【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成27年2月28日、平成26年度日本大学理工学部航空宇宙工学科卒業研究発表会 平成27年3月18日、平成26年度日本大学理工学部航空宇宙工学科卒業研究要旨集
【解決手段】少なくとも2つのティルト翼を備え、ティルト翼のそれぞれに少なくとも1つの回転翼を備え、ティルト翼のそれぞれのティルト角に基づいて回転翼の回転数を含む複数の制御対象を制御する制御装装置を備えるティルト翼機1。制御装置は、ティルト翼のティルト角のべき級数をパラメータとする状態方程式に基づいてティルト翼を備える航空機を制御する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[実施形態]
以下図を参照して本実施形態におけるティルト翼機1の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態におけるティルト翼機1の一例を示す模式図である。
図1に示すX
BY
BZ
B直交座標系は、ある定常状態のティルト翼機1の機体軸を示す。具体的には、X
B軸は、ティルト翼機1の機体の中心軸である。また、Y
B軸は、X
B軸と直交しており、機体の左右方向の軸である。また、Z
B軸は、X
B軸、Y
B軸とそれぞれ直交する軸である。
図1に示すとおり、本実施形態のティルト翼機1は、主翼WGを備える。具体的には、主翼WGには、前方に前翼FWと、後方に後翼BWとが含まれる。更に具体的には、前翼FWには、右側に右前翼RFWと、左側に左前翼LFWとが含まれる。後翼BWには、右側に右後翼RBWと、左側に左後翼LBWとが含まれる。すなわち、本実施形態において、主翼WGとは、左前翼LFW、右前翼RFW、右後翼RBW、及び左後翼LBWである。以下、右前翼RFWと、右後翼RBWとを総称して右側翼RWとも称する。また、左前翼LFWと、左後翼LBWとを総称して左側翼LWとも称する。
本実施形態のティルト翼機1の主翼WGは、ティルト翼である。すなわち、本実施形態の主翼WGは、機体に対して主翼WGのティルト角ξがそれぞれ可変である。
【0013】
以下、
図2を参照して、本実施形態のティルト角ξについて具体的に説明する。
図2は、本実施形態におけるティルト角ξの一例を示す模式図である。
図2に示すXY直交座標系は、Y軸が主翼WGの翼弦線である。また、
図2に示すXY直交座標系は、X軸がY軸と、X
BZ
B平面上で直交する軸である。具体的には、前翼FWのY軸がY
1軸であり、X軸がX
1軸である。また、後翼BWのY軸がY
2軸であり、X軸がX
2軸である。
図2に示すとおり、主翼WGは、機体と、主翼WGとを接続する軸であるティルト翼軸AX周りに角度を可変する。具体的には、前翼FWは、機体と、前翼FWとを接続する軸であるティルト翼軸AX
1周りに角度が変化する。また、後翼BWは、機体と、後翼BWとを接続する軸であるティルト翼軸AX
2周りに角度が変化する。ティルト角ξは、X
B軸を0°とした場合のX
B軸と、Y軸とのなす角である。ティルト角ξは、X
B軸を0°としてZ
B軸のマイナス方向へ90°可変する。
この一例では、前翼FWである右前翼RFWと、左前翼LFWとが同一の角度によって可変する場合について説明する。また、後翼BWである右後翼RBWと、左後翼LBWとが同一の角度によって可変する場合について説明する。
図2に示すとおり、前翼FWの角度をティルト角ξ
1と称する。また、後翼BWの角度をティルト角ξ
2と称する。
【0014】
ここで、主翼WGは、主翼WG毎にサーボ機構であるティルトサーボ機構TS(不図示)を備える。ティルトサーボ機構TSは、主翼WGのティルト角ξを制御する。主翼WGには、ティルト角ξに応じた、揚力flと、抗力dとが生じる。
すなわち、左前翼LFWには、ティルト角ξに応じた主翼揚力fl1と、主翼抗力d1とが生じる。右前翼RFWには、ティルト角ξに応じた主翼揚力fl2と、主翼抗力d2とが生じる。右後翼RBWには、ティルト角ξに応じた主翼揚力fl3と、主翼抗力d3とが生じる。左後翼LBWには、ティルト角ξに応じた主翼揚力fl4と、主翼抗力d4とが生じる。またティルト角ξを可変することによって、主翼WGに生じる揚力flと、抗力dとは調整される。
【0015】
なお、ここでは前翼FWがティルト角ξ
1、及び後翼BWがティルト角ξ
2によって可変する場合について説明したが、これに限られない。ティルト翼機1の左前翼LFWと、右前翼RFWと、右後翼RBWと、左後翼LBWとは、それぞれが異なる角度によって傾いてもよい。
【0016】
次に、
図1に戻り、推進ユニットPUについて説明する。本実施形態のティルト翼機1は、主翼WG毎に少なくとも1つの推進ユニットPUを備える。具体的には、前翼FWは、推進ユニットPU1と、推進ユニットPU2とを備える。後翼BWは、推進ユニットPU3と、推進ユニットPU4とを備える。更に具体的には、左前翼LFWは、推進ユニットPU1を備える。右前翼RFWは、推進ユニットPU2を備える。右後翼RBWは、推進ユニットPU3を備える。左後翼LBWは、推進ユニットPU4を備える。この一例では、主翼WGは、右側翼RWの両端から中央となる位置と、左側翼LWの両端から中央となる位置とに推進ユニットPUを備える場合について説明する。
