(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-67220(P2017-67220A)
(43)【公開日】2017年4月6日
(54)【発明の名称】ブッシュ軸受およびそれを備える軸受機構
(51)【国際特許分類】
F16C 35/02 20060101AFI20170317BHJP
F16C 27/06 20060101ALI20170317BHJP
F16C 33/20 20060101ALI20170317BHJP
F16C 17/02 20060101ALI20170317BHJP
【FI】
F16C35/02 C
F16C27/06 A
F16C33/20 Z
F16C17/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-195573(P2015-195573)
(22)【出願日】2015年10月1日
(71)【出願人】
【識別番号】000103644
【氏名又は名称】オイレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中川 昇
(72)【発明者】
【氏名】山口 聖
(72)【発明者】
【氏名】菊池 宏之
【テーマコード(参考)】
3J011
3J012
3J117
【Fターム(参考)】
3J011AA20
3J011BA06
3J011CA01
3J011LA04
3J011MA05
3J011MA12
3J011PA03
3J012AB07
3J012BB03
3J012CB03
3J012DB07
3J012DB13
3J012EB05
3J012FB01
3J117AA05
3J117AA10
3J117CA06
3J117DA01
3J117DB04
3J117DB10
(57)【要約】
【課題】異音の発生を抑制可能なブッシュ軸受およびそれを備える軸受機構を提供する。
【解決手段】鍔部13は、板状部13Iと、板状部13Iから軸方向Xにおける一方側に突出する突部13Jと、を備える。鍔部13は、ハウジング2の被嵌込溝2bに対して、軸方向Xにおいて締め代を有する。鍔部13の端面13Bは、ハウジング2の被嵌込溝2bを形成し軸方向Xにおける他方側に位置する壁面2Dに接触し、板状部13Iが弾性変形した状態で、突部13Jは、ハウジング2の被嵌込溝2bを形成し軸方向における一方側に位置する壁面2C面に接触する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状をなし、内周面に被嵌入溝が形成されたハウジングと、
前記ハウジングの前記内周面に装着されるブッシュ軸受と、
前記ブッシュ軸受に支持される軸と、を備え、
前記ブッシュ軸受は、円筒状のブッシュ本体と、前記ブッシュ本体からその径方向の外方に張り出して前記被嵌込溝に嵌め込まれる鍔部と、を有し、
前記鍔部は、板状部と、前記板状部から前記ブッシュ本体の軸方向における一方側に突出する突部と、を備え、前記ハウジングの前記被嵌込溝に対して、前記軸方向において締め代を有し、
前記鍔部の一部は、前記ハウジングの前記被嵌込溝を形成し前記軸方向における他方側に位置する面に接触し、
前記板状部が弾性変形した状態で、前記突部は、前記ハウジングの前記被嵌込溝を形成し前記軸方向における一方側に位置する面に接触することを特徴とする軸受機構。
【請求項2】
前記板状部は、前記鍔部の前記軸方向の一方の端部において、前記ブッシュ本体の外側に向かって突出し、
前記突部は、前記板状部の先端において、前記軸方向における一方側に突出していることを特徴とする請求項1に記載の軸受機構。
【請求項3】
前記板状部は、前記鍔部の前記軸方向の一方の端部において、前記ブッシュ本体の円周方向に沿って延び、
前記突部は、前記板状部の先端において、前記軸方向における一方側に突出していることを特徴とする請求項1に記載の軸受機構。
【請求項4】
前記ブッシュ軸受に支持される前記軸は、ステアリング装置のラック軸であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の軸受機構。
