【解決手段】下記(A)〜(D)成分を下記の割合で含む樹脂組成物。(A)ポリプロピレン系樹脂16.0〜95.8質量%;(B)酢酸ビニルに由来する構造単位の含有量が10〜90質量%であるエチレン酢酸ビニル共重合体1〜40質量%;(C)150℃〜300℃で液体であるリン系難燃剤3〜40質量%;(D)NOR型ヒンダードアミン系化合物0.2〜4.0質量%
前記(C)成分がリン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物及びホスホン酸エステル化合物から選ばれる少なくとも1つである請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。
前記(C)成分がトリフェニルホスフェート、レゾルシノールビス−ジキシレニルフォスフェート及びレゾルシノールビス−ジフェニルフォスフェートから選ばれる少なくとも1つである請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。
前記(C)成分がトリフェニルホスフェート及びレゾルシノールビス−ジキシレニルフォスフェートから選ばれる少なくとも1つである請求項1〜8のいずれかに記載の樹脂組成物。
被覆される芯材を配設したチャンバーボックス内を減圧状態とし、前記前記シート、前記積層シート、又は前記樹脂シートを加熱軟化させ、前記チャンバーボックス内を加圧して、前記加熱軟化させた前記シート、前記積層シート、又は前記樹脂シートを前記芯材に押圧して被覆し、一体化して得られたものである請求項33に記載の成形品。
基体の少なくとも一部に成形体を設ける成形物の製造方法であって、複数の冷却ロールに巻装された鏡面エンドレスベルトと鏡面冷却ロールとを備え、前記鏡面エンドレスベルトと前記鏡面冷却ロールの表面温度が露点以上50℃以下に保たれた装置を用い、前記鏡面冷却ロールと前記鏡面エンドレスベルトとの間に、Tダイ押出機に請求項1〜27のいずれかに記載の樹脂組成物からなる溶融樹脂をより押し出して導入し、圧接してシート状に成形するとともに、前記鏡面エンドレスベルトに前記鏡面エンドレスベルトの表面温度より低い温度の冷却水を吹き付けることによって急冷して透明な樹脂シートを製造する工程と、前記樹脂シートを非平面状に成形して前記基体の少なくとも一部に設ける工程と、を実施する成形物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[樹脂組成物]
本発明の樹脂組成物は下記(A)〜(D)成分を下記の割合で含む。
(A)ポリプロピレン系樹脂 16.0〜95.8質量%
(B)酢酸ビニルに由来する構造単位の含有量が10〜90質量%であるエチレン酢酸ビニル共重合体 1〜40質量%
(C)150℃〜300℃で液体であるリン系難燃剤 3〜40質量%
(D)NOR型ヒンダードアミン系化合物 0.2〜4.0質量%
【0017】
本発明の樹脂組成物は上記の構成を有することによって溶融混練が可能であり、高い難燃性(VTM−0)を有する。
以下、各成分について説明する。
【0018】
((A)成分)
(A)成分のポリプロピレン系樹脂としては、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレン等が挙げられる。(A)成分のポリプロピレン系樹脂の配合により、耐溶剤性を付与することができる。
ホモポリプロピレンはプロピレンの単独重合体であり、ブロックポリプロピレンはエチレンとプロピレンのブロック共重合体であり、ランダムポリプロピレンはエチレンとプロピレンのランダム共重合体である。これらは従来の公知の方法によって得られるものを用いることができる。また、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アイソタクチックペンタッド分率等で表現される立体規則性、溶融張力及びスウェル比等の溶融特性等は特に限定されない。また、透明性向上のために、結晶核剤等の添加剤を添加してもよい。
【0019】
(A)成分のポリプロピレン系樹脂(例えばホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン又はランダムポリプロピレン)のMFR(230℃、2.16kg荷重)は、好ましくは0.5〜30g/10分であり、より好ましくは1〜20g/10分であり、さらに好ましくは2〜10g/10分である。MFRの異なるポリプロピレン系樹脂を混合して用いてもよい。
(A)成分のMFRは、JIS K7210の方法に従って、230℃で2.16kgの荷重で測定する。
【0020】
0.5g/10分以上であれば、溶融混練時の溶融剪断発熱を防止でき、(C)成分と(D)成分の熱分解が抑制できるため、優れた難燃性を確保できる。また、(B)成分との溶融粘度差が大きく異なること(例えばMFRが0.5未満のポリプロピレン系樹脂と、MFRの高いエチレン−酢酸ビニル共重合体の組合せ)がないため、相溶性の低下や溶融混練時の相分離が抑制され、優れた透明性、難燃性、耐溶剤性を確保できる。
【0021】
30g/10分以下であれば、問題なくシート成形を行うことができる。また、適度な流動性であるため、難燃性試験時の溶融ドリップ綿発火がなく、優れた難燃性を確保できる。また、(B)成分のエチレン−酢酸ビニル共重合体との溶融粘度差が大きく異なること(例えばMFRの低いエチレン−酢酸ビニル共重合体と、MFRの高いポリプロピレン系樹脂の組合せ)がないため相溶性の低下や溶融混練時の相分離が抑制され、優れた透明性、難燃性、耐溶剤性を確保できる。
【0022】
ホモポリプロピレンを用いると成形体の強度及び剛性に優れる。また、ホモポリプロピレン又はランダムポリプロピレンを使用すると、シートとした際の透明性に優れる。
【0023】
(その他の樹脂・加工助剤成分)
本発明の樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて従来公知の樹脂や加工助剤成分を添加することができる。
【0024】
耐衝撃性を付与する目的で、必要に応じて、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリオレフィン熱可塑性エラストマー(TPO)又はスチレン系熱可塑性エラストマーを、透明性及び難燃性が低下しない範囲(約5質量%以下)で適量使用することができる。
【0025】
これら樹脂としては、例えば、SBR[ポリスチレン−ポリブタジエンゴム]、SBS[ポリスチレン−ポリブタジエンブロック−ポリスチレン]、SEBS[ポリスチレン−ポリ(エチレン/ブチレン)ブロック−ポリスチレン]、SIR[ポリスチレン−ポリイソプレンゴム]、SIS[ポリスチレン−ポリイソプレンブロック−ポリスチレン]、SEEPS[ポリスチレン−ポリ(エチレン−エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン]、SEP[ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック]、SEPS[ポリスチレン−ポリ(エチレン/プロピレン)ブロック−ポリスチレン]等が挙げられる。中でも、特に水素化ブタジエンブロック共重合体や、ブロックTPO、SEBS、SEPS等が好適に用いられる。
【0026】
市販の商品としては、例えば、JSR株式会社製のダイナロン6200、プライムポリマー株式会社製のR−110MP、シェル化学株式会社製のクレイトンG1651等のクレイトンシリーズ、株式会社クラレ製のセプトン2104等のセプトンシリーズ、旭化成ケミカルズ株式会社製のタフテックHシリーズ等が挙げられる。
【0027】
また、強度及び剛性を高くする目的で、必要に応じて、無水マレイン酸等で変性された、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリペンテン系樹脂、熱可塑性エラストマー等を、透明性及び難燃性が低下しない範囲(約5質量%以下)で適量使用することができる。
【0028】
また、難燃性を改良する目的で、必要に応じて、難燃性樹脂を適量添加することができる。
難燃性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテルであるSABIC社製のノリルPPO640、ナイロン6であるユニチカ株式会社製A1020LP等が挙げられる。
難燃性樹脂の添加量は、透明性が低下しない範囲(約10質量%以下)が好ましい。
【0029】
また、加工性の改良及び耐衝撃性を改良する目的で、必要に応じて、鉱物油系軟化剤を、難燃性及び透明性が低下しない範囲(約5質量%以下)で適量添加することができる。
鉱物油系軟化剤は高沸点の石油留分であり、パラフィン鎖炭素数が全炭素数の50%以上を占めるものはパラフィン系、ナフテン環炭素数が30〜40%のものはナフテン系、芳香族炭素数が30%以上のものは芳香族系鉱物油系軟化剤と呼ばれている。
【0030】
鉱物油系軟化剤としては、ゴム用として用いられるゴム用鉱物油系軟化剤が好ましい。ゴム用鉱物油系軟化剤は、芳香族環、ナフテン環及びパラフィン鎖の三者が組み合わされた混合物である。このゴム用鉱物油系軟化剤は、芳香族成分が多くなると汚染性が強くなり、また耐候性も低下するので、非芳香族系であるパラフィン系やナフテン系のゴム用鉱物油系軟化剤、特にパラフィン系ゴム用鉱物油系軟化剤が無色透明であるため好ましい。また、鉱物油系軟化剤とともに液状又は低分子量の合成軟化剤を用いることもできる。市販の商品としては、例えば、出光興産株式会社製のプロセスオイルPW90、PW100、PW380等が挙げられる。
【0031】
樹脂組成物中における(A)成分の含有量(質量%)は16.0〜95.8質量%であり、好ましくは46.0〜91.8質量%であり、より好ましくは50〜90質量%である。
【0032】
((B)成分)
(B)成分のエチレン−酢酸ビニル共重合体は、エチレンと酢酸ビニルから得られる共重合体であり、(A)成分のポリプロピレン系樹脂と(C)成分のリン系難燃剤との相溶化剤として作用する。(B)成分は(C)成分のリン系難燃剤を組成物中に均一分散させるため、樹脂組成物の溶融混練が可能となり、優れた難燃性を得ることができる。また、樹脂組成物における(C)成分のリン系難燃剤のブリードアウトが抑制され、透明性を向上することができる。
【0033】
(B)成分のエチレン−酢酸ビニル共重合体のMFRは、好ましくは0.5〜30g/10分であり、より好ましくは1〜20g/10分であり、さらに好ましくは3〜10g/10分である。