【0017】
以下、
図3を参照して推進ユニットPUの詳細について説明する。
図3は、本実施形態における推進ユニットPUの一例を示す模式図である。推進ユニットPUは、原動機Mと、回転翼PWと、回転軸PAXとを備える。回転翼PWと、原動機Mとは、回転軸PAXによって接続される。原動機Mは、回転することによって回転軸PAXを介して回転翼PWを駆動する。原動機Mは、フェアリングに覆われており、原動機Mが、回転翼PWを駆動することにより、ロータ推力Tが発生する。ロータ推力Tは、回転翼PWの前方、すなわち
図3に示すY軸の正の方向に発生する。また、推進ユニットPUは、回転翼PWの回転数RUを可変することによって、ロータ推力Tを調整する。
具体的には、推進ユニットPU1は、原動機M1が回転翼PW1を駆動することにより、ロータ推力T
1を発生させる。推進ユニットPU2は、原動機M2が回転翼PW2を駆動することにより、ロータ推力T
2を発生させる。推進ユニットPU3は、原動機M3が回転翼PW3を駆動することにより、ロータ推力T
3を発生させる。推進ユニットPU4は、原動機M4が回転翼PW4を駆動することにより、ロータ推力T
4を発生させる。
図3に示すY軸が地表面に対して鉛直方向である場合、ロータ推力Tは、ティルト翼機1の揚力となる。また、
図3に示すY軸が地表面に対して水平方向である場合、ロータ推力Tは、ティルト翼機1の推力となる。
【0018】
次に、
図1に戻り、フラッペロンFAについて説明する。
図1に示すとおり、本実施形態のティルト翼機1は、主翼WG毎に少なくとも2つのフラッペロンFAを備える。具体的には、前翼FWは、フラッペロンFA1と、フラッペロンFA2とを備える。後翼BWは、フラッペロンFA3と、フラッペロンFA4とを備える。更に具体的には、左前翼LFWは、フラッペロンFA1を備える。右前翼RFWは、フラッペロンFA2を備える。右後翼RBWは、フラッペロンFA3を備える。左後翼LBWは、フラッペロンFA4を備える。
【0019】
なお、ここではティルト翼機1がフラッペロンFAを備える場合について説明したが、これに限られない。ティルト翼機1は、フラッペロンFAに代えてエルロンと、フラップとのいずれかを備えてもよい。また、ティルト翼機1は、エルロンと、フラップとの両方を備えてもよい。
【0020】
以下、
図3を参照してフラッペロン偏向推力Fについて説明する。
図3に示すとおり、フラッペロンFAは、機体と、フラッペロンFAとを接続する軸であるフラッペロン軸FAX周りに角度を可変する。フラッペロン軸FAX周りにフラッペロンFAの角度が可変することにより、フラッペロンFAは、主翼WGからフラッペロン偏向角DAが示す角度だけ傾く。具体的には、フラッペロン軸FAXを原点として、Y軸と、フラッペロンFAの翼弦線とのなす角がフラッペロン偏向角DAである。
フラッペロンFAは、Y軸を0°としてX軸の正の方向と、負の方向とに傾く。フラッペロン偏向角DA1は、Y軸を0°として、X軸の正の方向への傾きを示す。フラッペロン偏向角DA2は、Y軸を0°として、X軸の負の方向への傾きを示す。フラッペロンFAは、フラッペロン偏向角DAに応じたフラッペロン偏向推力Fを生じさせる。フラッペロンFAは、フラッペロン偏向角DA1が示す角度で傾く場合、X軸の負の方向にフラッペロン偏向推力Fを生じさせる。また、フラッペロンFAは、フラッペロン偏向角DA2が示す角度で傾く場合、X軸の正の方向にフラッペロン偏向推力Fを生じさせる。
【0021】
具体的には、左前翼LFWは、フラッペロン偏向角DAに応じたフラッペロン偏向推力F
1を生じさせる。右前翼RFWは、フラッペロン偏向角DAに応じたフラッペロン偏向推力F
2を生じさせる。右後翼RBWは、フラッペロン偏向角DAに応じたフラッペロン偏向推力F
3を生じさせる。左後翼LBWは、フラッペロン偏向角DAに応じたフラッペロン偏向推力F
4を生じさせる。
フラッペロンFAは、フラッペロンFA毎にフラッペロン駆動部AC(不図示)を備える。フラッペロン駆動部ACは、フラッペロン偏向角DAを制御する。
【0022】
次に、
図1に戻り、ラダーLDについて説明する。
図1に示すとおり、本実施形態のティルト翼機1は、ラダーLDを備える。ラダーLDは、機体と、ラダーLDと接続する軸であって、X
BZ
B平面上に存在するラダー軸LAX周りに角度を可変する。ラダー軸LAX周りにラダーLDの角度が可変することにより、ラダーLDは、X
B軸からラダー偏向角LDA(不図示)が示す角度だけ傾く。具体的には、ラダー軸LAXを原点として、X
B軸と、ラダーLDの翼弦線とのなす角がラダー偏向角LDAである。
ラダーLDは、X
B軸を0°として、Y
