【解決手段】ドラフトローラ支持体60は、シャフト80と、第1ベアリング91と、第2ベアリング92と、筒状のカラー93と、圧縮コイルスプリング96と、を備える。第1ベアリング91は、第1内輪91a及び第1外輪91bを有し、軸方向Aにおける第1側A1への移動が規制されている。第2ベアリング92は、第2内輪92a及び第2外輪92bを有し、軸方向Aにおける第1側A1及び第2側A2への移動が可能である。カラー93は、第1外輪91b及び第2外輪92bのそれぞれに接触するようにシャフト80を包囲している。圧縮コイルスプリング96は、第2内輪92aを軸方向Aにおける第1側A1に付勢している。
前記第2ベアリングと前記圧縮コイルスプリングとの間に配置され、前記軸方向における第2側から見た場合に、前記第2内輪と前記第2外輪との間の隙間を覆う環状部材を更に備える、請求項2又は3記載のドラフトローラ支持体。
前記軸方向における前記シャフトの一端部及び他端部のそれぞれにおいて、前記軸方向における外側を前記第1側と捉え、前記軸方向における内側を前記第2側と捉えた場合に、少なくとも、前記第1ベアリング、前記第2ベアリング、前記カラー及び前記付勢部材からなる組は、前記シャフトの前記一端部及び前記他端部のそれぞれに設けられている、請求項1〜6のいずれか一項記載のドラフトローラ支持体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなドラフト装置においては、ドラフトローラ支持体の耐久性の向上が求められている。
【0005】
そこで、本発明は、耐久性の向上が可能なドラフトローラ支持体、並びに、そのようなドラフトローラ支持体を備えるドラフトローラ、ドラフト装置及び紡績機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のドラフトローラ支持体は、シャフトと、シャフトが挿入された第1内輪、及び第1外輪を有し、シャフトの軸方向における第1側への移動が規制された第1ベアリングと、第1ベアリングに対して、軸方向における第1側の反対側である第2側に配置され、シャフトが挿入された第2内輪、及び第2外輪を有し、軸方向における第1側及び第2側への移動が可能な第2ベアリングと、第1ベアリングと第2ベアリングとの間に配置され、第1外輪及び第2外輪のそれぞれに接触するようにシャフトを包囲し、軸方向における第1側及び第2側への移動が可能な筒状のカラーと、第2内輪を軸方向における第1側に付勢する付勢部材と、を備える。
【0007】
このドラフトローラ支持体では、第1ベアリング及び第2ベアリングに与圧が作用した状態が維持される。これにより、第1ベアリング及び第2ベアリングを適切な状態で動作させることができる。更に、第1ベアリング及び第2ベアリングに与圧が作用した状態では、第1ベアリングと第2ベアリングとの間でカラーががたついてカラーに損傷が生じるのを抑制することができる。よって、このドラフトローラ支持体によれば、耐久性の向上が可能になる。
【0008】
本発明のドラフトローラ支持体では、付勢部材は、第2ベアリングに対して、軸方向における第2側に配置された圧縮コイルスプリングであってもよい。これにより、簡易な構成で第1ベアリング及び第2ベアリングに適切な与圧を作用させることができる。
【0009】
本発明のドラフトローラ支持体は、圧縮コイルスプリングを包囲する筒状のカバーを更に備えてもよい。これにより、圧縮コイルスプリングにおけるスプリング間の隙間に繊維片(いわゆる風綿。ただし、綿その他の天然繊維又は合成繊維等の繊維片を含む。以下、同じ。)が侵入するのを抑制することができる。
【0010】
本発明のドラフトローラ支持体は、第2ベアリングと圧縮コイルスプリングとの間に配置され、軸方向における第2側から見た場合に、第2内輪と第2外輪との間の隙間を覆う環状部材を更に備えてもよい。これにより、第2ベアリングにおける第2内輪と第2外輪との間の隙間に繊維片が侵入するのを抑制することができる。