(B)成分のMFRは、JIS K 6924−1の方法に従い、190℃で、2.16kg荷重で測定する。
【0034】
0.5以上であれば、溶融混練時の剪断発熱を防止でき(C)成分と(D)成分の熱分解が抑制できるため、優れた難燃性を確保できる。また、(A)成分のポリプロピレン系樹脂との溶融粘度差が大きく異なること(例えばMFRの低いエチレン−酢酸ビニル共重合体と、MFRの高いポリプロピレン系樹脂の組合せ)がなく、相溶性の低下や溶融混練時の相分離が抑制され、優れた透明性、難燃性、耐溶剤性を確保できる。
【0035】
30以下であれば、問題なくストランドを引くことができ、押出成形することができる。また、(A)成分のポリプロピレン系樹脂との溶融粘度差が大きく異なること(例えばMFRの高いエチレン−酢酸ビニル共重合体と、MFRの低いポリプロピレン系樹脂の組合せ)がなく、相溶性に優れるため、透明性、難燃性及び耐溶剤性に優れる。
【0036】
樹脂組成物中における(B)成分のエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量(質量%)は、1〜40質量%であり、5質量%以上、30質量%以下、又は20質量%以下としてもよい。(B)成分の含有量は、好ましくは3〜30質量%、より好ましくは、5〜20質量%である。
【0037】
1質量%以上であれば、極性の高い酢酸ビニル構造単位の成分量が、極性の高い(C)成分のリン系難燃剤の相溶性に適量であり、溶融混練が可能となる。また、40質量%以下であれば、極性の高い酢酸ビニル構造単位が過剰ではなく適量であるため、極性の低い(A)成分のポリプロピレン系樹脂との相溶性が適度に高くなり、溶融混練が可能となる。
【0038】
(B)成分のエチレン−酢酸ビニル共重合体は、酢酸ビニルに由来する構造単位の含有量が10〜90質量%であり、30質量%以上、40質量%以上、又は70質量%以下としてもよい。酢酸ビニルに由来する構造単位の含有量は、好ましくは20〜80質量%であり、より好ましくは30〜70質量%であり、さらに好ましくは40〜60質量%である。以下、「酢酸ビニルに由来する構造単位の含有量」を、単に「酢酸ビニルの含有量」と言う場合がある。
【0039】
酢酸ビニルの含有量が10質量%以上であれば、極性の高い酢酸ビニル構造単位の成分量が、極性の高い(C)成分のリン系難燃剤の相溶性に適量であり、溶融混練が可能となる。酢酸ビニルの含有量が90質量%以下であれば、エチレン−酢酸ビニル共重合体が塊状物ではないため、連続式の溶融押出機で生産が可能となる。
【0040】
(B)成分中の酢酸ビニルに由来する構造単位の含有量は、JIS K6924−1に従って測定する。
【0041】
また、(B)成分のエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含有率と、(C)成分のリン系難燃剤の含有量は、式(1)の関係を満たすと好ましい。
X≦3.7225×Y+3・・・(1)
(式中、Xは(C)成分の樹脂組成物中の含有割合(質量%)であり、Yは(A)〜(D)成分の合計量中の、前記(B)成分中の酢酸ビニルに由来する構造単位の含有量(質量%)である。)
【0042】
式(1)を満たすと、極性の高い酢酸ビニル構造単位が比較的多いため、極性の高い(C)成分のリン系難燃剤との相溶性が高くなり、その結果、極性の高い(C)成分のリン系難燃剤と極性の低い(A)成分のポリプロピレン系樹脂の相溶性に優れるため、混練性に優れる。
【0043】
上述した(B)成分のエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量及び酢酸ビニルの含有量を満たすことにより、(B)成分は、(A)成分のポリプロピレン系樹脂と(C)成分のリン系難燃剤との相溶化剤として作用し、(C)成分を組成物中に均一分散させ、また(A)成分と(B)成分の相溶性が良好となるため、樹脂組成物の溶融混練が可能となり、優れた難燃性を得ることができる。
【0044】
また、以下に示すように、(B)成分のエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量、酢酸ビニルの含有量及び(B)/(C)の比率等を限定することにより、(C)成分の相溶性がさらに高くなり、樹脂組成物における(C)成分のブリードアウトが抑制され、また(A)成分の相溶性がさらに高くなることにより、シートの透明性を向上することができる。
【0045】
具体的に、(B)成分のエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量(質量%)は、好ましくは5〜30質量%であり、より好ましくは7〜25質量%であり、さらに好ましくは1〜20質量%である。
【0046】
5質量%以上であると、極性の高い酢酸ビニル構造単位が比較的多いため、(C)成分のリン系難燃剤の相分離や(C)成分のリン系難燃剤のブリードアウトが発生する恐れがない。即ち、(C)成分のリン系難燃剤がより均一に混合しているため、シートの透明性に優れる。また、30質量%以下であれば、極性の高い酢酸ビニル構造単位が適量であるため、極性の低い(A)成分のポリプロピレン系樹脂との相溶性に優れ、相分離することなく均一に混練することができ、成形体の難燃性、透明性及び耐溶剤性に優れる。
【0047】
また、(B)成分のエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量(質量%)と(C)成分のリン系難燃剤の含有量(質量%)との比(B)/(C)は、1以上であることが好ましい。1以上であれば、極性の高い酢酸ビニル構造単位が比較的多いため、(C)成分のリン系難燃剤の相分離や(C)成分のリン系難燃剤のブリードアウトが発生する恐れがない。即ち、(C)成分のリン系難燃剤がより均一に混合しているため、シートの透明性に優れる。
(B)/(C)は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上である。
【0048】
また、酢酸ビニルに由来する構造単位の含有量は、好ましくは30〜70質量%であり、より好ましくは35〜65質量%であり、さらに好ましくは40〜60質量%である。
【0049】
酢酸ビニルの含有量が30質量%以上であると、極性の高い酢酸ビニル構造単位が比較的多いため、極性の高いリン系難燃剤の相分離やリン系難燃剤のブリードアウトが発生する恐れがない。即ち、リン系難燃剤がより均一に混合しているため、シートの透明性に優れる。
【0050】
70質量%以下であれば、極性の高い酢酸ビニル構造単位が過剰ではなく適量であるため、極性の低い(A)成分のポリプロピレン系樹脂との相溶性に優れ、相分離することなく均一に混練することができる。即ち、成形体の難燃性、透明性及び耐溶剤性に優れる。
【0051】
また、70質量%以下であれば、加熱成形時に遊離酢酸が発生することがなく、装置の金属部分の腐食や、作業者に健康被害を及ぼすことを防止することができる。また、酢酸が脱離することに起因する架橋反応やゲル化を抑制することができ、製品の品質に悪影響を及ぼすことがない。
【0052】
(B)成分のエチレン−酢酸ビニル共重合体は、従来公知の方法によって得られるものを用いることができる。(B)成分の市販品としては、例えば、日本合成化学工業株式会社のソアブレン、三井・デュポンポリケミカル株式会社のエバフレックス及びLANXESS社のレバプレン等が使用できる。
(B)成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
((C)成分)
(C)成分のリン系難燃剤は、150℃〜300℃で液体、即ち、融点が300℃以下である難燃剤である。溶融混錬時に固体である難燃剤(例えば融点を有さない難燃剤)を用いると、溶融混練時に難燃剤が液体状ではないため、(A)成分又は(B)成分に均一に分散せず、物性低下を起こしたり、難燃性が低下したりするおそれがある。
【0054】
(C)成分のリン系難燃剤は、上記の条件を満たしている限り特に制限されず、従来公知の方法によって得られるもの、又は市販品を用いることができる。好ましくは、リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、又はホスホン酸エステル化合物であり、その中でも透明性に優れるリン酸エステルが最も好ましい。
【0055】
リン酸エステル系化合物としては、トリメチルフォスフェート(TMP)、トリエチルフォスフェート(TEP)、トリフェニルフォスフェート(TPP)、トリクレジルフォスフェート(TCP)、トリキシレニルフォスフェート(TXP)、クレジルジフェニルフォスフェート(CDP)等のモノマー型リン酸エステル系化合物、レゾルシノールビス−ジキシレニルフォスフェート、レゾルシノールビス−ジフェニルフォスフェート、ビスフェノールAビス−ジフェニルフォスフェート(BADP)、ビスフェノールAビス−ジクレジルフォスフェート、ビフェノールビス−ジフェニルフォスフェート、ビフェノールビス−ジキシレニルフォスフェート等のオキシ塩化リンと二価のフェノール系化合物、及びフェノール(又はアルキルフェノール)との反応生成物である芳香族縮合リン酸エステル系化合物等が挙げられる。
これらの中で好ましくは、トリフェニルフォスフェート(TPP)、トリクレジルフォスフェート(TCP)、レゾルシノールビス−ジキシレニルフォスフェート、レゾルシノールビス−ジフェニルフォスフェート、ビスフェノールAビス−ジフェニルフォスフェート(BADP)、ビフェノールビス−ジフェニルフォスフェート、ビフェノールビス−ジキシレニルフォスフェートであり、より好ましくは、トリフェニルフォスフェート(TPP)、レゾルシノールビス−ジキシレニルフォスフェート、レゾルシノールビス−ジフェニルフォスフェートであり、さらに好ましくは、レゾルシノールビス−ジキシレニルフォスフェートである。
【0056】
