(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-71780(P2017-71780A)
(43)【公開日】2017年4月13日
(54)【発明の名称】ヒドロクロロフルオロオレフィンの発泡製品
(51)【国際特許分類】
C08J 9/14 20060101AFI20170324BHJP
C09K 3/00 20060101ALI20170324BHJP
【FI】
C08J9/14CER
C09K3/00 111B
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-208050(P2016-208050)
(22)【出願日】2016年10月24日
(62)【分割の表示】特願2014-146860(P2014-146860)の分割
【原出願日】2008年3月28日
(31)【優先権主張番号】60/908,762
(32)【優先日】2007年3月29日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】500307340
【氏名又は名称】アーケマ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ブレット・エル・ヴァン・ホーン
(72)【発明者】
【氏名】マハー・ワイ・エルシェイク
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン・ビー・チェン
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・ボネット
【テーマコード(参考)】
4F074
【Fターム(参考)】
4F074AA17
4F074AA24
4F074AA32
4F074BA53
4F074BA95
4F074BC12
4F074CA22
4F074CC03X
4F074CC04X
4F074DA12
4F074DA15
4F074DA32
(57)【要約】
【課題】 断熱性発泡体として使用することができる、低減された密度、拡大された気泡サイズ、および向上したKファクターを有する発泡体の製造に有用な発泡製品を提供する。
【解決手段】(1)ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはそれらの混合物から選択される熱可塑性発泡材料と、
(2)以下の(A)及び(B)を含む発泡剤と、
(A)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンであるヒドロクロロフルオロオレフィン;
(B)1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、1,1,1−トリフルオロエタン、ジフルオロメタン、(シスおよび/またはトランス)−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、二酸化炭素、アルカン、およびそれらの混合物からなる群から選択される共発泡剤;
を含む発泡製品。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはそれらの混合物から選択される熱可塑性発泡材料と、
(2)以下の(A)及び(B)を含む発泡剤と、
(A)1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンであるヒドロクロロフルオロオレフィン;
(B)1,1,1,2−テトラフルオロエタン、1,1−ジフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、1,1,1−トリフルオロエタン、ジフルオロメタン、(シスおよび/またはトランス)−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、二酸化炭素、アルカン、およびそれらの混合物からなる群から選択される共発泡剤;
を含む発泡製品。
【請求項2】
前記1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンが、75重量%を超えるトランス異性体を含有する、請求項1に記載の発泡製品。
【請求項3】
前記アルカンが、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、またはそれらの混合物から選択される、請求項1に記載の発泡製品。
【請求項4】
前記ペンタンが、n−ペンタン、シクロペンタン、イソ−ペンタンまたはそれらの混合物から選択される、請求項3に記載の発泡製品。
【請求項5】
アルコールをさらに含む、請求項1に記載の発泡製品。
【請求項6】
前記アルコールが、エタノール、イソ−プロパノール、プロパノール、ブタノール、エチルヘキサノール、メタノール、またはそれらの混合物から選択される、請求項5に記載の発泡製品。
【請求項7】
エーテルをさらに含む、請求項1に記載の発泡製品。
【請求項8】
前記エーテルが、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、またはそれらの混合物から選択される、請求項7に記載の発泡製品。
【請求項9】
ケトンをさらに含む、請求項1に記載の発泡製品。
