【解決手段】モータコア1が載置される固定型と、モータコア1をクランプする可動型のうちいずれか一方にモータコア1の各磁石挿入孔2の開口に連なるオーバーフローキャビティ28が各々形成されており、オーバーフローキャビティ28には、オーバーフローしたモールド樹脂22を磁石挿入孔2へ押し戻す可動部材26が設けられている。
磁石挿入孔に磁石が挿入されたモータコアがモールド金型に挟み込まれてモールド樹脂と前記磁石が前記磁石挿入孔内で前記モータコアと一体に樹脂モールドされる樹脂モールド装置であって、
前記モータコアが載置される固定型と、前記モータコアをクランプする可動型のうちいずれか一方に前記モータコアの磁石挿入孔の開口に連なるオーバーフローキャビティが各々形成されており、前記オーバーフローキャビティには、オーバーフローしたモールド樹脂を前記磁石挿入孔へ押し戻す可動部材が設けられていることを特徴とする樹脂モールド装置。
前記オーバーフローキャビティは、前記磁石挿入孔に対応して設けられた挿入孔の上端より前記可動部材が下がった位置に支持されて形成される前記可動部材の上方空間である請求項1記載の樹脂モールド装置。
前記各磁石挿入孔に対応して挿入孔が各々設けられ、各挿入孔内に設けられた可動部材を駆動源により前記各挿入孔と面一になるまで押し上げて前記オーバーフローキャビティへ溢れたモールド樹脂を前記各磁石挿入孔に各々押し戻す請求項4記載のモータコアの樹脂モールド方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に示すトランスファ成形による樹脂モールド装置は、モータコアの磁石収納孔に挿入された磁石を位置決めする構造を有しない。このため、磁石と磁石収納孔の内壁面とのクリアランスがばらついた状態で樹脂モールドされるおそれがあった。この結果、複数の磁束作用面から生じる磁力線の磁束バランスが乱れからモータ特性が低下するおそれがある。
また、モータコアには、磁石収納孔と磁石の隙間に樹脂を注入する際にカル底面となるカル座が形成されているため、コアの製造段階から、積層コアの端部に相当する鋼板だけカル座を設ける加工が必要となり、コアの製造コストが嵩むうえに、樹脂モールド金型へのセットにも方向性が生じるため、製造上も取り扱い難くなる。
また、モータコアは電磁鋼板が積層された積層コアが用いられるため、厚さには個体差があり、モールド金型を型閉じしても樹脂漏れが発生するおそれがある。
【0006】
特に磁石周辺のコアの隙間にモールド樹脂の充填バランスが均一にできないことから、磁石を磁石挿孔の径方向一方側に偏らせて樹脂モールドするには、樹脂の充填性に課題がある。磁石挿入孔内に供給されたモールド樹脂及ぶ磁石をモールド金型でクランプすると、モールド金型はモータコアの厚み以上にクランプ圧を高めることができないため、磁石挿入孔内のモールド樹脂に最終樹脂圧が作用しないことに起因する未充填やボイドが発生するおそれがある。
また、モータコアの品種交換などに伴い、樹脂路が変わることからモールド金型も交換する必要があり、段取替えに手間取るうえに装置稼働率も低下する。
また、モータコアが大型になると熱容量が増大することから加熱に時間がかかり、部分的に冷めやすいという樹脂モールドするうえで取扱いに課題もある。更にはポットの底部側に待機するプランジャの温度も低下し易いという課題もある。これらの要因により樹脂モールドに要するサイクルタイムが長くなってしまうという課題があった。
【0007】
本発明の目的は上記従来技術の課題を解決し、モータコアへのクランプ力を強めることなく磁石挿入孔内の狭いモールド空間に最終樹脂圧を作用させてモールド樹脂の充填性を改善した樹脂モールド装置及びこれを用いて生産性を向上させかつモータ特性を向上させることが可能なモータコアの樹脂モールド方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
