【解決手段】データを記憶する磁性膜を有し、円板状に形成されたプラッタ(10)と、プラッタ(10)を回転駆動するモータ(30)と、プラッタ(10)に対向し、磁性膜を加熱するヒータを有するアーム(22)と、アーム(22)に装着され、磁性膜に対してデータの読出しを行う磁気ヘッド(28)と、磁気ヘッド(28)が磁性膜に対するデータの読出しを行う第1のモード(通常モード)、または磁性膜に書込まれたデータを消去する第2のモード(全消去モード)のうち何れかの動作モードを指定する動作モード指定手段(56)と、動作モードが第2のモード(全消去モード)に指定されると、磁性膜の温度がそのキュリー温度以上になるようにヒータを発熱させるヒータ制御手段(55)と、を設けた。
前記動作モードとして前記第1のモードが指定されると、前記モータを所定の速度で回転させる機能と、前記動作モードとして前記第2のモードが指定されると、前記モータを前記所定の速度よりも遅い速度で回転させる機能とを有する回転制御手段
をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の磁気ディスク装置。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置を廃棄するにあたっては、情報の漏洩を防ぐため、ユーザは記録内容を消去することが多い。記録内容を消去する方法の一つとして、ディスクの各トラックに数回に渡りランダムデータを上書きする方法が知られている。以下、この方法を「ソフトウエア的消去方法」と呼ぶ。しかし、近年の磁気ディスク装置の大容量化により、ソフトウエア的消去方法は、長時間を要するという問題がある。
【0003】
記録内容を短時間で消去する方法としては、裁断等によって、磁気ディスク装置を物理的に破壊する方法が知られている。しかし、磁気ディスク装置の一般ユーザは、磁気ディスク装置の裁断装置等を所有していない。従って、この方法を採るということは、裁断装置等を所有している第三者(処分業者等)に磁気ディスク装置の処分を委ねることになり、情報漏洩の新たなリスクが生じる。以上のような事情により、裁断装置等を所有していない一般ユーザが、磁気ディスク装置に記録されたデータを速やかに消去できるようにする需要があり、様々な技術が提案されている。
【0004】
例えば、下記特許文献1には、(1)磁気ヘッドに過大な電流を流して磁気ヘッドを破壊する、(2)ディスクのサーボ領域に意味の無いデータを書き込む、および(3)ディスクの回転速度を低下させ磁気ヘッドとディスクとを摺動させて磁性膜を物理的に破壊する技術が開示されている。
また、下記特許文献2には、ディスクの磁性膜を破壊する破壊刃を磁気ディスク装置に装着する技術が開示されている。
【0005】
また、下記特許文献3には、磁気ヘッドが取り付けられているアームとディスク面との角度を変更し、磁気ヘッドをディスクに圧接させてディスクを回転させ、磁性膜を破壊する技術が開示されている。
また、下記特許文献4には、多数の硬質粒(粒径は望ましくは3μm以下)を収納した袋を磁気ディスク装置内に設け、袋を針で突いて硬質粒を磁気ディスク装置内に拡散させ、これによって磁性膜や磁気ヘッドを物理的に破壊する技術が開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<実施形態の構成>
まず、
図1に示す概略構成図を参照し、本発明の一実施形態による磁気ディスク装置Aの構成を説明する。なお、磁気ディスク装置Aは、例えばベアドライブである。
図1においてプラッタ(磁気ディスク)10は、円板状に形成されるとともに永久磁石型三相同期電動機であるモータ30の回転軸31に装着され、モータ30の回転に伴って回転する。プラッタ10は、後述する磁性膜14(
図2参照)を有し、磁性膜14には同心円状に複数のトラックが形成される。また、トラックは半径方向に分割され複数のセクタが形成される。プラッタ10は、これらセクタ単位でデータを記録するものである。また、
図1に示した例において、プラッタ10は、通常の読取り/書込み動作時には、反時計方向に回転する。
【0014】
