(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-66360(P2017-66360A)
(43)【公開日】2017年4月6日
(54)【発明の名称】低誘電損失の絶縁樹脂組成物、その組成物で製造された絶縁フィルム及びその絶縁フィルムを備えたプリント回路基板
(51)【国際特許分類】
C08G 59/20 20060101AFI20170317BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20170317BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20170317BHJP
C08K 3/00 20060101ALI20170317BHJP
C08J 5/24 20060101ALI20170317BHJP
H01B 3/40 20060101ALI20170317BHJP
H01B 17/56 20060101ALI20170317BHJP
B32B 7/02 20060101ALI20170317BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20170317BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20170317BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20170317BHJP
【FI】
C08G59/20
C08L63/00 C
C08K5/00
C08K3/00
C08J5/24
H01B3/40 F
H01B3/40 P
H01B17/56 A
B32B7/02 104
B32B27/20 Z
B32B27/38
H05K1/03 610L
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-64437(P2016-64437)
(22)【出願日】2016年3月28日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0138704
(32)【優先日】2015年10月1日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キ−セオク キム
(72)【発明者】
【氏名】ジ−ヒュ シム
(72)【発明者】
【氏名】ジ−エウン ウー
(72)【発明者】
【氏名】ミュン−サム カン
【テーマコード(参考)】
4F072
4F100
4J002
4J036
5G305
5G333
【Fターム(参考)】
4F072AA01
4F072AA05
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4J036FA03
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4J036FA05
4J036JA11
5G305AA06
5G305AB10
5G305BA09
5G305BA18
5G305CA16
5G305CA17
5G305CD01
5G305DA13
5G333AA03
5G333AB13
5G333AB21
5G333CA03
5G333DA04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低誘電損失特性を有する絶縁樹脂組成物の提供。
【解決手段】1つ以上のシリル基を含むエポキシ樹脂と硬化剤とフィラーとを含む絶縁樹脂組成物。前記エポキシ樹脂が1以上のシリル基を含むビフェニル系エポキシ樹脂又はビスフェノールA系エポキシ樹脂であることが好ましい絶縁樹脂組成物。更にフィラーが、エポキシ樹脂及び硬化剤の総量の70〜90重量部含まれことが好ましい絶縁樹脂組成物。熱硬化性樹脂内に誘電損失特性及び熱膨脹係数が低いシリコン元素を導入することにより、最終硬化の際に誘電損失特性が低く、低い熱膨脹係特性を有する絶縁フィルム用樹脂組成物。前記組成物で製造された絶縁フィルム、及びその絶縁フィルムを備えたプリント回路基板。
【選択図】
図2a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のシリル基を含むエポキシ樹脂と、
硬化剤と、
フィラーと、
を含む絶縁樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂は、1つ以上のシリル基を含むビフェニル系エポキシ樹脂、またはビスフェノールA系エポキシ樹脂である請求項1に記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項3】
前記フィラーは、前記エポキシ樹脂及び硬化剤の総量の70から90重量部含まれる請求項1または請求項2に記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂及び硬化剤は、当量比が1:0.5から1:1の範囲で含まれる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項5】
