【解決手段】代替鉄筋1は、超高強度モルタルにより形成された円柱状体2と、円柱状体2の外周面2Aの内側に全周に亘って埋設され、円柱状体2の軸方向Xに延びる多数本のFRPストランド3とを含む。
【背景技術】
【0002】
コンクリート建造物等に用いられる鉄筋のうち、モルタルやコンクリートによる被覆量(かぶり)の少ない表層部に配置される鉄筋やいわゆる段取り筋と称されるスペーサー的な使用をされる鉄筋においては、錆や錆に起因する腐食に強いものが望まれている。
かかる技術的な背景をうけて、特許文献1には錆に強い筋材が提案されている。特許文献1に記載の炭素繊維コンクリート補強筋は、強化繊維としての炭素繊維ストランドと、炭素繊維ストランドに埋め込まれたマトリックス材とを有する。マトリックス材は、速硬型セメントやアルミナセメント等の棒状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の炭素繊維コンクリート補強筋等の代替鉄筋では、マトリックス材を強化するために炭素繊維ストランドが用いられている。炭素繊維ストランドは断面視において鉄筋のほぼ全体に分布・配置されている。このため、比較的高価な炭素繊維ストランドの使用量が多く、高価な代替鉄筋になるという課題がある。また、マトリックス材内で炭素繊維ストランドが不均一に分布・配置されると、代替鉄筋の一部に脆弱部が生じ、代替鉄筋の曲げ強度が不十分となるという課題もある。
【0005】
この発明は、かかる背景のもとでなされたものであり、比較的廉価で、かつ、曲げ強度の向上を図れる代替鉄筋およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、超高強度モルタルにより形成された円柱状体と、前記円柱状体の周面の内側に全周に亘って埋設され、前記円柱状体の軸方向に延びる多数本のFRP(Fiber Reinforced Plastics)ストランドと、を含むことを特徴とする、代替鉄筋である。
請求項2に記載の発明は、鉄筋を元型に使用して、当該鉄筋と同寸同形の円柱状体を作るための成形型を準備し、前記成形型内にFRPストランドシートを円筒状に丸めて収容し、前記FRPストランドシートを収容した成形型内に超高強度モルタルを注入し、前記超高強度モルタルが固化するまで養生し、前記成形型から固化した円柱状体を取り出すことを特徴とする、代替鉄筋の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、多数本のFRPストランドが、円柱状体の周面の内側に全周に亘って埋設されている。そのため、円柱状体は、その周方向に均一に補強されているので、代替鉄筋には、脆弱部が生じにくい。したがって、代替鉄筋の曲げ強度の向上を図ることができる。また、FRPストランドは、円柱状体全体に埋設する必要がなく、その使用量を減らすことができるので、代替鉄筋を比較的廉価に設けることができる。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、FRPストランドシートを円筒状に丸めて成形型内に収容することによって、多数本のFRPストランドを一度に成形型内に配置することができる。FRPストランドシートを円筒状に丸めて収容した成形型内に超高強度モルタルを注入して養生することで、多数本のFRPストランドが周面の内側に全周に亘って埋設された円柱状体を作ることができる。したがって、比較的廉価で、かつ、曲げ強度が向上された代替鉄筋を効率良く製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る代替鉄筋1の概略斜視図である。
図1を参照して、代替鉄筋1は、円柱状体2と、円柱状体2に埋設された多数本のFRPストランド3とを含む。
円柱状体2は、軸方向Xに延びる中心軸線Lを有する。円柱状体2は、軸方向Xに長手であり、たとえば1500mmの長さを有する。その断面形状は、たとえば直径φ13mmの円形であり、実際の鉄筋と同じ太さとされている。円柱状体2は、超高強度モルタルにより形成されている。超高強度モルタルとしては、例えば、圧縮強度が80Nmm
2のものが挙げられる。