プラッタ10に形成されるトラックのうち、最内周に位置する一または複数のトラックは、通常の方法ではユーザがアクセスできないトラックであり、これらのトラックが属する領域をサービスエリア10aと呼ぶ。また、サービスエリア10a以外の領域をユーザエリアと呼ぶ。サービスエリア10aには、磁気ディスク装置A自体のファームウエアや、不良セクタの代替情報等、磁気ディスク装置Aの各種パラメータが記録されている。磁気ディスク装置Aが起動されると、磁気ディスク装置Aは、サービスエリア10aに記録されたデータを取得した後に、その他の動作を実行する。従って、サービスエリア10aのデータが失われると、磁気ディスク装置Aが動作できなくなる。
【0015】
ヘッド・アセンブリ20は、ボイスコイル・モータ40によって駆動され、回転軸21を中心として回動する。ヘッド・アセンブリ20は、回転軸21に軸支された肉厚セラミック板であるアーム22を有している。アーム22は、略台形状に形成された本体部22aと、本体部22aから略台形状に突出した突出部22bとを一体に形成してなるものである。本体部22aの先端部分には、略台形状の薄板金属板であるサスペンション24が装着されている。
【0016】
サスペンション24の先端部分には、プラッタ10に対向するようにスライダ26が装着されており、スライダ26の先端部分には、読出し用の磁気ヘッド28が装着されている。また、書込み用の磁気ヘッド(不図示)もスライダ26に装着されている。ヘッド・アセンブリ20は、ボイスコイル・モータ40によって、最内周トラック位置P1から最外周トラック位置P2までの任意のトラック位置に位置決めすることができる。
【0017】
また、プラッタ10が停止する際には、ヘッド・アセンブリ20は、ボイスコイル・モータ40によって、退避位置P3に移動される。退避位置P3においては、スライダ26はプラッタ10には対向しない。これは、プラッタ10の停止時に、スライダ26とプラッタ10との接触を防止するためである。上述したように、アーム22はセラミック板であるが、セラミックヒータとしての機能も有している。より具体的には、アーム22を、窒化珪素ヒータ(SNヒータ)によって構成するとよい。
【0018】
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等、一般的なコンピュータとしてのハードウエアを備えており、ROMには、制御プログラムや各種データ等が格納されており、制御プログラムはCPUによって実行される。
図1では、制御プログラムによって実現される動作モードの機能を、ブロックとして示す。
【0019】
制御部50の内部において、動作モード指定手段56は、外部のホストコンピュータ等(図示せず)から供給されたコマンドに基づいて、磁気ディスク装置Aの動作モードとして、「通常モード(第1のモード)」または「全消去モード(第2のモード)」のうち何れか一方を指定する。ここで、通常モードとは、通常の書込み/読出しを行う動作モードである。また、全消去モードとは、磁気ディスク装置Aのユーザエリアのデータを全て消去する動作モードである。
【0020】
ところで、ユーザが誤操作によって全消去モードを選択してしまうような事態を防止するため、全消去モードは、誤操作によっては生じにくい特殊な操作が行われた場合にのみ選択できるようにしておくとよい。例えば、磁気ディスク装置Aの筐体(外付け型の場合は、磁気ディスク装置Aを収容した筐体でもよい)に、細い貫通孔を形成し、その貫通孔に針のような細い部材を挿入することによってのみ押下できるボタンや、通常よりも強い力で押下する事により割れる構造となっているクラッカープレートを押し割って押下するボタンなどによる「全消去ボタン」を設け、この全消去ボタンが押下されない限り、全消去モードを選択できないようにすることが考えられる。このような構成を採用すると、特に複数の磁気ディスク装置Aが一台のコンピュータに接続されている場合に、全消去すべき磁気ディスク装置Aを確実に特定して全消去を実行できる。また、動作モードの指定は、外部のホストコンピュータ等から供給されたコマンドに基づいて行うものに限られず、ディスク装置Aに設置された全消去ボタン(全消去操作部) によって動作モード指定手段56に対して全消去モードを選択し、実行できる構成であってもよい。この構成により外部のホストコンピュータ等が無くても、電源供給された状態であれば全消去モードをボタン操作で実行できる。そのため、多くの記憶装置の破壊を行う場合でも電源接続のみで全消去実行ができるのでホストコンピュータとの接続の手間がかからないという効果がある。
