【解決手段】弁孔8の断面形状が、ハウジング7の高さ方向を向く長軸Xと幅方向を向く短軸Yとを有する細長形状をなし、前記長軸X方向に直線的に延び且つ互いに平行をなす左右の孔側壁8a,8aと、該左右の孔側壁8a,8aの一端同士を結ぶ第1孔端壁8bと、前記左右の孔側壁8a,8aの他端同士を結ぶ第2孔端壁8cとを有し、スプールのランド部11の断面形状が、前記ハウジング7の高さ方向を向く長軸Xと幅方向を向く短軸Yとを有する細長形状をなし、前記長軸X方向に直線的に延び且つ互いに平行をなす左右のランド側壁25a,25aと、該左右のランド側壁25a,25aの一端同士を結ぶ第1ランド端壁25bと、前記左右のランド側壁の他端同士を結ぶ第2ランド端壁25cとを有する。
長さ方向、幅方向、及び高さ方向を有するハウジングと、該ハウジングの内部を該ハウジングの長さ方向に延びる弁孔と、該弁孔にそれぞれ連通するように前記ハウジングに形成された入力用、出力用、及び排気用のポートと、前記弁孔内に該弁孔の軸線方向に摺動自在に挿入されたスプールと、を有する主弁部;前記スプールにパイロット流体による一方向の推進力と反対方向の復帰力とを作用させるパイロット弁部;を有し、
前記弁孔の前記軸線と直交する方向の断面形状は、前記ハウジングの高さ方向を向く長軸と幅方向を向く短軸とを有する細長形状であって、前記長軸方向に直線的に延び且つ互いに平行をなす左右の孔側壁と、該左右の孔側壁の一端同士を結ぶ第1孔端壁と、前記左右の孔側壁の他端同士を結ぶ第2孔端壁とを有し、
前記スプールは、前記流路を開閉するランド部と、隣接するランド部同士を繋ぐ該ランド部より小径の軸部とを有し、前記ランド部の前記軸線と直交する方向の断面形状は、前記ハウジングの高さ方向を向く長軸と幅方向を向く短軸とを有する細長形状であると共に、前記弁孔の断面形状と同形且つ同大であって、前記長軸方向に直線的に延び且つ互いに平行をなす左右のランド側壁と、該左右のランド側壁の一端同士を結ぶ第1ランド端壁と、前記左右のランド側壁の他端同士を結ぶ第2ランド端壁とを有する、
ことを特徴とするスプール弁。
前記パイロットピストンの長軸方向の径は、前記スプールのランド部の長軸方向の径より大きく、前記パイロットピストンの短軸方向の径は、前記ランド部の短軸方向の径と等しいことを特徴とする請求項2に記載のスプール弁。
前記軸部の前記軸線と直交する方向の断面形状は、円形か又は前記ハウジングの高さ方向を向く長軸と幅方向を向く短軸とを有する細長形状であることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のスプール弁。
前記弁孔の第1孔端壁と第2孔端壁、及び、前記ランド部の第1ランド端壁と第2ランド端壁とは、それぞれ半円状をなしていて、各々の曲率半径は互いに等しいことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のスプール弁。
前記弁孔の第1孔端壁と第2孔端壁、及び、前記ランド部の第1ランド端壁と第2ランド端壁とは、前記弁孔の孔側壁及び前記ランド部のランド側壁に対して直交する直線部と、該直線部を前記孔側壁及びランド側壁の端部に滑らかに接続する円弧状のコーナー部とからなることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のスプール弁。
1つのマニホールド上に、同じ弁幅を有する複数のスプール弁を搭載したマニホールドバルブであって、前記複数のスプール弁のうちの少なくとも1つが、請求項1から6の何れかに記載されたスプール弁であることを特徴とするマニホールドバルブ。
【背景技術】
【0002】
弁孔内を摺動するスプールによって複数のポート間の流路を開閉するスプール弁は、例えば特許文献1に開示されているように、周知である。
図10及び
