【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明が適用された液濡れセンサー、スイッチ素子、及びスイッチ素子を組み込んだバッテリシステムについて、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0021】
[液濡れセンサー]
本発明が適用された液濡れセンサー1は、
図1に示すように、液体に触れることで発熱する反応部2と、反応部2の温度上昇に伴い電気特性が変化する感温部3とを有する。反応部2は、例えば水と反応して発熱する生石灰を用いて構成することができ、例えば
図2に示すように、絶縁基板5上に配設、保持されている。感温部3としては、例えば反応部2の温度上昇に伴い抵抗値が低下するサーミスタや電圧が変化するダイオード、その他ペルチェ素子、熱電対、バイメタル、温度センサ等、電気特性が温度依存性を有する電子部品を用いることができる。反応部2と感温部3とは互いに近接して配置されることにより熱的に接続され、反応部2の熱によって感温部3が熱せられる。これにより感温部3は、抵抗値や出力電圧等の電気特性が変化する。
【0022】
以下では、液漏れセンサー1の感温部3としてサーミスタ3aを用いた場合を例に説明する。サーミスタ3aは、絶縁基板5上に形成されるとともに、両端が第1、第2の外部接続電極6,7と接続されている。サーミスタ3aは第1、第2の外部接続電極6,7を介して電気回路4の通電経路上に接続され、常時、高い電気抵抗によって電気回路4の通電を規制している。また、サーミスタ3aは、NTC(negative temperature coefficient)サーミスタ又はCTR(critical temperature resistor)サーミスタを好適に用いることができる。そして、液濡れセンサー1は、反応部2が液体と接触することにより発熱すると、サーミスタ3aの電気抵抗値が低下することにより、電気回路4を通電させることができる。
【0023】
また、液濡れセンサー1は、絶縁基板5上を覆うカバー部材8により筐体が形成される。カバー部材8には、反応部2に液体を導く導入口9が形成されている。
【0024】
なお、液濡れセンサー1は、反応部2とサーミスタ3aとが重畳して配置されることが好ましい。例えば、液濡れセンサー1は、絶縁基板上に配置された生石灰上にサーミスタ3aが重畳配置される。これにより反応部2とサーミスタ3aとが熱的に密接に接続され、反応部2が発熱することにより、速やかにサーミスタ3aの電気抵抗値を低下させることができる。
【0025】
[撥水処理]
なお、液濡れセンサー1は、
図2に示すように、反応部2以外の場所、又は反応部2及びその近傍以外の場所に、撥水処理部14を設けてもよい。例えば液濡れセンサー1は、反応部2、サーミスタ3aを除く絶縁基板5の表面5aの露出領域に、撥水処理部14が設けられる。
【0026】
撥水処理部14は、例えばフッ素系コーティング剤の塗布、ソルダーペーストコーティング等、公知の手法により形成することができる。
【0027】
これにより、液濡れセンサー1は、絶縁基板5上の液体を非撥水領域である反応部2に導くことができ、サーミスタ3aの加熱を促進して速やかにサーミスタ3aの電気抵抗値を低下させることができる。
【0028】
[液濡れセンサーの使用例]
液濡れセンサー1は、
図3に示すように、例えばリチウムイオン二次電池のバッテリパック10内の回路に組み込んで用いることができる。バッテリパック10は、例えば、複数のリチウムイオン二次電池のバッテリセルからなるバッテリスタック15を有する。
【0029】
バッテリパック10は、バッテリスタック15と、バッテリスタック15の充放電を制御する充放電制御回路16と、バッテリスタック15の異常時に充電を遮断する保護素子11と、各バッテリセルの液漏れや水没等を検出する液濡れセンサー1と、液濡れセンサー1の検出結果に応じて保護素子11の動作を制御する電流制御素子12とを備える。
【0030】
バッテリスタック15は、液漏れや水没等から保護するための制御を要するバッテリセルが直列及び/又は並列接続されたものであり、バッテリパック10の正極端子10a、負極端子10bを介して、着脱可能に充電装置13に接続され、充電装置13からの充電電圧が印加される。充電装置13により充電されたバッテリパック10は、正極端子10a、負極端子10bをバッテリで動作する電子機器に接続することによって、この電子機器を動作させることができる。
【0031】
充放電制御回路16は、バッテリスタック15から充電装置13に流れる電流経路に直列接続された2つの電流制御素子17,18と、これらの電流制御素子17,18の動作を制御する制御部19とを備える。電流制御素子17,18は、たとえば電界効果トランジスタ(以下、FETと呼ぶ。)により構成され、制御部19によりゲート電圧を制御することによって、バッテリスタック15の電流経路の充電方向及び/又は放電方向への導通と遮断とを制御する。制御部19は、充電装置13から電力供給を受けて動作し、各バッテリセルの電圧を検出する図示しない検出回路による検出結果に応じて、バッテリスタック15が過放電又は過充電であるとき、電流経路を遮断するように、電流制御素子17,18の動作を制御する。
【0032】
保護素子11は、たとえば、バッテリスタック15と充放電制御回路16との間の充放電電流経路上に接続され、その動作が電流制御素子12によって制御される。具体的に、保護素子11は、
