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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-71457(P2017-71457A)
(43)【公開日】2017年4月13日
(54)【発明の名称】糸巻取機及び自動ワインダ
(51)【国際特許分類】
   B65H 67/04 20060101AFI20170324BHJP
【FI】
   B65H67/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-198101(P2015-198101)
(22)【出願日】2015年10月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】塩田 健
(72)【発明者】
【氏名】福澤 恵伸
【テーマコード(参考)】
3F112
【Fターム(参考)】
3F112AA06
3F112AA08
3F112BA03
3F112CA03
3F112EA05
3F112EB02
3F112GB01
3F112QA01
3F112VA05
3F112VA06
3F112VB05
3F112VC05
(57)【要約】
【課題】作業台車の作業台車担当領域を処理ユニットの状況に応じて変更し、複数の処理ユニットの作業効率を全体として高めることができる糸巻取機を提供する。
【解決手段】自動ワインダ1は、糸を巻き取る複数の巻取ユニット2と、複数の移動可能な玉揚台車4(第1玉揚台車4A及び第2玉揚台車4B)と、玉揚台車4を制御する台車制御部5と、を備える。それぞれの玉揚台車4A,4Bには、対応すべき巻取ユニット2が規定された担当領域6A,6Bが設定されている。巻取ユニット2の何れかにおいて玉揚要求が発生した場合には、当該玉揚要求が発生した巻取ユニット2の属している担当領域6が設定された玉揚台車4が当該巻取ユニット2に対して作業を行う。台車制御部5は、玉揚台車4A,4Bの担当領域6A,6Bを、巻取ユニット2の前記玉揚要求の発生から巻取ユニット2に対して作業が行われるまでの時間である待ち時間に応じて設定変更する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸に関する処理を行う複数の処理ユニットと、
複数の前記処理ユニットが並べられた方向に移動可能な複数の作業台車と、
前記作業台車を制御する制御部と、
を備え、
それぞれの前記作業台車には、対応すべき前記処理ユニットが規定された担当領域が設定されており、
前記処理ユニットの何れかにおいて作業要求が発生した場合には、当該作業要求が発生した前記処理ユニットの属している前記担当領域が設定された前記作業台車が当該処理ユニットに対して作業を行い、
前記制御部は、前記作業台車の前記担当領域を前記処理ユニットの前記作業要求の発生から当該処理ユニットに対して作業が行われるまでの時間である待ち時間に応じて設定変更することを特徴とする糸巻取機。
【請求項2】
請求項1に記載の糸巻取機であって、
それぞれの前記作業台車の担当領域同士で重複がないことを特徴とする糸巻取機。
【請求項3】
請求項1に記載の糸巻取機であって、
それぞれの前記作業台車の担当領域同士で少なくとも一部が重複することを特徴とする糸巻取機。
【請求項4】
請求項1から3までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
ある前記処理ユニットにおいて過去の所定時間に発生した前記待ち時間の積算値を待ち時間積算値としたとき、
前記制御部は、それぞれの前記作業台車について、当該作業台車の担当領域に属する前記処理ユニットの前記待ち時間積算値の合計値を求め、当該待ち時間積算値の合計値に基いて、前記作業台車の前記担当領域を変更することを特徴とする糸巻取機。
【請求項5】
請求項4に記載の糸巻取機であって、
前記制御部は、それぞれの前記作業台車における前記待ち時間積算値の合計値の変化に基いて、前記作業台車の前記担当領域を変更することを特徴とする糸巻取機。
【請求項6】
請求項1から5までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記担当領域に属している前記処理ユニットの何れにおいても作業要求が発生していないために前記作業台車が作業をしていない時間をアイドリング時間としたとき、
前記制御部は、それぞれの前記作業台車について、当該作業台車において過去の所定時間に発生した前記アイドリング時間の積算値であるアイドリング時間積算値を求め、前記アイドリング時間積算値に基いて、前記作業台車の前記担当領域を変更することを特徴とする糸巻取機。
【請求項7】
請求項1から5までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記制御部が前記作業台車の前記担当領域を前記処理ユニットの状態に応じて変更するか否かを切替可能であることを特徴とする糸巻取機。
【請求項8】
請求項1から7までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記作業台車は玉揚台車であることを特徴とする糸巻取機。
【請求項9】
