【解決手段】光ファイバ式センサ装置1は、測定対象面に装着される伸縮自在なシート部材2と、シート部材2に固定された固定部分3xを有する光ファイバ3とを備える。光ファイバ3の固定部分3xは、シート部材2の面沿い方向の伸縮に応じて湾曲度合が変化するように湾曲された湾曲部3aを含む。光ファイバ3は、湾曲部3aの湾曲度合の変化に応じて光伝送特性が変化する。
面沿い方向の伸縮を生じる測定対象面に、該測定対象面の伸縮に伴い伸縮するように装着される伸縮自在なシート部材と、前記シート部材の面に沿わせて配設されて該シート部材に固定された固定部分を有する光ファイバとを備えており、前記光ファイバの固定部分は、前記シート部材の面沿い方向の伸縮に応じて湾曲度合が変化するように湾曲された湾曲部を含み、前記光ファイバは、前記湾曲部の湾曲度合の変化に応じて光伝送特性が変化するように構成されていることを特徴とする光ファイバ式センサ装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に見られるセンサ装置は、該光ファイバにおける偏波変動を測定することにより、平板状体がその面に垂直な方向の力を受けることによる該平板状体の凹凸変形を検出することは可能であるものの、凹凸変形を生じることなく、面沿い方向に伸縮する測定対象面に対して、該測定対象面の伸縮を検知することは困難であった。
【0006】
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、面沿い方向に伸縮する測定対象面の伸縮を適切に検知することができる光ファイバ式センサ装置を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、人の皮膚表面の伸縮を検知することで、人の関節の動きを検知することを可能としたセンサ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の光ファイバ式センサ装置は、上記目的を達成するために、面沿い方向の伸縮を生じる測定対象面に、該測定対象面の伸縮に伴い伸縮するように装着される伸縮自在なシート部材と、前記シート部材の面に沿わせて配設されて該シート部材に固定された固定部分を有する光ファイバとを備えており、前記光ファイバの固定部分は、前記シート部材の面沿い方向の伸縮に応じて湾曲度合が変化するように湾曲された湾曲部を含み、前記光ファイバは、前記湾曲部の湾曲度合の変化に応じて光伝送特性が変化するように構成されていることを特徴とする(第1発明)。
【0009】
かかる第1発明によれば、前記シート部材を測定対象面に装着することで、測定対象面の伸縮がシート部材に伝達されて、該シート部材が伸縮し、これに応じて、前記光ファイバの固定部分に含まれる湾曲部の湾曲度合が変化することとなる。さらに、該湾曲部の湾曲度合の変化に応じて光ファイバの光伝送特性(光の減衰特性、スペクトル特性等)が変化する。
【0010】
従って、シート部材を測定対象面に装着した状態で、光ファイバの光伝送特性の変化を計測することで、該測定対象面の伸縮を検知できることとなる。
【0011】
この場合、シート部材は、測定対象面の伸縮に伴って伸縮するように該測定対象面に装着し得るものであれば、薄い柔軟なものを使用できる。このため、シート部材を、測定対象面の形状の制約等を受けずに、種々様々な測定対象面に、該測定対象面の面沿い方向の伸縮に対して高い追従性で伸縮し得るように装着できる。
【0012】
また、光ファイバは、容易に湾曲度合を変化させることができるので、該光ファイバの固定部分を適切な配設パターンでシート部材に固定することで、該光ファイバの湾曲部の湾曲度合を、シート部材2の伸縮に対して高い追従性で変化させることが可能である。
【0013】
従って、第1発明の光ファイバ式センサ装置によれば、面沿い方向に伸縮する種々様々な測定対象面の伸縮を適切に検知することができる。
【0014】
上記第1発明では、前記光ファイバの固定部分は、前記シート部材の所定の第1方向での伸長に応じて前記湾曲部の湾曲度合が減少し、且つ、該第1方向と直交する第2方向での前記シート部材の伸長に応じて前記湾曲部の湾曲度合が増加するように配設され得る(第2発明)。
【0015】
この第2発明によれば、上記第1方向及び第2方向のいずれの方向でも、測定対象面の伸縮を検知できる。さらに、第1方向でのシート部材の伸長の場合と、第2方向でのシート部材の伸長の場合とで、前記湾曲部の湾曲度合の変化の方向(湾曲度合の増加又は減少)が異なるので、第1方向での測定対象面の伸縮と、第2方向での測定対象面の伸縮とを区別して検知できる。
【0016】
上記第2発明では、前記光ファイバの固定部分は、前記第1方向及び第2方向の各方向に直線状に延在する部分を持たないように配設されていることが好ましい(第3発明)。
【0017】
ここで、光ファイバは、一般に伸縮に対する剛性が高いので、シート部材に固定される固定部分が直線状に延在する部分を持つと、当該直線状に延在する部分の延在方向でのシート部材の伸縮が阻害されやすくなる。
【0018】
しかるに、第3発明によれば、前記第1方向及び第2方向の各方向でのシート部材の伸縮、ひいては、測定対象面の伸縮が光ファイバの固定部分により阻害されるのを防止できる。このため、第1方向及び第2方向のいずれの方向でも、測定対象面の伸縮に対する前記湾曲部の湾曲度合の変化の感度を良好に確保することができる。
【0019】
また、前記第1発明では、前記光ファイバの固定部分は、前記シート部材の少なくとも一方向での伸縮に応じて前記湾曲部の湾曲度合が変化するように配設され得る。この場合には、前記光ファイバの固定部分は、当該一方向に直線状に延在する部分を持たないように配設されていることが好ましい(第4発明)。