図4(A)(B)に示すように、絶縁基板26と、絶縁基板26上に形成された第1、第2の電極22、23と、絶縁基板26の表面に形成された発熱抵抗体24と、発熱抵抗体24を被覆するガラス層27と、ガラス層27上に積層されるとともに発熱抵抗体24と接続された発熱体引出電極21と、第1の電極22、発熱体引出電極21、及び第2の電極23にわたって接続用ハンダ28を介して搭載されるヒューズエレメント20とを備える。第1、第2の電極22,23は、それぞれ絶縁基板26の裏面に形成された第1、第2の外部接続電極22a,23aとキャスタレーションを介して接続されている。また、発熱抵抗体24は、発熱体給電電極25と接続され、発熱体給電電極25を介して電流制御素子12と接続されている。また、発熱抵抗体24は、発熱体引出電極21がヒューズエレメント20と電気的に接続されることにより、ヒューズエレメント20及びバッテリスタック15の充放電経路と接続されている。
【0033】
液濡れセンサー1は、感温部3(サーミスタ3a)の一端がバッテリスタック15と接続され、他端が電流制御素子12と接続されている。そして、液濡れセンサー1は、常時サーミスタ3aの高抵抗により、バッテリスタック15から電流制御素子12への通電を規制している。また、液濡れセンサー1は、バッテリセルの液漏れや水没等の液濡れ状態が発生したときに、反応部2が発熱し、サーミスタ3aの電気抵抗値が下がることにより、バッテリスタック15から電流制御素子12へ通電可能とする。
【0034】
電流制御素子12は、たとえばFETにより構成され、液濡れ状態になったときに液濡れセンサー1を介してバッテリスタック15の電力が通電されると、保護素子11にバッテリスタック15からの電流が流れるように切り替え、保護素子11を作動させる。これにより、電流制御素子12は、バッテリスタック15の充放電電流経路を電流制御素子17,18のスイッチ動作によらず遮断するように制御する。
【0035】
以上のような構成からなるバッテリパック10において、保護素子11は、
図5(A)に示すような回路構成を有する。すなわち、保護素子11は、発熱体引出電極21を介して第1、第2の電極22,23間にわたって直列接続されたヒューズエレメント20と、ヒューズエレメント20の接続点を介して通電して発熱させることによってヒューズエレメント20を溶融する発熱抵抗体24とからなる回路構成である。また、保護素子11では、たとえば、ヒューズエレメント20が第1、第2の外部接続電極22a,23aを介してバッテリパック10の充放電電流経路上に直列接続され、発熱抵抗体24が発熱体給電電極25を介して電流制御素子12と接続される。保護素子11の第1の電極22は、第1の外部接続電極22aを介してバッテリスタック15の一方の開放端側に接続され、第2の電極23は、第2の外部接続電極23aを介してバッテリパック10の正極端子10a側に接続される。
【0036】
[溶断工程]
このような回路構成からなる液濡れセンサー1は、電池からの液漏れや水没等、バッテリパック10の電流経路を遮断する必要が生じた場合に、カバー部材8の導入口9を介して液体が浸入すると、反応部2の発熱によってサーミスタ3aが低抵抗化し、バッテリスタック15から通電された電流制御素子12によって保護素子11にバッテリスタック15の電力が供給される。これにより、保護素子11は、発熱抵抗体24が通電、発熱され、バッテリパック10の電流経路上に組み込まれたヒューズエレメント20が溶断される。したがって、バッテリパック10は、第1の電極22〜発熱体引出電極21〜第2の電極23の間を溶断させ(
図5(B))、バッテリパック10の電流経路を遮断することができる。また、ヒューズエレメント20が溶断することにより、発熱抵抗体24への給電も停止される。
【0037】
[FET省略型]
また、液濡れセンサー1を用いたバッテリパック10は、保護素子11の作動を制御するFETを省略し、液濡れセンサー1によって保護素子11を作動させてもよい。
図6に示すように、このバッテリパック10は、液濡れセンサー1の感温部3(サーミスタ3a)は、一端を保護素子11の発熱抵抗体24と接続され、他端をバッテリスタック15の開放端と接続されている。液濡れセンサー1は、常時サーミスタ3aの高抵抗により発熱抵抗体24への通電を規制している。
【0038】
そして、液濡れセンサー1は、電池からの液漏れや水没等、バッテリパック10の電流経路を遮断する必要が生じた場合に、カバー部材8の導入口9を介して液体が浸入すると、反応部2の発熱によってサーミスタ3aが低抵抗化し、保護素子11の発熱抵抗体24にバッテリスタック15の電力が供給可能となる。これにより、保護素子11は、発熱抵抗体24が通電、発熱され、バッテリパック10の電流経路上に組み込まれたヒューズエレメント20が溶断される。したがって、バッテリパック10は、第1の電極22〜発熱体引出電極21〜第2の電極23の間を溶断させ(
図5(B))、バッテリパック10の電流経路を遮断することができる。また、ヒューズエレメント20が溶断することにより、発熱抵抗体24への給電も停止される。
【0039】
なお、本発明の液濡れセンサー1は、リチウムイオン二次電池のバッテリパックに用いる場合に限らず、電気信号による電流経路の遮断を必要とする様々な用途にももちろん応用可能である。また、液濡れセンサー1は、サーミスタ3aの他にも感温部3を構成する温度依存性を有する電気特性を備えた各種電子部品を用いて、当該電気特性の変化に応じて、適宜、液濡れセンサー1と接続される電気回路の通電を制御することができる。
【0040】
[第1のスイッチ素子]
次いで、液濡れセンサー1を用いて形成されたスイッチ素子30について説明する。
図7は、スイッチ素子30の分解斜視図である。スイッチ素子30は、外部回路の通電経路上に配設されることにより当該外部回路の導通を遮断するものであり、液濡れセンサー1を内蔵することで、水没やバッテリ液漏れ等の水濡れ状態を検知することにより、適宜通電経路の遮断を行うものである。また、スイッチ素子30は、外部回路が形成された回路基板上にリフロー等により実装可能に形成されている。
【0041】
