【解決手段】紡績機1は、紡績材料の張力を調整しながら、紡績材料から糸Yを形成する糸形成部と、糸形成部で形成された糸Yを巻き取る巻取装置13と、糸Yの走行方向において巻取装置13の上流側で糸Yの張力を検出する張力検出部10と、張力検出部10の検出結果に基づき、糸形成部により付与される張力を調整しながら糸Yの巻き取りを行うように、糸形成部と巻取装置13とを制御する制御部15と、を備える。
前記糸形成部は、芯糸が巻き取られた芯糸パッケージを支持する支持部と、前記芯糸パッケージから解舒された前記芯糸に張力を付与する張力付与部と、を有する芯糸供給装置を備え、
前記制御部は、前記張力検出部の検出結果に基づいて前記糸形成部の動作を制御し、
前記巻取装置は、前記芯糸が含まれる前記糸を巻き取る、請求項1に記載の紡績機。
前記制御部は、前記張力検出部において検出される前記糸の張力が所定の範囲内となるように、前記張力検出部の前記検出結果に基づいて前記張力付与部を制御する、請求項2に記載の紡績機。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0018】
図1に示されるように、紡績機1は、複数の紡績ユニット2と、糸継台車3と、玉揚台車(図示省略)と、第1エンドフレーム4と、第2エンドフレーム5と、を備えている。複数の紡績ユニット2は、一列に配列されている。各紡績ユニット2は、糸Yを生成してパッケージPに巻き取る。糸継台車3は、ある紡績ユニット2で糸Yが切断されたり、何らかの理由で糸Yが切れたりした場合、当該紡績ユニット2で糸継動作を行う。玉揚台車は、ある紡績ユニット2でパッケージPが満巻になった場合、パッケージPを玉揚げし、新しいボビンBを当該紡績ユニット2に供給する。
【0019】
第1エンドフレーム4には、紡績ユニット2で発生した繊維屑及び糸屑等を回収する回収装置等が収容されている。第2エンドフレーム5には、紡績機1に供給される圧縮空気(空気)の空気圧を調整して紡績機1の各部に空気を供給する空気供給部、及び紡績ユニット2の各部に動力を供給するための駆動モータ等が収容されている。第2エンドフレーム5には、機台制御装置100と、表示画面102と、入力キー104と、が設けられている。機台制御装置100は、紡績機1の各部を集中的に管理及び制御する。表示画面102は、紡績ユニット2の設定内容及び/又は状態に関する情報等を表示することができる。作業者が入力キー104を用いて適宜の操作を行うことにより、紡績ユニット2の設定作業を行うことができる。
【0020】
図1及び
図2に示されるように、各紡績ユニット2は、糸Yの走行方向において上流側から順に、ドラフト装置6及び芯糸供給装置7と、空気紡績装置8と、糸監視装置9と、張力センサ(張力検出部)10と、糸貯留装置11と、ワキシング装置12と、巻取装置13と、を備えている。本実施形態では、ドラフト装置6、芯糸供給装置7及び糸貯留装置11の糸貯留ローラ11a(後述)は、紡績材料の張力を調整しながら、紡績材料から糸Yを形成する糸形成部を構成している。ユニットコントローラ(制御部)15は、所定数の紡績ユニット2ごとに設けられており、紡績ユニット2の動作を制御する。紡績ユニット2において、ドラフト装置6、芯糸供給装置7及び糸貯留装置11は、糸Yの張力に作用する装置である。
【0021】
ドラフト装置6は、スライバ(繊維束、紡績材料)Sをドラフトする。ドラフト装置6は、スライバSの走行方向において上流側から順に、バックローラ対16と、サードローラ対17と、ミドルローラ対18と、フロントローラ対19と、を有している。フロントローラ対19は、ドラフト方向の最下流側に配置されている。各ローラ対16,17,18及び19は、ボトムローラと、トップローラと、を有している。ボトムローラは、第2エンドフレーム5に設けられた駆動モータにより回転駆動される。ミドルローラ対18のトップローラに対しては、エプロンベルト18aが設けられている。ミドルローラ対18のボトムローラに対しては、エプロンベルト18bが設けられている。
【0022】
芯糸供給装置7は、芯糸パッケージCPから芯糸(紡績材料)Cを解舒して、ドラフト装置6に芯糸Cを供給する。具体的には、芯糸供給装置7は、ミドルローラ対18とフロントローラ対19との間から、繊維束Fの走行経路上に芯糸Cを供給する。これにより、芯糸Cは、繊維束Fと共に空気紡績装置8に供給される。
【0023】
