(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-71713(P2017-71713A)
(43)【公開日】2017年4月13日
(54)【発明の名称】亜鉛含有部材用組成物、潤滑組成物及び摺動部材
(51)【国際特許分類】
C10M 139/06 20060101AFI20170324BHJP
C10M 139/00 20060101ALI20170324BHJP
C10M 101/02 20060101ALI20170324BHJP
C10M 105/04 20060101ALI20170324BHJP
C10M 107/02 20060101ALI20170324BHJP
C10M 105/36 20060101ALI20170324BHJP
C10M 105/38 20060101ALI20170324BHJP
C10M 105/18 20060101ALI20170324BHJP
C10M 105/14 20060101ALI20170324BHJP
C10M 107/34 20060101ALI20170324BHJP
C10M 107/50 20060101ALI20170324BHJP
C10M 107/38 20060101ALI20170324BHJP
C10M 117/00 20060101ALI20170324BHJP
C10M 115/08 20060101ALI20170324BHJP
C10M 113/10 20060101ALI20170324BHJP
C10M 113/12 20060101ALI20170324BHJP
C10M 119/22 20060101ALI20170324BHJP
C10N 10/02 20060101ALN20170324BHJP
C10N 10/04 20060101ALN20170324BHJP
C10N 10/06 20060101ALN20170324BHJP
C10N 10/08 20060101ALN20170324BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20170324BHJP
C10N 40/00 20060101ALN20170324BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20170324BHJP
【FI】
C10M139/06
C10M139/00 Z
C10M101/02
C10M105/04
C10M107/02
C10M105/36
C10M105/38
C10M105/18
C10M105/14
C10M107/34
C10M107/50
C10M107/38
C10M117/00
C10M115/08
C10M113/10
C10M113/12
C10M119/22
C10N10:02
C10N10:04
C10N10:06
C10N10:08
C10N30:06
C10N40:00 Z
C10N40:02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-200028(P2015-200028)
(22)【出願日】2015年10月8日
(71)【出願人】
【識別番号】390022275
【氏名又は名称】株式会社ニッペコ
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100121049
【弁理士】
【氏名又は名称】三輪 正義
(72)【発明者】
【氏名】吉田 喜郎
(72)【発明者】
【氏名】木村 洋介
(72)【発明者】
【氏名】梶田 淳
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104AA22B
4H104AA24B
4H104BA02A
4H104BA07A
4H104BB04A
4H104BB08A
4H104BB16B
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BB41A
4H104BE11B
4H104BE13B
4H104BJ07C
4H104BJ08C
4H104CB14A
4H104CD01A
4H104CD02B
4H104CD04A
4H104CJ02A
4H104DA02A
4H104FA01
4H104FA02
4H104FA03
4H104FA04
4H104LA03
4H104PA01
4H104PA50
(57)【要約】
