【課題】、ワークが軽量であったりワークの強度が弱い場合であっても、更には、ワークがコンベア上をどのような位置および姿勢で搬送されていても、正常な印刷を行うことができる印刷方法を提供する。
【解決手段】本発明の印刷方法は、搬送装置によって搬送中のワークの側面に、ロボットのハンドに取り付けられたプリントヘッドを用いて印刷を行うものであって、準備工程と実行工程とを含む。実行工程においては、準備工程において生成したロボットハンドの移動軌跡のデータを、搬送装置上のワークの位置および姿勢に関するデータならびにワークの搬送速度に関するデータに基づいて逐次修正すると共に、修正されたデータに基づいてロボットハンドを移動させ、かつプリントヘッドを用いてワークの側面に印刷を行う。
前記ワークの搬送距離に対応したデータは、前記搬送装置に取り付けられたエンコーダから取り出した信号に基づいて生成される、請求項1ないし3のいずれかに記載の印刷方法。
前記ロボットハンドの移動軌跡に関するデータを生成する際、前記プリントヘッドと前記ワークの間隔を0.3mm〜5mmに保持する、請求項1ないし4のいずれかに記載の印刷方法。
前記プリントヘッドとして、縦方向に複数形成された吐出孔からインクを選択的に吐出して印字面にドットを形成して印刷を行うものを用いる、請求項1ないし5のいずれかに記載の印刷方法。
前記ワークの側面の上下方向に複数行にわたって印刷を行う場合、隣接する行毎に、前記ロボットハンドの移動方向および前記プリントヘッドの印刷方句を変える、請求項1ないし6のいずれかに記載の印刷方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した印刷装置は、プリントヘッドを支持するアームがワークに接触しながら移動するため、ワークが軽かったり、ワークの強度が弱い場合には、アームによってワークの位置がずれ、更にはワークが変形して、適切な印刷ができない場合があった。更に、ベルトコンベアに対してワークを定めた位置および姿勢で載せないと、正常な印刷ができないという問題があった。
【0007】
本発明はこのような問題点に鑑みて成されたもので、ワークが軽量であったりワークの強度が弱い場合であっても、更には、ワークがコンベア上をどのような位置および姿勢で搬送されていても、正常な印刷を行うことができる印刷方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明にかかる印刷方法は、搬送装置によって搬送中のワークの側面に、ロボットのハンドに取り付けられたプリントヘッドを用いて印刷を行う印刷方法であって、準備工程と実行工程とを含み、
前記準備工程においては、
カメラで撮影したワークの画像からワークの形状を特定するデータを抽出すると共に、抽出したデータからワークの形状を認識し、
前記プリントヘッドを用いてワークの側面に印刷する際のロボットハンドの移動軌跡および移動速度のデータと、前記プリントヘッドの印刷速度に関するデータを生成し、
前記実行工程においては、
前記カメラで撮影したワークの画像からワークの形状を特定するデータの抽出とワークの形状を認識するデータの生成を行い、当該ワークの形状特定データおよび形状認識データを、前記準備工程において生成したワークの形状特定データおよび形状認識データと照合して一致するデータを取り出し、
前記カメラで撮影したワークの画像からワークの位置および姿勢に関するデータを抽出すると共に、前記搬送装置から取り出した信号に基づいてワークの搬送距離に対応したデータを生成し、
前記一致するワークのデータに対応するロボットハンドの移動軌跡のデータを取り出し、当該移動軌跡のデータを、前記ワークの位置および姿勢に関するデータならびに前記ワークの搬送距離に対応したデータに基づいて逐次修正し、
かつ当該修正されたデータに基づいて前記ロボットハンドを移動させながら、前記プリントヘッドを用いてワークの側面に印刷を行うことを特徴とする。
【0009】
ここで、前記プリントヘッドの印刷速度に関するデータは、ユーザの入力に基づいて生成されること、もしくは、前記プリントヘッドの印刷速度に関するデータは、前記ロボットハンドの移動速度に関するデータに基づいて生成されることが好ましい。
【0010】
前記ワークの搬送距離に対応したデータは、前記搬送装置に取り付けられたエンコーダから取り出した信号に基づいて生成されることが好ましい。
