【解決手段】外部回路に接続される導電体2と、導電体2と外部回路とを開放させ、素子内部に浸入した液体と接触すると溶解することにより導電体2と外部回路とを導通させる液溶解性材料3aを備えた反応部3とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明が適用されたスイッチ素子の構成を示す概念図である。
【
図2】
図2は、導電体として撚り線を用いたスイッチ素子を示す図である。
【
図3】
図3は、導電体としてスポンジメタルを用いたスイッチ素子を示す断面図である。
【
図4】
図4(A)は液溶解性材料によって被覆された導電性粒子の凝集体を示す外観斜視図であり、
図4(B)は導電体として(A)に示す凝集体を用いたスイッチ素子を示す断面図である。
【
図5】
図5は、導電体として導電材料からなる筒状の外部導体及び内部導体を用いた例を示す外観斜視図である。
【
図6】
図6(A)は外部導体の内面に液溶解性材料からなる絶縁コート層が形成された状態を示す断面図であり、
図6(B)は内部導体の外面に液溶解性材料からなる絶縁コート層が形成された状態を示す断面図である。
【
図7】
図7は、外部導体と内部導体との間に、液溶解性材料からなる絶縁フィルムが介在されている状態を示す断面図である。
【
図8】
図8は、スイッチ素子の筐体を示す斜視図であり、(A)は天面に導入口が形成された状態、(B)は天面に複数の導入口が形成された状態、(C)は天面及び側面に導入口が形成された状態、(D)は天面及び側面に複数の導入口が形成された状態を示す。
【
図9】
図9は、円筒状の筐体を用いたスイッチ素子を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、排出口が形成された筐体を用いたスイッチ素子を示す斜視図であり、(A)は筐体天面に一つの導入口が形成されたもの、(B)は筐体天面に複数の導入口が形成されたものを示す。
【
図11】
図11は、反応部が設けられた位置と同じ高さ又は上方に排出口が設けられたスイッチ素子を示す断面図である。
【
図12】
図12は、スリット状の導入口及びスリット状の排出口が形成された筐体を用いたスイッチ素子を示す断面図である。
【
図13】
図13は導入溝が形成された筐体を用いたスイッチ素子を示す図であり、(A)は断面図、(B)は外観斜視図である。
【
図14】
図14は、複数の導入口及び導入溝が形成された筐体を用いたスイッチ素子を示す図であり、(A)は断面図、(B)は外観斜視図である。
【
図15】
図15は、反応部が設けられた内部にかけて漸次狭小化する導入溝が形成された筐体を用いたスイッチ素子を示す断面図である。
【
図16】
図16は、導電体及び反応部の位置に応じた高さに導入口を形成した筐体を用いたスイッチ素子を示す斜視図である。
【
図17】反応部以外の場所に撥水処理部を形成した筐体を用いたスイッチ素子を示す斜視図である。
【
図18】
図18は、導入口を水溶性封止材でシールした筐体を用いたスイッチ素子を示す斜視図である。
【
図19】
図19は、導入溝を水溶性封止材で閉塞した筐体を用いたスイッチ素子を示す断面図である。
【
図20】
図20は、筐体のハーフの突き合わせ面に撚り線を配置する配線溝を形成したスイッチ素子を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は撚り線を筐体の内外に引き出す引出凹部を示す斜視図である。
【
図21】
図21は、撚り線を配線溝の引出凹部から引き出した状態を示す斜視図である。
【
図22】
図22は、筐体のハーフの突き合わせ面に撚り線を配置する配線溝を形成したスイッチ素子を示す図であり、(A)は断面図であり、(B)は撚り線を筐体内に引き出す引出凹部を示す斜視図である。
【
図23】
図23は外部回路と接続されたスイッチ素子の回路図であり、(A)はスイッチ素子の作動前、(B)はスイッチ素子の作動後を示す。
【
図24】
