【課題】内視鏡カメラを飛沫物から保護しつつ、撮像画像の品質劣化を抑制することが可能な、新規かつ改良された光学フィルム、連結部材、内視鏡カメラ用ドレープ、内視鏡装置、医療システム、光学フィルムの製造方法、及び連結部材の製造方法を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、内視鏡カメラの周面を覆うドレープ部と、ドレープ部の先端に設けられ、内視鏡と内視鏡カメラとを連結する連結部材と、を備える内視鏡カメラ用ドレープのうち、連結部材に設けられる光学フィルムであって、内視鏡から内視鏡カメラに入射される入射光の反射を抑制する反射抑制部を有する、光学フィルムが提供される。
内視鏡カメラの周面を覆うドレープ部と、前記ドレープ部の先端に設けられ、内視鏡と前記内視鏡カメラとを連結する連結部材と、を備える内視鏡カメラ用ドレープのうち、前記連結部材に設けられる光学フィルムであって、
内視鏡から前記内視鏡カメラに入射される入射光の反射を抑制する反射抑制部を有する、光学フィルム。
内視鏡カメラの周面を覆うドレープ部と、前記ドレープ部の先端に設けられ、内視鏡と前記内視鏡カメラとを連結する連結部材と、を備える内視鏡カメラ用ドレープのうち、前記連結部材に設けられる光学フィルムの製造方法であって、
基材フィルムを準備する第1の工程と、
前記基材フィルムの表面に、内視鏡から前記内視鏡カメラに入射される入射光の反射を抑制する反射抑制部を形成する第2の工程と、を含む、光学フィルムの製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された技術では、貫通穴の壁面と内視鏡の挿入部との間の気密性を維持することが極めて難しいという問題があった。このため、特許文献1に開示された技術では、飛沫物が貫通穴の壁面と内視鏡の挿入部との隙間からドレープ部の内部に侵入する可能性があるという問題があった。また、特許文献2〜4では、ドレープ部の先端と内視鏡との気密性を維持することが難しいという問題があった。このため、特許文献2〜4に開示された技術では、飛沫物がドレープ部の先端と内視鏡との隙間からドレープ部の内部に侵入する可能性があるという問題があった。また、特許文献1〜4に開示された技術では、ドレープ部で覆われた内視鏡カメラから内視鏡を取り外す場合、ドレープ部ごと内視鏡を内視鏡カメラから取り外すか、内視鏡をドレープ部及び内視鏡カメラから取り外す必要があった。前者の場合、内視鏡カメラが露出してしまう。後者の場合であっても、ドレープ部の先端が開口しているため、この開口から内視鏡カメラが露出してしまう。このため、内視鏡カメラから内視鏡を着脱する作業は、飛沫物による汚染の心配がない場所で行う必要があった。
【0006】
一方、特許文献5に開示された技術では、連結部材及びドレープ部によって内視鏡カメラが覆われている。さらに、内視鏡は連結部材に着脱可能なので、内視鏡カメラが連結部材及びドレープ部によって覆われた状態で内視鏡を内視鏡カメラから着脱することができる。したがって、上記の問題は生じにくい。ただし、特許文献5に開示された技術では、連結部材の中心部分は、単に透明な部材で構成されるだけなので、この部分で入射光が反射してしまう可能性があった。連結部材で入射光が反射してしまうと、内視鏡カメラにより撮像された撮像画像の品質が劣化する可能性がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、内視鏡カメラを飛沫物から保護しつつ、撮像画像の品質劣化を抑制することが可能な、新規かつ改良された光学フィルム、連結部材、内視鏡カメラ用ドレープ、内視鏡装置、医療システム、光学フィルムの製造方法、及び連結部材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、内視鏡カメラの周面を覆うドレープ部と、ドレープ部の先端に設けられ、内視鏡と内視鏡カメラとを連結する連結部材と、を備える内視鏡カメラ用ドレープのうち、連結部材に設けられる光学フィルムであって、内視鏡から内視鏡カメラに入射される入射光の反射を抑制する反射抑制部を有する、光学フィルムが提供される。
【0009】
ここで、反射抑制部は、光学フィルムの表面に形成された凹凸構造であり、凹凸構造を構成する凹凸の平均周期は、可視光波長以下であってもよい。
【0010】
また、可視光の分光反射率が0.1〜1.8%であってもよい。
【0011】
また、反射抑制部は、光学フィルムの曇りを抑制してもよい。
【0012】
