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特開2017-71755親水性多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜(II)
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-71755(P2017-71755A)
(43)【公開日】2017年4月13日
(54)【発明の名称】親水性多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜(II)
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/00 20060101AFI20170324BHJP
   B01D 71/36 20060101ALI20170324BHJP
   B01D 71/52 20060101ALI20170324BHJP
【FI】
   C08J9/00 ACEW
   B01D71/36
   B01D71/52
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2016-119785(P2016-119785)
(22)【出願日】2016年6月16日
(31)【優先権主張番号】14/815,578
(32)【優先日】2015年7月31日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】596064112
【氏名又は名称】ポール・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Pall Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100148596
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 和弘
(72)【発明者】
【氏名】マーシン ステイジアック
(72)【発明者】
【氏名】ハッサン アイット‐ハドゥ
(72)【発明者】
【氏名】フランク オニェマウワ
(72)【発明者】
【氏名】アマーナス シン
【テーマコード(参考)】
4D006
4F074
【Fターム(参考)】
4D006GA02
4D006GA44
4D006MA01
4D006MA02
4D006MA03
4D006MA31
4D006MB09
4D006MB20
4D006MC30X
4D006MC45X
4D006MC71X
4D006MC79X
4D006MC81
4D006MC83
4D006MC85
4D006MC86
4D006NA35
4D006NA36
4D006NA54
4D006NA62
4D006PA01
4D006PA10
4D006PB02
4D006PB09
4D006PB52
4D006PB55
4D006PC01
4D006PC02
4D006PC11
4D006PC12
4D006PC41
4F074AA39
4F074AA76
4F074AA98
4F074AD01
4F074CA03
4F074CA05
4F074CA06
4F074CA07
4F074CC02Y
4F074CC04Z
4F074CC28X
4F074CC29X
4F074CC32Z
4F074DA23
4F074DA24
4F074DA43
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の親水性多孔質膜、その調製方法、及び該親水性多孔質膜を通して流体を濾過する方法を提供する。
【解決手段】PTFE及び式(I)で表される両親媒性コポリマーを含む親水性多孔質PTFE膜。

(両親媒性コポリマーがホモポリマー、又はランダム若しくはブロックコポリマー;Rfがペルフルオロ置換基;Rh1及びRh2が親水性基又は塩素;m、n、及びoが独立して0〜1000の整数;10≦m+n+o;Yがヒドロキシル)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及び式(I)の両親媒性コポリマーを含む親水性多孔質膜であって、
【化1】