【0020】
この第4発明によれば、前記一方向での測定対象面の伸縮に対する前記湾曲部の湾曲度合の変化の感度を良好に確保することができる。
【0021】
上記第2〜第4発明では、前記光ファイバの固定部分の全体、又は該固定部分の両端部を除く全体は、その各部の曲率中心が、該固定部分における光ファイバの両側のうちの片側に存在するように湾曲されているという態様を採用し得る(第5発明)。
【0022】
なお、「光ファイバの両側」というのは、光ファイバの固定部分が配設される面において、光ファイバの固定部分を境界線として区分される2つの面領域を意味する。
【0023】
この第5発明によれば、前記光ファイバの固定部分の全体、又は該固定部分の両端部を除く全体の湾曲方向が一様になるため、シート部材の伸縮に応じて前記湾曲部の湾曲度合を適切に変化させることを、前記固定部分の滑らかで簡素な配設パターンで実現できる。
【0024】
この第5発明では、前記光ファイバの固定部分の全体、又は該固定部分の両端部を除く全体は、例えば、ループ型の曲線形状又は凸型の曲線形状のパターンで湾曲されているという態様を採用できる(第6発明)。
【0025】
なお、前記ループ型の曲線形状として、例えば円形状、楕円形状等を採用でき、前記凸型の曲線形状としては、例えば半円形状、半楕円形状、放物線形状、正弦波の半周期分の形状等を採用できる。
【0026】
上記第6発明によれば、シート部材の伸縮に応じて前記湾曲部の湾曲度合を適切に変化させ得る前記固定部分の配設パターンを容易に実現できる。
【0027】
上記第5発明又は第6発明では、前記湾曲部は、前記光ファイバの固定部分の長手方向の中央部分に設けられており、前記光ファイバの固定部分の全体、又は該固定部分の両端部を除く全体は、前記湾曲部から該固定部分の一端側の部分と、前記湾曲部から該固定部分の他端側の部分とが対称形状となるように湾曲されていることが好ましい(第7発明)。
【0028】
これによれば、湾曲部の中央部の接線方向(もしくはこれに近い方向)でのシート部材の伸縮に対する、該湾曲部の湾曲度合の変化の感度を好適に高めることができる。なお、第7発明を第2発明又は第3発明と組み合わせる場合、上記接線方向は、前記第1方向又は第2方向と一致(もしくはほぼ一致)することが好ましい。また、第7発明を第4発明と組み合わせる場合、上記接線方向は、前記一方向と一致(もしくはほぼ一致)することが好ましい。
【0029】
上記第1〜第7発明では、前記光ファイバは、その湾曲部が、該湾曲部の両側に連なる光ファイバのコアよりも小径のコアを有するヘテロコア部となっており、該湾曲部の湾曲度合の変化に応じて光の伝送損失が変化するように構成された光ファイバであることが好ましい(第8発明)。
【0030】
ここで、上記ヘテロコア部を有する光ファイバは、該ヘテロコア部の湾曲度合の変化に対して感度よく、光の伝送損失が変化する。従って、該ヘテロコア部を湾曲部とする第7発明にあっては、前記光ファイバの光の伝送損失の計測を行うことで、前記湾曲部の湾曲度合の変化、ひいては、測定対象面の伸縮を良好に行うことができる。
【0031】
上記第1〜第8発明では、前記測定対象面として、人の皮膚表面のうち、該人のあらかじめ定められた対象関節の動きに応じて面沿い方向の伸縮を生じる部分を採用し得る(第9発明)。
【0032】
この第9発明によれば、本発明の光ファイバ式センサ装置により、人の皮膚表面の伸縮を検知することを通じて、間接的に前記対象関節の動き(屈曲、伸展等)を検知できる。この場合、前記シート部材を、前記対象関節に装着せずに、該対象関節の動きを検知できるので、対象関節の自然な動きを検知できる。
【0033】
また、本発明のセンサ装置は、人のあらかじめ定められた対象関節の動きを検知するセンサ装置であって、前記人の皮膚表面のうち、前記対象関節の動きに応じて面沿い方向の伸縮を生じる部分に、該部分における皮膚表面の伸縮に伴い伸縮するように装着される伸縮自在なシート部材を有し、該シート部材の面沿い方向の伸縮に応じた信号を生成可能に構成されていることを特徴とする(第10発明)。
【0034】
この第10発明によれば、前記第9発明と同様に、前記シート部材を前記対象関節に装着することを必要とせずに、人の皮膚表面の伸縮を検知することを通じて、間接的に前記対象関節の自然な動き(屈曲、伸展等)を検知できる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を
図1〜
図6を参照して以下に説明する。
【0037】
図1及び
図2を参照して、本実施形態の光ファイバ式センサ装置1は、シート部材2と、光ファイバ3とを備える。
【0038】
シート部材2は、その面沿い方向に弾性的に伸縮自在な薄いシート部材である。このシート部材2は、一例として、例えばポリウレタンフィルムにより構成される。本実施形態では、シート部材2は、2枚のポリウレタンフィルム2a,2b(
図2参照)を重ね合わせて、2層構造に形成されている。この場合、ポリウレタンフィルム2a,2b同士は、適宜の粘着剤等を介して相互に固着される。
【0039】
このようにポリウレタンフィルム2a,2bにより構成されるシート部材2は、高い伸縮性と柔軟性とを有する。このため、人の皮膚表面等の任意の測定対象面に、適宜の粘着剤等を介して密着させるように貼着することを容易に行うことが可能である。
【0040】
また、その貼着状態では、測定対象面の面沿い方向の伸縮に伴い、シート部材2が高い追従性で伸縮することが可能である。また、特に、シート部材2を人の皮膚表面に貼着する場合には、人に拘束感等の違和感をほとんど及さないようにして、該皮膚表面にシート部材2を貼着することができる。
【0041】