【0011】
本発明のドラフトローラ支持体では、カラーのうち、少なくとも、軸方向における第1側の第1端面の硬度は、第1外輪の硬度よりも高く、カラーのうち、少なくとも、軸方向における第2側の第2端面の硬度は、第2外輪の硬度よりも高くてもよい。これにより、第1外輪及び第2外輪のそれぞれとの接触に起因してカラーに損傷が生じるのをより確実に抑制することができる。
【0012】
本発明のドラフトローラ支持体は、カラーの内側においてシャフトを包囲する筒状部材を更に備えてもよい。これにより、シャフトの軸方向に垂直な方向へのカラーの移動が制限されるため、カラーにローラ本体を容易に取り付けることができる。
【0013】
本発明のドラフトローラ支持体では、軸方向におけるシャフトの一端部及び他端部のそれぞれにおいて、軸方向における外側を第1側と捉え、軸方向における内側を第2側と捉えた場合に、少なくとも、第1ベアリング、第2ベアリング、カラー及び付勢部材からなる組は、シャフトの一端部及び他端部のそれぞれに設けられていてもよい。これにより、互いに隣り合う一対のドラフト装置においてドラフトローラ支持体を共用することができる。
【0014】
本発明のドラフトローラは、上記ドラフトローラ支持体と、ドラフトローラ支持体によって回転可能に支持されたローラ本体と、を備え、ローラ本体は、第1外輪、第2外輪及びカラーが挿入され、カラーに対して着脱可能なローラ筒体と、ローラ筒体の外周面に設けられたゴム層と、を有する。
【0015】
このドラフトローラには、耐久性の向上が可能なドラフトローラ支持体が用いられているので、長期間に渡る適切な動作の実現が可能になる。
【0016】
本発明のドラフト装置は、駆動回転させられるボトムローラ、及び従動回転させられるトップローラをそれぞれが有し、繊維束をドラフトする複数のローラ対を備え、繊維束のドラフト方向において最も下流側に位置するローラ対が有するトップローラに、上記ドラフトローラが用いられている。
【0017】
このドラフト装置では、従動回転させられるトップローラのうち、最も高速で回転させられるトップローラに、耐久性の向上が可能なドラフトローラ支持体が用いられているので、長期間に渡る適切な動作の実現が可能になる。
【0018】
本発明の紡績機は、上記ドラフト装置と、ドラフト装置でドラフトされた繊維束に撚りを与えて糸を生成する空気紡績装置と、空気紡績装置で生成された糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取装置と、を備える。
【0019】
この紡績機では、耐久性の向上が可能なドラフトローラ支持体が用いられているので、長期間に渡る適切な動作の実現が可能になる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、耐久性の向上が可能なドラフトローラ支持体、並びに、そのようなドラフトローラ支持体を備えるドラフトローラ、ドラフト装置及び紡績機を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0023】
図1に示されるように、紡績機1は、複数の紡績ユニット2と、糸継台車3と、玉揚台車(図示省略)と、第1エンドフレーム4と、第2エンドフレーム5と、を備えている。複数の紡績ユニット2は、一列に配列されている。各紡績ユニット2は、糸Yを生成してパッケージPに巻き取る。糸継台車3は、ある紡績ユニット2で糸Yが切断されたり、何らかの理由で糸Yが切れたりした場合、当該紡績ユニット2で糸継動作を行う。玉揚台車は、ある紡績ユニット2でパッケージPが満巻になった場合、パッケージPを玉揚げし、新しいボビンBを当該紡績ユニット2に供給する。
【0024】