【請求項5】
円筒状をなし内周面に被嵌入溝が形成されたハウジングと、軸との間に設けられるブッシュ軸受であって、
円筒状のブッシュ本体と、前記ブッシュ本体からその径方向の外方に張り出して前記被嵌込溝に嵌め込まれる鍔部と、を有し、
前記鍔部は、板状部と、前記板状部から前記ブッシュ本体の軸方向における一方側に突出する突部と、を備え、前記ハウジングの前記被嵌込溝に対して、前記軸方向において締め代を有し、
前記鍔部の一部は、前記ハウジングの前記被嵌込溝を形成し前記軸方向における他方側に位置する面に接触し、
前記板状部が弾性変形した状態で、前記突部は、前記ハウジングの前記被嵌込溝を形成し前記軸方向における一方側に位置する面に接触することを特徴とするブッシュ軸受。
【請求項6】
前記板状部は、前記鍔部の前記軸方向の一方の端部において、前記ブッシュ本体の外側に向かって突出し、
前記突部は、前記板状部の先端において、前記軸方向における一方側に突出していることを特徴とする請求項4に記載のブッシュ軸受。
【請求項7】
前記板状部は、前記鍔部の前記軸方向の一方の端部において、前記ブッシュ本体の円周方向に沿って延び、
前記突部は、前記板状部の先端において、前記軸方向における一方側に突出していることを特徴とする請求項4に記載のブッシュ軸受。
【請求項8】
前記軸は、ステアリング装置のラック軸であり、前記ラック軸を支持することを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか一項に記載のブッシュ軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブッシュ軸受およびそれを備える軸受機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、軸をその軸方向に移動可能に支持するブッシュ軸受およびそれを備える軸受機構が知られている。例えば、ステアリング装置において、ハウジングとラック軸との間に設けられ、ラック軸を摺動移動可能に支持するブッシュ軸受が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載のブッシュ軸受は、鍔部を有し、当該鍔部がハウジングに形成された溝に挿入されることにより、ブッシュ軸受はハウジングに装着されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−347105号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載のブッシュ軸受およびハウジングの構成では、ハウジングの軸方向において、鍔部とハウジングとの間に隙間が存在する。この隙間のために、自動車の走行中の振動によりブッシュ軸受が軸方向に沿って動いて、鍔部がハウジングに衝突し、異音が発生してしまう。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、異音の発生を抑制可能なブッシュ軸受およびそれを備える軸受機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、円筒状をなし、内周面に被嵌入溝が形成されたハウジングと、前記ハウジングの前記内周面に装着されるブッシュ軸受と、前記ブッシュ軸受に支持される軸と、を備え、前記ブッシュ軸受は、円筒状のブッシュ本体と、前記ブッシュ本体からその径方向の外方に張り出して前記被嵌込溝に嵌め込まれる鍔部と、を有し、前記鍔部は、板状部と、前記板状部から前記ブッシュ本体の軸方向における一方側に突出する突部と、を備え、前記ハウジングの前記被嵌込溝に対して、前記軸方向において締め代を有し、前記鍔部の一部は、前記ハウジングの前記被嵌込溝を形成し前記軸方向における他方側に位置する面に接触し、前記板状部が弾性変形した状態で、前記突部は、前記ハウジングの前記被嵌込溝を形成し前記軸方向における一方側に位置する面に接触する。
【0008】
前記板状部は、前記鍔部の前記軸方向の一方の端部において、前記ブッシュ本体の外側に向かって突出し、前記突部は、前記板状部の先端において、前記軸方向における一方側に突出しても良い。