図11に示すように、従来の一般的なスプール弁60は、複数のポートP,A1,A2,E1,E2を有するハウジング61の内部に、前記ポートP,A1,A2,E1,E2に連通する円形断面の弁孔62を有し、該弁孔62内に、スプール63が軸線L方向に摺動自在に収容され、前記ハウジング61の端部には、パイロット弁部67が設けられ、このパイロット弁部67に、パイロットピストン69と、このパイロットピストン69にパイロット流体を作用させるパイロット弁68とが設けられて、このパイロット弁68により前記パイロットピストン69を介して、前記スプール63を切り換えるように構成されている。
【0003】
前記スプール63は、シール部材65が外周に取り付けられている円形断面のランド部64と、隣接するランド部64同士を繋ぐ円形断面で該ランド部64より小径の軸部66とを有するもので、前記弁孔62内を摺動して、前記ランド部64が前記弁孔62の一部に形成された弁座部62aに乗り上げたり該弁座部62aから離れたりすることにより、隣接する前記ポートP,A1,A2,E1,E2を結ぶ流路を開閉する。
【0004】
このようなスプール弁において、制御可能な圧力流体の流量を増大させるには、流路の有効断面積を拡大させる必要がある。その方法として、例えば、前記弁孔62及びスプール63(ランド部64)の直径を大きくするとか、前記スプール63のストロークや前記ポートP,A1,A2,E1,E2の開口幅を大きくするなどの方法がある。
【0005】
このうち、前者の弁孔62及びスプール63の直径を大きくする方法は、簡単にしかも確実に流路の有効断面積を拡大することができるが、それに伴ってハウジング61の横幅即ち弁幅が大きくなるため、スプール弁の大形化に繋がり、できるだけ小型で大流量のスプール弁を必要とする状況下においては、好ましくない方法である。
【0006】
一方、前記スプール63のストロークやポートP,A1,A2,E1,E2の開口幅を大きくする方法は、前記ハウジング61の横幅を大きくする必要がないので、スプール弁の大形化に繋がりにくいという利点はあるが、前記弁孔62及びスプール63の直径は変わらないため、該スプール63の軸部66の回りの流路の断面積、即ち、前記弁孔62の内周と前記軸部66の外周との間の流路の断面積S0は拡大されず、このため、この軸部の回りの流路の断面積による制約を大きく受けることが避けられず、流路全体の有効断面積を大幅に拡大させることは困難であった。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1−
図4は本発明に係るスプール弁の第1実施形態を示すものである。このスプール弁1Aは、1つのパイロット弁4を有するシングルパイロット式のスプール弁であって、5ポート弁としての弁構造を有する主弁部2と、該主弁部2の長さ方向の一端側に設けられたパイロット弁部3とを有している。このスプール弁1Aで制御する圧力流体は、圧縮空気である。
【0017】
前記主弁部2のハウジング7は、長さ方向、幅方向、高さ方向を有する矩形のブロック形をしていて、その下面に、入力用、出力用、排気用の5つのポートP,A1,A2,E1,E2が、該ハウジング7の長さ方向に並べて形成されている。この5つのポートの配置は、中央の入力用ポートPの両側に第1及び第2の出力用ポートA1,A2が位置し、該第1及び第2の出力用ポートA1,A2の両外側に第1及び第2の排気用ポートE1,E2が位置するような配置である。
【0018】
図3に示すように、前記入力用ポートP及び出力用ポートA1,A2の正面視形状は、前記ハウジング7の幅方向に細長い長方形状をしていて、該ポートP,A1,A2の、前記ハウジング7の幅方向の開口幅mは、長さ方向の開口幅nより大きい。一方、前記排気用のポートE1,E2の正面視形状は、略凸字形をしていて、該ポートE1,E2の、前記出力用ポートA1,A2側の一半部と、その反対側の他半部とでは、前記ハウジング7の幅方向の開口幅が異なっており、前記一半部側の開口幅m1が他半部側の開口幅m2より大きい。
【0019】
