【課題】異方性導電接続の際、ショートの発生が抑制され、しかも導電粒子の捕捉性を低下させず、導電粒子の良好な押し込みを可能として良好な初期導通性のみならず良好な導通信頼性を示す異方性導電フィルムを提供する。
【解決手段】異方性導電フィルムは、絶縁性バインダ中にそれぞれ複数の導電粒子から構成される第1導電粒子群と第2導電粒子群とを含んでいる。第1導電粒子群と第2導電粒子群とは、異方性導電フィルムの厚み方向において互いに相違し且つ面方向に平行な第1領域と第2領域とにそれぞれ存在している。しかも、第1導電粒子群と第2導電粒子群とは、導電粒子の存在状態が互いに相違している。
第1導電粒子群と第2導電粒子群とは、導電粒子の個数密度もしくは質量の観点からの存在量、導電粒子の平均粒子径、導電粒子の硬度もしくは圧縮強度、導電粒子の表面形状、導電粒子の表面材質、導電粒子の配置、導電粒子を分散している絶縁バインダの溶融粘度もしくは組成の点で、導電粒子の存在状態が互いに相違している請求項1記載の異方性導電フィルム。
異方性導電フィルムの厚み方向において第1領域及び第2領域と互いに相違し且つ面方向に平行で導電粒子を含まない第3領域を更に有する請求項1〜6のいずれかに記載の異方性導電フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の異方性導電フィルムの例を図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、各図中、同一符号は、同一又は同等の構成要素を表している。
【0013】
<<異方性導電フィルムの全体構成>>
図1は、本発明の一実施例の異方性導電フィルム100の断面図である。この異方性導電フィルム100は、絶縁性バインダ1中にそれぞれ複数の導電粒子2から構成される第1導電粒子群10と第2導電粒子群20とが含まれている。これらの導電粒子群10、20はそれぞれ、異方性導電フィルム100の厚み方向において互いに相違し且つ面方向に平行な第1領域R1と第2領域R2とに存在している。本発明では、第1導電粒子群10と第2導電粒子群20とは、導電粒子2の存在状態が全体から見て互いに相違している。
【0014】
<導電粒子2の存在状態>
本発明において、第1導電粒子群10と第2導電粒子群20とは、導電粒子2の存在状態が互いに相違していることが必要である。これは、一方の導電粒子群に由来する異方性導電フィルムの欠点を他方の導電粒子群で解消させるためである。このような導電粒子2の存在状態の具体例としては、導電粒子2の個数密度もしくは質量の観点からの存在量、導電粒子2の平均粒子径、導電粒子2の硬度もしくは圧縮強度、導電粒子2の表面形状、導電粒子2の表面材質(金属メッキ膜あるいは絶縁膜)、導電粒子2の配置、導電粒子2を分散している絶縁性バインダ1の溶融粘度もしくは組成等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
これらの導電粒子2の存在状態の相違を示す大小関係、高低関係、前後関係、あるいは材料関係等について、いずれの導電粒子群を他方の導電粒子群に優先させるか(例えば、平均粒子径について、一方よりも他方の方を大きくするか)については、適宜選択することができる。具体的には、第1導電粒子群10と第2導電粒子群20とで、導電粒子2の平均粒子径、硬さ等は同じであるが、個数密度が異なれば、全体として導電粒子2の存在状態が互いに相違しているといえる。
【0016】
なお、一つの導電粒子群の中で、2種以上の導電粒子を併用してもよいが、異なる導電粒子群で識別が可能なように存在することが好ましい。
【0017】
(導電粒子の個数密度)
導電粒子2の個数密度は、第1導電粒子群10と第2導電粒子群20とで同じであってもよく、相違していてもよいが、対向端子間への導電粒子の捕捉性を高める観点から、第1導電粒子群10では好ましくは5000〜40000個/mm
2、より好ましくは10000〜30000個/mm
2であり、また、導電粒子の重畳による接続の不良を回避する観点から、第2導電粒子群20では好ましくは1000〜20000個/mm
2、より好ましくは2000〜10000個/mm
2である。しかも、導電粒子数の削減と捕捉の確実性を両立させる観点から、第1導電粒子群10における導電粒子2の個数密度は、第2導電粒子群20における導電粒子の個数密度の好ましくは2〜10倍、より好ましくは3〜5倍である。ここで、個数密度は、金属顕微鏡において平面視で観察し計測するとともに、SEMなどの電子顕微鏡から断面を計測することにより測定することができる。
【0018】
(導電粒子の平均粒子径)
導電粒子2の平均粒子径は、第1導電粒子群10と第2導電粒子群20とで同じであってもよく、相違していてもよいが、異方性導電接続の安定性の観点から、好ましくは1〜100μmであり、CV値は好ましくは25%以内である。平均粒子径は、画像型の粒子分布測定装置や金属顕微鏡の観察結果を計測ソフト(例えば、WinROOF、三谷商事(株))を用いて算出することができる。
【0019】
導電粒子2の平均粒子径が、第1導電粒子群10と第2導電粒子群20とで同じである場合、第1導電粒子群10における導電粒子捕捉性が不十分であっても、第2導電粒子群20における導電粒子捕捉性で補うことが可能になるという効果が期待できる。
【0020】
また、導電粒子2の平均粒子径が、第1導電粒子群10と第2導電粒子群20とで相違する場合、対向する端子同士を異方性導電接続する際に、対向する端子の少なくとも一方が平滑ではなくても良好な導通信頼性を確保することができるという効果が期待できる。これは、対向端子面の少なくとも一方が平滑ではない状態であるため、比較的大きい導電粒子が端子間に挟み込まれ、それらが導通の安定性に寄与することが期待できるからである。また、異方性導電接続時の樹脂流動の挙動を容易に確認できるという効果も期待できる。これは、第1導電粒子群10と第2導電粒子群20とが、異方性導電フィルムの厚み方向で異なる領域に存在するため、異方性導電接続された後の状態から、樹脂流動の挙動を容易に推測することが可能になるためである。従って、厚み方向で異なる領域にある第1導電粒子群10と第2導電粒子群20のそれぞれの導電粒子の挙動を比較することで、異方性導電接続の適否を推定することは、再現性が不十分な樹脂流動やボイド発生の挙動だけから推定することに比べより容易になることが期待できる。
【0021】
(導電粒子の硬さ)