請求項1から8までの何れか一項に記載の糸巻取機としての自動ワインダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸に関する処理を行う処理ユニットを複数備えるとともに、当該処理ユニットに対して何らかの作業を行う作業台車を複数備える糸巻取機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の処理ユニットと、当該処理ユニットに対して作業をすることが可能な複数の作業台車と、を備える糸巻取機が知られている。特許文献1及び特許文献2は、この種の糸巻取機を開示する。
【0003】
特許文献1の自動ワインダー装置では、複数の巻取ユニットの並び方向に沿って設けられた一本の経路上を、複数台の玉揚機が移動自在とされている。それぞれの玉揚機には、連続する複数台のユニットで構成される作業領域が予め割り当てられている。この自動ワインダー装置では、互いに干渉する位置に配置された複数の巻取ユニットから玉揚げ処理の要求が出された場合、当該複数の巻取ユニットでのパッケージ作成の進捗状況と、各玉揚機から当該巻取ユニットまでの距離と、を判断基準として、2台の玉揚機に対する玉揚げ処理の優先順位を予め決定した上で、両玉揚機の移動が制御される。
【0004】
また、特許文献2の繊維機械は、複数の作業台車が処理ユニットを受け持つ受持ち領域が一部重複する構成(即ち、複数の作業台車から作業を受けることが可能な処理ユニットが存在する構成)となっている。複数の作業台車から作業を受けることが可能な処理ユニットから作業要求がされた場合、その処理ユニットに対する作業を行う作業台車は、それぞれの作業台車のみが作業可能な処理ユニットからの作業要求の発生状況に応じて選択される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−284205号公報
【特許文献2】特開2013−67886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1では、玉揚機が作業を行う領域は予め固定されており、変更することができない。特許文献2においても、作業台車が作業を行う領域を変更することができない。従って、上記特許文献1及び2の構成では、例えば複数の玉揚機又は作業台車の負荷に不均衡が生じて機械全体の効率が低下している場合に柔軟に対応できないという点で改善の余地があった。また、複数の玉揚機又は作業台車の負荷に不均衡が生じると複数の処理ユニットの作業待ち時間にも不均衡が生じるため好ましくない。
【0007】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、複数の作業台車の担当領域を処理ユニットの状況に応じて変更し、複数の処理ユニットの作業効率を全体として高めることができる糸巻取機を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0009】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の糸巻取機が提供される。即ち、この糸巻取機は、複数の処理ユニットと、複数の作業台車と、制御部と、を備える。複数の前記処理ユニットは、糸に関する処理を行う。複数の前記作業台車は、複数の前記処理ユニットが並べられた方向に移動可能である。前記制御部は、前記作業台車を制御する。それぞれの前記作業台車には、対応すべき前記処理ユニットが規定された担当領域が設定されている。前記処理ユニットの何れかにおいて作業要求が発生した場合には、当該作業要求が発生した前記処理ユニットの属している前記担当領域が設定された前記作業台車が当該処理ユニットに対して作業を行う。前記制御部は、前記作業台車の前記担当領域を前記処理ユニットの前記作業要求の発生から当該処理ユニットに対して作業が行われるまでの時間である待ち時間に応じて設定変更する。
【0010】
これにより、前記処理ユニットの状態に応じて、前記作業台車の前記担当領域を柔軟に変更することができる。その結果、全体としての作業効率向上を実現することができる。
【0011】
前記の糸巻取機においては、それぞれの前記作業台車の担当領域同士で重複がないように構成することができる。
【0012】
この場合、作業台車の担当領域を変更する処理を簡素化することができる。
【0013】
前記の糸巻取機においては、それぞれの前記作業台車の担当領域同士で少なくとも一部が重複するように構成することができる。
【0014】
この場合、作業台車と、担当する巻取ユニットと、の対応関係が複雑になるが、上記の構成によれば、処理ユニットの状態に応じて作業台車の担当領域を適切に変更することができる。
【0015】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、ある前記処理ユニットにおいて過去の所定時間に発生した前記待ち時間の積算値を待ち時間積算値としたとき、前記制御部は、それぞれの前記作業台車について、当該作業台車の担当領域に属する前記処理ユニットの前記待ち時間積算値の合計値を求め、当該待ち時間積算値の合計値に基いて、前記作業台車の前記担当領域を変更する。
【0016】
これにより、処理ユニットの待ち時間を考慮して、作業効率を全体的に高めるように作業台車の担当領域を変更することができる。
【0017】
前記の糸巻取機においては、前記制御部は、それぞれの前記作業台車における前記待ち時間積算値の合計値の変化に基いて、前記作業台車の前記担当領域を変更することが好ましい。