シリル基を含まないエポキシ樹脂をさらに含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項6】
前記硬化剤は、活性エステル硬化剤、アミノトリアジンノボラック硬化剤、アミド系硬化剤、ポリアミン系硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノールノボラック型硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、第3アミン硬化剤、及びイミダゾール硬化剤から1種以上選択される請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の絶縁樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の絶縁樹脂組成物により基材上に形成された絶縁フィルム。
【請求項8】
前記絶縁フィルムは、誘電正接特性(Df:Dissipation factor)が0.0050tangentδ以下である請求項7に記載の絶縁フィルム。
【請求項9】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の絶縁樹脂組成物を含むワニスに無機繊維または有機繊維を含浸及び乾燥させて製造されたプリプレグ。
【請求項10】
請求項7または請求項8に記載の絶縁フィルムが、回路パターンの形成された基材上にラミネーションされたプリント回路基板。
【請求項11】
シリレートエポキシに導入されるシリルグループの数を調整することにより絶縁樹脂組成物の熱膨脹係数及び誘電正接特性を調整する絶縁樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低誘電損失の絶縁樹脂組成物、その組成物で製造された絶縁フィルム及びその絶縁フィルムを備えたプリント回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子部品の軽薄短小化により、電子部品が実装されるプリント回路基板においては小さい面積に多数の電子部品を集積する必要があり、回路パターンの高密度化が要求されている。
【0003】
プリント回路基板の回路パターンが微細化され、回路の層間間隔が細くなるにつれ、誘電損失やショートなどの不良、または回路と絶縁体との間の密着力が低減されて製品の信頼性が低下するという問題点が生じている。このため、プリント回路基板、半導体パッケージ基板、またはフレキシブルプリント回路基板等においては微細な開口パターンを形成できる感光性絶縁フィルムが用いられている。
【0004】
今まで知られている低誘電損失のための樹脂組成物は、熱硬化性樹脂とフェノール系硬化剤を使用し、シリカ等の無機フィラーを含む樹脂組成物に関する研究が一般的であった。
【0005】
一般的にエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA系エポキシが主に用いられており、この樹脂は、優れた熱的及び機械的特性、そして接着特性を有する。
【0006】
しかし、硬化後に形成される多量の二次水酸基の存在のために、高い誘電率と誘電正接特性を有する短所があり、低誘電損失用のエポキシ樹脂としての使用には限界があった。
【0007】
近年、構造的に疎水性の特性を有するビフェニル系エポキシ樹脂または新規硬化性樹脂としてシアネートエステル樹脂及びオレフイン系樹脂を用いた低誘電損失絶縁材料の開発に関する研究が行われている。
【0008】
しかし、シアネートエステル樹脂の場合、自体誘電特性に優れるものの、金属触媒の使用が必要であり、砕け(brittle)やすい短所や高価であるため、使用が困難であった。
【0009】
また、オレフイン系樹脂の場合は、熱可塑性樹脂としては優れた誘電特性を有するものの、高含量を使用する場合には、既存の熱硬化性樹脂との相溶性不足による物性低下及び湿式(wet)工程に不利であるという短所があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2003−147052号公報
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施例に係る絶縁樹脂組成物は、一つ以上のシリル基を含むエポキシ樹脂、硬化剤、及びフィラーを含むことができる。
【0012】
上記エポキシ樹脂は、一つ以上のシリル基を含むビフェニル系エポキシ樹脂またはビスフェノールA系エポキシ樹脂であることができる。
【0013】
上記フィラーは、上記エポキシ樹脂及び硬化剤の総量の70から90重量部で含まれることができる。
【0014】
上記エポキシ樹脂及び硬化剤は、当量比が1:0.5から1:1の範囲で含まれることができる。
【0015】