ホスファゼン化合物としては、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(メトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(エトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(n−プロポキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(イソ−プロポキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(n−ブトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(イソ−ブトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(p−トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(m−トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(o−トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(4−エチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(4−n−プロピルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(4−イソ−プロピルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(4−t−ブチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(4−t−オクチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(2,3−ジメチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(2,4−ジメチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(2,5−ジメチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(2,6−ジメチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5−トリス(メトキシ)−1,3,5−トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5−トリス(エトキシ)−1,3,5−トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5−トリス(n−プロポキシ)−1,3,5−トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5−トリス(イソ−プロポキシ)−1,3,5−トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5−トリス(n−ブトキシ)−1,3,5−トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5−トリス(イソ−ブトキシ)−1,3,5−トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5−トリス(メトキシ)−1,3,5−トリス(p−トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5−トリス(メトキシ)−1,3,5−トリス(m−トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5−トリス(メトキシ)−1,3,5−トリス(o−トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5−トリス(エトキシ)−1,3,5−トリス(p−トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5−トリス(エトキシ)−1,3,5−トリス(m−トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5−トリス(エトキシ)−1,3,5−トリス(o−トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5−トリス(n−プロポキシ)−1,3,5−トリス(p−トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5−トリス(n−プロポキシ)−1,3,5−トリス(m−トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5−トリス(n−プロポキシ)−1,3,5−トリス(o−トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5−トリス(イソ−プロポキシ)−1,3,5−トリス(p−トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5−トリス(n−ブトキシ)−1,3,5−トリス(p−トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5−トリス(イソ−ブトキシ)−1,3,5−トリス(p−トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5−トリス(メトキシ)−1,3,5−トリス(4−t−ブチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5−トリス(メトキシ)−1,3,5−トリス(4−t−オクチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5−トリス(n−プロポキシ)−1,3,5−トリス(4−t−ブチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5−トリス(n−プロポキシ)−1,3,5−トリス(4−t−オクチルフェノキシ)シクロトリホスファゼン等が挙げられる。
この中で好ましくは、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(メトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(エトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(p−トリルオキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5−トリス(メトキシ)−1,3,5−トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5−トリス(エトキシ)−1,3,5−トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼンであり、より好ましくは、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(エトキシ)シクロトリホスファゼン、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(フェノキシ)シクロトリホスファゼン、1,3,5−トリス(エトキシ)−1,3,5−トリス(フェノキシ)シクロトリホスファゼンであり、さらに好ましくは、1,1,3,3,5,5−ヘキサ(フェノキシ)シクロトリホスファゼンである。
【0057】
ホスホン酸エステルとしては、下記式(10)で表されるものが挙げられる。
【化2】
式(10)中、R
1〜R
5は、水素原子、又は置換基を有していてもよい炭化水素基であり、R
1〜R
5はそれぞれ同一でも異なっていてもよい。
炭化水素基としては、鎖状(直鎖及び分岐鎖のいずれでもよい)及び環状(単環、縮合多環、架橋環及びスピロ環のいずれでもよい)のいずれであってもよく、例えば、側鎖を有する環状炭化水素基が挙げられる。また、炭化水素基は、飽和及び不飽和のいずれでもよい。
炭化水素基としては、例えばアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等が挙げられる。
【0058】
上記式で表されるホスホン酸エステルの具体例としては、下記式(10)−1〜(10)−8で表される化合物が挙げられる。
【化3】
【0059】
これらのうち、好ましくは式(10)−1〜(10)−6であり、より好ましくは式(10)−1〜(10)−3であり、さらに好ましくは式(10)−1である。
【0060】
樹脂組成物中の(C)成分のリン系難燃剤の含有量(質量%)は、3〜40質量%であり、5質量%以上、15質量%以上、20質量%以下、又は10質量%以下としてもよい。(C)成分の含有量(質量%)は、好ましくは5〜35質量%であり、より好ましくは15〜30質量%である。
3質量%以上であれば、VTM−0の高度な難燃性が得られる。40質量%以下であれば、(A)成分のポリプロピレン系樹脂と相溶性が低い(C)成分のリン系難燃剤の含有量が適量であるため、(B)成分の特定のエチレン酢酸ビニル共重合体が特定量含まれていれば、(C)成分のリン系難燃剤の相分離がなく、均一に溶融混練ができる。
【0061】
(C)成分のリン系難燃剤は、リン含有量が8質量%以上であると好ましく、9質量%以上、又は10質量%以上であるとより好ましい。
リン含有量が8質量%以上であると、難燃性性能を有するリン原子を充分含有するため、難燃性に優れる。
リン含有量は、吸光光度法にて測定する。
【0062】
(C)成分のリン系難燃剤は、好ましくは下記式(20)で表される。この化合物を用いると、シートの透明性と耐ブリード性に優れる。
【化4】
式(20)中、R
1〜R
5は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数1〜10のアルコキシ基又はハロゲン原子であり、R
1〜R
5は同一でも異なっていてもよい。nは0〜30の整数であり、好ましくは0〜10の整数である。
【0063】
アルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第2ブチル、第3ブチル、アミル、第3アミル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、n−オクチル、ノニル、デシル等が挙げられる。
シクロアルキル基としてはシクロヘキシル等が挙げられる。