前記ハウジング7の内部には、前記5つのポートP,A1,A2,E1,E2に連通する弁孔8が、該ハウジング7を長さ方向に貫通するように形成されている。該弁孔8の、前記軸線Lと直交する方向の断面形状は、
図4から明らかなように、前記ハウジング7の高さ方向に細長いトラック形をしている。即ち、前記弁孔8は、前記ハウジング7の高さ方向を向く長軸Xと、該ハウジング7の幅方向を向く短軸Yとを有するような細長形状をなしていて、前記長軸X方向に直線的に延び且つ互いに平行をなす左右の孔側壁8a,8aと、該左右の孔側壁8a,8aの一端同士を結ぶ上方の第1孔端壁8bと、前記左右の孔側壁8a,8aの他端同士を結ぶ下方の第2孔端壁8cとによって囲まれている。前記第1孔端壁8bと第2孔端壁8cとは、それぞれ半円状をなし、各々の曲率半径rは互いに等しい。
【0020】
前記弁孔8の内径は、前記ポートP,A1,A2,E1,E2が連通する位置で拡大されていて、後述するスプール10のシール部材18−21が前記弁孔8から離れて流路を開放したとき、該シール部材18−21が、前記弁孔8の拡大された部分即ち拡大部8A内に位置するように構成されている。
【0021】
図示した例において、直線をなす前記左右の孔側壁8a,8aの、前記長軸X方向の長さtは、互いに等しく、且つ、前記弁孔8の短軸Y方向の径yより小さい。しかし、前記長さtは、前記短軸Y方向の径yと同じか、あるいはそれより大きく形成することもできる。
【0022】
前記弁孔8の内部には、隣接する前記ポート同士を結ぶ流路を開閉するスプール10が、該弁孔8の軸線L方向に摺動自在に挿入されている。該スプール10は、前記軸線L方向の中央に位置する第1のランド部11と、該第1のランド部11の両側に位置する第2のランド部12及び第3のランド部13と、該第2のランド部12及び第3のランド部13のそれぞれ外側に位置する第4のランド部14及び第5のランド部15と、隣接する前記ランド部同士を繋ぐ軸部16とを有している。該軸部16は前記ランド部11−15より小径である。また、前記ランド部11−15と軸部16とは、相互に一体に形成されていても、あるいは別体に形成されて相互に連結されていても良い。
【0023】
前記第1のランド部11の外周の凹溝内には、前記入力用ポートPと第1の出力用ポートA1とを結ぶ流路を、前記弁孔8の一部に形成された弁座部9に乗り上げたり該弁座部9から離れたりすることによって開閉する第1のシール部材18と、前記入力用ポートPと第2の出力用ポートA2とを結ぶ流路を同様にして開閉する第2のシール部材19とが取り付けられ、前記第2のランド部12の外周の凹溝内には、前記第1の出力用ポートA1と第1の排気用ポートE1とを結ぶ流路を同様にして開閉する第3のシール部材20が取り付けられ、前記第3のランド部13の外周の凹溝内には、前記第2の出力用ポートA2と第2の排気用ポートE2とを結ぶ流路を同様にして開閉する第4のシール部材21が取り付けられている。また、前記第4のランド部14の外周の凹溝内には、前記弁孔8の第1端側の孔端を常時閉鎖する第5のシール部材22が取り付けられ、前記第5のランド部15の外周の凹溝内には、前記弁孔8の第2端側の孔端を常時閉鎖する第6のシール部材23が取り付けられている。
【0024】
前記第1−第4のシール部材18−21は、該シール部材の半径方向に細長い断面形状を有するパッキンにより形成され、前記第5のシール部材22及び第6のシール部材23は、Oリングで形成されている。
【0025】
前記第1−第5のランド部11−15の、前記軸線Lと直交する方向の断面形状は、互いに同一形状且つ同一大きさであると共に、前記弁孔8の断面形状とも実質的に同一形状且つ同一大きさであるので、その具体的形状を、
図4に示す第1のランド部11について代表的に説明する。