【0018】
これにより、例えば、ある作業台車の担当領域において処理ユニットの全体的な待ち時間が特に増加する傾向にある場合は、当該作業台車の担当領域の一部を他の作業台車に移管させることができる。従って、処理ユニットの待ち時間の不均衡を容易に是正することができる。
【0019】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記担当領域に属している前記処理ユニットの何れにおいても作業要求が発生していないために前記作業台車が作業をしていない時間をアイドリング時間としたとき、前記制御部は、それぞれの前記作業台車について、当該作業台車において過去の所定時間に発生した前記アイドリング時間の積算値であるアイドリング時間積算値を求め、前記アイドリング時間積算値に基いて、前記作業台車の前記担当領域を変更する。
【0020】
これにより、前記作業台車自体の作業効率も適切に向上させることができる。
【0021】
前記の糸巻取機においては、前記制御部が前記作業台車の前記担当領域を前記処理ユニットの状態に応じて変更するか否かを切替可能であることが好ましい。
【0022】
これにより、糸巻取機に対する様々なニーズに応えることができる。
【0023】
前記の糸巻取機においては、前記作業台車は玉揚台車であることが好ましい。
【0024】
これにより、玉揚作業の効率の良い糸巻取機を提供することができる。
【0025】
本発明の第2の観点によれば、前記の糸巻取機としての自動ワインダが提供される。
【0026】
これにより、全体として作業効率の良い自動ワインダを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の第1実施形態に係る自動ワインダの概略的な構成を示す正面図。
図2】巻取ユニットの側面図。
図3】巻取ユニットにおける糸分断時の様子を示す側面図。
図4】巻取ユニットにおける糸継作業時の様子を示す側面図。
図5】作業台車の担当領域を示す模式図。
図6】第2実施形態の自動ワインダにおいて、作業台車の担当領域を示した模式図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、本発明の一実施形態に係る自動ワインダ1について、図面を参照して説明する。図1は、第1実施形態の自動ワインダ1の概略的な構成を示す正面図である。
【0029】
図1に示すように、糸巻取機としての自動ワインダ1は、並べて配置された複数の巻取ユニット(処理ユニット)2と、機台制御装置3と、給糸ボビン供給装置13と、玉揚台車(作業台車)4と、を主に備えている。なお、本実施形態の自動ワインダ1は2台の玉揚台車4を備えているが、図1では1台のみが描かれている。
【0030】
機台制御装置3が備える機台制御部7は、各巻取ユニット2が備える図略のユニット制御部(後述)と通信可能に構成されている。自動ワインダ1のオペレータは、機台制御装置3を適宜操作することにより、複数の巻取ユニット2を一括して管理することができる。
【0031】
それぞれの巻取ユニット2は、給糸ボビン15から糸16を解舒し、解舒された糸16を綾振りしながら巻取ボビンに巻き取るように構成されている。なお、以下では、糸16が巻き取られた状態の巻取ボビンをパッケージ18と呼ぶことがある。
【0032】
給糸ボビン供給装置13と各巻取ユニット2との間には、ベルトコンベア等によって構成された給糸ボビン搬送機構(図略)が配設されている。この給糸ボビン搬送機構は、給糸ボビン15を載せた搬送トレイ19(図2)を各巻取ユニット2まで搬送することができるように構成されている。搬送トレイ19は、図2に示すように、給糸ボビン15を略直立状態で載せることができるように構成されている。前記給糸ボビン供給装置13は、給糸ボビン15を1本ずつ搬送トレイ19の上に載置したうえで、前記給糸ボビン搬送機構に送り出すように構成されている。この構成で、給糸ボビン15を各巻取ユニット2まで供給することができる。
【0033】
玉揚台車4は、各巻取ユニット2においてパッケージ18が満巻となった際に、当該巻取ユニット2の位置まで移動し、前記満巻パッケージを取り外すとともに、空の巻取ボビンをセットするように構成されている。
【0034】
次に、図2から図4までを参照して巻取ユニット2の構成について説明する。図2は、巻取ユニット2の側面図である。図3は、巻取ユニット2における糸分断時の様子を示す側面図である。図4は、巻取ユニット2における糸継作業時の様子を示す側面図である。
【0035】
図2に示すように、各巻取ユニット2は、給糸部20と、巻取部21と、を主に備えている。
【0036】
給糸部20は、搬送トレイ19に載せられた給糸ボビン15を所定の位置で保持するように構成されている。これにより、給糸ボビン15が略直立状態で保持され、当該給糸ボビン15から糸16を適切に解舒することができる。
【0037】
巻取部21は、クレードル23と、巻取ドラム17と、を備えている。
【0038】
クレードル23は、巻取ボビン22(又はパッケージ18)を回転可能に支持することができる。また、クレードル23は、支持しているパッケージ18の外周を巻取ドラム17の外周に接触させることができるように構成されている。
【0039】