上記組成物はシリル基を含まないエポキシ樹脂をさらに含むことができる。
【0016】
上記硬化剤は、活性エステル硬化剤、アミノトリアジンノボラック硬化剤、アミド系硬化剤、ポリアミン系硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノールノボラック型硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、第3アミン硬化剤、及びイミダゾール硬化剤から1種以上を選択することができる。
【0017】
上記硬化剤は、活性エステル及びアミノトリアジンのうちの1種以上であってもよい。
【0018】
本発明の一実施例に係る絶縁フィルムは、上記絶縁樹脂組成物を基材上に塗布及び半硬化させて製造することができる。
【0019】
上記絶縁フィルムの誘電正接特性(Df:Dissipation factor)は、 0.0050tangentδ以下であってもよい。
【0020】
本発明の一実施例に係るプリプレグは、上記絶縁樹脂組成物を含むワニスに無機繊維または有機繊維を含浸及び乾燥させて製造することができる。
【0021】
本発明の一実施例に係るプリント回路基板は、上記絶縁フィルムを回路パターンが形成された基材上にラミネーションすることで製造することができる。
【0022】
本発明の一実施例に係る絶縁樹脂組成物の製造方法は、シリレートエポキシに導入されるシリル基の数を調整することで絶縁樹脂組成物の熱膨脹係数及び誘電正接特性を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施例に係る絶縁フィルムが積層されたプリント回路基板を概略的に示す断面図である。
【
図2a】本発明の実施例に用いられたシリレートエポキシ樹脂の1例の構造図である。
【
図2b】本発明の実施例に用いられたシリレートエポキシ樹脂の他の例の構造図である。
【
図2c】本発明の実施例に用いられたシリレートエポキシ樹脂のまた他の例の構造図である。
【
図2d】本発明の実施例に用いられたシリレートエポキシ樹脂のまた他の例の構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明をより具体的に説明する前に、本明細書及び特許請求の範囲に使用された用語や単語は通常的や辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に則して本発明の技術的思想に符合する意味や概念で解釈されなければならない。
【0025】
したがって、本明細書に記載された実施例の構成は本発明の一つの例に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないため、本出願の時点においてこれらに代替できる多様な均等物及び変形例があり得ることを理解しなければならない。
【0026】
以下、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者が本発明を容易に実施できるように、本発明の一実施例を詳細に説明する。また、本発明を説明するに当たって、本発明の要旨をかえって不明にすると判断される公知技術に関する詳細な説明は省略する。
【0027】
<シリレートエポキシ樹脂>
本発明の一実施例に係る絶縁樹脂組成物は、エポキシ樹脂内にSiグループが含まれたシリレートエポキシ樹脂を含むことができる。
【0028】
上記シリレートエポキシ樹脂は、様々な構造のエポキシにシリレートグループが1つ以上置換されたエポキシ樹脂を含むことができる。
【0029】
本発明において、エポキシ樹脂は、2つ以上のエポキシ基を有し、上記絶縁樹脂組成物100重量部に対して、1から30重量部で含まれることができ、ナフタレン系エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、及びリン(phosphorous)系エポキシ樹脂から1種以上を選択することができ、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0030】
上記シリレートエポキシ樹脂は、下記化学式で表示されるシリレートエポキシ樹脂を1種以上含むことができる。
【化1】
【化2】
【0031】
<硬化剤>
本発明の一実施例に係る絶縁樹脂組成物は、シリレートエポキシ樹脂及び硬化剤を含むことができる。上記硬化剤は、通常的にエポキシ樹脂に含まれたエポキシ基と反応可能な硬化剤を含むことができ、特に制限されることはない。
【0032】
上記硬化剤は、上記絶縁樹脂組成物100重量部に対して、0.5から30重量部で含まれることができ、活性エステル硬化剤、アミノトリアジンノボラック硬化剤、アミド系硬化剤、ポリアミン系硬化剤、酸無水物硬化剤、フェノールノボラック型硬化剤、ポリメルカプタン硬化剤、第3アミン硬化剤、またはイミダゾール硬化剤から1種以上を選択することができ、必ずしもこれに限定されることはない。
【0033】