式中、前記両親媒性コポリマーがランダム又はブロックコポリマーであり、Rfがペルフルオロ置換基であり、一方でRh及びRhが親水性基又は塩素であり、m及びnが独立して0〜1000であるが、但し、m+n+oが10以上であり、Yがヒドロキシルであることを条件とする、親水性多孔質膜。
【請求項2】
Rfがペルフルオロ置換アルキルであり、アルキル鎖がその鎖中に任意選択で1つ又は複数の酸素原子を含有し得る、請求項1に記載の親水性多孔質膜。
【請求項3】
RfがC2p+1−(CH(OCHであり、式中、pが1〜12であり、qが0〜3であり、rが0〜2である、請求項1又は2に記載の親水性多孔質膜。
【請求項4】
Rfが独立して、C17CH、C13(CHOCH、CCH、及びCFから選択される、請求項3に記載の親水性多孔質膜。
【請求項5】
Rfが、C17CH及びC13(CHOCHから選択される、請求項4に記載の親水性多孔質膜。
【請求項6】
Rh及びRhが独立して、ヒドロキシル、アシルオキシ、トリフルオロアセチル、アルキルオキシ、塩素、アリルオキシ、アルキルチオ、及びアルキルチオプロピルオキシから選択され、アルキルチオ及びアルキルチオプロピルオキシのアルキル部分が任意選択で、ヒドロキシル、カルボン酸、スルホン酸、ホスホン酸、四級アンモニウム、アルキルスルホニル、又はヘテロシクリルで置換される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の親水性多孔質膜。
【請求項7】
Rh及びRhが、ヒドロキシル及びトリフルオロアセチルから選択される、請求項6に記載の親水性多孔質膜。
【請求項8】
前記両親媒性コポリマーが:
【化2】

から選択される、請求項1に記載の親水性多孔質膜。
【請求項9】
親水性多孔質PTFE膜を調製する方法であって、
(i)PTFE及び両親媒性コポリマー、並びに任意選択で滑剤を含むブレンドを調製するステップと、
(ii)前記ブレンドをテープへと押出するステップと、
(iii)前記テープを二軸延伸して、親水性多孔質膜を得るステップと、
任意選択で、
(iv)前記親水性多孔質膜を薬剤と反応させて、前記両親媒性コポリマーの化学構造を改変するステップと、任意選択で、
(v)前記親水性多孔質膜をアニーリングするステップと
を含み、前記両親媒性コポリマーが、式(I):
【化3】

のものであり、式中、前記両親媒性コポリマーがランダム又はブロックコポリマーであり、Rfがペルフルオロ置換基であり、一方でRh及びRhが親水性基又は塩素であり、m、n、及びoが独立して0〜1000であるが、但し、m+n+oが10以上であり、Yがヒドロキシルであることを条件とする、方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法によって製造される、親水性多孔質膜。
【請求項11】
流体を濾過する方法であって、前記流体を請求項1〜8又は10のいずれか一項に記載の親水性多孔質膜を通して通過させるステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
[0001]多孔質PTFE膜の、機械的強度、耐化学性又は化学的不活性、非接着性、優れた誘電特性、高温での熱安定性、及び低い摩擦係数を含む特性は、様々な用途について多孔質PTFE膜を非常に魅力的なものとする。しかしながら、ある特定の用途においては、多孔質PTFE膜の内在特性に影響を及ぼすことなく、その濡れ特性を向上させることが有益である。PTFE膜の1つ又は複数の特性を修正する試みがなされてきたが、これらの試みの多くは、PTFEの魅力的な特性のうちの1つ又は複数、例えば機械的強度の低下を結果としてもたらす。
【0002】
[0002]前述から、多孔質PTFE膜の機械的強度に有意に影響を及ぼすことなく、向上した濡れ特性をもつ多孔質PTFE膜を調製することに対する必要性が、満足されずに存在することが示される。
【発明の簡単な概要】
【0003】
[0003]本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及び式(I):
【化1】

の両親媒性コポリマーを含む親水性多孔質膜であって、式中、両親媒性コポリマーがランダム又はブロックコポリマーであり、Rfがペルフルオロ置換基であり、一方でRh及びRhが親水性基又は塩素であり、m、n、及びoが独立して0〜1000であるが、但し、m+n+oが10以上であり、Yがヒドロキシルであることを条件とする、親水性多孔質膜を提供する。