図24は、スイッチ素子を保護素子に接続した状態を示す回路図であり、(A)は発熱体の通電経路と、ヒューズエレメントとが別回路となった保護素子を用いた場合を示し、(B)は発熱体がヒューズエレメントと接続された保護素子を用いた場合を示す。
【
図25】
図25は、スイッチ素子及び保護素子を内蔵したバッテリパックの回路図である。
【
図26】
図26は、スイッチ素子を内蔵した保護素子を示す回路図であり、(A)は発熱体の通電経路と、ヒューズエレメントとが別回路となった保護素子を示し、(B)は発熱体がヒューズエレメントと接続された保護素子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明が適用されたスイッチ素子、及び保護素子について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0012】
本発明が適用されたスイッチ素子は、バッテリ回路、警報回路等の外部回路に組み込まれ、水没や液漏れ等の水濡れ状態が生じた場合に、バッテリ回路の遮断や、警報回路や保護回路の通電を行うものである。
図1に示すように、スイッチ素子1は、外部回路に接続される導電体2と、導電体2を被覆することにより外部回路を開放させ、素子内部に浸入した液体と接触すると溶解することにより外部回路を導通させる液溶解性材料3aを備えた反応部3と有し、これら導電体2及び反応部3が筐体4内に内蔵されているものである。
【0013】
[導電体]
導電体2は、スイッチ素子1が組み込まれる外部回路の開放端の間に接続されることにより外部回路を導通させる部材であり、例えばリード線やスポンジメタル等、公知の導電部材を用いることができる。
【0014】
スイッチ素子1は、導電体2の接続端が、筐体4の外部に引き出され、外部回路の端子部と接続可能とされている。また、スイッチ素子1は、筐体4内に設けられた絶縁基板に形成され、外部回路の開放端子と接続される電極上に導電体2が接続されることにより外部回路と接続されてもよい。
【0015】
スイッチ素子1は、導電体2が常態において反応部3を構成する液溶解性材料3aによって被覆されることにより外部回路と絶縁されており、反応部3に液体が接触することにより、導電体2を被覆していた液溶解性材料3aが溶解し、導電体2を介して外部回路が導通される。
【0016】
例えば導電体2は、
図2に示すように、それぞれ外部回路と接続されている一対の導線11A,11Bが撚り合わされた撚り線10を用いることができる。導線11A,11Bは、それぞれ液溶解性材料3aによって被覆されることにより、互いに絶縁されている。そして、導線11Aは、スイッチ素子1と接続された外部回路の通電経路の一方の自由端に接続され、導線11Bは、同通電経路の他方の自由端に接続されている。これにより、当該外部回路は通常時において開放されている。
【0017】
[反応部]
反応部3は、液体と接触することにより導電体2を不可逆的に導通するためのものであり、導電体2を被覆する液溶解性材料3aを備える。液溶解性材料3aは、絶縁性を有し、液体と接触することにより溶解する任意の材料を用いることができ、例えば、寒天,ゼラチンなどの天然ポリマー、セルロース,でんぷんなどの半合成ポリマー、ポリビニルアルコールなどの合成ポリマー等を用いることができる。また、液溶解性材料3aとして液体と接触することにより溶解する角砂糖のような水溶性の固形物を用いてもよい。
【0018】
また、液体としてバッテリセルに充填されたエチレンカーボネート等の電解液を想定し、電解液漏れに対応して作動するスイッチ素子の場合、液溶解性材料3aとしては、ABS、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、あるいはPET、PTT、PEN等の飽和ポリエステルなどを用いることができる。これらの液溶解性材料3aも、高分子量になると溶解速度が落ち、スイッチ素子1として反応速度が低下する場合もあるため、反応速度を優先する場合は、重合度を調整して用いることが好ましい。
【0019】