空気紡績装置8は、ドラフト装置6でドラフトされた繊維束Fに旋回空気流によって撚りを与えて糸Yを生成する。より詳細には(ただし、図示省略)、空気紡績装置8は、紡績室と、繊維案内部と、旋回空気流発生ノズルと、中空ガイド軸体と、を有している。繊維案内部は、上流側のドラフト装置6から供給された繊維束Fを紡績室内に案内する。旋回空気流発生ノズルは、繊維束Fが走行する経路の周囲に配置されている。旋回空気流発生ノズルから空気が噴射されることにより、紡績室内に旋回空気流が発生する。この旋回空気流によって、繊維束Fを構成する複数の繊維の各繊維端が反転されて旋回させられる。中空ガイド軸体は、糸Yを紡績室内から空気紡績装置8の外部に案内する。
【0024】
糸監視装置9は、空気紡績装置8と糸貯留装置11との間において、走行する糸Yの情報を監視して、監視した情報に基づいて糸欠陥の有無を検出する。糸監視装置9は、糸欠陥を検出した場合、糸欠陥検出信号をユニットコントローラ15に送信する。糸監視装置9は、糸欠陥として、例えば、糸Yの太さ異常及び/又は糸Yに含有されている異物を検出する。糸監視装置9は、糸切れ等も検出する。
【0025】
張力センサ10は、空気紡績装置8と糸貯留装置11との間において、走行する糸Yの張力を測定し、張力測定信号(検出結果)をユニットコントローラ15に送信する。糸監視装置9及び/又は張力センサ10の検出結果に基づきユニットコントローラ15が異常有りと判断した場合、紡績ユニット2において、糸Yが切断される。具体的には、空気紡績装置8への空気の供給が停止されて、糸Yの生成が中断されることにより、糸Yが切断される。或いは、別途設けられたカッタにより糸Yが切断されるようにしてもよい。
【0026】
ワキシング装置12は、糸貯留装置11と巻取装置13との間において、糸Yにワックスを付与する。
【0027】
糸貯留装置11は、空気紡績装置8と巻取装置13との間において、糸Yの弛みを取る。糸貯留装置11は、空気紡績装置8から糸Yを安定して引き出す機能、糸継台車3による糸継動作時等に空気紡績装置8から送り出される糸Yを滞留させて糸Yが弛むのを防止する機能、及び糸貯留装置11よりも下流側の糸Yの張力の変動が空気紡績装置8に伝わるのを防止する機能を有している。
【0028】
糸貯留装置11は、糸貯留ローラ11aと、糸掛け部材11bと、モータ11cと、を備えている。糸貯留ローラ11aの外周面に糸Yが巻かれることにより、糸貯留ローラ11aは糸Yを貯留する。糸掛け部材11bは、糸貯留ローラ11aの下流側端部に設けられている。糸掛け部材11bは、糸Yの貯留開始時に糸Yを引っ掛けて糸貯留ローラ11aに巻き付ける。パッケージPの巻き取り中は、糸掛け部材11bは、糸貯留ローラ11aから解舒される糸Yに張力を付与する。モータ11cは、糸貯留ローラ11aを回転させる。
図3に示されるように、モータ11cは、モータドライバ11dにより駆動が制御される。モータドライバ11dは、ユニットコントローラ15から出力される信号に基づいて、モータ11cの駆動を制御する。
【0029】
巻取装置13は、糸YをボビンBに巻き取ってパッケージPを形成する。巻取装置13は、クレードルアーム21と、巻取ドラム22と、トラバースガイド23と、を有している。クレードルアーム21は、ボビンBを回転可能に支持する。クレードルアーム21は、支軸24によって揺動可能に支持されており、ボビンBの表面又はパッケージPの表面を巻取ドラム22の表面に適切な圧力で接触させる。第2エンドフレーム5に設けられた駆動モータ(図示省略)が、複数の紡績ユニット2の巻取ドラム22を一斉に駆動する。これにより、各紡績ユニット2において、ボビンB又はパッケージPが巻取方向に回転させられる。各紡績ユニット2のトラバースガイド23は、複数の紡績ユニット2で共有されるシャフト25に設けられている。第2エンドフレーム5の駆動モータがシャフト25を巻取ドラム22の回転軸方向に往復駆動することによって、回転するボビンB又はパッケージPに対してトラバースガイド23が糸Yを所定幅でトラバースする。
【0030】
糸継台車3は、ある紡績ユニット2において糸Yが切断されたり、何らかの理由で糸Yが切れたりした場合、当該紡績ユニット2まで走行して、糸継動作を行う。糸継台車3は、糸継装置26と、サクションパイプ27と、サクションマウス28と、を有している。サクションパイプ27は、支軸31によって回動可能に支持されており、空気紡績装置8からの糸Yを捕捉して糸継装置26に案内する。サクションマウス28は、支軸32によって回動可能に支持されており、巻取装置13からの糸Yを捕捉して糸継装置26に案内する。糸継装置26は、案内された糸Y同士の糸継ぎを行う。糸継装置26は、圧縮空気を用いるスプライサ、又は糸Yを機械的に継ぐノッター等である。
