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  • 特開2017066831-足場部材の連結構造及び足場部材 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-66831(P2017-66831A)
(43)【公開日】2017年4月6日
(54)【発明の名称】足場部材の連結構造及び足場部材
(51)【国際特許分類】
   E04G 7/32 20060101AFI20170317BHJP
   E04G 7/34 20060101ALI20170317BHJP
【FI】
   E04G7/32 A
   E04G7/34 303A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-196687(P2015-196687)
(22)【出願日】2015年10月2日
(71)【出願人】
【識別番号】306035122
【氏名又は名称】信和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098224
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 勘次
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】山田 博
(72)【発明者】
【氏名】青山 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】河合 賢樹
(57)【要約】
【課題】足場支柱のブラケットに足場部材の楔部が挿入された足場部材の連結構造において、楔部がブラケットから抜け出ることが抑制されている姿勢を、がたつきなく安定して保持させる。
【解決手段】
連結構造を、楔部本体20がブラケット50に挿入されて、抜け止め体30が楔部本体の内部空間を貫通して下端側が閉端部23の近傍の開端から外方に向かって斜めに延び出しており、抜け止め体において、楔中間面部22に対面する外側面30aの下端近傍が楔部本体の閉端部の開端縁に当接し、第一当接部35が楔部本体の楔中間面部に当接し、且つ、第二当接部36がブラケットの中間面52の内周面に当接している構成とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
横架材の少なくとも一方の端部に楔部を備える足場部材が、外周面に横断面コ字形のブラケットが設けられた足場支柱に連結されている足場部材の連結構造であって、
前記足場部材の前記楔部は、楔部本体と該楔部本体の内部空間に挿入されている抜け止め体とを備え、
前記楔部本体は、
それぞれ前記横架材の端部に一部が固着されており、前記横架材の軸方向に交差する上下方向に延びていると共に下端に向かって幅が減少しているテーパ状の一対の楔側面部と、
前記横架材に固着されている側とは反対側で一対の前記楔側面部を連結している楔中間面部と、
一対の前記楔側面部の下端を連結しており前記楔部本体の下端を閉端としている閉端部と、
一対の前記楔側面部の上辺を周縁とする挿通孔部、または、一対の前記楔側面部の上端を連結している上面部に貫設されている挿通孔部と、を有していると共に、
一対の前記楔側面部それぞれにおいて前記楔中間面部とは反対側の辺が、少なくとも前記閉端部の近傍で開端となっており、
前記抜け止め体は、
上端近傍で突出している前記挿通孔部を通過不能な突起部と、
前記楔中間面部に対面する外側面において、前記突起部が設けられた上端部より突出している第一当接部と、
前記外側面と反対側の内側面において、下端より上方で突出している第二当接部と、を有していると共に、
前記突起部から下端までの上下方向の長さが、前記挿通孔部の周縁から前記閉端部までの長さより長いものであり、
前記楔部本体が前記ブラケットに挿入されて、前記抜け止め体が前記楔部本体の内部空間を貫通して下端側が前記閉端部の近傍の前記開端から外方に向かって斜めに延び出していると共に、
前記抜け止め体において、前記外側面の下端近傍が前記楔部本体の前記閉端部の開端縁に当接し、前記第一当接部が前記楔部本体の前記楔中間面部に当接し、且つ、前記第二当接部が前記ブラケットの内周面に当接している
ことを特徴とする足場部材の連結構造。
【請求項2】
前記抜け止め体は、前記上端部に対して、前記上端部より下方の部分が前記楔中間面部に向かって屈曲しており、その屈曲の角部が前記第一当接部を構成している
ことを特徴とする請求項1に記載の足場部材の連結構造。
【請求項3】