磁石挿入孔に磁石が挿入されたモータコアがモールド金型に挟み込まれてモールド樹脂と前記磁石が前記磁石挿入孔内で前記モータコアと一体に樹脂モールドされる樹脂モールド装置であって、前記モータコアが載置される固定型と、前記モータコアをクランプする可動型のうちいずれか一方に前記モータコアの磁石挿入孔の開口に連なるオーバーフローキャビティが各々形成されており、前記オーバーフローキャビティには、オーバーフローしたモールド樹脂を前記磁石挿入孔へ押し戻す可動部材が設けられていることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、モータコアの各磁石挿入孔の開口に連なるオーバーフローキャビティにオーバーフローしたモールド樹脂を可動部材によって磁石挿入孔へ押し戻すことができる。これにより、磁石挿入孔の狭い空間にモールド樹脂を充填する際にオーバーフローキャビティの溢れ出しをもって均一に充填することができるうえに、モータコアへのクランプ力を強めることなく磁石挿入孔の狭いモールド空間へ供給されたモールド樹脂へ最終樹脂圧を印加することができ、樹脂の充填密度を高められるので、気泡が混入しても消滅させて未充填領域を無くすことができる。また、オーバーフローキャビティに接続するエアベントを設けることで樹脂の充填を促進することもできる。
【0010】
前記オーバーフローキャビティは、前記磁石挿入孔に対応して設けられた挿入孔の上端より前記可動部材が下がった位置に支持されて形成される前記可動部材の上方空間であることが望ましい。
これにより、磁石挿入孔に対応して設けられた可動部材の挿入孔をオーバーフローキャビティとして用いることで、特別な金型加工は不要であり簡易な構成でオーバーフローキャビティに溢れだしたモールド樹脂を磁石挿入孔に押し戻すことができる。
【0011】
前記可動部材は支持プレートを介して駆動源により昇降可能に支持されていることが好ましい。これにより、駆動源を起動させて支持プレートを介して支持された複数の可動部材を挿入孔の上端まで押し上げて各オーバーフローキャビティに溢れ出したモールド樹脂を効率良く磁石挿入孔へ押し戻すことができる。
【0012】
モータコアの樹脂モールド方法においては、複数の磁石挿入孔が形成されたモータコアを用意する工程と、前記モータコアをモールド金型の加熱温度に近い所定温度に予熱する工程と、前記モータコアの各磁石挿入孔に供給されたモールド樹脂及び磁石をモールド金型でクランプして、当該モールド金型の各磁石挿入孔に連通するオーバーフローキャビティへモールド樹脂を溢れださせる工程と、前記オーバーフローキャビティ内のモールド樹脂を前記磁石挿入孔に押し戻して樹脂圧を加えたまま所定温度で加熱硬化させ前記磁石を前記モータコアと一体に成形する工程と、を含むことを特徴する。
【0013】
これにより、磁石挿入孔の狭い空間にモールド樹脂を充填する際にオーバーフローキャビティの溢れ出しをもって均一に充填することができるうえに、オーバーフローキャビティに溢れたモールド樹脂を磁石挿入孔に押し戻すことでモータコアへのクランプ力を強めることなく最終樹脂圧を加えて樹脂の充填密度を高め、未充填領域を無くして樹脂モールドすることができる。
【0014】
前記各磁石挿入孔に対応して挿入孔が各々設けられ、各挿入孔内に設けられた可動部材を駆動源により前記各挿入孔と面一になるまで押し上げて前記オーバーフローキャビティへ溢れたモールド樹脂を前記各磁石挿入孔に各々押し戻すことが好ましい。これにより、複数の磁石挿入孔に対してモールド樹脂の充填性を向上させて生産性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0015】
上述した樹脂モールド装置及びモータコアの樹脂モールド方法を用いれば、磁石挿入孔の狭い空間にモールド樹脂を充填する際にオーバーフローキャビティの溢れ出しをもって均一に充填することができるうえに、磁石挿入孔の狭いモールド空間へ供給されたモールド樹脂へモータコアへのクランプ力を強めることなく最終樹脂圧を加えて樹脂の充填密度を高められるので、気泡が混入しても消滅させて未充填領域を無くすことができる。また、複数設けられた磁石挿入孔の狭いモールド空間への樹脂充填性が改善されるのでモータコアの生産性を向上させかつモータ特性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る樹脂モールド装置及びモータコアの樹脂モールド方法の好適な実施の形態について添付図面と共に詳述する。以下では、モータコアとして永久磁石型のロータ(回転子)コアについて説明するものとする。尚、モータコアはモータコアに限らずステータコアであってもよい。
【0018】
ロータは、図示しないシャフトと該シャフトに軸支されるモータコア1と、モータコア1の磁石挿入孔2に挿入される磁石3を備えている。
図1(A)に示すようにモータコア1には図示しないシャフトが挿入される中心貫通孔1aが設けられている。磁石3は例えば着磁前の磁性体ブロックであり、ネオジウム磁石やフェライト磁石などが用いられる。モータコア1は、例えばプレス加工により打ち抜かれた電磁鋼板等の板状磁性体が積層された積層コア(積層鉄心)が用いられる。
