(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-68630(P2017-68630A)
(43)【公開日】2017年4月6日
(54)【発明の名称】工作機械の制御装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/18 20060101AFI20170317BHJP
B23Q 15/00 20060101ALI20170317BHJP
G05B 19/4067 20060101ALI20170317BHJP
G05B 19/4063 20060101ALI20170317BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20170317BHJP
【FI】
G05B19/18 W
B23Q15/00 D
G05B19/4067
G05B19/4063 L
B23K26/00 M
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-193999(P2015-193999)
(22)【出願日】2015年9月30日
(71)【出願人】
【識別番号】000154990
【氏名又は名称】株式会社牧野フライス製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】矢田 賢一
【テーマコード(参考)】
3C269
4E168
【Fターム(参考)】
3C269AB11
3C269BB12
3C269MN07
3C269MN27
3C269QE16
3C269QE31
4E168AD00
4E168CA00
4E168FA05
4E168GA05
4E168KA15
(57)【要約】
【課題】定期的な点検の実施し忘れによる工作機械の故障や稼働率の低下を防ぐ。
【解決手段】定期的な点検を必要とする複数の点検項目を有する工作機械の制御装置11において、点検項目毎に運転時間を計数するカウンタ39と、カウンタの計数時間が定期点検時間37に到達したときに工作機械が行う処理である定期処理35を記憶する設定記憶部31と、定期点検時間に対する運転時間の割合である使用率が閾値33以上であるときに閾値33を超えたことを知らせる表示部61と、運転時間が定期点検時間37に到達したとき定期処理35を行う定期処理部31とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定期的な点検を必要とする複数の点検項目を有する工作機械の制御装置において、
点検項目毎に運転時間を計数するカウンタと、
点検項目毎に、使用開始から定期点検が必要となるまでの時間である定期点検時間と、定期点検時間に対する割合で設定される閾値と、前記定期点検時間に到達したときに前記工作機械が行う処理である定期処理とを記憶する設定記憶部と、
点検項目毎に、前記定期点検時間に対する前記カウンタで計数した運転時間の割合を使用率として算出する算出部と、
前記使用率が前記閾値以上であるときに、該閾値を超えたことを知らせる表示部と、
前記運転時間が前記定期点検時間に到達したとき、前記定期処理を行う定期処理部と、
を具備することを特徴とした工作機械の制御装置。
【請求項2】
前記定期処理部は、実行中の加工プログラムを直ちに終了させる処理と、実行中の加工プログラムを一時停止箇所から再開可能に一時停止させる処理と、実行中の加工プログラムが終了した後に次の加工プログラムを実行しない処理のいずれか一つの処理を行う請求項1に記載の工作機械の制御装置。
【請求項3】
前記表示部は、複数ある点検項目をそれぞれの使用率とともに一覧表示し、選択した点検項目の点検作業方法と前記運転時間と前記定期点検時間とを更に表示する請求項1に記載の工作機械の制御装置。
【請求項4】
前記工作機械は、ウォータジェットレーザ加工機であり、ウォータジェットを生成する純水供給装置の点検項目を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の工作機械の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定期点検の作業性を改善した工作機械の制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械には、保守を必要とする機器が複数含まれる。これらの機器の保守を怠ると、工作機械はその性能を発揮することができなくなり、工作機械の故障や加工ワークの不良の原因となる。そこで、毎日、1週間、6か月など、予め期間を決めておき、定期的にこれらの機器の点検や部品の交換が行われる。
【0003】
特許文献1には、前回のメンテナス実施時からの運転時間、動作回数を計測し、演算部で、設備稼働率を演算し、記憶部に記憶されたメンテナンスデータと計測部の計測データを基にメンテナンス項目毎にメンテナンス時期を演算して、メンテナンス時期を予告したり、運転時間か動作回数が設定値になれば設備の運転を停止させたりすることが開示されている。