横架材の少なくとも一方の端部に楔部を備える足場部材であって、
前記楔部は、楔部本体と該楔部本体の内部空間に挿入される抜け止め体とを備え、
前記楔部本体は、
それぞれ前記横架材の端部に一部が固着されており、前記横架材の軸方向に交差する上下方向に延びていると共に下端に向かって幅が減少しているテーパ状の一対の楔側面部と、
前記横架材に固着されている側とは反対側で一対の前記楔側面部を連結している楔中間面部と
一対の前記楔側面部の下端を連結しており前記楔部本体の下端を閉端としている閉端部と、
一対の前記楔側面部の上辺を周縁とする挿通孔部、または、一対の前記楔側面部の上端を連結している上面部に貫設されている挿通孔部と、を有していると共に、
一対の前記楔側面部それぞれにおいて前記楔中間面部とは反対側の辺が、少なくとも前記閉端部の近傍で開端となっており、
前記抜け止め体は、
上端近傍で突出している前記挿通孔部を通過不能な突起部と、
前記楔中間面部に対面する外側面において、前記突起部が設けられた上端部より突出している第一当接部と、
前記外側面と反対側の内側面において、下端より上方で突出している第二当接部と、を有していると共に、
前記突起部から下端までの上下方向の長さが、前記挿通孔部の周縁から前記閉端部までの長さより長いものである
ことを特徴とする足場部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足場部材が足場支柱に連結されている連結構造、及び該連結構造に使用される足場部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅やビル等の建物、橋梁やトンネル等の土木構造物の建築現場では、踏み板を架設するための横架材や、手摺り等として使用される横架材が、足場支柱に連結されて足場が構築されている。このように横架材を足場支柱に連結するために、従前より、横架材の端部に楔が固着された足場部材が多用されている。この楔が、足場支柱の外周面に設けられたブラケットに挿入されることにより、横架材が足場支柱に連結される。この足場部材は構造がシンプルで製造しやすく広く使用されているが、下方から加わる外力によって、楔がブラケットから抜け出しやすいという問題があった。
【0003】
そこで、本出願人は図6に示すように、楔部110が楔部本体120と、楔部本体120の内部空間に挿入される抜け止め体130とを備える足場部材100を、既に提案している(特許文献1参照)。この足場部材100は、ブラケット50を介して足場支柱P2に連結される点では従前の足場部材と同様であり、ブラケット50は、足場支柱P2の外周面に固着された一対の側面51と、一対の側面を連結する中間面52によって、横断面コ字形に形成されている。
【0004】
足場部材100の楔部本体120は、横架材P1の端部に一部が固着されており、横架材P1の軸方向に交差する上下方向に延びていると共に下端に向かって幅が減少するテーパ状となった一対の楔側面部121と、一対の楔側面部121を横架材P1の端部に固着された側とは反対側で連結している楔中間面部122と、一対の楔側面部121の下端を連結することにより楔部本体120の下端を閉端としている閉端部123と、一対の楔側面部の上端を連結している上面部124に貫設された挿通孔部125とを有しており、一対の楔側面部121それぞれにおいて楔中間面部122とは反対側の辺が開端となっている。
【0005】
抜け止め体130は、細長い平板状で、上端に挿通孔部125を通過不能な突起部132を有している。抜け止め体130の縦断面の形状は、上端から下端側に向かって直線状に延びており、楔部本体120の楔中間面部122とは反対側に向かって略L字状に湾曲した湾曲部135を下端に有している。また、抜け止め体130において突起部132より下側の部分の長さは、挿通孔部125の周縁から閉端部123までの長さより長い。
【0006】
このような構成により、楔部本体120が足場支柱P2のブラケット50内に挿入された状態で、楔部本体120の内部空間に抜け止め体130を落とし込むと、抜け止め体130の下端は楔部本体120の閉端部123にぶつかり、直下へのそれ以上の移動が制限されるため、抜け止め体130の下端側は閉端部123の近傍の開端から外方に向かって斜めに延び出す。つまり、抜け止め体130が楔部本体120の内部空間を斜めに貫通した状態となる。
【0007】