【0019】
図1(B)において、搬送プレート4には位置決めようの突起部4aが突設されている。この突起部4aにモータコア1のかしめ部に相当する凹部を嵌め合わせてモータコア1が載置される。また、搬送プレート4のモータコア載置領域及びその外周側には、離型用の内側貫通孔4b及び外側貫通孔4cが設けられている。モータコア1は搬送プレート4に載置されかつ後述する中間プレート6を重ね合わせたまま固定型に載置される。
【0020】
環状断熱部材5は、搬送プレート4のモータコア1の外周側を覆って載置される。環状断熱部材5は環状の外周部材5aと外周部材5bとをコイルばね5cを介在させて連結したものが用いられる。外周部材5a,5bとしては、断熱性、蓄熱性の高い部材が用いられる。コイルばね5cは、モールド金型にクランプされたときに、モータコア1の厚さが変化しても隙間が生じないように設けられる。また、外周部材5a,5bには、外周側貫通孔4cに連通する貫通孔5dが設けられている。搬送プレート4にはモータコア1の外周を覆って環状断熱部材5が同心状に載置されて中間プレート6が重ね合わされる。なお、環状断熱部材5は、上述のようにモータコア1の外周から離間した状態で外気と断熱する構成としてもよいが、モータコア1の外周に接触した状態で外気と断熱する構成として、保温性を向上させたり、樹脂圧によるモータコア1の膨張を防止したりする構成としてもよい。
【0021】
中間プレート6は、鋼材よりなるプレート本体6aに樹脂流路に相当する部位に非金属材(例えばセラミック材等)よりなるスプルプレート6bが嵌め込まれて一体化された状態に形成されている。プレート本体6aにはスプルプレート6bを挿入可能な孔の側面(孔壁面)形状として段付部6eが形成されており、該段付部6eにスプルプレート6bが位置合わせして嵌め込まれる。プレート本体6aは、他の金型と組み合わせて使用する都合上線膨張係数を揃えた材質(例えば鋼材)で構成されるのが望ましい。スプルプレート6bは、一例として、例えば強度の高い酸化ジルコニア(ZrO2)が好ましく、窒化ケイ素(Si3N4)や炭化ケイ素(SiC)といったセラミックを用いることもできる。また、スプルプレート6bは、Y2O3、Gd2O3、Sm2O3、Eu2O3、Er2O3、Yb2O3、Lu2O3のいずれかからなる希土類酸化物を用いた低密着性材料を用いて形成されてもよい。さらに、スプルプレート6bは、必要に応じて表面処理や離型剤の塗布などのコーティングを施すことによりモールド樹脂の離型性をさらに向上することもできる。なお、スプルプレート6bにはモールド樹脂に対する離型性が高い材質であればメッキ等の表面処理を行った鋼材などの他の材質を使用してもよい。
【0022】
また、スプルプレート6bの両面において、樹脂の流動領域以外の部分はモールド金型又はモータコア1によりクランプされる。したがって、スプルプレート6bをセラミック材のような脆性材で形成するときには、モールド金型若しくはモータコア1でクランプされる領域(換言すれば樹脂の流動領域以外の領域)を例えば弾性体を介してクランプすることで樹脂漏れを防止しながら適切なクランプ力でクランプすることができ、しかも脆性材の破損を防止することもできる。このため、例えばスプルプレート6bにおいて必要な部分に弾性体を貼り付けた構成としてもよい。なお、弾性体の一例として、耐熱シリコン材を用いる場合には繰り返しの成形にも耐えて使用可能であり、ランニングコストを削減することができる。なお、弾性体は、1回の成形毎に貼り直してもよい。
【0023】
スプルプレート6bには平面視で磁石挿入孔2に重ならない領域に板厚方向に貫通するスプル6cが形成されている。スプルプレート6bの下面側には、スプル6cと磁石挿入孔2を接続する連通溝6dが彫り込まれている。中間プレート6の上面側でスプル6cは後述する上型ランナに接続され、中間プレート6の下面側でスプル6cと連通溝6dに接続されている。
また、中間プレート6には、モータコア1のかしめ部(凸部)を逃がすための逃げ凹部(図示せず)が形成されている。逃げ凹部はプレート本体6aとスプルプレート6bのいずれに形成されていても良い。
【0024】
次に樹脂モールド装置の構成について
図3を参照して説明する。
下型7は固定型であり、搬送プレート4にモータコア1及び環状断熱部材5に中間プレート6を重ね合わせた状態で下型クランプ面に位置合わせして載置される。
