【解決手段】フィルムチャック13cによって枚葉フィルムFの外周縁部を把持したまま支点枠体13bに対してオフセットさせて枚葉フィルムFに所定のテンションを加えた状態で支点枠体13と共に枚葉フィルムFがモールド金型に搬送される。
前記オフセット機構は、前記フィルム把持部を前記枠体に設けられた回転軸を中心に回転させることで、前記フィルム把持部を前記支点部から離間させる請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載のフィルム搬送装置。
前記フィルム把持部を保持する回転部材を、前記回転軸を中心として前記支点部から離間させる方向のみ回転を許容するラチェット機構を備える請求項6記載のフィルム搬送装置。
前記枚葉フィルムが前記支点枠体と共に前記モールド金型に搬入される際に、前記フィルム把持部のオフセット量を増やして前記オフセット機構による前記枚葉フィルムへの張力を更に強める張力付加機構を備えた請求項8記載の樹脂モールド装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、金型メンテナンスを軽減したり樹脂漏れを防いだりするためフィルムを用いて樹脂モールドが行われているが、一対のロール間に巻き付けられたフィルムをモールド金型に連続して供給して樹脂モールドを行う場合、金型クランプ面よりフィルム搬送方向上流側及び下流側のフィルムがモールド金型から輻射熱を受けて変形するため、1回の樹脂モールド動作においてフィルム使用量が増え、ランニングコストが嵩むという課題がある。このため、フィルム使用量を減らすため、長尺状に連続するフィルムに替えて枚葉フィルム(予め所定サイズ及び所定形状に形成されたフィルム)を用いることが考えられる。
【0007】
しかしながら、特に、大判サイズで矩形状のワーク、例えば各辺が600mmの矩形ワークをモールドするため、それよりも大きなサイズのフィルムを適切に取扱い、下型キャビティ凹部に対して皺が発生することなく追従させて吸着させるには、フィルム全体に対して適度な張力を付与する必要がある。また、枚葉フィルム上にモールド樹脂を載せた状態で下型に搬入する場合、枚葉フィルムが撓むと大量のモールド樹脂がフィルム上で偏った状態のまま搬入されるおそれがある。
さらには、実質的にワークの外形サイズより大きなフィルムを用いることになるため、フィルム搬送機構も大型化して、装置の設置面積も大型化しクリーンルームにおけるフットプリントが増加したり、装置コストが増加したりする傾向がある。
【0008】
本発明の目的は上記従来技術の課題を解決し、適度な張力を付与して枚葉フィルムを搬送して皺を発生させることなくキャビティ凹部に追従させて受け渡すことができるフィルム搬送装置を提供することにある。
また、上記フィルム搬送装置を備えてフィルム使用量を減らしてランニングコストの低減を図り、大判サイズの成形品の成形品質を向上させかつ設置面積を抑制することが可能な樹脂モールド装置を提供することにある。
更には、枚葉フィルム上にモールド樹脂を載せても樹脂の偏りが発生せずに搬送することができるフィルム搬送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
モールド成形に用いる枚葉フィルムに張力を付与したままモールド金型に搬送するフィルム搬送装置であって、キャビティ凹部を囲む金型クランプ面に対応した所定形状の枠体に、前記枠体開口部を覆って保持される前記枚葉フィルムに張力を付与する支点部となる支点枠体と、前記支点枠体の外側において前記枚葉フィルムの外周縁部を把持するフィルム把持部と、前記フィルム把持部を前記支点部から離間させる向きにオフセットさせるオフセット機構と、を備え、前記フィルム把持部によって前記枚葉フィルムの外周縁部を把持したまま前記支点部に対してオフセットさせて前記枚葉フィルムに所要の張力を付与した状態で前記支点枠体と共に前記枚葉フィルムが前記モールド金型に搬送されることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、フィルム把持部によって枚葉フィルムの外周縁部を把持したまま支点部に対してオフセットさせて枚葉フィルムの全周にわたって所要の張力を付与した状態で支点枠体と共に枚葉フィルムがモールド金型に搬送されるので、枚葉フィルムに皺が発生することなくモールド金型に搬送して受け渡すことができる。よって、これにより枚葉フィルムをモールド金型のキャビティ凹部が形成された金型クランプ面に追従させて吸着保持させることができる。
【0011】
所要の張力を付与した枚葉フィルム上に、モールド成形用のモールド樹脂が搭載されて支点枠体と共に搬送されるようにしてもよい。
これにより、枚葉フィルム上にモールド樹脂を載せて搬入しても枚葉フィルムが撓むことがなく、樹脂漏れや樹脂の偏りが発生せず、モールド樹脂にエアの巻き込みも生じない。
【0012】
フィルム把持部は、矩形状の枚葉フィルムの各辺を各々把持することが好ましい。
これにより、矩形状の枚葉フィルムの対向する辺に設けられたフィルム把持部によって各々両側に向かって張力を付与することができ、皺の発生を効果的に防ぐことができる。
【0013】
フィルム把持部は、枚葉フィルムの各辺において複数の把持部に分割されて設けられていてもよい。
これにより、分割されたフィルム把持部の支点部からのオフセット量を変えることで、枚葉フィルムに発生した皺の向きや皺の大きさに応じて枚葉フィルムをツイストするように張力を加えることでフィルム固有の皺の発生を解消することができる。
【0014】
フィルム把持部は、枚葉フィルムの辺毎にオフセット量を調整可能に設けられていることが好ましい。
これによって、枚葉フィルムの辺毎にフィルム把持部のオフセット量を調節することできめ細かく皺の発生を抑えることができる。
【0015】
前記オフセット機構は、前記フィルム把持部を前記枠体に設けられた回転軸を中心に回転させることで、前記フィルム把持部を前記支点部から離間させるようにしてもよい。
これにより、フィルム把持部を回転軸を中心に回転させてフィルム把持部を支点部から離間させることで、枚葉フィルムの支点部回りの巻き付き量が変化して張力を調整することができる。特に、フィルム把持部の回転軸を中心とした回転により張力が調整できるので、フィルム搬送装置を小型化することができる。
【0016】