アリール基としては、フェニル、クレジル、キシリル、2,6−キシリル、2,4,6−トリメチルフェニル、ブチルフェニル、ノニルフェニル等が挙げられる。
アルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ等が挙げられる。
ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0064】
(C)成分のリン系難燃剤は、難燃性と透明性の両立という観点から、下記の化合物No.1、2又は3が好ましく、化合物No.2又は3がより好ましく、化合物No.2がさらに好ましい。
化合物No.1(トリフェニルホスフェート)は、例えば大八化学工業株式会社のTPP、化合物No.2(レゾルシノールビス−ジキシレニルフォスフェート)は、例えば大八化学工業株式会社のPX−200、化合物No.3(レゾルシノールビス−ジフェニルフォスフェート)は、例えば大八化学工業株式会社のCR−733S等が使用できる。
【化5】
【0065】
式(20)のリン酸エステル化合物を使用すると、難燃性VTM−0と透明性を両立できる。
【0066】
式(20)のリン酸エステル化合物の含有量(質量%)は、好ましくは3〜20質量%であり、より好ましくは4〜15質量%、さらに好ましくは5〜10質量%である。3質量%以上であれば、高度な難燃性のVTM−0が得られ、透明性も良好である。また、20質量%以下であれば、(A)成分のポリプロピレン系樹脂と相溶性が低い(C)成分のリン酸エステル化合物の含有量が適量であるため、(C)成分のリン酸エステル化合物の相分離及びブリードアウトが少なく、その結果、透明で高度な難燃性VTM−0が得られる。
(C)成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
((D)成分)
(D)成分のNOR型ヒンダードアミン系化合物(安定剤)は、光安定化剤としてよく知られるものであるが、難燃剤としての機能も有することが知られている。
【0068】
NOR(アルコキシイミノ基)型ヒンダードアミン系安定剤のアルコキシイミノ基とは、ピペリジン環のイミノ基の部分が、NHのままであるNH型、Hがメチル基で置き換わったNCH
3型に対して、N−アルコキシル基(>N−OR)の構造のものであり、これらの基はアルキル・パーオキシラジカル(RO
2・)を捕捉して容易にラジカルとなり難燃効果を発揮する。
NOR型ヒンダードアミン系安定剤ではなく、N−メチル型ヒンダードアミン系安定剤又はN−H型ヒンダードアミン系安定剤の場合、難燃性が低下するおそれがある。
【0069】
上記のアルコキシル基(OR)は、アルキル基に酸素が結合したアルコキシル基に限定されず、Rはアルキル基以外に、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基を含む。これらアルコキシル基の具体的なものとしては、メトキシ基、プロポキシ基、シクロヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基が好ましく、特にプロポキシ基、シクロヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基等が、分子量が大きくなることで、シート及びフィルムからのブリードアウトを抑制できる点から好ましい。
【0070】
本発明で用いるNOR型ヒンダードアミン系安定剤としては、N−アルコキシル基(>N−OR)の構造を有する化合物であれば特に限定されない。具体例として、例えば、特表2002−507238、国際公開第2005/082852号、国際公開第2008/003605号等に記載されているNOR型ヒンダードアミン系安定剤等が挙げられる。
【0071】
(D)成分は、カーボネート結合が含まれる化合物が好ましい。カーボネート結合が含まれると、難燃性と耐ブリード性の点に優れる。
【0072】
また、具体的な化合物の一例として以下の化合物が挙げられる。
(a)1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−オクタデシルアミノピペリジン
(b)ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)セバケート
(c)2,4−ビス[(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ブチルアミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−s−トリアジン
(d)ビス(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アジペート
(e)4,4’−ヘキサメチレンビス(アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)と、2−クロロ−4,6−ビス(ジブチルアミノ)−s−トリアジンで末端キャップされた2,4−ジクロロ−6−[(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ブチルアミノ]−s−トリアジンとの縮合生成物であるオリゴマー性化合物
(f)4,4’−ヘキサメチレンビス(アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)と、2−クロロ−4,6−ビス(ジブチルアミノ)−s−トリアジンで末端キャップされた2,4−ジクロロ−6−[(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)ブチルアミノ]−s−トリアジンとの縮合性生成物であるオリゴマー性化合物
(g)2,4−ビス[(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−ピペリジン−4−イル)−6−クロロ−s−トリアジン
(h)過酸化処理した4−ブチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと、2,4,6−トリクロロ−s−トリアジンと、シクロヘキサンと、N,N’−エタン−1,2−ジイルビス(1,3−プロパンジアミン)との反応生成物(N,N’,N’’’−トリス{2,4−ビス[(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)n−ブチルアミノ]−s−トリアジン−6−イル}−3,3’−エチレンジイミノジプロピルアミン)
(i)ビス(1−ウンデカノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート
(J)1−ウンデシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オン
(k)ビス(1−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)カーボネート
【0073】
市販品としては、BASF社製FlamestabNOR116FF、TINUVIN NOR371、TINUVIN 123S、TINUVIN XT850FF、TINUVIN XT855FF、株式会社ADEKA製LA−81等を例示することができる。
(D)成分のNOR型ヒンダードアミン系安定剤は1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
(D)成分のNOR型ヒンダードアミン系安定剤の含有量(質量%)は、0.2〜4質量%であり、好ましくは0.5〜3質量%であり、より好ましくは1〜2質量%である。
0.2質量%以上であれば、高度な難燃性のVTM−0が得られる。また、4質量%以下であれば、可塑剤として作用する(D)成分による溶融混練及び成形加工時のペレット及びシートの融着、着色等の問題がなく、良質なペレット及びシートが得られ、また高価なNOR型ヒンダードアミン系安定剤の多量添加によるコスト高を避けることができる。
【0075】
(その他の添加剤等)
本発明の樹脂組成物は、上記(A)〜(D)成分の他に、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて従来公知の添加剤、加工助剤等を添加することができる。これら添加剤等としては、酸化防止剤、耐候剤、滑剤、帯電防止剤、核剤、金属不活性化剤、充填剤等が挙げられる。
【0076】
酸化防止剤としては、フェノール系、リン系化合物、チオエーテル系化合物等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ第3ブチル−p−クレゾール、2,6−ジフェニル−4−オクタデシロキシフェノール、ジステアリル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アミド〕、4,4’−チオビス(6−第3ブチル−m−クレゾール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−第3ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−第3ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−第3ブチル−m−クレゾール)、2,2’−エチリデンビス(4,6―ジ第3ブチルフェノール)、2,2’−エチリデンビス(4−第二ブチル−6−第3ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第3ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリス(2,6−ジメチル−3−ヒドロキシ−4−第3ブチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2,4,6−トリメチルベンゼン、2−第3ブチル−4−メチル−6−(2−アクリロイルオキシ−3−第3ブチル−5−メチルベンジル)フェノール、ステアリル(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔3−(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル〕メタン、チオジエチレングリコールビス〔(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサメチレンビス〔(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、ビス〔3,3−ビス(4−ヒドロキシ−3−第3ブチルフェニル)ブチリックアシッド〕グリコールエステル、ビス〔2−第3ブチル−4−メチル−6−(2−ヒドロキシ−3−第3ブチル−5−メチルベンジル)フェニル〕テレフタレート、1,3,5−トリス〔(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシエチル〕イソシアヌレート、3,9−ビス〔1,1−ジメチル−2−{(3−第3ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル〕−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、トリエチレングリコールビス〔(3−第3ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕等が挙げられる。これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0077】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス〔2−第3ブチル−4−(3−第3ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニルチオ)−5−メチルフェニル〕ホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、ジ(デシル)モノフェニルホスファイト、ジ(トリデシル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ第3ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ第3ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4,6−トリ第3ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラ(トリデシル)イソプロピリデンジフェノールジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−n−ブチリデンビス(2−第3ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト、ヘキサ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−第3ブチルフェニル)ブタントリホスファイト、テトラキス(2,4−ジ第3ブチルフェニル)ビフェニレンジホスホナイト、9,10−ジハイドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、2,2’−メチレンビス(4,6−第3ブチルフェニル)−2−エチルヘキシルホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−第3ブチルフェニル)−オクタデシルホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ第3ブチルフェニル)フルオロホスファイト、トリス(2−〔(2,4,8,10−テトラキス第3ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン−6−イル)オキシ〕エチル)アミン、2−エチル−2−ブチルプロピレングリコールと2,4,6−トリ第3ブチルフェノールのホスファイト等が挙げられる。これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0078】
チオエーテル系酸化防止剤としては、例えば、チオジプロピオン酸ジラウリル、チオジプロピオン酸ジミリスチル、チオジプロピオン酸ジステアリル等のジアルキルチオジプロピオネート類、及びペンタエリスリトールテトラ(β−アルキルメルカプトプロピオン酸エステル類が挙げられる。これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0079】
耐候剤としては、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン光安定剤等を用いることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、5,5’−メチレンビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン)等の2−ヒドロキシベンゾフェノン類;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第3ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第3ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−5’−第3オクチルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジクミルフェニル)ベンゾトリアゾ−ル、2,2’−メチレンビス(4−第3オクチル−6−(ベンゾトリアゾリル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−第3ブチル−5’−カルボキシフェニル)ベンゾトリアゾール等の2−(2’−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類;フェニルサリシレート、レゾルシノールモノベンゾエート、2,4−ジ第3ブチルフェニル−3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、2,4−ジ第3アミルフェニル−3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、ヘキサデシル−3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート類;2−エチル−2’−エトキシオキザニリド、2−エトキシ−4’−ドデシルオキザニリド等の置換オキザニリド類;エチル−α−シアノ−β、β−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート等のシアノアクリレート類;2−(2−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ第3ブチルフェニル)−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4,6−ジフェニル−s−トリアジン、2−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシ−5−メチルフェニル)−4,6−ビス(2,4−ジ第3ブチルフェニル)−s−トリアジン等のトリアリールトリアジン類が挙げられる。これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0080】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルステアレート、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルステアレート、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルベンゾエート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクトキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)・ジ(トリデシル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ビス(1,2,2,4,4−ペンタメチル−4−ピペリジル)−2−ブチル−2−(3,5−ジ第3ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、1−(2−ヒドロキシエチル)−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジノ−ル/コハク酸ジエチル重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−モルホリノ−s−トリアジン重縮合物、1,6−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアミノ)ヘキサン/2,4−ジクロロ−6−第3オクチルアミノ−s−トリアジン重縮合物、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕−1,5,8−12−テトラアザドデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン、1,6,11−トリス〔2,4−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−s−トリアジン−6−イル〕アミノウンデカン等のヒンダードアミン化合物が挙げられる。これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0081】
滑剤としては、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪酸、脂肪酸金属塩系等を用いることができる。
脂肪族アミド系滑剤としては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミド等が挙げられる。これらは2種以上を混合して使用してもよい。