これにより、足場部材100の横架材P1に下方から上方に向かう外力が加わった場合など、楔部本体120に下方から上方に向かう外力が加わったとしても、楔部本体120から外方に向かって斜めに延び出している抜け止め体130の下端側が、ブラケット50の中間面52の下端縁と干渉するため、楔部本体120がブラケット50から抜け出すことが抑制される。
【0008】
上記の足場部材100では、楔部本体120及びブラケット50と抜け止め体130とが、次の三カ所で当接しているとき、抜け止め体130が楔部本体120の抜け止めとして作用している姿勢が安定して保持される。すなわち、抜け止め体130において楔中間面部122に対面した外側面130aが、上端側で挿通孔部125の足場支柱P2側の周縁と当接し(図示A)、外側面130aが下端側で閉端部123の開端縁と当接し(図示B)、且つ、抜け止め体130において外側面130aとは反対側の内側面130bが、ブラケット50における中間面52の下端縁と当接している(図示C)ときである。
【0009】
しかしながら、多数の足場支柱P2それぞれが備えるブラケット50の寸法精度は、あまり高くはないのが実情である。具体的には、ブラケット50の中間面52と足場支柱P2の外周面との間の距離には、ブラケット50ごとに1mm程度までのばらつきがある。そのため、BとCとでは当接しているもののAでは当接しておらず、抜け止め体130と挿通孔部125の周縁との間に空隙が生じることがあった。或いは、上端の突起部132が挿通孔部125の周縁に引き掛かることにより抜け止め体130の落下が防止されていると共に、下端側はBで当接しているものの、Cでは当接しておらずブラケット50と抜け止め体130との間に空隙が生じることがあった。そのため、足場部材100を足場支柱P2に連結した状態で、抜け止め体130の姿勢ががたつく場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2015−090039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、足場支柱のブラケットに足場部材の楔部が挿入された足場部材の連結構造であって、楔部がブラケットから抜け出ることが抑制されている姿勢を、がたつきなく安定して保持できる足場部材の連結構造、及び、該連結構造に使用される足場部材の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため、本発明にかかる足場部材の連結構造(以下、単に「連結構造」と称することがある)は、
「横架材の少なくとも一方の端部に楔部を備える足場部材が、外周面に横断面コ字形のブラケットが設けられた足場支柱に連結されている足場部材の連結構造であって、
前記足場部材の前記楔部は、楔部本体と該楔部本体の内部空間に挿入されている抜け止め体とを備え、
前記楔部本体は、
それぞれ前記横架材の端部に一部が固着されており、前記横架材の軸方向に交差する上下方向に延びていると共に下端に向かって幅が減少しているテーパ状の一対の楔側面部と、
前記横架材に固着されている側とは反対側で一対の前記楔側面部を連結している楔中間面部と、
一対の前記楔側面部の下端を連結しており前記楔部本体の下端を閉端としている閉端部と、
一対の前記楔側面部の上辺を周縁とする挿通孔部、または、一対の前記楔側面部の上端を連結している上面部に貫設されている挿通孔部と、を有していると共に、
一対の前記楔側面部それぞれにおいて前記楔中間面部とは反対側の辺が、少なくとも前記閉端部の近傍で開端となっており、
前記抜け止め体は、
上端近傍で突出している前記挿通孔部を通過不能な突起部と、
前記楔中間面部に対面する外側面において、前記突起部が設けられた上端部より突出している第一当接部と、
前記外側面と反対側の内側面において、下端より上方で突出している第二当接部と、を有していると共に、
前記突起部から下端までの上下方向の長さが、前記挿通孔部の周縁から前記閉端部までの長さより長いものであり、
前記楔部本体が前記ブラケットに挿入されて、前記抜け止め体が前記楔部本体の内部空間を貫通して下端側が前記閉端部の近傍の前記開端から外方に向かって斜めに延び出していると共に、
前記抜け止め体において、前記外側面の下端近傍が前記楔部本体の前記閉端部の開端縁に当接し、前記第一当接部が前記楔部本体の前記楔中間面部に当接し、且つ、前記第二当接部が前記ブラケットの内周面に当接している」ことを特徴とする。
【0013】
「楔側面部」は、下端に向かって幅が減少するテーパ状であるため、足場支柱の外周面に設けられた横断面コ字形のブラケットに楔部本体を挿入すると、楔側面部がブラケットの上端縁と干渉し、楔部本体がブラケット内にしっかりと保持される。
【0014】