B軸の正の方向と、負の方向とに傾く。ラダー偏向角LDA1は、X
B軸を0°として、Y
B軸の正の方向への傾きを示す。ラダー偏向角LDA2は、X
B軸を0°として、Y
B軸の負の方向への傾きを示す。ラダーLDは、ラダー偏向角LDAに応じたラダー偏向推力LDF(不図示)を生じさせる。ラダーLDは、ラダー偏向角LDA1が示す角度で傾く場合、Y
B軸の負の方向へラダー偏向推力LDFを生じさせる。また、ラダーLDは、ラダー偏向角LDA2が示す角度で傾く場合、Y
B軸の正の方向へラダー偏向推力LDFを生じさせる。
ラダーLDは、ラダー駆動部LAC(不図示)を備える。ラダー駆動部LACは、ラダー偏向角LDAを制御する。
【0023】
上述したように、ティルト翼機1は、前翼FWと、後翼BWとを備える。前翼FWは、推進ユニットPU1と、推進ユニットPU2とを備える。後翼BWは、推進ユニットPU3と、推進ユニットPU4とを備える。
本実施形態のティルト翼機1は、ティルト角ξ
1と、ティルト角ξ
2とに基づいて、推進ユニットPUが備える回転翼PWの回転数RUと、フラッペロンFAのフラッペロン偏向角DAとが制御される。これにより、ティルト翼機1に働く揚力、推力、及び抗力が調整される。
【0024】
次に、
図4を参照して、ティルト翼機1の飛行動作について説明する。
図4は、本実施形態におけるティルト翼機1の飛行の一例を示す第1の模式図である。
図4に示すとおり、ティルト翼機1は、ティルト角ξ
1と、ティルト角ξ
2とを90°にした状態で飛行する。この飛行モードをヘリコプタモードと称する。ティルト翼機1は、離陸時、着陸時、及びホバリング飛行時にヘリコプタモードによって飛行する。
【0025】
次に、
図5を参照して、ティルト翼機1の飛行動作について説明する。
図5は、本実施形態におけるティルト翼機1の飛行の一例を示す第2の模式図である。
図5に示すとおり、ティルト翼機1は、ティルト角ξ
1と、ティルト角ξ
2とを0°にした状態で飛行する。この飛行モードを飛行機モードと称する。ティルト翼機1は、巡航時に飛行機モードによって飛行する。
上述したように、ティルト翼機1は、飛行中にティルト角ξを可変させることによって飛行状態が異なる。
【0026】
なお、この一例では、ティルト翼機1は、巡航する場合には、
図5に示すとおりティルト角ξを0°にした状態で飛行する場合について説明したが、これに限られない。ティルト翼機1は、着陸時、上昇時、及び下降時に
図5に示すティルト角ξを0°にした状態で飛行してもよい。
なお、この一例では、ティルト翼機1は、ティルト角ξが0°、又は90°である場合の飛行について説明したが、これに限られない。すなわち、ティルト翼機1は、ティルト角ξを0°から90°までのある角度で飛行してもよい。
【0027】
次に、
図6を参照して、ティルト翼機1の動作の詳細について説明する。
図6は、本実施形態におけるティルト翼機1の動作の一例を示す模式図である。
本実施形態では、ティルト翼機1がX
B軸方向へ進行する速度を、速度Uと称する。また、ティルト翼機1がY
B軸方向へ進行する速度を、速度Vと称する。また、ティルト翼機1がZ
B軸方向へ進行する速度を、速度Wと称する。ティルト翼機1は、その速度を測定するために機速センサ310(不図示)を備える。ティルト翼機1は、機速センサ310によって速度U、速度V、及び速度Wを検出する。
【0028】
また、ティルト翼機1は、ローリング、ピッチング、及びヨーイングすることによって姿勢が変化する。本実施形態では、ティルト翼機1は、X
B軸回りに角速度Pによってローリングする。ティルト翼機1は、Y
B軸回りに角速度Qによってピッチングする。ティルト翼機1は、Z
B軸周りに角速度Rによってヨーイングする。ティルト翼機1は、ローリングすることにより、ある定常状態からロール角φが示す角度だけ傾く。また、ティルト翼機1は、ピッチングすることにより、ある定常状態から、ピッチ角θが示す角度だけ傾く。また、ティルト翼機1は、ヨーイングすることにより、ある定常状態から、ヨー角ψが示す角度だけ傾く。ティルト翼機1は、傾きを検出するため、姿勢センサ320(不図示)を備える。この姿勢センサ320とは、例えば、ジャイロセンサ、加速度センサ等である。ティルト翼機1は、姿勢センサ320によって角速度P、角速度Q、角速度R、ロール角φ、ピッチ角θ、及びヨー角ψを検出する。
【0029】
本実施形態では、ティルト翼機1がUAVである場合について説明する。この一例では、ティルト翼機1が、予め設定される目的地座標xdに向かって飛行する場合について説明する。
ティルト翼機1は、機体の位置を検出するため、位置検出センサ330(不図示)を備える。これにより、ティルト翼機1は、機体の現在の位置を示す座標xを検出する。
また、ティルト翼機1は、機体の高度を検出するため、高度検出センサ340(不図示)を備える。これにより、ティルト翼機1は、現在の高度を示す高度zを検出する。この高度検出センサ340とは、例えば、気圧高度計、電波高度計等である。