脂肪族エステル系滑剤としては、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、エルカ酸メチル、ベヘニン酸メチル、ラウリル酸ブチル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ヤシ脂肪酸オクチルエステル、ステアリン酸オクチル、牛脂脂肪酸オクチルエステル、ラウリル酸ラウリル、ステアリン酸ステアリル、ベヘニン酸ベヘニル、ミリスチン酸セチル、炭素数28〜30の直鎖状で分岐がない飽和モノカルボン酸(以下モンタン酸と略記する)とエチレングリコールのエステル、モンタン酸とグリセリンのエステル、モンタン酸とブチレングリコールのエステル、モンタン酸とトリメチロールエタンのエステル、モンタン酸とトリメチロールプロパンのエステル、モンタン酸とペンタエリスリトールのエステル、グリセリンモノステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンセスクイオレート、ソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート等が挙げられる。これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0082】
脂肪酸系滑剤のうち飽和脂肪酸として、具体的には、ラウリン酸(ドデカン酸)、イソデカン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、ペンタデシル酸、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、マルガリン酸(ヘプタデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、イソステアリン酸、ツベルクロステアリン酸(ノナデカン酸)、2−ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸(イコサン酸)、ベヘン酸(ドコサン酸)、リグノセリン酸(テトラドコサン酸)、セロチン酸(ヘキサドコサン酸)、モンタン酸(オクタドコサン酸)、メリシン酸等が挙げられ、特に、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、12−ヒドロキシステアリン酸及びモンタン酸等が挙げられる。
脂肪酸系滑剤のうち不飽和脂肪酸として、具体的には、ミリストレイン酸(テトラデセン酸)、パルミトレイン酸(ヘキサデセン酸)、オレイン酸(cis−9−オクタデセン酸)、エライジン酸(trans−9−オクタデセン酸)、リシノール酸(オクタデカジエン酸)、バクセン酸(cis−11−オクタデセン酸)、リノール酸(オクタデカジエン酸)、リノレン酸(9,11,13−オクタデカトリエン酸)、エレステアリン酸(9,11,13−オクタデカトリエン酸)、ガドレイン酸(イコサン酸)、エルカ酸(ドコサン酸)、ネルボン酸(テトラドコサン酸)等が挙げられる。これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0083】
脂肪酸金属塩系滑剤としては、上記脂肪酸系滑剤の脂肪酸のリチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩及びアルミニウム塩等が挙げられる。これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0084】
帯電防止剤としては、カチオン系、アニオン系、ノニオン系、両性系、グリセリン脂肪酸モノエステル等の脂肪酸部分エステル類等を用いることができる。
具体的には、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−(3−ドデシルオキシ−2−ヒドロキシプロピル)メチルアンモニウムメソスルフェート、(3−ラウリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムメチルスルフェート、ステアロアミドプロピルジメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウム硝酸塩、ステアロアミドプロピルジメチル−2−ヒドロキシエチルアンモニウムリン酸塩、カチオン性ポリマー、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキル硝酸エステル塩、リン酸アルキルエステル塩、アルキルホスフェートアミン塩、ステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ジグリセリン脂肪酸エステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミン脂肪酸モノエステル、アルキルジエタノールアミド、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリエーテルブロックコポリマー、セチルベタイン、ヒドロキシエチルイミダゾリン硫酸エステル等が挙げられる。これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0085】
核剤としては、ソルビトール類、リン系、ロジン類、石油樹脂類等を用いることができる。
アルキル置換ベンジリデンソルビトール等のソルビトール類としては、例えば、1,3,2,4−ジベンジリデンソルビトール、1,3,2,4−ジ−(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3−o−メチルベンジリデン2,4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1,3,2,4−ジ−(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ−(2’,4’−ジメチルベンジリデン)ソルビトール。リン系としては、リン酸ビス(4−t−ブチルフェニル)ナトリウム、リン酸2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)ナトリウム、有機リン酸塩系複合品。その他、安息香酸ナトリウム、p−t−ブチル安息香酸アルミニウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、酸化アルミニウム、カオリンクレー、タルク、ロジン類、石油樹脂類等が挙げられる。これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0086】
金属不活性化剤としては、トリアジン類、ホスホン類、エポキシ類、トリアゾール類、ヒドラジド類、オキサミド類等を用いることができる。
具体的には、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、イソフタル酸ビス(2−フェノキシプロピオニルヒドラジド)、デカンジカルボン酸ジサリチロイルビドラジド、シュウ酸ビスベンジリデンヒドラジド、N,N’−ビス{2−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシル]エチル}オキサミド、3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4,−トリアゾール、酸アミド系、メラミン、トリス[2−t−ブチル−4−チオ(2’−メチル−4’−ヒドロキシ−5−t−ブチル)フェニル−5−メチル]ホスファイト等が挙げられる。これらは2種以上を混合して使用してもよい。
【0087】
充填剤としては、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭素繊維、マイカ、ワラストナイト、ウィスカ等を用いることができる。
【0088】
その他、ブロッキング防止剤、着色剤、ブルーミング防止剤、表面処理剤、抗菌剤、目ヤニ防止剤(特開2009−120717に記載のシリコーンオイル、高級脂肪族カルボン酸のモノアミド化合物、及び高級脂肪族カルボン酸と1価〜3価のアルコール化合物とを反応させてなるモノエステル化合物等の目ヤニ防止剤)等を添加してもよい。
【0089】
添加剤及び加工助剤の添加量は、樹脂組成物中、通常、0.05〜5質量%である。
【0090】
本発明の樹脂組成物は、実質的に(A)成分〜(D)成分及び任意添加成分のみからなっていてもよい。また、(A)成分〜(D)成分のみ、又は(A)成分〜(D)成分及び任意添加成分のみからなっていてもよい。
「実質的に(A)成分〜(D)成分及び任意添加成分のみからなる」とは、組成物の95質量%以上100質量%以下(好ましくは98質量%以上100質量%以下)が(A)成分〜(D)成分であるか、又は(A)成分〜(D)成分及び任意添加成分であることを意味する。
尚、本発明の組成物は本発明の効果を損なわない範囲で(A)成分〜(D)成分及び任意添加成分の他に不可避不純物を含んでいてもよい。
【0091】
[樹脂組成物の製造方法]
本発明の樹脂組成物は、各成分を任意の方法で溶融混練することによって製造することができる。例えば、ヘンシェルミキサーに代表される高速撹拌機、バンバリーミキサーに代表されるバッチ式混練機、単軸又は二軸の連続混練機、ロールミキサー等を単独で、又は組み合わせて用いる方法が挙げられる。
【0092】
[成形体、シート]
本発明の樹脂組成物を成形することによって、シート等の成形体を製造することができる。
成形方法としては、従来公知の成形方法を採用することができ、例えば、射出成形、シート成形、押出成形、異形押出成形、熱プレス成形等が挙げられる。このうち、得られる成形品の外観に優れることや経済性な観点から、溶融押出機を用いてシート成形する方法が好ましい。これらの成形条件は特に限定されない。
【0093】
本発明の成形体は、UL94のVTM−0(厚さ0.2mm)に合格する難燃性を有している。
本発明の成形体は、ポリプロピレンの特徴である耐トラッキング性、電気絶縁性及び耐薬品性等が必要とされる用途に好適に使用することができる。具体的には、成形体のうち、透明薄肉成形体は、例えばデスクトップパソコンやノート型パソコン等のコンピューター部品、携帯電話部品、電気・電子機器、携帯情報端末、家電製品部品、自動車部品、産業資材及び建築材等に用いられることが好ましい。特に、透明薄肉成形体は、ディスプレイフィルム、加飾フィルム、絶縁シート、マスキングシート、及び養生シートとすることが好ましい。さらに近年、透明薄肉成形体の要望が高まっている加飾シート、バッテリーケース、プラスチックフレーム等も好適な用途として挙げることができる。
【0094】
[積層シート]
本発明のシートにポリプロピレンを積層して積層シートとすることができる。ポリプロピレンを積層することにより、本発明のシートがシート成形ラインと直接接触することを回避することでき、リン系難燃剤の付着を防止することができる。