下型7は、下型ヒータ7aが内蔵されている。下型7を固定型とすることで、製造ラインを同一の高さに合わせて設計することができる。例えば、樹脂モールド装置において、樹脂モールド装置を備えた製造装置において隣接して設けられたコンベア機構から引き込む際に、モータコア1をほとんど昇降させることなく搬入搬出することができるため好ましい。
【0025】
上型8は可動型であり、図示しない型開閉機構を通じて下型7に対して接離動する。上型8は、中間プレート6を介してモータコア1をクランプし、モールド樹脂が供給されるポット9及びプランジャ10を備えている。具体的には、上型8には、複数のポット9が形成されたポットブロック11を有する。複数のポット9は、上型8の中心に対して円周方向に所定間隔を空けて配置されて、近接する1つないし複数の磁石挿入孔2に対してモールド樹脂22(
図4参照)を供給するために用いられる。また、ポット9が磁石挿入孔2の近くに配置されることで、モールド樹脂22の利用率を向上することができる。ポットブロック11には、ポット9とスプル6cと連通する上型ランナ11aが形成され第1のヒータ11b(第1の熱源)が内蔵されている。ポットブロック11は、上型ベース12に対してガイドポスト13により吊り下げ支持されている。尚、ポットブロック11のクランプ面側には上型ランナ11aが彫り込まれたランナ板11cが分離可能に設けられていてもよい。この場合には、ランナ板11cと中間プレート6を交換するだけで、品種変更に対応することができ、段取り変えを必要最小限にすることができる。さらに、プレート本体6aはそのまま使用してスプルプレート6bのみを変更することにより品種変更に対応することも可能である。
【0026】
可動ブロック14は、上型ベース12とポットブロック11との間に配置され、第2のヒータ14b(第2の熱源)により当該プランジャ10を予熱する。可動ブロック14は、プランジャ10の昇降動作に連動してポットブロック11に対して接離動するようになっている。なお、プランジャ10の昇降をガイド筒14aによってガイドする構成としてもよい。
【0027】
可動ブロック14は、ガイドポスト13が貫通して組み付けられている。可動ブロック14の両側には、保持部15により保持されており、保持部15はシャフト16を介して駆動源17(モータ)に連結されている。駆動源17を起動すると、シャフト16を介して保持部15に保持された可動ブロック14がガイドポスト13にガイドされて昇降するようになっている。尚、可動ブロック14は、駆動源17を用いて昇降する代わりに、プランジャ10を支持する支持ブロック18にスプリング等で所定の距離を保って一体に吊り下げ支持されて、プランジャ10と可動ブロック14とを同時に昇降するようにしても良い。
【0028】
プランジャ10は、支持ブロック18に吊り下げ支持されている。プランジャ10の先端側は、可動ブロック14のガイド筒14aに挿入されて第2のヒータ14bによって予熱されるようになっている。プランジャ10は加圧力を均等化するため、例えばコイルばね18aを介して吊り下げ支持されている。また、支持ブロック18は、押圧ロッド19に連結されている。押圧ロッド19は、上型ベース12を貫通して連結される駆動源20(モータ)によって昇降する。駆動源20と駆動源17は同期を取って駆動され、プランジャ10と可動ブロック14が連動して昇降するようになっている。
【0029】
次に、モータコアの樹脂モールド方法の一例について
図1乃至
図10を参照して説明する。
先ず
図1(A)に示すように、磁石挿入孔2に磁石3が径方向内側の孔壁面に寄せて挿入されたモータコア1を用意する。磁石3は直方体状の磁石が例えば2個直列になるように磁石挿入孔2に挿入される。磁石3は磁石挿入孔2の径方向外側の孔壁面に寄せて挿入されてもよい。この場合、例えば、磁石3と磁石挿入孔2の孔壁面との間に弾性体や治具などを挟み込むことで位置合わせすることができる。なお、磁石挿入孔2から鉄心の一部を突起させて磁石3を固定する構成としてもよい。
【0030】
次に、
図1(B)に示すように、搬送プレート4にモータコア1を突起部4aに位置決めして載置する。この場合、搬送プレート4の中心に突起部を設けて中心貫通孔1aに嵌め合わせることで位置決めしてもよい。続いて、その外周側にモータコア1を囲んで環状保温部材5が載置され、これらに中間プレート6を重ね合わせる。
【0031】
次に
図2に示すように、搬送プレート4上にモータコア1及び環状断熱部材5及びこれらに中間プレート6が重ね合わせた状態で、加熱炉21に搬送されてモールド金型の加熱温度に近い所定温度(およそ200℃前後)まで予熱される。