導電体2を被覆している液溶解性材料3aは、筐体4内において反応部3を構成する。反応部3は、水濡れや電池からの液漏れ等の異常時に、筐体4内に浸入した液体によって液溶解性材料3aが溶解し、導電体2と外部回路の開放端を接触させ、外部回路を通電させることができる。
【0020】
例えば、反応部3は、液溶解性材料3aによって上述した一対の導線11A,11Bを被覆することにより、通常時には絶縁することにより外部回路を開放させている。そして、反応部3は、水濡れや電池からの液漏れ等の異常時に、筐体4内に浸入した液体が液溶解性材料3aと接触、溶解することにより、一対の導線11A,11Bを接続させ、これにより外部回路を通電させることができる。
【0021】
[導電体の変形例]
また、スイッチ素子1は、
図3に示すように、導電体2として、スポンジメタル12を用いてもよい。スポンジメタル12は、液溶解性材料3aに被覆されるとともに、筐体4に設けられ、外部回路の開放端と接続される一対の外部接続端子13a,13b間にわたって搭載されている。外部接続端子13a,13bは、例えば筐体4内に設けられた金属端子や、筐体4あるいは筐体4内に配設された絶縁基板に形成された電極パターンにより形成される。
【0022】
スイッチ素子1は、スポンジメタル12が、表面を被覆する液溶解性材料3aを介して外部接続端子13a,13b上に搭載されることにより、通常時は、外部回路を開放させている。そして、スイッチ素子1は、水濡れや電池からの液漏れ等の異常時に、筐体4内に浸入した液体が液溶解性材料3aと接触、溶解することにより、スポンジメタル12と外部接続端子13a,13bを接続させ、これにより外部回路を通電させることができる。
【0023】
なお、導電体2として、スポンジメタル12の他、導電性繊維を用いた織布、不織布や、金属メッシュ等の多孔質体、あるいは金属箔等のメタルシートを用い、液溶解性材料3aで被覆させてもよい。
【0024】
また、スイッチ素子1は、
図4(A)に示すように、導電体2として、液溶解性材料3aによって被覆された導電性粒子14の凝集体15を用いてもよい。凝集体15は、個々の導電性粒子14を被覆する液溶解性材料3aによって略シート形状あるいは略フィルム形状を維持し、
図4(B)に示すように、筐体4内に設けられた金属端子や筐体4あるいは筐体4内に配設された絶縁基板に形成された電極パターンにより形成される外部接続端子13a,13b間にわたって搭載されている。
【0025】
スイッチ素子1は、導電性粒子14の凝集体15が、表面を被覆する液溶解性材料3aを介して外部接続端子13a,13b上に搭載されることにより、通常時は、外部回路を開放させている。そして、スイッチ素子1は、水濡れや電池からの液漏れ等の異常時に、筐体4内に浸入した液体が液溶解性材料3aと接触、溶解することにより、外部接続端子13a,13b間にわたって連続する導電性粒子14を介して両端子間を接続させ、これにより外部回路を通電させることができる。
【0026】
また、スイッチ素子1は、
図5に示すように、導電体2として、導電材料からなる筒状の外部導体17と、外部導体17の内部に設けられた導電材料からなる内部導体18とを用いてもよい。
図5に示す導電体2は、外部導体17が外部回路の一方の開放端と接続され、内部導体18が外部回路の他方の開放端と接続されている。外部導体17は、例えば円筒状導体であり、外周面に液体が浸入する開口部17aが一又は複数形成されている。なお、外部導体17は、円筒状の他、内部導体18を収納できる中空形状であればどのような形状でもよい。
【0027】
内部導体18は、外部導体17の内部に配置されるあらゆる形態をとり得、
図5に示す円柱状の他、角柱状、シートの巻装体状、ブロック体状等でもよい。また、内部導体18は、外部導体17の内部において、移動可能に保持されている。
【0028】
スイッチ素子1は、
図6(A)に示すように、外部導体17の内面に液溶解性材料3aによって絶縁コート層17bが形成され、これにより外部導体17と内部導体18とは、常態において絶縁され、外部回路を開放させている。そして、スイッチ素子1は、水濡れや電池からの液漏れ等の異常時に、筐体4内に浸入した液体が外部導体17の開口部17a内に浸入し、液溶解性材料3aと接触することにより絶縁コート層17bが溶解し、外部導体17と内部導体18とが電気的に接続され、これにより外部回路を通電させることができる。