また、反射抑制部は、親水性の樹脂を含んでいてもよい。
【0013】
また、ポリカーボネート樹脂を含んでいてもよい。
【0014】
また、光学フィルムは、基材フィルムと、基材フィルムの表面に形成された反射抑制部と、を有し、基材フィルムは、ポリカーボネート樹脂を含んでいてもよい。
【0015】
本発明の他の観点によれば、また、内視鏡カメラの周面を覆うドレープ部の先端に設けられ、内視鏡と内視鏡カメラとを連結する連結部材であって、上記光学フィルムを備える、連結部材が提供される。
【0016】
ここで、連結部材は、光学フィルムで構成されていてもよい。
【0017】
また、光学フィルムを覆う保護フィルムを備えていてもよい。
【0018】
また、保護フィルムは、連結部材の表面形状に沿った形状を有する成型品であってもよい。
【0019】
本発明の他の観点によれば、内視鏡カメラの周面を覆うドレープ部と、上記連結部材と、を備える、内視鏡カメラ用ドレープが提供される。
【0020】
本発明の他の観点によれば、上記内視鏡カメラ用ドレープを備える、内視鏡装置が提供される。
【0021】
本発明の他の観点によれば、上記内視鏡装置を備える、医療システムが提供される。
【0022】
本発明の他の観点によれば、内視鏡カメラの周面を覆うドレープ部と、ドレープ部の先端に設けられ、内視鏡と内視鏡カメラとを連結する連結部材と、を備える内視鏡カメラ用ドレープのうち、連結部材に設けられる光学フィルムの製造方法であって、基材フィルムを準備する第1の工程と、基材フィルムの表面に、内視鏡から内視鏡カメラに入射される入射光の反射を抑制する反射抑制部を形成する第2の工程と、を含む、光学フィルムの製造方法が提供される。
【0023】
ここで、第2の工程では、反射抑制部として、光学フィルムの表面に凹凸構造を形成し、凹凸構造を構成する凹凸の平均周期は、可視光波長以下であってもよい。
【0024】
また、反射抑制部は、親水性の樹脂を含んでいてもよい。
【0025】
また、基材フィルムは、ポリカーボネート樹脂を含んでいてもよい。
【0026】
本発明の他の観点によれば、内視鏡カメラの周面を覆うドレープ部の先端に設けられ、内視鏡と内視鏡カメラとを連結する連結部材の製造方法であって、上記光学フィルムを用いて連結部材を作製する、連結部材の製造方法が提供される。
【0027】
ここで、光学フィルムを連結部材の形状に一体成型することで、連結部材を作製してもよい。
【発明の効果】
【0028】
以上説明したように本発明によれば、連結部材及びドレープ部によって内視鏡カメラを飛沫物から保護することができる。さらに、連結部材に設けられる光学フィルムは、内視鏡から内視鏡カメラに入射される入射光の反射を抑制する反射抑制部を備える。したがって、撮像画像の品質劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0031】
<1.内視鏡装置の全体構成>
まず、
図1に基づいて、本実施形態に係る内視鏡装置100の全体構成について説明する。内視鏡装置100は、内視鏡110と、光照射用ケーブル120と、内視鏡カメラ130と、内視鏡カメラケーブル140と、内視鏡カメラ用ドレープ200とを備える。
【0032】
内視鏡110は、ベース部111と、挿入部112とを備える。ベース部111の側面には、光照射用ケーブル120が接続され、先端部には、挿入部112が接続されている。ベース部111は、光照射用ケーブル120から供給された照射光を挿入部112に供給する。また、ベース部111は、挿入部112から供給された撮像光(すなわち、患者の体内で反射された照射光)を内視鏡カメラ130側に出射する。なお、
図1中の矢印120aは、照射光の光路を示し、矢印110cは撮像光の光路を示す。また、ベース部111の後端は、内視鏡カメラ用ドレープ200の連結部材220に着脱可能となっている。
【0033】
挿入部112は、患者の体内に挿入される部分である。挿入部112の先端から照射光が出射され、患者の体内で反射される。そして、患者の体内で反射された照射光、すなわち、撮像光は、挿入部112の先端に入射し、挿入部112内を通ってベース部111に到達する。その後、撮像光は、ベース部111及び連結部材220を通って内視鏡カメラ130に入射される。光照射用ケーブル120は、図示しない光源から発生した光を内視鏡110内に供給する。なお、照射光は可視光であるが、他の種類の光(例えば、赤外線)であってもよい。
【0034】
なお、内視鏡110の形状は特に制限されない。例えば、