【0031】
糸継台車3が糸継ぎ動作を行うとき、パッケージPを反巻取方向に回転(逆回転)させる。このときには、パッケージPが巻取ドラム22から離間するようにクレードルアーム21がエアーシリンダ(図示省略)によって移動させられ、糸継台車3に設けられた逆回転用ローラ(図示省略)によってパッケージPが逆回転させられる。
【0032】
続いて、芯糸供給装置7について詳細に説明する。
図2に示されるように、芯糸供給装置7は、パッケージ支持部(支持部)50と、芯糸供給ユニット51と、芯糸案内部52と、を備えている。
【0033】
パッケージ支持部50は、芯糸パッケージCPの中心線が水平且つ前後方向に延在した状態で、芯糸パッケージCPを支持する。芯糸パッケージCPは、芯糸ボビンCBに芯糸Cが巻き付けられて形成されている。芯糸Cは、本実施形態では、例えば、マルチフィラメント糸である。マルチフィラメント糸は、複数のフィラメント単糸を束にして形成された糸である。芯糸Cは、芯糸パッケージCPから解舒され、芯糸Cを案内するガイドローラ53を介して、芯糸供給ユニット51に供給される。芯糸Cは、モノフィラメント糸、紡績糸等、他の種類の糸であってもよい。
【0034】
芯糸供給ユニット51は、供給された芯糸Cに張力を付与する機能、当該芯糸Cに弛みを付与する機能、及び当該芯糸C(当該芯糸Cの糸端)を送出する機能を有している。芯糸案内部52は、芯糸Cをドラフト装置6に案内する筒状の部材である。
【0035】
図4に示されるように、芯糸供給ユニット51は、ユニットベース60と、張力付与機構70と、弛み付与機構80と、芯糸監視装置82と、芯糸送出機構84と、を備えている。以下の説明では、芯糸供給ユニット51における芯糸Cの走行経路において、芯糸パッケージCP側を上流側といい、芯糸案内部52側を下流側という。
【0036】
ユニットベース60は、芯糸Cの供給方向の上流側から順に、張力付与機構70、弛み付与機構80、芯糸監視装置82及び芯糸送出機構84を支持している。ユニットベース60の最上流側には、芯糸Cを案内する芯糸ガイド61が設けられている。
【0037】
張力付与機構70は、芯糸ガイド61よりも下流側において、芯糸Cに張力を付与する。
図5に示されるように、張力付与機構70は、張力付与部71と、保持部72と、を有している。
【0038】
張力付与部71は、固定片73と、可動片74と、を有している。固定片73及び可動片74に芯糸Cを交互に掛けることにより、張力付与部71において芯糸Cが複数回屈曲させられる。芯糸Cを屈曲させる回数は、例えば20回以下(好ましくは、2回以上10回以下)である。
【0039】
固定片73は、ユニットベース60に固定されている。可動片74は、固定片73に設けられた支軸(図示省略)に支持され、固定片73に対して開閉(回動)可能である。可動片74は、固定片73に設けられたバネ(図示省略)によって、固定片73に対して開く方向に付勢されている。
【0040】
固定片73には、複数のシャフト73aが芯糸Cの供給方向において所定の間隔をあけて設けられている。可動片74には、固定片73に向かって突出した複数の突起74aが設けられている。この各突起74aは、固定片73に対して可動片74が閉じると(
図5(b)の状態)、芯糸Cの供給方向において、各シャフト73aと交互に位置する。各突起74aの先端部分には、芯糸Cが通される孔74bが形成されている。芯糸Cは、各シャフト73aと各孔74bとに対して、交互に掛けられている。
【0041】
図5(a)に示されるように、固定片73に対して可動片74が開くと、芯糸Cは複数回屈曲させられる。これにより、芯糸Cに張力が付与される。固定片73に対する可動片74の開き角度が大きいほど、芯糸Cに付与される張力が高い。このときの張力付与部71の状態を、張力付与状態と呼ぶ。
図5(b)に示されるように、固定片73に対して可動片74が閉じると、芯糸Cが略直線状となる。これにより、芯糸Cに張力が付与されなくなる(或いは、張力付与状態に比べて低い張力が芯糸Cに付与される)。このときの張力付与部71の状態を、張力非付与状態と呼ぶ。
【0042】
保持部72は、固定片73に対して可動片74を開閉させる。
図5(a)及び
図5(b)に示されるように、保持部72は、保持部材75と、アクチュエータ76と、を有している。
図3に示されるように、アクチュエータ76は、ユニットコントローラ15により駆動が制御される。
【0043】