導電粒子2の硬さは、第1導電粒子群10と第2導電粒子群20とで同じであってもよく、相違していてもよい。ここで、導電粒子2の平均粒子径との関連でいえば、平均粒子径が相違する導電粒子2を使用した場合には、比較的大きい導電粒子の硬さは、比較的小さい導電粒子よりも柔らかいことが好ましいが、十分な圧縮が見込まれ、異方性導電接続を阻害しないのであれば、同じ硬さであってもよい。
【0022】
導電粒子2としては、従来公知の異方性導電フィルムに用いられているものの中から適宜選択して使用することができ、ニッケル、コバルト、銀、銅、金、パラジウム、ハンダなどの金属粒子や、樹脂コア金属メッキ粒子を使用することができる。金属メッキ材料としては、銅、ニッケル、金、銀、ハンダ等が挙げられる。これらの金属メッキは多層化することもできる。金属メッキ厚としては、通常50〜300nmである。中でも導電粒子2としては、導通の信頼性や安定性の観点から樹脂コア金属メッキ粒子を好ましく使用することができ、以下に樹脂コア金属メッキ粒子の硬さについて説明する。
【0023】
樹脂コア金属メッキ粒子の硬さは、金属メッキ厚が樹脂コア径に対し相対的に非常に薄いため、樹脂コアの硬さと略同一である。樹脂コアの硬さは、異方性導電接続対象によって適宜選択できるが、異方性導電接続後に70〜80%程度に圧縮される硬さであることが好ましい。そのため、樹脂コアの圧縮変形のし易さとしては、接続する電子部品の組み合わせによって種々選択される。一般的には20%変形時の圧縮硬さ(K値)が1500〜4000N/mm
2の比較的柔らかい粒子が好ましく、FPCとFPCを異方性導電接続する場合(FOF)にも20%変形時の圧縮硬さ(K値)が1500〜4000N/mm
2の比較的柔らかい粒子が好ましい。ICチップとガラス基板を異方性導電接続する場合には20%変形時の圧縮硬さ(K値)が3000〜8000N/mm
2の比較的硬い粒子が好ましい。また、材質によらず配線表面に酸化膜を形成する電子部品の場合には、20%変形時の圧縮硬さ(K値)を8000N/mm
2以上にしてさらに硬い粒子が好ましい場合もある。
【0024】
ここで、20%変形時の圧縮硬さ(K値)とは、導電粒子を一方向に荷重して圧縮することにより、導電粒子の粒子径が元の粒子径に比べて20%短くなるときの荷重から次式により算出される数値であり、K値が小さいほど柔らかい粒子となる。
【0026】
(式中、F:導電粒子の20%圧縮変形時における荷重
S:圧縮変位(mm)
R:導電粒子の半径(mm))
【0027】
以上説明したような樹脂コアとしては、圧縮変形に優れるプラスチック材料からなる粒子を用いることが好ましく、例えば(メタ)アクリレート系樹脂、ポリスチレン系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル共重合樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、フェノール樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂等で形成することができる。例えば(メタ)アクリレート系樹脂で樹脂コアを形成する場合には、この(メタ)アクリレート系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルと、さらに必要によりこれと共重合可能な反応性二重結合を有する化合物および二官能あるいは多官能性モノマーとの共重合体であることが好ましい。
【0028】
(導電粒子の表面形状)
導電粒子2の表面形状は、第1導電粒子群10と第2導電粒子群20とで同じであってもよく、相違していてもよい。発明の効果を損なわない範囲で、表面形状に制限はないが、特開2015−8129号公報等に記載の表面に突起が形成されている導電粒子を好ましく使用することができる。このような突起が形成されることで、異方性導電接続時に端子に設けられている保護膜を突き破ることができる。突起の形成は導電粒子の表面に均等に存在することが好ましいが、異方性導電フィルムの製造工程のうち導電粒子を配列させるために導電粒子を型に充填する工程において、突起の一部に欠損が生じてもよい。突起の高さは、一例として10〜500nm、又は粒子径の10%以下とすることができる。
【0029】
(導電粒子の表面絶縁膜)
導電粒子2は、表面絶縁膜が形成されていることが好ましい。端子間スペースが狭い場合でも、ショートの発生を抑制できるからである。このような表面絶縁膜は、異方性導電接続に支障をきたさない程度であれば、どのような形態であってもよく、第1導電粒子群10と第2導電粒子群20とで同じであってもよく、相違していてもよい。
【0030】
(導電粒子の質量の観点からの存在量)
導電粒子2の異方性導電フィルム100中の存在量は、質量基準で表すこともでき、第1導電粒子群10と第2導電粒子群20とで同じであってもよく、相違していてもよいが、異方性導電フィルム100の全質量を100質量部としたときに、その100質量部中に好ましくは1質量部以上30質量部以下、より好ましくは3質量部以上10質量部以下となる量である。
【0031】
(導電粒子の配置)
本発明の異方性導電フィルム100においては、ショート抑制の観点から、導電粒子2は、少なくとも一つの導電粒子群(好ましくは第1導電粒子群10)において異方性導電フィルム100を平面視したときに互いに独立的に存在している。この場合、第1導電粒子群10と第2導電粒子群20における導電粒子の平面方向での距離や配置の状態は、同じであってもよく、相違していてもよい。ここで、“互いに独立的に存在”とは、少なくともひとつの導電粒子群において導電粒子2が凝集せずに互いに非接触であり、しかもフィルム厚み方向にも重なり合いがない状態を意味する。“非接触”の程度は、隣接導電粒子2の中心間距離が平均粒子径の好ましくは1.5〜50倍、より好ましくは、2〜30倍である。また、“フィルム厚み方向にも重なり合いがない状態”とは、異方性導電フィルムを平面視したときに、少なくともひとつの導電粒子群における導電粒子が同一導電粒子群の他の導電粒子と重なり合わないことを意味する。
【0032】
なお、異方性導電フィルム100を平面視したときの全導電粒子に対する“独立的に存在している導電粒子”の割合は、50%より大きいことが好ましく、60%より大きいことがより好ましく、70%より大きいことが更に好ましい。この割合の測定は金属顕微鏡や電子顕微鏡の面視野画像から計測することにより行うことができる。
【0033】