第1エンドフレーム4には、紡績ユニット2で発生した繊維屑及び糸屑等を回収する回収装置等が収容されている。第2エンドフレーム5には、紡績機1に供給される圧縮空気(空気)の空気圧を調整して紡績機1の各部に空気を供給する空気供給部、及び紡績ユニット2の各部に動力を供給するための駆動モータ等が収容されている。第2エンドフレーム5には、機台制御装置41と、表示画面42と、入力キー43と、が設けられている。機台制御装置41は、紡績機1の各部を集中的に管理及び制御する。表示画面42は、紡績ユニット2の設定内容及び/又は状態に関する情報等を表示することができる。オペレータが入力キー43を用いて適宜の操作を行うことにより、紡績ユニット2の設定作業を行うことができる。
【0025】
図1及び
図2に示されるように、各紡績ユニット2は、糸Yの走行方向において上流側から順に、ドラフト装置6と、空気紡績装置7と、糸監視装置8と、テンションセンサ9と、糸貯留装置11と、ワキシング装置12と、巻取装置13と、を備えている。ユニットコントローラ10は、所定数の紡績ユニット2ごとに設けられており、紡績ユニット2の動作を制御する。
【0026】
ドラフト装置6は、スライバ(繊維束)Sをドラフトする複数のローラ対を有している。より詳細には、ドラフト装置6は、スライバSの走行方向(繊維束のドラフト方向)において上流側から順に、バックローラ対14と、サードローラ対15と、ミドルローラ対16と、フロントローラ対17と、を有している。各ローラ対14,15,16及び17は、駆動回転させられるボトムローラと、従動回転させられるトップローラと、を有している。ボトムローラは、第2エンドフレーム5に設けられた駆動モータ又は各紡績ユニット2に設けられた駆動モータにより回転駆動される。ミドルローラ対16のボトムローラに対しては、エプロンベルト18aが設けられている。ミドルローラ対16のトップローラに対しては、エプロンベルト18bが設けられている。
【0027】
空気紡績装置7は、ドラフト装置6でドラフトされた繊維束Fに旋回空気流によって撚りを与えて糸Yを生成する。より詳細には(ただし、図示省略)、空気紡績装置7は、紡績室と、繊維案内部と、旋回空気流発生ノズルと、中空ガイド軸体と、を有している。繊維案内部は、上流側のドラフト装置6から供給された繊維束Fを紡績室内に案内する。旋回空気流発生ノズルは、繊維束Fが走行する経路の周囲に配置されている。旋回空気流発生ノズルから空気が噴射されることにより、紡績室内に旋回空気流が発生する。この旋回空気流によって、繊維束Fを構成する複数の繊維の各繊維端が反転されて旋回させられる。中空ガイド軸体は、糸Yを紡績室内から空気紡績装置7の外部に案内する。
【0028】
糸監視装置8は、空気紡績装置7と糸貯留装置11との間において、走行する糸Yの情報を監視して、監視した情報に基づいて糸欠陥の有無を検出する。糸監視装置8は、糸欠陥を検出した場合、糸欠陥検出信号をユニットコントローラ10に送信する。糸監視装置8は、糸欠陥として、例えば、糸Yの太さ異常及び/又は糸Yに含有されている異物を検出する。糸監視装置8は、糸切れ等も検出する。テンションセンサ9は、空気紡績装置7と糸貯留装置11との間において、走行する糸Yのテンションを測定し、テンション測定信号をユニットコントローラ10に送信する。糸監視装置8及び/又はテンションセンサ9の検出結果に基づきユニットコントローラ10が異常有りと判断した場合、紡績ユニット2において、糸Yが切断される。具体的には、空気紡績装置7への空気の供給が停止されて、糸Yの生成が中断されることにより、糸Yが切断される。或いは、別途設けられたカッタにより糸Yが切断されるようにしてもよい。
【0029】
ワキシング装置12は、糸貯留装置11と巻取装置13との間において、糸Yにワックスを付与する。
【0030】
糸貯留装置11は、空気紡績装置7と巻取装置13との間において、糸Yの弛みを取る。糸貯留装置11は、空気紡績装置7から糸Yを安定して引き出す機能、糸継台車3による糸継動作時等に空気紡績装置7から送り出される糸Yを滞留させて糸Yが弛むのを防止する機能、及び糸貯留装置11よりも下流側の糸Yのテンションの変動が空気紡績装置7に伝わるのを防止する機能を有している。