すなわち、ティルト翼機1は、目的地座標xdへ飛行するため、座標x、及び高度zを検出する。
また、ティルト翼機1は、現在のティルト角ξを検出するため、ティルト角検出センサ350(不図示)を備える。これにより、ティルト翼機1は、現在のティルト角ξを検出する。このティルト角検出センサ350とは、例えば、ジャイロセンサ、加速度センサ等である。
上述したように、ティルト翼機1は、各種センサによって、速度と、姿勢と、座標と、高度と、ティルト角ξとを検出する。
【0030】
なお、ここでは、ティルト翼機1が各種センサによって速度U、速度V、速度W、座標x、高度zとを検出する場合について説明したが、これに限られない。ティルト翼機1は、速度U、速度V、速度W、座標x、高度zとをGPS(Global Positioning System)のデータに基づいて検出してもよい。
【0031】
次に、
図7を参照して、ティルト翼機1の動作モード毎の姿勢制御について説明する。
図7は、本実施形態における動作モード毎のティルト翼機1の姿勢制御の一例を示す表である。ティルト翼機1は、ヘリコプタモードと、飛行機モードと、遷移モードによって飛行する。
まず、ティルト翼機1がヘリコプタモードによって飛行する場合について説明する。
この場合、ティルト翼機1は、前翼FWと、後翼BWとの推力差によってピッチングをする。具体的には、前翼FWの推力を、後翼BWの推力より大きくすることにより、ティルト翼機1が上方にピッチングする。また、前翼FWの推力を、後翼BWの推力より小さくすることにより、ティルト翼機1が下方にピッチングする。
また、ティルト翼機1は、右側翼RWと、左側翼LWとの推力の差によってローリングする。具体的には、右側翼RWの推力を、左側翼LWの推力より大きくすることにより、ティルト翼機1は、右側翼RWが上方であって、かつ左側翼LWが下方の状態にローリングする。また、右側翼RWの推力を、左側翼LWの推力より小さくすることにより、ティルト翼機1は、右側翼RWが下方であって、かつ左側翼LWが上方の状態にローリングする。
また、ティルト翼機1は、右側翼RWと、左側翼LWとの揚力差によってヨーイングする。具体的には、右側翼RWのフラッペロンFAをフラッペロン偏向角DA2へ、左側翼LWのフラッペロンFAをフラッペロン偏向角DA1へ傾けることにより、ティルト翼機1は、右方向にヨーイングする。また、右側翼RWのフラッペロンFAをフラッペロン偏向角DA1へ、左側翼LWのフラッペロンFAをフラッペロン偏向角DA2方向へ傾けることにより、ティルト翼機1は、左方向にヨーイングする。
【0032】
次に、ティルト翼機1が飛行機モードによって飛行する場合について説明する。
この場合、ティルト翼機1は、前翼FWと、後翼BWとの揚力差によってピッチングする。具体的には、前翼FWの揚力を、後翼BWの揚力より大きくすることにより、ティルト翼機1が上方にピッチングする。また、前翼FWの揚力を、後翼BWの揚力より小さくすることにより、ティルト翼機1が下方にピッチングする。
また、ティルト翼機1は、右側翼RWと、左側翼LWとの揚力差によってローリングする。具体的には、右側翼RWの揚力を、左側翼LWの揚力より大きくすることにより、ティルト翼機1は、右側翼RWが上方であって、かつ左側翼LWが下方の状態にローリングする。また、右側翼RWの揚力を、左側翼LWの揚力より小さくすることにより、ティルト翼機1は、右側翼RWが下方であって、かつ左側翼LWが上方の状態にローリングする。
また、ティルト翼機1は、右側翼RWと、左側翼LWとの推力の差、及びラダー偏向角LDAによってヨーイングする。具体的には、右側翼RWの推力を、左側翼LWの推力より大きくすること、及びラダーLDを、ラダー偏向角LDA1へ傾けることにより、ティルト翼機1は、左方向へヨーイングする。また、右側翼RWの推力を、左側翼LWの推力より小さくすること、及びラダーLDを、ラダー偏向角LDA2へ傾けることにより、ティルト翼機1は、右方向へヨーイングする。
【0033】
次に、ティルト翼機1が遷移モードによって飛行する場合について説明する。
遷移モードとは、ティルト翼機1が、ヘリコプタモードから飛行機モードへの遷移状態、又は、飛行機モードからヘリコプタモードへの遷移状態にある場合の動作モードを示す。より具体的には、ティルト角ξが可変の過程である状態が遷移モードである。
ティルト翼機1が遷移モードで飛行している場合、ティルト翼機1の速度、及び姿勢は、ティルト角ξに基づいて制御される。以下、ティルト翼機1が遷移モードによって飛行する場合の制御について説明する。
【0034】
以下、
図8を参照してティルト翼機1の制御の詳細について説明する。
図8は本実施形態におけるティルト翼機1の構成の一例を示す模式図である。
図8に示すとおり、ティルト翼機1は、駆動装置20と、検出装置30と、制御装置10を備える。