導電粒子2は、前述したように、異方性導電フィルム100を平面視したときに互いに独立的に存在しているが、異方性導電フィルム100全体における均一な光透過を実現するために、規則配列されていることが好ましい。規則配列としては、六角格子、斜方格子、正方格子、矩形格子、平行体格子等の格子状に配列されていることが好ましい。また、格子形状ではなく、直線上に配列した線状を並列に形成したものでもよい。この場合、フィルムの幅方向を斜行するように線が存在していることが好ましい。線間の距離は特に制限はされず、規則的であってもランダムであってもよいが、規則性があることが実用上好ましい。
【0034】
一方、第2導電粒子群20における導電粒子2は、端子への捕捉をより高める観点から第2領域R2に分散して存在していることが好ましい。ここで、“分散して存在している”とは、規則性なくランダムな状態で存在していることを意味する。ランダムな状態を形成するには、例えば、絶縁性バインダ1に導電粒子2を投入して、市販の遊星型攪拌装置(あわとり練太郎、(株)シンキー)などを用いて混合すればよい。
【0035】
(絶縁性バインダの80℃溶融粘度)
後述する絶縁性バインダ1の80℃溶融粘度は、第1導電粒子群10と第2導電粒子群20とで同じであってもよく、相違していてもよいが、厚み方向で異なっていることが好ましい。特に第2導電粒子群20を包含している第2領域R2よりも、第1導電粒子群10を包含している第1領域R1の80℃溶融粘度が大きいことが、導電粒子を端子へ捕捉させる観点からは、特に好ましい。第1導電粒子群10と第2導電粒子群20とが、別体の層として存在している場合、第1導電粒子群10は80℃溶融粘度の異なる層の界面に存在してもよい。なお、80℃溶融粘度ではなく、最低溶融粘度が同様の傾向を示してもよい。
【0036】
導電粒子を含有する層において、前述したように絶縁性バインダの80℃溶融粘度が高いほど、導電粒子が接続時の樹脂の流動の影響を受けにくくなるため、導電粒子を端子へ捕捉させる観点から、80℃溶融粘度が高いことが望ましい。具体的には、特に制限はないが、20000Pa・s以上であってもよい。また、一例として、第1導電粒子群10を包含している第1領域R1の80℃溶融粘度は、1000〜20000Pa・s、より好ましくは2000〜8000Pa・sであり、第2導電粒子群20を包含している第2領域R2の80℃溶融粘度は、500〜20000Pa・s、より好ましくは1000〜5000Pa・sである。ここで、80℃溶融粘度は、回転式レオメータ(TA Instruments社)を用い、昇温速度10℃/分、測定時の力1N一定、使用測定プレート直径8mm、という条件により測定し、80℃での値から求めることができる。
【0037】
(絶縁性バインダの組成)
上述のように、導電粒子2の存在状態の区別の要素となりうる絶縁性バインダ1としては、従来の異方性導電フィルムで用いられている公知の絶縁性バインダを使用することができる。このような絶縁性バインダとしては、公知の熱重合性もしくは光重合性組成物を使用することができる。これらの重合性組成物には、膜形成樹脂やシランカップリング剤を含有させることが好ましい。膜形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ブタジエン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂等を挙げることができ、これらの2種以上を併用することができる。これらの中でも、成膜性、加工性、接続信頼性の観点から、フェノキシ樹脂を好ましく使用することができる。また、シランカップリング剤としては、エポキシ系シランカップリング剤、アクリル系シランカップリング剤等を挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、主としてアルコキシシラン誘導体である。
【0038】
更に、これらの重合性組成物には、必要に応じて充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、有機溶剤、イオンキャッチャー剤等を配合することができる。特に、重合性組成物の粘度調整のために、平均粒子径が10〜50nmのシリカフィラを配合させることが好ましい。このようなシリカフィラの重合性組成物への配合割合は、所期の粘度に応じて適宜決定することができる。
【0039】
(熱重合性組成物)
熱重合性組成物としては、(メタ)アクリレート化合物あるいはエポキシ化合物と、熱カチオン、アニオン若しくはラジカル重合性開始剤とを含有する熱重合性組成物が挙げられる。必要に応じ、光重合開始剤を含有してもよい。
【0040】
ここで、(メタ)アクリレート化合物としては、従来公知の(メタ)アクリレートモノマーを使用することができる。例えば、単官能(メタ)アクリレート系モノマー、二官能以上の多官能(メタ)アクリレート系モノマーを使用することができる。本発明においては、異方性導電接続時に絶縁性バイダを熱硬化できるように、(メタ)アクリレート系モノマーの少なくとも一部に多官能(メタ)アクリレート系モノマーを使用することが好ましい。ここで、(メタ)アクリレートには、アクリレートとメタクリレートとが包含される。
【0041】
また、エポキシ化合物としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、それらの変性エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などを挙げることができ、これらの2種以上を併用することができる。また、エポキシ化合物に加えてオキセタン化合物を併用してもよい。
【0042】
熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、有機過酸化物、アゾ系化合物等を挙げることができる。特に、気泡の原因となる窒素を発生しない有機過酸化物を好ましく使用することができる。
【0043】
熱ラジカル重合開始剤の使用量は、少なすぎると硬化不良となり、多すぎると製品ライフの低下となるので、アクリレート化合物100質量部に対し、好ましくは2〜60質量部、より好ましくは5〜40質量部である。
【0044】
熱カチオン重合開始剤としては、エポキシ化合物の熱カチオン重合開始剤として公知のものを採用することができ、例えば、熱により酸を発生するヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、フェロセン類等を用いることができ、特に、温度に対して良好な潜在性を示す芳香族スルホニウム塩を好ましく使用することができる。
【0045】
熱カチオン重合開始剤の配合量は、少なすぎても硬化不良となる傾向があり、多すぎても製品ライフが低下する傾向があるので、エポキシ化合物100質量部に対し、好ましくは2〜60質量部、より好ましくは5〜40質量部である。