【0004】
特許文献2には、消耗品毎に消耗品の残寿命に対する割合で閾値が与えられ、寿命と判断することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−56620号公報
【特許文献2】特許第5595559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来は、人為的なミスにより、点検を定期的に行うことを実施し忘れることがあった。そのため、1週間点検時期や6か月点検時期を知らせる機能が工作機械にあったが、知らせるだけで夜間や休日に定期点検の時間になっても停止せずに稼働を続け、工作機械が故障したり加工ワークの不良発生の原因となっていた。また、不必要な保守用の交換部品を在庫することは生産現場では無駄と認識されているため、定期点検に使用する交換部品は工作機械のユーザでは在庫しておらず、定期点検のたびに必要な交換部品をメーカに発注していたため、交換部品が届くまで、工作機械を稼働させることができない期間があった。
【0007】
特に、ウォータジェットレーザ加工機では、怠るとすぐに機械の故障につながるような点検項目以外に、故障するほどでないが、ウォータジェットの噴出が安定せずにワークの加工不良を起こす原因となる点検項目もあり、点検項目が多岐にわたり、点検漏れが発生しやすかった。
【0008】
上記の特許文献1では、設備稼働率からメンテナンス項目毎にメンテナンス時期を演算している。しかし、工作機械の場合は、加工するワークが変更されるため、設備の稼働率は常に変化する。このため、過去の稼働率を演算に使用しても条件が異なるため、正しいメンテナンス時期を予告することができるとは限らなかった。
【0009】
また、特許文献1では、メンテナンス時期に達すると、自動的に設備の運転を強制停止する。そのため、夜間や休日に自動的に強制停止が発生した場合など、設備が稼働していない時期が発生し、生産性が低下する。
【0010】
本発明は、前述の問題点を解決するためになされたものであり、定期点検で工作機械を停止させることによる稼働率の低下を最小限に抑制すること、および定期点検をし忘れるなどの人為的なミスによる工作機械の故障や不良ワークの発生を防止することの両立を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の目的を達成するため、本発明によれば、定期的な点検を必要とする複数の点検項目を有する工作機械の制御装置において、点検項目毎に運転時間を計数するカウンタと、点検項目毎に、使用開始から定期点検が必要となるまでの時間である定期点検時間と、定期点検時間に対する割合で設定される閾値と、前記定期点検時間に到達したときに前記工作機械が行う処理である定期処理とを記憶する設定記憶部と、点検項目毎に、定期点検時間に対するカウンタで計数した運転時間の割合を使用率として算出する算出部と、使用率が閾値以上であるときに、閾値を超えたことを知らせる表示部と、運転時間が定期点検時間に到達したとき、定期処理を行う定期処理部と、を具備した工作機械の制御装置が提供される。
【0012】
これにより、閾値を超えている場合に、定期点検に到達する前であっても早めに保守を行うことをオペレータに促すことができ、夜間や休日などオペレータが不在の時間に工作機械が停止してしまうことを防止できる。
【0013】
また、本発明によれば、定期処理部は、実行中の加工プログラムを直ちに終了させる処理と、実行中の加工プログラムを一時停止箇所から再開可能に一時停止させる処理と、実行中の加工プログラムが終了した後に次の加工プログラムを実行しない処理とのいずれか一つの処理を行う。
【0014】
これにより、工作機械の点検項目のリスクに応じた閾値を設定することができる。工作機械の故障の危険性がある点検項目では、定期処理にワークの加工を止めてしまう処理を選択して確実に工作機械を保護し、故障の危険性がない点検項目の閾値はワークの加工を止めない処理を選択して工作機械の稼働率の低下を防止することができる。
【0015】
また、本発明によれば、表示部は、複数ある点検項目をそれぞれの使用率とともに一覧表示し、選択した点検項目の点検作業方法と運転時間と定期点検時間とを更に表示する。
【0016】