【課題】潤滑性を従来に比べて向上させることが可能な亜鉛含有部材用組成物、潤滑組成物及び摺動部材を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、亜鉛を含有した材料を有して構成された部材の表面に対する組成物であって、有機スズ化合物を含むことを特徴とする。このように、亜鉛を含有する部材の表面に有機スズ化合物を塗布することで、潤滑性を向上させることができる。特に表面めっき層として亜鉛めっきが施されている構成では、亜鉛めっきの表面に有機スズ化合物を塗布することで、亜鉛めっきの剥離を抑制できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛を含有した材料を有して構成された部材の表面に対する組成物であって、有機スズ化合物を含むことを特徴とする亜鉛含有部材用組成物。
【請求項2】
前記有機スズ化合物のスズ原子は、1有機置換スズ、2有機置換スズ、或いは4有機置換スズの状態であることを特徴とする請求項1に記載の亜鉛含有部材用組成物。
【請求項3】
前記有機スズ化合物は、ジメチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジメチルスズビス(ドデシルメルカプチド)、ジブチルスズビス(ドデシルメルカプチド)、ジオクチルスズビス(ドデシルメルカプチド)、ジメチルスズビス(チオグリコール酸2−エチルヘキシル)、ジブチルスズビス(チオグリコール酸2−エチルヘキシル)、ジオクチルスズビス(チオグリコール酸2−エチルヘキシル)、ジメチルスズジアセタート、ジブチルスズジアセタート、ジオクチルスズジアセタート、ジメチルスズマレアート、ジブチルスズマレアート、ジオクチルスズマレアート、ジメチルスズビスチオグリセロール、ジブチルスズビスチオグリセロール、ジオクチルスズビスチオグリセロール、オクチルスズトリス(チオグリコール酸2−エチルヘキシル)、ビス(β−メトキシカルボニルエチル)スズジラウレートのうち、少なくともいずれか1種から選択されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の亜鉛含有部材用組成物。
【請求項4】
前記有機スズ化合物は、少なくとも、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズビス(チオグリコール酸2−エチルヘキシル)、ジオクチルスズマレアートのいずれか1種を含むことを特徴とする請求項3に記載の亜鉛含有部材用組成物。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の前記有機スズ化合物と、潤滑油、或いは、グリースの潤滑成分とを含むことを特徴とする亜鉛含有部材用の潤滑組成物。
【請求項6】
前記潤滑成分として、鉱物油、合成炭化水素油、ジエステル油、ポリオールエステル油、エーテル油、グリコール油、シリコーン油、及び、フッ素油のうち、少なくともいずれか1種から選択されることを特徴とする請求項5に記載の亜鉛含有部材用の潤滑組成物。
【請求項7】
前記グリースに含まれる増ちょう剤は、リチウム石けん、カルシウム石けん、ナトリウム石けん、アルミニウム石けん、リチウム複合石けん、カルシウム複合石けん、アルミニウム複合石けん、ウレア化合物、有機化ベントナイト、ポリテトラフルオロエチレン、シリカゲル、ナトリウムテレフタラメートのうち、少なくともいずれか1種から選択されることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の亜鉛含有部材用の潤滑組成物。
【請求項8】
亜鉛を含有した材料を有して構成された部材と、
前記部材の表面に被覆された潤滑層と、を有し、
前記潤滑層は、請求項1から請求項7のいずれかに記載の組成物を有して形成されてなることを特徴とする摺動部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、亜鉛含有部材用組成物、潤滑組成物及び摺動部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ドアロック機構、ウインドレギュレータ、シートレール等の自動車部品、及び各種機器における噛み合い部、ロック部、係止部等の摺動部を備えた部材には、多種多様な亜鉛めっきが施された鉄製部材が使用されている。
【0003】
従来、亜鉛めっきが施された鋼板等の金属板に対する摺動特性を向上させた摺動部材が知られている。例えば、このような摺動部材として知られている複層摺動部材は、鋼板、亜鉛めっき鋼板、ニッケルめっき鋼板等の金属裏金と、金属裏金の表面に形成されたフッ素樹脂から成る接合層と、接合層に一体に被着形成された四フッ化エチレン樹脂を含有した芳香族ポリアミド樹脂ペーパから成る摺動層とから成る。そして、摺動層には複数個の凹部が形成されていると共に凹部には潤滑油剤が充填されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、低速度で高面圧条件、中速度ないし高速度で低面圧条件の下で使用されても優れた摺動特性を発揮させる含油複層摺動部材が知られている。