なお、シート部材2は、2層構造のものに限らず、単層、あるいは、3層以上に構成されていてもよい。また、シート部材2は、ポリウレタン以外の材質、例えばシリコーンゴム等により構成されていてもよい。あるいは、シート部材2は、伸縮自在な布により構成されていてもよい。
【0042】
光ファイバ3は、本実施形態では、
図3に示すように、その全長のうちの途中部に所定長(例えば数mm)のヘテロコア部3aを有する光ファイバである。該ヘテロコア部3aは、その軸心方向の両側に連なる光伝送路を構成する光ファイバ3b,3b(以降、光ファイバ3bを伝送路光ファイバ3bという)のそれぞれのコア3b1よりも、小さい径のコア3a1を有する部分である。
【0043】
なお、ヘテロコア部3aのコア3a1の周囲と、各伝送路光ファイバ3bのコア3b1の周囲とには、通常の光ファイバと同様に、それぞれ一定外径のクラッド3a2、3b2が各々形成されている。また、ヘテロコア部3aを構成する光ファイバ、及び各伝送路光ファイバ3bは、シングルモード光ファイバ及びマルチモード光ファイバのいずれであってもよい。
【0044】
上記の如くヘテロコア部3aを有する光ファイバ3(以降、ヘテロコア光ファイバ3という)は、例えば、ヘテロコア部3aを構成する光ファイバの軸心方向の両端面に、該光ファイバよりもコア径が大きい伝送路光ファイバ3b,3bを融着等により同軸心に接合することで作製することができる。
【0045】
かかるヘテロコア光ファイバ3にあっては、伝送路光ファイバ3b,3bの一方側から光を入射したとき、当該一方側の伝送路光ファイバ3bからヘテロコア部3aに進入する光の一部が、ヘテロコア部3aのコア3a1を通って他方側の伝送路光ファイバ3bに伝送されずに、該ヘテロコア部3aの外部に漏洩する。この場合の光の漏洩量は、ヘテロコア部3aでのヘテロコア光ファイバ3の湾曲度合と高い相関性を有し、該湾曲度合が高いほど、光の漏洩量が多くなる。
【0046】
従って、ヘテロコア光ファイバ3における光の伝送損失を計測した場合、該伝送損失は、ヘテロコア部3aでのヘテロコア光ファイバ3の湾曲度合が高いほど、大きくなる。
【0047】
補足すると、
図3では、ヘテロコア部3aのコア径が一定である場合を例示しているが、ヘテロコア部3aのコア径が、該ヘテロコア部3aの軸心方向で変化するように、コア部3a1が形成されていてもよい。例えば、ヘテロコア部3aのコア径が、ヘテロコア部3aの軸心方向の両端から中央側に向かって徐々に縮径していくようにコア3a1が形成されていてもよい。
【0048】
図1及び
図2に戻って、本実施形態の光ファイバ式センサ装置1では、ヘテロコア光ファイバ3のうちの、ヘテロコア部3aを含む一定長の部分がシート部材2への固定部分3xとされる。そして、該固定部分3xは、ヘテロコア部3aを湾曲させた状態で、シート部材2の周縁の内側にてシート部材2の面沿いに配設されて、該シート部材2に固定される。なお、
図1及び
図2では、図示の便宜上、ヘテロコア光ファイバ3のヘテロコア部3aを細線で示し、伝送路光ファイバ3bを太線で示している。
【0049】
この場合、ヘテロコア部3aは、本発明における湾曲部に相当する部分である。そして、ヘテロコア部3aを含む固定部分3xは、シート部材2の面沿い方向の伸縮に応じて、湾曲部たるヘテロコア部3aの湾曲度合を変化させ得る形状パターンでシート部材2の面沿いに配設されて、該シート部材2に固定される。
【0050】
具体的には、本実施形態では、ヘテロコア光ファイバ3の固定部分3xは、その長手方向の中央部にヘテロコア部3aを有し、該ヘテロコア部3aよりも長い一定長部分である。そして、該固定部分3xは、その両端部を除く全体(ヘテロコア部3aを含む)をループ状の曲線形状のパターンで湾曲させた状態でシート部材2に固定される。このループ状の曲線形状のパターンは、本実施形態では、例えば、一定もしくはほぼ一定の曲率半径を有する円形状パターンである。
【0051】
このように円形状パターンで湾曲された固定部分3xは、
図2に示すように、シート部材2を構成する2枚のポリウレタンフィルム2a,2bの間に配置される。そして、この状態で、ポリウレタンフィルム2a,2bを重ね合わせて相互に固着することで、固定部分3xがシート部材2に固定される。
【0052】
これにより、本実施形態の光ファイバ式センサ装置1が
図1に示すように構成されている。この場合、固定部分3xの両端部を除く全体(円形状の部分)は、その各部の曲率中心(曲率半径の円の中心点)が、該固定部分3xの光ファイバ3の両側のうちの片側(円形状のループの内側及び外側のうちの内側)にだけ存在するように、曲線状に湾曲されていることとなる。
【0053】
また、上記の如く円形状のパターンで湾曲された固定部分3xの中央部にヘテロコア部3aが設けられているので、該円形状の固定部分3xのうち、ヘテロコア部3aから固定部分3xの一端側の部分と、ヘテロコア部3aから固定部分3xの他端側の部分とは、対称な形状(詳しくは、ヘテロコア部3aの中央部を該ヘテロコア部3aの軸心方向と直交する方向(
図1のY軸方向)に横断する直線に対して線対称となる形状)で湾曲されていることととなる。
【0054】
また、本実施形態の光ファイバ式センサ装置1においては、ヘテロコア光ファイバ3の固定部分3xは、該固定部分3xの全体(もしくは両端部を除く全体)が、直線状に延在する部分を持たない配設パターンでシート部材2に固定されている。
【0055】
なお、
図1では、図示の便宜上、シート部材2を構成する2枚のポリウレタンフィルム2a,2bを透明なものとみなして、ヘテロコア光ファイバ3の固定部分3xを実線で図示している。
【0056】
また、