即ち、前記ランド部11の断面形状は、前記ハウジング7の高さ方向に細長いトラック形をしていて、前記ハウジング7の高さ方向を向く長軸Xと、該ハウジング7の幅方向を向く短軸Yとを有している。そして、該ランド部11は、前記長軸X方向に直線的に延び且つ互いに平行をなす左右のランド側壁25a,25aと、該左右のランド側壁25a,25aの一端同士を結ぶ上方の第1ランド端壁25bと、前記左右のランド側壁25a,25aの他端同士を結ぶ下方の第2ランド端壁25cとを有している。前記第1ランド端壁25bと第2ランド端壁25cとは、それぞれ半円状をしていて、各々の曲率半径は互いに等しい。
【0026】
前記ランド部11の長軸X方向の径は、前記弁孔8の長軸X方向の径xに等しく、前記ランド部11の短軸Y方向の径は、前記弁孔8の短軸Y方向の径yに等しい。また、前記ランド部11の前記左右のランド側壁25a,25aの長さは、互いに等しく、且つ、前記弁孔8の前記左右の孔側壁8a,8aの長さtに等しい。更に、前記ランド部11の第1ランド端壁25b及び第2ランド端壁25cの曲率半径は、互いに等しく、且つ、前記弁孔8の第1孔端壁8b及び第2孔端壁8cの曲率半径rに等しい。
【0027】
なお、前記ランド部11の長軸X方向の径x及び短軸Y方向の径yとは、前記弁孔8の内面に接触しているシール部材18又は19の位置での径(シール径)のことである。
また、図示した例で、前記左右のランド側壁25a,25aの前記長軸X方向の長さtは、前記短軸Y方向の径yより小さく形成されているが、該長さtは、前記弁孔8と同様に、前記短軸Y方向の径yと同じか又はそれより大きく形成することもできる。
前記スプール10の前記第1のランド部11は、前記第1のシール部材18が取り付けられている部分と、前記第2のシール部材19が取り付けられている部分とに、分割されていても良い。
【0028】
なお、前記複数のランド部11−15のうち、第4及び第5のランド部14,15は、前記弁孔8の孔端を常時閉鎖するもので、流路を開閉するものではないため、以下の説明において、該第4及び第5のランド部14,15について説明する必要がない場合には、前記第1−第3のランド部11−13についてだけ標記し、該ランド部14,15の標記は省略することもある。
【0029】
一方、隣接する前記ランド部11−13同士を繋ぐ前記軸部16の、前記軸線Lと直交する方向の断面形状は、円形をなしている。この軸部16の直径dは、前記ランド部11−13の短軸Y方向の径yより小さければ良いが、該径yの2/3以下であることが望ましく、より望ましくは1/2とすることであり、図示した例では、該径yの約1/3ほどに形成されている。
【0030】
前記ハウジング7の内部には、前記入力用ポートPに連通するパイロット供給孔28が、前記弁孔8と平行に形成され、該パイロット供給孔28の第1端28aは、前記ハウジング7の長さ方向の一端である第1端7aに開口し、該パイロット供給孔28の第2端28bは、前記ハウジング7の長さ方向の反対端である第2端7bに開口している。
【0031】
前記ハウジング7の前記第1端7aには、前記スプール10にパイロットエアによる一方向の推進力と反対方向の復帰力とを作用させる前記パイロット弁部3が設けられ、該ハウジング7の前記第2端7bには、エンドブロック29が取り付けられている。
【0032】
前記エンドブロック29には、前記スプール10の一端の受圧面10aが臨む復帰用の圧力室30が形成されると共に、該復帰用の圧力室30と前記パイロット供給孔28の第2端28bとを結ぶ連通孔31が形成されていて、該連通孔31と前記パイロット供給孔28とを通じて前記復帰用の圧力室30に、前記入力用ポートPからパイロットエアが常時供給されるようになっている。前記圧力室30内には、復帰用のスプリングを配設することにより、該スプリングでパイロットエアによる復帰力を補助させることもできる。
【0033】
一方、前記パイロット弁部3は、前記ハウジング7に接続されたピストン箱34と、該ピストン箱34に連結された電磁式の前記パイロット弁4とを有している。
【0034】