「楔中間面部」は、一対の楔側面部の片側を連結している面である。楔中間面部は平面であってもよいが、足場支柱が円筒状又は円柱状である場合には、足場支柱の外周面に沿うような湾曲面とすることができる。
【0015】
「閉端部」は、一対の楔側面部の下端同士を湾曲しつつ連結している湾曲面や、一対の楔側面部それぞれと交差する方向に連結している平面とすることができる。
【0016】
「挿通孔部」は、一対の楔側面部の上辺を開端とすることにより形成される挿通孔部、または、一対の楔側面部の上端を連結している上面部に貫設されている挿通孔部の何れかが、選択的に採用されるものである。
【0017】
「一対の前記楔側面部それぞれにおいて前記楔中間面部とは反対側の辺」は、「少なくとも前記閉端部の近傍で開端となっている」ものであれば、閉端部から横架材の端部に固着されている部分までの全長に亘って開端となっている構成であっても、閉端部の近傍のみが開端となっている構成であってもよい。
【0018】
「抜け止め体」は、上端から下端まで直線状に延びる形状とすることができるが、下端側が楔中間面部とは反対側へ屈曲又は湾曲している構成とすれば、詳細は後述する抜け止め作用をより効果的に奏するため、望ましい。
【0019】
「突起部」は、挿通孔部を通過不能であればその形状は特に限定されないが、抜け止め体を貫通したピンが突出している構成、抜け止め体と一体で抜け止め体の上端から側方に延出している構成、抜け止め体の上端を屈曲させた構成、を例示することができる。
【0020】
本構成の連結構造は、足場支柱の外周面に設けられた横断面コ字形のブラケットに足場部材の楔部本体が挿入されており、抜け止め体が楔部本体のブラケットからの抜け止めとして作用している構造である。この連結構造は、抜け止め体が引き上げられ抜け止め体の下端が楔部本体の内部空間に引き入れられている状態で、楔部本体を足場支柱のブラケットに挿入した後、抜け止め体を楔部本体の内部空間に落とし込むことにより形成される。すなわち、抜け止め体は、楔部本体の挿通孔部を通過不能な突起部より下側の部分の上下方向の長さが、挿通孔部の周縁から閉端部までの長さより長い。そのため、抜け止め体を楔部本体の内部空間に落とし込むと、抜け止め体の下端は楔部本体の下端を閉塞している閉端部にぶつかって直下へのそれ以上の移動が制限され、閉端部の近傍の開端から外方に向かって斜めに延び出す。これにより、足場部材の横架材に下方から上方に向かう外力が加わった場合など、楔部本体に下方から上方に向かう外力が加わったとしても、抜け止め体の下端側で外方に向かって斜めに延び出している部分がブラケットの下端縁と干渉するため、楔部本体がブラケットから抜け出すことが有効に抑制される。なお、抜け止め体は、上端部に挿通孔部を通過不能な突起部を有しているため、楔部本体を完全に通過して下方に落下することがない。
【0021】
そして、本構成の連結構造において、楔部本体を斜め方向に貫通している抜け止め体は、楔中間面部に対面する外側面における上下の二カ所と、外側面とは反対側の内側面における一カ所との計三カ所で、楔部本体及びブラケットの内周面に当接している。すなわち、抜け止め体において、外側面の下端近傍が楔部本体の閉端部の開端縁に当接しており、第一当接部が楔部本体の楔中間面部に当接しており、且つ、第二当接部がブラケットの内周面に当接している。これにより、抜け止め体が楔部本体を斜め方向に貫通し、ブラケットからの楔部本体の抜け止めとして作用している姿勢が、がたつくことなく安定して保持される。
【0022】
本発明にかかる足場部材の連結構造は、上記構成において、「前記抜け止め体は、前記上端部に対して、前記上端部より下方の部分が前記楔中間面部に向かって屈曲しており、その屈曲の角部が前記第一当接部を構成している」ものとすることができる。
【0023】
「第一当接部」としては、上端から下端まで略直線状に延びている形状の抜け止め体において、その外側面から突出している構成も想到しうるところ、本構成では、抜け止め体の形状を、上端部より下方の部分が上端部に対して楔中間面部側に屈曲している形状とし、その屈曲の角部を第一当接部としている。これにより、抜け止め体が楔部本体を斜めに貫通している状態では、略直線状の抜け止め体から第一当接部が突出している場合に比べ、抜け止め体の上端部と足場支柱との間により広い空隙が生じる。従って、この空隙を使用して、足場用の他の部材を設置することができる。また、略直線状の抜け止め体から第一当接部が突出している場合に比べ、抜け止め体の厚さを大きくすることができるため、抜け止め体の剛性を高めることができ、ひいては連結構造の強度を高いものとすることができる。