【0046】
熱アニオン重合開始剤としては、エポキシ化合物の熱アニオン重合開始剤として公知のものを採用することができ、例えば、熱により塩基を発生する脂肪族アミン系化合物、芳香族アミン系化合物、二級又は三級アミン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリメルカプタン系化合物、三フッ化ホウ素−アミン錯体、ジシアンジアミド、有機酸ヒドラジッド等を用いることができ、特に温度に対して良好な潜在性を示すカプセル化イミダゾール系化合物を好ましく使用することができる。
【0047】
熱アニオン重合開始剤の配合量は、少なすぎても硬化不良となる傾向があり、多すぎても製品ライフが低下する傾向があるので、エポキシ化合物100質量部に対し、好ましくは2〜60質量部、より好ましくは5〜40質量部である。
【0048】
(光重合性組成物)
光重合性組成物としては、光カチオン、アニオン若しくはラジカル重合性組成物、好ましくは(メタ)アクリレート化合物と光ラジカル重合開始剤とを含有する光ラジカル重合性組成物、もしくはエポキシ化合物と光カチオン若しくはアニオン重合開始剤とを含有する光カチオン若しくはアニオン重合性組成物が挙げられる。
【0049】
ここで、エポキシ化合物や(メタ)アクリレート化合物としては、熱重合性組成物で使用したものを適宜使用することができる。
【0050】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン系光重合開始剤、ベンジルケタール系光重合開始剤、リン系光重合開始剤等の公知の重合開始剤が挙げられる。
【0051】
光ラジカル重合開始剤の使用量は、アクリレート化合物100質量部に対し、少なすぎると重合が十分に進行せず、多すぎると剛性低下の原因となるので、好ましくは0.1〜25質量部、より好ましくは0.5〜15質量部である。
【0052】
光カチオン重合開始剤としては、エポキシ化合物の光カチオン重合開始剤として公知のものを採用することができ、例えば、光により酸を発生するヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、フェロセン類等を用いることができ、特に、温度に対して良好な潜在性を示す芳香族スルホニウム塩を好ましく使用することができる。
【0053】
光カチオン重合開始剤の配合量は、少なすぎても硬化不良となる傾向があり、多すぎても製品ライフが低下する傾向があるので、エポキシ化合物100質量部に対し、好ましくは2〜60質量部、より好ましくは5〜40質量部である。
【0054】
光アニオン重合開始剤としては、エポキシ化合物の光アニオン重合開始剤として公知のものを採用することができ、例えば、光により塩基を発生するアセトフェノン O−アロイルオキシム(acetophenone O-aroyloxime)、ニフェジピン(nifedipine)等を好ましく使用することができる。
【0055】
光アニオン重合開始剤の配合量は、少なすぎても硬化不良となる傾向があり、多すぎても製品ライフが低下する傾向があるので、エポキシ化合物100質量部に対し、好ましくは2〜60質量部、より好ましくは5〜40質量部である。
【0056】
<異方性導電フィルムの層構成>
本発明の異方性導電フィルム100は、単一の層から構成されていてもよく、複数の層が積層された多層から構成されていてもよい。
【0057】
異方性導電フィルム100が単層である場合、第1導電粒子群10は、単層の異方性導電フィルム100中で偏在している複数の導電粒子から構成されたものであり、その偏在している領域が第1領域R1ということになる。他方、第2導電粒子群20は、単層の異方性導電フィルム100中で分散している複数の導電粒子から構成されたものであり、その分散している領域が第2領域R2ということになる。
【0058】
異方性導電フィルム100が多層である場合、第1領域R1並びに第2領域R2はそれぞれ、第1導電粒子群含有層並びに第2導電粒子群含有層として把握することができる。
【0059】
第1領域R1(第1導電粒子群含有層)並びに第2領域R2(第2導電粒子群含有層)の厚みとしては、導通信頼性を確実に保持する接着力を得るために、前者が好ましくは3〜7μm、より好ましくは3〜5μm、後者が好ましくは3〜20μm、より好ましくは6〜16μmである。これらの領域(導電粒子群含有層)の厚み範囲は、後述の実施例における条件下での好ましい厚み範囲の一例であり、特に制限されるものではないが、各導電粒子群を構成する導電粒子の粒子径に応じて適宜変動させてもよく、接続する電子部品の種類や形状に応じて変動させてもよい。
【0060】
<<
図1以外の態様の異方性導電フィルム>>
以上、
図1の態様の異方性導電フィルム100について説明してきたが、本発明は、異方性導電フィルムの厚み方向において第1領域及び第2領域と互いに相違し且つ面方向に平行で導電粒子を含まない第3領域を更に有する異方性導電フィルムを包含する。この第3領域は、一般に円滑な樹脂流動を実現するための層である。このような態様の具体例を
図2〜
図4に示す。
【0061】
即ち、
図2の異方性導電フィルム200は、第1領域R1、第2領域R2及び第3領域R3がこの順で配置されている態様であり、
図3の異方性導電フィルム300は、第2領域R2、第3領域R3及び第1領域R1がこの順で配置されている態様であり、
図4の異方性導電フィルム400は、第2領域R2、第1領域R1及び第3領域R3がこの順で配置されている態様である。
【0062】
このような第3領域R3は、異方性導電フィルムが単層である場合には、導電粒子2が存在していない領域であり、多層である場合には、導電粒子を含有していない絶縁性バインダからなる絶縁層という位置づけとなる。ここで、第3領域R3を構成する絶縁性バインダは、第1領域R1及び第2領域R2について既に説明した熱又は光重合性組成物から構成することができる。
【0063】
また、本発明は、更に、絶縁性バインダ中に更に複数の導電粒子から構成される第3導電粒子群30が含まれ、
図5に示すように、第3導電粒子群30が、異方性導電フィルム500の厚み方向において第1領域R1と第2領域R2と互いに相違し且つ面方向に平行な第4領域R4に存在している異方性導電フィルムを包含する。
【0064】
即ち、
図5の異方性導電フィルム500は、第3導電粒子群30が存在している第4領域R4、第1導電粒子群10が存在している第1領域R1及び第2導電粒子群20が存在している第2領域R2がこの順で配置されている態様である。ここで、第3導電粒子群30は、少なくとも第1導電粒子群10とは、導電粒子2の存在状態が互いに相違していることが必要である。他方、第2導電粒子群20とは、導電粒子2の存在状態が互いに同じであってもよいが、相違していることが好ましい。