これにより、点検項目が多い工作機械であっても、点検時期が近い点検項目をオペレータが確実に認識することができ、定期点検をし忘れて、ワークの加工が意図せずに停止してしまうことを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、定期点検の時期が近付いていることをオペレータが容易に認識でき、今後の作業予定に合わせて、オペレータが定期点検を前倒しで実施すべきかを容易に判断できるようになる。これにより、オペレータが定期点検の時期を忘れてしまう等の人為的ミスを発生させず、なおかつ、休日や夜間に定期点検の時間となって工作機械が停止してしまうことを防ぐことができるという効果があった。また、前もって定期点検の時期を知らせるため、定期点検の時期に到達する前に予め交換部品を発注することができ、交換部品が無くて工作機械が稼働できなくなる時間が発生することを防げ、工作機械の稼働率が改善されるという効果がある。そして、工作機械の故障や加工ワークの不良発生を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】本発明の実施の形態における工作機械の制御装置のブロック図である。
【
図3】設定記憶部に格納される点検項目の設定表である。
【
図5】本発明の実施の形態における制御フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を適用できる工作機械71の一例としてウォータジェットレーザ加工機で説明する。ウォータジェットレーザ加工機は、ワークが配置されたテーブルとレーザヘッドとを相対的に移動し、レーザヘッドに備えられたノズル99から高圧力でウォータジェットを層流の柱状に噴出してワークに当て、そのウォータジェットの柱の中にレーザ発振器83から送られるレーザ光を導入してワークの加工部位までレーザ光を案内し、レーザ光による熱でワークに除去加工を行う工作機械である。レーザヘッドから噴出するウォータジェットは、伝達されるレーザ光のエネルギーが水中の不純物により損失することを防ぐため純水が使用される。そのため、純水供給装置81が備えられている。
【0020】
図1に示す純水供給装置81は、プレフィルタ83および活性炭フィルタ85で予め濾過した都市用水や水道水を、ポンプ87によって加圧して逆浸透膜装置89に供給して、該逆浸透膜装置89で高度に濾過し、次いで、紫外線殺菌装置91を通した後にイオン交換樹脂93で更に不純物を除去して純水を生成する。こうして生成された純水は、タンク95に貯留された後、ポンプ97によって、管路を経てレーザヘッドのノズル99へ向けて供給される。これら、純水供給装置で使用されているフィルタやポンプ等の点検項目は、それぞれ異なる定期点検を行うことが要求される。
【0021】
上記の機器には、定期的に点検を行い、必要に応じて部品を交換すべき多数の点検項目がある。例えば、プレフィルタ83や活性炭フィルタに内蔵される各種フィルタは、それぞれ寿命が異なり、定期的な点検を必要とし、フィルタが目詰まりしているようならば新品のフィルタに交換する必要がある。フィルタを交換しないと水道水などに含まれる不純物により、純水供給装置81や工作機械71の他の部位に錆が発生したり、バクテリアが繁殖したりし、故障の原因となる。また、逆浸透膜装置89ではRO膜(逆浸透膜)、紫外線殺菌装置91ではUVランプが、点検項目になる。また、ポンプ97は点検項目として高圧ポンプを有している。高圧ポンプは、水に高圧力を加えるために用いられるが、圧力が高いため消耗し、故障すると高圧力の水をノズル99から噴出できなくなり、ワークを加工できなくなる。
【0022】
次に、本発明の制御装置11を説明する。
図2に示したように、制御装置11は、入力部21、設定記憶部31、算出部41、定期処理部51、表示部61を備えている。入力部21は、工作機械71を操作するための操作盤にあたり、キーボードやスイッチ、タッチパネル式ディスプレイを備え、加工プログラムの入力や選択をしたり、工作機械71を操作したり、各種パラメータを入力することができる。設定記憶部31は、工作機械の各種パラメータを記憶する装置である。定期処理部51は、点検項目毎に定められた定期処理に基づいて工作機械の各機器を制御する。表示部61は、入力部21と伴に工作機械71の操作盤にあたり、ディスプレイを備え、入力した加工プログラムや工作機械71の状態、各種パラメータなどを表示する。表示部61は、入力部21のタッチパネル式ディスプレイと兼ねることができる。
【0023】
設定記憶部31は、工作機械71に指令を与える上で必要となる様々なパラメータを記憶するが、
図3に示すように、本発明では特に点検項目毎に、閾値33、定期処理35、定期点検時間37、カウンタ39の計数した運転時間を記憶する。定期点検時間37とは、点検項目を使用し始めたときから定期点検が必要となるまでの予め定めた時間のことをいう。例えば、フィルタを交換した場合、フィルタを交換した直後を0時として数えて、フィルタの定期保守(例えば、フィルタの目詰りの点検やフィルタの交換など)が必要となる時間を定期点検時間37に記憶する。定期点検時間37は、装置や工作機械を設計した際に決定される時間である。定期処理35は、定期点検時間37に到達した点検項目に対して行う処理のことで、アラーム、ワーニング、サイクル停止の3種類の処理のいずれか一つが設定してある。定期処理35の設定は、交換や点検を行わなかったときに、工作機械71に深刻なダメージを与える点検項目はアラームに設定したり、点検が多少遅れても加工精度が許容範囲内で下るだけで工作機械にはダメージが軽微な点検項目にはワーニングを設定したり、交換や点検の重要度に応じて予め決めてある。カウンタ39は、これまでに経過した点検項目毎の運転時間を計数し記憶する。閾値33には、オペレータが入力部21のパラメータ設定部23から所望の値を予め設定する。閾値33は、定期点検時間37が長い点検項目は大きく、定期点検時間37が短い点検項目は小さく、また、注文してから納品まで時間のかかる保守部品を使用する点検項目は小さく設定するとよい。