前記フィルム把持部を保持する回転部材を、前記回転軸を中心として前記支点部から離間させる方向のみ回転を許容するラチェット機構を備えることが好ましい。これによって、フィルム把持部を回転させた位置で留めることにより、枚葉フィルムに加えた張力を維持した状態で搬送することができる。
【0017】
樹脂モールド装置にあっては、上述したいずれかのフィルム搬送装置と、フィルム搬送装置をモールド金型に搬送するフィルムローダーと、を備えたことを特徴とする。
これにより、枚葉フィルムを搬送するフィルム搬送装置を用いることでフィルム使用量を減らしてランニングコスト低減を図り、大判サイズの成形品の成形品質の向上を図りかつ設置面積を抑制することが可能な樹脂モールド装置を提供することができる。
【0018】
枚葉フィルムが支点枠体と共にモールド金型に搬入される際に、フィルム把持部のオフセット量を増やしてオフセット機構による枚葉フィルムへの張力を更に強める張力付加機構を備えていることが好ましい。
これにより、枚葉フィルムをモールド金型に搬入する際に輻射熱により枚葉フィルムが伸びてしまうおそれがあるが、張力付加機構により再度枚葉フィルムの張力を強めることでモールド金型へセットする際に枚葉フィルムに皺の発生を防ぐことができる。
【0019】
また、モールド成形に用いる枚葉フィルムに張力を付与したままモールド金型に搬送するフィルム搬送方法においては、キャビティ凹部を囲む金型クランプ面に対応した所定形状の枠体に、前記枠体開口部を覆って保持される前記枚葉フィルムに支点部となる支点枠体の外側において前記枚葉フィルムの外周縁部をフィルム把持部で把持し、前記フィルム把持部によって前記枚葉フィルムの外周縁部を把持したまま前記支点部から離間させる向きにオフセットさせて前記枚葉フィルムに所要の張力を付与した状態で前記支点枠体と共に前記枚葉フィルムを前記モールド金型に搬送することを特徴とする。
【0020】
これにより、フィルム把持部によって枚葉フィルムの外周縁部を把持したまま支点部に対してオフセットさせて枚葉フィルムの全周にわたって所要の張力を付与した状態で枚葉フィルムがモールド金型に搬送されるので、枚葉フィルムに皺が発生することなくモールド金型に搬送して受け渡すことができる。よって、枚葉フィルム上にモールド樹脂を載せても樹脂の偏りが発生せずに搬送することができ、枚葉フィルムをモールド金型のキャビティ凹部が形成された金型クランプ面に追従させて吸着保持させることができる。
【発明の効果】
【0021】
上述したフィルム搬送装置を用いれは、枚葉フィルムに皺が発生することなく搬送してキャビティ凹部が形成された金型クランプ面に追従させて受け渡し、枚葉フィルム上にモールド樹脂を載せても樹脂の偏りが発生せずに搬送することができる。
また、上記フィルム搬送装置を備えた樹脂モールド装置においては、フィルム使用量を減らしてランニングコスト低減を図り、大判サイズの成形品の成形品質を向上させかつ設置面積を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係るフィルム搬送装置及びこれを備えた樹脂モールド装置の好適な実施の形態について添付図面と共に詳述する。以下では、ワークとして例えば各辺が600mm程度の矩形状ワークを用いるものとし、フィルムとしてはそれ以上の大きさの枚葉フィルムを用いて樹脂モールドする樹脂モールド装置を用いて説明する。勿論、ワークとして、上述したような大判のものだけでなく、300mm×100mm程度の比較的小さな短冊形状のワークであってもよい。尚、樹脂モールド装置は一例として下型を可動型、上型を固定型として説明するものとする。また、樹脂モールド装置は、型開閉機構を備えているが図示を省略するものとしモールド金型の構成を中心に説明する。
【0024】
先ず、樹脂モールド装置の概略構成について
図1を参照して説明する。この樹脂モールド装置では、制御部(図示せず)が後述する各部を制御して各種の動作を行う。本実施例におけるモールド装置は、ワーク処理ユニットUw、2台のプレスユニットUp、ディスペンスユニットUd(供給ユニット)が連結されており、装置内におけるワークWに対する樹脂モールドを自動的に行う構成である。
【0025】
ワーク処理ユニットUwは、例えば、ワーク供給部1、成形品収納部2、キュア炉3及びロボット搬送装置4を備えている。ワーク供給部1には、例えばワークWとして各辺が600mm程度の大きさの矩形パネル(基板、キャリア等)が収納されている。成形品収納部2には、後述するプレス部5において樹脂モールドされた成形品Mが収納される。キュア炉3は、後述するプレス部5で樹脂モールドされた成形品Mを炉内に設けた多段の棚に各別に収納してアフターキュアすることで樹脂パッケージ部を加熱硬化させる。ロボット搬送装置4は、これを取り囲んで配置された各部の間においてワークW及び成形品Mの受け渡しや搬送を行う。このロボット搬送装置4は、例えば、ワーク供給部1からワークWを取り出して供給し、成形品Mをキュア炉3へ搬送し、キュア炉3から成形品収納部2へ順次搬送し収納する。ロボット搬送装置4は、例えば垂直多関節型、水平多関節型、またはこれらを複合した多関節型のロボットが用いられ、ロボットハンド4aにワークWや成形品Mを吸着や把持により保持して搬送する。また、ワーク処理ユニットUwにおいて、成形品Mを冷却する冷却部や、成形品の外観検査などを行う検査部や、個々のワークWに紐付けられた成形条件を読み取るデータ読み取り部や、ワークW又は成形品Mの表裏を反転する反転部30をロボット搬送装置4の周囲に配置してもよい。例えば、反転部30は、ワーク供給部1においてワークWにおいて樹脂モールド成形する面(成形面)が上向きに供給されたときに、成形面を下面に向ける。また、反転部30は、樹脂モールド成形が完了した成形品Mを成形品収納部2に収納するまでに成形面が上向きとなるように反転する。
【0026】
プレスユニットUpにおけるプレス部5は、四隅に設けたポスト5aに対してプラテンを昇降させる公知の型開閉機構に開閉する圧縮成形用のモールド金型6(上型6A及び下型6B)を備えている。本実施例では、プレスユニットUpは2カ所に設けられているが、1カ所でもよく、3カ所以上設けてもよい。
【0027】