【0029】
なお、スイッチ素子1は、
図6(B)に示すように、内部導体18の外面に液溶解性材料3aを塗布することにより絶縁コート層18aを形成してもよい。絶縁コート層18aは、外部導体17の開口部17aより浸入した液体と接触することにより溶解し、外部導体17と内部導体18とが電気的に接続可能となる。
【0030】
また、スイッチ素子1は、
図7に示すように、外部導体17と内部導体18との間に、液溶解性材料3aからなる絶縁フィルム19を介在させてもよい。絶縁フィルム19は、少なくとも内部導体18を外部導体17の内面から遮蔽する大きさ、形状を有し、常態において外部導体17と内部導体18とを絶縁している。そして、絶縁フィルム19は、水濡れや電池からの液漏れ等の異常時に、筐体4及び外部導体17の開口部17aを介して浸入した液体と接触することにより溶解し、外部導体17と内部導体18とが電気的に接続可能とする。
【0031】
[筐体]
スイッチ素子1の筐体4は、各種エンジニアリングプラスチック、セラミックス等の絶縁性を有する部材により形成することができる。スイッチ素子1は、筐体4を設けることにより、導電体2及び反応部3を保護することができる。
【0032】
筐体4には、反応部3に液体を導く導入口5が設けられている。スイッチ素子1は、筐体4に設けられた導入口5を介して液体が反応部3へ流入することにより、導電体2を不可逆的に導通させる。
【0033】
筐体4は、例えば
図8(A)に示すように、多面体からなり、一の面に、一の導入口5が設けられている。スイッチ素子1は、外部回路が形成された回路基板に実装されるチップ部品として形成された場合、筐体4の実装面と反対側の天面4aに導入口5が設けられることが好ましい。天面4aに導入口5が設けられることにより、水濡れ状態になると効率的に液体を筐体4内に取り込むとともに反応部3に保持し、導電体2を導通させることができる。もちろん筐体4は、天面4a以外の面、例えば側面4bに導入口5を形成してもよい。また、筐体4は、
図8(B)に示すように、天面4aに複数の導入口5を形成してもよく、あるいは側面4bに複数の導入口5を形成してもよい。筐体4は、複数の導入口5を設けることにより、より液体を反応部3に導入しやすくすることができる。
【0034】
また、筐体4は、例えば
図8(C)に示すように、多面体からなり、複数の面、例えば天面4aと側面4bに導入口5を設けてもよい。また、筐体4は、
図8(D)に示すように、複数の面にそれぞれ一又は複数の導入口5を形成してもよい。
【0035】
また、筐体4は、円柱状又は角柱状に形成し、導入口5を任意の位置に、任意の個数だけ形成してもよい。
図9は筐体4を円柱状に形成し、全周にわたって複数の導入口5を形成したスイッチ素子1の外観斜視図である。筐体4を円柱状、角柱状に形成することにより、スイッチ素子1の配置に応じた面や角度、液体の浸入経路等に左右されずに導入口5を形成することができる。
【0036】
また、筐体4は、導入口5より浸入した液体を排出する排出口を形成してもよい。
図10は、多面体からなる筐体4の天面4aに導入口5を形成するとともに、側面4bに液体を排出する排出口6を形成したスイッチ素子1を示す外観斜視図である。排出口6を形成することにより、液体が多量に筐体4内に浸入することによって、冷却等の影響で液溶解性材料3aの溶解反応が低下する事態を防止することができる。
【0037】
なお、排出口6は、導入口5よりも小さく形成されることが好ましい。排出口6を相対的に小さくすることで、筐体4内に浸入した液体が過剰に排出され、反応部3の作用や、導電体2の導通が遅延することを防止することができる。
【0038】
また、排出口6は、筐体4の反応部3が設けられた位置と同じ高さ、又は反応部3が設けられた位置よりも上方に設けられていることが好ましい。例えば、