上記エポキシ樹脂及び硬化剤は、当量比が1:05から1:1範囲で含まれることができる。
【0034】
本発明によるエポキシ樹脂組成物は、硬化時間及び硬化温度を調整するなどの目的で硬化促進剤をさらに含むことができる。上記硬化促進剤としてはイミダゾール系が挙げられ、これに限定されないが、2−エチル−4メチルイミダゾール、1−(2−シアノエチル)−2−アルキルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種を用いることができる。
【0035】
<無機充填剤>
本発明の一実施例に係る絶縁樹脂組成物は、熱膨脹係数の向上のために無機充填剤をさらに含むことができる。
【0036】
上記無機充填剤の使用量は、特に制限されず、上記樹脂組成物100重量部に対して、1から100重量部を含むことができる。上記エポキシ樹脂及び硬化剤の総量の70から90重量部を含むことができる。上記無機充填剤の使用量が70重量部未満であると、上記樹脂組成物の熱膨脹係数及び誘電特性が高くて、低誘電損失用基板材料として使用しにくくなることがあり、90重量部を超過すると、金属層との剥離強度が低減して基板工程に適用しにくくなることがある。
【0037】
上記無機充填剤としては、シリカ(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、硫酸バリウム(BaSO
4)、水酸化アルミニウム(AlOH
3)、水酸化マグネシウム(Mg(OH)
2)、炭酸カルシウム(CaCO
3)、炭酸マグネシウム(MgCO
3)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化ホウ素(BN)、炭化ケイ素(SiC)、ホウ酸アルミニウム(AlBO
3)、チタン酸バリウム(BaTiO
3)、及びジルコン酸カルシウム(CaZrO
3)から1種以上を選択することができ、これに限定されない。
【0038】
上記無機充填剤は、表面処理されたシリカを含むことができ、上記シリカは、アミノフェニルシランにより表面処理されたシリカであることができる。上記シリカの粒径は、0.5から2μmであってもよい。
【0039】
<絶縁フィルム、プリプレグ、及びプリント回路基板>
本発明の一実施例に係る絶縁樹脂組成物は、当該技術分野で公知のいずれの一般的な方法を用いて半固相状態のフィルムを製造することができる。例えば、ロールコーター(roll coater)、カーテンコーター(curtain coater)、またはコンマコーター(comma coater)等を用いてフィルム状に製造して乾燥させた後、これを基板上に適用してビルドアップ方式による多層プリント基板を製造する時に絶縁フィルムまたはプリプレグとして用いることができる。このような絶縁フィルムまたはプリプレグは、耐熱性、熱膨脹係数、誘電率及び誘電損失の特性を向上させることができる。
【0040】
このように、本発明の一実施例に係る絶縁樹脂組成物を含むワニスに無機繊維または有機繊維等を含浸させた後、硬化させてプリプレグを製造し、これに片面または両面に銅箔を付着して銅張積層板を製造することができる。
【0041】
上記無機繊維または有機繊維は、ガラス繊維、炭素繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、サーモトロピック(thermotropic)液晶高分子繊維、リオトロピック液晶高分子繊維 、アラミド繊維、ポリピリドビスイミダゾール繊維、ポリベンゾチアゾール繊維、及びポリアリレート繊維から1種以上選択することができ、これに限定されない。
【0042】
また、上記樹脂組成物で製造された絶縁フィルムは、多層プリント回路基板の製造の際に、内層として用いられる銅張積層板上に積層して多層プリント回路基板の製造に用いられることができる。
【0043】
例えば、上記樹脂組成物で製造された絶縁フィルムをパターン加工した内層回路基板上に積層した後、約80から110℃の温度で約30分間硬化させ、デスミア(desmear)工程を行った後、無電解メッキ及び電気メッキ工程を用いて回路層を形成することで多層プリント回路基板を製造することができる。
【0044】
図1は、本発明の一実施例に係る絶縁フィルムが積層されたプリント回路基板を概略的に示す断面図である。
【0045】
図1を参照すると、本発明の実施例に係るプリント回路基板は、絶縁層11、12、13を含み、上記絶縁層11、12、13は、本発明による絶縁樹脂組成物を用いて製造されたものである。
【0046】
上記回路基板に含まれる絶縁層11、12、13の誘電正接特性(Df:Dissipation factor)は、0.0050tangentδであって熱膨脹係数特性が改善される。
【0047】
また、本発明の一実施例に係る絶縁樹脂組成物の製造方法は、シリレートエポキシに導入されるシリルグループの数を調整することで絶縁樹脂組成物の熱膨脹係数及び誘電正接特性を調整することができる。
【実施例】
【0048】
<絶縁樹脂組成物の製造>
[実施例1]