フィルムハンド13(フィルム搬送装置)は、ディスペンスユニットUdにおいてフィルム供給部8から供給された枚葉フィルムFに、ディスペンサー9よりモールド樹脂(例えば顆粒樹脂や粉末樹脂)が供給された状態でプレス部5のモールド金型6内に搬送される。フィルム供給部8には、長尺状のフィルムがロール状に巻かれたフィルムロール8aが設けられている。このフィルムロール8aよりフィルム端が引き出された状態で、任意のサイズの矩形状に切断(裁断)して枚葉フィルムFとしてステージ17上に準備する。枚葉フィルムFを後述するフィルムハンド13に所要の張力(テンション)を付与して支持した状態で、ディスペンサー9は枚葉フィルムF上に1回の樹脂モールドに必要なモールド樹脂R(顆粒樹脂)を供給する。尚、顆粒樹脂に替えて粉末樹脂、液状樹脂又はシート樹脂、若しくはこれらを組み合わせて用いてもよい。
【0028】
枚葉フィルムFは、耐熱性を有するもので、金型面より容易に剥離するものであって、柔軟性、伸展性を有するもの、例えば、PTFE、ETFE、PET、FEPフィルム、フッ素含浸ガラスクロス、ポリプロピレンフィルム、ポリ塩化ビニリジン等を主成分とした単層膜又は複層膜が好適に用いられる。
【0029】
パネルローダー10は、ロボット搬送装置4のロボットハンド4aからワークWを受け取ってプレス部5のモールド金型6(上型6A)に搬入する。また、パネルローダー10は、モールド金型6aから成形品Mを受け取ってロボット搬送装置4のロボットハンド4aへ受け渡す。パネルローダー10は、成形品Mをモールド金型6から取り出す際に、使用済みの枚葉フィルムFも吸着保持して取り出し、取り出された枚葉フィルムFはフィルム回収部12へ回収される。
【0030】
フィルムローダー11は、フィルムハンド13に所要の張力が付与されて保持した枚葉フィルムF及び該フィルムF上に供給されたモールド樹脂R(顆粒樹脂)を受け取ってモールド金型6(下型6B)へ搬送する。パネルローダー10及びフィルムローダー11は、装置の長手方向に沿って敷設された複数のガイドレール14に沿って往復移動するように設けられている。また、ガイドレール14上の位置から直交するように各部(例えばプレス部5)へ図示しないローダハンドが移動するようになっている。
【0031】
ここで、フィルムハンド13の構成について
図2及び
図3を参照して説明する。
図2(B)に示すように、フィルムハンド13は、後述する下型キャビティ凹部6Cを囲む下型クランプ面に対応した所定形状の枠体(例えば矩形枠体13a)を備えている。また、フィルムハンド13において支点部となって枚葉フィルムFに張力を付与する支点枠体13bが矩形枠体13aに沿って矩形状に設けられている(
図3参照)。支点部としては、支点枠体13bを設ける代わりに、矩形枠体13aの外側角部を用いてもよい。
【0032】
また、フィルムハンド13の外側において枚葉フィルムFの外周縁部を全周にわたって把持する複数のフィルムチャック13c(フィルム把持部)が設けられている。具体的には、
図2(B)に示すように、矩形状の枚葉フィルムFを把持して搬送するために、対向する辺において一対のフィルムチャック13c(フィルム把持部)が設けられる。一対のフィルムチャック13cは、開閉式のチャックが用いられ、矩形状の枚葉フィルムFの外周縁部を各辺において挟み込んで保持する。一対のフィルムチャック13cの長手方向両端は一対の回転レバー13d(回転部材)によって各々支持されている。一対の回転レバー13dは、矩形枠体13aにおいてフィルムチャック13cよりも内側に形成された回転軸13eを中心に回転可能に設けられている。このため、一対のフィルムチャック13cは、回転レバー13dにおいて回転軸13eとは反対側に設けられることになる。回転レバー13dは、支点枠体13bに対してオフセットさせる方向にのみ回転させるオフセット機構が設けられている。具体的には、
図3に示すように、フィルムチャック13cの回転軸13eにはラチェット歯とラチェット爪が噛み合うラチェット機構13fが設けられている。ラチェット機構13fは、フィルムチャック13cが回転軸13eを中心に所定の角度だけ支点枠体13bから離間する方向(
図2(C)の矢印方向)のみへ回転するのを許容する。これによって、フィルムチャック13cを一方向に回転させた所定回転位置で留めることにより、枚葉フィルムFに加えた張力を維持した状態で搬送することができる。なお、ラチェット機構13fに替えて、サーボモータやトルクモータのような駆動機構によって枚葉フィルムFに任意の張力を加え、その加えた張力を維持する構成とすることもできる。この場合は、ラチェット機構13fを設ける構成よりもフィルムハンド13が大型化しやすい反面、枚葉フィルムFに加える張力を随時調整することができる点で好ましい。
【0033】
図2(C)に示すように、一対のフィルムチャック13cによって枚葉フィルムFの外周縁部(4辺)を把持したまま、図示しない昇降駆動機構(シリンダ駆動、ソレノイド駆動、モータ駆動等)により昇降する押し上げピン15によって回転レバー13dを押し上げる。このとき回転レバー13dは回転軸13eを中心に回転してフィルムチャック13cを支点枠体13bに対して離間する向き(矢印方向)にオフセットさせる。これにより、フィルムハンド13の枠体開口部を覆う枚葉フィルムFの端部同士が支点枠体13bを介して引き離される量を増やして所要の張力を加えた状態で一体に保持される。尚、回転レバー13dをもとの位置に戻す場合には、再度押し上げピン15によって回転レバー13dを所定の角度まで押し上げるとラチェット機構13f(
図3参照)の噛み合いが解除されて回転レバー13dをもとの位置に戻すことができる。
【0034】
同図に示すように、フィルムチャック13cを回転軸13eを中心に回転させてフィルムチャック13cを支点枠体13bから離間させることで、枚葉フィルムFの端部同士が支点枠体13bを介して引き離される量が増加して張力を強めることができる。特に、四辺に配置したフィルムチャック13cの回転軸13eを中心とした各々の回転により枚葉フィルムFの張力がフィルムの辺毎に調整できるので、枚葉フィルムFに対して適切な張力を加えることが可能なフィルムハンド13を小型かつ簡易な構成とすることができる。
【0035】
この所要の張力を付与した枚葉フィルムF上に、ディスペンサー9(
図1参照)から1回分の樹脂モールドに必要なモールド樹脂R(顆粒樹脂)が例えばトラフ16(
図2(D)参照)を通じて供給されて、枚葉フィルムF上に偏ることなく一様に供給される(
