【課題】ハロゲン系及びリン系の難燃剤を使用せずに、優れた難燃性を有し、難燃性と耐衝撃性と耐候性とをバランス良く兼備し、得られた成形品の外観性に優れる難燃性ポリカーボネート樹脂組成物を提供。
【解決手段】ポリカーボネート樹脂(A)100重量部、硫酸二価金属塩(B)0.01〜5.0重量部、主鎖が分岐構造でかつ含有する有機官能基が芳香族基からなり末端基がメチル基のみからなるシリコーン化合物(C)0.05〜2.0重量部、繊維形成型の含フッ素ポリマー(D)0.05〜5.0重量部、ゴム変性(メタ)アクリル系重合体(E)0.05〜3重量部、及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又はトリアジン系紫外線吸収剤から選択される1種以上の紫外線吸収剤(F)0.05〜3重量部を含有する、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。前記硫酸二価金属塩が硫酸バリウムである組成物。
ポリカーボネート樹脂(A)100重量部、硫酸二価金属塩(B)0.01〜5.0重量部、主鎖が分岐構造でかつ含有する有機官能基が芳香族基からなり末端基がメチル基のみからなるシリコーン化合物(C)0.05〜2.0重量部、繊維形成型の含フッ素ポリマー(D)0.05〜5.0重量部、ゴム変性(メタ)アクリル系重合体(E)0.05〜3重量部、及びベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤およびトリアジン系紫外線吸収剤から選択される1もしくは2種以上の紫外線吸収剤(F)0.05〜3重量部を含有することを特徴とする、難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
前記ゴム変性(メタ)アクリル系重合体(E)が、メチル・メタクリレートおよびブタジエンを必須成分とする重合体である、請求項1記載の難燃性ポリカーボネート樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱性、熱安定性等に優れた熱可塑性樹脂であり、電気、電子、ITE、機械、自動車などの分野で広く用いられている。ポリカーボネート樹脂は、自己消火性を備えた難燃性の高いプラスチック材料ではあるが、前述の各分野では、難燃化の要望が強く、さらに安全上の要求を満たすため、アンダーライターズ・ラボラトリーズが定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験)に準拠した難燃性の評価において、UL94V−0やV−1相当の一層高い難燃性が求められている。
【0003】
ポリカーボネート樹脂に難燃性を付与させる手法として、従来、難燃剤として塩素や臭素系化合物、あるいはリン系化合物を配合する方法が採用されている。しかし、塩素や臭素系難燃剤は、優れた難燃効果を示すものの、射出成形時に成形機スクリューや製品金型を腐食させる等の問題があった。また、リン系難燃剤は縮合リン酸エステル系難燃剤を中心に使用されているが、耐熱性あるいは衝撃強度の極端な低下が発生するという問題があった。これら著しい物性低下や環境面への配慮から、臭素や塩素等のハロゲン系化合物およびリン系化合物を含有しない難燃剤の使用が望まれている。
【0004】
上記難燃剤を使用せず難燃化する方法として、芳香族スルホン酸金属塩を添加する方法(特許文献1)やパーフルオロアルカンスルホン酸カリウムを添加する方法(特許文献2)、有機アルカリ金属塩、有機アルカリ土類金属塩とフッ素化ポリオレフィンを添加する方法(特許文献3)、又、シリコーン樹脂を添加する方法(特許文献4)などの提案がされてきた。これらの手法を用いることにより、UL94試験に準拠した難燃性の評価において、燃焼時間の減少効果および燃焼時における樹脂の滴下(ドリッピング)抑制効果はある程度認められるものの、近年の防火安全上の要求を満たすには十分ではなく、より一層優れた難燃性を有する材料の開発が求められている。
【0005】
また、近年では、難燃性だけでなく、落下させても割れない耐衝撃性、屋外使用時の耐候性にも優れる材料の要求が高いが、これらをバランス良く満足し、かつ得られた成形品の外観にも悪影響がでない材料は得られていない。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0012】
なお、発明者らは当業者が本発明を充分に理解するために以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0013】
本発明にて使用されるポリカーボネート樹脂(A)とは、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、またはジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネートなどの炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体であり、代表的なものとしては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂が挙げられる。