図1では、挿入部112は硬性の挿入部となっているが、軟性の挿入部であってもよい。
【0035】
内視鏡カメラ130は、内視鏡110から入射された撮像光を受光し、撮像画像を生成する。内視鏡カメラケーブル140は、内視鏡カメラ130で生成された撮像画像を表示装置等に送信する。内視鏡カメラ130及び内視鏡カメラケーブル140は特に制限されず、公知の内視鏡カメラ及び内視鏡カメラケーブルを任意に適用できる。
【0036】
また、内視鏡カメラ130の先端部には、凹形状の連結部材嵌合部135が設けられている。連結部材嵌合部135は、連結部材220の内視鏡カメラ嵌合部222が着脱可能となっている。
【0037】
内視鏡カメラ用ドレープ200は、ドレープ部210と、連結部材220とを備える。ドレープ部210は、筒状かつ可撓性を有する部材であり、内視鏡カメラ130及び内視鏡カメラケーブル140の周面を覆う。ドレープ部210は、滅菌処理がなされている。また、ドレープ部210の材質は特に制限されず、公知のドレープ部と同様の材質で構成されてもよい。例えば、ドレープ部210は、ポリエチレン等で構成されていても良い。また、ドレープ部210の後端には、内視鏡カメラ用ドレープ200を収容する収容部(いわゆる、コンテナ部)が連結されていても良い。
【0038】
ドレープ部210の先端には、連結部材220が設けられている。連結部材220は、ドレープ部210の先端の開口を閉塞する。連結部材220は、内視鏡カメラ嵌合部222と、内視鏡嵌合部225と、光学フィルム10とを備える。
【0039】
内視鏡カメラ嵌合部222は、光学フィルム10を保持し、かつ、後述するように、連結部材嵌合部135に着脱可能な部材である。具体的には、内視鏡カメラ嵌合部222の中心部分(具体的には、撮像光が通る部分)には、内視鏡カメラ嵌合部222を厚さ方向に貫通する貫通孔226が形成されている。なお、貫通孔226の平面視形状(すなわち、内視鏡カメラ嵌合部222の厚さ方向に垂直な断面形状)は円形であっても、矩形であっても、他の形状であってもよい。また、貫通孔226の壁面223aには、凹溝224が形成されている。凹溝224は、壁面223aの周方向の全長に渡って形成されている。そして、凹溝224には、光学フィルム10がはめ込まれる。これにより、内視鏡カメラ嵌合部222は光学フィルム10を保持する。なお、内視鏡カメラ嵌合部222が光学フィルム10を保持する方法はこの例に限定されない。例えば、光学フィルム10を内視鏡カメラ嵌合部222に溶着してもよい。
【0040】
また、内視鏡カメラ嵌合部222は、連結部材嵌合部135に着脱可能となっている。連結部材嵌合部135と内視鏡カメラ嵌合部222とを着脱可能とするための構造は特に制限されない。例えば、内視鏡カメラ嵌合部222の外周面223bに嵌合用の凸部を形成し、連結部材嵌合部135の内周面135aに当該凸部に嵌合する凹溝を形成してもよい。あるいは、内視鏡カメラ嵌合部222の外周面223b及び連結部材嵌合部135の内周面135aに互いに螺合するねじ山を形成してもよい。また、内視鏡カメラ嵌合部222の外周面223bは、内視鏡嵌合部225の外周底面部225aに対して垂直になっていてもよいが、連結部材嵌合部135側に向けてわずかに内側に(すなわち、連結部材220の中心側に)傾斜していることが好ましい。この場合、連結部材220と内視鏡カメラ130との着脱が容易となる。なお、外周面223bの傾斜角度(すなわち、外周面223bと内視鏡嵌合部225の外周底面部225aとのなす角度)は、例えば、80〜90°程度であることが好ましい。
【0041】
内視鏡嵌合部225は、内視鏡カメラ嵌合部222の内視鏡110側の表面に設けられる。内視鏡嵌合部225は、凹形状の部材であり、内視鏡110のベース部111に着脱可能となっている。内視鏡嵌合部225とベース部111とを着脱可能とするための構造は特に制限されない。例えば、内視鏡嵌合部225の内周面225bに嵌合用の凹溝を形成し、ベース部111の外周面に当該凹溝に嵌合する凸部を形成してもよい。あるいは、内視鏡嵌合部225の内周面225b及びベース部111の外周面に互いに螺合するねじ山を形成してもよい。また、内視鏡嵌合部225の外周底面部225aには、ドレープ部210が連結される。内視鏡カメラ嵌合部222及び内視鏡嵌合部225を構成する材質は特に制限されず、公知の連結部材と同様の材質で構成されてもよい。例えば、内視鏡カメラ嵌合部222及び内視鏡嵌合部225は、ポリエチレン等で構成されていても良い。もちろん、光学フィルム10と同種の材料で構成されていても良い。