前記ピストン箱34の内部には、前記弁孔8の端部に通じるピストン室35が形成されていて、該ピストン室35の内部には、前記スプール10に推進力を作用させるパイロットピストン36が、軸線L方向に摺動自在に収容されている。該パイロットピストン36の、前記スプール10に向き合う側の面には、前記弁孔8内に嵌合するピストン軸36aが形成され、該ピストン軸36aの先端が前記スプール10の端面に当接している。
【0035】
前記パイロットピストン36の外周には、該パイロットピストン36の外周と前記ピストン室35の内周との間をシールするピストンパッキン37が取り付けられ、これらパイロットピストン36とピストンパッキン37とによって、該パイロットピストン36の一側に推進用の圧力室38が区画されている。この推進用の圧力室38は、パイロット給排孔38aから、手動操作部39と前記パイロット弁4とを介して、連通孔32により前記パイロット供給孔28の第1端28aに連通し、前記手動操作部39又はパイロット弁4を操作することにより、該推進用の圧力室38に、前記入力用ポートPからパイロットエアが供給されたり排出されたりするようになっている。
【0036】
前記ピストンパッキン37は、シールに方向性を有するリップタイプのピストンパッキンであり、該ピストンパッキン37のリップは、前記圧力室38側に向けられている。
また、前記パイロットピストン36の背面と前記スプール10との間に形成された開放室40は、大気に開放されている。
【0037】
前記ピストン室35と前記パイロットピストン36との、前記軸線Lと直交する方向の断面形状は、互いに同一で、
図1から分かるように、前記ハウジング7の高さ方向に細長いトラック形をしている。これを前記パイロットピストン36について説明すると、該パイロットピストン36は、前記ハウジング7の高さ方向を向く長軸Xと、該ハウジング7の幅方向を向く短軸Yとを有するような細長の断面形状を有していて、前記長軸X方向に直線をなし且つ互いに平行をなす左右のピストン側壁41a,41aと、該左右のピストン側壁41a,41aの一端同士を結ぶ上方の第1ピストン端壁41bと、前記左右のピストン側壁41a,41aの他端同士を結ぶ下方の第2ピストン端壁41cとを有している。前記第1ピストン端壁41bと第2ピストン端壁41cとは、それぞれ半円状をなしていて、各々の曲率半径は互いに等しい。
【0038】
また、前記パイロットピストン36の短軸Y方向の径ypは、前記スプール10のランド部11−15の短軸Y方向の径yと等しく、前記パイロットピストン36の長軸X方向の径xpは、前記ランド部11−15の長軸X方向の径xより大きい。従って、該パイロットピストン36の断面積は、前記スプール10のランド部11−15の断面積より大きく、このため、前記パイロットピストン36の受圧面36bの受圧面積は、前記スプール10のランド部15の端面の受圧面10aの受圧面積より大きいことになる。
なお、前記パイロットピストン36の前記長軸X方向の径xp及び短軸Y方向の径ypとは、前記ピストン室35の内面に接触しているピストンパッキン37の位置での径(シール径)のことであって、前記ピストン室35の長軸X方向の径及び短軸Y方向の径と等しい。
【0039】
前記ピストン軸36aも、前記パイロットピストン36と同様に、前記ハウジング7の高さ方向に細長い断面形状をなしているが、その形状及び大きさは任意で、前記弁孔8内に自由に出入りできるような形状及び大きさであれば良い。
【0040】
前記パイロット弁4は、3ポート式の電磁弁であり、該パイロット弁4に通電すると、該パイロット弁4を介して前記推進用の圧力室38に、前記入力用ポートPから前記パイロット給排孔38aを通じてパイロットエアが供給され、前記パイロット弁4を非通電にすると、該パイロット弁4を介して前記推進用の圧力室38から、パイロットエアが大気に排出されるように構成されている。
【0041】
前記手動操作部39は、停電時やメンテナンス時等に、前記パイロット弁4に通電したときと同じ動作状態を操作子39aの手動操作で実現させるものであるが、その構成及び作用は周知であるので、ここでの説明は省略することとする。