検出装置30は、機速センサ310と、姿勢センサ320と、位置検出センサ330と、高度検出センサ340と、ティルト角検出センサ350と、送信部360とを備える。機速センサ310は、ティルト翼機1の速度Uと、速度Vと、速度Wとを検出する。姿勢センサ320は、ティルト翼機1の角速度Pと、角速度Qと、角速度Rと、ロール角φと、ピッチ角θと、ヨー角ψとを検出する。位置検出センサ330は、ティルト翼機1の座標xを検出する。高度検出センサ340は、ティルト翼機1の高度zを検出する。ティルト角検出センサ350は、ティルト翼機1のティルト角ξを検出する。送信部360は、速度Uと、速度Vと、速度Wと、角速度Pと、角速度Qと、角速度Rと、ロール角φと、ピッチ角θと、ヨー角ψと、座標xと、高度zと、ティルト角ξとを検出情報として制御装置10へ供給する。
【0035】
制御装置10は、制御部110と、記憶部120とを備える。
記憶部120には、予め定数情報が記憶される。定数情報とは、例えば、重力加速度、機体質量、揚力係数、主翼WGの面積、フラッペロンFAの面積、X
B軸から推進ユニットPUの中心までの距離、Y
B軸から推進ユニットPUの中心までの距離、X
B軸からフラッペロンFAの中心までの距離、Y
B軸からフラッペロンFAの中心までの距離、及びティルト翼機1が左右の方向へ進んだ際に発生する抗力等である。
【0036】
制御部110は、その機能部としての取得部111と、縦運動算出部112と、横・方向運動算出部113と、駆動情報算出部114と、出力部115とを備える。
取得部111は、検出装置30から検出情報を取得する。取得部111は、取得したセンサ情報を縦運動算出部112と、横・方向運動算出部113とへ供給する。
縦運動算出部112は、検出装置30が検出したセンサ情報と、記憶部120に予め記憶される定数情報とに基づいて、ティルト翼機1の縦運動を示す縦出力状態ベクトルdx
xz/dtを算出する。縦運動とは、X
B軸、及びZ
B軸によって示される平面上におけるティルト翼機1の運動である。また、縦出力状態ベクトルdx
xz/dtとは、ティルト翼機1現在の入力に対し、次の縦運動の状態を示すベクトルである。
縦運動算出部112は、式(1)に基づいて、ティルト翼機1の次の状態を示す縦出力状態ベクトルdx
xz/dtを算出する。ここでは、ティルト角ξ
1と、ティルト角ξ
2とが同じ角度である場合について説明する。
【0037】
【数1】
また、式(1)中の行列A
xz(ξ)と、行列B
xz(ξ)とは、式(2)と、式(3)とによって示される。
【0040】
式(2)と、式(3)とが示すとおり、ティルト翼機1の次の状態を示す縦出力状態ベクトルdx
xz/dtは、ティルト角ξのべき級数をパラメータとする状態方程式に基づいて算出される。すなわち、縦運動算出部112は、ティルト角ξのべき級数をパラメータとする状態方程式に基づいてティルト翼機1の次の状態を示す縦出力状態ベクトルdx
xz/dtを算出する。縦運動算出部112は、算出する縦出力状態ベクトルdx
xz/dtを出力部115へ供給する。
【0041】
横・方向運動算出部113は、検出装置30が検出したセンサ情報と、記憶部120に予め記憶される定数情報とに基づいて、ティルト翼機1の横運動と、方向の運動とを示す横・方向出力状態ベクトルdx
ry/dtを算出する。横運動と、方向運動とは、X
B軸−Z
B軸によって示される以外の平面上におけるティルト翼機1の運動である。また、横・方向出力状態ベクトルdx
ry/dtとは、ティルト翼機1の現在の入力に対し、次の状態の横運動と、方向運動との状態を示すベクトルである。
横・方向運動算出部113は、式(4)に基づいて、ティルト翼機1の次の状態を示す横・方向出力状態ベクトルdx
ry/dtを算出する。
【0042】
【数4】
また、式(4)中の行列B
ry(ξ)は、式(5)によって示される。
【0044】
式(4)が示すとおり、ティルト翼機1の次の状態を示す横・方向出力状態ベクトルdx
ry/dtは、ティルト角ξのべき級数をパラメータとする状態方程式に基づいて算出される。すなわち、横・方向運動算出部113は、ティルト角ξのべき級数をパラメータとする状態方程式に基づいてティルト翼機1の次の状態を示す横・方向出力状態ベクトルdx
ry/dtを算出する。横・方向運動算出部113は、算出した横・方向出力状態ベクトルdx
ry/dtを、出力部115へ供給する。
上述のように、縦運動算出部112と、横・方向運動算出部113とは、ティルト角ξのべき級数をパラメータとする状態方程式に基づいて、ティルト翼機1の次の状態の状態ベクトルを算出する。すなわち、ティルト翼機1の次の状態は、ティルト角ξのべき級数をパラメータとする状態方程式に基づいて算出される。
【0045】
駆動情報算出部114は、縦運動算出部112と、横・方向運動算出部113とから縦出力状態ベクトルdx
xz/dtと、横・方向出力状態ベクトルdx
ry/dtとを取得する。駆動情報算出部114は、縦出力状態ベクトルdx
xz/dtと、横・方向出力状態ベクトルdx
ry/dtとに基づいて、回転翼PWの回転数RUと、フラッペロンFAのフラッペロン偏向角DAとを調整するための駆動情報を算出する。