【0032】
図3に示すように、所定温度まで予熱されたモータコア1は、搬送プレート4に載置されたまま、型開きした下型7へ搬送されて位置合わせして載置される。このとき、上型8の可動ブロック14は、ポットブロック11より離間した退避位置にあり、プランジャ10の先端側がガイド筒14aに挿入されたまま第2のヒータ14aによって予熱されている。
【0033】
次に、
図4に示すように上型8を型閉じしてポットブロック11で中間プレート6をクランプする。この状態で、ポットブロック11と可動ブロック14との間に形成された作業空間を利用して破線に示す搬送装置21(ローダー、ロボットハンド等)を進入させてポット9にモールド樹脂22(例えば樹脂タブレット)を供給する。搬送装置21は、一例として、ポット9の配置と略同一の配置でモールド樹脂22の収容孔と、その下面に設けた蓋部とを備えて、蓋部を開閉することによって搬送及び供給を行う構成とすることができる。モールド樹脂22は、ポットブロック11に設けられた第1のヒータ11bによって加熱溶融する。
【0034】
次に、駆動源20及び駆動源17(
図3参照)を起動して、
図5に示すように押圧ロッド19を介して支持ブロック18及びプランジャ10を下動させ、シャフト16、保持部15を介して可動ブロック14をポットブロック11に重なり合う位置まで下動させる。このとき、ガイド筒14aとポット9は互いに重なり合って連通しプランジャ10の先端部は、ポット9内に進入してモールド樹脂22に当接する。また、プランジャ10及びモールド樹脂22は第1のヒータ11b及び第2のヒータ14bによって加熱された状態にある。
【0035】
次に、駆動源20(
図3参照)を更に駆動させて、
図6に示すように、押圧ロッド19を介して支持ブロック18及び予熱されたプランジャ10を更に下動させて、ポット9内で溶融したモールド樹脂22を上型ランナ11a、スプル6c及び連通溝6dを通じて磁石挿入孔2に充填する。モールド樹脂22を所定温度で加熱硬化させることで磁石3をモータコア1と一体に成形する。
【0036】
次に駆動源20及び駆動源17(
図3参照)を逆回転駆動して、
図7に示すようにプランジャ10及び可動ブロック14をポットブロック11から退避させた後、図示しない型開閉機構を通じて上型8を型開きする。このとき、クリーニングブラシ(図示せず)等を用いて可動ブロック14の下面、ポットブロック11の上面、及びポットブロック11の下面(ランナ板11cの下面)をクリーニングする。また、上型ランナ11a及び上型カル(図示せず)で硬化した不要樹脂23は中間プレート6に一体に貼り付いたまま離型する。
【0037】
次いで、型開きした下型7から、搬送プレート4ごとモータコア1を取り出して、ディゲート装置24に搬送する。尚、モータコア1をディゲート装置24に搬送する前に、搬送プレート4ごと冷却装置に搬入して所定温度(例えば常温)まで冷却してからディゲート装置24へ搬送しても良い。また、モータコア1をディゲート装置24でディゲートした後に、冷却装置に搬入して所定温度(例えば常温)まで冷却して収納しても良い。
【0038】
図8(A)において、ディゲート装置24には、中心部から径方向に内側ディゲートピン24aと外側ディゲートピン24bが各々ベース板24cに突設されている。内側ディゲートピン24aと外側ディゲートピン24bは、例えば同心円形に配置されている。また、ベース板24cにはコイルばね24dを介して可動支持板24eが支持されている。内側ディゲートピン24aと外側ディゲートピン24bは可動支持板24eを貫通して突設されている。
【0039】
図8(A)に示すようにモータコア1を搬送プレート4ごと可動支持板24eに載置する。このとき、内側貫通孔4bに内側ディゲートピン24a、外側貫通孔4cに外側ディゲートピン24bが挿入され、外側ディゲートピン24bは環状断熱部材5の貫通孔5dまで挿入される。
【0040】
次に
図8(B)に示すように、可動支持板24e(もしくは搬送プレート4)を押し下げると、内側ディゲートピン24aがモータコア1まで到達し、外側ディゲートピン24bが中間プレート6を押し上げる。同図に示すように、中間プレート6とモータコア1に充填されたモールド樹脂22が分離する。この場合、中間プレート6を押し上げることによって段付部6eで支持されたスプルプレート6bを一括してディゲートすることができるため、簡易な構成により、確実にディゲートすることができる。なお、本実施例では、不要樹脂23aをこの段階で除去しないために、スプルプレート6bを引き離すようにディゲートすることで、スプル6cと連通溝6dとの境目で破断している。