【0011】
FRPストランド3は、炭素繊維等からなる複数の強化繊維が撚られて形成されたものである。多数本のFRPストランド3は、軸方向Xに延びている。
この実施形態では、円柱状体2の外周面2Aには複数の第1リブ2Bおよび第2リブ2Cが形成されている。複数の第1リブ2Bは、軸方向Xに沿って延びており、円柱状体2の中心軸線Lまわりの周方向Cに間隔を隔てている。また、複数の第2リブ2Cは、円柱状体2の周方向Cに沿って延びており、軸方向Xに間隔を隔てて設けられている。複数の第1リブ2Bおよび複数の第2リブ2Cは、互いに交差している。これら第1リブ2Bおよび第2リブ2Cは、実際の鉄筋表面の形状を模倣したために設けられているものである。したがって、円柱状体2は、その外周面2Aにリブを備えないものでもよいし、リブを備える場合も、この実施形態のリブ形状に限定されるものではない。
【0012】
図2は、代替鉄筋1の断面図であり、
図1のII−II線に沿った断面図に相当する。
図2を参照して、多数本のFRPストランド3は、周方向Cの全周に亘って、外周面2Aの付近に埋設されている。多数本のFRPストランド3は、円柱状体2の外周面2Aの径方向内側に、たとえばFRPストランド3の軸径程度内側の位置、言い換えればFRPストランド3の外側がFRPストランド3の軸径程度の厚みのモルタルで覆われた状態で配置されている。よって、各FRPストランド3と円柱状体2の中心軸線Lとの間の距離よりも、FRPストランド3と外周面2Aとの間の距離のほうが十分に小さくなる配置とされている。
複数本のFRPストランド3の周方向Cの配置間隔は、FRPストランド3の軸径程度以下であり、ほとんど隙間がなく配置されていてもよい。
【0013】
超高強度モルタルで円柱状体2を形成し、この円柱状体2に上述の態様で複数本のFRPストランド3を埋設した構成にすることにより、代替鉄筋1は、曲げ強度、圧縮強度および引張強度が、同じ寸法の鉄筋と比べて遜色のない、実用的に使用できる代替鉄筋1となる。
また、比較的高価なFRPストランド3は、円柱状体2全体に埋設する必要がなく、その使用量を減らすことができ、比較的廉価に代替鉄筋1を作ることができる。
【0014】
代替鉄筋1は、錆びる心配がないので、コンクリート建造物の建設時に、いわゆる「段取り筋」として良好に利用することができる。すなわち、コンクリート建造物の骨組みとなる鉄筋を組む際に、最も外側に位置し、複数本の鉄筋を支持する「段取り筋」としてこの代替鉄筋1を用いると、代替鉄筋1は、錆びることはないので、コンクリートのかぶりの薄さに起因した錆などの心配がなくなる。
【0015】
また、代替鉄筋1は、その名の通り、一般に使用される鉄筋に代えて、広く利用することができる。
なお、多数本のFRPストランド3のうちの一部(
図2において、3a、3bで示すもの)が円柱状体2の径方向に互いに重なり合っていてもよい。
以下では、このような代替鉄筋1の製造方法について
図3A〜
図3Eを用いて説明する。
【0016】
図3A〜
図3Eは、代替鉄筋1の製造工程を順次に示す模式図である。
図3A〜
図3Eでは、説明の便宜上、第1リブ2Bおよび第2リブ2C(
図1参照)の図示を省略している。
代替鉄筋1の製造工程では、まず、準備工程が行われる。準備工程では、円柱状体2(
図1参照)を作るための成形型7が準備される。
【0017】
図3Aを参照して、成形型7は、例えばウレタン樹脂製である。成形型7は、例えば略円柱状であり、成形型7には、円柱状体2の形状とほぼ一致する空間8が形成されている。ここでは図示しないが、空間8を取り囲む成形型7の内面7Aには、第1リブ2Bおよび第2リブ2C(
図1参照)に応じた凹凸が形成されている。成形型7には、空間8の長手方向(円柱状体2の軸方向Xに相当)の一端面を成形型7から外部に露出させるための開口10が形成されている。
【0018】
図3Bに示すように、成形型7は、一対の半割型12を含む。半割型12のそれぞれは、互いに対向する対向面13を含む。各対向面13には、凹部14が形成されている。空間8は、一対の半割型12の凹部14によって構成されている。一対の半割型12は、軸方向Xに対する直交方向の一端同士が連結されていてもよい。一対の半割型12を互いに離間させて成形型7を開いたり、一対の半割型12を互いに近づけて成形型7を閉じたりすることができる。