【0014】
上記ジヒドロキシジアリール化合物としては、ビスフェノールAの他に、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−第三ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンのようなビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルエーテルのようなジヒドロキシジアリールエーテル類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルフィドのようなジヒドロキシジアリールスルフィド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホキシドのようなジヒドロキシジアリールスルホキシド類、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4′−ジヒドロキシ−3,3′−ジメチルジフェニルスルホンのようなジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
【0015】
これらは単独または2種類以上混合して使用されるが、これらの他に、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4′−ジヒドロキシジフェニル等を混合して使用してもよい。
【0016】
さらに、上記のジヒドロキシアリール化合物と以下に示すような3価以上のフェノール化合物を混合使用してもよい。3価以上のフェノールとしてはフロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタンおよび2,2−ビス−〔4,4−(4,4′−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル〕−プロパンなどが挙げられる。
【0017】
ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量には特に制限はないが、成形加工性、強度の面より通常10000〜100000、より好ましくは15000〜30000、さらに好ましくは17000〜26000の範囲である。また、かかるポリカーボネート樹脂を製造するに際し、分子量調整剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0018】
本発明にて使用される硫酸二価金属塩(B)とは、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ストロンチウム等が挙げられ、これらは単独で使用または2種以上を併用してもよい。なかでも、硫酸バリウムが好適に使用できる。
【0019】
硫酸二価金属塩(B)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、0.01〜5.0重量部である。配合量が0.01重量部未満であると難燃性に劣り、配合量が5.0重量部を越えると衝撃強度が低下するので好ましくない。より好ましくは0.1〜3.0重量部である。
【0020】
本発明にて使用されるシリコーン化合物(C)は、主鎖が分岐構造でかつ有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなり、下記一般式(1)にて示される。
一般式(1):
【0022】
ここで、R
1、R
2およびR
3は主鎖の有機官能基を、Xは末端の官能基を表わす。
つまり、分岐単位としてT単位(RSiO1.5)、及び/又はQ単位(SiO2.0)を持つことを特徴とする。これらは全体のシロキサン単位(R3〜0SiO2〜0.5)の20モル%以上含有することが好ましい(Rは有機官能基をあらわす。)。また、シリコーン化合物(C)は、含有される有機官能基のうち芳香族基が20モル%以上であることが好ましい。
【0023】
この含有される芳香族基としては、フェニル、ビフェニル、ナフタレンまたはこれらの誘導体であるが、フェニル基が好適に使用できる。
【0024】
シリコーン化合物(C)中の有機官能基で、主鎖や分岐した側鎖に付いたもののうち芳香族基以外の有機基としては、炭素数4以下の炭化水素基が好ましく、メチル基が好適に使用できる。さらに、末端基はメチル基、フェニル基、水酸基の内から選ばれた1種またはこれらの2種から3種までの混合物であることが好ましい。
【0025】
シリコーン化合物(C)の平均分子量(重量平均)は、好ましくは3000〜500000であり、更に好ましくは5000〜270000である。
【0026】