【0065】
このような第4領域R4は、異方性導電フィルムが単層である場合には、導電粒子2が存在している領域であり、多層である場合には、導電粒子を含有している絶縁性バインダからなる第3導電粒子群含有層という位置づけとなる。ここで、第4領域R4を構成する絶縁性バインダは、第1領域R1及び第2領域R2について既に説明した熱又は光重合性組成物から構成することができる。
【0066】
なお、
図5の態様において、導電粒子2の個数密度に関し、捕捉性をより向上させる観点から第3導電粒子群30は好ましくは3000〜10000個/mm
2、より好ましくは3000〜5000個/mm
2である。また、導電粒子2の種類、平均粒子径、硬さ、表面材質などは上述の第2導電粒子群20と略同等の取り扱いになる。
【0067】
<<異方性導電フィルムの製造方法>>
本発明の
図1の単層タイプの異方性導電フィルムは、例えば、同一の樹脂組成で第1導電粒子群を備える層や第2導電粒子群を備える層を作製したのちに、熱ラミネートをして積層して得ることができる。また、第2導電粒子群を公知の塗布方法で得たのちに、溶媒の乾燥条件を適宜調整し、溶媒含有量が多い状態でフィルムの一方に導電粒子を沈降させ、且つ第1導電粒子群を散布ないしは転写させ、埋め込むなどの操作をした後に、乾燥を再度行うことで製造することができる。
【0068】
また、本発明の
図1の多層タイプの異方性導電フィルム100は、まず、絶縁性バインダに導電粒子を常法に従って分散させたものを剥離フィルムに塗布し乾燥することにより第2導電粒子群含有層を形成する。それとは別に、絶縁性バインダを剥離フィルムに塗布し、乾燥して粘着層を形成した後、その表面に導電粒子を単層で保持させて第1導電粒子群含有層を形成する。次に、第2導電粒子群含有層に対し、第1導電粒子群含有層の導電粒子保持面を配置し、全体を貼り合わせることにより製造することができる。ここで、粘着層に導電粒子を保持させる手法としては、従来公知の手法を利用することができる。例えば、粘着層に導電粒子を直接散布することにより第1導電粒子群含有層を形成することができる。あるいは延伸用樹脂層に導電粒子を単層で付着させた後に二軸延伸させ、その延伸させたフィルムに粘着層を押圧して導電粒子を粘着層に転写することにより第1導電粒子群含有層を形成することもできる。また、転写型を使用して粘着層に導電粒子を保持させることもできる。本発明の異方性導電フィルムを転写型を使用して製造する例を以下に説明する。
【0069】
図1に示した多層タイプの異方性導電フィルム100は、以下の工程A〜Dに従って製造することができる。
【0070】
まず、複数の凹部が形成された転写型の凹部に導電粒子を入れる(工程A)。続いて、転写型内の導電粒子に、重合性化合物と重合開始剤と必要に応じて絶縁フィラとを含有する重合性組成物を押圧することにより導電粒子が転写された第1導電粒子群含有層を形成する(工程B)。次に第1導電粒子群含有層とは別に、重合性化合物と重合開始剤とを含有する重合性組成物に導電粒子を常法により混合したものを成膜することにより第2導電粒子群含有層を形成する(工程C)。第1導電粒子群含有層の導電粒子転写面に第2導電粒子群含有層を配置し、全体を貼り合わす(工程D)ことにより
図1の異方性導電フィルム100を得ることができる。
【0071】
工程Bの押圧を調整することにより、導電粒子の第1導電粒子群含有層への埋入の程度を変化させることができる。押圧の程度を大きくすることにより導電粒子の埋入の程度が大きくなり、最終的には完全に第1導電粒子群含有層中に完全に埋入させることができる。
【0072】
なお、転写型を用いた
図1の異方性導電フィルムの製造方法に準じ、
図2〜5の異方性導電フィルムを製造することができる。
【0073】
(転写型)
本発明の製造方法で使用する転写型としては、例えば、シリコン、各種セラミックス、ガラス、ステンレススチールなどの金属等の無機材料や、各種樹脂等の有機材料などに対し、フォトリソグラフ法等の公知の開口形成方法によって開口を形成したものを使用することができる。また、転写型は、板状、ロール状等の形状をとることができる。
【0074】
転写型の凹部の形状としては、円柱状、四角柱等の柱形状、円錐台、角錐台、円錐形、四角錐形等の錐体形状等を例示することができる。
【0075】
凹部の配列としては、導電粒子にとらせる配列に応じて格子状、千鳥格子状等とすることができる。
【0076】
凹部の深さに対する導電粒子の平均粒子径の比(=導電粒子の平均粒子径/開口の深さ)は、転写性向上と導電粒子保持性とのバランスから、好ましくは0.4〜3.0、より好ましくは0.5〜1.5である。なお、転写型の凹部の径と深さは、レーザー顕微鏡で測定することができる。
【0077】
凹部の開口径の導電粒子の平均粒子径に対する比(=凹部の開口径/導電粒子の平均粒子径)は、導電粒子の収容のしやすさ、重合性組成物の押し込みやすさ等のバランスから、好ましくは1.1〜2.0、より好ましくは1.3〜1.8である。
【0078】
なお、凹部の開口径よりもその底径が小さい場合には、底径は導電粒子の平均粒子径の1.1倍以上2倍未満とし、開口径を導電粒子の平均粒子径の1.3倍以上3倍未満とすることが好ましい。
【0079】
<<接続構造体>>
本発明の異方性導電フィルムは、ICチップ、ICモジュール、FPCなどの第1電子部品と、FPC、ガラス基板、リジッド基板、セラミック基板などの第2電子部品とを異方性導電接続する際に好ましく適用することができる。ICチップ、ICモジュールなどをスタックして異方性導電接続してもよい。このようにして得られる接続構造体も本発明の一部である。
【0080】
異方性導電フィルムを用いた電子部品の接続方法としては、例えば、各種基板などの第2電子部品に対し、異方性導電フィルムを粘着層側から仮貼りし、仮貼りされた異方性導電フィルムに対し、ICチップ等の第1電子部品を搭載し、熱圧着する方法が挙げられる。UV等のエネルギー線を照射しながら圧着してもよく、エネルギー線の照射と熱圧着とを併用してもよい。
【実施例】
【0081】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、後出の表1の「第1導電粒子群含有層」は、比較例1、2については「導電粒子含有層」と読み替えるものとする。
【0082】
実施例1<
図1の多層タイプの異方性導電フィルムの製造>