スイッチ素子30は、外部回路に接続されるヒューズエレメント31と、発熱抵抗体32と、液濡れセンサー1を構成する反応部2及び感温部3とを備える。また、スイッチ素子30は、ヒューズエレメント31や発熱抵抗体32、感温部3が設けられる絶縁基板33と、絶縁基板33上を覆うカバー部材34により筐体が形成される。カバー部材34には、反応部2に液体を導く導入口36が形成されている。以下、液漏れセンサー1の感温部3としてサーミスタ3aを用いた場合を例に説明する。
【0042】
[絶縁基板]
絶縁基板33は、例えば、アルミナ、ガラスセラミックス、ムライト、ジルコニアなどの絶縁性を有する部材を用いて、例えば略方形状に形成されている。絶縁基板33は、その他にも、ガラスエポキシ基板、フェノール基板等のプリント配線基板に用いられる材料を用いてもよい。
【0043】
絶縁基板33の相対向する両端部には、第1、第2の電極38,39が形成されている。第1、第2の電極38,39は、それぞれ、AgやCu等の導電パターンによって形成されている。また、第1、第2の電極38,39は、絶縁基板33の表面33aより、図示しないキャスタレーションを介して裏面33bに形成された第1、第2の外部接続電極38a,39aと連続されている。スイッチ素子30は、裏面33bに形成された第1、第2の外部接続電極38a,39aが、スイッチ素子30が実装される外部回路基板に設けられた接続電極に接続されることにより、ヒューズエレメント31が回路基板上に形成された電流経路の一部に組み込まれる。
【0044】
また、絶縁基板33には、例えば生石灰が配設、保持されることにより反応部2が形成される。また、絶縁基板33は、反応部2にサーミスタ3が重畳配置されることにより液濡れセンサー1が構成されている。
【0045】
[発熱抵抗体]
発熱抵抗体32は、比較的抵抗値が高く通電すると発熱する導電性を有する部材であって、例えばニクロム、W、Mo、Ru等又はこれらを含む材料からなる。発熱抵抗体32は、これらの合金あるいは組成物、化合物の粉状体を樹脂バインダ等と混合して、ペースト状にしたものを絶縁基板33上にスクリーン印刷技術を用いてパターン形成して、焼成する等によって形成することができる。
【0046】
発熱抵抗体32は、ヒューズエレメント31が重畳され、通電によって発熱するとヒューズエレメント31を溶断する。発熱抵抗体32は、一端がサーミスタ3aと接続されることにより、常時、通電及び発熱が規制されている。そして、発熱抵抗体32は、サーミスタ3aの電気抵抗値の低下により通電量が増加することにより発熱し、ヒューズエレメント31を溶断することができる。また、発熱抵抗体32は、ヒューズエレメント31が重畳されることにより電気的、熱的に接続されている。
【0047】
[ヒューズエレメント]
スイッチ素子30は、第1の電極38から第2の電極39に跨ってヒューズエレメント31が接続用ハンダ28により接続されている。ヒューズエレメント31は、通常使用時には第1、第2の電極38,39間を導通させ、スイッチ素子30が組み込まれた外部回路の電流経路の一部を構成する。そして、ヒューズエレメント31は、定格を超える電流が通電することによって自己発熱(ジュール熱)により溶断し、あるいは発熱抵抗体32の発熱により溶断し、第1、第2の電極38,39間を遮断する。
【0048】
ヒューズエレメント31は、所定の定格電流値を有し、発熱抵抗体32の発熱や定格電流値を超える電流が通電されると自己発熱により速やかに溶断する。ヒューズエレメント31は、ニッケル、錫、鉛から選択されるいずれか1種を主成分とすることが好ましい。なお、本明細書において、主成分とは、材料全質量を基準として、50wt%以上である成分をいう。
【0049】
また、ヒューズエレメント31は、低融点金属層41と高融点金属層42とを積層させた積層構造を有していてもよい。低融点金属としては、Pbフリーハンダなどのハンダを用いることが好ましく、高融点金属としては、Ag、Cu又はこれらを主成分とする合金などを用いることが好ましい。高融点金属と低融点金属とを含有することによって、スイッチ素子30をリフロー実装する場合に、リフロー温度が低融点金属層の溶融温度を超えて、低融点金属が溶融しても、ヒューズエレメント31として溶断するに至らない。
【0050】
図8に示すように、ヒューズエレメント31は、内層を低融点金属とし、外層を高融点金属としてもよい。内層の低融点金属層41の全表面を外層の高融点金属層42で被覆した可溶導体を用いることにより、リフロー温度よりも融点の低い低融点金属を用いた場合でも、リフロー実装時に、内層の低融点金属の外部への流出を抑制することができる。また、溶断時も、内層の低融点金属が溶融することにより、外層の高融点金属を溶食(ハンダ食われ)し、速やかに溶断することができる。
【0051】
サーミスタ3aは、一端が発熱抵抗体32と接続され、他端が第1の発熱体電極43と接続されている。第1の発熱体電極43は、絶縁基板33の表面33a上に形成され、キャスタレーションを介して絶縁基板33の裏面33bに形成された第1の発熱体給電電極(図示せず)と連続されている。そして、サーミスタ3aは、高い電気抵抗によって発熱抵抗体32への通電を規制している。
【0052】
そして、スイッチ素子30は、反応部2が液体と接触することにより発熱すると、サーミスタ3aの電気抵抗値が低下することにより、発熱抵抗体32への通電量を増加させ、発熱抵抗体32の発熱によってヒューズエレメント31を溶断する。これにより、スイッチ素子30は、外部回路の通電経路を遮断することができる。
【0053】
また、上述したように、液濡れセンサー1は、反応部2とサーミスタ3aとが重畳して配置されている。これにより反応部2とサーミスタ3aとが熱的に密接に接続され、反応部2が発熱することにより、速やかにサーミスタ3aの電気抵抗値を低下させることができる。
【0054】
[カバー部材]