含油複層摺動部材は、鋼板、亜鉛めっき鋼板、ニッケルめっき鋼板等の金属裏金と、金属裏金の表面に形成されたフッ素樹脂から成る接合層と、接合層に一体に被着形成された四フッ化エチレン樹脂を含有した芳香族ポリアミド樹脂ペーパから成る摺動層とから成る。そして、摺動層には常温で液状ないしペースト状を呈するか、又は加温時液状を呈する潤滑油剤が含浸されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、架橋樹脂組成物と潤滑油又は潤滑油を基油とするグリースとから成る混合物を用いて、これを架橋樹脂組成物の融解温度以上に加熱し、次いで冷却固化して得られた潤滑性組成物が知られている。この架橋樹脂組成物は、ポリプロピレン、ポリエチレン及びエチレン・プロピレン・非共役ジエン三元共重合体を混合して架橋したものである(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
また、高架橋樹脂添加グリース組成物として、亜鉛めっきした鉄部材等の摺動部品に対して使用するグリースに馴染み促進剤の高架橋樹脂ビーズを添加したものもある(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−192961号公報
【特許文献2】特開平11−315294号公報
【特許文献3】特開平8−27475号公報
【特許文献4】特開2008−38047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで本発明者らは、ドアロック機構、ウインドレギュレータ、シートレール等の自動車部品、及び各種機器における噛み合い部、ロック部、係止部等の摺動部を備えた部材等の摺動部に対して、潤滑油、或いは、グリースに各種の添加剤を配合して、亜鉛めっきに対する潤滑性を試験した。
【0009】
その結果、例えば、極圧添加剤については亜鉛に対して反応性が悪く、潤滑性の向上については、ほとんど効果が発揮されなかった。また、摺動部材に施された亜鉛めっきそのものが圧力や摺動により基材(鉄材)から剥離し、剥離した破片が異物として潤滑油、或いは、グリース中に混入してしまい、摩耗を促進してしまうという問題点があった。
【0010】
また、特許文献3や特許文献4に記載された架橋樹脂組成物は、使用環境や摩擦熱等で融解温度付近になると、架橋樹脂が軟化、或いは溶解し、本来の性能を維持できなくなるため、使用できる温度領域が限られてしまうという欠点があった。
【0011】
そこで本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、潤滑性を従来に比べて向上させることが可能な亜鉛含有部材用組成物、潤滑組成物及び摺動部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、亜鉛を含有した材料を有して構成された部材の表面に対する組成物であって、有機スズ化合物を含むことを特徴とする。
【0013】
本発明では、前記有機スズ化合物のスズ原子は、1有機置換スズ、2有機置換スズ、或いは4有機置換スズの状態であることが好ましい。
【0014】
また本発明では、前記有機スズ化合物は、ジメチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジメチルスズビス(ドデシルメルカプチド)、ジブチルスズビス(ドデシルメルカプチド)、ジオクチルスズビス(ドデシルメルカプチド)、ジメチルスズビス(チオグリコール酸2−エチルヘキシル)、ジブチルスズビス(チオグリコール酸2−エチルヘキシル)、ジオクチルスズビス(チオグリコール酸2−エチルヘキシル)、ジメチルスズジアセタート、ジブチルスズジアセタート、ジオクチルスズジアセタート、ジメチルスズマレアート、ジブチルスズマレアート、ジオクチルスズマレアート、ジメチルスズビスチオグリセロール、ジブチルスズビスチオグリセロール、ジオクチルスズビスチオグリセロール、オクチルスズトリス(チオグリコール酸2−エチルヘキシル)、ビス(β−メトキシカルボニルエチル)スズジラウレートのうち、少なくともいずれか1種から選択されることが好ましい。
【0015】
特に本発明では、前記有機スズ化合物は、少なくとも、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズビス(チオグリコール酸2−エチルヘキシル)、ジオクチルスズマレアートのいずれか1種を含むことが好ましい。
【0016】
また本発明における潤滑組成物は、上記に記載の前記有機スズ化合物と、潤滑油、或いは、グリースの潤滑成分とを含むことを特徴とする。このとき、前記潤滑成分として、鉱物油、合成炭化水素油、ジエステル油、ポリオールエステル油、エーテル油、グリコール油、シリコーン油、及び、フッ素油のうち、少なくともいずれか1種から選択されることが好ましい。
【0017】