【0004】
[0004]本発明は、親水性多孔質PTFE膜を調製する方法であって、
(i)PTFE及び両親媒性コポリマー、並びに任意選択で滑剤を含むブレンドを調製するステップと、
(ii)ブレンドをテープへと押出するステップと、
(iii)テープを二軸延伸して、親水性多孔質膜を得るステップと、任意選択で、
(iv)親水性多孔質膜を薬剤と反応させて、両親媒性コポリマーの化学構造を改変するステップと、任意選択で、
(v)親水性多孔質膜をアニーリングするステップとを含み、
両親媒性コポリマーが、式(I):
【化2】

のものであり、式中、両親媒性コポリマーがホモポリマー、又はランダム若しくはブロックコポリマーであり、Rfがペルフルオロ置換基であり、一方でRh及びRhが親水性基又は塩素であり、m、n、及びoが独立して0〜1000であるが、但し、m+n+oが10以上であり、Yがヒドロキシルであることを条件とする、方法をさらに提供する。
【0005】
[0005]親水性多孔質膜は、PTFE膜の長所の多く、例えば、機械的強度を共有し、同時に高い水準の水濡れ性を提示する。
【0006】
[0006]本発明は、これらの親水性多孔質PTFE膜を通して流体を濾過する方法もさらに提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】150℃でアニーリングした親水性PTFE膜の表面の光学顕微鏡写真である。
図2】250℃でアニーリングした親水性PTFE膜の表面の光学顕微鏡写真である。
図3】350℃でアニーリングした親水性PTFE膜の表面の光学顕微鏡写真である。
【発明の詳細な説明】
【0008】
[0010]ある実施形態によれば、本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及び式(I):
【化3】

の両親媒性コポリマーを含む親水性多孔質膜であって、式中、両親媒性コポリマーがランダム又はブロックコポリマーであり、Rfがペルフルオロ置換基であり、一方でRh及びRhが親水性基又は塩素であり、m及びnが独立して0〜1000であるが、但し、m+n+oが10以上であり、Yがヒドロキシルであることを条件とする、親水性多孔質膜を提供する。
【0009】
[0011]実施形態においては、m、n、及びoは、それぞれのモノマーの重合度を表し、それぞれ独立して、約10〜約1000以上、好ましくは約100〜約200である。
【0010】
[0012]他の実施形態においては、m、n、及びoはコポリマー中に存在するモノマーのモル分率を表し、それぞれ、独立して、0〜99モル%、好ましくは10〜40モル%の範囲であり得る。
【0011】
[0013]それぞれのモノマーブロックは、ブロックコポリマー中に任意の好適な質量%で存在することができ、例えば、ある実施形態においては、約99%:約1%〜約50%:約50%、好ましくは約90%:約10%〜約70%:約30%、より好ましくは約75%:約25%でもよい。
【0012】
[0014]コポリマーは、任意の好適な分子量のものであることができ、例えば、ある実施形態においては、数平均分子量又は重量平均分子量(Mn又はMw)が約10kDa〜約1000kDa、好ましくは約75kDa〜約500kDa、より好ましくは約250kDa〜約500kDaでもよい。
【0013】
[0015]本発明の両親媒性コポリマーは、任意の好適な方法で、例えば、フッ素化エポキシ化合物の開環重合で調製することができる。例えば、米国特許出願公開第2009/0030175号を参照されたい。開環重合は、2つのモノマー、ペルフルオロアルキルエポキシド及びt−ブチルグリシジルエーテル(TGBE)の混合物において下に例証されるように、トリアルキルアルミニウム及び有機対カチオンを有する塩の存在下で行われる。結果として得られたジブロックコポリマーを、トリフルオロ酢酸等の酸と反応させてt−ブチル基を除去し、過フッ化エチレンオキシド及びヒドロキシメチルエチレンオキシドのコポリマーを得る。
【化4】
【0014】
[0016]ある実施形態においては、トリブロックコポリマーを調製するために、過フッ化エチレンオキシド及びTGBEから得られたジブロックブロックコポリマー等のジブロックコポリマーをまず調製し、第3のモノマーを添加し、重合を継続することができる。