【0042】
光学フィルム10は、内視鏡カメラ嵌合部222に保持される。また、光学フィルム10は、連結部材220の中心部分、すなわち撮像光の光路上に配置される。また、光学フィルム10の表裏両面には、後述する反射抑制部12が形成されている。反射抑制部12は、内視鏡110から内視鏡カメラ130に入射される入射光(すなわち、撮像光)の反射を抑制する。これにより、内視鏡カメラ130は、より鮮明な撮像画像を生成することができる。言い換えれば、本実施形態では、撮像画像の品質劣化を抑制することができる。また、内視鏡カメラ用ドレープ200のドレープ部210及び連結部材220は、内視鏡110の着脱状態に関わらず、内視鏡カメラ130及び内視鏡カメラケーブル140を覆うことができる。したがって、内視鏡カメラ用ドレープ200は、内視鏡110の着脱状態に関わらず、内視鏡カメラ130及び内視鏡カメラケーブル140を飛沫物から保護することができる。
【0043】
なお、連結部材220の構成は上述した構成に限られない。すなわち、連結部材220は、以下の特性を有するものであれば、どのようなものであってもよい。
(1)ドレープ部210の先端の開口を閉塞する。
(2)内視鏡110及び内視鏡カメラ130を着脱可能である。
(3)撮像光の光路上に光学フィルム10が配置される。
【0044】
<2.内視鏡カメラ用ドレープの製造方法>
つぎに、内視鏡カメラ用ドレープ200の製造方法について説明する。まず、連結部材220のうち、内視鏡カメラ嵌合部222及び内視鏡嵌合部225を公知の成形方法によって作製する。一方、後述する製造方法によって光学フィルム10を作製する。ついで、内視鏡カメラ嵌合部222の凹溝224に光学フィルム10をはめ込むことで、連結部材220を作製する。ついで、連結部材220とドレープ部210の先端とを接続(例えば、溶着)する。以上の工程により、内視鏡カメラ用ドレープ200を作製する。
【0045】
<3.各種変形例>
(3−1.第1の変形例)
次に、
図2に基づいて、内視鏡装置100の第1の変形例について説明する。第1の変形例では、光学フィルム10の内視鏡110側の露出面(すなわち、内視鏡110に対向する面)を保護フィルム300で覆う。これにより、内視鏡カメラ用ドレープ200の未使用時に光学フィルム10を汚れ等から保護することができる。なお、光学フィルム10は曇り抑制機能を有している場合があるが、保護フィルム300は、必ずしも曇り抑制機能を有している必要はない。また、保護フィルム300は、光学フィルム10と同等またはそれ以上の反射抑制機能を有することが好ましい。保護フィルム300の反射抑制機能を高める方法としては、例えば、保護フィルム300上に凹凸構造を設け、凹凸のピッチを反射抑制部12の凹凸のピッチよりも小さくする方法等が挙げられる。この場合、保護フィルム300によって光学フィルム10の反射抑制機能が阻害されにくくなる。したがって、光学フィルム10を保護フィルム300で覆った状態であっても、光学フィルム10の反射抑制機能をより正確に評価することができる。したがって、内視鏡カメラ用ドレープ200の品質(具体的には、反射抑制機能及び清潔性)をより安定して向上させることができる。
【0046】
また、保護フィルム300は、色付きであってもよい。この場合、内視鏡カメラ用ドレープ200の使用時に保護フィルム300の除去忘れをより確実に防止することができる。
【0047】
(3−2.第2の変形例)
次に、
図3に基づいて、内視鏡装置100の第2の変形例について説明する。第2の変形例では、連結部材220が光学フィルム10の一体成型品となっている。したがって、連結部材220は、光学フィルム10で構成される。第2の変形例では、撮像光は、連結部材220の中心部分10aを通る。第2の変形例では、連結部材220の部品点数を低減させることができるので、連結部材220の製造コストを低減させることができる。また、
図1の場合では、光学フィルム10と凹溝224との間でがたつきが生じる可能性がある。そして、このようながたつきが生じると、光学フィルム10の位置ずれ、傾斜等が生じうる。そして、光学フィルム10の位置ずれ、傾斜等が生じると、撮像画像の品質が劣化する可能性がある。一方、本第2の変形例では、光学フィルム10の位置ずれ、傾斜等が生じにくいので、撮像画像の品質をより向上させることができる。もちろん、
図1の場合であっても、従来に比べて撮像画像の品質が向上する。また、第2の変形例では、連結部材220による気密性をより高めることができる。