巻取ドラム17は、パッケージ18の表面で糸16をトラバースさせるとともに前記パッケージ18を回転させるためのものである。巻取ドラム17は、図略の駆動源(電動モータなど)によって回転駆動される。パッケージ18の外周を巻取ドラム17に接触させた状態で、当該巻取ドラム17を回転駆動することにより、パッケージ18を従動回転させることができる。また、この巻取ドラム17の外周面には螺旋状の綾振溝(図略)が形成されている。給糸ボビン15から解舒された糸16は、前記綾振溝によって一定の幅でトラバース(綾振り)されながらパッケージ18表面に巻き取られる。これにより、一定の巻幅を有するパッケージ18を形成することができる。
【0040】
なお、クレードル23の上方には、空の巻取ボビン22を保持しておくためのボビンストッカ39が設けられている。
【0041】
それぞれの巻取ユニット2は、給糸部20と巻取部21との間の糸走行経路中に、給糸部20側から順に、解舒補助装置24と、張力付与装置25と、糸継装置26と、糸品質測定器27と、を配置した構成となっている。
【0042】
解舒補助装置24は、給糸ボビン15の芯管に被さることが可能な規制部材28を備えている。規制部材28は、略筒状に構成されており、給糸ボビン15の糸層上部に形成されたバルーンに接触するように配置されている。なお、バルーンとは、給糸ボビン15から解舒される糸16が遠心力によって振り回されている部分をいう。このバルーンに対して規制部材28を接触させることにより、当該バルーンの部分の糸16に対してテンションを付与し、糸16が過度に振り回されることを防止する。これにより、当該糸16を給糸ボビン15から適切に解舒することができる。
【0043】
張力付与装置25は、走行する糸16に所定のテンションを付与するものである。本実施形態において、張力付与装置25は、固定の櫛歯と可動の櫛歯とを備えるゲート式の張力付与装置25として構成されており、糸16を櫛歯に接触させて屈曲させることで糸16に張力を付与する。ただし、張力付与装置25は上記ゲート式のものに限らず、例えばディスク式のものを採用することができる。
【0044】
糸継装置26は、給糸ボビン15とパッケージ18との間の糸16が何らかの理由により分断状態となったときに、給糸ボビン15側の下糸と、パッケージ18側の上糸と、を糸継ぎするものである。本実施形態において、糸継装置26は、圧縮空気により発生させた旋回空気流によって糸端同士を撚り合わせるスプライサ装置として構成されている。ただし、糸継装置26は上記スプライサ装置に限らず、例えば機械式のノッタ等を採用することができる。
【0045】
糸品質測定器27は、糸16の太さを適宜のセンサで監視するように構成されている。また、糸品質測定器27の近傍には、当該糸品質測定器27が糸太さの異常を検出したときに直ちに糸16を切断するための図略のカッタが配置されている。
【0046】
糸継装置26の下側及び上側には、給糸ボビン15側の糸(下糸)を捕捉して案内する下糸案内パイプ(下糸捕捉案内部材)29と、パッケージ18側の糸(上糸)を捕捉して案内する上糸案内パイプ30と、が設けられている。下糸案内パイプ29の先端には吸引口31が形成され、上糸案内パイプ30の先端にはサクションマウス32が備えられている。2つの案内パイプ29,30には適宜の負圧源がそれぞれ接続されており、前記吸引口31及びサクションマウス32に吸引流を作用させることができる。
【0047】
この構成で、給糸ボビン15とパッケージ18との間で糸16が分断状態となったときには、下糸案内パイプ29の吸引口31が図3で示す位置で下糸を捕捉する。その後、下糸案内パイプ29は、軸33を中心にして上方へ回動することで、図4に示すように、糸継装置26に下糸を導入する。
【0048】
また、これとほぼ同時に、上糸案内パイプ30が図2の位置から軸34を中心として上方へ回動し、図3で示す位置において、パッケージ18表面上に存在する上糸の糸端をサクションマウス32によって捕捉する。続いて、上糸案内パイプ30は、軸34を中心として下方へ回動することで、図4に示すように、糸継装置26に上糸を導入する。
【0049】
そして、図4のように上糸と下糸が糸継装置26に導入された状態で、当該糸継装置26を駆動することで、上糸と下糸を糸継ぎし、給糸ボビン15とパッケージ18との間で糸16を連続状態とする。これにより、パッケージ18への糸16の巻取りを再開することができる。
【0050】
また、各巻取ユニット2は、当該巻取ユニット2が備えている各構成を制御するためのユニット制御部(図略)を備えている。各ユニット制御部は、機台制御装置3との間で通信可能に構成されている。ユニット制御部は、巻取ユニット2においてパッケージ18が満巻(規定量の糸が巻き取られた状態)になった場合は、玉揚台車4による玉揚作業を要求する旨の信号を機台制御装置3の機台制御部7に送信する。この玉揚要求(作業要求)は、機台制御装置3から玉揚台車4に送信される。
【0051】
次に、玉揚台車4について説明する。
【0052】
図1に示すように、玉揚台車4は、本体フレーム35と、糸引出しアーム(アーム部)36と、クレードル開放アーム37と、チャッカ38と、を主要な構成として備えている。
【0053】
玉揚台車4の本体フレーム35は、巻取ユニット2が並べられる方向(図1の左右方向)に沿って巻取ユニット2の上方に配置されたレール40に沿って移動可能に構成されている。玉揚台車4には図略の位置決め機構が設けられており、これにより、所望の巻取ユニット2に対応するように玉揚台車4を位置決めして停止させることができる。