保持部材75は、アクチュエータ76によって、可動片74に対して当接及び離間させられる。より具体的には、保持部材75には、固定片73の反対側から可動片74に当接する先端部75aが設けられており、先端部75aの位置がアクチュエータ76によって、移動させられる。
【0044】
先端部75aが下側に移動すると、可動片74は先端部75aに押圧されて固定片73に対して閉じる。このため、張力付与部71は張力非付与状態となる。先端部75aが上側に移動すると、可動片74はバネの付勢力によって固定片73に対して開く。このため、張力付与部71は張力付与状態となる。
【0045】
弛み付与機構80は、張力付与機構70よりも下流側において、芯糸Cに弛みを付与する。具体的には、芯糸送出機構84が芯糸Cの送出を開始する前に、弛み付与機構80の先端ガイド部の位置が、芯糸Cの走行経路(
図4の実線)を含む位置から芯糸Cの走行経路から離れた位置(
図4の二点鎖線で示される位置)に移動することにより、芯糸Cに弛みが付与される。芯糸監視装置82は、芯糸ガイド61と芯糸送出機構84との間で芯糸Cの有無を検出する。
図4では、芯糸監視装置82は、弛み付与機構80よりも芯糸Cの供給方向の下流側に配置されている。芯糸監視装置82は、張力付与機構70よりも上流側に配置されていてもよい。芯糸送出機構84は、芯糸監視装置82よりも下流側において、紡績動作の開始時にドラフト装置6に芯糸C(芯糸Cの糸端)を送出する。
【0046】
続いて、糸貯留装置11によって糸Yの張力を制御する方法について説明する。
【0047】
紡績機1の紡績ユニット2において紡績動作が開始されると、張力センサ10は、走行する糸Yの張力を測定し、張力測定信号をユニットコントローラ15に送信する。ユニットコントローラ15は、糸貯留ローラ11aを、ロットごとに設定された初期回転数で回転させる。初期回転数は、張力センサ10により検出される糸Yの張力が所定の範囲内となるように予め設定されている。「所定の範囲」とは、幅を持った範囲でもよいし、幅を持たない数値でもよい。
【0048】
ユニットコントローラ15は、張力測定信号を受信すると、張力測定信号が示す糸Yの張力が所定の範囲内であるか否かを判断する。糸Yの張力の範囲は、例えば、機台制御装置100の入力キー104によって入力されて設定される。或いは、糸Yの張力の範囲は、設定されたロットに応じて自動で設定されてもよい。
【0049】
ユニットコントローラ15は、糸Yの張力が所定の範囲内ではないと判断した場合、糸貯留ローラ11aの単位時間当たりの回転数(以下、単に「回転数」と称する)を制御する。本実施形態では、糸貯留ローラ11aの回転数が上下するように制御しており、ドラフト装置6のドラフト速度(例えば、フロントローラ対19の周速度)は変化させていない。当該制御が行われている期間において、ドラフト装置6によるドラフト動作と、空気紡績装置8による紡績動作と、巻取装置13による巻取動作は継続している。
【0050】
具体的には、ユニットコントローラ15は、糸Yの張力が所定の範囲よりも低い場合、糸貯留ローラ11aの回転数(rpm)を、初期回転数よりも上げる。より詳細には、ユニットコントローラ15は、モータドライバ11dに信号を出力し、モータ11cの回転数を上げる。これにより、糸貯留ローラ11aの回転数とフロントローラ対19の周速度とにより設定される糸Yのフィード比(糸貯留ローラ11aによる糸Yの送り速度とフロントローラ対19による糸Yの送り速度との差)が変化する。具体的には、糸貯留ローラ11aにより空気紡績装置8から引き出される糸Yの送り速度が、フロントローラ対19から空気紡績装置8に送り出される糸Yの送り速度に比して速くなる。これにより、フィード比の変化後、糸Yの張力が高くなる。ユニットコントローラ15は、張力測定信号に基づき糸Yの張力が所定の範囲内となった場合には、糸貯留ローラ11aの回転数を上げる制御を終了し、糸Yの張力が所定の範囲内で維持されるように糸貯留ローラ11aの回転数を制御する。
【0051】
ユニットコントローラ15は、糸Yの張力が所定の範囲よりも高い場合、糸貯留ローラ11aの回転数を初期回転数よりも下げる。これにより、糸貯留ローラ11aにより空気紡績装置8から引き出される糸Yの送り速度が、フロントローラ対19から空気紡績装置8に送り出される糸Yの送り速度に比して遅くなることで、糸Yのフィード比が変化する。その結果、フィード比の変化後、糸Yの張力が低くなる。ユニットコントローラ15は、張力測定信号に基づき糸Yの張力が所定の範囲内となった場合には、糸貯留ローラ11aの回転数を下げる制御を終了し、糸Yの張力が所定の範囲内で維持されるように糸貯留ローラ11aの回転数を制御する。