【0024】
図4に表示部61であるディスプレイの表示の一例を示す。なお、本発明の実施形態の工作機械71では、ディスプレイに、タッチパネル式のディスプレイを使用しており、入力部21の機能も有している。工作機械71の表示部61は、多種多様な情報を表示するために、オペレータが使用したい機能の表示に、切り替えることができるが、
図5は、消耗品管理の表示を選択したときの状態である。消耗品管理の表示を選択した場合は、表示部61の左側には、点検項目の一覧が表示される。また、点検項目の横には、点検項目毎に現在の使用率が表示されている。使用率とは、点検項目毎の定期点検時間37に対する運転時間の割合を%で示したものである。
【0025】
表示部61の右上には、点検項目の一覧から選択された点検項目の状態が表示される。
図4の例では、カーソル63でポンプ97に使われている高圧ポンプが選択されており、表示部61の右上に点検項目の高圧ポンプの状態として、前回点検を行った日付である最終点検日が2015年4月22日であることを表示している。他に、運転時間が3800時間であること、定期点検時間37が4000時間であることが数値と、棒グラフとで表示される。さらに、零設定部25としての「点検完了」のボタンが表示されている。この「点検完了」のボタンをタッチパネルで押すと、選択中の点検項目である高圧ポンプのカウンタの記録が零に戻る。
【0026】
表示部62の右下には、選択中の点検項目に対応した機器が工作機械71のどの位置にあるかが図示され、点検作業の手順や作業の注意事項が表示される。
【0027】
図5を用いて、本発明の制御フローを説明する。点検項目を含む工作機械71が稼働し始めるとカウンタ39が運転時間の計数を開始し、機器が稼働中は計数を続ける(S001)。工作機械71が稼働しているときでなく、点検項目を含む装置だけが稼働し始めると(例えばプレフィルタ83や活性炭フィルタ85の場合は純水供給装置81が稼働し始めると)、稼働中の装置に含まれる点検項目のカウンタ39だけが計数してもよい。これにより、カウンタ35は、点検項目毎の運転時間を計数し記憶する。次に、定期点検項目毎に、設定記憶部31に記憶された定期点検時間37とカウンタ39に記憶された運転時間とを比較する(S002)。S002の工程で、カウンタ39に記憶されている運転時間が定期点検時間37以上の値となった点検項目がある場合は、設定記憶部31に記憶されたその点検項目の定期処理35に応じて所定の処理を行う(S003)。
【0028】
定期処理35が「アラーム」となっている場合は、運転時間が定期点検時間37以上の値となった時点で、実行中の加工プログラムを終了(中止)し、機械を停止する(S004)。
【0029】
定期処理35が「ワーニング」となっている場合は、運転時間が定期点検時間37以上の値となった時点で、実行中の加工プログラムを一時停止し、オペレータが定期点検をして、加工プログラムの再開の指令をするまで待機状態になる(S005)。「ワーニング」の場合は、定期点検が完了後、加工プログラムの再開を指令すると、一時停止した箇所から、加工の続きを行う。
【0030】
定期処理35が「サイクル停止」となっている場合は、運転時間が定期点検時間37以上の値となったときでも、実行していた加工プログラムを最後まで実行するが、次の加工プログラムの実行を受け付けなくなる(S006)。定期点検完了の確認が取れた後は、次の加工プログラムを実行できるようになる。
【0031】
次いで、定期点検時間37に対する運転時間の割合である使用率を求め、使用率と閾値33とを比較する(S007)。S007の工程で、使用率が閾値以上の場合は、表示部61の点検項目一覧の使用率の左側に、「!」を三角形で囲った予報マーク65を付加し、一覧の中から発見しやすいようにする(S008)。
【0032】
S009の工程では、オペレータが、アラームやワーニング、サイクル停止状態になったことを受けて、該当する機器の点検・保守を行う。または、予報マーク65を見て、交換部品の発注を行ったり、今後の休日や夜間など無人運転の予定を考慮して、点検作業を早めに実施したりする。
【0033】
S010の工程は、零設定部25の「点検完了」のボタンが押されたことを検知する工程である。オペレータが、点検作業を終えた後に「点検完了」のボタンを押すことで、工作機械71の制御装置は、点検作業が完了したと認識し、カウンタ39を零に戻す。(S011)
【0034】