【請求項10】
前記ケトンが、アセトン、メチルエチルケトン、およびそれらの混合物から選択される、請求項9に記載の発泡製品。
【請求項11】
染料、顔料、気泡制御剤、充填剤、酸化防止剤、押出し成形助剤、安定剤、帯電防止剤、難燃剤、赤外線減衰剤、断熱性添加剤、可塑剤、粘度調整剤、耐衝撃性改良剤、気体遮断樹脂、カーボンブラック、界面活性剤、およびそれらの混合物をさらに含む、請求項1に記載の発泡製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡性熱可塑性組成物の製造に使用される、少なくとも1種類のヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)を含む発泡剤組成物に関する。本発明のHCFOとしては、限定されないが、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)、特にトランス異性体、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)、ジクロロ−フッ化プロペン、およびそれらの混合物が挙げられる。本発明の発泡剤組成物は、二酸化炭素、大気ガス、ヒドロフルオロカーボン(HFC)、ヒドロフルオロオレフィン(HFO)、アルカン、ヒドロフルオロエーテル(HFE)、およびそれらの混合物などの共発泡剤と共に使用されることが好ましい。本発明における共発泡剤として使用される好ましいHFCとしては、限定されないが、1,1,1,2−テトラフルオロエタン(HFC−134a);1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a);1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a);ペンタフルオロエタン(HFC−125);およびジフルオロメタン(HFC−32)が挙げられる。この発泡剤組成物は、向上したKファクターを有する低密度断熱性発泡体の製造に有用である。
【背景技術】
【0002】
地球全体の気候変動に関する懸念が続いているため、高いオゾン層破壊係数(ODP)および高い地球温暖化係数(GWP)を有するものに代わる技術を開発する必要性が増している。非オゾン層破壊化合物であるヒドロフルオロカーボン(HFC)は、熱可塑性発泡体の製造におけるクロロフルオロカーボン(CFC)およびヒドロクロロフルオロカーボン(HCFC)の代替発泡剤として認められているが、依然として、かなりのGWPを有する傾向がある。
【0003】
ヒドロクロロフルオロオレフィン、特にHCFO−1233zd、HCFO−1233xf、ジクロロ−フッ化プロペン、およびそれらの混合物を含む発泡剤組成物によって、断熱性発泡体に特に有用である、優れたKファクターを有する低密度の独立気泡発泡体を製造することが可能となることが発見された。本発明は、拡大、制御された気泡サイズを有する低密度の独立気泡発泡体の製造もまた可能にする。
【0004】
国際公開第2004/037913号パンフレット、国際公開第2007/002703号パンフレット、および米国特許出願公開第2004119047号明細書には、臭化およびヨウ化化合物およびHFOなどの他の多くの材料の中で、多くのHCFOを含む一般式のハロゲン化アルケンを含有する発泡剤が開示されている。熱可塑性材料で使用される具体的なHCFOについても、本発明で発見されたような発泡セルサイズの増大に関してHCFOを使用する利益についても開示されていない。ポリウレタンの発泡で使用されるHCFO−1233zdは開示されているが、ポリウレタン発泡用の発泡剤が、熱可塑性材料の発泡に特に優れているかは当業者には明らかではない。
【0005】
GB950,876号明細書には、ポリウレタン発泡体の製造方法が開示されている。沸点150℃未満、好ましくは50℃未満を有する適切なハロゲン化飽和または不飽和炭化水素を発泡剤として使用することができることが開示されている。トリクロロフルオロエテン、クロロトリフルオロエテン、および1,1−ジクロロ−2,2−ジフルオロエテンが適切な発泡剤のリストに開示されている。ヒドロクロロフルオロプロペンも、長鎖HCFOも特に開示されていない。熱可塑性材料発泡のための発泡剤に関連する開示内容はなく、記載の熱可塑性材料の発泡におけるHCFOの利益も、他の共発泡剤とHCFOとの好ましい組み合わせについても開示されていない。
【0006】
CA2016328号明細書には、独立気泡ポリイソシアネート発泡体を製造する方法が開示されている。ハロゲン化アルカンおよびアルケンを含む有機化合物発泡剤が開示されており、そのアルケンはプロピレンであり、ハロゲン化炭化水素はクロロフルオロカーボンであり得る。多くの例示的な化合物の中で、塩素1個およびフッ素1〜3個を含有する特定のクロロフルオロエチレンが挙げられている。ヒドロクロロフルオロプロペンも、長鎖HCFOも特に開示されていない。熱可塑性材料発泡のための発泡剤に関連する開示内容も、記載の熱可塑性材料の発泡におけるHCFOの利益も、他の共発泡剤とHCFOとの好ましい組み合わせについても開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2004/037913号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2007/002703号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2004119047号明細書