【0011】
また前記ロボットハンドの移動軌跡に関するデータを生成する際、前記プリントヘッドと前記ワークの間隔を0.3mm〜5mmに保持すること好ましい。
【0012】
また前記プリントヘッドとして、縦方向に複数形成された吐出孔からインクを選択的に吐出して印字面にドットを形成して印刷を行うものを用いることが好ましい。
【0013】
また前記ワークの側面の上下方向に複数行にわたって印刷を行う場合、隣接する行毎に、前記ロボットハンドの移動方向および前記プリントヘッドの印刷方句を変えることが好ましい。
【0014】
また本発明にかかる印刷装置は、搬送装置によって搬送中のワークの側面に、ロボットのハンドに取り付けられたプリントヘッドを用いて印刷を行う印刷装置であって、
前記ロボットの動作を制御するロボットコントローラと前記プリントヘッドの動作を制御するプリントコントローラとを備え、
前記ロボットコントローラは、
カメラで撮影したワークの画像からワークの形状を特定するデータを抽出すると共に、抽出したデータからワークの形状を認識するワーク認識部と、
前記プリントヘッドを用いてワークの側面に印刷する際のロボットハンドの移動軌跡および移動速度のデータを生成するロボット制御部とを有し、
前記プリントコントローラは、前記プリントヘッドの印刷速度に関するデータを生成する印刷速度調整部を有し、
前記ロボット制御部は、前記ロボットハンドの移動軌跡のデータを、前記ワーク認識部で抽出したワークの位置および姿勢に関するデータ、ならびに前記搬送装置から取り出した信号に基づいて生成されたワークの搬送距離に対応したデータに基づいて逐次修正し、
かつ当該修正されたデータに基づいてロボットハンドを移動させながら、プリントヘッドを用いてワークの側面に印刷を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる印刷方法および装置を用いれば、ワークが軽量であったりワークの強度が弱い場合であっても、更には、ワークがコンベア上をどのような位置および姿勢で搬送されていても、ワークの側面の適切な位置に適切な印刷を行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態にかかる印刷方法および装置について、図面を参照して説明する。なお、本発明は実施の形態の記載内容のみに限定して解釈されるものではない。本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなく、その形態を様々に変更できる。
【0018】
(実施の形態1)
<印刷装置の機構系の構成>
図1に、本発明の実施の形態1にかかる印刷装置の機構系の構成部材と待機状態における配置を示す。印刷装置1は、ワークWを搬送するベルトコンベア4(以降、「コンベア」と略す)の近傍に設置された多関節型のロボット2、当該ロボット2のハンド24に取り付けられたプリントヘッド3、およびコンベア4上のワークWを撮影するカメラ5で構成されている。
【0019】
ロボット2は、互いに関節接合された複数のアーム21〜23とハンド24で構成され、ハンド24の先端には、取付金具25を介してプリントヘッド3が取り付けられている。ロボット2は、それぞれの関節内に収容されたサーボモータ(図示せず)を回転させることによって、ハンド24に取り付けられたプリントヘッド3を任意の軌跡に沿って任意の速度で移動させることができる。
【0020】
図1に示すように、ロボット2は待機状態においては、プリントヘッド3がコンベア4上を搬送されるワークWの移動を妨げない位置に保持されている。
【0021】
コンベア4の上流側の上部には、搬送中のワークWを撮影するカメラ5が設置されている。カメラ5で撮影されたワークWの画像は、後述するロボットコントローラ6(
図5参照)に送信され、ワークWの形状や位置・姿勢を認識する際に用いられる。
【0022】
印刷装置1の各部の構成について説明する前に、
図2および
図3を参照して、本発明にかかる印刷方法における基本的な動作を説明する。本発明にかかる印刷方法は、角柱や円柱等の柱状のワークの側面に印刷を行うことを前提としており、ロボット2のハンド24に取り付けられたプリントヘッド3を用いて、ワークWの側面に文字やパターンを印刷するものであり、大きく準備工程と実行工程に分かれる。
【0023】
