(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-71034(P2017-71034A)
(43)【公開日】2017年4月13日
(54)【発明の名称】チャック装置及び旋盤
(51)【国際特許分類】
B23B 31/30 20060101AFI20170324BHJP
B23B 31/36 20060101ALI20170324BHJP
【FI】
B23B31/30 A
B23B31/36 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2015-200780(P2015-200780)
(22)【出願日】2015年10月9日
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】冨田 研一
【テーマコード(参考)】
3C032
【Fターム(参考)】
3C032KK11
3C032NN03
(57)【要約】
【課題】メンテナンスの回数の低減及びワークの確実なチャックの両方を実現することができるチャック装置、及びそのようなチャック装置を備える旋盤を提供する。
【解決手段】チャック装置10は、軸線L回りに配置された複数の爪本体11と、複数の爪本体11のそれぞれを軸線Lに対して進退させる進退駆動機構と、複数の爪本体11のそれぞれにおいて軸線L回りに配置され、軸線Lに対して進退可能となるように複数の爪本体11のそれぞれに設けられた複数の爪部材15と、複数の爪本体11のそれぞれに設けられ、複数の爪部材15のそれぞれが軸線L側とは反対側に押圧された場合に複数の爪部材15のそれぞれに対して軸線L側に均一な圧力を作用させる非圧縮性流体回路20と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸線回りに配置された複数の爪本体と、
複数の前記爪本体のそれぞれを前記軸線に対して進退させる進退駆動機構と、
複数の前記爪本体のそれぞれにおいて前記軸線回りに配置され、前記軸線に対して進退可能となるように複数の前記爪本体のそれぞれに設けられた複数の爪部材と、
複数の前記爪本体のそれぞれに設けられ、複数の前記爪部材のそれぞれが前記軸線側とは反対側に押圧された場合に複数の前記爪部材のそれぞれに対して前記軸線側に均一な圧力を作用させる非圧縮性流体回路と、を備える、チャック装置。
【請求項2】
複数の前記爪部材のそれぞれは、前記軸線側に所定量進出したとき、又は前記軸線側から所定量退避したときに、前記爪本体に当接するストッパを有する、請求項1記載のチャック装置。
【請求項3】
複数の前記爪本体のそれぞれに、複数の前記爪部材のそれぞれに対応するように設けられ、複数の前記爪部材のそれぞれに対して前記軸線側又はその反対側に付勢力を作用させるコイルスプリングを更に備える、請求項1又は2記載のチャック装置。
【請求項4】
複数の前記爪本体のそれぞれに設けられた前記非圧縮性流体回路は、互いに接続されている、請求項1〜3のいずれか一項記載のチャック装置。
【請求項5】
前記進退駆動機構は、円筒状のワークの外周面に複数の前記爪部材のそれぞれが押圧されるように複数の前記爪本体のそれぞれを前記軸線側に進出させる、請求項1〜4のいずれか一項記載のチャック装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項記載のチャック装置を備える、旋盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャック装置及び旋盤に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の軸線回りに配置された複数の爪本体と、各爪本体を軸線に対して進退させる進退駆動機構と、各爪本体に揺動可能に設けられた一対の爪部材と、を備えるチャック装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなチャック装置は、例えば、旋盤において、薄肉の円筒状のワーク、断面形状が非真円のワーク等をチャックするために用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−48012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなチャック装置では、メンテナンスを頻繁に実施しないと、切屑等の影響によって一対の爪部材の揺動動作が阻害され、ワークの確実なチャックが妨げられるおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、メンテナンスの回数の低減及びワークの確実なチャックの両方を実現することができるチャック装置、及びそのようなチャック装置を備える旋盤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のチャック装置は、所定の軸線回りに配置された複数の爪本体と、複数の爪本体のそれぞれを軸線に対して進退させる進退駆動機構と、複数の爪本体のそれぞれにおいて軸線回りに配置され、軸線に対して進退可能となるように複数の爪本体のそれぞれに設けられた複数の爪部材と、複数の爪本体のそれぞれに設けられ、複数の爪部材のそれぞれが軸線側とは反対側に押圧された場合に複数の爪部材のそれぞれに対して軸線側に均一な圧力を作用させる非圧縮性流体回路と、を備える。
【0007】
このチャック装置では、爪本体を軸線側に進出させて、当該爪本体に設けられた複数の爪部材のそれぞれをワークの外周面に押圧させると、複数の爪部材のそれぞれがワークの外周面の形状に応じて進退し、複数の爪部材のそれぞれに非圧縮性流体回路によって均一な圧力が作用させられる。また、爪本体において複数の爪部材の揺動動作を伴わないため、切屑等の影響を受け難い。よって、このチャック装置によれば、メンテナンスの回数の低減及びワークの確実なチャックの両方を実現することができる。