【特許文献4】GB950,876号明細書
【特許文献5】CA2016328号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、更なる発泡剤と併せて使用されるヒドロクロロフルオロオレフィン(HCFO)を含む、オゾン破壊がごくわずかであり、かつGWPが低い発泡剤の使用に関する。本発明では、断熱性発泡体として使用することができる、低減された密度、拡大された気泡サイズ、および向上したKファクターを有する発泡体の製造に有用な発泡剤および発泡性樹脂組成物が開示される。本発明の好ましい実施形態において、HCFOは、1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zd)、好ましくはそのトランス異性体;2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)、およびそれらの混合物である。HCFOと併せて使用される好ましい共発泡剤としては、ヒドロフルオロカーボン(HFC)、好ましくは1,1,1,2−テトラフルオロエタン;1,1−ジフルオロエタン(HFC−152a);ペンタフルオロエタン(HFC−125);1,1,1−トリフルオロエタン(HFC−143a);ジフルオロメタン(HFC−32);ヒドロフルオロオレフィン(HFO)、好ましくは3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf);1,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234ze)、特にそのトランス異性体;2,3,3,3−テトラフルオロプロペン(HFO−1234yf);(シスおよび/またはトランス)−1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン(HFO−1225ye);二酸化炭素;アルカン、好ましくはブタンまたはペンタン、およびそれらの混合物が挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の他の実施形態は、樹脂に対して約1pph(parts per hundred)を超え約100pph未満の発泡剤組成物、樹脂に対して好ましくは約2pphを超え約40pph未満の発泡剤組成物、樹脂に対してさらに好ましくは約3pphを超え約25pph未満の発泡剤組成物、またさらに好ましくは約4pphを超え約15pph未満の発泡剤組成物を含有する発泡性樹脂組成物である。
【0010】
発泡熱可塑性製品を製造する方法は以下のとおりである。発泡性ポリマー組成物を含む成分を任意の順序で共にブレンドすることによって、発泡性ポリマー組成物を調製する。典型的には、ポリマー樹脂を可塑化し、次いで初期圧力で発泡剤組成物の成分中でブレンドすることによって、発泡性ポリマー組成物を調製する。ポリマー樹脂を可塑化する一般的な方法は、熱可塑化であり、発泡剤組成物中でブレンドするのに十分に軟化させるために、ポリマー樹脂を十分に加熱することを含む。一般に、熱可塑化は、結晶質ポリマーに関しては、そのガラス転移温度(Tg)または溶融温度(Tm)付近またはその温度を超えて、熱可塑性ポリマー樹脂を加熱することを含む。
【0011】
発泡性ポリマー組成物は、核剤、気泡制御剤、染料、顔料、充填剤、酸化防止剤、押出し成形助剤、安定剤、帯電防止剤、難燃剤、赤外線減衰剤および断熱性添加剤などの更なる添加剤を含有し得る。核剤としては、特に、タルク、炭酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、および化学発泡剤、例えばアゾジカーボンアミドまたは重炭酸ナトリウムおよびクエン酸などの材料が挙げられる。赤外線減衰剤および断熱性添加剤としては、特にカーボンブラック、グラファイト、二酸化ケイ素、金属フレークまたは粉末が挙げられる。難燃剤としては、特に、ヘキサブロモシクロデカンおよびポリ臭化ビフェニルエーテルなどの臭化材料が挙げられる。
【0012】
本発明の発泡体製造方法としては、バッチ式、セミバッチ式、および連続プロセスが挙げられる。バッチプロセスは、貯蔵可能な状態で発泡性ポリマー組成物の少なくとも一部を調製し、次いで、その後のある時点で発泡性ポリマー組成物のその部分を使用して、発泡体を製造することを含む。
【0013】
セミバッチプロセスは、発泡性ポリマー組成物の少なくとも一部を調製し、その発泡性ポリマー組成物をすべて単一プロセスで発泡体へと断続的に発泡させることを含む。参照により本明細書に組み込まれる、例えば米国特許第4,323,528号明細書には、押出し成形プロセスを積重ねることによって、ポリオレフィン発泡体を製造する方法が開示されている。その方法は、1)熱可塑性材料および発泡剤組成物を混合して、発泡性ポリマー組成物を形成する工程、2)発泡性ポリマー組成物を発泡させない温度および圧力で維持された保持領域へと発泡性ポリマー組成物を押出す工程であって、その保持領域が、発泡性ポリマー組成物が発泡する、より低い圧力の領域へのオリフィス開口部を定めるダイ、およびダイオリフィスを閉める開閉可能なゲートを有する工程、3)可動ラムによって発泡性ポリマー組成物に機械圧力を実質的に同時にかけながら、ダイオリフィスを通して、保持領域から低圧の領域へとそれを射出すると同時に、一定間隔でゲートを開く工程、4)射出発泡性ポリマー組成物を発泡させて、発泡体を形成する工程を含む。
