【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる足場部材の連結構造(以下、単に「連結構造」と称することがある)は、
「横架材の少なくとも一方の端部に楔部を備える足場部材が、外周面に横断面コ字形のブラケットが設けられた足場支柱に連結されている足場部材の連結構造であって、
前記足場部材の前記楔部は、楔部本体と該楔部本体の内部空間に挿入されている抜け止め体とを備え、
前記楔部本体は、
それぞれ前記横架材の端部に一部が固着されており、前記横架材の軸方向に交差する上下方向に延びていると共に下端に向かって幅が減少しているテーパ状の一対の楔側面部と、
前記横架材に固着されている側とは反対側で一対の前記楔側面部を連結している楔中間面部と、
一対の前記楔側面部の下端を連結しており前記楔部本体の下端を閉端としている閉端部と、
一対の前記楔側面部の上辺を周縁とする挿通孔部、または、一対の前記楔側面部の上端を連結している上面部に貫設されている挿通孔部と、を有していると共に、
一対の前記楔側面部それぞれにおいて前記楔中間面部とは反対側の辺が、少なくとも前記閉端部の近傍で開端となっており、
前記抜け止め体は、
上端近傍で突出している前記挿通孔部を通過不能な突起部と、
前記楔中間面部に対面する外側面において、前記突起部が設けられた上端部より突出している第一当接部と、
前記外側面と反対側の内側面において、下端より上方で突出している第二当接部と、を有していると共に、
前記突起部から下端までの上下方向の長さが、前記挿通孔部の周縁から前記閉端部までの長さより長いものであり、
前記楔部本体が前記ブラケットに挿入されて、前記抜け止め体が前記楔部本体の内部空間を貫通して下端側が前記閉端部の近傍の前記開端から外方に向かって斜めに延び出していると共に、
前記抜け止め体において、前記外側面の下端近傍が前記楔部本体の前記閉端部の開端縁に当接し、前記第一当接部が前記楔部本体の前記楔中間面部に当接し、且つ、前記第二当接部が前記ブラケットの内周面に当接している」ことを特徴とする。
【0013】
「楔側面部」は、下端に向かって幅が減少するテーパ状であるため、足場支柱の外周面に設けられた横断面コ字形のブラケットに楔部本体を挿入すると、楔側面部がブラケットの上端縁と干渉し、楔部本体がブラケット内にしっかりと保持される。
【0014】
「楔中間面部」は、一対の楔側面部の片側を連結している面である。楔中間面部は平面であってもよいが、足場支柱が円筒状又は円柱状である場合には、足場支柱の外周面に沿うような湾曲面とすることができる。
【0015】
「閉端部」は、一対の楔側面部の下端同士を湾曲しつつ連結している湾曲面や、一対の楔側面部それぞれと交差する方向に連結している平面とすることができる。
【0016】
「挿通孔部」は、一対の楔側面部の上辺を開端とすることにより形成される挿通孔部、または、一対の楔側面部の上端を連結している上面部に貫設されている挿通孔部の何れかが、選択的に採用されるものである。
【0017】
「一対の前記楔側面部それぞれにおいて前記楔中間面部とは反対側の辺」は、「少なくとも前記閉端部の近傍で開端となっている」ものであれば、閉端部から横架材の端部に固着されている部分までの全長に亘って開端となっている構成であっても、閉端部の近傍のみが開端となっている構成であってもよい。
【0018】
「抜け止め体」は、上端から下端まで直線状に延びる形状とすることができるが、下端側が楔中間面部とは反対側へ屈曲又は湾曲している構成とすれば、詳細は後述する抜け止め作用をより効果的に奏するため、望ましい。
【0019】
「突起部」は、挿通孔部を通過不能であればその形状は特に限定されないが、抜け止め体を貫通したピンが突出している構成、抜け止め体と一体で抜け止め体の上端から側方に延出している構成、抜け止め体の上端を屈曲させた構成、を例示することができる。
【0020】
本構成の連結構造は、足場支柱の外周面に設けられた横断面コ字形のブラケットに足場部材の楔部本体が挿入されており、抜け止め体が楔部本体のブラケットからの抜け止めとして作用している構造である。この連結構造は、抜け止め体が引き上げられ抜け止め体の下端が楔部本体の内部空間に引き入れられている状態で、楔部本体を足場支柱のブラケットに挿入した後、抜け止め体を楔部本体の内部空間に落とし込むことにより形成される。すなわち、抜け止め体は、楔部本体の挿通孔部を通過不能な突起部より下側の部分の上下方向の長さが、挿通孔部の周縁から閉端部までの長さより長い。そのため、抜け止め体を楔部本体の内部空間に落とし込むと、抜け止め体の下端は楔部本体の下端を閉塞している閉端部にぶつかって直下へのそれ以上の移動が制限され、閉端部の近傍の開端から外方に向かって斜めに延び出す。これにより、足場部材の横架材に下方から上方に向かう外力が加わった場合など、楔部本体に下方から上方に向かう外力が加わったとしても、抜け止め体の下端側で外方に向かって斜めに延び出している部分がブラケットの下端縁と干渉するため、楔部本体がブラケットから抜け出すことが有効に抑制される。なお、抜け止め体は、上端部に挿通孔部を通過不能な突起部を有しているため、楔部本体を完全に通過して下方に落下することがない。