準備工程では、カメラ5で撮影したワークWの画像から、上方から見たワークWの形状を認識する。次に、ワークWの側面に対してプリントヘッド3のインク吐出面30が対向し、かつ一定の間隔を保ちながら水平方向に移動するようにロボット2を制御し、その際のロボットハンド24の軌跡と速度に関するデータを生成する。
【0024】
図2に、ワークWに対するプリントヘッド3の動きを示す。説明を簡単にするため、ここではコンベア4が停止しているものとする。本実施の形態では、プリントヘッド3から吐出するインクを用いて四角柱状のワークWの側面に対して、水平方向に印刷を行うものとする。この場合、最初に、印刷を行うワークWに関するデータを取得する必要がある。
【0025】
そのために、カメラ5で撮影した画像データから、ワークWの形状を特定するデータを取得する。
図2に示すワークWの場合、4つの頂点の位置データによってワークWが四角形であることが認識される。そしてワークWの形状特定データは、ワークWの形状認識データ(四角形)と共に、後述するロボットコントローラの記憶部に格納される。
【0026】
一方、ワークWの側面に印刷を行うためには、プリントヘッド3のインク吐出面30を、ワークの側面に対向した状態を保ちながら水平方向に移動させる必要がある。本実施の形態では、隣接する2つの側面に連続して印刷を行うため、
図2に示すように、最初は、プリントヘッドをワークWの右側面に沿って下から上に移動させ、次にワークWを半時計周りに90度回転させ、その後、プリントヘッド3を左方向に移動させる。
【0027】
この間、プリントヘッド3のインク吐出面30は、常にワークWに対向し、かつ一定の間隔を保っている。このようなプリントヘッド3の動きは、後述するロボットコントローラ(
図5参照)によってロボットハンド24の位置と姿勢を制御することによって実現される。
【0028】
ユーザは、ロボットコントローラを用いて、ロボットハンド24が
図2に示す軌跡を辿るようにロボット2を制御し、最終的にロボットハンド24の移動軌跡と移動速度のデータを生成して記憶部に格納する。
【0029】
ワークWの側面に印刷を行うためには、更に、プリントヘッド3から吐出するインクの印刷速度を調整して、インクがワークWの側面の適切な位置に付着するようにする必要がある。プリントヘッド3の移動速度に対して印刷速度が速すぎる場合、文字やパターンが横方向に縮まって印刷され、逆に、印刷速度が遅すぎる場合は、文字やパターンが間延びし、最悪の場合、一部が印刷できない場合も生じる。
【0030】
プリントヘッドの印刷速度は、後述するプリントコントローラ(
図5参照)を用いて印刷速度を調整しながら、ワークWの側面への印刷を繰り返して最適の速度を見つけ、そのデータをプリントコントローラの記憶部に格納する。このようにして準備工程が終了する。
【0031】
なお、印刷を行うワークWが複数種類ある場合は、それぞれのワークについて上述した準備工程の処理を行い、得られたデータをロボットコントローラおよびプリントコントローラの記憶部に格納しておく必要がある。
【0032】
次に、印刷の実行工程について説明する。前述の準備工程においては、静止したコンベア4の中央に載置されたワークWを上方のカメラ5で撮影した画像に基づいて、ワークWの形状に関するデータおよびロボットハンド24の軌跡・速度に関するデータを生成した。
【0033】
前述したように、準備工程において、ワークWの形状に関するデータとロボットハンド24の軌跡・速度に関するデータを生成する際には、ワークWは静止した状態でコンベア4に載置され、また側面がコンベアの進行方向と平行な方向を向いていた(
図2参照)。これに対し、
図3に示すように、実際にコンベア4で運搬されるワークWは、様々な位置や姿勢をとり、ワークがコンベア4の中央に載置されているとは限らず、同様に、側面がコンベアの進行方向と平行であるとは限らない。
【0034】
従って、プリントヘッド3をワークWの側面に対向した状態で、かつ側面に沿って移動させるためには、ワークの位置と姿勢に合わせてロボットハンド24の移動軌跡を修正する必要がある。
【0035】
更に、コンベアは速度Vで移動しており、
図3に示すように、コンベア4に載置されたワークWもそれに合わせて移動している。従って、印刷のためにプリントヘッド3をワークWの側面に対して移動させる際には、ワークWの搬送距離に応じて、ロボットハンド24の軌跡を逐次修正する必要がある。