図11に示すように、筐体4を多面形状に形成するとともに、回路基板に実装されるチップ部品として形成された場合、排出口6は、筐体4の側面4bの反応部3が設けられた位置と同じ高さ又は上方に設けられることが好ましい。これにより、筐体4内に浸入した液体は、反応部3より上方に浸入した分が排水され、反応部3には残留するため、反応部3の作用を確保するとともに、液体が多量に筐体4内に浸入することによって、冷却等の影響で液溶解性材料3aの溶解反応が低下する事態を防止することができる。
【0039】
なお、液体を導入する導入口5及び液体を排出する排出口6は、円形、矩形等、その形状は問わない。また、導入口5及び排出口6は、
図12に示すように、スリット状に形成してもよい。導入口5をスリット状に形成することにより、より広範に液体を導入させ、速やかに反応部3を反応させて導電体2を導通させることができる。また、排出口6をスリット状に形成することにより、筐体4内に浸入した余剰の液体を速やかに排水することができ、液体が多量に筐体4内に浸入することによって、冷却等の影響で液溶解性材料3aの溶解反応が低下する事態を防止することができる。
【0040】
また、筐体4は、天面4aにスリット状の導入口5を設けるとともに、反応部3へ液体を導く導入溝7を設けてもよい。
図13(A)に示すように、導入溝7は、溝壁7aが天面4aに形成された導入口5から反応部3の近傍まで延在される。これにより、筐体4は、導入口5に浸入した液体が反応部3以外の場所に流入することなく、確実に反応部3へ導くことができる。また、筐体4は、導入口5に浸入した液体が筐体4内に散逸し、反応部3による導電体2の導通が遅延することを防止することができる。
【0041】
また、筐体4は、
図13(B)に示すように、導入溝7を側面4bまで延ばし、側面4bに形成された排出口6と連続させてもよい。これにより、筐体4は、導入口5から浸入した液体を効率よく反応部3に導くとともに、過剰な液体を効率よく排出口6から排水することができる。
【0042】
なお、
図14(A)(B)に示すように、導入口5及び導入溝7は、複数形成してもよい。導入溝7を複数形成することにより、反応部3の全幅にわたって液体を導くことができる。
【0043】
また、
図15に示すように、スイッチ素子1は、天面4aに臨む導入口5の開口部から反応部3が設けられた内部にかけて導入溝7を漸次狭小化させてもよい。導入溝7を反応部3に近づくにつれて狭小化することにより、導入口5の開口部から浸入した液体を、毛細管現象によって効率よく反応部3に導くことができる。
【0044】
また、スイッチ素子1は、
図16に示すように、筐体4に導電体2及び反応部3の位置に応じて導入口5、又は導入口5及び導入溝7を形成してもよい。スイッチ素子1は、例えば
図3に示す導電体2及び反応部3の構成例のように、液溶解性材料3aによって被覆されたスポンジメタル12を外部接続端子13a,13b間にわたって搭載させるとともに、側面4bのスポンジメタル12の位置に対応した高さに、導入口5、又は導入口5及び導入溝7を形成してもよい。
【0045】
導入口5等が反応部3の位置に応じた位置に形成されることにより、スイッチ素子1は、効率良く多量の液体を導入口5から導電体2及び反応部3へ導くことができ、反応部3の反応を効率良く行い、導電体2の導通を促進させることができる。
【0046】
また、スイッチ素子1は、反応部3以外の場所に撥水処理を施し、液体を反応部3に誘導してもよい。例えば
図17に示すように、スイッチ素子1は、導入口5、又は導入口5及び導入溝7の溝壁7aに撥水処理が施された撥水処理部16を形成してもよい。これによりスイッチ素子1は、導入口5より浸入した液体を効率よく反応部3に導くことができる。また、導入口5や導入溝7に撥水処理を施すことにより、スイッチ素子1を作動させるべき水濡れ状態以外では、少量の液体を弾いて筐体4内に浸入させないことから、誤作動を防止し、センサーとしての信頼性を確保することもできる。
【0047】