【0019】
準備工程では、このような成形型7は、鉄筋を元型として使用し、ウレタン樹脂で形成した。
図3Bに示すように成形型7を開いて鉄筋6を取り出すと、型として空間8を有する成形型7となる。
図3Cを参照して、次に、収容工程が行われる。収容工程では、まず、二点鎖線で示すように、1枚のFRPストランドシート5が準備される。
【0020】
FRPストランドシート5は、多数本のFRPストランド3によって構成されている。FRPストランドシート5の多数本のFRPストランド3は、FRPストランド3が延びる方向(軸方向Xに相当)に直交方向にほとんど隙間をあけずに等間隔で配置されている。FRPストランドシート5としては、新日鉄住金マテリアルズ株式会社製のFORCA(登録商標)ストランドシート等を用いてもよい。
【0021】
FRPストランドシート5を、円筒状に丸めた状態で、成形型7の開口10から空間8内に収容する。円筒状に丸められた状態のFRPストランドシート5は、その周方向における一対の端部5A,5Bが互いにわずかに重なっていてもよい。本実施形態とは異なり、FRPストランドシート5が、二重以上に巻かれて丸められていてもよい。空間8内に収容されたFRPストランドシート5のFRPストランド3(
図3Cの実線参照)は、成形型7の内面7Aに沿って配置される。
【0022】
収容工程の次に、
図3Dに示すように、注入工程が行われる。注入工程では、まず、液状の超高強度モルタル16が準備される。そして、液状の超高強度モルタル16は、FRPストランドシート5が収容された空間8に開口10を介して注入される。
注入工程の次に、養生工程が行われる。養生工程では、超高強度モルタル16が成形型7の空間8に注入された後、超高強度モルタル16が固化するまで養生される。
【0023】
養生工程の次に、
図3Eに示すように、取出工程が行われる。取出工程では、成形型7を開き、代替鉄筋1が成形型7から取り出される。以上により、代替鉄筋1の製造が完了する。
本発明によれば、多数本のFRPストランド3が、円柱状体2の外周面2Aの内側に全周に亘って埋設されているので、円柱状体2の強度(特に、外周面2A付近の強度)が周方向Cにおいて均一に補強されている。そのため、FRPストランド3が円柱状体2内で不均一に分布・配置されている場合と比較して、代替鉄筋1には脆弱部が生じにくい。したがって、代替鉄筋1の曲げ強度の向上を図ることができる。
【0024】
また、多数本のFRPストランド3は、円柱状体2の外周面2A付近に配置されているため、円柱状体2の外周面2Aに亀裂が発生するのを抑制することができる。したがって、FRPストランド3が中心軸線L付近に集中して配置されている場合と比較して、円柱状体2の曲げ強度の向上を図ることができる。
また、中心軸線L付近にFRPストランド3を配置していないので、比較的少ない本数のFRPストランド3で曲げ強度の向上を図ることができる。
【0025】
また、FRPストランドシート5を円筒状に丸めて成形型7内に収容することによって、多数本のFRPストランド3を一度に成形型7内に配置することができる。FRPストランドシート5を円筒状に丸めて収容した成形型7内に超高強度モルタル16を注入して養生することで、多数本のFRPストランド3が外周面2Aの内側に全周に亘って埋設された円柱状体2を作ることができる。したがって、比較的廉価で、かつ、曲げ強度が向上された代替鉄筋1を効率良く製造することができる。
【0026】
次に、この発明の他の実施形態を説明する。
上記実施形態では、超高強度モルタルとFRPストランドとを用いて代替鉄筋を構成した。しかし、FRPストランドに代えてステンレス製の(鋼)棒を用いてもよい。ステンレス製の棒をFRPストランドに代えて使用しても、錆や腐食の生じない代替鉄筋とすることができる。
【0027】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の範囲内において種々の変更が可能である。