【0015】
[0017]モノマーの重合は、好適な溶媒、例えばフッ素化溶媒中で行われる。溶媒は、形成されるべきフッ素化ポリマーの適切な溶解度に基づいて選択され得る。好適な溶媒の例は、ヘキサフルオロベンゼンである。好適な溶媒の例としては、ベンゼン、トルエン、及びキシレン等の芳香族炭化水素、n−ペンタン、ヘキサン、及びヘプタン等の脂肪族炭化水素、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、テトラクロロエタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、及びトリクロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素、並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0016】
[0018]モノマー濃度は、1〜50重量%の範囲、好ましくは2〜45重量%の範囲、より好ましくは3〜40重量%の範囲でもよい。
【0017】
[0019]重合は、任意の好適な温度、例えば0〜150℃、好ましくは0〜80℃で実行することができる。
【0018】
[0020]ブロックコポリマーを調製するために、例えば、重合は、ブロックのそれぞれの適切な鎖長を得るのに好適な任意の時間実行することができ、この時間は、約1分間〜100時間でもよい。
【0019】
[0021]触媒の量は、任意の好適な量で選択することができる。例えば、触媒のモノマーに対するモル比は、約1:10〜約1:1000、好ましくは約1:50〜1:500、より好ましくは約1:100〜約1:200でもよい。例えば、触媒のモノマーに対するモル比は、1:n、1:m又は1:oであり得、ここで、n、m及びoは平均重合度である。
【0020】
[0022]ポリマーは、好適な技法、例えば、非溶媒との沈殿によって単離することができる。
【0021】
[0023]コポリマーは、それらの分子量及び分子量分布について、任意の既知の技法で特徴付けることができる。例えば、MALS−GPC技法を用いることができる。この技法は、移動相を使用して、高圧ポンプを介してポリマー溶液を固定相で充填されたカラムのバンクを通して溶出させる。固定相はポリマー試料を鎖のサイズに従って分離し、その後そのポリマーを3つの異なる検出器で検出する。一続きの検出器、例えば、連続する、紫外線検出器(UV検出器)、その後の多角度レーザー光散乱検出器(MALS検出器)、次いでそれに続く屈折率検出器(RI検出器)を用いることができる。UV検出器は254nmの波長におけるポリマーの光吸収を測定し、MALS検出器は、移動相に対する、ポリマー鎖からの散乱光を測定する。
【0022】
[0024]コポリマーの多分散度は、反応条件に依存する。例えば、コポリマーは、1.05〜2.5、好ましくは1.1〜1.2のMw/Mnを有する。
【0023】
[0025]親水性に改変されたPTFE膜を形成するための、両親媒性コポリマー、それらの構造、及び代表的配合物の例を、表1に示す。
【0024】
[0026]
【表1】
【0025】
[0027]本発明は、親水性多孔質PTFE膜を調製する方法であって、
(i)PTFE及び両親媒性コポリマー、並びに任意選択で滑剤を含むブレンドを調製するステップと、
(ii)ブレンドをテープへと押出するステップと、
(iii)テープを二軸延伸して、親水性多孔質膜を得るステップと、
任意選択で、
(iv)親水性多孔質膜を薬剤と反応させて、両親媒性コポリマーの化学構造を改変するステップと、任意選択で、
(v)親水性多孔質膜をアニーリングするステップとを含み、
両親媒性コポリマーが、式(I):
【化5】

のものであり、式中、両親媒性コポリマーがランダム又はブロックコポリマーであり、Rfがペルフルオロ置換基であり、一方でRh及びRhが親水性基又は塩素であり、m、n、及びoが独立して0〜1000であるが、但し、m+n+oが10以上であり、Yがヒドロキシルであることを条件とする、方法をさらに提供する。
【0026】