【0009】
また、前記板状部は、前記鍔部の前記軸方向の一方の端部において、前記ブッシュ本体の円周方向に沿って延び、前記突部は、前記板状部の先端において、前記軸方向における一方側に突出してもよい。
【0010】
また、前記ブッシュ軸受に支持される前記軸は、ステアリング装置のラック軸であっても良い。
【0011】
また、本発明は、円筒状をなし内周面に被嵌入溝が形成されたハウジングと、軸との間に設けられるブッシュ軸受であって、円筒状のブッシュ本体と、前記ブッシュ本体からその径方向の外方に張り出して前記被嵌込溝に嵌め込まれる鍔部と、を有し、前記鍔部は、板状部と、前記板状部から前記ブッシュ本体の軸方向における一方側に突出する突部と、を備え、前記ハウジングの前記被嵌込溝に対して、前記軸方向において締め代を有し、前記鍔部の一部は、前記ハウジングの前記被嵌込溝を形成し前記軸方向における他方側に位置する面に接触し、前記板状部が弾性変形した状態で、前記突部は、前記ハウジングの前記被嵌込溝を形成し前記軸方向における一方側に位置する面に接触する。
【0012】
前記板状部は、前記鍔部の前記軸方向の一方の端部において、前記ブッシュ本体の外側に向かって突出し、前記突部は、前記板状部の先端において、前記軸方向における一方側に突出しても良い。
【0013】
また、前記板状部は、前記鍔部の前記軸方向の一方の端部において、前記ブッシュ本体の円周方向に沿って延び、前記突部は、前記板状部の先端において、前記軸方向における一方側に突出してもよい。
【0014】
前記軸は、ステアリング装置のラック軸であり、前記ラック軸を支持しても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、異音の発生を抑制可能なブッシュ軸受およびそれを備える軸受機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1の実施形態に係るブッシュ軸受の
図2に示すI−I線に沿った断面図を示す。
【
図2】第1の実施形態に係るブッシュ軸受を鍔部側から見た図を示す。
【
図3】第1の実施形態に係るブッシュ軸受の斜視図を示す。
【
図4】第1の実施形態に係るブッシュ軸受の側面図を示す。
【
図5】第1の実施形態に係るブッシュ軸受がハウジングに装着された状態を示す軸受機構の一部拡大図を示す。
【
図6】第2の実施形態に係るブッシュ軸受の斜視図を示す。
【
図7】第2の実施形態に係るブッシュ軸受の側面図を示す。
【
図8】第2の実施形態に係るブッシュ軸受を鍔部側から見た図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、第1の実施形態に係るブッシュ軸受およびそれを備える軸受機構について図面を参照して説明する。なお、本実施形態においては、ブッシュ軸受およびそれを備える軸受機構をステアリング装置に適用した場合について説明する。
【0018】
図1は、第1の実施形態に係るブッシュ軸受10の
図2に示すI−I線に沿った断面図を示す。
図2は、ブッシュ軸受10を鍔部13側から見た図を示す。
図3は、ブッシュ軸受10の斜視図を示す。
図4は、ブッシュ軸受10の側面図を示す。
図5は、ブッシュ軸受10がハウジング2に装着された状態を示す軸受機構1の一部拡大図を示す。
【0019】
<軸受機構1の全体構成>
図1に示すように、本実施の形態に係る軸受機構1は、車に装着されるラックアンドピニオン式のステアリング装置の一部を構成し、ハウジング2と、ラック軸3と、ブッシュ軸受10とを備える。
【0020】
<ハウジング2>
ハウジング2は、例えばアルミニウム等の金属で構成され、円筒状をなし、図示せぬ車体に固定されている。ハウジング2の内周面2Aには、その円周方向に沿って形成された環状の被嵌込溝2bが形成されている。被嵌込溝2bは、ハウジング2の軸方向Xに対して直交する円環状の一対の壁面2C、2Dと、ハウジング2の円周方向に沿って延びる円環状の周壁面2Eとにより構成される。
【0021】
<ラック軸3>