【0041】
さらに、搬送プレート4を押し下げることにより、
図9(A)に示すように、モータコア1が搬送プレート4から分離する。そして、
図9(B)に示すように、中間プレート6を取り外してからモータコア1を搬送プレート4から取り外す。このとき、中間プレート6には不要樹脂23(成形品カル、成形品ランナ)が一体に形成されており、モータコア1には成形品ゲート相当する不要樹脂23aが残存した状態にある。このように、スプル6cが磁石挿入孔2と直接接続されていないために、ディゲートする際の衝撃によって磁石挿入孔2におけるマイクロクラック発生のリスクを軽減して磁石挿入孔2に充填されたモールド樹脂22の強度を向上することができる。
【0042】
なお、モータコア1の表面に残存した不要樹脂23は、仕様に応じて例えばレーザ照射により除去される。このため、樹脂モールド装置では、レーザ照射部を備え、樹脂モールドしたモータコア1の表面に残存した不要樹脂23aにレーザを照射することで昇華させて除去する残存樹脂除去部(図示せず)を備えているのが好ましい。
【0043】
この場合、金属材などをモールド樹脂22の表面に沿って移動させることで残存した不要樹脂23aを掻き落すような方法と比較し、振動を加えずに除去作業を行うことができるため、磁石挿入孔2内におけるモールド樹脂22の密着状態を損なうことなく、高性能なモータコア1を提供することができる。なお、この残存樹脂除去部により磁石挿入孔2内の周囲(例えばエアベント)に漏出したモールド樹脂22がモータコア1の表面に残存しているときに併せて除去できるようにしてもよい。また、磁石3の端面にモールド樹脂22が薄膜として残って後の工程での剥離が問題になるときには、これを併せて除去してもよい。この場合、残存樹脂除去部には、モータコア1の両面において一括して残存したモールド樹脂22を除去できるように、モータコア1の両面に対向して一対のレーザ照射部を備える構成としてもよい。
【0044】
図10(A)において、例えばスプル6cの下面側から不要樹脂23を押し上げることにより中間プレート6から不要樹脂23を分離したあと、
図10(B)に示すように中間プレート6の両面に対して一対のクリーニングブラシ25等を用いてクリーニングする工程を有していてもよい。
これにより、樹脂モールド後の中間プレート6をクリーニングして再利用することができ、生産効率を向上させることができる。この場合、例えば中間プレート6からスプルプレート6bを取り外して当該スプルプレート6bのみをクリーニングを行い、プレート本体6aはそのまま再利用することもできる。これによりスプルプレート6bを多く準備しておくことにより、スプル6c及び連通溝6dにおける汚れのひどいスプルプレート6bを差し替えて使用したり、モールド工程の1サイクルに対して十分に長い時間をかけてクリーニングしたりすることができ、クリーニングを確実に行って成形品質を向上することができる。
【0045】
次に樹脂モールド装置の他例について
図11(A)(B)を参照して説明する。前述した樹脂モールド装置と同一部材には同一番号を付して説明を援用するものとする。以下、異なる構成を中心に説明する。
図11(A)において、搬送プレート4には、磁石挿入孔2に対応してピン挿入孔4d(貫通孔)が複数設けられている。各ピン挿入孔4dには、可動ピン26(可動部材)が各々挿入されている。尚、搬送プレート4を用いない場合には、下型7にピン挿入孔及び可動ピンが設けられていてもよい。
【0046】
また、下型7には、ピン挿入孔4dに連通する下型挿入孔7bが形成されている。この下型挿入孔7bには支持ピン27が各々挿入されている。各支持ピン27は下型7内に設けられた可動支持プレート29に一体として支持されている。可動ピン26は、ピン上端部がピン挿入孔4dの上端より下がった位置となるように支持ピン27に支持されている。このピン挿入孔4dに挿入された可動ピン26の上方空間(凹部)がオーバーフローキャビティ28となる。可動ピン26及びこれに連なる支持ピン27は、モータコア1の磁石挿入孔2の配置に対応して所定間隔をあけて円形配置されている。
【0047】
