量%)を用いて水中に分散させることによってシリコーンパウダー分散液50質量部を調製した(シリコーンパウダー:10質量%)。
【0031】
前記のワックスエマルションおよびシリコーンパウダー分散液それぞれ50質量部を十分に撹拌混合することにより水性異音防止処理用組成物100質量部を調製し、これを試験液とし次に記載する液安定性試験および異音防止性能試験を実施した。水性異音防止処理用組成物は、ワックス:5質量%、シリコーンパウダー(粒子)5質量%を含んでいた。
【0032】
液安定性試験
上記試験液を、容量100mLのガラス製の容器に100mLを入れ20回程度撹拌したのち、25℃条件下で24時間放置し、液外観から液安定性を評価した。目視で液外観に変化がない場合を「○」として評価し、分離または凝集等が起こり目視で液外観に変化が生じていた場合を「×」として評価した。それらの結果を表1に示す。
【0033】
異音防止性評価
上記試験液を、エアーガンを用いてポリウレタンフォームに均一に塗布したのち、25℃条件下で24時間放置した。塗布量は50 g / m
2 とした。次いで、25℃条件下で鉄板をポリウレタンフォームで擦り、擦った際の異音の有無を評価した。異音の評価のための装置を
図1に示した。異音の発生が無い場合は「○」として評価し、異音が少し発生した場合を「△」として評価し、大きな異音が発生した場合を「×」として評価した。また、摺動試験として所定の回数擦った後の異音の有無も評価した。それらの結果を表1に示す。
【0034】
[実施例2および3]
シリコーンパウダー(粒子)として、信越化学工業(株)製「KMP −600(平均粒径:5 μm)」もしくは信越化学工業(株)製「KMP −601(平均粒径:12 μm)」を使用する以外は実施例1と同様の操作で水性異音防止処理用組成物を調製し、試験を実施した。結果を表1に示す。
【0035】
[実施例4]
アクリル樹脂パウダー(綜研化学(株)製 MR-2G(平均粒径:1 μm)) 5質量部を、ポリオキシエチレンアルキルエーテル 0.5質量部(1質量%)を用いて水中に分散させることによってアクリル樹脂パウダー分散液50質量部を調製した(アクリル樹脂パウダー:10質量%)。
【0036】
実施例1記載のワックスエマルション50質量部とアクリル樹脂パウダー分散液50質量部を十分に撹拌混合することにより水性異音防止処理用組成物100質量部を調製し、これを試験液とし実施例1に記載と同様の試験を実施した。結果を表1に示す。
【0037】
[実施例5]
ポリエチレン樹脂パウダー(住友精化(株)製 フロービーズ LE-1080(平均粒径:6 μm)) 5質量部を、ポリオキシエチレンアルキルエーテル0.5質量部(1質量%)を用いて水中に分散させることによってポリエチレン樹脂パウダー分散液50質量部を調製した(ポリエチレン樹脂パウダー:10質量%)。
【0038】
実施例1記載のワックスエマルション50質量部とポリエチレン樹脂パウダー分散液50質量部を十分に撹拌混合することにより水性異音防止用処理剤100質量部を調製し、これを試験液として実施例1に記載と同様の試験を実施した。結果を表1に示す。
【0039】
[実施例6および7]
ワックスエマルションおよびシリコーンパウダー分散液の配合比率を変える以外は実施例1と同様の操作で水性異音防止処理用処理剤を調製し、試験を実施した。結果を表1に示す。
【0040】
[比較例1]
シリコーンパウダーとして、信越化学工業(株)製「KMP −602(平均粒径:30 μm)」を使用する以外は実施例1と同様の操作で試験液を調製し、試験を実施した。結果を表1に示す。シリコーンパウダーの水への分散が難しく、シリコーンパウダーの浮上および凝集物の発生が起こった。
【0041】
[比較例2および3]
ワックスエマルションもしくはシリコーンパウダー分散液を配合しないこと以外は実施例1と同様の操作で試験液を調製し、試験を実施した。結果を表1に示す。
【0042】
[比較例4]
粘度13 cSt(40℃)の流動パラフィン5質量部を、ポリオキシエチレンアルキルエーテル 1.5質量部(3質量%)を用いて転相乳化法によって調製し、流動パラフィンエマルション50質量部を調製した(流動パラフィン:10質量%)。
【0043】
実施例1記載のワックスエマルション50質量部と流動パラフィンエマルション50質量部を十分に撹拌混合することにより試験液100質量部を調製し、これを試験液とし実施例1に記載と同様の試験を実施した。結果を表1に示す。
【0044】
【表1】