【0048】
連結部材220を一体成型する方法は特に制限されないが、反射抑制部12の損傷を抑制するという観点からは、真空成型もしくは圧空成型が好ましい。また、内視鏡カメラ嵌合部222の外周面223bは、真空成型もしくは圧空成型時に波打つ可能性がある。そこで、内視鏡カメラ嵌合部222を実際の寸法よりも大きめに作製し、その後、内視鏡カメラ嵌合部222をトリミングしてもよい。
【0049】
(3−3.第3の変形例)
次に、
図4に基づいて、内視鏡装置100の第3の変形例について説明する。第3の変形例では、保護フィルム300が連結部材220の表面形状に沿った形状を有する成型品となっている。具体的には、保護フィルム300は、内視鏡嵌合部225の内周底面225c、内視鏡カメラ嵌合部222の内視鏡110側の表面、及び中心部分10aの内視鏡110側の表面の形状に沿った形状を有する。保護フィルム300の成型方法は特に問われず、従来の成型方法であればいずれの成型方法であってもよい。保護フィルム300が有する機能は、第1の変形例と同様であることが好ましい。なお、
図4では、連結部材220が第2の変形例に係る一体成型品となっている。もちろん、保護フィルム300は、
図1に示す連結部材220を覆うものであってもよい。また、第2の変形例に係る連結部材220を第1の変形例に係る保護フィルム300で覆っても良い。
【0050】
(3−4.第4の変形例)
次に、
図5に基づいて、内視鏡装置100の第4の変形例について説明する。第4の変形例では、連結部材220の貫通孔226が閉塞部10bによって閉塞されている。ここで、閉塞部10bは、内視鏡カメラ嵌合部222および内視鏡嵌合部225と一体成型されている。また、連結部材220は、透明性を有する材料で構成される。ここで、透明性を有する材料としては、構成する基材フィルム11を構成する材料が挙げられる。連結部材220を一体成型する方法は第2の変形例と同様であれば良い。そして、閉塞部10bの表裏両面に光学フィルム10が貼り付けられる。光学フィルム10は、例えば透明性を有する接着剤(例えば両面テープ等)によって閉塞部10bに貼り付けられる。なお、光学フィルム10は、閉塞部10bの表裏両面のうち、いずれか一方のみに設けられてもよい。
【0051】
<4.医療システム>
図1〜
図5に示す内視鏡装置100は、任意の医療システムに適用することができる。例えば、内視鏡装置100は、手術台、表示装置等を備えた医療システムに適用することができる。この場合、内視鏡カメラケーブル140を表示装置に接続して内視鏡装置100を使用する。
【0052】
<5.光学フィルムの構成>
次に、
図6及び
図7に基づいて、光学フィルム10の詳細構成について説明する。光学フィルム10は、上述したように、撮像光の反射を抑制する部材である。光学フィルム10は、基材フィルム11と、反射抑制部12とを備える。
【0053】
(5−1.基材フィルムの構成)
基材フィルム11は、少なくとも透明性を有する材料で構成される。基材フィルム11を構成する材料は、透明性を有するものであれば特に制限されない。基材フィルム11を構成する材料としては、例えばプラスチック材料等が挙げられる。
【0054】
ここで、基材フィルム11に適用可能なプラスチック材料としては、例えば、メチルメタクリレート(共)重合体、ポリカーボネート、トリアセチルセルロース、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、スチレン(共)重合体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体、ポリメチルメタクリレート、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルスルフォン、シクロオレフィン、ポリスルフォン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアセタール、ポリエーテルケトン、ポリウレタン、ガラス等が挙げられる。これらのうち、特に好ましい材料はポリカーボネートである。基材フィルム11をポリカーボネートで構成することで、基材フィルム11、ひいては光学フィルム10の透明性をより高めることができる。また、ポリカーボネートは、加工容易性、耐衝撃性、汎用性の観点からも好ましい材料である。
【0055】
基材フィルム11が上記のプラスチック材料で構成される場合、基材フィルム11は、上記のプラスチック材料を伸延、あるいは溶剤に希釈後フィルム状に成膜して乾燥するなどの方法で作製される。