【0024】
次に、本発明にかかる足場部材は、
「横架材の少なくとも一方の端部に楔部を備える足場部材であって、
前記楔部は、楔部本体と該楔部本体の内部空間に挿入される抜け止め体とを備え、
前記楔部本体は、
それぞれ前記横架材の端部に一部が固着されており、前記横架材の軸方向に交差する上下方向に延びていると共に下端に向かって幅が減少しているテーパ状の一対の楔側面部と、
前記横架材に固着されている側とは反対側で一対の前記楔側面部を連結している楔中間面部と
一対の前記楔側面部の下端を連結しており前記楔部本体の下端を閉端としている閉端部と、
一対の前記楔側面部の上辺を周縁とする挿通孔部、または、一対の前記楔側面部の上端を連結している上面部に貫設されている挿通孔部と、を有していると共に、
一対の前記楔側面部それぞれにおいて前記楔中間面部とは反対側の辺が、少なくとも前記閉端部の近傍で開端となっており、
前記抜け止め体は、
上端近傍で突出している前記挿通孔部を通過不能な突起部と、
前記楔中間面部に対面する外側面において、前記突起部が設けられた上端部より突出している第一当接部と、
前記外側面と反対側の内側面において、下端より上方で突出している第二当接部と、を有していると共に、
前記突起部から下端までの上下方向の長さが、前記挿通孔部の周縁から前記閉端部までの長さより長いものである」ことを特徴とする。
【0025】
本構成の足場部材は、上記の連結構造に使用される足場部材である。この足場部材の楔部本体を足場支柱のブラケットに挿入した後、抜け止め体を楔部本体の内部空間に落とし込むと、上記のように抜け止め体は楔部本体を斜めに貫通した状態となる。本構成の足場部材では、第一当接部は、抜け止め体の外側面において上端部より突出している。そのため、従来の連結構造(特許文献1)とは異なり、上端部が挿通孔部の周縁という「特定の箇所」で当接しなくても、第一当接部が楔中間面部の内周壁の「どこか」で当接する。また、本構成の足場部材では、第二当接部は、抜け止め体の内側面において下端より上方で突出している。そのため、従来の連結構造(特許文献1)とは異なり、下端近傍がブラケットの下端縁という「特定の箇所」で当接しなくても、第二当接部がブラケットの内周壁の「どこか」で当接する。従って、本構成の足場部材によれば、抜け止め体が楔部本体及びブラケットと三カ所で当接している上記の連結構造を、確実に構築することができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明の効果として、足場支柱のブラケットに足場部材の楔部が挿入された足場部材の連結構造であって、楔部がブラケットから抜け出ることが抑制されている姿勢をがたつきなく安定して保持できる足場部材の連結構造、及び、該連結構造に使用される足場部材を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態である足場部材の斜視図である。
図2図1の足場部材における抜け止め体の(a)斜視図、及び、(b)縦断面図である。
図3図1の足場部材を使用した連結構造の縦断面図である。
図4】抜け止め体を楔部本体の内部空間に落とし込む前の連結構造の斜視図である。
図5】抜け止め体の他の構成を示す縦断面図である。
図6】従来の足場部材について(a)これを使用した連結構造の側面図、及び、(b)抜け止め体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態である足場部材1、及び、足場部材1を使用した連結構造について、図1乃至図4を用いて説明する。まず、足場部材1の構成について説明する。足場部材1は、横架材P1の少なくとも一方の端部に楔部10を備えているものである。楔部10は、楔部本体20と楔部本体20の内部空間に挿入される抜け止め体30とを備えている。
【0029】
楔部本体20は、それぞれ横架材P1の端部に一部が固着されており、横架材P1の軸方向に交差する上下方向に延びていると共に下端に向かって幅が減少しているテーパ状の一対の楔側面部21と、横架材P1に固着されている側とは反対側で一対の楔側面部21を連結している楔中間面部22と、一対の楔側面部21の下端を連結しており楔部本体20の下端を閉端としている閉端部23と、一対の楔側面部21の上辺を周縁とする挿通孔部25とを有しており、一対の楔側面部21それぞれにおいて楔中間面部22とは反対側の辺が、少なくとも閉端部23の近傍で開端29となっている。
【0030】