【0008】
本発明のチャック装置では、複数の爪部材のそれぞれは、軸線側に所定量進出したとき、又は軸線側から所定量退避したときに、爪本体に当接するストッパを有してもよい。これにより、ワークをチャックしていないときに爪本体から複数の爪部材が脱落するのを防止することができる。
【0009】
本発明のチャック装置は、複数の爪本体のそれぞれに、複数の爪部材のそれぞれに対応するように設けられ、複数の爪部材のそれぞれに対して軸線側又はその反対側に付勢力を作用させるコイルスプリングを更に備えてもよい。これにより、ワークをチャックしていないときに爪本体における所定の初期位置に複数の爪部材を位置させることができる。
【0010】
本発明のチャック装置では、複数の爪本体のそれぞれに設けられた非圧縮性流体回路は、互いに接続されていてもよい。これにより、ワークをチャックしているときに全ての爪部材に均一な圧力が作用させられるため、ワークのより確実なチャックを実現することができる。
【0011】
本発明のチャック装置では、進退駆動機構は、円筒状のワークの外周面に複数の爪部材のそれぞれが押圧されるように複数の爪本体のそれぞれを軸線側に進出させてもよい。これにより、円筒状のワークが薄肉であったとしても、当該ワークを確実にチャックすることができる。
【0012】
本発明の旋盤は、上述したチャック装置を備える。この旋盤では、上述したように、メンテナンスの回数の低減及びワークの確実なチャックの両方を実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、メンテナンスの回数の低減及びワークの確実なチャックの両方を実現することができるチャック装置、及びそのようなチャック装置を備える旋盤を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態の旋盤のチャック装置の正面図である。
【
図2】
図1のII−II線に沿っての断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1に示されるように、旋盤1は、ワークWをチャックするチャック装置10を備えている。図示は省略されているが、旋盤1は、ワークWを切削する複数の切削工具を保持する保持台等を更に備えている。なお、ワークWは、例えば円筒状の形状を呈している。
【0017】
チャック装置10は、軸線Lを中心線とする主軸2の一端に取り付けられている。主軸2は、旋盤1に設けられた主軸台3において複数の軸受4によって回転可能に支持されている。主軸2は、プーリ5及びベルト6を介してモータ(図示省略)によって回転させられる。
【0018】
チャック装置10は、軸線L周りに配置された複数の爪本体11を備えている。各爪本体11には、主軸2の内部を貫通したチャックドローバ12の一端がリンク機構等の運動変換機構13を介して連結されている。チャックドローバ12の他端は、チャックシリンダ14のピストン14aに連結されている。各爪本体11は、チャックシリンダ14によってチャックドローバ12が軸線Lに沿って進退させられることで、径方向(軸線Lに垂直な方向)に沿って、軸線Lに対して進退させられる。チャック装置10では、チャックドローバ12、運動変換機構13及びチャックシリンダ14が、各爪本体11を軸線Lに対して進退させる進退駆動機構として機能する。
【0019】
図2に示されるように、複数の爪本体11は、軸線L回りに等角度間隔で配置されている。一例として、チャック装置10では、3つの爪本体11が軸線L回りに120度間隔で配置されている。
【0020】
各爪本体11には、非圧縮性流体回路20が設けられている。非圧縮性流体回路20は、複数の圧力室21、及び接続路22を有している。非圧縮性流体回路20は、油圧回路であり、複数の圧力室21、及び接続路22には、オイルOが封入されている。複数の圧力室21は、軸線L回りに配置され且つ軸線L側に開口するように、爪本体11に設けられている。接続路22は、複数の圧力室21を互いに接続するように、爪本体11に設けられている。爪本体11における各圧力室21の底部には、径方向に沿って延在する貫通孔23が設けられている。一例として、チャック装置10では、各爪本体11において、2つの圧力室21が軸線L回りに60度間隔で配置されている。
【0021】
各爪本体11には、複数の爪部材15が設けられている。複数の爪部材15は、複数の圧力室21に対応するように、軸線L回りに配置されている。一例として、チャック装置10では、各爪本体11において、2つの爪部材15が軸線L回りに60度間隔で配置されている。各爪部材15は、先端部15a、本体部15b、延在部15c及びストッパ15dを有している。
【0022】
本体部15bは、圧力室21における軸線L側の領域に配置されている。本体部15bは、当該領域の内面に対して径方向に沿って摺動可能である。本体部15bの外面と圧力室21の内面との間には、Oリング16及びダストシール17が配置されている。Oリング16は、圧力室21内からのオイルOの漏れを防止する。ダストシール17は、Oリング16よりも軸線L側の位置において、圧力室21内へのダストの侵入を防止する。
【0023】
先端部15aは、本体部15bにおける軸線L側の端部に設けられている。先端部15aは、径方向に沿って爪本体11から軸線L側に突出している。先端部15aは、ワークWに当接する部分であり、例えばスパイク形状を呈している。
【0024】