【0052】
ユニットコントローラ15は、糸Yの張力が所定の範囲内ではないと判断した場合において、その糸Yの張力が糸Yに異常が有ると判断する値(例えば、張力が低すぎて糸Yに弱糸部分が形成されている場合の値)であるときには、糸貯留ローラ11aの回転数の制御は行わず、紡績動作を中断させる。
【0053】
次に、芯糸供給装置7によって糸Yの張力を制御する方法について説明する。
【0054】
紡績機1の紡績ユニット2において紡績動作が開始されると、張力センサ10は、走行する糸Yの張力を測定し、張力測定信号をユニットコントローラ15に送信する。ユニットコントローラ15は、張力付与機構70により芯糸Cに初期張力が付与されるように、アクチュエータ76を制御する。初期張力は、張力センサ10により検出される糸Yの張力が所定の範囲内となるよう予め設定されている。ユニットコントローラ15は、アクチュエータ76を制御し、先端部75aを初期位置に位置させる。これにより、芯糸Cに初期張力が付与される。
【0055】
ユニットコントローラ15は、張力測定信号を受信すると、張力測定信号が示す糸Yの張力が所定の範囲内であるか否かを判断する。ユニットコントローラ15は、糸Yの張力が所定の範囲内ではないと判断した場合、張力付与機構70により芯糸Cに付与される張力を制御する。具体的には、ユニットコントローラ15は、糸Yの張力が所定の範囲よりも低い場合、先端部75aが初期位置よりも上側に移動し、可動片74が固定片73に対して開くようにアクチュエータ76を制御する。これにより、先端部75aの移動後に、芯糸Cに付与される張力が高くなる。ユニットコントローラ15は、張力測定信号に基づき糸Yの張力が所定の範囲内となった場合には、張力付与機構70により付与される張力を増加させる制御を終了し、糸Yの張力が所定の範囲内で維持されるように張力付与機構70を制御する。
【0056】
ユニットコントローラ15は、糸Yの張力が所定の範囲よりも高い場合、先端部75aが初期位置よりも下側に移動し、可動片74が固定片73に対して閉じるようにアクチュエータ76を制御する。これにより、先端部75aの移動後に、芯糸Cに付与される張力が低くなる。ユニットコントローラ15は、張力測定信号に基づき糸Yの張力が所定の範囲内となった場合には、張力付与機構70により付与される張力を低下させる制御を終了し、糸Yの張力が所定の範囲内で維持されるように張力付与機構70を制御する。
【0057】
ユニットコントローラ15は、糸Yの張力が所定の範囲内ではないと判断した場合において、その糸Yの張力が糸Yに異常が有ると判断する値であるときには、張力付与機構70の制御は行わず、紡績動作を中断させる。
【0058】
糸Yの張力の制御は、糸貯留装置11及び芯糸供給装置7の少なくとも一方を制御することにより行われればよい。すなわち、糸Yの張力は、糸貯留ローラ11aの回転数の制御によって制御されてもよいし、張力付与機構70による芯糸Cへの張力の付与を制御することによって制御されてもよい。糸Yの張力は、糸貯留ローラ11a及び芯糸供給装置7の張力付与機構70の両方を制御することによって制御されてもよい。上記制御が行われている期間において、ドラフト装置6によるドラフト動作と、空気紡績装置8による紡績動作と、巻取装置13による巻取動作は継続している。
【0059】
以上説明したように、本実施形態に係る紡績機1では、糸Yの張力に作用する装置は、糸Yの張力が所定の範囲内となるように、張力センサ10の検出結果に基づいて制御される。このように、紡績機1では、張力センサ10によって検出された糸Yの張力に基づいて装置をフィードバック制御するため、糸Yの張力を所定の範囲内に維持できる。したがって、紡績機1は、糸品質の向上を図ることができる。
【0060】
本実施形態では、ユニットコントローラ15は、張力センサ10において検出される糸Yの張力が所定の範囲内となるように、張力センサ10から送信された張力測定信号に基づいて糸貯留ローラ11aの回転数を制御する。糸貯留ローラ11aの単位時間当たりの回転数の変化によってフィード比が変化する。これにより、糸貯留ローラ11aにより貯留される糸Yの張力を変化させることができる。そのため、紡績機1では、張力センサ10から送信された張力測定信号に基づいて糸貯留ローラ11aの回転数を制御することにより、糸Yの張力を効果的に制御できる。
【0061】