また本発明では、前記グリースに含まれる増ちょう剤は、リチウム石けん、カルシウム石けん、ナトリウム石けん、アルミニウム石けん、リチウム複合石けん、カルシウム複合石けん、アルミニウム複合石けん、ウレア化合物、有機化ベントナイト、ポリテトラフルオロエチレン、シリカゲル、ナトリウムテレフタラメートのうち、少なくともいずれか1種から選択されることが好ましい。
【0018】
また本発明における摺動部材は、亜鉛を含有した材料を有して構成された部材と、前記部材の表面に被覆された潤滑層と、を有し、前記潤滑層は、上記に記載の組成物を有して形成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、亜鉛を含有する部材の表面に有機スズ化合物を塗布することで、潤滑性を向上させることができる。特に表面めっき層として亜鉛めっきが施されている構成では、亜鉛めっきの表面に有機スズ化合物を塗布することで、亜鉛めっきの剥離を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】往復摺動試験方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施の形態(以下、「実施の形態」と略記する。)について、詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0022】
本発明者らは、亜鉛を含有する部材の潤滑組成物について誠意研究した結果、有機スズ化合物を含有した潤滑組成物を用いることで、従来に比べて効果的に、潤滑性を向上させることができることを見出した。
【0023】
(有機スズ化合物)
「有機スズ化合物」は、化合物中に、スズ原子と、有機基を構成する炭素原子との直接結合を含むものである。
【0024】
本実施の形態における有機スズ化合物のスズ原子は、1有機置換スズ、2有機置換スズ、或いは4有機置換スズの状態であることが好適である。3有機置換スズは、毒性が高く、人体や環境への影響の問題から使用できない。
【0025】
有機スズ化合物を化学式として示すと、RSnX
3(モノ有機スズ)、R
2SnX
2(ジ有機スズ)、R
4Sn(テトラ有機スズ)で表すことができる。このうち、Rは、C
mH
2mで示され、m=10〜20の範囲である。またXは、ラウレート、アセタート、マレアート、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリセロール等から選択される少なくとも1種である。
【0026】
本実施の形態における有機スズ化合物は、ジメチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、ジメチルスズビス(ドデシルメルカプチド)、ジブチルスズビス(ドデシルメルカプチド)、ジオクチルスズビス(ドデシルメルカプチド)、ジメチルスズビス(チオグリコール酸2−エチルヘキシル)、ジブチルスズビス(チオグリコール酸2−エチルヘキシル)、ジオクチルスズビス(チオグリコール酸2−エチルヘキシル)、ジメチルスズジアセタート、ジブチルスズジアセタート、ジオクチルスズジアセタート、ジメチルスズマレアート、ジブチルスズマレアート、ジオクチルスズマレアート、ジメチルスズビスチオグリセロール、ジブチルスズビスチオグリセロール、ジオクチルスズビスチオグリセロール、オクチルスズトリス(チオグリコール酸2−エチルヘキシル)、ビス(β−メトキシカルボニルエチル)スズジラウレートのうち、少なくともいずれか1種から選択されることが好ましい。
【0027】
このうち、ジオクチルスズジラウレート(以下の化学式1を参照)、ジオクチルスズビス(チオグリコール酸2−エチルヘキシル)(以下の化学式2を参照)、ジオクチルスズマレアート(以下の化学式3を参照)の少なくともいずれか1種を含むことがより好ましい。
【0031】
本実施の形態では、有機スズ化合物として、少なくとも、ジオクチルスズジラウレート、或いは、ジオクチルスズビス(チオグリコール酸2−エチルヘキシル)を含むことが最も好ましい。亜鉛めっきとの親和性が非常に優れていると考えられ、後述する実験に示すように、ジオクチルスズジラウレート、或いはジオクチルスズビス(チオグリコール酸2−エチルヘキシル)を有機スズ化合物として使用することで、亜鉛めっきの剥離を防止でき、潤滑性の向上をより効果的に図ることが可能である。
【0032】
(潤滑油タイプ、グリースタイプ)
本実施の形態の潤滑組成物は、上記に記載した有機スズ化合物と、潤滑油、或いはグリースの潤滑成分とを含むことを特徴とする。すなわち、潤滑油タイプとしては、有機スズ化合物と、潤滑成分としての潤滑油とを含む。また、グリースタイプとしては、有機スズ化合物と、潤滑成分としての基油、及び、増ちょう剤とを含む。
【0033】