抜け止め体30は、上端近傍で突出している挿通孔部25を通過不能な突起部34と、楔中間面部22に対面する外側面30aにおいて、突起部34が設けられた上端部31より突出している第一当接部35と、外側面30aと反対側の内側面30bにおいて、下端より上方で突出している第二当接部36とを有していると共に、突起部34から下端までの上下方向の長さが、挿通孔部25の周縁から閉端部23までの長さより長いものである。
【0031】
より具体的に説明すると、横架材P1は、円筒状の横架材本体40と、横架材本体40の少なくとも一方の端部に、横架材本体40に内嵌した状態で固定されている連結筒部41とを具備している。
【0032】
楔部本体20は、楔側面部21の上端側が、横架材P1の連結筒部41に固着されている。楔側面部21は、連結筒部41に固着されている部分で、円筒状の連結筒部41の外周面に沿うように湾曲している。この部分より下端側で、楔側面部21は下端に向かって幅が減少するテーパ状となっており、この部分がブラケット50内に挿入される。ここで、楔側面部21の一対の側辺のうち、楔中間面部22側の側辺は横架材P1の軸方向に直交する方向に延びており、もう一方の側辺は下方に向かうにつれて他方の側辺に近づくように傾斜しており、これによって楔側面部21がテーパ状となっている。楔側面部21の上辺は開端であり、これを周縁とする挿通孔部25が一対の楔側面部21間に形成されている。楔中間面部22は、円筒状または円柱状の足場支柱P2の外周面に沿うように湾曲している。閉端部23は、一対の楔側面部21の下端同士を湾曲しつつ連結している。
【0033】
抜け止め体30は一体構成であるが、上端から下端に向かって上端部31、主軸部32、及び下端部33に大別することができる。上端部31は平板状であり、その略中央に貫設された孔部に圧入されたリベットが、突起部34を構成している。主軸部32は上端部31に対して楔中間面部22に向かって屈曲した後、下端部33に至るまで直線状に延びている。下端部33は、主軸部32に対して楔中間面部22とは反対側に向かって略L字状に湾曲している。そして、主軸部32の屈曲している部分において外側面30a側の角部が、第一当接部35を構成している。また、第二当接部36は、主軸部32の内側面30bにおいて、主軸部32の長さの約1/3に相当する長さ分下端部33から上方で、縦断面山形に突出している。更に、本実施形態の抜け止め体30は、主軸部32において一対の側辺のうち、一方の側辺の途中が横向きのコ字状に切り欠かかれている引掛け部38を有している。
【0034】
なお、連結筒部41には、その端部を閉鎖するように平板状の縦板部42が固着されており、縦板部42は楔部本体20の内部空間において、連結筒部41の下端を超えて下方まで延出している。
【0035】
上記構成の足場部材1は、ブラケット50を有する足場支柱P2に連結される。足場支柱P2は円筒状または円柱状であり、複数のブラケット50が外周面に設けられている。それぞれのブラケット50は、足場支柱P2の外周面に固着された一対の側面51と、一対の側面51を連結する中間面52によって、横断面コ字形に形成されている。
【0036】
ブラケット50に楔部10を挿入する際には、まず抜け止め体30の上端側を把持して上方に引き上げ、抜け止め体30の下端側が楔部本体20の内部空間に引き入れられた状態とする。このとき、図4に示すように、引掛け部38を挿通孔部25の周縁に引き掛けることにより、抜け止め体30の下端側が楔部本体20の内部空間に引き入れられた状態を保持することができる。
【0037】
この状態で楔部本体20をブラケット50に挿入することにより、横架材P1が足場支柱P2に連結される。楔部本体20の楔側面部21は、下端に向かって幅が減少するテーパ状であるため、楔側面部21における楔中間面部22とは反対側の側辺がブラケット50の上端縁と干渉し、楔部本体20がブラケット50内にしっかりと保持される。これと共に、閉端部23及びその近傍がブラケット50より下方に露出する。また、この状態では、楔部本体20の楔中間面部22が足場支柱P2の外周面に当接する。特に、本実施形態では、楔中間面部22が足場支柱P2の外周面に沿うように湾曲しているため、楔中間面部22が足場支柱P2の外周面に広い面積で当接し、楔部本体20がブラケット50に保持された姿勢が安定する。ただし、この状態では、横架材P1に対して下方から上方に向かう外力が加わる等、楔部保内20に対して上方に向かう外力が加わると、楔部本体20がブラケット50から抜け出るおそれがある。
【0038】