【0056】
基材フィルム11の厚さは特に制限されず、連結部材220に要求される特性(例えば、耐久性)等に応じて適宜決定されればよい。なお、本実施形態「フィルム」には、「シート」、「プレート」等が含まれるものとする。
【0057】
(5−2.反射抑制部の構成)
つぎに、反射抑制部12の構成について説明する。反射抑制部12は、光学フィルム10の表面(ここでは、表裏両面)に形成された凹凸構造である。もちろん、反射抑制部12は、この例に限られず、撮像光の反射を抑制する機能を有するものであればどのようなものであってもよい。
【0058】
反射抑制部12は、具体的には、基材フィルム11の膜厚方向に凸である複数の凸部12aと、基材フィルム11の膜厚方向に凹である複数の凹部12bとを有する。凸部12a及び凹部12bは、基材フィルム11上に周期的に配置される。
図7の例では、凸部12a及び凹部12bは千鳥格子状に配置される。もちろん、凸部12a及び凹部12bは他の配列パターンで配置されていても良い。例えば、凸部12a及び凹部12bは矩形格子状に配置されていても良い。また、凸部12a及び凹部12bは、ランダムに配置されていてもよい。凸部12a及び凹部12bの形状は特に制限されない。凸部12a及び凹部12bの形状は、例えば錐体状、柱状、針状であってもよい。なお、凹部12bの形状は、凹部12bの内壁面によって形成される形状を意味する。
【0059】
反射抑制部12の凹凸の平均周期は、可視光波長以下(例えば、830nm以下)であり、好ましくは、100nm以上350nm以下であり、さらに好ましくは150nm以上280nm以下である。したがって、反射抑制部12は、いわゆるモスアイ構造となっている。ここで、平均周期が100nm未満である場合、反射抑制部12の形成が困難になる可能性があるため好ましくない。また、平均周期が350nmを超える場合、可視光の回折現象が生じる可能性があるため好ましくない。
【0060】
反射抑制部12の平均周期は、互いに隣り合う凸部12a間及び凹部12b間の距離(いわゆる凹凸ピッチ)の算術平均値である。なお、反射抑制部12の形状は、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)、あるいは断面透過型電子顕微鏡(断面TEM)等によって観察可能である。また、平均周期の算出方法は例えば以下の通りである。すなわち、隣り合う凹部12bの組み合わせ、及び隣り合う凸部12aの組み合わせを複数個ピックアップし、これらの距離を測定する。なお、凸部12a間の距離は、凸部12aの頂点間距離であればよい。凹部12b間の距離は、凹部12bの中心点間の距離であればよい。そして、測定値を算術平均することで、平均周期を算出すればよい。なお、
図6及び
図7では、反射抑制部12は基材フィルム11の両面に形成されているが、少なくとも一方の表面に形成されていればよい。さらに、反射抑制部12の凸部12aの高さは、180〜270nm程度であってもよく、好ましくは200〜250nmである。凸部12aの高さは、例えば断面SEMによって観察可能である。
【0061】
反射抑制部12は、硬化性樹脂の硬化物で構成される。硬化性樹脂の硬化物は、少なくとも透明性を有することが求められる。例えば、硬化性樹脂の硬化物の屈折率は、基材フィルム11と同程度であることが好ましい。この場合、光学フィルム10の内部反射を抑制することができるので、撮像画像の品質劣化をより確実に抑制することができる。
【0062】
硬化性樹脂は、重合性化合物と硬化開始剤とを含む。重合性化合物は、硬化開始剤によって重合することで硬化する樹脂である。硬化性樹脂は、親水性の樹脂であることが好ましい。この場合、反射抑制部12は、光学フィルム10の曇りをさらに抑制することができる。すなわち、反射抑制部12は、凹凸のピッチが可視光波長以下である凹凸構造となっているので、平坦なフィルムよりも高い曇り抑制機能を有する。すなわち、反射抑制部12は、曇り抑制部としての機能も有する。ただし、さらに反射抑制部12の曇り抑制機能を高めるためには、硬化性樹脂は、親水性の樹脂であることが好ましい。
【0063】