【0054】
糸引出しアーム36は、細長く形成され、伸縮可能に構成されている。この糸引出しアーム36には図示しないエアシリンダが取り付けられており、このエアシリンダは、図略の圧縮空気源から供給される圧縮空気により伸縮駆動させることができる。糸引出しアーム36の先端には糸捕捉部41が取り付けられている。この糸捕捉部41は、適宜の方法で下糸案内パイプ29の近傍の糸16を捕捉することができるように構成されている。
【0055】
クレードル開放アーム37は、前記クレードル23を操作して開放し、満巻となったパッケージ18をクレードル23から取り外すことができるように構成されている。
【0056】
チャッカ38は、ボビンストッカ39に保持されている空の巻取ボビン22を掴むことができるように構成されている。また、このチャッカ38は、軸55に対して回動自在に取り付けられている。玉揚台車4は、このチャッカ38を、ボビンストッカ39に保持された状態の巻取ボビン22を掴む位置と、当該巻取ボビン22をクレードル23に取り付ける位置と、の間で回動させるための図略のカム機構を備えている。
【0057】
玉揚台車4は、当該玉揚台車4の移動や玉揚作業を制御するための台車制御部5を備える。台車制御部5は、機台制御部7及びユニット制御部と同様に、CPU、ROM、RAM等のハードウェアを備えるコンピュータとして構成されている。台車制御部5のROMには適宜の制御プログラム(玉揚台車4の移動を制御するプログラム、玉揚作業を制御するプログラム等)が記憶されており、上記のハードウェアとソフトウェアとの協働により、玉揚台車4が適切に動作するように制御することができる。なお、台車制御部5で実行されるプログラムには、巻取ユニット2を担当する担当領域を変更するプログラムが含まれており、詳細は後述する。
【0058】
次に、図5を参照しながら、玉揚台車4の担当領域について説明する。図5は、玉揚台車の担当領域6を示した模式図である。
【0059】
図5に示すように、本実施形態の自動ワインダ1には、40台の巻取ユニット2が備えられている。巻取ユニット2には、各巻取ユニットを識別するために、巻取ユニット2の一端側から順に、1番から40番までのユニット番号が割り当てられている。
【0060】
本実施形態の自動ワインダ1には、2台の玉揚台車4(即ち、第1玉揚台車4A及び第2玉揚台車4B)が備えられている。第1玉揚台車4A及び第2玉揚台車4Bは、共通のレール40に沿って移動可能に構成されている。
【0061】
図5の例において、第1玉揚台車4Aは、40台のうち1番から20番までの巻取ユニット2が属するように設定された担当領域6Aに関して玉揚作業を行う。言い換えれば、第1玉揚台車4Aの担当領域6Aには、並べられる方向に連続している20台の巻取ユニット2(対応すべき巻取ユニット20)が属している。第1玉揚台車4Aは、巻取ユニット2が並べられる方向に沿って移動して、1番から20番までの巻取ユニット2のうち玉揚作業を要求する巻取ユニット2の前で停止し、当該巻取ユニット2に対して玉揚作業を行う。ただし、担当領域6Aは後述するように変化し得る。
【0062】
図5の例において、第2玉揚台車4Bは、40台のうち21番から40番までの巻取ユニット2が属するように設定された担当領域6Bに関して玉揚作業を行う。言い換えれば、第2玉揚台車4Bの担当領域6Bには、並べられる方向に連続している20台の巻取ユニット2(対応すべき巻取ユニット20)が属している。第2玉揚台車4Bは、巻取ユニット2が並べられる方向に沿って移動して、21番から40番までの巻取ユニット2のうち玉揚作業を要求する巻取ユニット2の前で停止し、当該巻取ユニット2に対して玉揚作業を行う。ただし、担当領域6Bは後述するように変化し得る。
【0063】
前述のとおり、各巻取ユニット2のユニット制御部は、パッケージ18が満巻となった場合に玉揚要求を発生する。具体的には、ユニット制御部が玉揚要求の信号を機台制御装置3の機台制御部7に送信し、機台制御部7は、玉揚要求があった旨の信号をそれぞれの玉揚台車4の台車制御部5に送信する。機台制御装置3の機台制御部7が送信する信号には、玉揚作業を要求している巻取ユニット2を特定する情報(巻取ユニット2の番号)が含まれている。当該巻取ユニット2を担当する玉揚台車4は、上記の信号に基いて、玉揚要求を発生させた巻取ユニット2の位置まで移動し、前記満巻パッケージを取り外すとともに、空の巻取ボビンをセットする。
【0064】
しかし、1台の玉揚台車4が複数の巻取ユニット2を担当し、また、それぞれの巻取ユニット2が玉揚要求を発生させるときの玉揚台車4の位置及び作業状況は様々であるため、巻取ユニット2が玉揚要求を発生させてから当該巻取ユニット2のところに玉揚台車4が到着して玉揚作業を開始するまでの待ち時間は、各巻取ユニット2及び各玉揚台車4の状態に応じて様々に変化する。そこで、本実施形態の自動ワインダ1では、パッケージ18の生産効率低下の原因となる上記の待ち時間を減らすために、各玉揚台車4の担当領域6を、巻取ユニット2及び玉揚台車4の状態に応じて自動的に変更することができるように構成されている。
【0065】