具体的には、ユニットコントローラ15は、張力測定信号において糸Yの張力が所定の範囲よりも低い場合、糸貯留ローラ11aの単位時間当たりの回転数を、糸Yの張力が所定の範囲内となるまで上げる。ユニットコントローラ15は、張力測定信号において糸Yの張力が所定の範囲よりも高い場合、糸貯留ローラ11aの回転数を、糸Yの張力が所定の範囲内となるまで下げる。糸貯留ローラ11aの回転数を上げると、糸Yの張力を高くすることができ、糸貯留ローラ11aの回転数を下げると、糸Yの張力を低くすることができる。したがって、張力測定信号に基づいてユニットコントローラ15が糸貯留ローラ11aの回転数を制御することにより、糸Yの張力を所定の範囲内で維持できる。
【0062】
本実施形態では、糸貯留ローラ11aは、空気紡績装置8により生成された糸Yを引き出しつつ貯留する。換言すると、空気紡績装置8と糸貯留ローラ11aとの間には、空気紡績装置8から糸Yを引き出すようなデリベリローラとニップローラが配置されていない。これにより、空気紡績装置8において生成される糸Yの張力を糸貯留ローラ11aで制御できる。したがって、空気紡績装置8において最適な紡績張力で糸Yが生成されるため、糸品質の向上を図ることができる。
【0063】
本実施形態では、紡績機1は、芯糸Cが巻き取られた芯糸パッケージCPを支持するパッケージ支持部50と、芯糸パッケージCPから解舒された芯糸Cに張力を付与する張力付与機構70と、を有する芯糸供給装置7を備える。ユニットコントローラ15は、張力付与機構70において検出される糸Yの張力が所定の範囲内となるように、張力センサ10から送信された張力測定信号に基づいて張力付与機構70を制御する。これにより、巻取装置13で巻き取られる糸Yの糸品質を向上することができる。
【0064】
続いて、他の実施形態について説明する。他の実施形態に係る紡績機1では、フロントローラ対19のボトムローラ(以下「フロントボトムローラ」と称することがある)は、
図6に示されるように、各紡績ユニット2に設けられた駆動モータ20により回転駆動される。当該駆動モータ20は、モータドライバ20aにより駆動が制御される。モータドライバ20aは、ユニットコントローラ15から出力される信号に基づいて、駆動モータ20の駆動を制御する。バックローラ対16、サードローラ対17及びミドルローラ対18のボトムローラは、各紡績ユニット2に設けられた駆動モータで回転駆動されてもよいし、第2エンドフレーム5に設けられた駆動モータにより回転駆動されてよい。
【0065】
フロントローラ対19によって糸Yの張力を制御する方法について説明する。
【0066】
紡績機1の紡績ユニット2において紡績動作が開始されると、張力センサ10は、走行する糸Yの張力を測定し、張力測定信号をユニットコントローラ15に送信する。ユニットコントローラ15は、ドラフト装置6のフロントローラ対19を、ロットごとに設定された初期速度で回転させる。初期速度は、張力センサ10により検出される糸Yの張力が所定の範囲内となるように予め設定されている。
【0067】
ユニットコントローラ15は、張力測定信号を受信すると、張力測定信号が示す糸Yの張力が所定の範囲内であるか否かを判断する。ユニットコントローラ15は、糸Yの張力が所定の範囲内ではないと判断した場合、フロントローラ対19(フロントボトムローラ)の周速度を制御する。本実施形態では、フロントボトムローラの周速度が上下するように制御しており、糸貯留ローラ11aの回転数は、糸Yの張力の制御のためには変化させていない。当該制御が行われている期間において、ドラフト装置6によるドラフト動作と、空気紡績装置8による紡績動作と、巻取装置13による巻取動作は継続している。
【0068】
具体的には、ユニットコントローラ15は、糸Yの張力が所定の範囲よりも低い場合、フロントローラ対19の周速度を、初期速度よりも遅くする。より詳細には、ユニットコントローラ15は、上記駆動モータ20のモータドライバ20aに信号を出力し、駆動モータ20の回転数(rpm)を下げる。
【0069】
これにより、糸貯留ローラ11aの回転数とフロントローラ対19の周速度とにより設定される糸Yのフィード比が変化する。具体的には、フロントローラ対19から空気紡績装置8に送り出される糸Yの速度が、糸貯留ローラ11aにより空気紡績装置8から引き出される糸Yの速度に比して遅くなる。これにより、フィード比の変化後、糸Yの張力が高くなる。ユニットコントローラ15は、張力測定信号に基づき糸Yの張力が所定の範囲内となった場合には、フロントボトムローラの周速度を下げる制御を終了し、糸Yの張力が所定の範囲内で維持されるようにフロントボトムローラの周速度を制御する。
【0070】