すなわち、内視鏡装置100の使用環境によっては、内視鏡カメラ用ドレープ200の内部の湿度が上昇する可能性がある。例えば、手術室の温湿度環境の変化によって内視鏡カメラ用ドレープ200の内部の湿度が上昇する可能性がある。また、水を使用する手術でも、内視鏡カメラ用ドレープ200の内部の湿度が上昇する可能性がある。そして、内視鏡カメラ用ドレープ200の内部の湿度が上昇した場合、光学フィルム10の表面が曇りやすくなる。そして、光学フィルム10の表面に曇り、結露等が発生すると、撮像画像の品質が劣化する可能性がある。したがって、光学フィルム10には高い曇り抑制機能が求められる場合がある。したがって、硬化性樹脂は、親水性の樹脂であることが好ましい。
【0064】
このような観点から、重合性化合物は、親水性モノマー(あるいは、これらの親水性モノマーからなるオリゴマー、プレポリマー)であることが好ましい。親水性モノマーとしては、例えば、ポリオキシアルキル含有(メタ)アクリレート、4級アンモニウム塩含有(メタ)アクリレート、3級アミノ基含有(メタ)アクリレート、スルホン酸基含有モノマー、カルボン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、ホスホン酸基含有モノマーなどが挙げられる。ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタアクリレートを意味する。(メタ)アクリロイル、(メタ)アクリルについても同様である。
【0065】
ポリオキシアルキル含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、多価アルコール(ポリオール又はポリヒドロキシ含有化合物)と、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの誘導体からなる群から選択される化合物との反応によって得られるモノ若しくはポリアクリレート、又はモノ若しくはポリメタクリレートなどが挙げられる。多価アルコールとしては、例えば、2価のアルコール、3価のアルコール、4価以上のアルコールなどが挙げられる。2価のアルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、数平均分子量が300〜1,000のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2’−チオジエタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。3価のアルコールとしては、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタグリセロール、グリセロール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオールなどが挙げられる。4価以上のアルコールとしては、例えば、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。
【0066】
ポリオキシアルキル含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとしては、例えば、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートにおけるポリエチレングリコールユニットの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、300〜1,000などが挙げられる。メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとしては、各種の市販品を用いることもできる。
【0067】
これらの中でも、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが好ましく、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0068】
4級アンモニウム塩含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルジメチルグリシジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、(メタ)アクリロイルオキシジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム−p−トルエンスルフォネート、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルグリシジルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、(メタ)アクリルアミドプロピルジメチルエチルアンモニウムエチルサルフェート、(メタ)アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウム−p−トルエンスルフォネートなどが挙げられる。