図2(E)参照)。尚、矩形枠体13aの上部開口には、平面視矩形状の開口端部ほど口径が広がる傾斜部13gが形成されている。この傾斜部13gの内側にモールド樹脂Rを供給することで、モールド樹脂Rを任意の形状で枚葉フィルムF上に供給することができる。この場合、傾斜部13gにより、枚葉フィルムF上に供給されるモールド樹脂Rが矩形枠体13aの上に乗り上げてしまうことを防止する。なお、傾斜部13gを含め矩形枠体13aの内側を円形状にすることで、枚葉フィルムF上において円形領域内にモールド樹脂Rを供給することもできる。これによれば、部分的な構造を変更するだけで、外形円形又は外形矩形といったキャビティの形状に関わらず、同様の枚葉フィルムFの搬送構造を利用することができる。
【0036】
そして、
図2(F)に示すように、枚葉フィルムFにモールド樹脂Rが供給された状態で、フィルムローダー11によってフィルムハンド13(矩形枠体13a)がチャックされてモールド金型6へ搬送される。
【0037】
ここで、フィルムローダー11によって枚葉フィルムFがステージ17から持ち上げられるときに、張力が不十分であるとモールド樹脂Rの重量によって枚葉フィルムFが中央などで垂れ下がることがある。そこで、ステージ17に近接した位置にフィルム垂下検出部20を設けることができる。フィルム垂下検出部20としては、発光部と受光部とを備えてこれらの間の遮蔽状態や遮蔽位置を検出するレーザーセンサを備えた構成とすることができる。一例として、フィルムハンド13を挟む位置に、発光部と受光部を設けた構成とすることができる。また、フィルム垂下検出部20としては、ステージ17上の空間における遮蔽物を検出することで、フィルムハンド13を持ち上げたときに枚葉フィルムFが適切な位置から垂れ下がっているときに検出できる。フィルム垂下検出部20は、1方向における垂れ下がりを検出するように1組だけ設けてもよいし、
図3に示すように交差する2方向において検出するように2組設けてもよい。なお、フィルム垂下検出部20としては、枚葉フィルムFの垂れ下がりを検出できればどのような構成としてもよい。例えば、接触センサ(スイッチ)としてもよく、フィルムハンド13を所定の高さまで持ち上げたときに垂れ下がったフィルムが接触していることを検出するような構成とすることもできる。
【0038】
尚、
図3に示す矩形状の枚葉フィルムFの各辺を各々把持するフィルムチャック13cは、各辺において押し上げる量を均一とすることもあるいは異ならせることもできる。この場合、例えば枚葉フィルムFの辺ごとに設けられる押し上げピン15による押し上げ量を均一にすることで、回転軸13eを中心とした回転量に対応する張力を加えることができる。また、対向する辺における一対のフィルムチャック13cの組ごとに押し上げる量を異ならせることもできる。この場合、枚葉フィルムFの各辺の長さや、フィルムロール8aから引き出した方向などによるフィルムの伸び易さなどに応じて、フィルムチャック13cの組ごとに押し上げる量を異ならせることで、枚葉フィルムFの各辺に加えられる張力を均一にすることもできる。例えば、
図3に示すような横長のフィルムであれば、長手方向(同図の左右方向)に引っ張る2辺(右辺及び左辺)における一対のフィルムチャック13cの押し上げ量を、短手方向(同図の上下方向)に引っ張る2辺(上辺及び下辺)における一対のフィルムチャック13cの押し上げ量を異ならせればよい。即ち、長手方向のフィルムチャック13cの押し上げ量を、短手方向のフィルムチャック13cの押し上げ量よりも大きくすればよい。換言すれば、長い辺に対してはより多く引っ張ることで辺の長さによらず、均一に引っ張られた状態とすることができる。これによれば、長手方向及び短手方向の方向において枚葉フィルムFに加えられる張力を均等にすることができる。
【0039】
また、同図に示すように枚葉フィルムFを一辺ごとに一体的にチャックする場合に限らず、フィルムチャック13cが一辺において複数に分割されて設けられていてもよい。この場合には、枚葉フィルムFに発生する皺の状態(位置)により、辺の位置におけるフィルムチャック13cの回転量を変えて枚葉フィルムFをツイストするように張力を加えることで皺を伸ばした状態で保持することができる。例えば、部分的に張力が高まるとその位置以外に皺が生じることになる。このため、まず、均一にフィルムチャック13cを押し上げて張力を加えた後に、皺が生じたときには、その部分の張力を弱めるようにしたり、その部分以外の張力を高めたりするような構成とすることができる。さらに、フィルムチャック13cは、辺の延在方向に交差するように引っ張るために所定の長さで枚葉フィルムFの辺において把持する構成のみならず、枚葉フィルムFの角部において、中心から引き離す方向に引き伸ばすようにするために枚葉フィルムFの角部を把持するような構成としてもよい。
これにより、分割されたフィルムチャック13cの支点枠体13bからのオフセット量を変えることで、枚葉フィルムFに発生した皺の向きや皺の大きさに応じて枚葉フィルムFをツイストするように張力を加えることでフィルム固有の皺の発生を解消することができる。
【0040】
次に、プレス部5に備えたモールド金型6の構成について
図4を参照して説明する。本実施例は、圧縮成形用のモールド金型6を例示している。このモールド金型6は、任意の位置にヒータ(図示せず)が設けられることで、モールド樹脂Rを加熱硬化させてワークWを樹脂モールドし、成形品Mを製造する。上型6Aの上型クランプ面6aには、ワークWを吸着保持するため、エア吸着孔6b及びこれに連通するエア吸引路6cが形成されている。また、矩形状ワークWの外縁部にはワーク保持ピン6dが複数箇所で対向位置に設けられている。ワーク保持ピン6dは、ワークWの外周面を押圧保持する。ワーク保持ピン6dは円柱状のピンでも角柱状のピンでもよく、弾性体を介してワークWに押し当てる構成とするのが好ましい。また、ワーク保持ピン6dは、ワークWを吸着保持する際にワークWをセンタリングするガイドとしてもよい。このような構成によれば、例えば、ワークWの外周をL字の爪状のフックで保持する構成と比較して、キャビティの面積を広くすることができる。
【0041】
下型6Bは、下型ブロック6eに下型キャビティ底部を形成する下型キャビティ駒6fが一体に支持されている。下型キャビティ駒6fの周囲には下型キャビティ側部を形成する下型可動クランパ6gが下型ブロック6e上にコイルばね6hを介してフローティング支持されている。下型キャビティ駒6f及び下型可動クランパ6gによって、下型キャビティ凹部6Cが形成される。下型可動クランパ6gと下型キャビティ駒6fとの隙間は、シールリング6i(Oリング)が設けられてシールされている。また、下型可動クランパ6gには、枚葉フィルムFを下型キャビティ凹部6Cを含む下型面に吸着保持するためのエア吸引路6g1,6g2が各々設けられている。エア吸引路6g1は、下型キャビティ駒6fと下型可動クランパ6gとの隙間からフィルム内周側を吸着し、エア吸引路6g2は下型可動クランパ6gのクランプ面においてフィルム外周側を吸着するようになっている。これにより、枚葉フィルムFは下型キャビティ凹部6Cの凹形状に倣うように吸着される。尚、上型6Aと下型6Bとの間には、金型クランプ動作を開始すると、金型内に減圧空間を形成するための上下一対のクランプブロック(図示せず)が設けられていてもよい。