【0042】
前記構成を有するスプール弁1Aにおいて、
図2は前記パイロット弁4がオフのときの切換状態である。このとき、前記パイロット弁4によって前記推進用の圧力室38内のパイロットエアが排出され、前記復帰用の圧力室30内にはパイロットエアが供給されているため、前記スプール10とパイロットピストン36とは、前記スプール10の受圧面10aに作用するパイロットエアによって復帰位置に移動している。このため、前記第1のランド部11の第1のシール部材18が、入力用ポートPと第1の出力用ポートA1とを結ぶ流路を閉鎖すると共に、前記第3のランド部13の第4のシール部材21が、第2の出力用ポートA2と第2の排気用ポートE2とを結ぶ流路を閉鎖し、前記入力用ポートPと第2の出力用ポートA2とが連通すると共に、第1の出力用ポートA1と第1の排気用ポートE1とが連通している。
【0043】
この状態から、前記パイロット弁4がオンになると、該パイロット弁4によって前記推進用の圧力室38にパイロットエアが供給され、このパイロットエアが、前記パイロットピストン36の受圧面36bに作用して該パイロットピストン36を図の右方に向けて押圧するため、該パイロットピストン36は、前記受圧面36bと前記スプール10の受圧面10aとの面積差に基づく作用力によって前進し、前記スプール10を前進位置まで変位させる。このため、前記第1のランド部11の第2のシール部材19が、入力用ポートPと第2の出力用ポートA2とを結ぶ流路を閉鎖すると共に、前記第2のランド部12の第3のシール部材20が、第1の出力用ポートA1と第1の排気用ポートE1とを結ぶ流路を閉鎖し、前記入力用ポートPと第1の出力用ポートA1とが連通すると共に、第2の出力用ポートA2と第2の排気用ポートE2とが連通する。
【0044】
前記構成を有するスプール弁1Aは、前記弁孔8及びスプール10の各ランド部11−15の断面形状を細長形状にしたことにより、
図10及び
図11に示すような、弁孔62及びスプール63の断面形状が円形である公知のスプール弁60に比べ、スプール弁の横幅即ち弁幅を広げることなく、前記弁孔8の断面積を拡大することができ、それにより、該弁孔8の内周と前記スプール10の軸部16の外周との間に形成される流路の断面積(軸部回りの流路の断面積)Sが拡大されて、流路全体の有効断面積が大幅にしかも効率的に拡大されることになる。
【0045】
即ち、前記公知のスプール弁60において、弁孔62の直径をy(=2r)、スプール63の軸部66の直径をdとすると、前記軸部66の回りの流路の断面積S0は、π×(y
2−d
2)/4で表される。
【0046】
これに対し、
図1−
図4に示す本発明のスプール弁1Aにおいて、前記スプール10の軸部16の回りの流路の断面積Sは、(π×(y
2−d
2)/4)+(t×y)となり、t×yの分だけ前記公知のスプール弁60の断面積S0より大きくなる。
【0047】
本発明において、前記軸部16の断面形状は、
図4に鎖線で示すように、前記ランド部11と同様の細長形状であっても良く、この場合、該軸部16の直線をなす左右の軸側壁16aの長軸X方向の長さはt、該軸部16の短軸Y方向の径はd、第1軸端壁16b及び第2軸端壁16cの曲率半径はd/2であるから、前記スプール10の軸部回りの流路の断面積Sは、(π×(y
2−d
2)/4)+(t×(y−d))となり、公知のスプール弁60の断面積S0よりt×(y−d)分だけ大きい。
【0048】
なお、前記弁孔8及びランド部11−15の断面形状を楕円形にすることも考えられるが、楕円形の弁孔及びランド部は、精度を出しにくいため加工が難しいだけでなく、例えば、本発明の弁孔8と同じ断面積を有する楕円形の弁孔を形成する場合、両者の短軸Y方向の径yを同径にすると、楕円形の弁孔のX軸方向の径は、本発明の弁孔8のX軸方向の径xより大きくなるため、本発明に比べて効率が悪い。
【0049】