具体的には、駆動情報算出部114は、縦出力状態ベクトルdx
xz/dtと、横・方向出力状態ベクトルdx
ry/dtとによって示される目標値に基づいて、回転翼PWの回転数RUと、フラッペロンFAのフラッペロン偏向角DAと、を算出する。縦出力状態ベクトルdx
xz/dtと、横・方向出力状態ベクトルdx
ry/dtとによって示される目標値とは、座標x、高度z、速度U、速度V、速度W、角速度P、角速度Q、角速度R、ロール角φ、ピッチ角θ、及びヨー角ψとを示す値である。駆動情報算出部114は、算出した回転翼PWの回転数RUと、フラッペロンFAのフラッペロン偏向角DAと、ラダーLDのラダー偏向角LDAとを駆動情報として出力部115へ供給する。
出力部115は、駆動情報算出部114が算出した駆動情報を駆動装置20へ供給する。
【0046】
駆動装置20は、原動機回転制御装置210と、フラッペロン舵角制御装置220と、ラダー舵角制御装置230とを備える。
原動機回転制御装置210は、制御装置10から取得した駆動情報に基づいて推進ユニットPUが備える原動機Mを制御する。具体的には、原動機回転制御装置210は、制御装置10から取得した駆動情報によって示される回転数RUに基づいて原動機Mを制御する。
フラッペロン舵角制御装置220は、制御装置10から取得した駆動情報に基づいてフラッペロンFAが備えるフラッペロン駆動部ACを制御する。具体的には、フラッペロン舵角制御装置220は、制御装置10から取得した駆動情報によって示されるフラッペロン偏向角DAに基づいてフラッペロン駆動部ACを制御する。
ラダー舵角制御装置230は、制御装置10から取得した駆動情報に基づいてラダーLDが備えるラダー駆動部LACを制御する。具体的には、ラダー舵角制御装置230は、制御装置10から取得した駆動情報によって示されるラダー偏向角LDAに基づいてラダー駆動部LACを制御する。
【0047】
次に、
図9を参照して制御装置10の動作について説明する。
図9は、本実施形態における制御装置10の動作の一例を示す流れ図である。
取得部111は、検出装置30から検出情報を取得する(ステップS100)。取得部111は、取得した検出情報を縦運動算出部112と、横・方向運動算出部113とに供給する(ステップS110)。
縦運動算出部112は、記憶部120から定数情報を読出す(ステップS120)。縦運動算出部112は、取得部111から取得した検出情報と、記憶部120から読出した定数情報とに基づいて縦出力状態ベクトルdx
xz/dtを算出する(ステップS130)。縦運動算出部112は、算出した縦出力状態ベクトルdx
xz/dtを、駆動情報算出部114へ供給する。(ステップS140)。
横・方向運動算出部113は、記憶部120から定数情報を読出す(ステップS150)。横・方向運動算出部113は、取得部111から取得した検出情報と、記憶部120から読出した定数情報とに基づいて横・方向出力状態ベクトルdx
ry/dtを算出する。(ステップS160)。横・方向運動算出部113は、算出した横・方向出力状態ベクトルdx
ry/dtを、駆動情報算出部114へ供給する(ステップS170)。
駆動情報算出部114は、縦運動算出部112と、横・方向運動算出部113とから取得した縦出力状態ベクトルdx
xz/dtと、横・方向出力状態ベクトルdx
ry/dtとに基づいて駆動情報を算出する(ステップS180)。駆動情報算出部114は、算出した駆動情報を出力部115へ供給する(ステップS190)。
出力部115は、駆動情報算出部114から取得した駆動情報を駆動装置20へ供給する(ステップS200)。
制御装置10は、ステップS110からステップS200までを周期的に繰り返すことによって、ティルト角ξの非線形な変化に応じて駆動情報を駆動装置20へ供給することができる。
【0048】
次に、
図10と、
図11とを参照して、本実施形態の非線形制御によってティルト翼機1を制御したシミュレーション結果と、線形近似したモデルによってティルト翼機1を制御したシミュレーション結果との比較について説明する。
図10は、本実施形態におけるティルト翼機1のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。また、
図11は、線形近似したモデルによるティルト翼機1のシミュレーション結果の一例を示すグラフである。
図10に示すグラフは、本実施形態の非線形制御によってティルト翼機1を制御した場合の、状態フィードバックをシミュレーションした結果を示すグラフである。また、
図11に示すグラフは、線形近似モデルによってティルト翼機1を制御した場合の、状態フィードバックをシミュレーションした結果を示すグラフである。線形近似モデルによるティルト翼機1の制御とは、従来の技術であるゲインスケジューリングによって行われるティルト翼機1の制御である。
図10と、
図11とを比較することにより、非線形制御のシミュレーション結果と、線形近似制御のシミュレーション結果とを比較する。この比較の結果が近似している程、本実施形態の制御装置10によるティルト翼機1の制御が妥当であるといえる。