【0031】
巻取装置13は、糸YをボビンBに巻き取ってパッケージPを形成する。巻取装置13は、クレードルアーム21と、巻取ドラム22と、トラバースガイド23と、を有している。クレードルアーム21は、ボビンBを回転可能に支持する。クレードルアーム21は、支軸24によって揺動可能に支持されており、ボビンBの表面又はパッケージPの表面を巻取ドラム22の表面に適切な圧力で接触させる。第2エンドフレーム5に設けられた駆動モータ(図示省略)が、複数の紡績ユニット2の巻取ドラム22を一斉に駆動する。これにより、各紡績ユニット2において、ボビンB又はパッケージPが巻取方向に回転させられる。各紡績ユニット2のトラバースガイド23は、複数の紡績ユニット2で共有されるシャフト25に設けられている。第2エンドフレーム5の駆動モータがシャフト25を巻取ドラム22の回転軸方向に往復駆動することによって、回転するボビンB又はパッケージPに対してトラバースガイド23が糸Yを所定幅でトラバースする。
【0032】
糸継台車3は、ある紡績ユニット2において糸Yが切断されたり、何らかの理由で糸Yが切れたりした場合、当該紡績ユニット2まで走行して、糸継動作を行う。糸継台車3は、糸継装置26と、サクションパイプ27と、サクションマウス28と、を有している。サクションパイプ27は、支軸31によって回動可能に支持されており、空気紡績装置7からの糸Yを捕捉して糸継装置26に案内する。サクションマウス28は、支軸32によって回動可能に支持されており、巻取装置13からの糸Yを捕捉して糸継装置26に案内する。糸継装置26は、案内された糸Y同士の糸継ぎを行う。糸継装置26は、圧縮空気を用いるスプライサ、種糸を用いるピーサー、又は糸Yを機械的に継ぐノッター等である。
【0033】
糸継台車3が糸継ぎ動作を行うとき、パッケージPを反巻取方向に回転(逆回転)させる。このときには、パッケージPが巻取ドラム22から離間するようにクレードルアーム21がエアーシリンダ(図示省略)によって移動させられ、糸継台車3に設けられた逆回転用ローラ(図示省略)によってパッケージPが逆回転させられる。
【0034】
上述したドラフト装置6の構成のうち、スライバSの走行方向において最も下流側に位置するフロントローラ対17のトップローラに用いられるドラフトローラの構成について、より詳細に説明する。
図3に示されるように、ドラフトローラ50は、ドラフトローラ支持体60と、ローラ本体70と、を備えている。ローラ本体70は、ドラフトローラ支持体60によって回転可能に支持されている。
【0035】
ドラフトローラ支持体60は、シャフト80と、回転支持機構90と、を有している。回転支持機構90は、シャフト80の軸方向Aにおけるシャフト80の一端部81及び他端部(図示省略)のそれぞれに設けられている。シャフト80の一端部81に設けられた回転支持機構90は、互いに隣り合う一対のドラフト装置6のうち一方のドラフト装置6においてローラ本体70を回転可能に支持している。シャフト80の他端部に設けられた回転支持機構90は、互いに隣り合う一対のドラフト装置6のうち他方のドラフト装置6においてローラ本体70を回転可能に支持している。シャフト80の中間部82(一端部81と他端部との間の部分)は、互いに隣り合う一対のドラフト装置6に共用されたドラフトクレードル(図示省略)に支持されている。
【0036】
以下、軸方向Aにおける外側を第1側A1と捉え、軸方向Aにおける内側を第2側A2と捉えて、シャフト80の一端部81に設けられた回転支持機構90及びローラ本体70の構成について説明する。シャフト80の他端部に設けられた回転支持機構90及びローラ本体70の構成については、その説明を省略する。
【0037】
回転支持機構90は、第1ベアリング91と、第2ベアリング92と、カラー93と、筒状部材94と、環状部材95と、圧縮コイルスプリング(付勢部材)96と、カバー97と、を備えている。