ここで、有機スズ化合物は、潤滑組成物の全量を100重量部としたとき、0.1重量部〜10重量部の範囲内であることが好ましい。有機スズ化合物の含有量が0.1重量部よりも少ないと、潤滑組成物に有機スズ化合物を含有しても、亜鉛めっきの剥離を防止するといった目的の効果が不十分である。また、有機スズ化合物の含有量が10重量部を超えると、潤滑組成物中の有機スズ化合物の量が多すぎて潤滑性能が低下してしまい、また、これ以上、有機スズ化合物の含有量を多くしても、含有量に応じた目的の効果の更なる向上が得られず、価格も高価となるために実用的ではない。また、有機スズ化合物の含有量や、潤滑成分量は、使用用途に応じて、有機スズ化合物を、0.1重量部〜10重量部とした含有量の範囲内で適宜、調整することができる。
【0034】
潤滑成分として、鉱物油、合成炭化水素油、ジエステル油、ポリオールエステル油、エーテル油、グリコール油、シリコーン油、及び、フッ素油のうち、少なくともいずれか1種から選択されることが好ましい。これら潤滑成分は、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができ、その使用量は特に限定されず、塗布適性に応じてその量を選定することができる。潤滑成分は広温度範囲で使用できる点、ゴム・樹脂への適合性、添加剤との相溶性から、ポリαオレフィン及びエチレンαオレフィンオリゴマーが特に好ましい。
【0035】
本実施の形態のグリースに含まれる増ちょう剤は、リチウム石けん、カルシウム石けん、ナトリウム石けん、アルミニウム石けん、リチウム複合石けん、カルシウム複合石けん、アルミニウム複合石けん、ウレア化合物、有機化ベントナイト、ポリテトラフルオロエチレン、シリカゲル、ナトリウムテレフタラメートのうち、少なくともいずれか1種から選択されることが好ましい。増ちょう剤は、せん断安定性から、ステアリン酸リチウム、及び/又は、12−ヒドロキシステアリン酸リチウムであることが好ましい。リチウム石けんは、脂肪酸又はその誘導体と水酸化リチウムとのけん化反応物である。用いられる脂肪酸は、炭素数が2〜22の飽和又は不飽和の脂肪酸及びそれらの誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1種である。また、前記の脂肪酸又はその誘導体と水酸化リチウムとを反応させた「石けん」が市販されており、これを用いることもできる。
【0036】
また、必要に応じて、酸化防止剤、防錆剤、金属腐食防止剤、油性剤、耐摩耗剤、極圧剤、固体潤滑剤などを添加することができる。これら添加物の含有量は、0.01重量部〜20重量部程度の範囲内に収められる。酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン等から選択することができる。防錆剤としては、ステアリン酸などのカルボン酸、ジカルボン酸、金属石鹸、カルボン酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、又は多価アルコールのカルボン酸部分エステル等から選択することができる。金属腐食防止剤としては、ベンゾトリアゾール又はベンゾイミダゾール等から選択することができる。油性剤としては、ラウリルアミンなどのアミン類、ミリスチルアルコールなどの高級アルコール類、パルミチン酸などの高級脂肪酸類、ステアリン酸メチルなどの脂肪酸エステル類、又はオレイルアミドなどのアミド類等から選択することができる。耐摩耗剤としては、亜鉛系、硫黄系、リン系、アミン系、又はエステル系等から選択することができる。極圧剤としては、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、硫化オレフィン、硫化油脂、メチルトリクロロステアレート、塩素化ナフタレン、ヨウ素化ベンジル、フルオロアルキルポリシロキサン、又は、ナフテン酸鉛等から選択することができる。また、固体潤滑剤としては、黒鉛、フッ化黒鉛、ポリテトラフルオロエチレン、メラミンシアヌレート、二硫化モリブデン、硫化アンチモン等から選択することができる。
【0037】
(摺動部材)
図1は、摺動部材の一部を示す部分断面図である。
図1Aに示すように摺動部材は、基材10と、基材10の表面に形成された表面めっき層11と、表面めっき層11の表面に形成された潤滑層12とを有して構成される。
【0038】
基材10の材質を問うものではなく、適用製品によって種々変更されるが、基材10として純鉄やステンレス鋼等の鉄製部材である。
【0039】
また、表面めっき層11は、亜鉛を含むめっき層であり、亜鉛単独であってもよいし亜鉛合金で形成されてもよい。また、表面めっき層11は、表面に亜鉛めっき層が露出していればよく、例えば、銀めっき層などとの積層構造で構成されてもよい。
【0040】