【0036】
このため、印刷の実行工程においては、カメラ5で撮影した画像からワークWの位置と姿勢に関するデータを抽出し、抽出したデータに基づいて、準備工程で生成したロボットハンド24の移動軌跡に関するデータを修正し、更に、ワークWの搬送距離に応じてロボットハンド24の位置を逐次修正している。
【0037】
<プリントヘッドの構成>
次に、
図4を参照して、印刷装置1の主要部材であるプリントヘッド3の構成を説明する。
図4(a)にプリントヘッド3の正面図、
図4(b)に同ヘッド3の平面図を示す。
【0038】
プリントヘッド3はオンデマンドタイプのインクジェットプリンタであり、断面がL字状の取付金具25によってロボットハンド24の先端に固定されている(
図1参照)。プリントヘッド3は、ヘッド本体31、ヘッド部32、インクカートリッジ33、ヘッド制御部34およびケーブル引出部35で構成され、ヘッド部32のインク吐出面30には、縦方向に並んだ複数のインク吐出孔が形成されている。
【0039】
図示しないが、ヘッド制御部34の内部には、印刷制御用の回路が収容されており、ケーブル引出部35から引き出されたケーブル36によって、後述するプリントコントローラ7(
図5参照)と接続されている。
【0040】
ロボット2を操作して、ワークWに対してプリントヘッド3が所定に軌跡を辿るように移動させ、その移動に合わせ、ヘッド制御部34によって、それぞれの吐出孔に対してインクの吐出の有無とタイミングを制御することで、印刷面に任意のパターンの印刷を行うことができる。
【0041】
ワークWとプリントヘッド3の間隔は0.3mm〜5mmが好ましい。間隔が狭すぎると、移動の際にプリントヘッド3がワークWに接触し、またインク吐出面30が跳ね返りで汚れる。逆に間隔が広すぎると、インクの着弾位置がばらついて印字の品質が低下する。
【0042】
なお、本実施の形態では、インクカートリッジ33を用いてヘッド部32にインクを供給しているが、インクカートリッジ33の代わりにインクタンクからインクを供給するようにしてもよい。
【0043】
<印刷装置の制御系の構成と動作>
次に、
図5を参照して、印刷装置1の制御系の構成と動作を説明する。印刷装置1の制御系は、基本的に、ロボット2の動作を制御するロボットコントローラ6とプリントヘッド3の動作を制御するプリントコントローラ7とで構成されており、ロボットコントローラ6とプリントコントローラ7はI/Oケーブルで接続されている。なお、利便性を考慮し、ロボットコントローラ6とプリントコントローラ7を無線LAN(LOCAL AREA NETWORK)で接続するようにしてもよい。
【0044】
ロボットコントローラ6は、ロボット制御部61、入力部62、ワーク認識部63および記憶部64で構成されている。ロボット制御部61は、CPU,ROM、RAM等で構成され、ROMにロボット2の動作を制御するプログラムが格納されており、入力部62から入力されたデータに基づいて関節部に内蔵された複数のサーボモータを駆動し、ロボットアーム24の先端が所定の軌跡を辿るように制御する。
【0045】
ワーク認識部63は、カメラ5で撮影したワークWの画像を取り込み、画像処理用のプロセッサ等で構成された専用の回路で処理を行い、ワークWの形状を特定するデータを抽出する。またそのデータに基づいてワークWの形状を認識する。例えば、4つの頂点の位置データが抽出された場合、ワークが四角形であることが認識される。抽出された形状特定データおよび形状認識データは、ロボット制御部61を介して不揮発性メモリで構成された記憶部64に格納される。
【0046】
なお、ワークの形状を特定するデータとして、ここでは4つの頂点の位置データを用いたが、必ずしも頂点の位置データに限定されない。形状によっては、頂点の位置データと辺の長さや角度データとの組み合わせ、更には重心のデータを用いても良い。
【0047】
ロボット制御部61は、コンベア4に設置されたエンコーダ43および位置センサ44と接続されている。
図1に示すように、エンコーダ43はコンベア本体41に取り付けられており、コンベア4の移動(すなわちワークWの移動)に応じてエンコーダ43が回転し、回転の都度パルス信号を出力する。エンコーダ43から出力されるパルス信号の数は、ワークWの搬送距離に対応している。
【0048】