【0038】
第1ベアリング91は、第1内輪91a及び第1外輪91bを有する転がり軸受である。シャフト80の一端部81における第1部分81aが第1内輪91aに挿入されている。第1内輪91aは、軸方向Aにおける第1側A1及び第2側A2への移動が可能となるように設けられている。第1部分81aは、シャフト80の一端部81のうち最も第1側A1に位置する部分である。第1部分81aにおいて第1ベアリング91の第1側A1には、着脱可能なフランジ部材98が設けられている。フランジ部材98は、第1内輪91aに接触し且つ第1外輪91bに接触しない外径を有している。第1ベアリング91は、フランジ部材98によって、軸方向Aにおける第1側A1への移動が規制されている。
【0039】
第2ベアリング92は、第2内輪92a及び第2外輪92bを有する転がり軸受である。シャフト80の一端部81における第2部分81bが第2内輪92aに挿入されている。第2内輪92aは、軸方向Aにおける第1側A1及び第2側A2への移動が可能となるように設けられている。第2部分81bは、シャフト80の一端部81のうち第1部分81aの第2側A2に位置する部分であり、第1部分81aよりも大きい外径を有している。このように、第2ベアリング92は、第1ベアリング91に対して、軸方向Aにおける第2側A2に配置されている。
【0040】
カラー93は、例えば金属からなる筒状の部材である。カラー93は、第1ベアリング91と第2ベアリング92との間に配置されている。圧縮コイルスプリング96による与圧が作用していない状態では、カラー93は、軸方向Aにおける第1側A1及び第2側A2への移動が可能である。圧縮コイルスプリング96による与圧が作用している状態では、カラー93は軸方向Aに移動しない。カラー93は、第1外輪91b及び第2外輪92bのそれぞれに接触するように、シャフト80の一端部81における第2部分81bを包囲している。カラー93のうち軸方向Aにおける第1側A1の第1端面93aの硬度は、第1外輪91bの硬度よりも高い。カラー93のうち軸方向Aにおける第2側A2の第2端面93bの硬度は、第2外輪92bの硬度よりも高い。例えば、カラー93が金属からなる場合には、第1端面93a及び第2端面93bに熱処理(焼き入れ)を施すことで、第1端面93a及び第2端面93bの硬度を上げることができる。
【0041】
筒状部材94は、例えば樹脂からなり、カラー93の内側において、シャフト80の一端部81における第2部分81bを包囲している。軸方向Aにおける筒状部材94の長さは、軸方向Aにおけるカラー93の長さよりも短い。
【0042】
環状部材95は、例えば金属からなり、筒部95aと、フランジ部95bと、を有している。環状部材95は、第2ベアリング92と圧縮コイルスプリング96との間に配置されている。環状部材95は、軸方向Aにおける第1側A1及び第2側A2への移動が可能となるように設けられている。筒部95aは、第2内輪92aに接触するように、シャフト80の一端部81における第2部分81bを包囲している。フランジ部95bは、軸方向Aにおける第2側A2から見た場合に、第2内輪92aと第2外輪92bとの間の隙間を覆っている。
【0043】
圧縮コイルスプリング96は、第2ベアリング92及び環状部材95に対して、軸方向Aにおける第2側A2に配置されている。圧縮コイルスプリング96は、シャフト80の一端部81における第3部分81cを包囲している。第3部分81cは、シャフト80の一端部81のうち第2部分81bの第2側A2に位置する部分であり、第2部分81bよりも大きい外径を有している。圧縮コイルスプリング96は、環状部材95のフランジ部95b、及びシャフト80の一端部81に設けられたフランジ部81dのそれぞれに接触している。これにより、圧縮コイルスプリング96は、環状部材95を介して、第2ベアリング92の第2内輪92aを軸方向Aにおける第1側A1に付勢する。圧縮コイルスプリング96による与圧が作用している状態では、環状部材95と第3部分81cとの間には、隙間が設けられている。