ラック軸3は、略円柱状をなし、ハウジング2内において軸方向Xに沿って移動可能に設けられている。ラック軸3の一部には、ラックが設けられている。当該ラックは、ステアリング装置のピニオン軸のピニオンと噛み合うように構成されている。ピニオン軸はステアリングホイールに連結されている。また、ラック軸3の両端は、図示せぬ連結機構を介して車輪に連結されている。
【0022】
<ブッシュ軸受10>
図1〜
図5に示すように、ブッシュ軸受10は、ブッシュ本体11と、複数本(本実施形態では2本)のOリング12とを備える。ブッシュ軸受10は、ハウジング2の内周面2Aと、ラック軸3の外周面3Aとの間に介装されている。
【0023】
Oリング12は、環状をなし、ゴム等の弾性材料で構成されている。Oリング12をその円周方向に直交する平面で切断したときの断面は、円形状をなしている。各Oリング12は、テンションがかかった状態で、後述の挿入溝11cに対して挿入されている。また、各Oリング12の外径は、ハウジング2の内周面2Aよりも僅かに大きく構成される。
【0024】
ブッシュ本体11は、樹脂製であり、円筒状をなしている。ブッシュ軸受10が、ハウジング2に組み込まれた状態では、ブッシュ本体11の軸方向は、ハウジング2の軸方向Xと一致している。ブッシュ本体11の内周面11Aは、ラック軸3を摺動移動可能に支持する。そして、ブッシュ本体11の内径は、ラック軸3の外径よりも僅かに大きく、ブッシュ本体11の外径は、ハウジング2の内径よりも小さく構成されている(
図1参照)。
【0025】
ブッシュ本体11の外周面11Bには、円周方向に延びる挿入溝11cが、軸方向に間隔を隔てて2本形成されている。各挿入溝11cは、ブッシュ本体11の外周面11Bの円周方向全域に亘って形成されており、環状をなしている。ハウジング2の軸方向Xを含む平面で切断したときの各挿入溝11cの断面は、矩形の凹状になっている。挿入溝11cの数とOリング12の数とは同数であるが、挿入溝がOリングより多くともよい。
【0026】
ブッシュ本体11の軸方向Xにおける一端(
図1における右端)には、ブッシュ本体11の径方向外側へ向かって張り出した鍔部13が一体的に設けられている。鍔部13は、全体としてブッシュ本体11と同軸をなす環状に構成されている。鍔部13の外径は、ハウジング2の内周面2Aの内径よりも大きく、内周面2Aに形成された被嵌込溝2bの周壁面2Dの内径よりも小さく構成されている(
図1参照)。
【0027】
鍔部13は、ハウジング2の軸方向Xに対して直交する一対の端面13A、13Bと、ハウジング2の円周方向に沿って延びる外周面13Cとにより構成される。
【0028】
ブッシュ本体11には、鍔部13の端面13Aから、ブッシュ本体11の端面11Dに向かって延びる複数(本実施形態では4つ)の第1スリット11eが形成されている。第1スリット11eにより、鍔部13は、4つ(第1〜第4鍔部13D〜13G)に分割される。よって、鍔部13の一対の端面13A、13Bおよび外周面13Cも4つに分割されている。なお、第1スリット11eは、各挿入溝11cを横切っている。
【0029】
ブッシュ本体11には、端面11Dから鍔部13に向かって延びる複数の第2スリット11fが形成されている。第1、第3鍔部13D、13Fに相当する位置には、2本の第2スリット11fが形成され、第2、第4鍔部13E、13Gに相当する位置には、1本の第2スリット11fが形成されている。各第2スリット11fは、各挿入溝11cを横切っている。
【0030】
第1、第3鍔部13D、13Fの円周方向における中央部には、それぞれ切欠き13hが形成されている。各切欠き13hは、鍔部13の端面13A、13Bおよび外周面13Cを切り欠くようにして形成されている。各切欠き13h内において、端面13A側(軸方向Xの一方側)の端部から半径方向外方に突出する板状部13Iが設けられている。板状部13Iの軸方向Xの厚さは、鍔部13の軸方向Xの厚さ(端面13Aと端面13Bとの距離)に対して、非常に小さく構成されている。板状部13Iの先端には、軸方向Xの一方側に突出する突部13Jが設けられている。
【0031】