図1において、X軸は、ヘテロコア部3aの中央部の接線方向を示す座標軸、Y軸は、X軸に直交する方向の座標軸を示している。これらのX軸、Y軸の方向は、その一方が、本発明における第1方向(又は一方向)に相当し、また、他方が、本発明における第2方向に相当する。
【0057】
また、φは、固定部分3xの円形状パターンの直径を示している。
【0058】
補足すると、
図1及び
図2に示した例では、ヘテロコア光ファイバ3の固定部分3xの両端部を交差させるようにして配設している。ただし、例えば、該固定部分3xの両端部を交差させずに、該両端部の間に若干の間隔を形成するように固定部分3xを配設してもよい。
【0059】
また、固定部分3xの両端部を含めた全体が、該固定部分3xの光ファイバ3の両側のうちの片側にだけ曲率中心が存在するように曲線状に湾曲されていてもよい。
【0060】
また、ヘテロコア光ファイバ3の固定部分3xをシート部材2に固定する形態は、上記の形態に限られない。例えば、固定部分3xをシート部材2の表面に適宜の接着剤又は粘着剤により固定するようにしてもよい。
【0061】
上記の如く構成された光ファイバ式センサ装置1においては、ヘテロコア光ファイバ3の固定部分3xが、円形状のパターンでシート部材2に固定されているので、シート部材2の面沿い方向の伸縮に応じて、固定部分3xに含まれる湾曲部としてのヘテロコア部3aの湾曲度合が変化することとなる。
【0062】
例えば、
図4に白抜き矢印で示すように、X軸方向(ヘテロコア部3aの中央部の接線方向)にシート部材2を引っ張って伸長させた場合、固定部分3xの形状パターンが、円形状からX軸方向に長い楕円形状(もしくはそれに近い形状)に変化する。このため、ヘテロコア部3aの湾曲度合が減少する(平均的な曲率が小さくなる)こととなる。
【0063】
また、例えば、
図5に白抜き矢印で示すように、Y軸方向(ヘテロコア部3aの中央部の接線方向と直交する方向)にシート部材2を引っ張って伸長させた場合、固定部分3xの形状が、円形状からY軸方向に長い楕円形状(もしくはそれに近い形状)に変化する。このため、ヘテロコア部3aの湾曲度合が増加する(平均的な曲率が大きくなる)こととなる。
【0064】
従って、面沿い方向に伸縮する任意の測定対象面にシート部材2を貼着した場合、該測定対象面の伸縮に伴うシート部材2の伸縮に応じて、ヘテロコア部3aの湾曲度合が変化することとなる。さらに、X軸方向(もしくはこれに近い方向)でのシート部材2の伸縮の場合と、Y軸方向(もしくはこれに近い方向)でのシート部材2の伸縮の場合とで、シート部材2の伸長量の増加に対するヘテロコア部3aの湾曲度合の変化の方向(湾曲度合の増加又は減少)が互いに異なるものとなる。
【0065】
また、本実施形態の光ファイバ式センサ装置1においては、前記した如く、ヘテロコア光ファイバ3の固定部分3xの全体が直線状に延在する部分を持たない配設パターンでシート部材2に固定されている。
【0066】
このため、X軸方向及びY軸方向のいずれの方向についても、シート部材2の面沿い方向の伸縮が、伸縮性が極めて低い(伸縮に対する剛性が高い)ヘテロコア光ファイバ3によって阻害され難いものなっている。ひいては、面沿い方向に伸縮する任意の測定対象面にシート部材2を貼着した場合、該測定対象面の伸縮に伴うシート部材2の伸縮を、高い追従性で円滑に行うことができる。
【0067】
また、ヘテロコア光ファイバ3の固定部分3xの形状パターンが円形状のパターンであるので、該固定部分3xの両端部がシート部材2の周縁部にて近接する。このため、該固定部分3xの両端部からシート部材2の外方に延在することとなる2つの伝送路光ファイバ3b,3bを寄り添わせて配設することを容易に行うことが可能となり、当該2つの伝送路光ファイバ3b,3bの取り回しが容易になる。
【0068】
次に、かかる光ファイバ式センサ装置1を用いて、任意の測定対象面の伸縮を検知する場合の測定手法を
図1を参照して説明する。
【0069】
シート部材2が、測定対象面(図示省略)の伸縮に伴い伸縮するように該測定対象面に装着される。この場合、シート部材2の測定対象面への装着は、例えば、シート部材2を適宜の粘着剤又は接着剤等を介して測定対象面に貼着することで行われる。そして、例えば、
図1に示す如き測定システム10を用いて測定対象面の伸縮を検知する測定が行われる。
【0070】
この測定システム10は、ヘテロコア光ファイバ3に入射する光を出力する光源11と、ヘテロコア光ファイバ3から出射する光を受光する光検出器12と、光検出器12の出力を図示しないAD変換器を介して取り込むデータ処理装置13とを備える。
【0071】
光源11は、例えば発光ダイオード(LED)、レーザダイオード(LD)等により構成され、ヘテロコア光ファイバ3の伝送路光ファイバ3b,3bのうちの一方側の端部に接続される。
【0072】
光検出器12は、例えばフォトダイオード(PD)等により構成され、ヘテロコア光ファイバ3の伝送路光ファイバ3b,3bのうちの他方側の端部に接続される。
【0073】
データ処理装置13は、例えばパーソナルコンピュータ等のコンピュータ、あるいは、CPU等を含む電子回路ユニットにより構成される。
【0074】
かかる構成の測定システム10の光源11からヘテロコア光ファイバ3に光が入射され、該ヘテロコア光ファイバ3からの出射光が光検出器12により検出される。
【0075】
そして、データ処理装置13により、光検出器12の出力により示される出射光の強度が計測され、該出射光の強度の計測値と、入射光の既定の強度との比率等を指標値として、ヘテロコア光ファイバ3における光の伝送損失(以降、単に光損失という)が計測される。なお、ヘテロコア光ファイバ3の光損失は、入射光の強度に対する出射光の強度の比率が小さいほど、大きなものなる。
【0076】