【0044】
カバー97は、例えば樹脂からなる筒状の部材である。カバー97は、環状部材95のフランジ部95bとシャフト80のフランジ部81dとの間において圧縮コイルスプリング96を包囲している。カバー97と環状部材95との間、及び/又は、カバー97とフランジ部81dとの間には、隙間が設けられている。
【0045】
以上のように構成された回転支持機構90によって、ローラ本体70が回転可能に支持されている。ローラ本体70は、ローラ筒体71と、ゴム層72と、を備えている。ローラ筒体71には、第1外輪91b、第2外輪92b及びカラー93が挿入されている。この状態で、ローラ筒体71は、C字状のスプリング73を介してカラー93に係合されている。スプリング73は、カラー93に対してローラ筒体71が着脱可能となるように、カラー93の外周面に設けられた溝93cとローラ筒体71の内周面に設けられた溝71bとに渡って配置されている。ゴム層72は、ローラ筒体71の外周面71aに設けられている。ローラ筒体71は、内側の筒体及び外側の筒体というように複数の部材で構成されていてもよいし、1つの部材で構成されていてもよい。ローラ筒体71の第1側A1の端部には、繊維片の侵入を抑制するためのキャップ74が取り付けられている。
【0046】
以上説明したように、ドラフトローラ支持体60では、圧縮コイルスプリング96による第1側A1への付勢力が、第2内輪92a、第2外輪92b、カラー93、第1外輪91b、第1内輪91aという順序で作用し、第1ベアリング91及び第2ベアリング92に与圧が作用した状態が維持される。これにより、第1ベアリング91及び第2ベアリング92を適切な状態で動作させることができる。更に、第1ベアリング91及び第2ベアリング92に与圧が作用した状態では、第1ベアリング91と第2ベアリング92との間でカラー93ががたついてカラー93に損傷が生じるのを抑制することができる。よって、ドラフトローラ支持体60によれば、耐久性の向上が可能になる。
【0047】
ドラフトローラ支持体60では、第2ベアリング92に対して、軸方向Aにおける第2側A2に配置された圧縮コイルスプリング96が、第2内輪92aを軸方向Aにおける第1側A1に付勢している。これにより、簡易な構成で第1ベアリング91及び第2ベアリング92に適切な与圧を作用させることができる。
【0048】
ドラフトローラ支持体60では、筒状のカバー97が圧縮コイルスプリング96を包囲している。これにより、圧縮コイルスプリング96におけるスプリング間の隙間に繊維片が侵入するのを抑制することができる。
【0049】
ドラフトローラ支持体60では、環状部材95が、第2ベアリング92と圧縮コイルスプリング96との間に配置されており、軸方向Aにおける第2側A2から見た場合に、第2内輪92aと第2外輪92bとの間の隙間を覆っている。これにより、第2ベアリング92における第2内輪92aと第2外輪92bとの間の隙間に繊維片が侵入するのを抑制することができる。
【0050】
ドラフトローラ支持体60では、カラー93の第1端面93aの硬度が、第1外輪91bの硬度よりも高く、カラー93の第2端面93bの硬度が、第2外輪92bの硬度よりも高い。これにより、第1外輪91b及び第2外輪92bのそれぞれとの接触に起因してカラー93に損傷が生じるのをより確実に抑制することができる。
【0051】
ドラフトローラ支持体60では、筒状部材94がカラー93の内側においてシャフト80を包囲している。これにより、軸方向Aに垂直な方向へのカラー93の移動が制限されるため、カラー93にローラ本体70を容易に取り付けることができる。
【0052】