【0014】
連続プロセスは、発泡性ポリマー組成物を形成し、次いで中断することなく発泡性ポリマー組成物を発泡することを含む。例えば、ポリマー樹脂を加熱して溶融樹脂を形成することによって、発泡性ポリマー組成物を押出機内で調製し、初期圧力にて発泡剤組成物を溶融樹脂にブレンドし、発泡性ポリマー組成物を形成し、次いで発泡圧力にて発泡性ポリマー組成物をダイに通してある領域内に押出し成形し、発泡性ポリマー組成物を発泡させて発泡体を形成する。望ましくは、発泡体の特性を最適化するために、発泡剤を添加した後およびダイを通して押出し成形する前に、発泡性ポリマー組成物を冷却する。例えば、熱交換器で発泡性ポリマー組成物を冷却する。
【0015】
本発明の発泡体は、シート、厚板、ロッド、チューブ、ビーズまたはそのあらゆる組み合わせを含む、想定可能な任意の形状であることができる。互いに結合される、区別可能な複数の縦方向発泡体部材を含むラミネート発泡体が本発明に包含される。
【実施例】
【0016】
実施例1〜7:ポリスチレンにおける気体の溶解性および拡散係数
Hadj Romdhane,Ilyess(1994)「Polymer−Solvent Diffusion and Equilibrium Parameters by Inverse Gas−Liquid Chromatography」PhD Dissertation,Dept.of Chem.Eng.,Penn State University and Hong SU,Albouy A,Duda JL(1999)「Measurement and Prediction of Blowing Agent Solubility in Polystyrene at Supercritical Conditions」Cell Polym 18(5):301−313に記載のように、キャピラリーカラム逆ガスクロマトグラフィー(cc−IGC)を用いて、ポリスチレン樹脂における気体の溶解性および拡散係数を測定した。
【0017】
厚さ3ミクロンのポリスチレン内部フィルムコーティングを有する、長さ15m、直径0.53mmのGCキャピラリーカラムを作製した。水素炎イオン化検出器を備えたヒューレットパッカード(Hewlet Packard)5890シリーズIIガスクロマトグラフにカラムを取り付けた。標準ガスとしてメタンを使用し、参考文献に示される方法に従って、試験されるガスの溶離プロファイルを分析した。この結果から、ポリマーを通したガスの拡散係数Dp、ポリマー相におけるガスの濃度と気相におけるガスの濃度との比である分配係数Kによるポリマーにおけるガスの溶解性が得られる。その結果、樹脂における特定のガスのK値が高くなるほど、樹脂におけるその溶解性が高くなる。
【0018】
表1は、140℃でのポリスチレンにおける数種類の気体の分配係数および拡散係数の値を示す。比較例1〜5は、ポリスチレン(PS)におけるHCFC−142b(1−クロロ−1,1−ジフルオロエタン)、HFC−152a(1,1−ジフルオロエタン)、HFC−134a(1,1,1,2−テトラフルオロエタン)、HFC−32(ジフルオロメタン)、およびHFC−245fa(1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン)の溶解性および拡散係数を示す。実施例6は、トランス−HCFO−1233zd(1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン)およびHCFO−1233xf(2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン)の溶解性および拡散係数を示す。
【0019】
これらの実施例は、HCFO−1233zdおよびHCFO−1233xfが、有効な発泡剤であるのに十分な、またはHFCまたは二酸化炭素などの他の発泡剤と併せて有用な共発泡剤として十分な、ポリスチレン樹脂における溶解性および拡散係数を有することを示している。例えば、HCFO−1233xfは、HCFC−142bに匹敵する溶解性を有することが判明した。HCFO−1233zdおよびHCFO−1233xfの拡散係数は低いことが判明し、それは向上したKファクターを有する発泡体を提供するのに有用であることを意味する。
【0020】
【表1】
【0021】
実施例8〜20