また、スイッチ素子30は、ヒューズエレメント31が設けられた絶縁基板33の表面33a上に、内部を保護するとともに溶融したヒューズエレメント31の飛散を防止するカバー部材34が取り付けられている。カバー部材34は、各種エンジニアリングプラスチック、セラミックス等の絶縁性を有する部材により形成することができる。カバー部材34は、絶縁基板33の表面33a上に絶縁性接着剤によって接続され、これにより、ヒューズエレメント31を覆う。
【0055】
また、カバー部材34は、絶縁基板33に設けられた反応部2に液体を導入する導入口36が形成されている。
【0056】
このようなスイッチ素子30は、
図9(A)に示すような回路構成を有する。すなわち、スイッチ素子30は、第1、第2の電極38,39間にわたって直列接続されたヒューズエレメント31と、ヒューズエレメント31の接続点を介して通電して発熱させることによってヒューズエレメント31を溶融する発熱抵抗体32とからなる回路構成である。また、スイッチ素子30は、第1の発熱体電極43、感温部3(サーミスタ3a)、発熱抵抗体32、及びヒューズエレメント31に至る発熱抵抗体32への通電経路が形成される。また、スイッチ素子30は、第1、第2の電極38,39が電源回路等の外部回路の開放端に接続されることで、ヒューズエレメント31が当該外部回路の通電経路上に組み込まれる。
【0057】
スイッチ素子30は、
図10に示すように、例えば上述したリチウムイオン二次電池のバッテリパック10内の回路に組み込んで用いることができる。スイッチ素子30は、第1の発熱体電極43が発熱抵抗体32に通電させるバッテリスタック15の一方の開放端と接続されるとともに、サーミスタ3aによって発熱抵抗体32への通電が規制されている。また、スイッチ素子30は、第1の電極38がバッテリスタック15の他方の開放端側に接続され、第2の電極39がバッテリパック10の正極端子10a側に接続されることで、ヒューズエレメント31が当該外部回路の通電経路上に組み込まれる。
【0058】
そして、スイッチ素子30は、カバー部材34に設けられた導入口36より液体が浸入し、反応部2が液体と接触することにより発熱すると、サーミスタ3aの電気抵抗値が低下することにより、バッテリスタック15から通電され、発熱抵抗体32を発熱させることができる。これにより、スイッチ素子30は、バッテリパック10の電流経路上に組み込まれたヒューズエレメント31が溶融され、ヒューズエレメント31の溶融導体が、濡れ性の高い発熱体引出電極21及び第1、第2の電極38,39に引き寄せられることによりヒューズエレメント31が溶断される。したがって、
図9(B)に示すように、スイッチ素子30は、バッテリスタック15の充放電経路を遮断することができる。
【0059】
ここで、スイッチ素子30は、ヒューズエレメント31が発熱抵抗体32と接続されることにより、発熱抵抗体32への通電経路の一部を構成する。したがって、スイッチ素子30は、ヒューズエレメント31が溶融し、外部回路との接続が遮断されると、発熱抵抗体32への通電経路も遮断されるため、発熱を停止させることができる。
【0060】
[撥水処理]
なお、スイッチ素子30は、
図7に示すように、反応部2以外の場所、又は反応部2及びその近傍以外の場所に、撥水処理部35を設けてもよい。例えばスイッチ素子30は、反応部2、発熱抵抗体32、第1、第2の電極38,39、第1の発熱体電極43、サーミスタ3aを除く絶縁基板33の表面33aの露出領域に、撥水処理部35が設けられる。
【0061】
撥水処理部35は、例えばフッ素系コーティング剤の塗布、ソルダーペーストコーティング等、公知の手法により形成することができる。
【0062】
これにより、スイッチ素子30は、絶縁基板33上の液体を非撥水領域である反応部2に導くことができ、サーミスタ3aの加熱を促進してヒューズエレメント31の溶断を促進させることができる。
【0063】
[FETスイッチング]
また、スイッチ素子30は、
図11に示すように、感温部3(サーミスタ3a)をバッテリスタック15とFET等の電流制御素子12との間に接続し、発熱抵抗体32の一端を電流制御素子12と接続してもよい。この場合、サーミスタ3aは、一端が第3の外部接続電極44を介してバッテリスタック15の開放端と接続されるとともに、他端が第4の外部接続電極45を介して電流制御素子12と接続されている。そして、スイッチ素子30は、常時サーミスタ3aの高抵抗により、バッテリスタック15から電流制御素子12への通電を規制している。また、発熱抵抗体32は、一端を第1の発熱体電極43を介して電流制御素子12と接続され、バッテリスタック15からの通電が規制されている。
【0064】
そして、スイッチ素子30は、バッテリセルの液漏れや水没等の液濡れ状態が発生するとカバー部材34に設けられた導入口36より液体が浸入し、反応部2が液体と接触することにより発熱する。これにより、サーミスタ3aの電気抵抗値が低下することにより、バッテリスタック15から電流制御素子12へ通電される。電流制御素子12は、発熱抵抗体32にバッテリスタック15の電力が供給されるように切り替えられ、これにより、スイッチ素子30は、発熱抵抗体24が通電、発熱され、バッテリパック10の電流経路上に組み込まれたヒューズエレメント31が溶断され、バッテリパック10の電流経路を遮断することができる。また、ヒューズエレメント31が溶断することにより、発熱抵抗体32への給電も停止される。
[絶縁層/発熱体引出電極]
【0065】
なお、
図12に示すように、スイッチ素子30は、発熱抵抗体32を覆うように絶縁層50を設けるとともに、この絶縁層50を介して発熱抵抗体32に対向するように発熱体引出電極51を形成してもよい。発熱体引出電極51はヒューズエレメント31が重畳されることにより接続され、これにより発熱抵抗体32は、絶縁層50及び発熱体引出電極51を介してヒューズエレメント31と重畳される。絶縁層50は、発熱抵抗体32の保護及び絶縁を図るとともに、発熱抵抗体32の熱を効率よくヒューズエレメント31へ伝えるために設けられ、例えばガラス層からなる。なお、スイッチ素子30は、発熱抵抗体32の熱を効率良くヒューズエレメント31に伝えるために、発熱抵抗体32と絶縁基板33の間にも絶縁層50を積層しても良い。