ドラフトローラ支持体60では、軸方向Aにおけるシャフト80の一端部81及び他端部のそれぞれにおいて、軸方向Aにおける外側を第1側A1と捉え、軸方向Aにおける内側を第2側A2と捉えた場合に、回転支持機構90(第1ベアリング91、第2ベアリング92、カラー93及び圧縮コイルスプリング96等からなる組)が、シャフト80の一端部81及び他端部のそれぞれに設けられている。これにより、互いに隣り合う一対のドラフト装置6においてドラフトローラ支持体60を共用することができる。
【0053】
以上のように、耐久性の向上が可能なドラフトローラ支持体60が用いられていることで、ドラフトローラ50、ドラフト装置6及び紡績機1において、長期間に渡る適切な動作の実現が可能になる。特に、従動回転させられるトップローラのうち、最も高速で回転させられるフロントローラ対17のトップローラ(すなわち、ゴム層72の摩耗等に起因するローラ本体70の交換頻度が比較的高いトップローラ)に、耐久性の向上が可能なドラフトローラ支持体60を用いることは重要である。
【0054】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0055】
第1ベアリング91は、フランジ部材98以外の手段(例えば、シャフト80に対する第1内輪91aの圧入等)によって、軸方向Aにおける第1側A1への移動が規制されていてもよい。カラー93の全体の硬度が第1外輪91b及び第2外輪92bの硬度よりも高くてもよい。ドラフトローラ支持体60は、フロントローラ対17以外の他のローラ対を構成するドラフトローラに用いられてもよい。カラー93の内側に筒状部材94が配置されていなくてもよい。
【0056】
空気紡績装置7は、繊維束Fの撚りが空気紡績装置7の上流側に伝わるのを防止するために、繊維案内部に保持されて紡績室内に突出するように配置されたニードルを更に備えていてもよい。また、空気紡績装置7は、そのようなニードルに代えて、繊維案内部の下流側端部によって、繊維束Fの撚りが空気紡績装置7の上流側に伝わるのを防止するものであってもよい。更に、空気紡績装置7は、上記の構成に代えて、互いに反対方向に繊維束Fに撚りを掛ける一対のエアージェットノズルを備えていてもよい。
【0057】
紡績ユニット2では、糸貯留装置11が空気紡績装置7から糸Yを引き出す機能を有していたが、デリベリローラとニップローラとで空気紡績装置7から糸Yが引き出されてもよい。デリベリローラとニップローラとで空気紡績装置7から糸Yを引き出す場合、糸貯留装置11の代わりに、吸引空気流で糸Yの弛みを吸収するスラックチューブ又は機械的なコンペンセータ等を設けてもよい。
【0058】
紡績機1では、機台高さ方向において、上側で供給された糸Yが下側で巻き取られるように各装置が配置されていた。しかし、下側で供給された糸Yが上側で巻き取られるように各装置が配置されていてもよい。ドラフトローラ支持体60は、リング精紡機のドラフト装置等、空気紡績装置7を有する紡績機1以外に設けられてもよい。
【0059】
紡績機1では、ドラフト装置6のボトムローラの少なくとも1つ及びトラバースガイド23が、第2エンドフレーム5からの動力によって(すなわち、複数の紡績ユニット2共通で)駆動されていた。しかし、紡績ユニット2の各部(例えば、ドラフト装置6、空気紡績装置7、巻取装置13等)が紡績ユニット2ごとに独立して駆動されてもよい。
【0060】
糸Yの走行方向において、テンションセンサ9が糸監視装置8の上流側に配置されてもよい。ユニットコントローラ10は、紡績ユニット2ごとに設けられてもよい。紡績ユニット2において、ワキシング装置12、テンションセンサ9及び糸監視装置8は、省略されてもよい。
【0061】
図1では、紡績機1は、チーズ形状のパッケージPを巻き取るように図示されているが、コーン形状のパッケージPを巻き取ることも可能である。コーン形状のパッケージPの場合、糸Yのトラバースにより糸Yの弛みが発生するが、当該弛みは、糸貯留装置11で吸収することができる。各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。