エンコーダ43から出力されたパルス信号はロボット制御部61に入力され、印刷の実行工程において、ロボットハンド24の移動軌跡を修正する際に用いられる。
【0049】
光電センサ44は、エンコーダ43と同様にコンベア本体41に取り付けられている(
図1参照)。光電センサ44から出力された光が、コンベア4で搬送中のワークWによって遮られたとき、光電センサ44の出力がロボット制御部61に送信され、この信号をトリガとして、ワーク認識部63はカメラ5で撮影した画像を取り込んで認識処理を行う。
【0050】
一方、プリントコントローラ7は、プリントヘッド3によるワークWの側面への印刷を制御するものであり、プリント制御部71、入力表示部72、印刷速度調整部73および記憶部74で構成されている。
【0051】
プリント制御部71は、インクジェットの制御に最適化されて設計されたCPUおよび波形をコントロールするIC等で構成されている。入力表示部72は、タッチパネル式の液晶ディスプレイで構成され、プリントヘッド3を用いて印刷面に印刷する文字や数字、パターン等のデータを入力するのに用いられる。
【0052】
前述したように、プリントヘッド3は、縦方向に複数形成された吐出孔からインクを選択的に吐出して印字面にドットを形成することによって印刷を行う。通常は、印刷面に対してプリントヘッド3を横方向にずらしながら、吐出孔から選択的な吐出を繰り返すことによって、印刷面にドットがマトリクス状に形成され、このドットパターンによって文字やパターンが表現される。
【0053】
不揮発性メモリで構成された記憶部74には、あらかじめ文字や図形等のデータが記憶されており、プリント制御部71は、入力表示部72から入力された文字等に対応するデータを読み出し、そのデータをプリントヘッド3のヘッド制御部34(
図4参照)に送信する。
【0054】
印刷速度調整部73は、吐出孔から吐出されるインクの吐出タイミングを調整するものである。エンコーダ等を用いて印刷面に対するプリントヘッド3の移動速度を検出できる場合には、移動速度に対応するタイミングで吐出孔からインクを吐出することにより印刷面への印刷が行われる。
【0055】
これに対し、本実施の形態の場合、印刷面に対するプリントヘッド3の移動速度を検出する手段がない。このため、本実施の形態では、プリントコントローラ8に印刷速度調整部73を設け、吐出孔からインクを吐出するタイミングを印刷速度調整部73で調整することによって、印刷面に適切な印刷が行われるようにしている。
【0056】
ロボットハンド24の移動速度に対して印刷速度が速すぎる場合、文字等が横方向に縮まって印刷され、逆にロボットハンド24の移動速度に対して印刷速度が遅い場合、横方向に間延びした印刷が行われる。
【0057】
印刷速度の調整は、内蔵のタイマーから出力されるクロックパルスの計数値を変えることにより行われる。インクの吐出は、所定の数のクロックパルスを計数する毎に行われ、数えるクロックパルスの数が少なければ印刷速度が速まり、数えるクロックパルスの数を多くすれば印刷速度が遅くなる。
【0058】
ユーザは、印刷の準備工程において、印刷速度調整部73で印刷速度を調整しながらワークWの側面への印刷を繰り返し、横方向の幅が最適となる印刷速度を決定する。決定された印刷速度のデータはワークの形状に関するデータと共に記憶部74に格納される。
【0059】
<印刷準備工程の処理の流れ>
次に、本実施の形態にかかる印刷方法における処理の流れについて、フローチャートを参照して説明する。最初に、
図6のフローチャートおよび前述の
図2を参照して、印刷準備工程の流れを説明する。
【0060】
ユーザは、最初に、プリントコントローラ7の入力表示部72からワークWの側面に印刷する文字等のデータを入力する(ステップS11)。前述したように記憶部74には予め文字や図形等のデータが格納されており、制御部71は、入力表示部72から入力された文字等をディスプレイに表示し、正しいデータが入力されたか否かを確認する。確認されたデータは記憶部74に格納される。
【0061】
次に、ユーザは、静止したコンベア上にワークWを載置する(ステップS12)。この状態において、ユーザはロボットコントローラ6を操作してワーク認識部63を動作させ、カメラ5で撮影した画像からワークWの形状を特定するデータを抽出すると共に、そのデータからワークWの形状を認識する(ステップS13)。
【0062】