シリコーン化合物(C)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、0.05〜2.0重量部である。配合量が0.05重量部未満であると難燃性に劣り、配合量が2.0重量部を越えると成形品表面に表層剥離が発生し外観に劣るので好ましくない。より好ましくは0.1〜1.5重量部の範囲である。
【0027】
本発明で使用される繊維形成型の含フッ素ポリマー(D)としては、ポリカーボネート樹脂(A)中で繊維構造(フィブリル状構造)を形成するものがよく、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン系共重合体(例えば、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、等)、米国特許第4379910号に示される様な部分フッ素化ポリマー、フッ素化ジフェノールから製造されるポリカーボネート等が挙げられる。とりわけ、分子量1000000以上で二次粒子径100μm以上のフィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンが好適に使用され、例えば、ダイキン工業社製ネオフロンFA500として入手できる。また、ポリテトラフルオロエチレン粒子と有機系重合体とからなるポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体も繊維形成型の含フッ素ポリマー(E)として好適に使用される。当該ポリテトラフルオロエチレン含有混合粉体は、例えば、三菱レイヨン社製メタブレンA3800として入手できる。
【0028】
繊維形成型の含フッ素ポリマー(D)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対し、0.05〜5.0重量部である。配合量が0.05重量部未満では、燃焼時のドリッピング防止効果に劣るので好ましくない。また5.0重量部を越えると造粒が困難となる事から安定生産に支障をきたすので好ましくない。この配合量は、好ましくは、0.05〜1.0重量部、より好ましくは0.1〜0.5重量部の範囲である。この範囲では、難燃性、成形性のバランスが一層良好になる。
【0029】
本発明にて使用されるゴム変性(メタ)アクリル系重合体(E)とは、アクリル酸エステルおよび/またはメタクリル酸エステルを必須成分とし、更に所望によってはスチレンなどの芳香族ビニル、ブタジエンなどの不飽和炭化水素、その他共重合可能な単量体から構成される重合体である。さらに、そのモルフォロジーは問わないが、ハードセグメントが連続層でソフトセグメントが分散層、あるいはその逆の層からなるコア・シェル型であっても良い。
【0030】
好適には、コア−シェル型のメチルメタアクリレート・ブタジエンゴム、メチルメタアクリレート・グリシジルメタアクリレート・スチレン・アクリル酸エステルゴムおよびメチルメタアクリレート・スチレン・シリコン・アクリル酸エステルゴムが使用できる。
【0031】
ゴム変性(メタ)アクリル系重合体(E)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部あたり0.05〜3重量部である。0.05を下回ると耐衝撃性に劣り、3重量部を超えると耐熱性に劣るので好ましくない。より好ましくは0.7〜3重量部、更に好ましくは1〜3重量部である。この範囲では、低温雰囲気下での衝撃強度と耐熱性のバランスがより一層良好になる。
【0032】
ゴム変性(メタ)アクリル系重合体としては、例えば、ローム・アンド・ハース・ジャパン社製、「パラロイドEXL2602 」、「パラロイドEXL2603」、「パラロイドEXL2655」、カネカ社製「カネエースM511 」、「カネエースM711」等のコア−シェル型グラフト共重合体が挙げられる。
【0033】
本発明にて使用される紫外線吸収剤(F)としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤およびトリアジン系紫外線吸収剤から選択される1もしくは2種以上の紫外線吸収剤が好ましい。具体的には、本発明にて使用されるトリアジン系紫外線吸収剤としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−メチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−エチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−プロピルオキシフェノール、および2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ブチルオキシフェノールなどが例示され、例えば、BASF社製のTINUVIN 1577等が商業的に入手可能である。
【0034】