また、スイッチ素子1は、筐体4の内壁に撥水処理を施してもよい。筐体4の内壁に撥水処理を施すことによっても、筐体4内に浸入した液体を効率良く反応部3に導き、速やかに反応部3を作用させることができる。
【0048】
また、スイッチ素子1は、
図18に示すように、導入口5を液体で溶解するシート状の水溶性封止材9で閉塞してもよい。水溶性封止材9は、液溶解性材料3aと同様に、例えば、寒天,ゼラチンなどの天然ポリマー、セルロース,でんぷんなどの半合成ポリマー、ポリビニルアルコールなどの合成ポリマー等を用いて形成することができる。そして、水溶性封止材9は、
図18に示すように、シート状に成型され、筐体4の天面に貼り付けられることにより、導入口5を閉塞することができる。導入口5を水溶性封止材9で閉塞することにより、スイッチ素子1を作動させるべき水濡れ状態以外では、少量の液体を弾いて筐体4内に浸入させないことから、誤作動を防止し、センサーとしての信頼性を確保することもできる。
【0049】
同様に、スイッチ素子1は、
図19に示すように、導入溝7を液体で溶解する水溶性封止材9で閉塞してもよい。導入溝7を水溶性封止材9で閉塞することによっても、少量の液体を弾いて筐体4内に浸入させず、誤作動を防止することができる。
【0050】
[筐体嵌合部の溝部]
また、スイッチ素子1は、
図20、
図21に示すように、筐体4を上下ハーフ4a,4bを突きあわせ結合することにより構成するとともに、上下ハーフ4a,4bの一方又は両方の側壁の突き合わせ面に、撚り線10を配置する配線溝20を形成してもよい。配線溝20は、上下ハーフ4a,4bの一方又は両方の側壁に沿って突き合わせ面の全周又は一部に形成されている。
【0051】
配線溝20は、撚り線10を筐体4の内部に引き出す第1の引出凹部20aを形成してもよい。撚り線10は、第1の引出凹部20aより引き出されて、例えば筐体4内に設けられた外部接続端子13a,13bに接続され、あるいは、後述する保護素子23,24において筐体4内に設けられる発熱体28に接続される。また、配線溝20は、筐体4内に液体が浸入すると、第1の引出凹部20aを介して液体が流入、貯留するため、撚り線10を構成する導線11A,11Bを被覆している液溶解性材料3aが溶解し、導線11A,11Bが電気的に接続される。
【0052】
また、配線溝20は、
図20(B)に示すように、撚り線10を筐体の外部に引き出すとともに、液体の導入口ともなる第2の引出凹部20bを形成してもよい。
図21に示すように、撚り線10は、第2の引出凹部20bより引き出され、外部回路の接続端子と接続される。また、配線溝20は、水濡れ状態になると第2の引出凹部20bを介して液体が流入、貯留するため、撚り線10を構成する導線11A,11Bを被覆している液溶解性材料3aが溶解し、導線11A,11Bが電気的に接続される。
【0053】
なお、スイッチ素子1は、筐体4として、スイッチ素子1が用いられるパソコン、スマートフォン、タブレット端末、バッテリパック等の各種電子機器の筐体を用いてもよい。この場合も、スイッチ素子1は、
図22(A)に示すように、上下ハーフ4a,4bの一方又は両方の側壁の突き合わせ面に、撚り線10を配置する配線溝20を形成してもよい。このとき、
図22(B)に示すように、配線溝20は、撚り線10を筐体4の内部に引き出す第1の引出凹部20aのみが形成されていれば足りる。
【0054】
撚り線10を構成する導線11A,11Bは、筐体4内に設けられた保護回路等の外部回路22と接続され、常態において、当該外部回路22を遮断させている。そして、水没等により筐体4内に水が浸入するとともに、第1の引出凹部20aより配線溝20内にも浸入すると、導線11A,11Bを被覆している液溶解性材料3aが溶解し、導線11A,11Bが電気的に接続され、外部回路22が作動し、保護動作を開始する。このとき、配線溝20の位置を筐体4の下方に形成する等、調整することにより、配線溝20に浸入する水の浸入量、すなわち外部回路22の動作を開始する水の浸入量を調整することができる。
【0055】
[回路構成]