バレル内径27mm、バレル長さ40直径を有する逆回転二軸スクリュー押出機を使用して、ポリスチレン押出発泡体を製造した。スクリューデザインは、発泡用途に適していた。押出機バレル内の圧力は歯車ポンプで制御し、押出機内で発泡剤が溶解するように十分に高く設定した。実施例9〜20の押出ダイは、ギャップ幅6.35mmを有する調節可能なリップスロットダイであった。実施例1では、ダイは、ランド長さ1mmを有する直径2mmのストランドダイであった。2種類のグレードの汎用ポリスチレンを押出し成形試験に使用し、速度2.27または4.54kg/時(5または10lb/時)で押出機に供給した。高圧送達ポンプを使用して、制御速度でポリスチレン樹脂溶融物に発泡剤をポンプで注入した。押出機内で発泡剤を混合し、樹脂溶融物に溶解して、発泡性樹脂組成物を生成する。その発泡性樹脂組成物を適切な発泡温度に冷却し、次いでダイから押出し成形し、そこで圧力の低下により発泡が開始される。核剤としてタルクを使用し、ポリスチレンと予めブレンドし、ポリスチレン中タルク50重量%のマスターバッチを生成した。このマスターバッチのビーズをポリスチレンペレットと混合し、各実験においてタルク0.5重量%を達成した。
【0022】
各実施中に回収された発泡体試料について、その密度、連続気泡含有率、および気泡サイズを測定した。密度はASTM D792に従って測定し、連続気泡含有率は、ASTM D285−Cに従ってガス比重びん法を用いて測定し、気泡サイズは、発泡体試料破壊表面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真から気泡直径を平均することによって測定した。気泡構造を観察し、かつ連続気泡含有率を定性的に調べるためにも、SEM画像が用いられる。
【0023】
表2は、配合物における各発泡剤の添加率、樹脂供給速度、樹脂のメルトフローインデックス、発泡性樹脂溶融温度、および得られた発泡製品の密度、気泡サイズ、ならびに連続気泡含有率など、実施例8〜20のデータを示す。
【0024】
比較例8は、HFC−134aで発泡するポリスチレンに一般的であり、溶解性が乏しく、加工が難しいことから、サイズが小さく、かつ連続気泡が多い高密度発泡体が生じる傾向がある。この系に関しては溶解限度を超えて、134a約6.5重量%を超えて、配合物中のHFC−134aの量が増加すると、ブローホール、欠陥、発泡体のつぶれ、大きなボイド、高い連続気泡含有率などの多くの問題が起こることが分かった。比較例9および10は、3,3,3−トリフルオロプロペン(HFO−1243zf;TFP)で発泡させた結果を示す。
【0025】
実施例11および12において、TFP(HFO−1243zf)およびHCFO−1233zdの発泡剤組成物によって、気泡サイズを有利に拡大すると共に、TFP単独で達成可能なものよりも低い密度の発泡体を製造することができ、密度53kg/m
3未満、さらには45kg/m
3未満にて0.2mmを超える気泡サイズを有する独立気泡発泡体製品を製造することが可能であった。これらの発泡体は、向上したKファクターを有する断熱性発泡体として有用であろう。
【0026】
実施例13〜16を同じ押出し成形試験で製造した。実施例13において、HFC−134aを唯一の発泡剤として添加率5.3重量%で使用した。その発泡製品は、ブローホールおよび大きなボイドなどの著しい欠陥を有した。発泡体の押出し成形中に、ダイを出る未溶解発泡剤によって起こる、ダイでの頻繁なポッピングがあった。実施例13に続いて、HCFO−1233zd、主にトランス異性体を添加して、実施例14を製造した結果、発泡製品における欠陥の数が低減すると共にダイ圧力が低減し、ダイでのポッピングが減少した。次いで、発泡剤の供給を調節して実施例15および16を製造し、ダイでのポッピングはなく、欠陥は数個のみであった。HFC−134aのみを使用して発泡した実施例13の発泡体は、非常に広い、または二峰性の気泡サイズ分布を有し、気泡サイズ範囲は約0.05mm〜約1mmであり、試料の中心に近いほど大きい気泡を有した。134aとHCFO−1233zdの組み合わせで発泡させた発泡体も、非均一な気泡サイズ分布を有し、試料の中心に近いほど大きい気泡を有したが、非常に大きな気泡を含むことなく、かなり狭い分布を有した。HCFO−1233zdは、134aで発泡された発泡体の加工性を改善し、発泡製品の一般品質を改善し、かつ低密度発泡体の製造を可能にした。
【0027】
唯一の発泡剤としてHFO−1234yf(2,3,3,3−テトラフルオロプロペン)を使用して、実施例17および18を製造した。実施例18で示すように、添加率5.7重量%にて、発泡製品は、非常に小さな気泡サイズ、マクロボイド、ブローホール、高い連続気泡含有率、および未溶解発泡剤により起こる、ダイでの頻繁なポッピングを有した。1234yfの含有率が増加すると、これらの問題が悪化した。実施例19および20については、HFO−1234yfおよびHCFO−1233zdの発泡剤組成物によって、HFO−1234yfのみを使用して製造された発泡体よりも低密度の発泡体を製造することができた。実施例19および20の発泡試料は、品質が良く、欠陥はほとんどなく、ダイでのポッピングを有することなく製造された。このHCFO−1233zdは主にトランス異性体であった。
【0028】
【表2】
【0029】
本発明は、具体的な実施形態を参照して本明細書で説明および記述されているが、添付の特許請求の範囲が、示される詳細に限定されることを意図するものではない。むしろ、当業者によって、これらの詳細に種々の修正形態が加えられることが期待され、その修正形態は、請求される主題の趣旨および範囲内にあり、これらの特許請求の範囲はそれに対応して構成されることが意図される。