[0028]必要量のPTFE粉末を、好適な溶媒、例えばアセトン又はメチルエチルケトン等のケトン溶媒のコポリマーの溶液と混合してブレンドを得て、その後、これを無臭ミネラルスピリット、例えばIsopar G等の滑剤と共に混合し、結果として得られたペーストを、例えば双ローラーにおいて剪断にかけ、少なくとも2回、それぞれ約55秒間、約300psi以上の圧力の下でビレットへと形成する。結果として得られたビレットを、室温で約12時間以上平衡化する。ビレットは次いで、所望の形状へと押出される。例えば、押出は、26mmのダイ間隔のサイズ、最大圧力、及び55℃の一定温度で行い、管状のPTFEテープを結果としてもたらす。次いで、この管状のテープを中心軸に沿って切り開き、ピペットの周りに再び巻き、新しいビレット(非圧縮)を結果として得る。新しいビレットを第1の押出工程中に使用した条件と同一の条件で再押出する。このステップは、PTFEテープに有利な、交差方向の機械的特性を提供するために付け加えられる。9〜10ミルのテープ厚さを標的としてカレンダリングを30℃で行い、4×4インチに切る。次いで、結果として得られたテープを125℃で1時間乾燥させ、それによって押出されたテープから滑剤を除去する。
【0027】
[0029]次いで、このテープを以下の条件で延伸する。300%/秒の延伸速度において、縦方向(MD)及び横方向(TD)の延伸比は3である。延伸オーブン内の温度を150℃に設定する。
【0028】
[0030]次いで、延伸したテープをアニーリングする。アニーリングは、350℃のアニーリングオーブン中で5秒間実行し、その後テープを冷却する。上の延伸工程によって生成される多孔度は、冷却の際にも保持される。
【0029】
[0031]任意選択で、上で得られた多孔質膜は、酸と反応させる。
【0030】
[0032]本発明の実施形態によれば、親水性多孔質PTFE膜は、例えば1nm〜100nmの直径の細孔を有する膜であるナノ多孔質膜や、1μm〜10μmの直径の細孔を有するミクロ多孔質膜といった多孔質膜である。
【0031】
[0033]結果として得られる多孔質膜の表面張力は、以下のように決定できる。例えば、PTFE多孔質支持体のシートは、IPA溶媒で膜シートを予め湿らせ、この膜を0.1質量%〜10質量%の範囲の濃度をもつコーティングポリマー溶液中に浸すことで、室温においてコーティングされる。コーティング時間は(1分〜12時間)の間の範囲である。支持体を浸した後、支持体は、100℃〜160℃の対流式オーブンで乾燥させる。乾燥時間は(10分〜12時間)の間の範囲である。結果として得られる多孔質PTFE膜の湿潤特性は、臨界濡れ表面張力を測定することで測定される。
【0032】
[0034]表面張力に関する表面改変における変化は、臨界濡れ表面張力(CWST)を測定することで測定した。この方法は、ある特定の組成物の溶液のセットに依存する。各溶液は、特異的な表面張力を有する。溶液の表面張力は、僅かな不等増分において25〜92ダイン/cmの範囲である。膜の表面張力を測定するために、膜は白色ライトテーブルの上に置かれ、ある特定の表面張力の、一滴の溶液を膜表面に適用し、その液滴が膜を貫通して明るい白色になるのにかかった時間を、光が膜を通り抜けた指標として記録する。液滴が膜を貫通するのにかかった時間が≦10秒であるとき、即時濡れと考察する。時間が>10秒である場合、溶液は部分的に膜を湿らせたと考察する。
【0033】
[0035]本発明の実施形態による親水性多孔質PTFE膜は、例えば、診断用途(例えば、試料調製及び/若しくは診断用横流型装置を含む)、インクジェット用途、リソグラフィ、例えばHD/UHMW PE系媒体の代替品として、製薬業用の流体の濾過、金属除去、超純水の生成、工業用水及び表面水の処理、医療用途のための流体の濾過(家庭用及び/又は患者用の使用を含む、例えば静脈内用途、また例えば血液等の生物流体の濾過を含む(例えば、ウイルス除去))、電子産業用の流体の濾過(例えば、マイクロエレクトロニクス産業におけるフォトレジスト流体及び高温SPMの濾過)、飲食業界用の流体の濾過、ビール濾過、浄化、流体を含む抗体及び/又はタンパク質の濾過、流体を含む核酸の濾過、細胞検出(インサイチュを含む)、細胞採取、並びに/又は細胞培養流体の濾過を含む、様々な用途において使用することができる。代わりに又はその上、本発明の実施形態による多孔質膜は、空気及び/又はガスを濾過するために使用でき、及び/又は通気用途(例えば、空気及び/又はガスの膜通過を許容するが、液体は通過させない)のために使用することができる。本発明の実施形態による多孔質膜は、例えば、眼科手術用製品等の手術用器具及び製品を含む、様々な器具において使用することができる。