モータコア1に設けられる磁石挿入孔2は複数存在し、磁石挿入孔2内の容積もばらつきがあり、磁石3は磁石挿入孔2内において型内に設けた固定部材を用いずに固定したい場合もある。このため、磁石挿入孔2内の隙間(クリアランス)を一定にするのは容易ではない。そこで、磁石挿入孔2と磁石3との隙間(容積)を超えるモールド樹脂22を充填することで全ての磁石挿入孔2に充填されるモールド樹脂22の充填状態を揃えることなくオーバーフローキャビティ28へのモールド樹脂22の溢れ出しをもって確実に充填することとした。また、充填する過程において磁石挿入孔2にボイドが残ってしまっていてもこれを確実に排出して未充填を防止することができる。なお、オーバーフローキャビティ28に接続するようにエアベント(図示せず)を設けることで充填を促進することもできる。
【0048】
可動支持プレート29は、ウェッジ機構30より昇降可能に支持されている。可動支持プレート29は左右一対の支持駒31に支持されている。各支持駒31は可動駒32と装置中央部から左右両端側に向って各々傾斜するテーパー面どうしが当接して支持されている。ウェッジ機構30は、駆動源33(モータ)によりねじ軸33aを回転させると可動駒32が下型ベース34上を退移動するようになっている。尚、駆動源33はモータに限らずソレノイドやシリンダ等の他の駆動源であってもよい。また、可動支持プレート29をソレノイドやシリンダ等の他の駆動源で昇降方向に直接駆動してもよい。
【0049】
図11(A)に示すように型閉じ状態で、プランジャ10を下動させて、ポット9内で溶融したモールド樹脂22を上型ランナ11a、スプル6c及び連通溝6dを通じて磁石挿入孔2に充填する。このとき、磁石挿入孔2のモールド樹脂注入方向と反対側のオーバーフローキャビティ28へモールド樹脂22を溢れ出させる。
【0050】
次いで、
図11(B)に示すように、ウェッジ機構30の駆動源33を起動して可動駒32を下型7の中心よりに移動させると、可動駒32が支持駒31をテーパー面に沿って押し上げ、可動支持プレート29に立設された支持ピン27を介して可動ピン26をピン挿入孔4dと面一になる位置まで押し上げる。このとき、オーバーフローキャビティ28に溢れ出したモールド樹脂22が磁石挿入孔2へ押し戻され、最終樹脂圧が維持される。これにより、仮にモールド樹脂22に気泡が混入しても消滅させることができ、磁石挿入孔2内において未充填領域をなくすことができる。換言すれば、モールド樹脂22の充填密度を高めることで、磁石挿入孔2内におけるモールド樹脂22の強度を高くすることができる。この状態で、モールド樹脂22を所定温度で加熱硬化させて磁石3をモータコア1と一体に成形することにより、成形品質を向上させることができる。よって、磁石挿入孔2に挿入された磁石3と孔壁面との狭い隙間にモールド樹脂22を確実に充填することができる。また、型開きの際のモータコア1のスプリングバックによって型開きの際に磁石挿入孔2の孔壁面に対するモールド樹脂22の剥離が問題となるときには、型締め状態でクランプ力を低下させる際にモールド樹脂22をさらに充填することにより、このような問題を改善することも可能となる。
【0051】
以上説明したように、上型ランナ11aに接続され板厚方向に貫通するスプル6cが形成されると共に当該スプル6cと磁石挿入孔2とを連通する連通溝6dが形成された中間プレート6を介してモータコア1がモールド金型にクランプされるので、モータコア1の品種交換によって磁石挿入孔の配置が変更されても、中間プレート6を交換するだけで対応することができ、段取替えに手間取ることはなく装置稼働率も向上する。
また、第2のヒータ14bによりプランジャ10を予熱する可動ブロック14とを備えているので、予熱したプランジャ14の温度低下を極力抑えることができる。
また、可動ブロック14は、プランジャ10の昇降動作に連動してポットブロック11に対して接離動することにより、ポットブロック11のポット9にモールド樹脂を供給する際には、可動ブロック14を退避させて十分な作業空間を形成することができる。また、モールド樹脂22を注入する際には、ポットブロック11に可動ブロック14を重ね合わせて予熱されたプランジャ10をそのままポット9に進入させることができるので、プランジャ10の温度低下を防ぎ、樹脂モールドに要するサイクルタイムを短縮することができる。
【0052】
尚、上記樹脂モールド装置は、上型を可動型、下型を固定型として説明したが、上型を固定型、下型を可動型としてもよく、双方を可動型としてもよい。また、下型7と上型8とを天地逆転した構成としてもよい。この場合、プランジャ10とモールド樹脂22とを可動ブロック14に収容可能とすると共に、モータコア1を段付部6eが逆向きに形成された中間プレート6を介してポットブロック11に搭載した状態で成形を行うことになる。