また、ポリプロピレンにNOR型ヒンダードアミン系化合物(安定剤)を添加することで、耐候性及び難燃性を付与することができる。NOR型ヒンダードアミン系化合物は上記と同様である。
【0095】
[樹脂シート]
本発明の樹脂組成物からなる溶融樹脂を急冷して成形することにより、本発明の樹脂シートを得ることができる。急冷することにより、複雑な形状に成形してもシートが白化せず、優れた意匠性を付与できる。また、透明性をさらに高めることができる。
この場合、急冷を表面温度が露点以上50℃以下に保たれた冷却ロールを用いて行うことが好ましい。このようにすることで、シートの白化をさらに防止することができる。
【0096】
また、上記の成形は、複数の冷却ロールに巻装された鏡面エンドレスベルトと鏡面冷却ロールとを備え、鏡面エンドレスベルトと鏡面冷却ロールの表面温度が露点以上50℃以下に保たれた装置を用いて行うことができる。
この場合、鏡面冷却ロールと鏡面エンドレスベルトとの間に、Tダイ押出機によって樹脂組成物からなる溶融樹脂を導入、圧接してシート状に成形し、鏡面エンドレスベルトに当該ベルトの表面温度より低い温度の冷却水を吹き付けて急冷してシートを製造する。
【0097】
得られたシートを非平面状に成形して、基体の少なくとも一部に設ける。複雑な形状に成形してもシートの白化を防止でき、複雑な形状の成形物でも外観を損なうことなく良好に加飾成形することができる。
【0098】
当該製造装置の一例を
図1に示す。
図1に示す製造装置は、押出機のTダイ12、第1冷却ロール13、第2冷却ロール14、第3冷却ロール15、第4冷却ロール16、金属製エンドレスベルト17、冷却水吹き付けノズル18、水槽19、吸水ロール20、剥離ロール21を備える。
このように構成された製造装置を用いた急冷によるシート11の製造方法を以下に説明する。
【0099】
まず、押し出された溶融樹脂と直接接触し、これを冷却する金属製エンドレスベルト17及び第4冷却ロール16の表面温度が露点以上、50℃以下、好ましくは30℃以下に保たれるように、予め各冷却ロール13、14、15、16の温度制御を行う。
【0100】
ここで、第4冷却ロール16及び金属製エンドレスベルト17の表面温度が露点以下では、表面に結露が生じ均一な製膜が困難になる可能性がある。一方、表面温度が50℃より高いと、得られるシート11の透明性が低くなるとともに、α晶が多くなり、熱成形しにくいものとなる可能性がある。従って、表面温度は例えば14℃である。
【0101】
次に、押出機のTダイ12より押し出された溶融樹脂(造核剤を含まない)を第1冷却ロール13上で金属製エンドレスベルト17と、第4冷却ロール16との間に挟み込む。この状態で、溶融樹脂を第1、第4冷却ロール13、16で圧接するとともに、14℃で急冷する。
この際、第1冷却ロール13及び第4冷却ロール16間の押圧力で弾性材22が圧縮されて弾性変形する。
この弾性材22が弾性変形している部分、即ち、第1冷却ロール13の中心角度θ1に対応する円弧部分で、急冷されたシートは各冷却ロール13、16により面状圧接されている。この際の面圧は、通常0.1MPa以上20MPa以下である。
【0102】
上述のように圧接され、第4冷却ロール16及び金属製エンドレスベルト17間に挟まれたシートは、続いて、第4冷却ロール16の略下半周に対応する円弧部分で金属製エンドレスベルト17と第4冷却ロール16とに挟まれて面状圧接されるとともに、冷却水吹き付けノズル18による金属製エンドレスベルト17の裏面側への冷却水の吹き付けにより、さらに急冷される。この際の面圧は、通常0.01MPa以上0.5MPa以下であり、また、冷却水の温度は、例えば8℃である。
吹き付けられた冷却水は、水槽19に回収されるとともに、回収された水は排水口19Aより排出される。
【0103】
このように第4冷却ロール16で面状圧接及び冷却された後、金属製エンドレスベルト17に密着したシートは、金属製エンドレスベルト17の回動とともに第2冷却ロール14上に移動される。ここで、剥離ロール21によりガイドされて第2冷却ロール14側に押圧されたシートは、前述同様、第2冷却ロール14の略上半周に対応する円弧部分で金属製エンドレスベルト17により面状圧接され、再び30℃以下の温度で冷却される。この際の面圧は、通常0.01MPa以上0.5MPa以下である。
尚、金属製エンドレスベルト17の裏面に付着した水は、第4冷却ロール16から第2冷却ロール14への移動途中に設けられている吸水ロール20により除去される。
【0104】
第2冷却ロール14上で冷却されたシートは、剥離ロール21により金属製エンドレスベルト17から剥離され、巻き取りロール(図示省略)により、所定の速度で巻き取られる。
【0105】
[成形品]
本発明の成形体(シート)、積層シート又は樹脂シート(以下、これらを「シート等」と言うことがある)を附形することにより成形品とすることができる。附形は、通常、熱成形により行う。
【0106】
本発明の成形品を用いて加飾成形を行う場合、インサート成形により行うことができる。インサート成形によって基体の一部に本発明の成形品を設けることで、複雑な形状の基体を良好に加飾成形することができる。
具体的に、インサート形成は、シート等が非平面状に成形されることを特徴とし、シート等を成形用金型の内面に合致するよう附形し、附形品を成形用金型の内面に装着し、成形用樹脂を供給して一体化して行う。
【0107】
また、加飾成形は、インモールド成形により行うこともできる。インモールド成形によって基体の一部に本発明の成形品を設けることで、複雑な形状の基体を良好に加飾成形することができる。
具体的に、インモールド形成は、シート等を成形用金型の内面に装着し、成形用樹脂を供給して一体化して行う。
【0108】
また、加飾成形は、被覆成形により行うこともできる。被覆成形によって基体の一部に本発明の成形品を設けることで、複雑な形状の基体を良好に加飾成形することができる。
具体的に、被覆形成は、被覆される芯材を配設したチャンバーボックス内を減圧状態とし、シート等を加熱軟化させ、チャンバーボックス内を加圧して加熱軟化させたシート等を芯材に押圧して被覆し、一体化して行う。
【0109】
[変形例]
上記のインサート成形、インモールド成形、被覆成形に限らず、例えば被覆後にシートを剥してインキのみを残す転写成形法等、シート等を基体の一部に備えることが可能な各種方法を利用できる。また、シート等は、成形物の表面の一部に1つのみ設けた構成に限らず、複数の成形体を設けてもよい。
【0110】
透明性が得られることでの意匠性の向上は得られる。さらに、印刷層や蒸着層を設け、シート等を形成して成形体としてインサート成形したり、シート等を形成して得られた成形体に印刷層を設けたりしてもよい。
【0111】
成形体としては、以下に示す層構成としてもよい。
(A)ポリプロピレン層(本発明のシート)/基体
(B)ポリプロピレン層(本発明のシート)/印刷層/基体
(C)印刷層/ポリプロピレン層(本発明のシート)/基体
(D)ポリプロピレン層(本発明のシート)/印刷層/ポリプロピレン層B(基材層)/基体
(E)印刷層/ポリプロピレン層(本発明のシート)/印刷層/基体
(F)ポリプロピレン層(本発明のシート)/印刷層/金属薄膜層/基体
(G)ポリプロピレン層(本発明のシート)/蒸着層/基体
(H)蒸着層/ポリプロピレン層(本発明のシート)/基体
(I)ポリプロピレン層(本発明のシート)/蒸着層/ポリプロピレン層B(基材層)/基体
(J)印刷層/ポリプロピレン層(本発明のシート)/印刷層/基体
(K)ポリプロピレン層(本発明のシート)/易接着層/印刷層/基体
(L)ポリプロピレン層(本発明のシート)/易接着層/蒸着層/基体
【0112】
(B)の層構成では、表面側に位置するポリプロピレン層により、印刷層が保護された状態となり、印刷層による良好な意匠性を長期間安定して提供できる。
(C)の構成では、印刷層が例えばインサート成形時の熱に弱い場合でも、インサート成形時の熱で変性せず、良好な印刷層を形成できる。
(D)の層構成では、基材層を設けているので、インサート成形時の熱で変形せず、良好印刷層を形成でき、ポリプロピレン層が印刷の剥れを防止できることから加飾等の意匠性を向上することが容易にできる。
(E)の層構成では、印刷層を複数設けることで、高い意匠性を提供できる。
(F)の層構成では、アルミニウム層等の反射特性を有する金属薄膜層を設けることで、高い意匠性を提供できる。
(G)の層構成では、表面側に位置するポリプロピレン層により、蒸着層が保護された状態となり、蒸着層による良好な意匠性を長期間安定して提供できる。
(H)の構成では、蒸着層が例えばインサート成形時の熱に弱い場合でも、インサート成形時の熱で変性せず、良好な蒸着層を形成できる。
(I)の層構成では、基材層を設けているので、インサート成形時の熱で変形せず、良好蒸着層を形成でき、ポリプロピレン層が蒸着層の剥れを防止できることから加飾等の意匠性を向上することが容易にできる。
(J)の層構成では、蒸着層を複数設けることで、高い意匠性を提供できる。
(K)の層構成では、ポリプロピレン層と印刷層の間に易接着層を設けているので、印刷層のインキの密着性を向上することができる。
(L)の層構成では、ポリプロピレン層と蒸着層の間に易接着層を設けているので、蒸着層の金属又は金属酸化物の密着強度を向上することができる。
さらに、上記層構成中に他の層を設けてもよい。
【実施例】
【0113】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものではない。
実施例及び比較例で用いた成分を以下に示す。尚、[(X’)成分]とは、本発明で用いるX成分には該当しないが、X成分に対応する成分であることを示す。
【0114】
[(A)成分]
・ホモポリプロピレンA [MFR=0.5g/10分(230℃、2.16kg)、株式会社プライムポリマー製 E−105GM]
・ホモポリプロピレンB [MFR=3.0g/10分(230℃、2.16kg)、株式会社プライムポリマー F−133A]
・ホモポリプロピレンD [MFR=30g/10分(230℃、2.16kg)、株式会社プライムポリマー F109V]
・ランダムポリプロピレンA [MFR=7.0g/10分(230℃、2.16kg)、株式会社プライムポリマー F−744NP]