以下、非線形制御のシミュレーション結果と、線形近似制御のシミュレーション結果とを比較について説明する。
【0049】
まず、
図10と、
図11とに示されるシミュレーション結果のシミュレーション条件について説明する。いずれの制御も、同一の初期条件から制御のシミュレーションが開始される。この初期条件とは、ロール角φが5°、ピッチ角θが5°、ヨー角ψが10°である。また、ティルト角ξが90°である。また、高度zの目標値が初期から1m降下した地点である。また、速度Uの目標値が5m/sである。また、シミュレーションは、開始から20秒間とする。
【0050】
ティルト角ξについて、非線形制御と、非線形近似制御とを比較する。ティルト角ξは、初期条件である90°から70°を目標値として変化する。
図10に示すグラフでは、ティルト角ξは、シミュレーション開始から、5秒までの間に、その値が90°から68°まで変化する。ティルト角ξは5秒から8秒までの間、徐々に値が70°に近づき、8秒付近において、値が70°となり、値の変化が安定する。
図11に示すグラフでは、ティルト角ξは、シミュレーション開始から1秒までの間、90°の状態を保持する。2秒から3秒までの間、0.25秒毎に値を5°変化させる。具体的には、2秒に85°、2.25秒に85°、2.5秒に80°、2.75秒に75°、3秒に70°となる。
図10に示される本実施形態における制御では、ティルト角ξが非線形の値として扱われることに対し、
図11に示される従来の技術における制御では、ティルト角ξが線形の値として扱われる。
【0051】
ロール角φと、ピッチ角θと、ヨー角ψの変化について、非線形制御と、線形近似制御とを比較する。ロール角φと、ピッチ角θと、ヨー角ψとは、初期条件であるロール角φが5°、ピッチ角θが5°、及びヨー角ψが10°から、いずれも0°を目標値として変化する。
図10に示すグラフでは、ロール角φは、シミュレーション開始から、2秒までの間に、値が5°から−3°まで変化する。ロール角φは、2秒から6秒までの間、徐々に値が0°に近づき、6秒付近において値が0°となり、値の変化が安定する。ピッチ角θは、シミュレーション開始から、2秒までの間に、値が5°から−15°まで変化する。ピッチ角θは、2秒から4秒までの間、徐々に値が0°に近づき、6秒付近において値が0°となり、値の変化が安定する。ヨー角ψは、シミュレーション開始から、6秒までの間に、値が10°から−5°まで変化する。ヨー角ψは、6秒から12秒までの間、徐々に値が0°に近づき、12秒付近において値が0°となり、値の変化が安定する。
図11に示すグラフにおいても、ロール角φ、ピッチ角θ、及びヨー角ψは、
図10に示すグラフと同様の結果を示す。すなわち、ロール角φ、ピッチ角θ、及びヨー角ψは、本実施形態の非線形制御によって行われるティルト翼機1の制御と、線形近似モデルによって行われるティルト翼機1の制御とで、同様の値を示す。つまり、本実施形態の非線形制御によって行われるティルト翼機1の制御は妥当な制御であるといえる。
【0052】
高度zの変化について、非線形制御と、線形近似制御とを比較する。高度zは、初期状態から1mの降下を目標値として変化する。
図10に示すグラフでは、高度zは、シミュレーション開始から、2秒までの間に、値が−1.98mまで変化する。高度zは、2秒から5秒までの間、徐々に値が−1mに近づき、5秒付近において値が−1mとなり、値の変化が安定する。
図11に示すグラフでは、シミュレーション開始から、2秒までの間に、その値が−1.98mまで変化する。高度zは、2秒から4秒までの間、徐々に値が−0.98mに近づき、5秒付近において値が−1mに近づいた後、値の変化が安定する。すなわち、高度zは、本実施形態の非線形制御によって行われるティルト翼機1の制御と、線形近似モデルによって行われるティルト翼機1の制御とでは、本実施形態の非線形制御の方が、より安定した制御であるといえる。
【0053】
速度Uと、速度Vと、速度Wとの変化について、非線形制御と、線形近似制御とを比較する。速度U、速度V、及び速度Wは、いずれも初期条件の0m/sから、速度Uのみが5m/sを目標値として変化する。
図10に示すグラフでは、速度Uは、シミュレーション開始から、5秒までの間に、値が5.5m/sまで変化する。速度Uは、5秒から7秒までの間、徐々に値が5m/sに近づき、7秒付近において値が5m/sとなり、値の変化が安定する。
図11に示すグラフでは、シミュレーション開始から、4秒までの間に、値が5m/sまで変化する。速度Uは、4秒から5秒までの間、徐々に値が4.9m/sに近づき、5秒付近において値が4.9m/sとなり、値の変化が安定する。すなわち、速度Uは、本実施形態の非線形制御によって行われるティルト翼機1の制御と、線形近似モデルによって行われるティルト翼機1の制御とでは、本実施形態の非線形制御の方が、より安定した制御であるといえる。