ユニットコントローラ15は、糸Yの張力が所定の範囲よりも高い場合、フロントローラ対19の周速度を初期速度よりも速くする。これにより、フロントローラ対19から空気紡績装置8に送り出される糸Yの速度が、糸貯留ローラ11aにより空気紡績装置8から引き出される糸Yの速度に比して速くなることで、糸Yのフィード比が変化する。その結果、フィード比の変化後、糸Yの張力が低くなる。ユニットコントローラ15は、張力測定信号に基づき糸Yの張力が所定の範囲内となった場合には、フロントボトムローラの周速度を速くする制御を終了し、糸Yの張力が所定の範囲内で維持されるようにフロントボトムローラの周速度を制御する。
【0071】
バックローラ対16、サードローラ対17及びミドルローラ対18の少なくとも何れかのボトムローラが各紡績ユニット2に設けられた駆動モータで回転駆動する形態の場合には、フロントローラ対19の周速度の制御に加えて、バックローラ対16、サードローラ対17及びミドルローラ対18の少なくとも何れかの周速度を制御してもよい。
【0072】
本実施形態では、ユニットコントローラ15は、張力センサ10から送信された張力測定信号に基づいてフロントローラ対19の周速度を制御する。ドラフト装置6のフロントローラ対19の周速度の変化によってフィード比が変化する。これにより、フロントローラ対19の下流側で繊維束F(糸Y)の張力を変化させることができる。そのため、紡績機1では、張力センサ10から送信された張力測定信号に基づいてフロントローラ対19の周速度を制御することにより、糸Yの張力を効果的に制御できる。
【0073】
具体的には、ユニットコントローラ15は、張力測定信号において糸の張力が所定の範囲よりも低い場合、フロントローラ対19の周速度を、糸Yの張力が所定の範囲内となるまで、初期速度よりも遅くさせる。ユニットコントローラ15は、張力測定信号において糸Yの張力が所定の範囲よりも高い場合、フロントローラ対19の周速度を、糸Yの張力が所定の範囲内となるまで、初期速度よりも速くさせる。フロントローラ対19の周速度を速くすることにより、糸Yの張力を低くすることができる。フロントローラ対19の周速度を遅くすることにより、糸Yの張力を高くすることができる。したがって、張力測定信号に基づいてユニットコントローラ15がフロントローラ対19の周速度を制御することにより、糸Yの張力を所定の範囲内で維持できる。
【0074】
糸Yの張力の制御は、ドラフト装置6、芯糸供給装置7及び糸貯留装置11の少なくとも1つにより行われればよい。糸Yの張力の制御は、ドラフト装置6のフロントローラ対19及び糸貯留装置11の両方を制御することにより行われてもよい。或いは、糸Yの張力の制御は、ドラフト装置6のフロントローラ対19及び芯糸供給装置7の張力付与機構70の両方を制御することにより行われてもよい。或いは、糸Yの張力の制御は、ドラフト装置6のフロントローラ対19、芯糸供給装置7の張力付与機構70及び糸貯留装置11の糸貯留ローラ11aの3つの装置を制御することによって行われてもよい。
【0075】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0076】
上記実施形態では、パッケージPの巻取動作を継続している状態で、張力センサ10の検出結果に基づいたフィードバック制御を行っている。しかし、例えば、フィードバック制御を所定期間行っても、張力センサ10が検出する糸Yの張力が所定の範囲内に収まらない場合は、紡績ユニット2における紡績動作及び巻取動作を停止してもよい。また、ドラフト装置6と糸貯留装置11と張力付与機構70との少なくとも何れかについて、フィードバック制御における制御量(例えば、フロントローラ対19及び/又は糸貯留ローラ11aの回転数、張力付与機構70による張力付与量)に限界範囲を設けてもよい。この場合、上記制御量が当該限界範囲から外れる場合は、紡績ユニット2における紡績動作及び巻取動作を停止してもよい。上記何れかの理由により紡績動作及び巻取動作を停止した場合、表示画面102及び/又は各紡績ユニット2に設けられた図略の表示部に、何らかのエラーが発生していることを表示してもよい。
【0077】
上記実施形態では、紡績機1の紡績ユニット2が芯糸供給装置7を備える形態を一例に説明した。しかし、芯糸供給装置7は、紡績ユニット2に備えられていなくてもよい。
【0078】