【0042】
また、下型6Bの下型可動クランパ6gの外側には、プッシャー6jが設けられている(張力付加機構)。このプッシャー6jは、枚葉フィルムFへの張力を更に強めるために設けられている。例えば、フィルムローダー11によって、枚葉フィルムFがフィルムハンド13と共に下型6Bに搬入される際に、下型6Bからの輻射熱によって枚葉フィルムFに伸びが生じて張力が低下してしまう。この場合、枚葉フィルムFの張力が低下してたるみが生じると、枚葉フィルムFの自重、又は、供給されたモールド樹脂Rの重量により、枚葉フィルムFの中央部が垂れ下がることになる。この場合、枚葉フィルムFが下型6Bに載置されたときに、枚葉フィルムFのたるみが皺となってしまう場合がある。また、枚葉フィルムFの中央部の垂れ下がりが大きくなると、モールド樹脂Rが中央に集まってしまって、キャビティ内において均一にモールド樹脂Rを供給することが困難となってしまうことが想定される。このため、プッシャー6jは、下型6Bの回転レバー13dに対応する位置に設けられ、例えば昇降駆動機構(例えばシリンダ駆動、ソレノイド駆動、モータ駆動等の駆動機構)により昇降させることで、回転レバー13dを回転可能に構成される。このプッシャー6jは、一対のフィルムチャック13cのオフセット量を増やして枚葉フィルムFへの張力を更に強めるために設けられている。また、このプッシャー6jは、ラチェット機構13fの解除にも用いることができる。
【0043】
フィルムローダー11によって、フィルムハンド13とともに枚葉フィルムFが下型6B(下型可動クランパ6g)に載置されると、回転レバー13dの直下に配置されたプッシャー6jが作動して回転レバー13dをフィルムチャック13cのオフセット量を増やす向きに回転させる。これにより、金型クランプ前に枚葉フィルムFの張力が低下するのを防止可能となっている。勿論、枚葉フィルムFが下型6Bに近づいたときにフィルムチャック13cのオフセット量を増やす向きに回転させることも可能である。
【0044】
次にモールド金型6に対するフィルムハンド13による枚葉フィルムFの搬送準備動作の一例について
図2を参照して説明する。
図2(A)において、フィルム供給部8(
図1参照)においてフィルムロール8aからフィルム端をステージ17上に引き出された長尺状のフィルムFに対して、カッター18で所定のサイズに切断する。本実施例では、下型可動クランパ6gの外形よりも大きくなるように切断する。
次いで
図2(B)において、切断された枚葉フィルムFにフィルムハンド13を重ね合わせると共に、フィルムチャック13cによって、枚葉フィルムFの各辺外周縁部を挟み込む。
【0045】
次に、
図2(C)において、図示しない駆動源を作動させて押し上げピン15を押し上げ、回転レバー13dを回転軸13eを中心に回転させる。回転方向は、フィルムチャック13cが支点枠体13bよりオフセット(離間する)させる向きである。これにより、フィルムチャック13cによって枚葉フィルムFが両側より引っ張られるため、枚葉フィルムFの端部が支点枠体13bを介して引き離される量、即ち枚葉フィルムFが巻き取られる角度が増えて、支点枠体13b間でフィルム張力が増加する。また、このとき、
図3に示すラチェット機構13fが作動して、回転レバー13dは回転した位置で保持されるため、矩形枠体13aの枠体開口部を覆うフィルム張力を強めた状態で維持される。
【0046】
このように、フィルムチャック13cを支点枠体13b(支点部)に対して上下方向に移動させ、枚葉フィルムFを絞るような構成とすることで、例えば、フィルムチャック13cを横方向に引っ張って張力を加える構成と比較して、枚葉フィルムFに対して効果的に張力を加えることができる。また、枚葉フィルムFに対して張力を加える装置構成を平面視で小型化することができる。即ち、枚葉フィルムFが大判化すればするほど、同等の張力を加えるためには、引っ張る量は大きくなることになるが、フィルムチャック13cを横方向に引っ張る場合には、その引っ張る量に応じた面積を装置内に確保しなければならず、装置の大型化は免れない。これに対して、上述した本実施例における構成によれば、枚葉フィルムFへの張力を高めるために引っ張る量を大きくしたとしても装置面積が大きくなることはなく、装置の大型化を効果的に抑制できる。なお、回転軸13eを中心にフィルムチャック13cを回転可能とし、回転レバー13dのフィルムチャック13c側を押し上げピン15により押し上げて回転させているため、小さな力で枚葉フィルムFへ張力を加えることができる。
【0047】
図2(D)において、ディスペンサー9(
図1参照)より顆粒樹脂Rを矩形体13aの開口を閉止する枚葉フィルムF上にトラフ16を介して一様に供給する。顆粒樹脂Rは1回分の樹脂モールド動作に必要な量が供給される。顆粒樹脂Rを枚葉フィルムFに供給した状態を
図2(E)に示す。
【0048】
次いで、フィルムローダー11を、フィルムハンド13の上部に移動させ、
図2(F)に示すように、顆粒樹脂Rが供給されたフィルムハンド13を、フィルムローダー11が矩形枠体13aをチャックして持ち上げる。この際に、例えば供給したモールド樹脂Rの重量が過大で枚葉フィルムFに加えた張力では適切にモールド樹脂Rを搬送することができないときには枚葉フィルムFが中央などで垂れ下がることがなる。このため、フィルムハンド13を任意の検出位置まで持ち上げた状態で動作を停止させ、フィルム垂下検出部20によりステージ17上の空間における遮蔽状態を検出することができる。即ち、枚葉フィルムFの張力が十分でなく枚葉フィルムFが中央などで垂れ下がっているときには、フィルムハンド13を下ろして再度張力を加えるように押し上げピン15を動作させる。このような動作を必要に応じて適宜繰り返すことで、適切な張力を加えたうえで枚葉フィルムFを搬送することができる。
【0049】