また、本発明において、前記パイロット弁部3におけるパイロットピストン36の断面形状は、前記スプール10のランド部11−15と同様の細長形状をしていて、その長軸X方向の径xpは前記スプール10のランド部11−15の長軸X方向の径xより大きいが、該パイロットピストン36の短軸Y方向の径ypは前記ランド部11−15の短軸Y方向の径yと同じであるため、前記ピストン箱34の横幅即ちスプール弁1Aの横幅は、拡大されない。
【0050】
図5は、第2実施形態のスプール弁1Bの要部を断面にして示すもので、この第2実施形態のスプール弁1Bが前記第1実施形態のスプール弁1Aと相違する点は、弁孔8の第1孔端壁8b及び第2孔端壁8cと、スプール10の各ランド部11−15の第1ランド端壁25b及び第2ランド端壁25cとが、半円状ではないという点である。
即ち、前記弁孔8の第1孔端壁8b及び第2孔端壁8cは、孔側壁8aに対して直交する直線部8dと、該直線部8dの両端を前記左右の孔側壁8aの端部に滑らかに接続する円弧状のコーナー部8eとを有し、前記ランド部11−15の第1ランド端壁25b及び第2ランド端壁25cは、ランド側壁25aに対して直交する直線部25dと、該直線部25dの両端を前記左右のランド側壁25aの端部に滑らかに接続する円弧状のコーナー部25eとを有している。
【0051】
この第2実施形態のスプール弁1Bのように、前記弁孔8の第1孔端壁8b及び第2孔端壁8cと、前記ランド部11−15の第1ランド端壁25b及び第2ランド端壁25cとに、前記直線部8d,25dを形成することにより、前記第1実施形態のスプール弁1Aのように、前記弁孔8の第1孔端壁8b及び第2孔端壁8cと、ランド部11−15の第1ランド端壁25b及び第2ランド端壁25cとを、それぞれ半円状に形成したものに比べ、両者の長軸X方向の径x及び短軸Y方向の径yを互いに等しくした場合に、前記弁孔8の断面積を一層大きくすることができる。
【0052】
なお、前記第2実施形態のスプール弁1Bでは、不図示のパイロットピストンも、前記弁孔8及びランド部11−15と類似する縦長形状を有していて、その長軸方向の径は前記弁孔8及びランド部11−15の長軸X方向の径xより大きいが、短軸方向の径は前記弁孔8及びランド部11−15の短軸Y方向の径yと同径に形成される。
この第2実施形態のスプール弁1Bの前述した構成以外の構成は、前記第1実施形態のスプール弁1Aと実質的に同じである。
【0053】
図6−
図9には、1つの単体型のマニホールド50上に複数個(図では3個)のスプール弁V1,V2,V3を搭載して形成したマニホールドバルブが示されている。
このマニホールドバルブにおいて、前記マニホールド50は、複数のスプール弁V1,V2,V3に圧縮空気を供給する共通の給気通孔51と、複数のスプール弁V1,V2,V3から排出される圧縮空気を外部に排出する共通の排気通孔52とを有すると共に、各スプール弁V1,V2,V3の2つの出力ポートに連通する2つ1組の出力通孔53A,53Bを、前記スプール弁V1,V2,V3の数と同じ組数だけ有している。
前記給気通孔51と排気通孔52とは、前記マニホールド50の長さ方向に延在するように形成され、前記出力通孔53A,53Bは、前記マニホールド50の側面の、各スプール弁V1,V2,V3に対応する位置に形成されている。
【0054】
図9から明らかなように、前記3個のスプール弁V1,V2,V3のうち、最も右側に位置する第1のスプール弁V1は、弁孔及びスプールの断面形状が円形をなす前記公知のスプール弁60であり、残りの第2及び第3のスプール弁V2,V3は、弁孔8及びスプール10の断面形状が細長形状をなす本発明に係るスプール弁である。
【0055】
本発明に係る前記第2及び第3の2つのスプール弁V2,V3のうち、
図9の中央に位置する第2のスプール弁V2は、前記第1実施形態のスプール弁1Aであって、
図4から明らかなように、スプール10のランド部11−15の左右のランド側壁25d,25dの長さtが、該ランド部11−13の短軸Y方向の径yより小さく形成されており、これに対し、