【0066】
この場合、発熱抵抗体32は、一端が発熱体引出電極51と接続され、他端がサーミスタ3aを介して第1の発熱体電極43と接続されている。発熱体引出電極51は、絶縁基板33の表面33a上に形成されるとともに発熱抵抗体32と接続された下層部51aと、発熱抵抗体32と対向して絶縁層50上に積層されるとともにヒューズエレメント31と接続される上層部51bとを有する。これにより、発熱抵抗体32は、発熱体引出電極51を介してヒューズエレメント31と電気的に接続されている。また、発熱抵抗体32は、絶縁層50及び発熱体引出電極51を介してヒューズエレメント31と熱的に接続されている。なお、発熱体引出電極51は、絶縁層50を介して発熱抵抗体32に対向配置されることにより熱せられ、ヒューズエレメント31を溶融させるとともに、溶融導体を凝集しやすくすることができる。
【0067】
また、スイッチ素子30は、ヒューズエレメント31が発熱体引出電極51と接続されることにより、発熱抵抗体32への通電経路の一部を構成する。したがって、スイッチ素子30は、ヒューズエレメント31が溶融し、外部回路との接続が遮断されると、発熱抵抗体32への通電経路も遮断されるため、発熱を停止させることができる。
【0068】
[通電経路/給電経路]
また、本発明が適用されたスイッチ素子は、ヒューズエレメント31の通電経路と、発熱抵抗体32への給電経路を分けてもよい。例えば、
図13に示すスイッチ素子30は、発熱抵抗体32が絶縁層50を介してヒューズエレメント31と重畳されることで、電気的にはヒューズエレメント31と独立し、熱的に接続される。また、発熱抵抗体32は、一端がサーミスタ3aと接続され、他端が第2の発熱体電極52と接続されている。第2の発熱体電極52は、絶縁基板33の表面33a上に形成され、キャスタレーションを介して絶縁基板33の裏面33bに形成された第2の発熱体給電電極(図示せず)と連続されている。
【0069】
なお、
図13に示すスイッチ素子30は、発熱抵抗体32を、第1、第2の電極38,39が形成された絶縁基板33の表面33aと反対側の裏面33bに形成してもよく、あるいは、絶縁基板33の表面33aにヒューズエレメント31やサーミスタ3aと隣接して形成してもよい。また、スイッチ素子30は、発熱抵抗体32を、絶縁基板33の内部に形成してもよい。
【0070】
このようなスイッチ素子30は、
図14に示すように、第1の発熱体電極43、感温部3(サーミスタ3a)、発熱抵抗体32、第2の発熱体電極52に至る発熱抵抗体32への給電経路53が形成される。この発熱抵抗体32の給電経路53は、第1、第2の発熱体電極43,52が給電回路に接続されるとともに、サーミスタ3aによって通電が規制されている。また、スイッチ素子30は、第1、第2の電極38,39間にわたってヒューズエレメント31の通電経路54が形成される。この通電経路54は、第1、第2の電極38,39が外部回路の開放端に接続されることで、当該外部回路の通電経路上に組み込まれる。
【0071】
そして、スイッチ素子30は、反応部2が液体と接触することにより発熱すると、サーミスタ3aの電気抵抗値が低下することにより、給電経路53を通電させ、発熱抵抗体32を発熱させることができる。これにより、スイッチ素子30は、ヒューズエレメント31が発熱抵抗体32の熱で溶断し、外部回路を遮断することができる。
【0072】
また、スイッチ素子30は、
図15に示すように、発熱抵抗体32への給電経路31とヒューズエレメント31の通電経路32とを並列させてもよい。
図15に示す構成においても、スイッチ素子30は、反応部2が液体と接触することにより発熱すると、サーミスタ3aの電気抵抗値が低下することにより、給電経路31を通電させ、発熱抵抗体32を発熱させることができる。これにより、スイッチ素子30は、ヒューズエレメント31が発熱抵抗体32の熱で溶断し、外部回路を遮断することができる。
【0073】
なお、上述した第1、第2の電極38,39、発熱体引出電極51及び第1、第2の発熱体電極43,52は、例えばAgやCu等の導電パターンによって形成され、適宜、表面にSnメッキ、Ni/Auメッキ、Ni/Pdメッキ、Ni/Pd/Auメッキ等の保護層が形成されていることが好ましい。これにより、表面の酸化を防止するとともに、ヒューズエレメント31の接続用ハンダ28等の接続材料による第1、第2の電極38,39、発熱体引出電極51及び第1、第2の発熱体電極43,52の浸食を抑制することができる。
【0074】
[筐体]
次いで、液濡れセンサー1及びスイッチ素子30の筐体について説明する。以下では、スイッチ素子30の筐体について説明するが、液濡れセンサー1についても同様の構成を有することができる。上述したように、スイッチ素子30は、絶縁基板33と、絶縁基板33上に接続されたカバー部材34によって筐体が構成されている。スイッチ素子30は、カバー部材34を設けることにより、ヒューズエレメント31、反応部2及び感温部3を外部より受ける機械的な外乱等から保護するとともに、ヒューズエレメント31が自己発熱によりアーク放電の発生を伴って溶断した際に、溶融金属の周囲への飛散を防止することができる。
【0075】
カバー部材34には、反応部2に液体を導く導入口36が設けられている。スイッチ素子30は、カバー部材34に設けられた導入口36を介して液体が反応部2へ流入することにより、ヒューズエレメント31を不可逆的に遮断させる。
【0076】
カバー部材34は、例えば