エポキシ樹脂と硬化剤の当量比は、1:(0.7:0.15)に固定した。
図2aに示すように、シリレートエポキシとしては、シリルグループが2つ置換された樹脂を用い、フィラーとしてのシリカは、アミノフェニルシランで表面処理されて表面にアミングループを含む1μmのシリカを用いた。シリカの含量は、樹脂と硬化剤の総量の80重量%となるようにし、添加剤として熱可塑性高分子であるポリビニルブチラールを用い、硬化触媒としてイミダゾール系を用いた。フィルムレベリング特性の向上のためにPDMS系レベリング物質を用いた。すべての成分を撹拌により均一に混合して絶縁フィルム用樹脂組成物1を製造した。
【0049】
[実施例2]
シリレートエポキシ樹脂として、
図2bに示すように、シリルグループが2つ及び1つ置換された樹脂を50:50で用いたことを除き、実施例1と同様の方法を用いて絶縁フィルム用樹脂組成物2を製造した。
【0050】
[実施例3]
シリレートエポキシ樹脂として、
図2cに示すようにシリルグループが1つ置換された樹脂を用いたことを除き、実施例1と同様の方法を用いて絶縁フィルム用樹脂組成物3を製造した。
【0051】
[実施例4]
シリレートエポキシ樹脂として、
図2dに示すようにシリルグループが1つ置換された樹脂と置換されなかった樹脂を50:50に用いたことを除き、実施例1と同様の方法を用いて絶縁フィルム用樹脂組成物4を製造した。
【0052】
[実施例5]
エポキシ樹脂として、ビスフェノールA樹脂、O−クレゾールノボラック樹脂、及び
図2aに示すシリルグル−ムが2つ置換されたシリレートエポキシを用い、硬化剤としてアミノトリアジンを用いた。ここで、エポキシ樹脂の当量比は、ビスフェノールA樹脂、O−クレゾールノボラック樹脂、シリレートエポキシが、0.4:0.1:0.5であった。またエポキシ樹脂と硬化剤の当量比は、1:0.6に固定した。フィラーとしてのシリカは、アミノフェニルシランで表面処理されて表面にアミングループを含む1μmのシリカを用いた。
【0053】
シリカの含量は、樹脂と硬化剤の総量の80重量部となるようにした。添加剤として熱可塑性高分子であるポリビニルブチラールを用い、硬化触媒としてイミダゾール系を用いた。フィルムレベリング特性の向上のために、PDMS系レベリング物質を用いた。すべての成分を撹拌により均一に混合して絶縁フィルム用樹脂組成物5を製造した。
【0054】
[比較例1]
エポキシ樹脂として、シリレートされなかったビスフェノールA樹脂、O−クレゾールノボラック樹脂を0.5:0.5の当量比で用い、シリカの含量を樹脂と硬化剤の総量の75重量%となるようにしたことを除き、実施例1と同様の方法を用いて比較例の組成物を製造した。
【0055】
[実施例6から実施例10]
実施例1から実施例5で得られた絶縁フィルム用樹脂組成物1から5を、20μmにフィルム化した。得られたフィルムを3ステップの硬化工程により硬化して絶縁フィルム1から5を製造した。
【0056】
上記3ステップの硬化工程は、120℃/30分、180℃/30分、及び230℃/60分で行った。
【0057】
[比較例2]
比較例1の組成物を用いたことを除き、実施例6と同様の方法を用いて比較例の絶縁フィルムを製造した。
【0058】
[実験例]
実施例6から実施例10で得られた絶縁フィルム1から5、及び比較例2で得られた比較例の絶縁フィルムを対象にして熱膨脹係数及び誘電正接特性を測定し、その結果を表1に示した。熱膨脹係数は、dynamic mechanical analyzer(DMA)を使用して測定した(測定サンプル規格:長さ4cm、幅4mm、厚さ100μm)。誘電特性は、Agilent E8362 PNA装備を使用し、cavity methodを用いて測定した(測定サンプル規格:長さ8cm、幅3mm、厚さ100μm)。
【表1】
【0059】
上述した実施例6から実施例10で得られた絶縁フィルム1から5を用いて、
図1に示すようなプリント回路基板を製造することができる。
【0060】
図1は、プリント回路基板を概略的に示す断面図(11〜13:絶縁フィルム、21:水平配線、22:ビア電極)であり、回路基板に含まれる絶縁層11、12、13の誘電正接特性(Df:Dissipation factor)が0.0050tangentδ以下の優れた特性を有するプリント回路基板を提供することができる。
【0061】
上述した実施例6から実施例10によれば、シリレートエポキシに導入されるシリルグループの数を調整することで絶縁樹脂組成物の熱膨脹係数の誘電正接特性を調整することができる。
【0062】
以上本発明を具体的な実施例を参照して詳細に説明したが、これは本発明を具体的に説明するためのものに過ぎず、本発明がこれらに限定されることはなく、本発明の技術的思想内で当分野の通常の知識を有する者によりその変形や改良が可能であることは明らかである。
【0063】
本発明の単純な変形や変更はすべて本発明の範囲に属するものであり、本発明の具体的な保護範囲は添付された特許請求の範囲により明確になるであろう。