潤滑層12は、本実施の形態における有機スズ化合物を含有する、潤滑油或いはグリースからなる潤滑層である。潤滑層12の膜厚は、数十μm〜数百μm程度である。潤滑層12は、表面めっき層11の表面全体に塗布形成されてもよいし、或いは部分的に塗布されたものであってもよい。「部分的」とは、格子状、海縞状(例えばドット状)、縞状等であり、表面めっき層11上に潤滑層12のない部分が存在する。なお最初、潤滑層12を部分的に塗布しても、使用状況によって全体的に広がり、潤滑層12を表面めっき層11の全域に塗布したような状態に変化してもよい。なお、潤滑層12の膜厚は、平均膜厚にて測定される。例えば、潤滑層12の膜厚は、潤滑層12上の複数点(少なくとも3点以上)にて、超音波法を用いて膜厚を測定し、それらを算術平均した値として示される。
【0041】
或いは
図1Bに示すように、潤滑層12は、表面めっき層11の表面に形成された有機スズ化合物層12aと、有機スズ化合物層12aの表面に形成された表面潤滑膜12bとの積層構造であってもよい。表面潤滑膜12bは有機スズ化合物を含まず、従来の潤滑油やグリースを用いることが出来る。このとき、
図1Bでは、例えば、有機スズ化合物を直接、表面めっき層11の表面に塗布した後、有機スズ化合物層12aの表面に従来の潤滑油やグリースを塗布したり、或いは、溶剤を含む有機スズ化合物を表面めっき層11の表面に塗布し、溶剤が除去されて、有機スズ化合物層12aが形成された後、有機スズ化合物層12aの表面に従来の潤滑油やグリースを塗布することができる。有機スズ化合物層12aの膜厚は、数μm〜数百μm程度である。例えば、有機スズ化合物を直接、表面めっき層11の表面に塗布した場合、有機スズ化合物層12aの膜厚は、数十μm〜数百μm程度とされる。また、溶剤タイプの場合、表面めっき層11の表面に溶剤を含む有機スズ化合物を塗布すると、溶剤成分が揮発するため、有機スズ化合物層12aの膜厚を薄く形成でき且つ有機スズ化合物の含有量に応じて数μm〜数十μm単位で種々調整できる。
【0042】
ここで本実施の形態の溶剤としては、有機スズ化合物を均一な溶液とすることができる有機溶剤であることが好ましい。「均一な溶液」とは、溶液の懸濁や沈殿物の発生が生じていない状態であり、目視にて確認することができる。
【0043】
また、有機スズ化合物は、溶剤の全量を100重量部としたとき、0.01重量部〜20重量部の範囲内であることが好ましい。有機スズ化合物の含有量が0.01重量部よりも少ないと、表面めっき層11の剥離を適切に防止できない。また、有機スズ化合物の含有量が20重量部を超えると、溶剤中の有機スズ化合物の量が多すぎて均一に混ざった溶剤を得にくくなったり、また、これ以上、有機スズ化合物の含有量を多くしても、含有量に応じた目的の効果の更なる向上が得られず、価格も高価となるために実用的ではない。
【0044】
本実施の形態における有機溶剤は、有機スズ化合物の希釈溶剤として用いる。表面めっき層11に対し、有機スズ化合物を薄膜で均一に塗布するために、有機溶剤は、塗布後、速やかに揮発することが好ましい。有機溶剤の沸点は、200℃を超えると乾燥性が悪いために、200℃以下(1気圧)であることが好ましく、150℃以下であることがより好ましく、130℃以下が更に好ましい。また、本実施の形態では、1種類の溶剤を用いてもよいし、種類の異なる、複数種の溶剤を用いてもよい。
【0045】
ここで溶剤としては、可燃性溶剤と不燃性溶剤とに分けることができる。可燃性溶剤としては、具体的には、芳香族炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、エステル系溶剤、エーテル系溶剤、ケトン系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、脂環式炭化水素系溶剤、脂肪族炭化水素系溶剤、脂肪族又は芳香族炭化水素混合物のうち、少なくとも1種から選択されることが好ましい。例えば、ハロゲン化炭化水素は、ヒトを含めた動植物に対して強い毒性を持つため、本実施の形態の溶剤として用いることは好ましくない。また、塩素を含む有機物を燃焼させたとき生成するダイオキシン類は、残留性有機汚染物質であり、環境中に放出されると長期にわたって生態系に影響を与えるため、本実施の形態の溶剤として用いることは好ましくない。
【0046】
芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、スチレン等から選択することができる。
【0047】
また、アルコール系溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、イソペンチルアルコール等から選択することができる。
【0048】
また、エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル等から選択することができる。
【0049】
またエーテル系溶剤としては、例えば、エチルエーテル、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等から選択することができる。