本実施の形態では、ワークの形状を特定するデータは4つの頂点の位置データであり、このデータから四角形であることが認識される。得られたワークの形状特定データと形状認識データは、ロボットコントローラ6の記憶部64に格納される。
【0063】
次に、ユーザは、入力部62から必要なデータを入力し、プリントヘッド3をワークWの側面に対向させた状態で、ワークWの側面に沿うように移動させ、印刷の際に必要なロボットハンド24の移動軌跡と移動速度を設定する(ステップS14)。
【0064】
前述の
図2に示す例では、プリントヘッド3が左側を向いた状態で、ロボットハンド3はワークWの右側を上方に移動し、ワークの右上の頂点近傍で反時計回りに90度回転し、その後、ワークの上方を左方向に移動する。
【0065】
ユーザは、このようにして設定したロボットハンドの移動軌跡と移動速度について試行を繰り返し、軌跡と速度に問題がないかどうか確認し(ステップS15)、問題ありと判断した場合(No)、ステップS14の処理に戻って、移動軌跡と移動速度を再設定する。
【0066】
設定した移動軌跡と移動速度に問題がない場合(ステップS15でyes)、ユーザは、生成した移動軌跡と移動速度のデータを記憶部64に格納する(ステップS16)。
【0067】
引き続きユーザは、プリントコントローラ7の印刷速度調整部73を用いて印刷速度を調整する(ステップS17)。具体的には、ロボットハンドを
図2に示す軌跡に沿って移動させ、その移動に合わせてプリントヘッド3からインクを吐出して、ワーク側面への印刷状態を確認する。ワーク側面に印刷された文字等が左右に詰まっている場合は印刷速度を遅くし、逆に、左右に間延びしている場合は印刷速度を速める。
【0068】
このようにして印刷を繰り返して最適の印刷速度を決定し(ステップS18でYes)、決定した印刷速度のデータを記憶部74に格納する(ステップS19)。以上で印刷の準備工程が終了し、印刷に必要なロボットハンド24の移動軌跡・移動速度のデータとプリントヘッド3の印刷速度に関するデータが用意される。
【0069】
<印刷実行工程の処理の流れ>
次に、
図7のフローチャートおよび前述の
図3を参照して印刷実行工程の流れを説明する。
【0070】
最初にユーザは、稼働中のコンベア4の上にワークWを載置する。(ステップS31)。ワークWがコンベア4上を移動し、光電センサ44の横に到達した時点でロボット制御部61がワークWの存在を確認し、カメラ5で撮影したワークWの画像をワーク認識部63に取り込み、ワークの形状を特定するデータの抽出とワークWの形状の認識を行う(ステップS32)。
【0071】
図2に示した準備工程では、ワークWはコンベア4の中央に載置され、また搬送方向と平行に置かれていたが、
図3に示すようにワークWは必ずしもコンベア4の中央に置かれるわけではなく、またワークWの姿勢も、必ずしもワークWの移動方向に沿っているわけではない。ロボット制御部61は、ワーク認識部63での認識結果に基づいて、ワークが四角形であることを確認し、記憶部64から四角形のワークのデータとそれに対応したロボットハンド24の移動軌跡・移動速度のデータを読み出す(ステップS33)。
【0072】
更に、ロボット制御部61は、ワークWの搬送に応じてエンコーダ43から出力されるパルス信号を読み込む(ステップS34)。ロボット制御部61は、記憶部64から読み出したロボットハンド24の移動軌跡のデータを、ワークの位置及び姿勢に関するデータ、更にはエンコーダ43からのパルス信号に基づいて生成されたワークの搬送距離に対応したデータで逐次修正しながら、ロボットハンド24を所定に軌跡に沿って移動させる(ステップS35)。
【0073】
図2に示したように、記憶部64から読み出されたワークWの位置データとロボットハンド24の移動軌跡のデータは、ワークWがコンベア4の中央に置かれ、かつワークの側面がコンベアの搬送方向と平行であるときのデータである。これに対し、
図3に示すように、コンベア4によって実際に搬送されているワークWはコンベア4の中央からずれ、また搬送方向に対してθだけ傾いており、かつ一定の速度Vで移動している。
【0074】
従って、プリントヘッド3を用いてワークWに印刷を行う際には、ワークWの位置と姿勢に合わせてロボットハンド24の移動軌跡を横方向にずらすと共にθだけ回転させ、更にワークWの搬送に合わせて、逐次移動させる必要がある。