上記実施形態では、芯糸供給装置7の張力付与機構70において、張力付与部71が、芯糸Cを複数回屈曲させて糸Yに張力を付与する形態を一例に説明した。しかし、張力付与機構70において、アクチュエータ76を制御する代わりに、固定片73に対する可動片74の開閉度合いを図略のバネの巻き付け角を電気的に調整することにより、張力付与部71が芯糸Cに付与する張力を調整してもよい。また、芯糸Cに張力を付与する機構はこれに限定されない。芯糸Cに張力する機構は、例えば、ディスクで芯糸Cの糸道を屈曲させる形態であってもよい。芯糸Cに張力を付与する位置は、芯糸案内部52の上流側であれば、その他の位置でもよい。
【0079】
上記実施形態では、張力センサ10が、空気紡績装置8と糸貯留装置11との間において、走行する糸Yの張力を測定する形態を一例に説明した。しかし、張力センサ10の位置は、この位置に限定されない。張力センサ10は、空気紡績装置8と巻取装置13との間の何れかの位置で糸Yの張力を測定してもよい。
【0080】
上記実施形態では、張力センサ10の検出結果に基づき、糸形成部により付与される張力を調整しながら糸Yの巻き取りを行うように、糸形成部と巻取装置13とを制御する制御部がユニットコントローラ15である形態を一例に説明した。しかし、当該制御部は、機台制御装置100であってもよい。
【0081】
空気紡績装置8は、繊維束の撚りが空気紡績装置の上流側に伝わるのを防止するために、繊維案内部に保持されて紡績室内に突出するように配置されたニードルを更に備えていてもよい。また、空気紡績装置は、そのようなニードルに代えて、繊維案内部の下流側端部によって、繊維束の撚りが空気紡績装置の上流側に伝わるのを防止するものであってもよい。更に、空気紡績装置は、上記の構成に代えて、互いに反対方向に繊維束に撚りを掛ける一対のエアージェットノズルを備えていてもよい。紡績機は、オープンエンド紡績機であってもよい。
【0082】
紡績ユニット2では、糸貯留装置11が空気紡績装置8から糸Yを引き出す機能を有していたが、デリベリローラとニップローラとで空気紡績装置8から糸Yが引き出されてもよい。この場合、糸貯留装置11は省略してもよい。或いは、この場合、糸貯留装置11の代わりに、吸引空気流で糸Yの弛みを吸収するスラックチューブ又は機械的なコンペンセータ等を設けてもよい。デリベリローラを備える構成では、ユニットコントローラ15は、糸Yの張力が所定の範囲内ではないと判断した場合、デリベリローラの周速度を制御する。デリベリローラの周速度の変化によって、糸Yのフィード比が変化する。これにより、デリベリローラにより引き出される糸Yの張力を変化させることができる。そのため、紡績機では、張力センサ10の検出結果に基づいてデリベリローラの周速度を制御することにより、糸Yの張力を効果的に制御できる。
【0083】
紡績機1では、高さ方向において、上側で供給された糸Yが下側で巻き取られるように各装置が配置されていた。しかし、下側で供給された糸が上側で巻き取られるように各装置が配置されていてもよい。この構成では、第1空気配管及び第1分配管は、紡績ユニット2の高さ方向において、空気紡績装置8よりも下方に配置されることが好ましい。第1分配管は、空気紡績装置との接続部分が最も高い位置となるように配設されていことが好ましい。
【0084】
紡績機1では、トラバースガイド23が、第2エンドフレーム5からの動力によって(すなわち、複数の紡績ユニット2共通で)駆動されていた。しかし、紡績ユニット2の各部(例えば、空気紡績装置、巻取装置等)が紡績ユニット2ごとに独立して駆動されてもよい。
【0085】
糸Yの走行方向において、張力センサ10が糸監視装置9の上流側に配置されてもよい。ユニットコントローラ15は、紡績ユニット2ごとに設けられてもよい。紡績ユニット2において、糸監視装置9及びワキシング装置12は、省略されてもよい。
【0086】
図1では、紡績機1は、チーズ形状のパッケージPを巻き取るように図示されているが、コーン形状のパッケージを巻き取ることも可能である。コーン形状のパッケージの場合、糸のトラバースにより糸の弛みが発生するが、当該弛みは、糸貯留装置11で吸収することができる。各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。紡績機は、空気紡績装置8を有する紡績機1以外であってもよく、例えば、リング精紡機でもよい。リング精紡機は、繊維束(紡績材料)から糸を形成し、糸を精紡ボビンに巻き取る紡績機である。リング精紡機における糸形成部は、ドラフト装置のフロントローラ対及び/又は芯糸供給装置の張力付与部である。紡績機がリング精紡機である場合、リング精紡機は、芯糸供給装置を備えていてもよいし、芯糸供給装置を備えていなくてもよい。芯糸供給装置を備える場合、紡績材料は繊維束及び/又は芯糸である。