なお、ワークWにおけるチップの搭載状態等によっては、枚葉フィルムF上においてモールド樹脂Rを偏らせて供給することが想定される。この場合、枚葉フィルムFにおいて中央でない部分(偏った位置)が垂れ下がることが想定される。そこで、
図3に示すように交差する2方向においてフィルム垂下検出部20を2組設けたときには、枚葉フィルムFにおいて中央でない部分が垂れ下がったときでも、その位置における枚葉フィルムFの垂れ下がった状態を検出することができる。これにより、適切に枚葉フィルムFの垂れ下がった状態を検出して、適切な張力を加えてから枚葉フィルムFを搬送することができる。
【0050】
続いて、フィルムローダー11がフィルムハンド13を引き取って、
図1のガイドレール14に沿って搬送し、所定のプレス部5のモールド金型6(下型6B)に搬入する。ここで、プレス部5におけるポスト5aの隙間を通じて、フィルムハンド13をモールド金型6内に供給することになる。この場合、フィルムハンド13では、フィルムチャック13cを横方向に引っ張らず、フィルムチャック13cを支点枠体13b(支点部)に対して上下方向に移動させて張力を加える構成になっており小型に構成できるため、限られたポスト5aの隙間を通じてフィルムハンド13をモールド金型6に搬入することができる。なお、ポスト5aを用いずにプレス部5においてプラテンの側面を枠板により保持するようなプレス構造であっても同様の効果を奏することができる。
【0051】
上記フィルムハンド13を用いることで、所定の張力を保持しながら搬送できるため、枚葉フィルムFに皺が発生することなくモールド金型6に受け渡すことができる。
【0052】
次に、フィルムハンド13によるモールド金型6への枚葉フィルムF及びモールド樹脂Rの供給動作について
図5及び
図6を参照して説明する。
図5及び
図6は下型6Bのみを図示して説明する。
図5(A)において、フィルムハンド13を保持したフィルムローダー11が型開きしたモールド金型6の下型6Bの上方に進入して位置合わせを行う。枚葉フィルムFの顆粒樹脂Rの搭載面が下型キャビティ駒6fの上面と重なり、矩形枠体13aが下型可動クランパ6gと重なるように位置合わせを行う。
【0053】
次に
図5(B)に示すように、フィルムローダー11を下降させて、矩形枠体13aが、下型可動クランパ6gに当接するまで下降する。このとき、下型6に設けられたプッシャー6jは、回転レバー13dに対応した位置に配置されている。
【0054】
枚葉フィルムFが下型6Bに近づくと、下型6Bからの輻射熱により枚葉フィルムFが伸び、上述したようなフィルムの垂れ下がりといった問題が発生するおそれがある。このため、
図5(C)に示すように、図示しない駆動源を作動させてプッシャー6jを押し上げて、回転レバー13dを回転軸13eを中心にさらに回転させる。回転方向は、フィルムチャック13cが支点枠体13bよりオフセット(離間する)向きである。これにより、フィルムチャック13cによって枚葉フィルムFが両側より更に引っ張られるため、フィルムFの支点枠体13bに対する巻き取られる角度が更に増えて、換言すれば、フィルムチャック13cに挟持された枚葉フィルムFの端部が支点枠体13b(支点部)からオフセット(離れる)ことで、支点枠体13bの内側において枚葉フィルムFが引っ張られ、支点枠体13b間でフィルム張力が増加する。また、このとき、
図3に示すラチェット機構13fが作動して、回転レバー13dは回転した位置で保持されるため、矩形枠体13aの開口を閉止するフィルム張力を強めた状態で維持される。
【0055】
図6(D)において、下型可動クランパ6gに設けられたエア吸引路6g1,6g2からエア吸引動作を開始して、枚葉フィルムFの内外周を下型キャビティ凹部6Cに沿わせて吸着保持させる。枚葉フィルムFはフィルム張力が強められた状態で吸着保持されるので皺が発生を効果的に防止することができる。
【0056】
次に
図6(E)において、図示しない駆動源を作動させてプッシャー6jを一旦上に押し上げてから下方に退避させると、ラチェット機構13f(
図3参照)が解除されるため、回転レバー13dが支点枠体13bに近づく向き(矢印方向)に回転する。このとき、フィルムチャック13cは下型可動クランパ6gのクランプ面と平行となる水平姿勢まで戻る。この状態で、枚葉フィルムFの外周縁部をチャックするフィルムチャック13cのチャックを解除する。これにより、枚葉フィルムFは顆粒樹脂Rと共に下型6Bに吸着保持したまま受け渡すことができる。なお、これらの動作の際には、枚葉フィルムFは下型可動クランパ6gでの吸着も含めて下型キャビティ凹部6Cに吸着保持された状態となっているため、チャックを解除したとしても枚葉フィルムFにおける吸着保持状態が損なわれることはない。
【0057】
次いで、
図6(F)に示すように、フィルムローダー11がフィルムハンド13(矩形枠体13a)をチャックしたまま上方に移動しプレス部5から退避する。以上により、枚葉フィルムFと顆粒樹脂Rの下型6Bへの供給工程は完了となる。
【0058】
以上のモールド金型6への枚葉フィルムFの供給動作によれば、枚葉フィルムFを皺なくモールド金型6に供給することができる。また、枚葉フィルムFをモールド金型6に搬入する際に輻射熱により枚葉フィルムFが伸びてしまうおそれがあるが、プッシャー6j(張力付加機構)により再度張力を強めることでモールド金型6へ枚葉フィルムFセットする際の皺の発生を防ぐこともできる。
【0059】
次に、
図5及び
図6に続く樹脂モールド動作の一例について
図7を参照して説明する。
図7(A)において、下型6Bには、前述したように、フィルムローダー11によって枚葉フィルムF及び顆粒樹脂Rが搬入されているものとする。
図7(A)において、上型6Aには、パネルローダー10(
図1参照)により、例えば各辺が600mmの大判サイズのワークW(矩形パネル,矩形基板等)が搬入され、上型クランプ面6aに設けられたエア吸着孔6b及びエア吸引路6cによって吸着保持される。このとき、矩形状ワークWの外周面が、複数箇所で対向位置に設けられているワーク保持ピン6dによってワークWの外周面を押圧保持することで上型6Aに受け渡される。また、矩形状のワークWは、ワーク保持ピン6dによってワークWの外周面が均等に押圧されることで、ワーク保持ピン6dによってセンタリングされる。なお、枚葉フィルムF及び顆粒樹脂Rの搬入及びワークWの搬入は同時に行っても良いし、ワークWを搬入した後で枚葉フィルムF及び顆粒樹脂Rを搬入してもよい。