図23に、スイッチ素子1の回路構成を示す。すなわち、スイッチ素子1は、導電体2が外部回路22の一方の開放端22a及び他方の開放端22bと接続されるとともに、液溶解性材料3aからなる反応部3によって外部回路22を開放させている(
図23(A))。そして、スイッチ素子1は、水濡れ状態において筐体4内に液体が浸入すると、反応部3の液溶解性材料3aが溶解し、導電体2が導通されることにより外部回路22の各開放端22a,22bを導通させる(
図23(B))。
【0056】
したがって、例えば外部回路22として、警報を出力する警報回路、バッテリの充放電経路を遮断する保護回路、あるいはバックアップ回路を接続することにより、水濡れや電池からの液漏れ等の異常に対し、これら外部回路を作動させることができる。
【0057】
[保護回路]
図24(A)(B)は、スイッチ素子1と、水濡れ状態等の異常時に外部回路を遮断する保護素子23,24とを接続した回路構成を示す図である。
図24(A)に示すように、保護素子23は、外部回路の一方の開放端と接続される第1の電極25と、外部回路の他方の開放端と接続される第2の電極26と、第1、第2の電極25,26間にわたって搭載され、第1、第2の電極25,26間を電気的に接続するヒューズエレメント27と、通電することにより発熱し、ヒューズエレメント27を溶断する発熱体28とを備える。
【0058】
保護素子23は、第1、第2の電極25,26が常態においてヒューズエレメント27を介して電気的に接続されることにより、外部回路を通電させている。発熱体28は、一端を図示しない電源と接続され、他端をスイッチ素子1の導電体2と接続されることにより通電が制御され、常態においては導電体2が絶縁されることにより通電が規制されている。
【0059】
保護素子23は、水濡れや電池からの液漏れ等の異常時において、液体がスイッチ素子1の筐体4内に浸入し、反応部3の液溶解性材料3aが溶解することにより導電体2が通電すると、発熱体28が通電し、発熱される。これにより、保護素子23は、第1、第2の電極25,26間においてヒューズエレメント27が溶断することにより、外部回路を遮断することができる。
【0060】
発熱体28は、例えばタイマーによってヒューズエレメント27を溶断させるのに十分な時間が経過した後、通電が停止される。あるいは、外部回路の遮断を検知するセンサーを設け、外部回路の遮断を検知した後、発熱体28への通電を停止してもよい。
【0061】
図24(B)は、発熱体28をヒューズエレメント27と電気的に接続し、外部回路の電流経路を用いて発熱体28へ通電させる保護素子24の回路構成を示す図である。保護素子24は、第1、第2の電極25,26が常態においてヒューズエレメント27を介して電気的に接続されることにより、外部回路を通電させている。発熱体28は、一端が発熱体引出電極を介してヒューズエレメント27と接続され、他端が発熱体給電電極29を介してスイッチ素子1の導電体2と接続されることにより通電が制御され、常態においては導電体2が絶縁されることにより通電が規制されている。
【0062】
保護素子24は、水濡れや電池からの液漏れ等の異常時において、液体がスイッチ素子1の筐体4内に浸入し、反応部3の液溶解性材料3aが溶解することにより導電体2が通電すると、発熱体28が通電し、発熱される。これにより、保護素子24は、第1、第2の電極25,26間においてヒューズエレメント27が溶断することにより、外部回路を遮断することができる。
【0063】
発熱体28は、ヒューズエレメント27が溶断することにより通電経路が遮断されるため、発熱が停止される。
【0064】
[保護素子の使用方法]
次いで、これら保護素子23,24の使用例について説明する。なお、以下では保護素子24について説明するが、保護素子23についても同様である。保護素子24は、
図25に示すように、例えばリチウムイオン二次電池のバッテリパック30内の回路に組み込まれて用いられる。バッテリパック30は、例えば、合計4個のリチウムイオン二次電池のバッテリセル31〜34からなるバッテリスタック35を有する。