ここで、測定対象面の伸縮に伴うシート部材2の伸縮に応じて、ヘテロコア光ファイバ3の固定部分3xの形状パターンが変化し、ひいては、該固定部分3xに含まれるヘテロコア部3aの湾曲度合が前記したように変化する。そして、ヘテロコア部3aの湾曲度合の変化に応じて、ヘテロコア部3aでの光の漏洩量が変化する。このため、ヘテロコア光ファイバ3の光損失の計測値に基づいて、測定対象面の伸縮を検知できることとなる。
【0077】
例えば、測定対象面がX軸方向(もしくはこれに近い方向)に伸長することに伴い、シート部材2がX軸方向(もしくはこれに近い方向)に伸長した場合には、ヘテロコア部3aの湾曲度合が減少するため、ヘテロコア光ファイバ3の光損失の計測値が減少する。
【0078】
さらに、測定対象面がX軸方向(もしくはこれに近い方向)への伸長状態から短縮することに伴い、シート部材2がX軸方向(もしくはこれに近い方向)に短縮した場合には、ヘテロコア部3aの湾曲度合が増加するため、ヘテロコア光ファイバ3の光損失の計測値が増加する。
【0079】
また、例えば、測定対象面がY軸方向(もしくはこれに近い方向)に伸長することに伴い、シート部材2がY軸方向(もしくはこれに近い方向)に伸長した場合には、ヘテロコア部3aの湾曲度合が増加するため、ヘテロコア光ファイバ3の光損失の計測値が増加する。
【0080】
さらに、測定対象面がY軸方向(もしくはこれに近い方向)への伸長状態から短縮することの伴い、シート部材2がY軸方向(もしくはこれに近い方向)に短縮した場合には、ヘテロコア部3aの湾曲度合が減少するため、ヘテロコア光ファイバ3の光損失の計測値が減少する。
【0081】
従って、ヘテロコア光ファイバ3の光損失の計測値に基づいて、測定対象面の伸縮、あるいは、伸縮度合を検知できることとなる。また、シート部材2がX軸方向に伸長する場合と、シート部材2がY軸方向に伸長する場合とで、ヘテロコア光ファイバ3の光損失の変化の方向(光損失の増加又は減少)が互いに異なるものとなるため、該光損失の計測値に基づいて、測定対象面の伸縮を、X軸方向の伸縮とY軸方向の伸縮とに区別して検知することも可能である。
【0082】
次に、本実施形態の光ファイバ式センサ装置1の実施例の動作特性の検証試験について
図6を参照して説明する。
【0083】
実施例の光ファイバ式センサ装置1を作製し、該光ファイバ式センサ装置1のシート部材2の伸長量と、ヘテロコア光ファイバ3の光損失との関係を計測した。作製した実施例の光ファイバ式センサ装置1の仕様は次の通りである。
【0084】
すなわち、コア径9μmのシングルモード光ファイバと、コア径5μmのシングルモード光ファイバとを、それぞれ、伝送路光ファイバ3b、ヘテロコア部3aの光ファイバとして用いて、
図3に示した構造のヘテロコア光ファイバ3を作製した。この場合、ヘテロコア部3aの長さは例えば2mm、ヘテロコア部3a及び伝送路光ファイバ3bのそれぞれのクラッド3a2,3b2の外径は、例えば125μmである。
【0085】
また、厚さ0.025mmのポリウレタンフィルム2a,2bを用いて、50×50mmのサイズの方形状のシート部材2を作製した。この場合、ポリウレタンフィルム2a,2bの間に、ヘテロコア光ファイバ3の固定部分3xを
図1に示した円形状のパターンで配設した。該固定部分3xの円形状部分の直径φは、例えば30mmである。
【0086】
かかる実施例の光ファイバ式センサ装置1に対し、前記X軸方向及びY軸方向のそれぞれ毎に、シート部材2を引っ張って伸長させ、該シート部材2の複数の変位量(当初状態からの伸長量)において、ヘテロコア光ファイバ3の光損失を前記測定システム10を用いて計測した。
【0087】
この場合、X軸方向におけるシート部材2の両端部をそれぞれ図示しない固定台及び可動台に固定し、可動台を固定台に対してX軸方向に移動させることで、シート部材2を引っ張って伸長させることを行った。Y軸方向についても同様である。
【0088】
図6はかかる検証試験による測定データを示している。なお、
図6の横軸の変位量は、シート部材2の当初状態(ヘテロコア光ファイバ3の固定部分3xが円形状になっている状態)からの伸長量を表し、縦軸の相対光損失は、シート部材2の当初状態でのヘテロコア光ファイバ3の光損失を基準とする相対的な光損失をデシベル単位で表したものである。
【0089】
この場合、相対光損失の値が負の値である場合、その絶対値が大きいほど、ヘテロコア光ファイバ3の光損失が相対的に減少することとなり、光損失の値が正の値である場合、その絶対値が大きいほど、ヘテロコア光ファイバ3の光損失が相対的に増加することとなる。
【0090】
図6に示すように、シート部材2をX軸方向に伸長させた場合には、その伸長量が大きいほど、ヘテロコア部3aの湾曲度合が小さくなるために、ヘテロコア光ファイバ3の相対光損失が単調に減少することが判る。
【0091】
また、シート部材2をY軸方向に伸長させた場合には、その伸長量が大きいほど、ヘテロコア部3aの湾曲度合が大きくなるために、ヘテロコア光ファイバ3の相対光損失が単調に増加することが判る。
【0092】
このように、第1実施形態の光ファイバ式センサ装置1によれば、シート部材2をX軸方向に伸長させた場合と、Y軸方向に伸長させた場合とのいずれの場合でも、ヘテロコア光ファイバ3の光損失が、シート部材2の伸長量の増加に伴い、単調に変化(減少又は増加)する。
【0093】
さらに、シート部材2をX軸方向に伸長させた場合と、Y軸方向に伸長させた場合とで、シート部材2の伸長量の増加に対する、ヘテロコア光ファイバ3の光損失の変化の方向(光損失の減少又は増加)が互いに異なるものとなる。
【0094】
なお、