【0060】
次いで、
図7(B)に示すように、モールド金型6を型閉じする。例えば下型6Bを上昇させて上型6Aとの間でワークWをクランプする。尚、上型6Aと下型6BがワークWをクランプする前に、上型6Aと下型6Bの間の金型空間が閉止されて減圧空間を形成され、減圧雰囲気下でモールド成形するようになっているのが好ましい。
【0061】
続いて、モールド金型6をさらに型締めすることで、コイルばね6hが押し縮められて、下型可動クランパ6gが下型ブロック6eに近づくように移動する。これにより、下型キャビティ凹部6Cにおけるキャビティの高さ(深さ)を低く(浅く)し、下型キャビティ凹部6C内で溶融した顆粒樹脂RにワークWを浸漬させると共に樹脂圧を加えることで加熱加圧する。
図7(C)は、モールド金型6の型締め動作が完了して、下型キャビティ凹部6C内で溶融した顆粒樹脂RにワークWを浸漬させて加熱加圧して硬化させている(圧縮成形)状態を示す。
【0062】
モールド金型6における加熱硬化が終了すると、モールド金型6の型開きを行う。ここで、上型6Aの上型クランプ面6aに対する成形品Mの吸着保持と、枚葉フィルムFの下型キャビティ凹部6Cを含む下型クランプ面への吸着保持を維持したまま、型開きが行われる。これにより、
図7(D)に示すように、型開きした状態において、成形品Mは上型6Aの上型クランプ面6aに吸着保持された状態となり、枚葉フィルムFは下型キャビティ凹部6Cを含む下型クランプ面に吸着保持された状態となる。このように、成形品Mと、使用後の枚葉フィルムFとを別個の金型に保持した状態とすることで、これらをプレス部5から取り出しそれぞれの収納・収容先に搬送するうえで工程を簡素化することができる。
【0063】
続いて、
図1において、成形品Mは上型6Aより吸着を解除されてパネルローダー10(上面側)に受け渡される。また、使用済み枚葉フィルムFは下型6Bより、パネルローダー10(下面側)によって受け渡される。このとき、成形品Mを上型クランプ面6aからパネルローダー10に受け渡すため、エア吸着孔6bより圧縮空気を噴出させると共に、枚葉フィルムFを下型面からパネルローダー10に受け渡すため、エア吸引路6g1,6g2より圧縮エアを噴出させることが好ましい。成形品Mはパネルローダー10からロボット搬送装置4のロボットハンド4aに受け渡される。使用済み枚葉フィルムFは、パネルローダー10からフィルム回収部12へ排出されて回収される。ロボットハンド4aは、成形品Mを保持して、所定のキュア炉3へ搬入する。キュア炉3において成形品Mのアフターキュアが行われる。続いて、ロボットハンド4aは、キュア炉3から成形品Mを取り出すことで、ワークWに対する全ての工程が完了して成形品Mの製造工程が完了する。続いて、成形品Mは、成形品収納部2へ搬入され、成形品Mが収納される。
【0064】
このように、本実施例によれば、上述した枚葉フィルムFを搬送するフィルムハンド13を用いることで、フィルム使用量を減らしてランニングコスト低減を図り、大判サイズの成形品の成形品質を向上させかつ設置面積を抑制することができる。
【0065】
次にフィルム搬送装置の他例について
図8及び
図9を参照して説明する。
上述した実施形態は、矩形状ワークWを矩形状の枚葉フィルムFを用いて樹脂モールドする場合について説明したが、円形状のワークW(例えば半導体ウエハや円状または環状キャリア等)を樹脂モールドするために円形状に供給したモールド樹脂Rを矩形状の枚葉フィルムFと共に搬送する場合について説明する。
図9において、フィルムハンド13は、一対の円環状のフィルムチャック19aと該フィルムチャック19aを保持するチャック保持部19bと、該チャック保持部19bと一体に組み付けられたスライダー19cと、矩形状の枚葉フィルムFに枠体開口部が覆われる環状の支点枠体19dとを備えている。
【0066】
支点枠体19dには、その上端部に枚葉フィルムFより外形の大きいフランジ部19eが形成されている。支点枠体19dでは、その下端外側角部が枚葉フィルムFに対して張力を加えるときに支点となる外形円形状の支点部19fとなる。支点枠体19dの上部開口には、平面視円形状の開口端部ほど口径が広がる傾斜部19gが形成されている(
図9参照)。尚、支点枠体19dの下端部に支点部19fに替えて環状の支点枠体を別途設けてもよい。また、フランジ部19eにはスライダー19cが貫通してスライド可能に連繋している。スライダー19cにはラチェット機構が設けられている。ラチェット機構は、スライダー19cがフランジ部19eに対して所定高さまで押し上げる方向のみの移動を許容する。これにより、枚葉フィルムFに対する張力を維持可能になっている。このスライダー19c及びチャック保持部19bは、支点枠体19dの周囲に例えば4か所で対向する位置に設けられている。尚、スライダー19c及びチャック保持部19bは、4か所より多く設けてもよい。また、スライダー19cとしては、チャック保持部19bとフランジ部19eとを貫通するように垂直に設けたねじ軸を回転させることで、チャック保持部19b(換言すればフィルムチャック19)を昇降可能とする構成とすることもできる。
【0067】
フィルムハンド13におけるモールド樹脂Rと枚葉フィルムFの供給動作の一例について
図8を参照して説明する。
図2(A)と同様に、フィルム供給部8(
図1参照)においてフィルムロール8aからフィルム端をステージ17上に引き出された長尺状のフィルムFに対して、カッター18で所定のサイズ(例えば各辺が800mm)に切断して、枚葉フィルムFを準備する。続いて、枚葉フィルムFの上下から一対の環状フィルムチャック19aを重ね合わせてクランプした状態とする。この場合、例えばステージ17の外側に下側の環状フィルムチャック19aを準備した状態で、フィルムFを供給し上側の環状フィルムチャック19aを重ね合わせる。続いて、
図8(A)に示すように、切断された枚葉フィルムFにフィルムハンド13の支点枠体19dを重ね合わせると共に、フィルムチャック19aを枚葉フィルムFの外周縁部を径方向に対向する位置においてチャック保持部19bで合計4か所挟み込む(
図9参照)。
【0068】
次に