図16(A)に示すように、多面体からなり、一の面に、一の導入口36が設けられている。スイッチ素子30は、外部回路が形成された回路基板に実装されるチップ部品として形成された場合、筐体の実装面と反対側のカバー部材34の天面34aに導入口36が設けられることが好ましい。天面34aに導入口36が設けられることにより、水濡れ状態になると効率的に液体を筐体内に取り込むとともに反応部2に保持し、ヒューズエレメント31を遮断させることができる。もちろんカバー部材34は、天面34a以外の面、例えば側面34bに導入口36を形成してもよい。また、カバー部材34は、
図16(B)に示すように、天面34aに複数の導入口36を形成してもよく、あるいは側面34bに複数の導入口36を形成してもよい。カバー部材34は、複数の導入口36を設けることにより、より液体を反応部2に導入しやすくすることができる。
【0077】
また、カバー部材34は、例えば
図16(C)に示すように、多面体からなり、複数の面、例えば天面34aと側面34bに導入口36を設けてもよい。また、カバー部材34は、
図16(D)に示すように、複数の面にそれぞれ一又は複数の導入口36を形成してもよい。
【0078】
また、スイッチ素子30は、カバー部材34を筒状に形成し、導入口36を任意の位置に、任意の個数だけ形成してもよい。
図17はカバー部材34を円筒状に形成し、全周にわたって複数の導入口36を形成したスイッチ素子30の外観斜視図である。カバー部材34は、中空の多角柱状に形成してもよい。カバー部材34を中空の円柱状、角柱状に形成することにより、スイッチ素子30の配置に応じた面や角度、液体の浸入経路等に左右されずに導入口36を形成することができる。
【0079】
なお、
図17に示すスイッチ素子30は、ヒューズエレメント31に通電するための第1の外部接続電極38a及び第2の外部接続電極39aと、第1の発熱体電極43と接続された第1の発熱体給電電極43aがカバー部材34の外周面より突出して形成されている。
【0080】
また、カバー部材34は、導入口36より浸入した液体を排出する排出口を形成してもよい。
図18は、多面体からなるカバー部材34の天面34aに導入口36を形成するとともに、側面34bに液体を排出する排出口37を形成したスイッチ素子30を示す外観斜視図である。排出口37を形成することにより、液体が多量にスイッチ素子30内に浸入することによって反応部2及び感温部3が冷却され、サーミスタ3aの抵抗値の低下が阻害される等、感温部3の電気特性の変化が阻害されて、ヒューズエレメント31の溶断作用が遅れる等の事態を防止することができる。
【0081】
なお、排出口37は、導入口36よりも小さく形成されることが好ましい。排出口37を相対的に小さくすることで、スイッチ素子30内に浸入した液体が過剰に排出され、却って反応部2の発熱作用や、ヒューズエレメント31の溶断が遅延することを防止することができる。
【0082】
また、排出口37は、反応部2が設けられた位置と同じ高さ、又は反応部2が設けられた位置よりも上方に設けられていることが好ましい。例えば、
図19に示すように、カバー部材34を多面形状に形成するとともに、回路基板に実装されるチップ部品として形成された場合、排出口37は、カバー部材34の側面34bの反応部2が設けられた位置と同じ高さ又は上方に設けられることが好ましい。これにより、スイッチ素子30内に浸入した液体は、反応部2より上方に浸入した分が排水され、反応部2には残留するため、反応部2の作用を確保するとともに、スイッチ素子30内に多量に浸入した液体によって反応部2及び感温部3が冷却され、反応部2の発熱作用や、ヒューズエレメント31の溶断が遅延することを防止することができる。
【0083】
なお、液体を導入する導入口36及び液体を排出する排出口37は、円形、矩形等、その形状は問わない。また、導入口36及び排出口37は、
図20に示すように、スリット状に形成してもよい。導入口36をスリット状に形成することにより、より広範に液体を導入させ、速やかに反応部2を反応させてヒューズエレメント31を溶断させることができる。また、排出口37をスリット状に形成することにより、スイッチ素子30内に浸入した余剰の液体を速やかに排水することができ、反応部2の発熱作用やヒューズエレメント31の溶断の進行が遅延することを防止することができる。
【0084】
また、カバー部材34は、天面34aにスリット状の導入口36を設けるとともに、反応部2へ液体を導く導入溝40を設けてもよい。
図21(A)(B)に示すように、導入溝40は、溝壁40aが天面34aに形成された導入口36から反応部2の近傍まで延在される。これにより、スイッチ素子30は、導入口36に浸入した液体が反応部2以外の場所に流入することなく、確実に反応部2へ導くことができる。また、スイッチ素子30は、導入口36に浸入した液体が筐体内に散逸し、反応部2の発熱作用やヒューズエレメント31の溶断の進行が遅延することを防止することができる。
【0085】
また、カバー部材34は、
図21(B)に示すように、導入溝40を側面34bまで延ばし、側面34bに形成された排出口37と連続させてもよい。これにより、スイッチ素子30は、導入口36から浸入した液体を効率よく反応部2に導くとともに、過剰な液体を効率よく排出口37から排水することができる。
【0086】
なお、
図22(A)(B)に示すように、導入溝40は、複数形成してもよい。導入溝40を複数形成することにより、反応部2の全幅にわたって液体を導くことができる。
【0087】
また、
図23に示すように、導入溝40は、天面34aに臨む導入口36の開口部から反応部2が設けられた内部にかけて漸次狭小化させてもよい。導入溝40を反応部2に近づくにつれて狭小化することにより、導入口36の開口部から浸入した液体を、毛細管現象によって効率よく反応部2に導くことができる。
【0088】