以下、具体的に説明する。本実施形態では、各巻取ユニット2が玉揚要求を行ってから担当の玉揚台車4によって作業が開始されるまでの時間を待ち時間Twとしたとき、それぞれの巻取ユニット2において過去の所定時間T1の間に発生した待ち時間Twの積算値TwSUMがそれぞれの玉揚台車4の担当領域6で合計され、その合計値ΣTwSUMに基いて、担当領域6が変更される。これらの制御は、玉揚台車4に備えられた台車制御部5によって行われる。なお、本実施形態では、待ち時間Twを積算する対象となる上記所定時間T1の長さは、例えば8時間となるように設定されるが、これより短くても長くても良く、作業状況の全体的な傾向が上記の合計値ΣTwSUMに表れるのに十分な時間とすれば良い。また、上記の合計値ΣTwSUMの計算及び担当領域6の変更(再割当て)は所定時間毎に反復して行われ、その時間間隔は例えば3分、5分、10分、1時間、8時間等とすることができるが、これより短くても長くても良い。また、時間間隔は、シフト制が定められている工場においては、その時間単位を考慮して定めても良い。
【0066】
次に、巻取ユニット2の待ち時間Twに基いて玉揚台車4の担当領域6を変更する制御を説明する。
【0067】
1番から40番までの巻取ユニット2にそれぞれ備えられるユニット制御部は、玉揚要求をしてから玉揚台車4によって作業が開始されるまでの時間である待ち時間Twを、適宜の計時手段(例えば、タイマ回路)によって計測している。そして、それぞれの巻取ユニット2のユニット制御部は、適宜の問合せに応じて、過去の所定時間T1において発生した上記の待ち時間Twを積算した積算値TwSUMを、機台制御装置3を介して、当該巻取ユニット2が担当領域に属している玉揚台車4の台車制御部5に送信する。
【0068】
第1玉揚台車4Aが備える台車制御部5は、当該第1玉揚台車4Aの担当領域6Aに属するそれぞれの巻取ユニット2から上記の積算値(待ち時間積算値)TwSUMAの情報を取得する。そして、第1玉揚台車4Aの台車制御部5は、担当領域6Aの全ての巻取ユニット2の前記積算値TwSUMAを合計した値である待ち時間合計値ΣTwSUMAを計算する。
【0069】
また、第2玉揚台車4Bが備える台車制御部5は、当該第2玉揚台車4Bの担当領域6Bに属するそれぞれの巻取ユニット2から上記の積算値(待ち時間積算値)TwSUMBの情報を取得する。そして、第2玉揚台車4Bの台車制御部5は、担当領域6Bの全ての巻取ユニット2の前記積算値TwSUMBを合計した値である待ち時間合計値ΣTwSUMBを計算する。
【0070】
それぞれの玉揚台車4A,4Bが備える台車制御部5は、得られた待ち時間合計値ΣTwSUMA,ΣTwSUMBの情報を、他の玉揚台車に送信する。
【0071】
そして、第1玉揚台車4Aの台車制御部5は、第1玉揚台車4Aの担当領域6Aにおける待ち時間合計値ΣTwSUMAと、第2玉揚台車4Bの担当領域6Bにおける待ち時間合計値ΣTwSUMBと、の間に所定時間以上の差がある場合は、待ち時間合計値が大きい側の担当領域を巻取ユニット2の1台分縮小し、待ち時間合計値が小さい側の担当領域を巻取ユニット2の1台分拡大する。なお、第2玉揚台車4Bの台車制御部5においても全く同様の処理が行われる。
【0072】
この処理を適宜の時間間隔をおいて反復することにより、2つの担当領域6A,6Bが適宜変更されて、待ち時間合計値ΣTwSUMの偏りを減らすことができるので、巻取ユニット2の全体的な効率向上が期待される。
【0073】
あるいは、以下のような制御も考えられる。即ち、第1玉揚台車4Aの台車制御部5は、第1玉揚台車4Aの担当領域6Aにおける待ち時間合計値ΣTwSUMAと、第2玉揚台車4Bの担当領域6Bにおける待ち時間合計値ΣTwSUMBと、の履歴をそれぞれ記憶しておく。そして、例えば一方の待ち時間合計値が直前に比べて大きく増加し、他方の待ち時間合計値が直前に比べてあまり増加していない(又は減少している)場合は、増加した側の担当領域を巻取ユニット2の1又は複数台分縮小し、残りの側の担当領域をその分だけ拡大する。なお、第2玉揚台車4Bの台車制御部5においても全く同様の処理が行われる。
【0074】
このように、待ち時間合計値ΣTwSUMの直前からの変化(例えば、変化率)に基いて担当領域を変更する処理を適宜の時間間隔をおいて反復することによっても、巻取ユニット2の全体的な効率向上を実現することができる。
【0075】
なお、玉揚台車4A,4Bの担当領域6A,6Bを変更するにあたって、それぞれの担当領域6A,6Bを担当する玉揚台車4A,4Bが作業をしていない時間であるアイドリング時間が考慮されても良い。即ち、第1玉揚台車4Aの台車制御部5は、担当領域6Aの巻取ユニット2の何れからも玉揚要求がないために実質的に何もしていない時間を、適宜の計時手段(例えば、タイマ回路)によって取得して記憶することができる。そして、第1玉揚台車4Aの台車制御部5は、第1玉揚台車4Aのアイドリング時間TiAを過去の所定時間T2において積算したアイドリング時間積算値TiSUMAと、第2玉揚台車4Bのアイドリング時間TiBを過去の所定時間T2において積算したアイドリング時間積算値TiSUMBと、を計算する。アイドリング時間Tiを積算する対象となる上記所定時間T2の長さは、前記の所定時間T1と同じ時間として設定されるが、これより短くても長くても良い。そして、第1玉揚台車4Aのアイドリング時間積算値TiSUMAと、第2玉揚台車4Bのアイドリング時間積算値TiSUMBと、の間に所定時間以上の差がある場合は、アイドリング時間合計値が大きい側の担当領域を巻取ユニット2の1台分拡大し、アイドリング時間合計値が小さい側の担当領域を巻取ユニット2の1つ分縮小する。なお、第2玉揚台車4Bの台車制御部5においても全く同様の処理が行われる。