【0021】
そして、本構成の連結構造において、楔部本体を斜め方向に貫通している抜け止め体は、楔中間面部に対面する外側面における上下の二カ所と、外側面とは反対側の内側面における一カ所との計三カ所で、楔部本体及びブラケットの内周面に当接している。すなわち、抜け止め体において、外側面の下端近傍が楔部本体の閉端部の開端縁に当接しており、第一当接部が楔部本体の楔中間面部に当接しており、且つ、第二当接部がブラケットの内周面に当接している。これにより、抜け止め体が楔部本体を斜め方向に貫通し、ブラケットからの楔部本体の抜け止めとして作用している姿勢が、がたつくことなく安定して保持される。
【0022】
本発明にかかる足場部材の連結構造は、上記構成において、「前記抜け止め体は、前記上端部に対して、前記上端部より下方の部分が前記楔中間面部に向かって屈曲しており、その屈曲の角部が前記第一当接部を構成している」ものとすることができる。
【0023】
「第一当接部」としては、上端から下端まで略直線状に延びている形状の抜け止め体において、その外側面から突出している構成も想到しうるところ、本構成では、抜け止め体の形状を、上端部より下方の部分が上端部に対して楔中間面部側に屈曲している形状とし、その屈曲の角部を第一当接部としている。これにより、抜け止め体が楔部本体を斜めに貫通している状態では、略直線状の抜け止め体から第一当接部が突出している場合に比べ、抜け止め体の上端部と足場支柱との間により広い空隙が生じる。従って、この空隙を使用して、足場用の他の部材を設置することができる。また、略直線状の抜け止め体から第一当接部が突出している場合に比べ、抜け止め体の厚さを大きくすることができるため、抜け止め体の剛性を高めることができ、ひいては連結構造の強度を高いものとすることができる。
【0024】
次に、本発明にかかる足場部材は、
「横架材の少なくとも一方の端部に楔部を備える足場部材であって、
前記楔部は、楔部本体と該楔部本体の内部空間に挿入される抜け止め体とを備え、
前記楔部本体は、
それぞれ前記横架材の端部に一部が固着されており、前記横架材の軸方向に交差する上下方向に延びていると共に下端に向かって幅が減少しているテーパ状の一対の楔側面部と、
前記横架材に固着されている側とは反対側で一対の前記楔側面部を連結している楔中間面部と
一対の前記楔側面部の下端を連結しており前記楔部本体の下端を閉端としている閉端部と、
一対の前記楔側面部の上辺を周縁とする挿通孔部、または、一対の前記楔側面部の上端を連結している上面部に貫設されている挿通孔部と、を有していると共に、
一対の前記楔側面部それぞれにおいて前記楔中間面部とは反対側の辺が、少なくとも前記閉端部の近傍で開端となっており、
前記抜け止め体は、
上端近傍で突出している前記挿通孔部を通過不能な突起部と、
前記楔中間面部に対面する外側面において、前記突起部が設けられた上端部より突出している第一当接部と、
前記外側面と反対側の内側面において、下端より上方で突出している第二当接部と、を有していると共に、
前記突起部から下端までの上下方向の長さが、前記挿通孔部の周縁から前記閉端部までの長さより長いものである」ことを特徴とする。
【0025】
本構成の足場部材は、上記の連結構造に使用される足場部材である。この足場部材の楔部本体を足場支柱のブラケットに挿入した後、抜け止め体を楔部本体の内部空間に落とし込むと、上記のように抜け止め体は楔部本体を斜めに貫通した状態となる。本構成の足場部材では、第一当接部は、抜け止め体の外側面において上端部より突出している。そのため、従来の連結構造(特許文献1)とは異なり、上端部が挿通孔部の周縁という「特定の箇所」で当接しなくても、第一当接部が楔中間面部の内周壁の「どこか」で当接する。また、本構成の足場部材では、第二当接部は、抜け止め体の内側面において下端より上方で突出している。そのため、従来の連結構造(特許文献1)とは異なり、下端近傍がブラケットの下端縁という「特定の箇所」で当接しなくても、第二当接部がブラケットの内周壁の「どこか」で当接する。従って、本構成の足場部材によれば、抜け止め体が楔部本体及びブラケットと三カ所で当接している上記の連結構造を、確実に構築することができる。