延在部15cは、本体部15bにおける軸線L側とは反対側の端部に設けられている。延在部15cは、圧力室21における軸線L側とは反対側の領域、及び貫通孔23を介して、径方向に沿って爪本体11から軸線L側とは反対側に突出している。延在部15cは、貫通孔23の内面に対して径方向に沿って摺動可能である。延在部15cの外面と貫通孔23の内面との間には、Oリング18が配置されている。Oリング18は、圧力室21内からのオイルOの漏れを防止する。
【0025】
ストッパ15dは、延在部15cにおける軸線L側とは反対側の端部に設けられている。ストッパ15dは、爪部材15が径方向に沿って軸線L側に所定量進出したときに爪本体11に当接する部分であり、例えばフランジ状の形状を呈している。
【0026】
以上の構成により、各爪部材15は、各爪本体11において、軸線Lに対して(すなわち、径方向に沿って)互いに独立して進退可能である。非圧縮性流体回路20は、各爪本体11において、各爪部材15が軸線L側とは反対側に押圧された場合に各爪部材15に対して軸線L側に均一な圧力を作用させる。より具体的には、各爪本体11において、各爪部材15が軸線L側とは反対側に押圧された場合に、複数の圧力室21、及び接続路22に封入されたオイルOの圧力が、爪部材15の本体部15bにおける軸線L側とは反対側の端面に作用することで、各爪部材15に対して軸線L側に均一な圧力が作用する。
【0027】
各爪本体11には、各爪部材15に対応するようにコイルスプリング19が設けられている。より具体的には、コイルスプリング19は、爪部材15の延在部15cが挿通された状態で、爪部材15の本体部15bにおける軸線L側とは反対側の端面と、圧力室21の底面との間に、配置されている。コイルスプリング19は、圧縮されたときに、爪部材15に対して軸線L側に付勢力を作用させる。
【0028】
以上のように構成されたチャック装置10では、ワークWの外周面に各爪部材15が押圧されるように、チャックドローバ12、運動変換機構13及びチャックシリンダ14が各爪本体11を径方向に沿って軸線L側に進出させることで、ワークWがチャックされる。このとき、各爪部材15がワークWの外周面の形状に応じて進退し、各爪部材15に非圧縮性流体回路20によって均一な圧力が作用させられる。そのため、薄肉の円筒状のワークWであったり、断面形状が非真円のワークWであったりしても、均一な力でワークWがチャックされる。また、爪本体11において複数の爪部材15の揺動動作を伴わないため、切屑等の影響を受け難い。よって、チャック装置10によれば、メンテナンスの回数の低減及びワークWの確実なチャックの両方を実現することができる。
【0029】
また、チャック装置10では、爪部材15が径方向に沿って軸線L側に所定量進出したときに爪本体11に当接するストッパ15dを、各爪部材15が有している。これにより、ワークWをチャックしていないときに爪本体11から複数の爪部材15が脱落するのを防止することができる。
【0030】
また、チャック装置10では、圧縮されたときに、爪部材15に対して軸線L側に付勢力を作用させるコイルスプリング19が、各爪部材15に対応するように各爪本体11に設けられている。これにより、ワークWをチャックしていないときに爪本体11における所定の初期位置に複数の爪部材15を位置させることができる。
【0031】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0032】
例えば、上記実施形態では、各爪本体11において複数の爪部材15が軸線L回りに配置されていたが、それに加え、
図3に示されるように、各爪本体11において複数の爪部材15が軸線Lに沿って配置されていてもよい。その場合にも、非圧縮性流体回路20において、軸線Lに沿って各爪部材15に対応するように設けられた複数の圧力室21、及び当該複数の圧力室21を互いに接続する接続路22を構成することで、軸線Lに沿った方向においてワークWの外周面にうねり等が生じていたとしても、当該ワークWを均一な力で確実にチャックすることができる。
【0033】
また、複数の爪本体11間において、複数の非圧縮性流体回路20が互いに接続されていてもよい。これにより、ワークWをチャックしているときに全ての爪部材15に均一な圧力が作用させられるため、ワークWのより確実なチャックを実現することができる。一例として、
図4に示されるように、複数の非圧縮性流体回路20は、可撓性を有するホース等である接続路24によって互いに接続されていてもよい。
【0034】
また、各爪部材15は、径方向に沿って軸線L側から所定量退避したときに、爪本体11に当接するストッパを有していてもよい。この場合にも、ワークWをチャックしていないときに、例えば、1つの爪部材15が径方向に沿って軸線L側から無制限に退避することに起因して他の爪部材15が脱落するのを防止することができる。
【0035】
また、コイルスプリング19は、引張されたときに、爪部材15に対して軸線Lとは反対側に付勢力を作用させるものであってもよい。この場合にも、ワークWをチャックしていないときに爪本体11における所定の初期位置に複数の爪部材15を位置させることができる。
【0036】
また、非圧縮性流体回路20は、オイルOが封入された油圧回路に限定されず、水等、その他の非圧縮性流体が封入された非圧縮性流体回路であってもよい。その場合にも、上述した油圧回路の場合と同様の効果が奏される。
【0037】
また、チャック装置10が備える爪本体11の数は、複数であれば、3つに限定されない。各爪本体11に設けられる爪部材15及び圧力室21のそれぞれの数も、複数であれば、2つに限定されない。
【符号の説明】
【0038】
1…旋盤、10…チャック装置、11…爪本体、12…チャックドローバ(進退駆動機構)、13…運動変換機構(進退駆動機構)、14…チャックシリンダ(進退駆動機構)、15…爪部材、15d…ストッパ、19…コイルスプリング、20…非圧縮性流体回路、L…軸線、W…ワーク。