そこで、挿通孔部25の周縁に引き掛けられている抜け止め体30の引掛け部38を外し、抜け止め体30を楔部本体20の内部空間に落とし込むと、図3に示すように、抜け止め体30が抜け止めとして作用している状態なる。具体的には、下方に落とし込まれた抜け止め体30の下端側は、ブラケット50の内部空間を通過し、下端が楔部本体20の閉端部23にぶつかる。このとき、抜け止め体30を落とし込む方向が鉛直方向からずれていても、楔部本体20の内部空間において上下方向に延びている縦板部42によって、抜け止め体30の落下方向がブラケット50の内部空間に向かうように案内される。そして、楔部本体20の楔側面部21は閉端部23の近傍で開端29となっており、抜け止め体30において突起部34より下側の部分の長さは挿通孔部25の周縁から閉端部23までの長さより長いため、閉端部23によってそれ以上の直下への移動が制限された抜け止め体30の下端側は、開端29から外方に向かって斜めに延び出す。
【0039】
その結果、抜け止め体30は楔部本体20を斜めに貫通し、抜け止め体30の下端側が閉端部23の開端縁に当接した状態となる。加えて、抜け止め体30の外側面30aにおいて第一当接部35が上端部31より突出しているため、第一当接部35が楔中間面部22の内周壁のどこかで当接する。また、抜け止め体30の内側面30bにおいて第二当接部36が下端より上方で突出しているため、第二当接部36がブラケット50の中間面52の内周壁にどこかで当接する。
【0040】
これにより、抜け止め体30が楔部本体20及びブラケット50と三カ所で当接している連結構造を、確実に構築することができる。すなわち、楔部本体20がブラケット50に挿入されて、抜け止め体30が楔部本体20の内部空間を貫通して下端側が閉端部23の近傍の開端29から外方に向かって斜めに延び出しており、抜け止め体30において、外側面30aの下端近傍が楔部本体20の閉端部23の開端縁に当接し、第一当接部35が楔部本体20の楔中間面部22に当接し、且つ、第二当接部36がブラケット50の内周面に当接している連結構造が構築される。
【0041】
以上のように、本実施形態の足場部材1、及び、これを使用した連結構造によれば、足場部材1の横架材P1に下方から上方に向かう外力が加わった場合など、楔部本体20に下方から上方に向かう外力が加わったとしても、楔部本体20から外方に斜めに延び出している抜け止め体30の下端側が、ブラケット50の中間面52の下端縁と干渉するため、楔部本体20がブラケット50から抜け出すことが抑制されている。
【0042】
加えて、本実施形態の連結構造では、楔部本体20を斜め方向に貫通している抜け止め体30は、外側面30aの下端近傍で楔部本体20の閉端部23の開端縁に当接しており、外側面30aにおける第一当接部35が楔部本体20の楔中間面部22に当接していると共に、内側面30bにおける第二当接部36がブラケット50の中間面52の内周面に当接している。つまり、抜け止め体30は、外側面30aにおける上下の二カ所と、外側面30aとは反対側の内側面30bにおける中途の高さの一カ所との計三カ所で、楔部本体20及びブラケット50の内周面に当接している。これにより、抜け止め体30が楔部本体20を斜め方向に貫通し、ブラケット50からの楔部本体20の抜け止めとして作用している姿勢が、がたつくことなく安定して保持される。
【0043】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0044】
例えば、上記の実施形態では、第二当接部36のある部分を除いて、抜け止め体30が上端から下端まで厚さが略等しい場合を図示により例示したが、これに限定されず、下端に向かって厚さが増していく構成とすることができる。例えば、図5に示すように、主軸部32において第二当接部36より下方の部分37で、下端に向かって厚さが漸次増していく構成の抜け止め体30’とすることができる。抜け止め体30’が楔部本体20の抜け止めとして作用している連結構造では、横架材P1や足場支柱P2に振動などの外力が加わったとき、この部分37に大きな負荷がかかる。従って、この部分37の厚さを大きくすることにより、抜け止め体30’の強度を高めることができ、ひいては連結構造の強度を高めることができる。
【符号の説明】
【0045】
1 足場部材
10 楔部
20 楔部本体
21 楔側面部
22 楔中間面部
23 閉端部
25 挿通孔部
29 開端
30,30’ 抜け止め体
31 上端部
32 主軸部
33 下端部
34 突起部
38 引掛け部
50 ブラケット
51 側面
52 中間面
P1 横架材
P2 足場支柱
図1
図2
図3
図4
図5
図6