図6に示す測定データでは、シート部材2をY軸方向に伸長させた場合には、シート部材2をX軸方向に伸長させた場合よりも、シート部材2の伸長量の変化に対する光損失の変化の感度が小さいものとなっている。その理由は、シート部材2に作用する引っ張り力の偏り等に起因して、シート部材2のY軸方向への伸長時に、ヘテロコア部3aに曲げ応力が作用し難かったためと考えられる。
【0095】
補足すると、第1実施形態では、ヘテロコア光ファイバ3の固定部分3xのループ状の曲線形状として、円形状のパターンを採用したが、該ループ状の曲線形状は、円形状以外の形状パターンでもよい。例えば、該ループ状の曲線形状は、楕円形状のパターン、あるいは、円形状もしくは楕円形状に近似するパターンであってもよい。
【0096】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を
図7及び
図8を参照して以下に説明する。なお、本実施形態は、ヘテロコア光ファイバ3の固定部分3xの配設パターンだけが、第1実施形態と相違するものである。このため、第1実施形態と同一の事項については説明を省略する。
【0097】
図7を参照して、本実施形態の光ファイバ式センサ装置21では、ヘテロコア光ファイバ3の固定部分3xは、その全体(ヘテロコア部3aを含む)が、凸状の曲線形状のパターンで湾曲された状態でシート部材2に固定されている。より具体的には、当該凸状の曲線形状のパターンは、本実施形態では、例えば、一定もしくはほぼ一定の曲率半径を有する半円形状のパターンである。
【0098】
このように半円形状のパターンで湾曲された固定部分3xの全体は、その各部(固定部分3xの中央部のヘテロコア部3aを含む)の曲率中心が、該固定部分3xの光ファイバ3の両側のうちの片側(半円形状の内側及び外側のうちの内側)にだけ存在するように、固定部分3xの全体が湾曲されていることとなる。
【0099】
また、上記の如く半円形状のパターンで湾曲された固定部分3xの中央部にヘテロコア部3aが設けられているので、該半円形状の固定部分3xのうち、ヘテロコア部3aから固定部分3xの一端側の部分と、ヘテロコア部3aから固定部分3xの他端側の部分とは、対称な形状(詳しくは、ヘテロコア部3aの中央部をY軸方向に横断する直線に対して線対称となる形状)で湾曲されていることととなる。
【0100】
また、固定部分3xは、直線状に延在する部分を持たないものとなっている。
【0101】
本実施形態の光ファイバ式センサ装置21は、上記以外の構成は、第1実施形態のものと同じである。
【0102】
上記の如く構成された光ファイバ式センサ装置21においては、ヘテロコア光ファイバ3の固定部分3xが、半円形状のパターンでシート部材2に固定されているので、第1実施形態のものと同様に、シート部材2の面沿い方向の伸縮に応じて、固定部分3xに含まれる湾曲部としてのヘテロコア部3aの湾曲度合が変化することとなる。
【0103】
すなわち、
図7のX軸方向(ヘテロコア部3aの中央部の接線方向)もしくはこれに近い方向にシート部材2を引っ張って伸長させた場合、ヘテロコア部3aの湾曲度合が減少する(平均的な曲率が小さくなる)。
【0104】
また、
図7のY軸方向(ヘテロコア部3aの中央部の接線方向と直交する方向)もしくはこれに近い方向にシート部材2を引っ張って伸長させた場合、ヘテロコア部3aの湾曲度合が増加する(平均的な曲率が大きくなる)。
【0105】
従って、第1実施形態と同様に、面沿い方向に伸縮する任意の測定対象面にシート部材2を貼着した場合、該測定対象面の伸縮に伴うシート部材2の伸縮に応じて、ヘテロコア部3aの湾曲度合が変化することとなる。さらに、X軸方向(もしくはこれに近い方向)でのシート部材2の伸縮の場合と、Y軸方向(もしくはこれに近い方向)でのシート部材2の伸縮の場合とで、シート部材2の伸長量の増加に対するヘテロコア部3aの湾曲度合の変化の方向(湾曲度合がの増加又は減少)が互いに異なるものとなる。
【0106】
また、本実施形態の光ファイバ式センサ装置21においては、ヘテロコア光ファイバ3の固定部分3xの全体が直線的に延在する部分を持たないので、シート部材2の伸縮が、伸縮性が極めて低い(伸縮に対する剛性が高い)ヘテロコア光ファイバ3によって阻害され難いものとなっている。ひいては、面沿い方向に伸縮する任意の測定対象面にシート部材2を貼着した場合、第1実施形態のものと同様に、該測定対象面の伸縮に伴うシート部材2の伸縮を、高い追従性で円滑に行うことができる。
【0107】
かかる光ファイバ式センサ装置21を用いて測定対象面の伸縮を検知する測定は、第1実施形態と同じ測定手法で行うことができる。すなわち、シート部材2を測定対象面に装着した状態でのヘテロコア光ファイバ3の光損失の計測値から、第1実施形態と同様に、測定対象面の伸縮を検知することができる。
【0108】
次に、本実施形態の光ファイバ式センサ装置21の実施例の動作特性の検証試験について
図8を参照して説明する。
【0109】
実施例の光ファイバ式センサ装置21を作製し、該光ファイバ式センサ装置21のシート部材2の伸長量と、ヘテロコア光ファイバ3の光損失との関係を計測した。作製した実施例の光ファイバ式センサ装置21のヘテロコア光ファイバ3の固定部分3xの半円形状の直径φは、例えば30mm、シート部材2は、例えば50×20mmのサイズの方形状のものである。光ファイバ式センサ装置21のシート部材2及びヘテロコア光ファイバ3のその他の仕様は、第1実施形態に係る実施例と同じである。
【0110】
かかる実施例の光ファイバ式センサ装置21に対し、シート部材2をX軸方向及びY軸方向のうちの例えばX軸方向に引っ張って伸長させることと、伸長状態から短縮させることとを実行し、該伸長時と短縮時とのそれぞれにおいて、該シート部材2の複数の引っ張り変位量(当初状態からの伸長量)において、ヘテロコア光ファイバ3の光損失を前記測定システム10を用いて計測した。この場合、シート部材2の引っ張りは、第1実施形態に係る検証試験と同じ治具を使用して行われる。