本発明にて使用されるベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジクミルフェニル)フェニルベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス(4−クミル−6−ベンゾトリアゾールフェニル)、2,2’−p−フェニレンビス(1,3−ベンゾオキサジン−4−オン)などが例示される。
【0035】
なかでも、特に、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等が好適であり、例えば、BASF社製のTINUVIN 329(TINUVINは登録商標)、シプロ化成(株)製のシーソーブ709、ケミプロ化成(株)製のケミソーブ79等が商業的に入手可能である。
【0036】
紫外線吸収剤(F)の配合量は、ポリカーボネート樹脂(A)100重量部あたり0.05〜3重量部が好ましい。配合量が0.05重量部未満では耐候性に劣り、また3重量部を超えると初期着色が顕著となるので好ましくない。更に好ましい範囲は0.05〜0.6重量部である。
【0037】
本発明の各種配合成分(A)、(B)、(C)、(D)、(E)及び(F)の配合方法には特に制限はなく、任意の混合機、例えばタンブラー、リボンブレンダー、高速ミキサー等によりこれらを混合し、通常の単軸または二軸押出機等で容易に溶融混練することができる。また、これらの配合順序についても特に制限はない。
【0038】
また、混合時、必要に応じて他の公知の添加剤、例えば離型剤、紫外線吸収剤、充填剤、帯電防止剤、酸化防止剤、リン系熱安定剤、染顔料、展着剤(エポキシ大豆油、流動パラフィン等)等を配合することができる。
【0039】
充填剤としては、例えばガラス繊維、ガラスビーズ、ガラスフレーク、炭素繊維、タルク粉、クレー粉、マイカ、チタン酸カリウムウィスカー、ホウ酸アルミウィスカー、ワラストナイト粉、シリカ粉等が挙げられる。マイカとしては、白雲母、黒雲母、金雲母、人工金雲母などが挙げられ、形状は薄片状をなすものが好適である。
【0040】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本発明における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【実施例】
【0041】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、特にことわりがない限り、「部」及び「%」はそれぞれ重量基準である。
【0042】
原料として以下のものを使用した。
1.ポリカーボネート樹脂(A):
ビスフェノールAと塩化カルボニルとから合成されたポリカーボネート樹脂
カリバー200−20
住化スタイロンポリカーボネート(株)製、「カリバー」はトリンゼオ ユーロップ ゲーエムベーハーの登録商標、粘度平均分子量:19000、
(以下、「PC」と略記)
【0043】
2.硫酸二価金属塩(B):
硫酸バリウム B−55
堺化学工業社製、一次粒子径0.66μm、(以下、「硫酸バリウム」と略記)
【0044】
3.シリコーン化合物(C):(以下「シリコーン化合物」と略記)
シリコーン化合物は、一般的な製造方法に従って製造した。すなわち、適量のジオルガノジクロロシラン、モノオルガノトリクロロシランおよびテトラクロロシラン、あるいはそれらの部分加水分解縮合物を有機溶剤中に溶解し、水を添加して加水分解して、部分的に縮合したシリコーン化合物を形成し、さらにトリオルガノクロロシランを添加して反応させることによって重合を終了させ、その後、溶媒を蒸留等で分離した。上記方法で合成したシリコーン化合物の構造特性は、以下のとおり:
・主鎖構造のD/T/Q単位の比率:40/60/0(モル比)
・全有機官能基中のフェニル基の比率(*):60モル%
・末端基:メチル基のみ
・重量平均分子量(**):15000
*:フェニル基は、T単位を含むシリコーン中ではT単位にまず含まれ、残った場合がD単位に含まれる。D単位にフェニル基が付く場合、1個付くものが優先し、さらにフェニル基が残余する場合に2個付く。末端基を除き、有機官能基は、フェニル基以外は全てメチル基である。
**:重量平均分子量は、有効数字2桁。
【0045】
4.繊維形成型の含フッ素ポリマー(D):
4−1:ポリテトラフルオロエチレン樹脂
ネオフロンFA500
ダイキン工業社製、(以下、「PTFE」と略記)
4−2:ポリテトラフロオロエチレン含有混合粉体
メタブレンA3800
三菱レイヨン社製、ポリテトタフルオロエチレン含有率:50%
(以下、「PTFE−1」と略記)
【0046】
5.ゴム変性(メタ)アクリル系重合体(E):
カネエースM711
カネカ社製、コア−シェル型メチルメタアクリレート・ブタジエンゴム、
(以下、「重合体」と略記)
【0047】
6.紫外線吸収剤(F):
Tinuvin 1577
チバスペシャルティケミカルズ社製
トリアジン系紫外線吸収剤(2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、以下「UVA」と略記)
【0048】