本発明は、様々な工作機械に適用できるが、ウォータジェットレーザ加工機に最適である。他の工作機械、例えばマシニングセンタや放電加工機は、エンドミルや電極の外形がワークに転写されながら加工が進み、エンドミルや電極は、頻繁に新しいものに交換される。しかし、ウォータジェットレーザ加工機はノズルから噴出される柱状のウォータジェットの形が乱れると、内部を通るレーザ光がうまく加工点まで到達せず安定した加工ができない。つまり、ウォータジェットレーザ加工機において定期点検は、マシニングセンタにおけるエンドミルの寸法管理や、放電加工における電極の寸法管理と同様に大変重要である。よって、マシニングセンタで工具測定を行い、工具が欠損していれば、直ぐにプログラムを中断して工具を交換するのと同様に、ウォータジェットレーザ加工機は、ウォータジェットが安定して噴出できないときは加工プログラムを止めて、ウォータジェットを噴出するための装置の点検や保守を行ってから加工を再開する必要がある。また、ウォータジェットが安定して噴出できなくならないように、普段から定期的な点検が必要とされる。
【0035】
本発明では、更に点検項目を3種類に区別した。一つは、工作機械の深刻な破損につながる点検項目で、即時に工作機械の稼働を止めるアラームの処理をすべき点検項目である。一つは、累積すれば工作機械の破損につながり、ワークの加工結果に悪影響が出る可能性がある点検項目で、加工プログラムを再開できるように中断するワーニングの処理すべき点検項目である。これは、マシニングセンタにおける欠損工具の交換に類似する。最後の一つは、軽微な影響だけで、ワークの加工結果に影響を与えない点検項目で、加工プログラムが終わるのを待つサイクル停止の処理をすべき点検項目である。
【0036】
本発明の工作機械の制御装置によれば、工作機械が故障を防止でき、特にウォータジェットレーザ加工機においてはワークの加工不良も防止でき、工作機械の稼働率を下げることのない定期点検をすることができる。
【符号の説明】
【0037】
11 制御装置
21 入力部
31 設定記憶部
33 閾値
35 定期処理
37 定期点検時間
39 カウンタ
41 算出部
51 定期処理部
61 表示部
71 工作機械
81 純水供給装置
【手続補正書】
【提出日】2016年9月2日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
前述の目的を達成するため、本発明によれば、定期的な点検を必要とする複数の点検項目を有する工作機械の制御装置において、点検項目毎に運転時間を計数するカウンタと、点検項目毎に、使用開始から定期点検が必要となるまでの時間である定期点検時間と、定期点検時間に対する割合で設定される閾値と、前記定期点検時間に到達したときに前記工作機械が行う処理である定期処理とを記憶する設定記憶部と、点検項目毎に、
前記定期点検時間に対する前記カウンタで計数した運転時間の割合を使用率として算出する算出部と、
前記使用率が
、点検項目毎に設定された前記閾値以上であるときに、
該閾値を超えたことを知らせる表示部と、
点検項目毎に、前記運転時間が
前記定期点検時間に到達したとき、
前記定期処理を行う定期処理部と、を具備した工作機械の制御装置が提供される。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
定期的な点検を必要とする複数の点検項目を有する工作機械の制御装置において、
点検項目毎に運転時間を計数するカウンタと、
点検項目毎に、使用開始から定期点検が必要となるまでの時間である定期点検時間と、定期点検時間に対する割合で設定される閾値と、前記定期点検時間に到達したときに前記工作機械が行う処理である定期処理とを記憶する設定記憶部と、
点検項目毎に、前記定期点検時間に対する前記カウンタで計数した運転時間の割合を使用率として算出する算出部と、
前記使用率が、点検項目毎に設定された前記閾値以上であるときに、該閾値を超えたことを知らせる表示部と、
点検項目毎に、前記運転時間が前記定期点検時間に到達したとき、前記定期処理を行う定期処理部と、
を具備することを特徴とした工作機械の制御装置。
【請求項2】
前記定期処理部は、実行中の加工プログラムを直ちに終了させる処理と、実行中の加工プログラムを一時停止箇所から再開可能に一時停止させる処理と、実行中の加工プログラムが終了した後に次の加工プログラムを実行しない処理のいずれか一つの処理を行う請求項1に記載の工作機械の制御装置。
【請求項3】
前記表示部は、複数ある点検項目をそれぞれの使用率とともに一覧表示し、選択した点検項目の点検作業方法と前記運転時間と前記定期点検時間とを更に表示する請求項1に記載の工作機械の制御装置。
【請求項4】
前記工作機械は、ウォータジェットレーザ加工機であり、ウォータジェットを生成する純水供給装置の点検項目を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の工作機械の制御装置。