また、中間プレート6やモータコア1の他に、モールド樹脂22(樹脂タブレット)も、モールド金型に搬入される前に予め予熱されており、ローダー若しくはロボット等の搬送手段によってプレス部に備えたモールド金型に搬入されるようになっていることが好ましい。
【0053】
また、上記プレート本体6aの下面の中央には、モータコア1の中心貫通孔1aに挿入して位置決めするための凸部を設けてもよい。この場合、中心貫通孔1aにキー溝が形成されているときには、中心貫通孔1aにキー溝に嵌め合わせて角度を合わせるための突起を設けてもよい。同様に、プレート本体6aの上面に凸部もしくは凹部を設けることで、ランナ板11cの中央下面に設けた凸部もしくは凹部との嵌め合いにより位置決めし、中心を合わせるような構成としてもよい。これらの構成によれば、簡易な構成により連通溝6dと磁石挿入孔2とを正確に位置決めすることが可能である。また、スプル6c及び連通溝6dに近い位置を基準に位置決めするため、正確な位置決めが可能となる。なお、プレート本体6aの中央に凸部を設けるときには、プレート本体6aの中央にモータコア1の中心貫通孔1aよりも十分に大きい挿入孔を設け、この挿入孔に凸部が形成された部材を嵌め合わせる構成としてもよい。この場合、モータコア1の品種変更(中心貫通孔1a形状の変更)に容易に対応することができる。
【0054】
また、上記搬送プレート4に替えて、モータコア1の中心貫通孔1aに嵌め込み可能な位置決め軸部を上面に配置した搬送プレート4を用いる構成としてもよい。この場合、加圧によるモータコア1の厚みの変化に対応できるように、弾性部材(例えばスプリング)により嵌め込む部材を支持するような構成とすることができる。この場合、例えばプレート本体6aに孔部を設けてこれに対して挿入することでモータコア1上下の部材の位置合わせ(芯出し)を行ってもよい。
【0055】
また、ランナ板11cがポットブロック11に対して分離可能とする構成について説明したが、ランナ板11cに相当する形状がポットブロック11の下面に溝状掘り込まれていてもよい。また、ランナ板11cは、中間プレート6の上に重ねて搬送してもよい。この場合、上述のランナ板11cとは逆に上型ランナ11aの形状は上側が広くなるように形成することにより離型が容易となるため好ましい。
【0056】
また、上述のスプルプレート6bでは、段付部6eに挿入されることでプレート本体6aに対して位置合わせされる。しかしながら、本発明はこれに限定されない。例えば、ランナ板11cの下面に立設した2つ以上のピンを、同じ間隔でスプルプレート6bに設けた2つ以上の貫通孔にそれぞれ挿入することで位置決めすることもできる。この場合、線膨張率の差によってピンの挿入が困難なときには1つの丸孔と共に、それ以外の孔として丸孔に対する長手方向に伸ばされた長孔を用いることで位置決めを行うことができる。この場合、スプルプレート6bが段付部6eに対して十分に小さく段付部6e内で移動可能としておくことが好ましい。これにより、例えばランナ板11cを中間プレート6の上に重ねて搬送するときには、ランナ板11cが鋼板、スプルプレート6bがセラミックといったように異なる材質となる構成であっても破損することなく正確な位置決めが可能となる。
【0057】
また、上述のスプルプレート6bは、段付部6eによりプレート本体6aに嵌め込まれる。これに替えて、スプルプレート6bの側面をテーパー形状とすると共に、このテーパー形状のスプルプレート6bを嵌め込み可能な上側に拡がるテーパー孔をプレート本体6aに設けて、テーパー同士を嵌め合わせることにより位置決めすることができる。
【0058】
また、スプルプレート6bでは、上述のスプル6cが連通溝6dを介して磁石挿入孔2に接続されるが本発明はこれに限定されない。例えば、連通溝6dを設けずスプル6cを磁石挿入孔2に直接接続するような構成としてもよい。また、スプル6cが、その長さ方向の中間位置において径が最も小さくなるように構成することでモールド樹脂22がスプル6c内で分離するようにしてもよい。これにより、磁石挿入孔2におけるマイクロクラック発生のリスクを軽減することができる。また、連通溝6dを設けないときには、スプル6cの先端側(下端側)の外周を突起させることで磁石挿入孔2に挿入することで、ディゲートしたときの不要樹脂23を磁石挿入孔2から突出させないようにして、不要樹脂23の除去作業を不要として、生産コストを削減することもできる。さらに、スプルプレート6bの上面には、ポット9とスプル6cとを接続するランナを設ける構成としてもよい。