【0021】
回転制御手段52は、指定された動作モードに基づいて、ドライブ回路42に対して回転制御信号S1を出力する。回転制御信号S1は、モータ30の回転/停止、回転速度、回転方向を指定する信号である。ドライブ回路42は、回転制御信号S1に応じて三相交流電圧を生成し、モータ30に印加する。これにより、モータ30は、回転制御信号S1に従った回転方向および回転速度で回転する。
【0022】
ヘッド位置制御手段54は、指定された動作モードに基づいて、ドライブ回路44に対して、ヘッド・アセンブリ20の位置を指定する位置制御信号S2を出力する。なお、指定される位置は、最内周トラック位置P1〜最外周トラック位置P2までの任意のトラックに対応する位置、または退避位置P3である。
【0023】
ドライブ回路44は、位置制御信号S2に応じた電流をボイスコイル・モータ40に供給することにより、ヘッド・アセンブリ20を指定された位置に移動させる。ヒータ制御手段55は、動作モードが全消去モードになると、スイッチ48をオン状態に設定し、所定電圧Vhをアーム22に印加する。これにより、アーム22は発熱状態になる。
【0024】
図1において、プラッタ10は1枚のみを図示するが、実際には複数枚(N枚)のプラッタ10が平行に配置されている。そして、各プラッタ10は、表裏両面が記録面になっており、これら記録面毎にヘッド・アセンブリ20が設けられる。従って、ヘッド・アセンブリ20は合計で2N台台設けられているが、
図1においては最上部の1台のみ図示する。各ヘッド・アセンブリ20は、相互に結合されており、ボイスコイル・モータ40によって同時に駆動される。
【0025】
次に、
図2に示す側面図を参照し、サスペンション24の先端部分およびプラッタ10の詳細構成を説明する。なお、
図2においてはプラッタ10の断面構造も示す。また、ヘッド・アセンブリ20は、最上部に位置する一台のみを図示する。
図2において、プラッタ10は、ガラスやアルミニウム合金等によって構成された円板状の基板12と、基板12の表裏両面に形成された磁性膜14と、磁性膜14を覆う保護膜16とを有している。さらに、保護膜16の表面には、潤滑剤が塗布されている(図示略)。プラッタ10は、通常は、
図1において反時計方向に回転するため、
図2においては右から左に向かって移動することになる。
【0026】
スライダ26は、略直方体状に形成されており、その左下隅部には磁気ヘッド28が装着されている。また、スライダ26の右下隅部はテーパー状に切り欠かれ、切欠部26aが形成されている。プラッタ10が回転すると、回転方向と同一方向に空気流70が発生する。空気流70は、切欠部26aを介してスライダ26の下面に沿って流れる。スライダ26は、サスペンション24によってプラッタ10に向かって押圧されているが、空気流70が流入することによってプラッタ10の表面から若干の距離d1を隔てて浮上する。この浮上量d1は、約10nmである。
【0027】
<実施形態の動作>
図1において、動作モード指定手段56が通常モード(第1のモード)を指定すると、プラッタ10は所定の回転速度で反時計方向に回転駆動され、
図2に示したように、スライダ26、磁気ヘッド28は、プラッタ10とは非接触状態に保たれたまま、各トラックに対してデータの読出しを行う。ここで、通常モードにおける回転速度は、例えば、5400〜15000rpm程度の速度である。通常モードにおいては、磁気ディスク装置Aに対して意図しない外力等が加わらない限り、スライダ26がプラッタ10に接触することはなく、磁性膜14に記録されたデータは保持される。
【0028】
制御部50が外部から所定のコマンドを受信すると、動作モード指定手段56は、磁気ディスク装置Aの動作モードを通常モードから全消去モード(第2のモード)に変更する。全消去モードが指定されると、ヘッド位置制御手段54は、ヘッド・アセンブリ20を最内周トラック位置P1に移動させ、回転制御手段52はプラッタ10の回転を停止させる。また、ヒータ制御手段55は、スイッチ48をオン状態に設定し、これにより、アーム22の加熱を開始する。