前述の各種原料を表2〜表5に示す配合比率にて一括してタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機(神戸製鋼所製KTX37)を用いて、溶融温度280℃にて混練し、ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。得られたペレットから、射出成形機(日本製鋼所製J100E−C5)を用いて各種試験片を加工し、下記方法により各種データを採取した。それぞれの評価結果を表2〜表5に示した。
【0049】
(1)難燃性
得られた試験片を温度23℃、湿度50%の恒温室の中で72時間放置し、アンダーライターズ・ラボラトリーズが定めているUL94試験(機器の部品用プラスチック材料の燃焼性試験)に準拠した難燃性の評価を行った。UL94によるクラスを表1に示す。1mm厚み試験片の難燃性としてV−0及びV−1を良好としV−2及び定格なし(NR)を不良とした。
【0050】
【表1】
【0051】
残炎時間とは、着火源を遠ざけた後の試験片が、有炎燃焼を続ける時間の長さであり、ドリップによる綿の着火とは、試験片の下端から約300mm下にある標識用の綿が、試験片からの滴下(ドリップ)物によって着火されるかどうかによって決定される。
【0052】
(2)衝撃強度
得られた各種ペレットを125℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(日本製鋼所製J−100SAIIを用いて280℃、射出圧力1600kg/cm
2にて衝撃試験用試験片(63.5×12.7×3.2mm)を成形しASTM D−256に準拠したノッチ付きアイゾット衝撃強度の評価を行った。ノッチ付きアイゾット衝撃強度が40kg・cm/cm以上を良好とした。
【0053】
(3)耐候性評価
得られた各種ペレットを125℃で4時間乾燥した後に、射出成形機(日本製鋼所製J−100SAII)を用いて設定温度320℃にて耐候性評価用試験片(50×90×3.0mm)を作成した。得られた試験片を、ウェザーメーター(スガ試験機社製サンシャイン・スーパーロングライフ・ウェザーメーターWEL−SUN−HCH−B型)に装着し、ブラックパネル温度63℃、降雨有りの条件で600時間照射後のイエローネスインデックス(YI)を求めた。耐候性については、照射前に対する照射後の黄変度(ΔYI)を算出し、評価した。600時間照射後のΔYIが7以下を良好とした。
【0054】
(4)成形品外観
得られた各種ペレットを125℃で4時間乾燥した後に、射出成型機(日本製鋼所製J−100SAIIを用いて245℃、射出圧力1600kg/cm
2にて難燃性評価用試験片(125×13×3.0mm)を成形し、該試験片の成形品外観を目視にて表層剥離や凝集の有無を評価した。表層剥離および凝集物のない外観を良好とした。表層剥離や凝集物がある外観は不良とした。
【0055】
【表2】
○: 良好 ×:不良
【0056】
【表3】
○: 良好 ×:不良
【0057】
【表4】
○: 良好 ×:不良
【0058】
【表5】
○: 良好 ×:不良
【0059】
表2〜表3のとおり、ポリカーボネート樹脂組成物が本発明の構成要件を全て満足する場合(実施例1〜17)にあっては、全ての評価項目にわたり良好な結果を示した。
【0060】
一方、表4と表5で示したとおり、ポリカーボネート樹脂組成物が本発明の構成要件を満足しない場合においては、いずれの場合も何らかの欠点を有していた。
比較例1は、硫酸バリウムの配合量が規定量より少ない場合で、難燃性に劣っていた。
比較例2は、硫酸バリウムの配合量が規定量より多い場合で、衝撃強度、及び成型品外観(凝集物有り)に劣っていた。
比較例3は、シリコーン化合物の配合量が規定量より少ない場合で、難燃性に劣っていた。
比較例4は、シリコーン化合物の配合量が規定量より多い場合で、難燃性と成形品外観(表層剥離有り)に劣っていた。
比較例5は、PTFEの配合量が規定量より少ない場合で、難燃性に劣っていた。
比較例6は、PTFEの配合量が規定量より多い場合で、衝撃強度と成形品外観(凝集物有り)に劣っていた。
比較例7は、重合体の配合量が規定量より少ない場合で、衝撃強度に劣っていた。
比較例8は、重合体の配合量が規定量より多い場合で、難燃性、耐候性、及び成形品外観(凝集物有り)に劣っていた。
比較例9は、UVAの配合量が規定量より少ない場合で、耐候性に劣っていた。
比較例10は、UVAの配合量が規定量より多い場合で、難燃性と衝撃強度に劣っていた。
【0061】
以上のように、本発明における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、詳細な説明を提供した。
【0062】
したがって、詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0063】
また、上述の実施の形態は、本発明における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。