(第2導電粒子群含有層の形成)
フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)、YP−50)45質量部、シリカフィラ(日本アエロジル(株)、アエロジルR805)5質量部、液状エポキシ樹脂(三菱化学(株)、jER828)45質量部、熱カチオン重合開始剤(三新化学工業(株)、SI−60L)3質量部、シランカップリング剤(信越化学工業(株)、KBM−403)2質量部、及び導電粒子(積水化学工業(株)、AUL703、粒径3μm)5質量部を混合することにより、導電粒子が分散している熱重合性組成物を調整した。この熱重合性組成物をフィルム厚さ50μmの剥離PETフィルム上にバーコータを用いて表1の厚み(4μm)となるように塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させることにより、PETフィルム上に導電粒子がランダムに分散している第2導電粒子群含有層を形成した。この第2導電粒子群含有層について、それに含まれる導電粒子の個数密度(個/mm
2)を計測すると共に、回転式レオメータ(TA Instruments社)を用いて昇温速度10℃/分、測定時の力1N一定、使用測定プレート直径8mm、という条件により溶融粘度を測定し、その80℃での溶融粘度値に基づく流動性ランクを表1に示す。
【0083】
流動性ランク
A: 溶融粘度値が20000Pa・s以上である場合
B: 溶融粘度値が10000Pa・s以上20000Pa・s未満である場合
C: 溶融粘度値が3000Pa・s以上10000Pa・s未満である場合
D: 溶融粘度値が3000Pa・s未満である場合
【0084】
(第1導電粒子群含有層の形成)
一方、正方格子パターンに対応した凸部の配列パターンを有する金型を作成し、その金型に、公知の透明性樹脂のペレットを溶融させたものを流し込み、冷やして固めることで、表1の密度(導電粒子の個数密度に対応)の正方格子パターンの凹部を有する樹脂製の転写型を作製した。この転写型の凹部に導電粒子(積水化学工業(株)、AUL703、粒径3μm)を充填した。
【0085】
それとは別に、フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)、YP−50)35質量部、シリカフィラ(日本アエロジル(株)、アエロジルR805)25質量部、液状エポキシ樹脂(三菱化学(株)、jER828)35質量部、熱カチオン重合開始剤(三新化学工業(株)、SI−60L)3質量部、及びシランカップリング剤(信越化学工業(株)、KBM−403)2質量部を含有する熱重合性組成物を調製し、この熱重合性組成物をフィルム厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させて得た表1の厚み(3μm)の粘着層を作成した。この粘着層を50℃、0.5MPaという条件で転写型の導電粒子収容面に押圧することにより、導電粒子が転写された第1導電粒子群含有層を形成し、転写型から剥離した。この第1導電粒子群含有層に含まれる導電粒子の個数密度(個/mm
2)と、上記と同様の手法で求めた80℃での溶融粘度値に基づく流動性ランクとを表1に示す。
【0086】
(異方性導電フィルムの製造)
第1導電粒子群含有層の導電粒子転写面に、第2導電粒子群含有層を対向させ、これらを50℃、0.2MPaという条件で貼り合わすことで
図1の異方性導電フィルムを製造した。
【0087】
実施例2<
図2の多層タイプの異方性導電フィルムの製造>
(第1導電粒子群含有層の形成)
熱重合性組成物を、フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)、YP−50)40質量部、シリカフィラ(日本アエロジル(株)、アエロジルR805)15質量部、液状エポキシ樹脂(三菱化学(株)、jER828)40質量部、熱カチオン重合開始剤(三新化学工業(株)、SI−60L)3質量部、及びシランカップリング剤(信越化学工業(株)、KBM−403)2質量部から調製したこと以外は実施例1と同様に第1導電粒子群含有層を作成した。
【0088】
(第2導電粒子群含有層の形成)
第2導電粒子群含有層は、実施例1と同様に作成した。
【0089】
(導電粒子非含有の絶縁層の形成)
フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)、YP−50)35質量部、シリカフィラ(日本アエロジル(株)、アエロジルR805)5質量部、液状エポキシ樹脂(三菱化学(株)、jER828)55質量部、熱カチオン重合開始剤(三新化学工業(株)、SI−60L)3質量部、及びシランカップリング剤(信越化学工業(株)、KBM−403)2質量部を含有する熱重合性組成物を調製し、この熱重合性組成物をフィルム厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させて得た表1の厚み(7μm)の絶縁層を作成した。
【0090】
(異方性導電フィルムの製造)
第1導電粒子群含有層の導電粒子転写面に、第2導電粒子群含有層、続いて絶縁層を対向させ、これらを50℃、0.2MPaという条件で貼り合わすことで
図2の異方性導電フィルムを製造した。
【0091】
実施例3<
図3の多層タイプの異方性導電フィルムの製造>
(第1導電粒子群含有層の形成)
実施例1と同様に、第1導電粒子群含有層を作成した。
【0092】
(第2導電粒子群含有層の形成)
フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)、YP−50)40質量部、シリカフィラ(日本アエロジル(株)、アエロジルR805)15質量部、液状エポキシ樹脂(三菱化学(株)、jER828)40質量部、熱カチオン重合開始剤(三新化学工業(株)、SI−60L)3質量部、シランカップリング剤(信越化学工業(株)、KBM−403)2質量部、及び導電粒子(積水化学工業(株)、AUL703、粒径3μm)5質量部を混合することにより、導電粒子が分散している熱重合性組成物を調整した。この熱重合性組成物をフィルム厚さ50μmの剥離PETフィルム上にバーコータを用いて表1の厚み(5μm)となるように塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させることにより、PETフィルム上に導電粒子がランダムに分散している第2導電粒子群含有層を形成した。
【0093】
(導電粒子非含有の絶縁層の形成)
フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)、YP−50)40質量部、シリカフィラ(日本アエロジル(株)、アエロジルR805)15質量部、液状エポキシ樹脂(三菱化学(株)、jER828)40質量部、熱カチオン重合開始剤(三新化学工業(株)、SI−60L)3質量部、及びシランカップリング剤(信越化学工業(株)、KBM−403)2質量部を含有する熱重合性組成物を調製し、この熱重合性組成物をフィルム厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させて得た表1の厚み(6μm)の絶縁層を作成した。
【0094】
(異方性導電フィルムの製造)
第1導電粒子群含有層の導電粒子転写面に、絶縁層、続いて第2導電粒子群含有層を対向させ、これらを50℃、0.2MPaという条件で貼り合わすことで
図3の異方性導電フィルムを製造した。
【0095】
実施例4<
図4の多層タイプの異方性導電フィルムの製造>
(第1導電粒子群含有層の形成)
実施例1と同様に、第1導電粒子群含有層を作成した。
【0096】
(第2導電粒子群含有層の形成)
フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)、YP−50)35質量部、シリカフィラ(日本アエロジル(株)、アエロジルR805)25質量部、液状エポキシ樹脂(三菱化学(株)、jER828)35質量部、熱カチオン重合開始剤(三新化学工業(株)、SI−60L)3質量部、シランカップリング剤(信越化学工業(株)、KBM−403)2質量部、及び導電粒子(積水化学工業(株)、AUL703、粒径3μm)5質量部を混合することにより、導電粒子が分散している熱重合性組成物を調整した。この熱重合性組成物をフィルム厚さ50μmの剥離PETフィルム上にバーコータを用いて表1の厚み(4μm)となるように塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させることにより、PETフィルム上に導電粒子がランダムに分散している第2導電粒子群含有層を形成した。
【0097】
(導電粒子非含有の絶縁層の形成)
実施例2と同様に絶縁層を作成した。
【0098】
(異方性導電フィルムの製造)
絶縁層に、第1導電粒子群含有層をその非導電粒子転写面側から対向させ、続いて第2導電粒子群含有層を対向させ、これらを50℃、0.2MPaという条件で貼り合わすことで
図4の異方性導電フィルムを製造した。
【0099】
実施例5<
図5の多層タイプの異方性導電フィルムの製造>
(第1導電粒子群含有層の形成)
実施例1と同様に、第1導電粒子群含有層を作成した。
【0100】
(第2導電粒子群含有層の形成)
層厚を5μmから6μmに変更すること以外、実施例3と同様に第2導電粒子群含有層を形成した。
【0101】
(第3導電粒子群含有層の形成)
フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)、YP−50)40質量部、シリカフィラ(日本アエロジル(株)、アエロジルR805)15質量部、液状エポキシ樹脂(三菱化学(株)、jER828)40質量部、熱カチオン重合開始剤(三新化学工業(株)、SI−60L)3質量部、シランカップリング剤(信越化学工業(株)、KBM−403)2質量部、及び導電粒子(積水化学工業(株)、AUL703、粒径3μm)5質量部を混合することにより、導電粒子が分散している熱重合性組成物を調整した。この熱重合性組成物をフィルム厚さ50μmの剥離PETフィルム上にバーコータを用いて表1の厚み(5μm)となるように塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させることにより、PETフィルム上に導電粒子がランダムに分散している第3導電粒子群含有層を形成した。
【0102】
(異方性導電フィルムの製造)
第1導電粒子群含有層の片面に第2導電粒子群含有層を、他面に第3導電粒子群含有層を対向させ、これらを50℃、0.2MPaという条件で貼り合わすことで
図5の異方性導電フィルムを製造した。
【0103】
比較例1<
図6の異方性導電フィルムの製造>
(導電粒子含有層の形成)
フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)、YP−50)40質量部、シリカフィラ(日本アエロジル(株)、アエロジルR805)15質量部、液状エポキシ樹脂(三菱化学(株)、jER828)40質量部、熱カチオン重合開始剤(三新化学工業(株)、SI−60L)3質量部、シランカップリング剤(信越化学工業(株)、KBM−403)2質量部、及び導電粒子(積水化学工業(株)、AUL703、粒径3μm)30質量部を混合することにより、導電粒子が分散している熱重合性組成物を調整した。この熱重合性組成物をフィルム厚さ50μmの剥離PETフィルム上にバーコータを用いて表1の厚み(6μm)となるように塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させることにより、PETフィルム上に導電粒子がランダムに分散している導電粒子含有層を形成した。
【0104】
(絶縁層の形成)
フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)、YP−50)35質量部、シリカフィラ(日本アエロジル(株)、アエロジルR805)5質量部、液状エポキシ樹脂(三菱化学(株)、jER828)55質量部、熱カチオン重合開始剤(三新化学工業(株)、SI−60L)3質量部、及びシランカップリング剤(信越化学工業(株)、KBM−403)2質量部を混合することにより、熱重合性組成物を調整した。この熱重合性組成物をフィルム厚さ50μmの剥離PETフィルム上にバーコータを用いて表1の厚み(8μm)となるように塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させることにより、PETフィルム上に絶縁層を形成した。
【0105】
(異方性導電フィルムの製造)
導電粒子含有層と絶縁層とを対向させ、これらを50℃、0.2MPaという条件で貼り合わすことで
図6の異方性導電フィルムを製造した。なお、
図6において、図番60は異方性導電フィルムであり、61は熱硬化型の絶縁性樹脂層であり、62は熱硬化型の絶縁性バインダであり、63は導電粒子であり、64は熱硬化型の導電粒子含有層である。
【0106】
比較例2<
図7の異方性導電フィルムの製造>
(導電粒子含有層の形成)