突部13Jにより、第1、第3鍔部13D、13Fの軸方向Xの幅は、ハウジング2の被嵌込溝2bの幅(壁面2C、2D間の距離)よりも大きく構成される。すなわち、鍔部13は、ハウジング2の被嵌込溝2bに対して、軸方向Xにおいて締め代を有する。
【0032】
そして、
図5に示すように、鍔部13が、ハウジング2の被嵌込溝2bに嵌め込まれた状態では、端面13Bが嵌込溝2bの壁面2Dに当接し、板状部13Iが曲げ変形(弾性変形)した状態で、突部13Jが壁面2Cに当接する。このように、鍔部13はハウジング2の被嵌込溝2bに対し、板状部13Iおよび突部13Jにより、軸方向Xに弾性力を有した状態で嵌め込まれる。
【0033】
また、Oリング12は、ブッシュ軸受10がハウジング2に装着された状態では、ハウジング2の内周面2Aに当接する。また、ラック軸3が、ブッシュ軸受10に挿入されることにより、ブッシュ本体11が押し拡げられ、Oリング12は、ブッシュ本体11とハウジング2とにより圧縮されるように構成されている。
【0034】
<作用効果>
上記に記載のように、本実施形態の軸受機構1によれば、鍔部13は、板状部13Iと、板状部13Iから軸方向Xにおける一方側に突出する突部13Jと、を備え、ハウジング2の被嵌込溝2bに対して、軸方向Xにおいて締め代を有し、鍔部13の端面13Bは、ハウジング2の被嵌込溝2bを形成し軸方向Xにおける他方側に位置する壁面2Dに接触し、板状部13Iが弾性変形した状態で、突部13Jは、ハウジング2の被嵌込溝2bを形成し軸方向における一方側に位置する壁面2C面に接触する。
【0035】
詳細には、板状部13Iは、鍔部13の軸方向Xの一方の端部において、ブッシュ本体11の外側(半径方向外方)に向かって突出し、突部13Jは、板状部13Iの先端において、軸方向Xにおける一方側に突出している。
【0036】
かかる構成により、軸方向Xにおいて、鍔部13とハウジング2と間に隙間が形成されることなく、鍔部13はハウジング2の被嵌込溝2bに対し、板状部13Iおよび突部13Jにより、軸方向Xに弾性力を有した状態で嵌め込まれる。この結果、ブッシュ軸受10が振動を受けたとしても、ブッシュ軸受10の軸方向Xにおける移動を当該弾性力により固定することができる。よって、鍔部13が軸方向Xに動いてハウジング2に衝突することによる異音の発生を抑制することができる。
【0037】
また、鍔部13は、その板状部13Iが弾性変形(曲げ変形)しながら、ハウジング2の被嵌込溝2bに嵌め込まれるのでブッシュ軸受10をハウジング2に容易に組み付けることができる。
【0038】
次に、第2の実施形態に係るブッシュ軸受110およびそれを備える軸受機構について図面を参照して説明する。なお、第1の実施形態におけるブッシュ軸受10と同じ部材については同一の参照番号を付して説明を省略し、異なる部分についてのみ説明を行う。
【0039】
<ブッシュ軸受110>
図6は、ブッシュ軸受110の斜視図を示す。
図7は、ブッシュ軸受110の側面図を示す。
図8は、ブッシュ軸受10を鍔部113側から見た図を示す。
【0040】
図6〜
図8に示すように、ブッシュ軸受110の鍔部113において、4つに分割された第1〜第4鍔部113D〜113Gのうち、第1鍔部113Dおよび第3鍔部113Gの形状が第1の実施の形態の第1、3鍔部13D、13Gの形状と異なっている。
【0041】
第1、第3鍔部113D、113Fの端面13A側におけるブッシュ本体11の円周方向の両端には、それぞれ切欠き113hが形成されている。各切欠き113hは、鍔部13の端面13A、13B、外周面13C、およびブッシュ本体11の内周面11Aを切り欠くようにして形成されている。各切欠き113hは、端面13Aと平行をなす第1切欠き面113Kおよび第1切欠き面113Kに直交する第2切欠き面113Lにより構成されている。
【0042】
各切欠き113h内において、第2切欠き面113Lの端面13A側(軸方向Xの一方側)の端部に、ブッシュ本体11の円周方向に沿って延びる板状部113Iが設けられている。板状部113Iと第1切欠き面113Kとの間には隙間が形成されている。板状部113Iの先端には、軸方向Xの一方側に突出する突部113Jが設けられている。