また、スイッチ素子30は、反応部2以外の場所に撥水処理を施し、液体を反応部2に誘導してもよい。例えば
図24に示すように、スイッチ素子30は、導入口36、又は導入口36及び導入溝40の溝壁40aに撥水処理が施された撥水処理部46を形成してもよい。撥水処理部46は、例えばフッ素系コーティング剤の塗布、ソルダーペーストコーティング等、公知の手法により形成することができる。
【0089】
これによりスイッチ素子30は、導入口36より浸入した液体を効率よく反応部2に導くことができる。また、導入口36や導入溝40に撥水処理を施すことにより、スイッチ素子30を作動させるべき水濡れ状態以外では、少量の液体を弾いてスイッチ素子30内に浸入させないことから、誤作動を防止し、センサー又はスイッチとしての信頼性を確保することもできる。
【0090】
また、スイッチ素子30は、カバー部材34の内壁に撥水処理を施してもよい。カバー部材34の内壁に撥水処理を施すことによっても、スイッチ素子30内に浸入した液体を効率良く反応部2に導き、速やかに反応部2を作用させることができる。
【0091】
また、スイッチ素子30は、
図25に示すように、導入口36を液体で溶解する水溶性封止材47で形成されたシート体を天面34aに貼付することにより閉塞してもよい。また、スイッチ素子30は、
図26に示すように、導入溝40を液体で溶解する水溶性封止材47で閉塞してもよい。水溶性封止材47としては、例えば、寒天,ゼラチンなどの天然ポリマー、セルロース,でんぷんなどの半合成ポリマー、ポリビニルアルコールなどの合成ポリマー等が挙げられる。これらは、液体と接触することにより収縮あるいは溶解する。なお、高分子量になると溶解せず膨張する性質が強くなるため、重合度を調整して用いることが好ましい。また、液溶性材料として角砂糖のような水溶性の固形物を用いた場合、液体と接触することにより溶解、あるいは体積が減少する。
【0092】
また、液体としてバッテリセルに充填されたエチレンカーボネート等の電解液を想定し、電解液漏れに対応して作動するスイッチ素子の場合、水溶性封止材47の材料としては、ABS、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、あるいはPET、PTT、PEN等の飽和ポリエステルなどを用いることができる。これらの水溶性材料も、高分子量になると溶解速度が落ち、スイッチ素子30として反応速度が低下する場合もあるため、反応速度を優先する場合は、重合度を調整して用いることが好ましい。
【0093】
導入口36や導入溝40を水溶性封止材47で閉塞することにより、スイッチ素子30を作動させるべき水濡れ状態以外では、少量の液体を弾いてスイッチ素子30内に浸入させないことから、誤作動を防止し、センサー又はスイッチとしての信頼性を確保することもできる。
【0094】
[第2のスイッチ素子]
次いで、第2のスイッチ素子について説明する。なお、以下の説明において、上述した液濡れセンサー1及びスイッチ素子30と同じ部材については同一の符号を付してその詳細を省略する。
図27は、スイッチ素子60の分解斜視図である。スイッチ素子60は、外部回路の通電経路上に配設されることにより当該外部回路の導通を遮断するものである。スイッチ素子60は、外部回路に接続されるヒューズエレメント61と、液体に触れることで発熱する反応部2とを備え、反応部2の発熱によってヒューズエレメント61を溶断する。
【0095】
また、スイッチ素子60は、ヒューズエレメント61及び反応部2が設けられる絶縁基板33と、絶縁基板33上を覆うカバー部材34により筐体が形成される。カバー部材34には、反応部2に液体を導く導入口36が形成されている。絶縁基板33の相対向する両端部には、第1、第2の電極38,39が形成されている。スイッチ素子60は、第1、第2の電極38,39と連続する第1、第2の外部接続電極38a,39aが、スイッチ素子60が実装される外部回路基板に設けられた接続電極に接続されることにより、ヒューズエレメント61が回路基板上に形成された電流経路の一部に組み込まれる。
【0096】
また、絶縁基板33には、例えば生石灰が配設、保持されることにより反応部2が形成される。反応部2の近傍にはヒューズエレメント61が配置されることにより、反応部2とヒューズエレメント61とが熱的に接続されている。例えば反応部2は、ヒューズエレメント61が重畳して配置されている。
【0097】
[ヒューズエレメント]
スイッチ素子60は、第1の電極38から第2の電極39に跨ってヒューズエレメント61が接続用ハンダにより接続されている。ヒューズエレメント61は、通常使用時には第1、第2の電極38,39間を導通させ、スイッチ素子60が組み込まれた外部回路の電流経路の一部を構成する。そして、ヒューズエレメント61は、定格を超える電流が通電することによって自己発熱(ジュール熱)により溶断し、あるいは反応部2の発熱により溶断し、第1、第2の電極38,39間を遮断する。
【0098】
ヒューズエレメント61は、所定の定格電流値を有し、反応部2の発熱や定格電流値を超える電流が通電されると自己発熱により速やかに溶断する。ヒューズエレメント61は、ニッケル、錫、鉛から選択されるいずれか1種を主成分とすることが好ましい。なお、ヒューズエレメント61は、上述したヒューズエレメント31と同様に、低融点金属層41と高融点金属層42とを積層させた積層構造を有していてもよい。
【0099】
このようなスイッチ素子60は、
図28(A)に示すような回路構成を有する。すなわち、スイッチ素子60は、第1、第2の電極38,39間にわたって直列接続されたヒューズエレメント61と、液濡れにより発熱することによってヒューズエレメント61を溶融する反応部2とからなる回路構成である。また、スイッチ素子60は、第1、第2の電極38,39が電源回路等の外部の電気回路4の開放端に接続されることで、ヒューズエレメント61が当該電気回路4の通電経路上に組み込まれ、定格電流を流し、電気回路4を通電させている。