【0111】
図8はかかる検証試験による測定データを示している。なお、
図8の横軸の変位量は、シート部材2の当初状態(ヘテロコア光ファイバ3の固定部分3xが半円形状になっている状態)からのX軸方向の伸長量を表し、縦軸の光損失は、ヘテロコア光ファイバ3の入射光の強度に対する出射光の強度の比率として表される伝送損失をデシベル単位で表したものである。
【0112】
図8に示すように、光ファイバ式センサ装置21のシート部材2をX軸方向に伸長させた場合には、その伸長量が大きいほど、ヘテロコア部3aの湾曲度合が小さくなるために、ヘテロコア光ファイバ3の光損失が感度よく単調に減少することが判る。
【0113】
また、シート部材2をX軸方向に伸長させた場合と短縮させた場合とでは、ヘテロコア光ファイバ3の光損失の変化がヒステリシス特性を有することが確認された。
図8に示す測定データでは、シート部材2をX軸方向に伸長させた場合と、短縮させた場合とでは、シート部材2の伸長量が同一であっても、ヘテロコア光ファイバ3の光の伝送損失(光損失)が若干相違するものとなっている。
【0114】
なお、本実施形態の光ファイバ式センサ装置21のシート部材2をY軸方向に伸長させた場合、第1実施形態のものと同様に、シート部材2の伸長量の増加に伴い、ヘテロコア部3aの湾曲度合が増加して、ヘテロコア光ファイバ3の光損失が増加することとなる。
【0115】
補足すると、第2実施形態では、ヘテロコア光ファイバ3の固定部分3xの凸状の曲線形状として、半円形状のパターンを採用したが、該凸状の曲線形状は、半円形状以外の曲線形状であってもよい。例えば、該凸状の曲線形状は、半楕円形状、放物線形状、三角波の半周期分の形状のパターン、あるいは、これらの形状に近似するパターンであってもよい。
【0116】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態を
図9を参照して説明する。なお、本実施形態は、シート部材2の形状だけが、第1実施形態と相違するものである。このため、第1実施形態と同一の事項については説明を省略する。
【0117】
本実施形態の光ファイバ式センサ装置31では、シート部材2は、ヘテロコア光ファイバ3の固定部分3xに沿って、ほぼ一定幅で湾曲した形状に形成されている。例えば、本実施形態では、ヘテロコア光ファイバ3の固定部分3xの形状パターンは、円形状のパターンであるので、シート部材2も、円形状に湾曲された形状を有する。そして、ヘテロコア光ファイバ3の固定部分3xは、円形状に湾曲されたシート部材2の幅方向の中央を通るように配設されている。
【0118】
本実施形態の光ファイバ式センサ装置31は、上記以外の構成は、第1実施形態のものと同じである。
【0119】
かかる本実施形態の光ファイバ式センサ装置31では、任意の測定対象面の伸縮の検知を第1実施形態と同様に行うことができる。
【0120】
また、シート部材2の面積が第1実施形態のものに比して小さくなるので、シート部材2の材料費を低減できると共に、より軽量化を図ることができる。
【0121】
なお、本実施形態では、ヘテロコア光ファイバ3の固定部分3xの形状パターンは、円形状のパターンである場合について説明したが、該固定部分3xの形状パターンは、円形状以外のループ状の曲線形状であってもよく、あるいは、第2実施形態の如き凸状の曲線形状であってもよい。この場合、シート部材2の形状は、固定部分3xの形状パターンに合わせて設定すればよい。
【0122】
[第4実施形態]
次に、前記した実施形態の光ファイバ式センサ装置1,21,31のうち、例えば第2実施形態の光ファイバ式センサ装置21を用いて、人の関節の動きを検知する場合の一測定例を第4実施形態として説明する。
【0123】
本実施形態の測定例は、例えば、人の手首関節の屈曲動作としての掌屈動作及び尺屈動作のそれぞれを光ファイバ式センサ装置21を用いて検知する測定例である。ここで、掌屈動作は、
図10Aに示す形態で手首関節を屈曲させる動作、尺屈動作は、
図10Bに示す形態で手首関節を屈曲させる動作である。なお、以降の説明では、手首関節の掌屈動作を検知するための光ファイバ式センサ装置21を参照符号21aで表し、尺屈動作を検知するための光ファイバ式センサ装置21を参照符号21bで表す。
【0124】
ここで、本願発明者の各種実験、検討によれば、手首関節の掌屈動作を行った場合、該手首関節に連なる前腕部の先端側の皮膚表面のうち、手の甲と同じ側の面部Sa(
図11Aを参照。以降、手甲側面部Saという)の皮膚が、前腕部の長手方向で伸長する。
【0125】
そこで、本実施形態では、前腕部の先端側の皮膚表面のうちの上記手甲側面部Saを、手首関節の掌屈動作を検知するための測定対象面として、該手甲側面部Saに、
図11Aに示す如く、光ファイバ式センサ装置21aのシート部材2を装着した。
【0126】
この場合、シート部材2は、X軸方向(ヘテロコア部3aの中央部の接線方向)を前腕部の長手方向に向けるようにして、手甲側面部Saに装着される。
【0127】
また、本願発明者の各種実験、検討によれば、手首関節の尺屈動作を行った場合、該手首関節に連なる前腕部の先端側の皮膚表面のうち、手の親指と同じ側の面部Sb(
図11Bを参照。以降、親指側面部Sbという)の皮膚が、前腕部の長手方向で伸長する。
【0128】
そこで、本実施形態では、前腕部の先端側の皮膚表面のうちの上記親指側面部Sbを、手首関節の尺屈動作を検知するための測定対象面として、該親指側面部Sbに、
図11Bに示す如く、光ファイバ式センサ装置21bのシート部材2を装着した。
【0129】