【0050】
また、ケトン系溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン等から選択することができる。
【0051】
また、グリコールエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート等から選択することができる。
【0052】
また、脂環式炭化水素系溶剤としては、例えば、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール等から選択することができる。
【0053】
また、脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、ノルマルヘキサン等から選択することができる。
【0054】
また、脂肪族又は芳香族炭化水素混合物としては、例えば、石油エーテル、石油ベンジン等から選択することができる。
【0055】
また本実施の形態では、不燃性溶剤として、少なくとも、フッ素溶剤を含むことが好ましい。フッ素溶剤は、具体的には、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、パーフルオロポリエーテル、ベンゾトリフルオライド、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、ジフルオロアセトン、ハイドロフルオロオレフィン、及び、ハイドロクロロフルオロオレフィンのうち、少なくともいずれか1種から選択されることが好ましい。
【0056】
また、有機スズ化合物との相溶性、地球温暖化係数、及び、オゾン層破壊係数の観点から、上記に挙げたフッ素溶剤のうち、少なくとも、ハイドロクロロフルオロオレフィンを選択することが好ましい。
【0057】
なお、上記した溶剤中に占める有機スズ化合物の含有量や有機溶剤の沸点の好ましい範囲は、有機溶剤が可燃性有機溶剤であっても不燃性有機溶剤であっても変わらない。
【0058】
本実施の形態では、ドアロック機構、ウインドレギュレータ、シートレール等の自動車部品、及び各種機器における噛み合い部、ロック部、係止部等の摺動部を備えた摺動部材の表面潤滑層として適用される。ここで「部材」とは、部品、部品を組み合わせた機構、器具等を指し、所定の形状(形状自体を問うものではない)を備えたものを指す。
【0059】
以上のように、本実施の形態における組成物は、亜鉛を含有した材料を有して構成された部材の表面保護用としての機能を備え、これにより、亜鉛めっきの剥離を防止でき、従来に比べて潤滑性を効果的に向上させることができる。
【実施例】
【0060】
以下、本発明の効果を明確にするために実施した実施例により本発明を詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0061】
以下の表1及び表2に示す配合で、実施例1〜実施例6、参照例1、参照例2、及び従来例1及び従来例2を調製した。使用した原料は以下の通りである。
【0062】
(実施例1)
有機スズ化合物A ジオクチルスズジラウレート(C
40H
80O
4Sn):2重量部
潤滑油(基油) ポリαオレフィン(動粘度(40℃):30mm
2/s):98重量部
(実施例2)
有機スズ化合物A ジオクチルスズジラウレート(C
40H
80O
4Sn):2重量部
基油 ポリαオレフィン(動粘度(40℃):30mm
2/s):88重量部
増ちょう剤 リチウム石けん(12−ヒドロキシステアリン酸リチウム):10重量部
(実施例3)
有機スズ化合物A ジオクチルスズジラウレート(C
40H
80O
4Sn):10重量部
基油 ポリαオレフィン(動粘度(40℃):30mm
2/s):80重量部
増ちょう剤 リチウム石けん(12−ヒドロキシステアリン酸リチウム):10重量部
(実施例4)
有機スズ化合物A ジオクチルスズジラウレート(C
40H
80O
4Sn):0.1重量部
基油 ポリαオレフィン(動粘度(40℃):30mm
2/s):89.9重量部
増ちょう剤 リチウム石けん(12−ヒドロキシステアリン酸リチウム):10重量部
(実施例5)
有機スズ化合物B ジオクチルスズビス(チオグリコール酸2−エチルヘキシル):2重量部
基油 ポリαオレフィン(動粘度(40℃):30mm
2/s):88重量部
増ちょう剤 リチウム石けん(12−ヒドロキシステアリン酸リチウム):10重量部
(参照例1)
有機スズ化合物A ジオクチルスズジラウレート(C
40H
80O
4Sn):0.05重量部
潤滑油(基油) ポリαオレフィン(動粘度(40℃):30mm
2/s):99.95重量部
(参照例2)
有機スズ化合物A ジオクチルスズジラウレート(C
40H
80O
4Sn):0.05重量部
基油 ポリαオレフィン(動粘度(40℃):30mm
2/s):89.95重量部