【0034】
[0036]本発明の実施形態によれば、親水性多孔質PTFE膜は、平面状、平板、ひだ状、管状、らせん形、及び中空繊維等の様々な構成を有し得る。
【0035】
[0037]本発明の実施形態による親水性多孔質PTFE膜は、典型的には、少なくとも1つの入口と少なくとも1つの出口とを備え、その入口と出口との間に少なくとも1つの流体流路を画定するハウジング内に配置され、少なくとも1つの本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を含むフィルタが流体流路を横切って、フィルタ器具又はフィルタモジュールを提供する。ある実施形態において、フィルタ器具は、入口と第1の出口とを備え、その入口と第1の出口との間に第1の流体流路を画定するハウジング、並びに少なくとも1つの本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を備えるフィルタを備えて提供され、本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を備えるフィルタは、第1の流体流路を横切って、ハウジング内に配置される。
【0036】
[0038]クロスフロー用途においては、少なくとも1つの本発明の多孔質膜又は少なくとも1つの本発明の膜を備えるフィルタは、少なくとも1つの入口と少なくとも2つの出口とを備え、その入口と第1の出口との間に少なくとも第1の流体流路を、並びに入口と第2の出口との間に第2の流体流路を画定するハウジング内に配置され、本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を備えるフィルタが、第1の流体流路を横切って、フィルタ器具又はフィルタモジュールを提供することが好ましい。例証的実施形態においては、フィルタ器具は、クロスフローフィルタモジュールと、入口、濃縮液出口を備える第1の出口、及び浸透液出口を備える第2の出口を備え、入口と第1の出口との間に第1の流体流路を、並びに入口と第2の出口との間に第2の流体流路を画定するハウジングとを備え、少なくとも1つの本発明の膜又は少なくとも1つの本発明の膜を備えるフィルタが、第1の流体流路を横切って配置される。
【0037】
[0039]フィルタ器具又はモジュールは、殺菌可能であってもよい。好適な形状であり、入口と1つ又は複数の出口とを提供する任意のハウジングを用いることができる。
【0038】
[0040]ハウジングは、処理される流体と適合性である、任意の不浸透の熱可塑性材料を含む、任意の好適な硬質不浸透材料から製作することができる。例えば、ハウジングは、ステンレス鋼等の金属、又はポリマー、例えばアクリル、ポリプロピレン、ポリスチレン、又はポリカーボネート樹脂等の透明又は半透明ポリマーから製作することができる。
【0039】
[0041]本発明は、上に記載された方法によって製造される、親水性に改変された多孔質PTFE膜をさらに提供する。
【0040】
[0042]本発明は、流体を濾過する方法であって、上に記載された親水性多孔質PTFE膜に流体を通過させるステップを含む、方法をさらに提供する。
【0041】
[0043]以下の実施例は本発明をさらに例証するが、勿論、その範囲をいかようにも制限するとして解釈されるべきではない。
【実施例】
【0042】
実施例1
[0044]この実施例は、本発明の実施形態による親水性多孔質PTFE膜を調製する方法について例証する。
【0043】