この場合、シート部材2は、X軸方向(ヘテロコア部3aの中央部の接線方向)を前腕部の長手方向に向けるようにして、親指側面部Sbに装着される。
【0130】
なお、光ファイバ式センサ装置21a,21bのそれぞれのシート部材2の手甲側面部Sa及び親指側面部Sbへの装着は、例えば、適宜の粘着剤、あるいはテープ等を介して行うことができる。
【0131】
本実施形態の測定例では、手首関節の掌屈動作及び尺屈動作のそれぞれについて、手首関節の屈曲動作(掌屈動作又は尺屈動作)、待機(屈曲状態での待機)、及び伸展動作という一連の動作を数回繰り返した。そして、これと並行して、光ファイバ式センサ装置21a,21bのそれぞれの光ファイバ3における光損失の経時変化を計測した。
【0132】
なお、この場合、手首関節の屈曲動作(掌屈動作又は尺屈動作)、待機(屈曲状態での待機)、及び伸展動作のそれぞれの所要時間は、5秒程度の時間とした。
【0133】
図12Aは手首関節の掌屈動作に係る測定結果を示すグラフ、
図12Bは手首関節の尺屈動作に係る測定結果を示すグラフである。なお、
図12A及び
図12Bの縦軸の相対光損失は、シート部材2の当初状態(手首関節の伸展状態での測定対象面への装着状態)でのヘテロコア光ファイバ3の光損失を基準とする相対的な光損失をデシベル単位で表したものである。
【0134】
図12Aのグラフに見られるように、手首関節の掌屈動作により、光ファイバ式センサ装置21aのシート部材2がX軸方向又はこれに近い方向に伸長する(ひいては、ヘテロコア部3aの湾曲度合が減少する)ことで、ヘテロコア光ファイバ3の光損失が減少することが確認された。
【0135】
さらに、待機動作の後の手首関節の伸展動作により、光ファイバ式センサ装置21aのシート部材2が当初の短縮状態に復元する(ひいては、ヘテロコア部3aの湾曲度合が増加する)ことで、ヘテロコア光ファイバ3の光損失が増加することが確認された。
【0136】
同様に、
図12Bのグラフに見られるように、手首関節の尺屈動作により、光ファイバ式センサ装置21bのシート部材2がX軸方向又はこれに近い方向に伸長する(ひいては、ヘテロコア部3aの湾曲度合が減少する)ことで、ヘテロコア光ファイバ3の光損失が減少することが確認された。
【0137】
さらに、待機動作の後の手首関節の伸展動作により、シート部材2が当初の短縮状態に復元する(ひいては、ヘテロコア部3aの湾曲度合が増加する)ことで、ヘテロコア光ファイバ3の光損失が増加することが確認された。
【0138】
従って、手首関節の屈伸に応じて伸縮する前腕部の先端側の皮膚表面の伸縮を光ファイバ式センサ装置21により検知することで、間接的に手首関節の動きを検知することができることとなる。
【0139】
この場合、光ファイバ式センサ装置21は、手首関節に直接的に装着する必要が無いため、手首関節の動きを阻害することなく、該手首関節の自然な動きを検知できる。
【0140】
なお、本実施形態では、手首関節の動きを検知する場合の測定例を示したが、腕の他の関節(肘関節、肩関節)、指関節、脚の関節(足首関節、膝関節、股関節)等の関節についても、各関節の動きに連動する皮膚表面の伸縮の検知を通じて、該関節の動きを検知することも可能である。
【0141】
また、本実施形態では、光ファイバ式センサ装置として、第2実施形態のものを使用したが、第1実施形態のもの、あるいは、第3実施形態のものを使用してもよいことはもちろんである。
【0142】
[変形態様について]
次に、前記第1〜第4実施形態に関連する変形態様をいくつか説明する。
【0143】
前記第1〜第3実施形態に示した光ファイバ式センサ装置1,21,31は、X軸方向及びY軸方向のいずれの方向でも、シート部材2の伸縮に応じてヘテロコア部3aの湾曲度合が変化するように構成されている。ただし、例えば、測定対象面の伸縮が一方向で生じるような場合には、当該一方向と直交する方向でのシート部材2の伸縮に対して、ヘテロコア部3aの湾曲度合が変化し難いようにヘテロコア光ファイバ3の固定部分3xの形状パターンを設定してもよい。あるいは、例えば、当該一方向に直線状態に延在する部分を固定部分3xに含ませることで、シート部材2が当該一方向と直交する方向(もしくはこれに近い方向)に伸縮し難くなるようにしてもよい。
【0144】
なお、ヘテロコア光ファイバ3の固定部分3xの形状パターンを、ループ状の曲線形状、あるいは、凸状の曲線形状とする場合、上記一方向でのシート部材2の伸長量の変化に応じたヘテロコア部3aの湾曲度合の変化の感度(ひいては、ヘテロコア光ファイバ3の光損失の変化の感度)を高める上では、ヘテロコア部3aの中央部の接線方向(X軸方向)が、上記一方向と一致もしくはほぼ一致することが好ましい。
【0145】
また、前記第1〜第3実施形態に示した光ファイバ式センサ装置1,21,31は、いずれもヘテロコア部3aを有するヘテロコア光ファイバ3を用いて構成されている。ただし、本発明の光ファイバ式センサ装置は、シート部材に固定する固定部分に含まれる湾曲部の湾曲度合に応じて、比較的高い相関性で光の伝送特性が変化し得るものであれば、ヘテロコア光ファイバ3以外の光ファイバを使用することもできる。
【0146】
例えば、ヘテロコア光ファイバ3以外の光ファイバとして、長周期光ファイバグレーティングを使用することもできる。この場合、光ファイバの湾曲度合に応じて共鳴波長のシフトを生じるので、光ファイバにおける伝送光のスペクトルに基づいて、光ファイバの湾曲度合を検知し得る。
【0147】
また、前記第4実施形態のように、人の関節の動き検知することを、該関節の動きに応じて伸縮する皮膚表面の伸縮の検知を通じて行う場合には、該皮膚表面に装着するセンサ装置は、光ファイバ式センサ装置以外のセンサ装置であってもよい。