増ちょう剤 リチウム石けん(12−ヒドロキシステアリン酸リチウム):10重量部
(従来例1)
基油 ポリαオレフィン(動粘度(40℃):30mm
2/s):88重量部
増ちょう剤 リチウム石けん(12−ヒドロキシステアリン酸リチウム):10重量部
極圧添加剤 ZnDTP(動粘度(100℃):14.0mm
2/s):2重量部
(従来例2)
基油 ポリαオレフィン(動粘度(40℃):30mm
2/s):84重量部
増ちょう剤 リチウム石けん(12−ヒドロキシステアリン酸リチウム):10重量部
極圧添加剤 ZnDTP(動粘度(100℃):14.0mm
2/s):2重量部
固体潤滑剤A ポリテトラフルオロエチレン(平均粒径6.5μm):2重量部
固体潤滑剤B メラミンシアヌレート(平均粒径3.1μm):2重量部
【0063】
実施例1及び参照例1では、原料を秤量し、攪拌混合することにより、均一な溶液を得ることができた。
【0064】
また、実施例2〜実施例5、参照例2、及び従来例1、従来例2では、基油の存在下、リチウム石けんを合成し、攪拌しながら温度上昇させた。次いで、80℃以下に冷却した後、各種添加剤を処方して、三段ロールミル、ディスパーミルやコロイドミル等を使用することにより均一なグリース組成物を得ることができた。
【0065】
混和ちょう度は、NLGI No.2グレードにて調整した。なお、試験方法はJIS K 2220に基づく。
【0066】
(評価方法)
試験片(球):亜鉛めっき球(φ10mm)
試験片(板):亜鉛めっき鋼板
試験荷重:500g
摺動速度:5mm/s
摺動幅:5mm
試験温度:80℃
グリース膜厚:0.2mm
往復摺動回数:1000回
【0067】
往復摺動試験機に、亜鉛めっきが施された試験片を取り付け、往復摺動後の亜鉛めっきの剥離状況をレーザー顕微鏡で観察した。
【0068】
図2は、往復摺動試験方法を説明するための模式図である。
図2に示す符号1は、試験片(亜鉛めっき球(φ10mm))であり、このとき、試験片1には垂直方向Bから荷重がかけた状態で、亜鉛めっき鋼板2をA方向に往復摺動させた。なお試験片での亜鉛めっき厚さは、5μm程度であった。上記のレーザー顕微鏡にて、めっきの剥離摩耗深さを観察した。そして、剥離摩耗深さが2.0μm未満を○、2.0μm以上3.0μm未満を△、3.0μm以上を×として評価した。評価試験結果を表1及び表2に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
表1に示すように、実施例1〜実施例5は、いずれも、有機スズ化合物を含有しているため、亜鉛めっき表面に有機スズ化合物の被膜が形成されることで、評価結果はいずれも○であり、亜鉛めっきの剥離を防止できることがわかった。
【0071】
また、有機スズ化合物は0.1重量部〜10重量部あれば、有機スズ化合物を含有することによる効果の発現(亜鉛めっきの剥離防止)は十分であることがわかった。なお、有機スズ化合物は10.0重量部を超えても添加量に応じて更なる効果の発現はなく、また価格も高価となり、実用的ではない。
【0072】
【表2】
【0073】
表2に示すように、参照例1及び参照例2は、有機スズ化合物を含むものであり、従来例に比べて、亜鉛めっきに対する剥離を抑制する効果が見られた(評価結果は△)。したがって、参照例1及び参照例2も実施例の一つではあるが、上記に挙げた実施例1〜実施例5に比べて亜鉛めっきに対する剥離の抑制効果は劣る結果となった。これは、参照例1及び参照例2では、有機スズ化合物が0.05重量部と低いため、有機スズ化合物の添加に基づく効果の発現には、有機スズ化合物の含有量が少なすぎることによる。
【0074】
また、従来例1及び従来例2は、有機スズ化合物以外の添加剤を用いており、評価結果は×であり、亜鉛めっきの剥離は抑制できないことがわかった。
【0075】
(実施例6)
亜鉛メッキ板に予め有機スズ化合物を直接塗布し、その上に従来例2のグリースを塗布して、上記した往復摺動試験を行い、評価を行った。試験の結果、実施例6での剥離摩耗深さは2.0μm未満であり、めっき剥離が抑制しており、○の評価であった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明における組成物を、亜鉛を含有した材料を有して構成された部材の潤滑組成物として用いることができる。本発明では、例えば、ドアロック機構、ウインドレギュレータ、シートレール等の自動車部品、及び各種機器における噛み合い部、ロック部、係止部等の摺動部を備えた摺動部材に適用でき、摺動特性を向上させることが可能である。特に自動車などのように、接触安定性の合格基準が非常に高い分野においても安定して適用することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
10 基材
11 表面めっき層
12 潤滑層
12a 有機スズ化合物層
12b 表面潤滑膜