図9の左端に位置する第3のスプール弁V3は、前記左右のランド側壁25d,25dの長さtが、短軸Y方向の径yより大きく形成されている。
【0056】
従って、前記3個のスプール弁V1,V2,V3におけるハウジング7,61の高さを比較すると、第1のスプール弁V1のハウジング7の高さが最も低く、前記第3のスプール弁V3のハウジング7の高さが最も高く、前記第2のスプール弁V2のハウジング7の高さはそれらの中間である。しかし、パイロット弁部3,67を含めたスプール弁全体の高さは、互いに等しい。また、前記3個のスプール弁V1,V2,V3の弁幅Wは、互いに等しい。
【0057】
このように、本発明に係るスプール弁V2,V3は、弁孔62及びスプール63の断面形状が円形をなす前記公知のスプール弁V1(60)に比べ、前記弁孔8及びスプール10の断面形状を拡大しているにも拘わらず、前記公知のスプール弁60と同じ弁幅を保つことができるため、該公知のスプール弁60を搭載可能な従来のマニホールド50上に、該公知のスプール弁60と混在させて搭載することが可能である。
なお、前記マニホールド50上には、本発明のスプール弁V2,V3だけを搭載することも可能である。
【0058】
前記各実施形態のスプール弁1A,1Bは、1つのパイロット弁4を有するシングルパイロット式のスプール弁であるが、本発明のスプール弁1A,1Bは、2つのパイロット弁4を有するダブルパイロット式のスプール弁であっても良い。このダブルパイロット式のスプール弁は、
図2に示す前記第1実施形態のスプール弁1Aにおいて、前記パイロット弁部3に、前記パイロット弁4及び手動操作部39とは別の第2のパイロット弁及び第2の手動操作部を設け、この第2のパイロット弁の出力口を、前記第2の手動操作部を経て、前記ハウジング7及びエンドブロック29の内部を延びるパイロット通路を通じて、前記復帰用の圧力室30に連通させることにより、得ることができる。そして、2つの前記パイロット弁を交互にオン・オフさせて推進用の圧力室38と復帰用の圧力室30とにパイロットエアを交互に給排することにより、前記スプール10を推進位置と復帰位置とに切り換えるものである。
新たに設ける前記第2のパイロット弁及び第2の手動操作部は、前記パイロット弁部3に設ける代わりに、前記エンドブロック29側に設けても良い。
【0059】
また、前述したように
図2のスプール弁1Aをダブルパイロット式にした場合、エンドブロック29に復帰用のパイロットピストンを設け、この復帰用のパイロットピストンで前記スプール10を復帰させるように構成することもできる。この場合、前記復帰用のパイロットピストンの形状は前記推進用のパイロットピストン36と同様の細長形状に形成されるが、その受圧面積は、該パイロットピストン36の受圧面積と同じであっても、それより小さくても構わない。
【0060】
なお、前記第1実施形態のスプール弁1Aにおいても、前記エンドブロック29に復帰用のパイロットピストンを設け、この復帰用のパイロットピストンによって前記スプール10を復帰させるように構成することもできる。この場合、該復帰用のパイロットピストンは、前記推進用のパイロットピストン36と同様の細長形状に形成されるが、その大きさ即ち受圧面積は、該推進用のパイロットピストン36の受圧面積より小さく、前記スプール10の受圧面10aの受圧面積と実質的に同じ大きさに形成される。
【0061】
前記実施形態のスプール弁は、スプール10のランド部11−15の外周にゴムや合成樹脂等からなる弾性体のシール部材18−23が取り付けられているが、ランド部の外周にこのようなシール部材が取り付けられていないメタルシールタイプのスプール弁にも本発明は適用することができる。
また、図示した各実施形態は5ポート式のスプール弁であるが、本発明は、3ポート式あるいは4ポート式など、その他のポート数のスプール弁にも適用することができる。