【0065】
バッテリパック30は、バッテリスタック35と、バッテリスタック35の充放電を制御する充放電制御回路40と、保護素子24の動作を制御するスイッチ素子1とを備える。
【0066】
バッテリスタック35は、過充電及び過放電状態から保護するための制御を要するバッテリセル31〜34が直列接続されたものであり、バッテリパック30の正極端子30a、負極端子30bを介して、着脱可能に充電装置45に接続され、充電装置45からの充電電圧が印加される。充電装置45により充電されたバッテリパック30は、正極端子30a、負極端子30bをバッテリで動作する電子機器に接続することによって、この電子機器を動作させることができる。
【0067】
充放電制御回路40は、バッテリスタック35から充電装置45に流れる電流経路に直列接続された2つの電流制御素子41,42と、これらの電流制御素子41,42の動作を制御する制御部43とを備える。電流制御素子41,42は、たとえば電界効果トランジスタ(以下、FETと呼ぶ。)により構成され、制御部43によりゲート電圧を制御することによって、バッテリスタック35の電流経路の充電方向及び/又は放電方向への導通と遮断とを制御する。制御部43は、充電装置45から電力供給を受けて動作し、検出回路36による検出結果に応じて、バッテリスタック35が過放電又は過充電であるとき、電流経路を遮断するように、電流制御素子41,42の動作を制御する。
【0068】
保護素子24は、たとえば、バッテリスタック35と充放電制御回路40との間の充放電電流経路上に接続され、その動作がスイッチ素子1によって制御される。
【0069】
検出回路36は、各バッテリセル31〜34と接続され、各バッテリセル31〜34の電圧値を検出して、各電圧値を充放電制御回路40の制御部43に供給する。制御部43は、いずれか1つのバッテリセル31〜34が過充電電圧又は過放電電圧になったときに電流制御素子41,42を制御する制御信号を出力する。
【0070】
以上のような構成からなるバッテリパック30において、保護素子24は、第1、第2の電極25,26間にわたって直列接続されたヒューズエレメント27と、ヒューズエレメント27の接続点を介して通電して発熱させることによってヒューズエレメント27を溶融する発熱体28とからなる回路構成である。また、保護素子24では、たとえば、ヒューズエレメント27が第1、第2の電極25,26を介してバッテリパック30の充放電電流経路上に直列接続され、発熱体28の一端がヒューズエレメント27との接続点と接続され、発熱体28の他端がスイッチ素子1の導電体2と接続される。保護素子24の第1の電極25はバッテリスタック35の一方の開放端側に接続され、第2の電極26はバッテリパック30の正極端子30a側に接続される。
【0071】
[溶断工程]
このような回路構成からなる保護素子24は、水濡れや電池からの液漏れ等バッテリパック30の電流経路を遮断する必要が生じた場合に、筐体4内に液体が浸入されたスイッチ素子1によって発熱体28が通電、発熱される。そして、保護素子24は、発熱体28の発熱により、バッテリパック30の電流経路上に組み込まれたヒューズエレメント27が溶断される。これにより、保護素子24は、確実に第1の電極25〜第2の電極26の間を溶断させ、バッテリパック30の電流経路を遮断することができる。また、ヒューズエレメント27が溶断することにより、発熱体28への給電も停止される。
【0072】
このように、スイッチ素子1は、水濡れや電池からの液漏れ等に応じて保護素子24の発熱体28を通電する制御素子として機能する。したがって、発熱体28への通電を制御するFET等の制御素子が不要となる。
【0073】
なお、保護素子23,24は、外部に設けたスイッチ素子1と接続する以外にも、
図26(A)(B)に示すように、スイッチ素子1を内蔵してもよい。また、保護素子23,24は、リチウムイオン二次電池のバッテリパックに用いる場合に限らず、電気信号による電流経路の遮断を必要とする様々な用途にももちろん応用可能である。