【0043】
突部113Jにより、第1、第3鍔部113D、113Fの軸方向Xの幅は、ハウジング2(
図1)の被嵌込溝2bの幅(壁面2C、2D間の距離)よりも大きく構成される。すなわち、鍔部113は、ハウジング2の被嵌込溝2bに対して、軸方向Xにおいて締め代を有する。
【0044】
そして、第1の実施の形態と同様に、鍔部113が、ハウジング2の被嵌込溝2bに嵌め込まれた状態では、端面13Bが嵌込溝2bの壁面2Dに当接し、板状部113Iが曲げ変形(弾性変形)した状態で、突部113Jが壁面2Cに当接する。このように、鍔部113はハウジング2の被嵌込溝2bに対し、板状部113Iおよび突部113Jにより、軸方向Xに弾性力を有した状態で嵌め込まれる。
【0045】
<作用効果>
上記のように、板状部113Iは、鍔部113の軸方向Xの一方の端部において、ブッシュ本体11の半径方向に沿って延び、突部113Jは、板状部113Iの先端において、軸方向Xにおける一方側に突出している。そして、鍔部113は、ハウジング2の被嵌込溝2bに対して、軸方向Xにおいて締め代を有し、鍔部113はハウジング2の被嵌込溝2bに対し、板状部113Iおよび突部113Jにより、軸方向Xに弾性力を有した状態で嵌め込まれる。
【0046】
かかる構成により、本実施の形態でも、第1の実施の形態のブッシュ軸受10およびそれを備える軸受機構1と同様に、軸方向Xにおいて、鍔部113とハウジング2と間に隙間が形成されることなく、鍔部113はハウジング2の被嵌込溝2bに対し、板状部113Iおよび突部113Jにより、軸方向Xに弾性力を有した状態で嵌め込まれる。この結果、ブッシュ軸受110が振動を受けたとしても、ブッシュ軸受110の軸方向Xにおける移動を当該弾性力により吸収することができる。よって、鍔部113が軸方向Xに動いてハウジング2に衝突することによる異音の発生を抑制することができる。
【0047】
また、鍔部13は、その板状部13Iが弾性変形(曲げ変形)しながら、ハウジング2の被嵌込溝2bに嵌め込まれるのでブッシュ軸受10をハウジング2に容易に組み付けることができる。
【0048】
なお、本発明は、上述した実施例に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。
【0049】
例えば、上記の実施形態では、板状部13Iおよび突部13Jは、鍔部13の端面13A側(軸方向Xの一方側)に設けられていたが、鍔部13の端面13B側(軸方向Xの他方側)に設けられていても良いし、
図9に示すように、鍔部13の端面13A、13Bの両側に設けられていても良い。かかる構成により、軸方向Xにおいて、鍔部13とハウジング2と間に隙間が形成されることなく、鍔部13はハウジング2の被嵌込溝2bに対し、2つの板状部13Iおよび2つの突部13Jにより、軸方向Xに弾性力を有した状態で嵌め込まれる。この結果、ブッシュ軸受10が振動を受けたとしても、ブッシュ軸受10の軸方向Xにおける移動を当該弾性力により吸収することができる。よって、鍔部13が軸方向Xに動いてハウジング2に衝突することによる異音の発生を抑制することができる。なお、第2の実施の形態のブッシュ軸受110の鍔部113においても、板状部113Iおよび突部113Jを、鍔部113の端面13B側(軸方向Xの他方側)に設けても良いし、鍔部113の端面13A、13Bの両側に設けても良い。
【0050】
また、板状部13I、113Iが突出または延びる方向は、上記の実施の形態に示した方向に限らない。
【0051】
また、上記の実施の形態では、軸受機構1をステアリング装置に適用して、ブッシュ軸受10、100はラック軸3を支持する場合について説明したが、軸受機構1をステアリング装置以外の装置に適用して、ブッシュ軸受10、100は、軸をその軸方向に移動可能に支持しても良い。
【符号の説明】
【0052】
1:軸受機構
2:ハウジング
2A:内周面
2b:被嵌込溝
2C、2D:壁面
3:ラック軸
10、110:ブッシュ軸受
11:ブッシュ本体
13、113:鍔部
13I、113I:板状部
13J、113J:突部