[0045]200gのPTFE樹脂粉末、FLUON CD123を、アセトン溶媒(25%)中の所望の量のコポリマー、(PF8PO)100−r−(TGBE)200及びIsopar G滑剤(50%)と混合して、5%又は10%のコポリマーを含有するブレンドを得た。このブレンドを双ローラーにおいて混合した。ブレンドを、300psiの圧力を少なくとも2回、それぞれ約55秒間適用することでビレットへと形成した。結果として得られたビレットを、室温で約12時間平衡化した。次いで、ビレットを、26mmのダイを通して、最大圧力、及び55℃の一定温度で押出し、管状のPTFEテープを結果として得た。この管状のテープを中心軸に沿って(その長さに沿って)切り開き、ピペットの周りに巻き、新しいビレット(非圧縮)を結果として得た。新しいビレットを第1の押出工程中に使用した条件と同一の条件で押出した。9〜10ミルのテープ厚さを標的としてカレンダリングを30℃で行い、4×4インチに切った。結果として得られたテープを125℃で1時間乾燥させ、それによってテープから滑剤を除去した。このテープを、300%/秒の延伸速度において、縦方向及び横方向にMD/TD比を3にして延伸した。延伸オーブンの温度を150℃に設定した。結果として得られた膜を、150℃又は350℃のアニーリングオーブン中で表2に示される様々な時間でアニーリングした。膜の性能特性を表2に示し、ギ酸(FA)、硫酸(SA)、及びトリフルオロ酢酸(TFA)への曝露の結果を表3に示す。
【0044】
[0046]
【表2】
【0045】
[0047]
【表3】
【0046】
[0048]
【表4】
【0047】
[0049]本明細書に引用される、公開、特許出願、及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が参照により組み込まれると個別且つ具体的に示され、その全体が本明細書に示された場合と同様の程度で、ここに参照により組み込まれる。
【0048】
[0050]本発明を説明する文脈における(特に、以下の請求項の文脈における)用語「ある1つの(a)」及び「ある1つの(an)」及び「その(the)」及び「少なくとも1つの(at least one)」、並びに類似の指示語は、本明細書に別途指示の無い限り、又は文脈によって明確に否定されない限り、単数形及び複数形の両方を網羅すると解釈されるべきである。1つ又は複数の項目の列挙が先行する用語「少なくとも1つの」の使用(例えば、「A及びBのうちの少なくとも1つ」)は、本明細書に別途指示の無い限り、又は文脈によって明確に否定されない限り、列挙された項目から選択される1つの項目(A又はB)、又は列挙された項目のうちの2つ以上の任意の組み合わせ(A及びB)を意味すると解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する」、「含む(including)」、及び「含有する」は、別途断りの無い限り、非限定的用語(すなわち、「を含むが、それに限定されない」を意味する)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の詳述は、本明細書に別途指示の無い限り、その範囲内に入る各別個の値に対して個別に言及する省略表現方法として機能することを単に意図しており、各別個の値は、それが本明細書に個別に詳述された場合と同様に、本明細書に組み込まれる。本明細書に記載される全ての方法は、本明細書に別途指示の無い限り、又は文脈によって明確に否定されない限り、任意の好適な順序で行うことができる。本明細書に示す、あらゆる例、又は例示的な言語(例えば、「等」)の使用は、本発明をより良好に解明することを単に意図しており、別途主張しない限り、本発明の範囲に対する制限を加えるものではない。本明細書内のいかなる言語も、任意の請求外の要素が本発明の実践に必須であることを示すものと解釈すべきではない。
【0049】
[0051]本発明者に既知の、本発明を実行するための最適な形態を含む、本発明の好ましい実施形態が、本明細書に記載されている。それらの好ましい実施形態の変形は、前述の説明を読んだ際に、当業者には明らかとなり得る。本発明者は、当業者がそのような変形を適切に用いることを期待し、並びに本発明者は、本明細書に具体的に記載されたものとは別様に本発明が実践されることを意図する。したがって、準拠法によって許可されるように、本明細書に添付される特許請求の範囲に詳述される主題の全ての修正及び等価物が、本発明に含まれる。また、上述の要素の全ての可能な変形における、それらの任意の組み合わせが、本明細書に別途指示の無い限り、又は文脈によって明確に否定されない限り、本発明によって包括される。
図1
図2
図3
【外国語明細書】
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