・ランダムポリプロピレンB [MFR=25g/10分(230℃、2.16kg)、株式会社プライムポリマー製 F329RA]
・エチレン−プロピレンブロック共重合体G [MI=3g/10分(210℃、2.16kg)、株式会社プライムポリマー製J−466HP]
【0115】
[(B)成分]
・エチレン酢酸ビニル共重合体A [MFR=1g/10分(190℃、2.16kg)、酢酸ビニル含有量40質量%、LANXESS社製 レパプレン400]
・エチレン酢酸ビニル共重合体B [MFR=1.7g/10分(190℃、2.16kg)、酢酸ビニル含有量50質量%、LANXESS社製 レパプレン500]
・エチレン酢酸ビニル共重合体C [MFR=3.8g/10分(190℃、2.16kg)、酢酸ビニル含有量70質量%、LANXESS社製 レパプレン700]
・エチレン酢酸ビニル共重合体D [MFR=5.0g/10分(190℃、2.16kg)、酢酸ビニル含有量24質量%、NUC社製 NUC−3195]
【0116】
[(B’)成分]
・エチレン酢酸ビニル共重合体G [MFR=5.5g/10分(190℃、2.16kg)、酢酸ビニル含有量6質量%、NUC社製 NUC−3660]
・シクロオレフィンポリマー [MFR=10g/10分(260℃、2.16kg)、ガラス転移温度123℃、日本ゼオン社製 ZEONEX330R]
・スチレン系エラストマー [MFR=2.0g/10分(230℃、2.16kg)、スチレン/エチレン・ブチレン比=67/33、旭化成ケミカルズ社製 タフテックH1043]
・エチレン−ビニルアルコール共重合体 [MFR=12g/10分(210℃、2.16kg)、エチレン含有量44mol%、日本合成化学工業社製 ソアノールA4412]
【0117】
[(C)成分]
・リン酸エステルA(化合物No.1): トリフェニルホスフェート[大八化学工業株式会社製 TPP、融点49℃、リン含有量9.5%]
・リン酸エステルB(化合物No.2): レゾルシノールビス−ジキシレニルフォスフェート[大八化学工業株式会社製 PX−200、融点92℃、リン含有量9.0%]
・リン酸エステルC(化合物No.3): レゾルシノールビス−ジフェニルフォスフェート[大八化学工業株式会社製 CR−733S、23℃で液体、リン含有量10.5%]
・リン酸エステルD(化合物No.4): ビフェノールビス−ジフェニルフォスフェート[株式会社ADEKA製 FP−900、23℃で液体、リン含有量9.5%]
・リン酸エステルE(化合物No.5): ビフェノールビス−ジキシレニルフォスフェート[大八化学工業株式会社製 PX−202、融点170℃、リン含有量9.0%]
・リン酸エステルF(化合物No.6): ビスフェノールAビス−ジフェニルフォスフェート[株式会社ADEKA製 FP−600、23℃で液体、リン含有量8.8%]
・ホスファゼン化合物 [株式会社伏見製薬所製 ラビトルFP−110、融点109℃、リン含有量13%]
・ホスホン酸エステル化合物 [丸菱油化工業株式会社製 ノンネン73、融点100℃、リン含有量10%]
【化6】
【0118】
[(C’)成分]
・リン酸アミン塩化合物[株式会社ADEKA製 FP2100JC、融点なし、リン含有量20%]
【0119】
[(D)成分]
・NOR型ヒンダードアミン系安定剤A [BASF社製 FlamestabNOR116FF]
・NOR型ヒンダードアミン系安定剤B [BASF社製 TINUVIN NOR371]
・NOR型ヒンダードアミン系安定剤C [BASF社製 TINUVIN123S]
・NOR型ヒンダードアミン系安定剤D [BASF社製 TINUVIN XT855FF]
・NOR型ヒンダードアミン系安定剤E [株式会社ADEKA製 LA−81]
【0120】
[(D’)成分]
・N−メチル型ヒンダードアミン系安定剤 [株式会社ADEKA製 LA−52]
・N−H型ヒンダードアミン系安定剤 [株式会社ADEKA製 LA−57]
【0121】
[添加剤]
(分散剤・滑剤)
グリセリンモノステアレート [ライオン株式会社製 GS95P]
(フェノール系酸化防止剤)
テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン [株式会社ADEKA製 アデカスタブAO60]
(リン系酸化防止剤)
トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト [株式会社ADEKA製 アデカスタブ2112]
【0122】
実施例1〜5、11〜17、29、30
1.樹脂組成物及びペレットの製造
(A)〜(D)成分及びその他成分を混合し、二軸押出機によって溶融混練し、樹脂組成物からなるペレットを作製し、このペレットをシート状に成形した。以下、各工程について説明する。
(1)予備混合
各成分を表1〜5に示す組成で配合し、ヘンシェルミキサーで予備混合した。
実施例1〜5、11〜17は、(A)〜(D)成分及びその他難燃剤・充填剤の合計量100質量部に対して、GS95P(0.3質量部)、アデカスタブAO60(0.1質量部)及びアデカスタブ2112(0.2質量部)を添加剤として添加した。
表1〜5中の配合量の単位は質量%である。
(2)溶融混練
得られた予備混合物を、二軸混練機(シーティーイ株式会社製 商品名CTM35)を用いて200〜230℃で混練して組成物を作製し、ストランドカットを用いてペレット化した。
【0123】
2.成形
実施例1〜5、11〜17においては、小平製作所社製のプレス成形機PY−50/50Aを用いて以下のようにシートを製造した。即ち、上記で得られたペレット9gを200℃に加熱し、30トンの圧力で1分加圧した。次いで、水冷プレスで30トンの圧力で3分間加圧し、厚さ0.2mmのプレスシートを得た。
【0124】
実施例29、30においては、上記で得られたペレットを用い、
図1に示す製造装置を用いて以下の条件でシートを製造した。
・押出機の直径:90mm
・Tダイの幅:800mm
・シートの引き取り速度:10m/min
・第4冷却ロール及び金属製エンドレスベルト17の表面温度:14℃
・冷却水温度:8℃
・冷却水吹き付け量:200リットル/min
【0125】
3.評価
上記で得られた樹脂組成物及び成形体(シート)について、以下の評価を行った。結果を表1〜5に示す。
【0126】
(1)混練性
上記の溶融混練において、以下のように混練性を評価した。即ち、溶融混練時にポリプロピレン系樹脂とリン系難燃剤の相溶性が低く、以下のような生産不良現象があった場合を×とした。
・ポリプロピレン系樹脂のペレット又は溶融物が開放ベント又は真空ベントから噴出した。
・吐出量が不安定になり、サージング現象が起こり、ストランド切れが発生した。
・水槽にリン系難燃剤が溶出(ブリードアウト)し、排出水を汚染した。
・シクロオレフィンポリマーのような融点の高い樹脂を使用して、高温(280℃)で混練し、難燃剤及びエチレン−酢酸ビニル共重合体等が熱分解して激しく着色した。
上記の問題がない場合を○とした。
【0127】
(2)難燃性(UL94−VTM試験)
プレス成形で得られた厚さ0.2mmのプレスシートを、幅50mm、長さ200mmに切出して試料を作製した。Atlas社製のHVULプラスチックUL燃焼テストチャンバーを用い、作製した試料について、UL94−VTMテスト規格に準じて20mm垂直燃焼試験を行った。5本の試料について、それぞれ1回目と2回目の燃焼時間及び綿の発火の有無等から、UL94−VTM規格に従って燃焼ランクをつけた。
燃焼ランクは「VTM−0」が最高であり、「VTM−1」、「VTM−2」となるに従って難燃性は低下する。「VTM−0」〜「VTM−2」のいずれにも該当しないものは「not−VTM」とした。
【0128】
(3)透明性
透明性は内部ヘイズ値にて評価を行った。内部ヘイズ値が低いほど透明であることを表す。
内部ヘイズ値は、シート表面粗さの影響を除外してシート内部の透明性を測定するため、シート表面にシリコーンを塗布して、両面をガラス板で挟んだ状態でヘイズを測定する。このヘイズ値からガラスのみのヘイズ値を除算することで、内部ヘイズを測定する。尚、ヘイズの測定は、日本電色工業株式会社製ヘイズメーターNDH−200を用いて試験規格JIS K 7136に従って測定した。
【0129】
(4)ブリード試験評価
アズワン株式会社製定温乾燥器DO−600FAを用い、シートを、40℃、湿度30〜40%の状態で7日間処理してブリード評価を行った。
上記の処理前と処理後の内部ヘイズ値を測定し、その変化した値で評価を行った。変化値が大きいとブリードが多く、変化値が小さいとブリードが少ないことを表す。
【0130】
(5)シート成形体自体の伸び率、表面積及び白化
これらの評価方法は以下の通りである。
赤外線ヒーターにてシートを表面温度145℃に加熱し、成形前の表面積Xに対する成形後の表面積Yの大きさの割合(Y/X)が2.42である金型に真空及び圧縮空気にて押し付けて冷却することで熱成形した。伸び率は、予め印刷した1mm角の方眼模様の成形後の長さを測定して算出した。白化は熱成形品の片面を黒色塗料で塗装し、塗装面とは逆側から目視にて白化を評価した。白化の評価は、黒色がクリアに見えるものを○、黒色が白みかかって見えるものを×とした。
【0131】
実施例6〜10、18〜28、比較例1〜16
実施例1と同様にして、各成分を表1〜4に示す組成で配合し、樹脂組成物及びペレットを製造する。添加剤も実施例1と同様に加える。また、実施例1と同様にして成形し、得られる樹脂組成物及び成形体(シート)について評価を行う。想定される結果を表1〜4に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
【表2】
【0134】
【表3】
【0135】
【表4】
【0136】
【表5】
【0137】
表1〜5より、本発明の樹脂組成物は、問題なく溶融混練が可能となり、高い難燃性(VTM−0)を有することが分かる。比較例1〜16では、溶融混練が不可能であるか、又は溶融混練が可能であっても難燃性が低下することが分かる。
また、本発明の樹脂組成物のうち特定のものから得られたシートは透明性が改善され、ブリードの発生もなく、外観が良好であることが分かる。
また、本発明の樹脂組成物を用いて急冷ベルト式冷却を備える押出機で製膜したシートは、従来の公知のエアーナイフ式冷却を備える押出機で製膜したシートに比較して、さらに透明性が良好で、シート成形体の白化がない。