【0029】
この状態におけるヘッド・アセンブリ20の側面図を
図3に示す。プラッタ10が停止すると、スライダ26には浮力が働かないため、
図3に示すように、サスペンション24の押圧力によって、スライダ26はプラッタ10に接触する。この状態においてある程度の時間が経過すると、アーム22に対向する部分の磁性膜14の温度がそのキュリー温度に達する。磁性膜14の温度がキュリー温度以上になると、磁性膜14の磁性そのものが失われるため、当該部分のデータが消去される。
【0030】
但し、
図1の最内周トラック位置P1においても、アーム22は、サービスエリア10aには達していない。この場合、サスペンション24やスライダ26はサービスエリア10aに達するが、これらの温度は、アーム22の温度よりも低くなるため、磁性膜14のキュリー温度には達しない。すると、サービスエリア10aについては、磁性膜14の温度がキュリー温度に達しないため、サービスエリア10aに記録されたデータは、消失することなく維持される。
【0031】
次に、動作モードが全消去モードに切り替わった後、所定時間が経過すると、回転制御手段52は、アーム22に対向する部分の磁性膜14の温度をキュリー温度以上に維持可能な回転速度、例えば、通常モードよりも遅い回転速度でモータ30の駆動を開始する。ここで、上述した「所定時間」とは、アーム22に対向する部分の磁性膜14の温度がキュリー温度に達するのに充分な時間である。また、全消去モードにおける回転速度は、上述したように、アーム22に対向する部分の磁性膜14の温度をキュリー温度以上に維持しつつプラッタ10を回転できる速度であり、アーム22の発熱量に応じて設定される。
【0032】
従って、プラッタ10が一回転すると、ユーザエリア全体(サービスエリア10aを除く全トラック)のデータを消去することができる。なお、プラッタ10が一回転する期間においては、ヘッド位置制御手段54によって、ヘッド・アセンブリ20は最内周トラック位置P1に保持される。
【0033】
プラッタ10が一回転すると、ヒータ制御手段55によってスイッチ48がオフ状態にされる。
【0034】
以上のように、本実施形態の磁気ディスク装置Aによれば、動作モードが全消去モード(第2のモード)に指定されると、ヒータ制御手段55は、ユーザエリアの磁性膜14の温度がそのキュリー温度以上になるように、ヒータを内蔵したアーム22を発熱させるので、ユーザエリアに記憶されたデータは、消失する。
【0035】
また、ユーザエリアのデータを消去する際、通常モードよりも遅い回転速度でモータ30を駆動しているため、スライダ26と磁気ヘッド28とはプラッタ10に接触し、プラッタ10と、スライダ26と、磁気ヘッド28とは損傷を受ける。これにより、データ消去後に磁気ディスク装置Aを再利用することができない。さらに、本実施形態によれば、アーム22に内蔵されたヒータによって、広範囲のデータを消去することができるため、スライダ26でプラッタ10を物理的に破壊するような方法と比較すると、プラッタ10の全面に渡ってデータを消去する時間を短くすることができる。
なお、アーム22に内蔵されたヒータによって消去できないデータ領域がある場合、その領域をスライダ26で物理的に破壊する構成としてもよい。すなわち、ドライブ回路44によりヘッド・アセンブリ20の位置を制御し、プラッタ10の該当領域をスライダで摺動させる。その場合においても、スライダ26でプラッタ10の全面を物理的に破壊するような方法と比較するとデータを消去する時間を短くすることができる。
【0036】
[変形例]
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。上述した実施形態は本発明を理解しやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、実施形態の構成の一部について削除し、若しくは他の構成の追加・置換をすることが可能である。上記実施形態に対して可能な変形は、例えば以下のようなものである。
【0037】