【0075】
ロボットハンド24の移動軌跡を、このように逐次修正しながら移動させることにより、プリントヘッド3は、コンベア4で搬送中のワークWに対し、
図3に示すように、ワークWの2つの側面に対してプリントヘッド3が対向し、かつ一定の間隔を保ちながら水平方向に移動する。
【0076】
ロボットハンドが移動を開始した後所定の時間経過したときに、ロボット制御部61からプリント制御部71に印刷の開始を指示する信号が送信される(ステップS37)。その際、ワークWの形状認識データが、印刷開始指示信号に合わせて、ロボット制御部61からプリント制御部71に送信される。
【0077】
上述した印刷開始信号とワークの形状認識データを受信したプリント制御部71は、記憶部74からワークWの形状に対応した印刷データと印刷速度のデータを読み出し(ステップS38)、そのデータをプリントヘッドのヘッド制御部34に送信し、ワークの側面に印刷を行う(ステップS39)。
【0078】
なお、ロボットハンド24の移動開始後、所定の時間が経過したときに印刷開始指示信号を送信するのは、ロボットハンド24の移動開始直後は速度が一定でないため、その時に印刷を開始すると、印刷物に歪が生じるためである。
【0079】
ワークの複数の側面に連続して印刷を行う場合には、印刷データと印刷速度のデータの読み出しが連続して行われ、更には、ワークの側面の上下方向に数行に渡って印刷を行う場合には、ワークの移動方向と印刷方向を行毎に変えることにより、ロボットハンドの効率的な動作と印刷面への円滑な印刷を実現できる。このようにして指定したワークの側面への印刷が完了する。
【0080】
図8に、円柱状のワークWの側面に印刷を行う際のワークとプリントヘッド3の動きを示す。図では、コンベア4上に載置されたワークが左方向に移動する状態において、ロボットハンド24の先端に取り付けられたプリントヘッド3によって、円形のワークの側面に印刷を行っている。
【0081】
図3に示した四角柱状のワークの場合は、4つの頂点でワークを特定したが、
図8に示した円柱状のワークの場合、円の中心位置でワークを特定する。プリントヘッド3によってワークWの側面に印刷を行う場合、プリントヘッド3は常に円の中心を向いた状態で、ワークWの円周上を回転するように一定の速度で移動し、その移動に合わせて一定の速度で印刷が行われる。
【0082】
ワークWが円柱状の場合、ワークWの姿勢についてデータを修正する必要はないため、ワークWの位置と搬送距離に合わせてロボットハンド24の移動軌跡を修正すれば、ワークの側面の適切な位置に適切な印刷が行われる。
【0083】
(実施の形態2)
図9に、本発明の実施の形態2にかかる印刷装置1の制御系の構成を示す。上述した実施の形態1では、プリントヘッド3の印刷速度を、ロボットハンド24の移動速度とは関係なく設定した。この場合には、ロボットハンド24の移動軌跡と移動速度を設定した後、プリントヘッドの印刷速度を調整しながら、印刷面への印刷を複数回繰り返して最適の印刷速度を設定する必要がある。
【0084】
本実施の形態では、ロボットコントローラ6に、記憶部64に格納されたロボットハンド24の移動軌跡と移動速度のデータからロボットハンド24の移動速度に関するデータを取り出す速度データ抽出部65を設け、そこで抽出された速度データをプリントコントローラ7のプリント制御部71に送信している。
【0085】
更に、本実施の形態では、予め、ロボットハンド24の移動速度とプリントヘッド3の印刷速度との関係を定め、そのデータをプリントコントローラ7の記憶部74に格納している。
【0086】
そしてプリント制御部71は、速度データ抽出部65から移動速度に関するデータを受信する都度、記憶部74に格納されたロボットハンドの移動速度とプリントヘッドの印刷速度との関係を定めたデータに基づいてプリントヘッド3の印刷速度を設定している。
【0087】
このようにして印刷速度を設定すれば、印刷速度を調整することなく、ワークWの側面に適切な間隔で文字等を印刷することができる。
【0088】
なお上述した各実施の形態では、本発明にかかる印刷方法を、四角柱状および円柱状のワークに適用した場合について説明したが、これに限定されないことは云うまでもない。本発明にかかる印刷方法によれば、五角形等の多角柱状のワークや断面が楕円のワークであっても、ワークの側面に印刷を行うことができる。