【0054】
図10に示すグラフでは、速度Vは、シミュレーション開始から、3秒までの間に、値が1m/sまで変化する。速度Vは、3秒付近において、値が0m/sとなり、値の変化が安定する。また、速度Wは、シミュレーション開始から、1秒までの間に、値が−1m/sまで変化する。速度Wは、1秒から3秒までの間、徐々に値が0m/sに近づき、3秒付近において値が0m/sとなり、値の変化が安定する。
図11に示すグラフにおいても、速度V、及び速度Wは、
図10に示すグラフと同様の結果を示す。すなわち、速度V、及び速度Wは、本実施形態の非線形制御によって行われるティルト翼機1の制御と、線形近似モデルによって行われるティルト翼機1の制御とで、同様の値を示す。つまり、本実施形態の非線形制御によって行われるティルト翼機1の制御は妥当な制御であるといえる。
【0055】
次に
図12を参照して、本実施形態の非線形制御によってティルト翼機1を制御したシミュレーション結果について説明する。
図12は、
図10に示されるシミュレーション結果に基づいて算出される、ロータ推力Tと、フラッペロン偏向推力Fとの結果の一例を示すグラフである。
図12(A)に示すグラフでは、ロータ推力T
1、ロータ推力T
2、ロータ推力T
3、及びロータ推力T
4は、ほぼ同一の値を示す。ロータ推力Tは、初期状態の2Nから、ティルト角ξ、高度z、及び速度Uの変化に伴って、シミュレーション開始から、2秒までの間に、0.8Nまで変化する。ロータ推力Tは、2秒から4秒までの間、徐々に値が1.2Nに近づき、5秒付近において値が1.1Nとなり、値の変化が安定する。すなわち、本実施形態の非線形制御によって行われるティルト翼機1の制御では、ロータ推力Tが目標値へ収束しているといえる。
【0056】
図12(B)に示すグラフでは、フラッペロン偏向推力F
1、フラッペロン偏向推力F
2、フラッペロン偏向推力F
3、及びフラッペロン偏向推力F
4は、ほぼ同一の値を示す。フラッペロン偏向推力Fは、初期状態の−0.1Nから、ティルト角ξ、高度z、及び速度Uの変化に伴って、シミュレーション開始から、3秒までの間に、0Nまで変化する。フラッペロン偏向推力Fは、3秒付近において値が0Nとなり、値の変化が安定する。すなわち、本実施形態の非線形制御によって行われるティルト翼機1の制御では、フラッペロン偏向推力Fが目標値へ収束しているといえる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態の制御装置10は、ティルト翼である主翼WGのティルト角ξのべき級数をパラメータとする状態方程式に基づいてティルト翼機1を制御する制御部110を備える。
これにより、制御装置10は、ティルト角ξを可変パラメータとして非線形制御によってティルト翼機1を制御することができる。すなわち、制御装置10は、ティルト翼機1の遷移モード時の飛行において非線形運動を考慮した制御を実現することができる。
【0058】
また、本実施形態のティルト翼機1は、ティルト翼である前翼FWと、後翼BWとを備える。また、前翼FWは、推進ユニットPU1と、推進ユニットPU2とを備える。後翼BWは、推進ユニットPU3と、推進ユニットPU4とを備える。本実施形態のティルト翼機1は、前翼FWと、後翼BWのそれぞれのティルト角ξ
1と、ティルト角ξ
2とに基づいて推進ユニットPUが備える回転翼PWの回転数RUと、フラッペロンFAのフラッペロン偏向角DAが制御される。これにより、ティルト翼機1に働く揚力、推力、及び抗力が調整される。
すなわち、本実施形態のティルト翼機1は、制御装置10によって制御されることにより、非線形運動を考慮した飛行を実現することができる。
【0059】
また、制御装置10は、航空機を制御する。これにより、この航空機は、非線形運動を考慮した飛行を実現することができる。
【0060】
なお、上記の実施形態における制御装置10が備える各部は、専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、メモリおよびマイクロプロセッサにより実現させるものであってもよい。
【0061】
なお、本実施形態では、ティルト翼機1が主翼WGを4つ備える場合について説明したが、これに限られない。制御装置10は、前翼FWと、後翼BWとの2つのティルト翼を備える航空機であって、かつ前翼FWと、後翼BWとがそれぞれ推進ユニットPUを備える航空機を制御してもよい。
【0062】
なお、制御装置10が備える各部は、メモリおよびCPU(中央演算装置)により構成され、制御装置10が備える各部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0063】
また、制御装置10が備える各部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0064】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。