図8(B)において、図示しない駆動源を作動させて押し上げピン15を押し上げ、スライダー19c及びチャック保持部19bを支点枠体19dに対して上昇させる。これにより、円環状のフィルムチャック19aによって枚葉フィルムFの全周が引っ張られ、枚葉フィルムFの円形の支点部19fに対して引き離される。換言すれば、円環状のフィルムチャック19aが円形の支点部19fに対してオフセットする。これにより、円形の支点部19fに形成された円形の領域においてフィルム張力が増加する。この場合、上述した実施例とは異なる点として、円形の支点部19fの内側において全周に同様の張力が加えられることになる。また、このとき、スライダー19cとフランジ部19eとの間でラチェット機構(図示せず)が作動して、フィルムチャック19aは上昇した位置で保持される。このため、支点枠体19dの枠体開口部を覆う枚葉フィルムFに所要に張力を付与した状態で維持される。
【0069】
図8(B)において、ディスペンサー9(
図1参照)よりモールド樹脂R(顆粒樹脂)を支点枠体19dの枠体開口部を覆う枚葉フィルムF上にトラフ16を介して一様に供給する。この場合、例えばトラフ16からモールド樹脂Rを投下する動作を所定方向に所定距離だけ移動させることで帯状に供給する動作を繰り返して行うことで、複数の帯状の樹脂供給領域が並べられて組み合わされることで円形の領域に覆うような樹脂供給領域が形成される。なお、
図9に示すように、支点枠体19dの上部開口には平面視円形状の開口端部ほど口径が広がる傾斜部19gが形成されることで、隙間無く全面にモールド樹脂Rを供給することができる。
【0070】
顆粒樹脂Rを枚葉フィルムFに供給されたフィルムハンド13は、
図8(C)に示すようにフィルムローダー11によって支点枠体19dがチャックされてプレス部5のモールド金型6へ搬送される。この場合、枚葉フィルムFは支点部19f間で所要の張力を付与された状態で保持されているため、枚葉フィルムFの撓みを効果的に防止することができる。また、円形状のワークWを樹脂モールドするため矩形状の枚葉フィルムF上に円形状にモールド樹脂Rを供給して搬送することができるため、円形状のワークWを樹脂モールドする場合であっても、所要のサイズで矩形状にフィルムを切断するだけで枚葉フィルムFを簡易に準備することができる。
【0071】
次に、フィルムハンド13の他例について
図10を参照して説明する。
図2(B)と同一部材には同一番号を付して説明を援用するものとする。同図に示すフィルムハンド13は、ガイド部材13h1を構成するフィルムハンド13の内側の部分が枚葉フィルムF側に弱く押し付けることで、フィルムハンド13と枚葉フィルムFとの隙間にモールド樹脂Rが入り込むのを防止することが可能となっている。
【0072】
具体的には、
図10に示すように、矩形枠体13aの内周面側には、内側に設けた可動部材13h2と外側に設けたガイド部材13h1とを組み合わせて組み付けられている。ガイド部材13h1には径方向内側に支持部材13iが突設されている。可動部材13h2のガイド部材13h1との重なり面は、中空にくり抜かれた収容部13jが形成されている。支持部材13iは、収容部13j内に収容されている。支持部材13iと可動部材13h2の下端部に設けたフィルム押圧部13kとの間には、押圧ばね13mが設けられている。この押圧ばね13mが弾装されていることで、可動部材13h2をガイド部材13h1に対して下方に突出する向きに常時付勢している。
【0073】
これにより、矩形枠体13aの枠体開口部(下端開口)を覆う枚葉フィルムFに顆粒樹脂Rを載せたときに、枚葉フィルムFに加えた張力が樹脂の重量に負けて垂れ下がり、微小な隙間が枚葉フィルムF上に開いたとしても、可動部材13h2がガイド部材13h1に対して突出するように移動して枚葉フィルムF上における隙間を埋めるように作用するため、例えば顆粒状のようなモールド樹脂Rが隙間に入り込んでしまうことを効果的に防止できる。
【0074】
また、上述した実施形態は、モールド金型6の下型キャビティ凹部6Cが形成された下型クランプ面に、枚葉フィルムFを搬送して受け渡す場合について説明したが、上型キャビティ凹部が形成された上型クランプ面に対して枚葉フィルムFを搬送して受け渡すようにしてもよい。この場合にも、枚葉フィルムFの使用量を削減してランニングコストを低減することができる。同様に、下型キャビティ凹部が形成された下型クランプ面に対して枚葉フィルムFのみを搬送して受け渡すようにしてもよい。さらに、上型と下型との両方に同様を用いて枚葉フィルムFを供給してもよい。
また、モールド金型6は圧縮成形用の金型を用いて説明したが、トランスファ成形用の金型であってもよい。
【0075】
また、上述したフィルムハンド13,19は、適宜、外形円形状や外形矩形状といった任意形状のワークWを樹脂モールドするために用いることができる。例えば、フィルムハンド19の構成を用いて外形矩形状のワークWの樹脂モールドするために、上述した構成では円形または環状に構成した各部を矩形状とすることで、モールド樹脂Rを矩形状に供給して、矩形状のキャビティにおいて矩形状のワークWに対してモールド成形することもできる。
【0076】
また、上述したようなフィルムハンド13,19によれば、モールド金型6における輻射熱によって伸びた枚葉フィルムFに張力を追加で加える構成のほか、モールド金型6に供給する前に追加で加える構成とすることもできる。この場合、例えば搬送の際の雰囲気の流動により粉末状の樹脂が撒き上げられ飛散するおそれのある粉末樹脂のような搬送が困難な樹脂を予め予熱してから搬送する必要があるようなときでも、モールド樹脂Rを供給して予熱したときに枚葉フィルムFに張力を加えることができれば、その予熱による枚葉フィルムFたるみを解消してから搬送することができる。
【0077】
また、ディスペンスユニットUdは、上述したように樹脂モールド装置に組み込んで用いることもできるが、それ単体としても用いることができる。この場合、ディスペンスユニットUdにおいて所定の張力が加えられた枚葉フィルムFを保持するフィルムハンド13を準備し、別途設けたプレスユニットUpに対して、フィルムハンドごと供給する工程が考えられる。このような場合においても、上述したようなディスペンスユニットUdとフィルムハンド13とを用いた効果を奏することができる。
【0078】
また、例えばワークW又は成形品Mの表裏を反転する反転部30を用いて、ワークWの両面に樹脂モールド成形してもよい。この場合、ワークWの一方の面に樹脂モールド成形をした後にワーク処理ユニットUwに戻し、成形品Mを反転部30で反転させてからワークW(成形品M)の他方の面に樹脂モールド成形をしてもよい。また、反転部30に替えて、ロボットハンド4aを反転可能なロボット搬送装置4とすることもできる。