正方格子パターンに対応した凸部の配列パターンを有する金型を作成し、その金型に、公知の透明性樹脂のペレットを溶融させたものを流し込み、冷やして固めることで、表1の密度(導電粒子の個数密度に対応)の正方格子パターンの凹部を有する樹脂製の転写型を作製した。この転写型の凹部に導電粒子(積水化学工業(株)、AUL703、粒径3μm)を充填した。
【0107】
それとは別に、フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)、YP−50)65質量部、シリカフィラ(日本アエロジル(株)、アエロジルR805)5質量部、(メタ)アクリル系化合物(新中村化学工業(株)、A−LEN−10)25質量部、光ラジカル重合開始剤IRGACURE369(BASFジャパン(株))3質量部、及びシランカップリング剤(信越化学工業(株)、KBM−403)2質量部を含有する光重合性組成物を調製し、この光重合性組成物をフィルム厚さ50μmのPETフィルム上に塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させて得た表1の厚み(3μm)の粘着層を作成した。この粘着層を50℃、0.5MPaという条件で転写型の導電粒子収容面に押圧することにより、導電粒子が転写された導電粒子含有層を形成し、転写型から剥離した。なお、この導電粒子含有層の溶融粘度測定は、流動性が低すぎるため測定ができなかった。
【0108】
(絶縁層の形成)
フェノキシ樹脂(新日鉄住金化学(株)、YP−50)35質量部、シリカフィラ(日本アエロジル(株)、アエロジルR805)5質量部、液状エポキシ樹脂(三菱化学(株)、jER828)55質量部、熱カチオン重合開始剤(三新化学工業(株)、SI−60L)3質量部、及びシランカップリング剤(信越化学工業(株)、KBM−403)2質量部を混合することにより、熱重合性組成物を調整した。この熱重合性組成物をフィルム厚さ50μmの剥離PETフィルム上にバーコータを用いて表1の厚み(11μm)となるように塗布し、80℃のオーブンにて5分間乾燥させることにより、PETフィルム上に絶縁層を形成した。
【0109】
(異方性導電フィルムの製造)
導電粒子含有層と絶縁層とを対向させ、これらを50℃、0.2MPaという条件で貼り合わせ、波長365nm、積算光量4000mJ/cm
2の紫外線を照射することで
図7の異方性導電フィルムを製造した。なお、
図7において、図番70は異方性導電フィルムであり、71は絶縁性樹脂層であり、72は光硬化型の絶縁性バインダであり、73は導電粒子であり、74は光硬化型の導電粒子含有層である。
【0110】
<評価>
実施例1〜5及び比較例1〜2の異方性導電フィルムについて、以下の評価用ICとガラス基板とを以下の条件の熱圧着接続により(比較例2については、以下のUV照射併用)異方性導電接続して評価用接続構造体を作成した。
【0111】
評価用IC:外径=1.8mm×20mm×0.2mm、金バンプ仕様=15μm(高)×15μm(幅)×100μm(長)(バンプ間ギャップ15μm)
【0112】
ITOコーティング配線付ガラス基板:外径=30mm×50mm×0.5mm
【0113】
熱圧着接続:ICチップ側から、150℃で80MPa、5秒間の熱圧着。
【0114】
UV照射接続:100℃で80MPaの圧力で5秒間熱圧着する一方で、熱圧着開始後4秒後に、紫外線照射装置(オムロン(株)、ZUV−C30H)からi線を1秒間照射。
【0115】
作成したこれらの評価用接続構造体について、(a)初期導通性、(b)導通信頼性、(c)ショート発生率、(d)粒子捕捉性を、それぞれ以下に説明するように評価した。得られた結果を表1に示す。
【0116】
(a)初期導通性
得られた評価用接続構造体の導通抵抗を、デジタルマルチメータを用いて4端子法で2mAの電流を通電したときの値を測定し、以下の基準で評価した。
【0117】
(評価基準)
OK(良好):測定した抵抗値が1Ω未満である場合
NG(不良):測定した抵抗値が1Ω以上である場合
【0118】
(b)導通信頼性
得られた評価用接続構造体を、温度85℃、湿度85%RHの恒温槽に500時間おいた後の導通抵抗を、初期導通性と同様に測定し、以下の基準で評価した。
【0119】
(評価基準)
OK(良好):測定した抵抗値が5Ω未満である場合
NG(不良):測定した抵抗値が5Ω以上である場合
【0120】
(c)ショート発生率
接続構造体を作成する際に、評価用ICを以下のIC(7.5μmスペースの櫛歯TEG(test element group))に変更した。得られた接続構造体についてショート発生率をデジタルマルチメータを用いて測定し、以下の基準で評価した。
外径 1.5mm×13mm
厚み 0.5mm
バンプ仕様 金メッキ、高さ15μm、サイズ25μm×140μm、バンプ間ギャップ7.5μm
【0121】
(評価基準)
OK(良好):ショート発生率が、50ppm未満である場合
NG(不良):ショート発生率が、50ppm以上である場合
【0122】
(d)粒子捕捉性
接続に使用するICのバンプサイズを11μm×95μmに変更する以外は、初期導通性および導通信頼性と同様の条件で接続した。接続後の端子をガラス基板側から金属顕微鏡を用いて観察し、圧痕数をカウントすることで粒子の捕捉性を判定した。観察したバンプ個数はN=300で、最少の捕捉数(圧痕数)を示すバンプで評価した。判定基準を以下に示す。
【0123】
(評価基準)
A(非常に良好):圧痕数が10個以上
B(良好):圧痕数が5個以上、10個未満
C(普通):圧痕数が3個以上、5個未満
D(不良):圧痕数が3個未満
【0124】
【表1】
【0125】
表1から分かるように、実施例1〜5の異方性導電フィルムは、いずれの評価項目についても良好な結果を示した。なお、実施例4の異方性導電フィルムの場合、80℃における溶融粘度の流動性ランクがどちらもA評価であったためか、第1導電粒子群含有層および第2導電粒子群含有層の両層について、初期導通性や導通信頼性の値が高めの傾向であったが、実用上問題のないレベルであった。
【0126】
それに対し、比較例1の異方性導電フィルムの場合、導電粒子含有層が二層になっておらず、そのため、初期導通性と導通信頼性とを確保すべく導電粒子含有層の導電粒子の個数密度を高くせざるを得ず、その結果、ショート発生率についてはNG評価であり、粒子捕捉性についてはD評価であった。また、比較例2の異方性導電フィルムの場合、導電粒子含有層が二層になっておらず、そのため、導電粒子含有層の流動性を抑制すべく、光硬化させたので、導通信頼性についてはNG評価であった。