【0100】
そして、スイッチ素子60は、ヒューズエレメント61に定格を超える電流が流れた場合には自己発熱(ジュール熱)により、また、スイッチ素子60の内部に液体が浸入した場合には反応部2の発熱により、ヒューズエレメント61が溶断し、電気回路4を遮断する(
図28(B))。
【0101】
スイッチ素子60は、
図29に示すように、例えば上述したリチウムイオン二次電池のバッテリパック10内の回路に組み込んで用いることができる。スイッチ素子60は、第1の電極38がバッテリスタック15の他方の開放端側に接続され、第2の電極39がバッテリパック10の正極端子10a側に接続されることで、ヒューズエレメント61が当該外部回路の通電経路上に組み込まれる。
【0102】
そして、スイッチ素子60は、カバー部材34に設けられた導入口36より液体が浸入し、反応部2が液体と接触することにより発熱すると、バッテリパック10の電流経路上に組み込まれたヒューズエレメント61が溶融され、ヒューズエレメント61の溶融導体が、濡れ性の高い第1、第2の電極38,39に引き寄せられることによりヒューズエレメント61が溶断される。したがって、
図28(B)に示すように、スイッチ素子60は、バッテリスタック15の充放電経路を遮断することができる。
【0103】
[撥水処理]
なお、
図27に示すように、スイッチ素子60は、上述したスイッチ素子30と同様に、反応部2以外の場所、又は反応部2及びその近傍以外の場所に、撥水処理部35を設けてもよい。例えばスイッチ素子60は、反応部2、第1、第2の電極38,39を除く絶縁基板33の表面33aの露出領域に、撥水処理部35が設けられる。
【0104】
これにより、スイッチ素子60は、絶縁基板33上の液体を非撥水領域である反応部2に導くことができ、ヒューズエレメント61の加熱を促進して溶断を促進させることができる。
【0105】
なお、スイッチ素子60においても、上述したスイッチ素子30と同様に、筐体を構成するカバー部材34は、多面体からなり、一の面に、一の導入口36が設けられている(
図16(A)参照)。また、カバー部材34は、天面34aに複数の導入口36を形成してもよく(
図16(B)参照)、あるいは側面34bに複数の導入口36を形成してもよい。また、カバー部材34は、複数の面、例えば天面34aと側面34bに導入口36を設けてもよい(
図16(C)参照)。また、カバー部材34は、複数の面にそれぞれ一又は複数の導入口36を形成してもよい(
図16(D)参照)。
【0106】
また、スイッチ素子60は、スイッチ素子30と同様に、カバー部材34を筒状に形成し、導入口36を任意の位置に、任意の個数だけ形成してもよい(
図17参照)。
【0107】
また、スイッチ素子60は、スイッチ素子30と同様に、カバー部材34に導入口36より浸入した液体を排出する排出口37を形成してもよい(
図18参照)。また、排出口37は、反応部2が設けられた位置と同じ高さ、又は反応部2が設けられた位置よりも上方に設けられていることが好ましい(
図19参照)。なお、液体を導入する導入口36及び液体を排出する排出口37は、円形、矩形等、その形状は問わない。また、導入口36及び排出口37はスリット状に形成してもよい(
図20参照)。
【0108】
また、スイッチ素子60は、スイッチ素子30と同様に、カバー部材34の天面34aにスリット状の導入口36を設けるとともに、反応部2へ液体を導く導入溝40を設けてもよい(
図21(A)(B)参照)。
【0109】
なお、導入溝40は、複数形成してもよい(
図22(A)(B)参照)。また、導入溝40は、天面34aに臨む導入口36の開口部から反応部2が設けられた内部にかけて漸次狭小化させてもよい(
図23参照)。導入溝40を反応部2に近づくにつれて狭小化することにより、導入口36の開口部から浸入した液体を、毛細管現象によって効率よく反応部2に導くことができる。
【0110】
また、スイッチ素子60は、スイッチ素子30と同様に、反応部2以外の場所に撥水処理を施し、液体を反応部2に誘導してもよい(
図24参照)。スイッチ素子60は、導入口36、又は導入口36及び導入溝40の溝壁40aに撥水処理が施された撥水処理部46を形成してもよい。撥水処理部46は、例えばフッ素系コーティング剤の塗布、ソルダーペーストコーティング等、公知の手法により形成することができる。
【0111】
これによりスイッチ素子60は、導入口36より浸入した液体を効率よく反応部2に導くことができる。また、導入口36や導入溝40に撥水処理を施すことにより、スイッチ素子60を作動させるべき水濡れ状態以外では、少量の液体を弾いてスイッチ素子60内に浸入させないことから、誤作動を防止し、センサー又はスイッチとしての信頼性を確保することもできる。
【0112】
また、スイッチ素子60は、スイッチ素子30と同様に、カバー部材34の内壁に撥水処理を施してもよい。カバー部材34の内壁に撥水処理を施すことによっても、スイッチ素子60内に浸入した液体を効率良く反応部2に導き、速やかに反応部2を作用させることができる。
【0113】
また、スイッチ素子60は、スイッチ素子30と同様に、導入口36を液体で溶解する水溶性封止材47で形成されたシート体を天面34aに貼付することにより閉塞してもよい(
図25参照)。また、スイッチ素子60は、スイッチ素子30と同様に、導入溝40を液体で溶解する水溶性封止材47で閉塞してもよい(
図26参照)。
【0114】
導入口36や導入溝40を水溶性封止材47で閉塞することにより、スイッチ素子60を作動させるべき水濡れ状態以外では、少量の液体を弾いてスイッチ素子60内に浸入させないことから、誤作動を防止し、センサー又はスイッチとしての信頼性を確保することもできる。