【0076】
この処理を適宜の時間間隔をおいて反復することにより、第1玉揚台車4A及び第2玉揚台車4Bの負荷が平準化されるので、巻取ユニット2の全体的な効率向上が期待される。
【0077】
ただし、玉揚台車4A,4Bのアイドリング時間積算値TiSUMを減らすことよりも、巻取ユニット2の待ち時間合計値ΣTwSUMを減らす方が、自動ワインダ1におけるパッケージ18の生産効率の向上に直接的に貢献する。従って、玉揚台車4A,4Bのアイドリング時間積算値TiSUMを減らす観点よりも、巻取ユニット2の待ち時間合計値ΣTwSUMを減らす観点を優先させて、担当領域6A,6Bを変更することが好ましい。
【0078】
ここで、2台の玉揚台車4A,4Bは共通のレール40を移動するが、例えばそれぞれの玉揚台車4A,4Bに電力を供給する図略のケーブルの長さの関係で、玉揚台車4A,4Bが移動可能な範囲がそれぞれ制限されることがある。この場合、上記の担当領域6A,6Bの変更は、玉揚台車4A,4Bが移動可能な範囲の中で行われることはいうまでもない。また、担当領域6A,6Bの最大範囲は、上記の機械的な制限の範囲内で、例えば機台仕様等により制限(固定)することもできる。
【0079】
なお、本実施形態の自動ワインダ1においては、担当領域6A,6B同士が重複しないように構成されている。これにより、担当領域6A,6B同士が一部重複する場合と比較して、担当領域6を変更する上記の処理を簡素化することができる。
【0080】
また、本実施形態の自動ワインダ1は、それぞれの担当領域6が各巻取ユニット2及び各玉揚台車4の状態に応じて変更される制御を行うか否かを、必要に応じて切替可能に構成されている。具体的には、自動ワインダ1は、オペレータが機台制御装置3を適宜操作することで、最適化モードと、固定モードと、を選択できるように構成されている。最適化モードが選択された場合、台車制御部5は各巻取ユニット2及び各玉揚台車4の状態に応じて玉揚台車4の担当領域6を決定し、これにより効率の良い作業を行うことができる。一方、固定モードが選択された場合、それぞれの担当領域6は当初の設定から変更されない。以上により、様々なニーズに応えることができる。
【0081】
以上に説明したように、本実施形態の自動ワインダ1は、複数の巻取ユニット2と、複数の玉揚台車4(第1玉揚台車4A及び第2玉揚台車4B)と、台車制御部5と、を備える。巻取ユニット2は、糸16を巻き取る処理を行う。玉揚台車4は、複数の巻取ユニット2が並べられた方向に移動可能である。台車制御部5は、玉揚台車4を制御する。それぞれの玉揚台車4A,4Bには、対応すべき巻取ユニット2が規定された担当領域6A,6Bが設定されている。巻取ユニット2の何れかにおいて玉揚要求が発生した場合には、当該玉揚要求が発生した巻取ユニット2の属している担当領域6が設定された玉揚台車4が当該巻取ユニット2に対して作業を行う。台車制御部5は、玉揚台車4A,4Bの担当領域6A,6Bを、巻取ユニット2の前記玉揚要求の発生から巻取ユニット2に対して作業が行われるまでの時間である待ち時間に応じて設定変更する。
【0082】
これにより、巻取ユニット2の状態に応じて玉揚台車4A,4Bの担当領域6A,6Bを柔軟に変更することができる。その結果、全体としての作業効率向上を実現することができる。
【0083】
また、本実施形態の自動ワインダ1において、それぞれの玉揚台車4A,4Bの担当領域6A,6Bは、互いに重複がないように定められている。
【0084】
これにより、玉揚台車4A,4Bの担当領域6A,6Bを変更する処理を簡素化することができる。
【0085】
また、本実施形態の自動ワインダ1において、台車制御部5は、それぞれの玉揚台車4A,4Bについて、当該玉揚台車4A,4Bの担当領域6A,6Bに属する巻取ユニット2の待ち時間合計値ΣTwSUMA,ΣTwSUMBを求め、この待ち時間合計値ΣTwSUMA,ΣTwSUMBに基いて、玉揚台車4A,4Bの担当領域6A,6Bを変更する。
【0086】
これにより、巻取ユニット2の待ち時間を考慮して、作業効率を全体的に高めるように玉揚台車4A,4Bの担当領域を変更することができる。
【0087】
また、本実施形態の自動ワインダ1において、台車制御部5は、それぞれの玉揚台車4A,4Bにおける待ち時間合計値ΣTwSUMA,ΣTwSUMBの変化に基いて、玉揚台車4A,4Bの担当領域6A,6Bを変更する。
【0088】
これにより、例えば、第1玉揚台車4Aの担当領域6Aにおいて巻取ユニット2の全体的な待ち時間が特に増加する傾向にある場合は、第1玉揚台車4Aの担当領域6Aの一部を第2玉揚台車4Bに移管させることができる。従って、巻取ユニット2の待ち時間の不均衡を容易に是正することができる。
【0089】
また、本実施形態の自動ワインダ1において、台車制御部5は、それぞれの玉揚台車4A,4Bについて、当該玉揚台車4A,4Bにおいて過去の所定時間に発生した前記アイドリング時間TiA,TiBの積算値であるアイドリング時間積算値TiSUMA,TiSUMBを求め、アイドリング時間積算値TiSUMA,TiSUMBに基いて、玉揚台車4A,4Bの担当領域6A,6Bを変更する。
【0090】
これにより、玉揚台車4A,4B自体の作業効率も適切に向上させることができる。
【0091】