(1)上記実施形態において、退避位置P3は、最外周トラック位置P2よりも外周に設けたが、退避位置P3を最内周トラック位置P1よりも内周に退避させるシッピングゾーン方式を採用してもよい。
【0038】
(2)また、上記実施形態においては、アーム22を、窒化珪素ヒータ(SNヒータ)によって構成した例を説明したが、アーム22は、アルミナヒータ等の他のセラミックヒータによって構成してもよい。また、ヒータ機能を有しない素材によってアーム22を構成し、その素材に対してニクロム線やタングステン等を用いてヒータ機能を付加するようにしてもよい。
例えば、アーム22を金属板で構成し、アーム22にヒータ機能取り付け用の溝を設け、その溝に対して断熱材を介してSNヒータを取り付ける構成としてもよい。そうした場合は、金属板を使用した従来のアーム構造から大きな変更は不要となり、アームとサスペンションの取り付け構造等についても従来の技術で対応可能となる。
【0039】
(3)また、上記実施形態においては、アーム22の全体がヒータ機能を有していたが、アーム22の一部分のみ(例えば
図1における突出部22bのみ)にヒータ機能を付与するようにしてもよい。その結果、アーム22を固定してプラッタ10を一回転させたとしても、一部のトラックのデータを消去できなくなる場合が生じる。このような場合は、プラッタ10を複数回回転させ、一回転毎にアーム22の位置を切り替えるようにするとよい。例えば、アーム22のヒータ部分がユーザエリアの内周側から最外周までの間の「1/3」をカバーしている場合は、アーム22の位置を切り替えながら、プラッタ10を最低3回転すれば、ユーザエリアの全てのトラックのデータを消去することができる。
【0040】
(4)また、上記実施形態においては、磁気ディスク装置Aが再利用できないことを前提として、通常モードよりも遅い回転速度でプラッタ10を回転させ、スライダ26と磁気ヘッド28をプラッタ10に接触させ、スライダ26と磁気ヘッド28を破壊させるようにしたが、磁気ディスク装置Aを再利用可能な構成としてもよい。
磁気ディスク装置Aが、通常モード以上の回転速度でモータ30を駆動させた場合でも、アーム22に内蔵されたヒータによって、アーム22に対向する部分の磁性膜14の温度をキュリー温度以上に維持可能な場合、例えば、通常モードと同じ回転速度でモータを駆動させてもよい。そうした場合、磁気ディスク装置Aに対して意図しない外力等が加わらない限り、スライダ26がプラッタ10に接触することはない。
この例においては、制御部50が外部から所定のコマンドを受信すると、動作モード指定手段56は、磁気ディスク装置Aの動作モードを通常モードから再利用モード(第3のモード)に変更する。再利用モードが指定されると、ヘッド位置制御手段54は、ヘッド・アセンブリ20を最内周トラック位置P1に移動させ、ヒータ制御手段55は、スイッチ48をオン状態に設定し、これにより、アーム22の加熱を開始する。その際、回転制御手段52はプラッタ10の回転を停止させず、通常モードと同じ回転速度を維持する。
そうした場合、アーム22に内蔵されたヒータによって、磁性膜14の温度がキュリー温度以上に加熱されたデータ領域のデータは消失する。
但し、
図1の最内周トラック位置P1においても、アーム22は、サービスエリア10aには達していない。この場合、サスペンション24やスライダ26はサービスエリア10aに達するが、これらの温度は、アーム22の温度よりも低くなるため、磁性膜14のキュリー温度には達しない。すると、サービスエリア10aについては、磁性膜14の温度がキュリー温度に達しないため、サービスエリア10aに記録されたデータは、消失することなく維持される。
加熱によりデータ領域のデータを消去すると、ヒータ制御手段55によってスイッチ48がオフ状態にされる。これにより、磁性膜14の温度がキュリー温度未満になると、磁性膜14には、磁性体としての性質が戻るため、プラッタ10のユーザエリアに対して、再びデータの書込み/読出しが可能になる。すなわち、磁気ディスク装置Aは再利用可能となる。
なお、磁気ディスク装置Aを再利用しないことを前提にするのであれば、プラッタ10の基板12、保護膜16等の材質として耐熱性の低いものを採用することができ、磁気ディスク装置Aのコストダウンを図ることができる。