また、本実施形態の自動ワインダ1においては、台車制御部5が玉揚台車4A,4Bの担当領域6A,6Bを巻取ユニット2の状態に応じて変更するか否かを切替可能である。
【0092】
これにより、自動ワインダ1に対する様々なニーズに応えることができる。
【0093】
また、本実施形態の自動ワインダ1において、玉揚台車4A,4Bの担当領域を、前記待ち時間に応じて設定変更する。
【0094】
これにより、玉揚作業の効率の良い自動ワインダ1を提供することができる。
【0095】
次に、第2実施形態を説明する。図6は、第2実施形態の自動ワインダ1xにおいて、玉揚台車4の担当領域6を示した模式図である。なお、本実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0096】
図6に示したように、本実施形態の自動ワインダ1xにおいては、玉揚台車4A,4Bの担当領域6A,6B同士が一部で重複するように定められている。
【0097】
具体的には、第1玉揚台車4Aの担当領域6Aは、1番から25番までの巻取ユニット2が属するように設定されている。第2玉揚台車4Bの担当領域6Bは、16番から40番までの巻取ユニット2が属するように設定されている。従って、16番から25番までの巻取ユニット2(重複領域6Oに属する巻取ユニット2)が玉揚要求を発生させた場合は、第1玉揚台車4A及び第2玉揚台車4Bの何れも当該巻取ユニット2に対して玉揚作業を行うことができる。
【0098】
本実施形態においても、それぞれの玉揚台車4A,4Bの担当領域6A,6Bは、待ち時間合計値ΣTwSUMA,ΣTwSUMBに応じて(あるいは、アイドリング時間積算値TiSUMA,TiSUMBに応じて)変更される。なお、本実施形態において、玉揚台車4A,4Bの台車制御部5が担当領域6A,6Bを変更するにあたっては、担当領域6A,6Bの重複部分の長さ(言い換えれば、重複領域6Oに属する巻取ユニット2の数)が変化しないように、2つの担当領域6A,6Bの境界を互いに連動させることとしている。担当領域6A,6Bの変更は、上述の第1実施形態と全く同様に行うことができる。
【0099】
ただし、第1玉揚台車4Aの担当領域6Aと、第2玉揚台車4Bの担当領域6Bと、を互いに独立させて変更しても良い(言い換えれば、担当領域6A,6Bの変更の結果、重複領域6Oに属する巻取ユニット2の数が変化しても良い)。この場合、担当領域6A,6Bをより高い自由度で変更することができる。
【0100】
以上に示すように、本実施形態の自動ワインダ1xにおいては、それぞれの玉揚台車4A,4Bの担当領域6A,6B同士で少なくとも一部が重複する。
【0101】
この場合、玉揚台車4A,4Bと、担当する巻取ユニット2と、の対応関係が複雑になるが、本実施形態の構成によれば、巻取ユニット2の状態に応じて玉揚台車4A,4Bの担当領域6A,6Bを適切に変更することができる。
【0102】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0103】
上記実施形態の自動ワインダ1,1xは、40台の巻取ユニット2を備えているが、巻取ユニット2の数はこれに限定されるものではない。また、上記実施形態の自動ワインダ1,1xにおいて、玉揚台車4は2台配置されているが、玉揚台車4を3台以上に変更することもできる。
【0104】
上記実施形態の自動ワインダ1,1xにおいては、担当領域6を変更する制御を、各玉揚台車4に備えられる台車制御部5が行っている。しかしながら、この制御を例えば機台制御装置3の機台制御部7が行っても良い。
【0105】
玉揚台車4A,4Bの担当領域6A,6Bの変更は、上記の例に限らず、他の様々な方法で行うことができる。例えば、本実施形態において担当領域6A,6Bを適切に定める問題は、1番から40番までの巻取ユニット2の待ち時間Twの積算値TwSUMの総和を最小化する組合せ最適化の問題として把握することができる。従って、組合せ最適化問題に用いられる一般的な手法を用いて、担当領域6A,6Bの変更を行うこともできる。
【0106】
巻取ユニット2に対して玉揚作業を行う玉揚台車4に限らず、例えば糸継作業を行う糸継台車に関しても、上記の実施形態と同様の制御を行うことができる。
【0107】
本発明は、自動ワインダに限定されず、様々な糸巻取機(例えば、紡績ユニットを複数並べて備える空気精紡機等)に適用することができる。ただし、上記の実施形態の自動ワインダ1,1xでは、給糸ボビン供給装置13によって、巻取ユニット2が複数並べて配置された一端側から給糸ボビン15が順次供給されるので、給糸ボビン15の供給に偏りが生じ易い。具体的には、40番に近い側(給糸ボビン供給装置13に近い側)の巻取ユニット2には給糸ボビン15が優先的に供給される一方、1番に近い側の巻取ユニット2には給糸ボビン15が供給されにくいという事情がある。本発明は、上記の自動ワインダ1,1xのように巻取ユニット2の位置等に応じて作業効率が変動する構成(言い換えれば、作業要求の発生頻度が異なる構成)に特に好適である。
【符号の説明】
【0108】
1 自動ワインダ(糸巻取機)
2 巻取ユニット(処理ユニット)
3 機台制御装置
4 玉揚台車(作業台車)
4A 第1玉揚台車
4B 第2玉揚台車
5 台車制御部(制御部)
6 担当領域
6A 第1玉揚台車の担当領域
6B 第2玉揚台車の担当領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6