【0069】
3級アミノ基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル(メタ)アクリレート、2,2,6,6−テトラメチルピペリジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0070】
スルホン酸基含有モノマーとしては、例えば、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルトルエンスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン酸基含有(メタ)アクリレートなどが挙げられる。スルホン酸基含有(メタ)アクリレートとしては、例えば、(メタ)アクリル酸スルホエチル、(メタ)アクリル酸スルホプロピル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、末端スルホン酸変性ポリエチレングリコールモノ(メタ)クリレートなどが挙げられる。これらは、塩を形成していてもよい。塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0071】
カルボン酸基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。リン酸基含有モノマーとしては、例えば、リン酸エステルを有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。親水性モノマーは、単官能の親水性モノマーであることが好ましい。親水性モノマーの分子量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、200以上が好ましい。硬化性樹脂に占める親水性モノマーの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、硬化性樹脂の総質量に対して15質量%〜99.9質量%が好ましく、20質量%〜90質量%がより好ましく、25質量%〜50質量%が特に好ましい。
【0072】
親水性モノマーの代わりに、アジド基、フェニルアジド基、キノンアジド基、スチルベン基、カルコン基、ジアゾニウム塩基、ケイ皮酸基、アクリル酸基等から選択された1つ以上を含む感光基を導入したポリマーを用いてもよい。ポリマーとしては、例えば、ポリビニルアルコール系、ポリビニルブチラール系、ポリビニルピロリドン系、ポリアクリルアミド系、ポリ酢酸ビニル系ポリマー、ポリオキシアルキレン系ポリマーなどが挙げられる。
【0073】
なお、硬化性樹脂は上記の例に限られない。例えば、硬化性樹脂は、モスアイ構造の作製に使用される樹脂であればどのようなものであってもよい。上記以外の硬化性樹脂の例としては、例えば、エポキシ重合性化合物等が挙げられる。エポキシ重合性化合物は、分子内に1つまたは2つ以上のエポキシ基を有するモノマー、オリゴマー、またはプレポリマーである。エポキシ重合性化合物としては、各種ビスフェノール型エポキシ樹脂(ビスフェノールA型、F型等)、ノボラック型エポキシ樹脂、ゴムおよびウレタン等の各種変性エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、及びこれらのプレポリマー等が挙げられる。
【0074】
硬化開始剤は、硬化性樹脂を硬化させる材料である。硬化開始剤の例としては、例えば、熱硬化開始剤、光硬化開始剤等が挙げられる。硬化開始剤は、熱、光以外の何らかのエネルギー線(例えば電子線)等によって硬化するものであってもよい。硬化開始剤が熱硬化開始剤となる場合、硬化性樹脂は熱硬化性樹脂となり、硬化開始剤が光硬化開始剤となる場合、硬化性樹脂は光硬化性樹脂となる。
【0075】
ここで、硬化開始剤は、紫外線硬化開始剤であることが好ましい。したがって、硬化性樹脂は、紫外線硬化性樹脂であることが好ましい。紫外線硬化開始剤は、光硬化開始剤の一種である。紫外線硬化開始剤としては、例えば、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンなどが挙げられる。
【0076】
硬化性樹脂は、光学フィルム10に求められる特性等に応じて各種の添加剤を添加してもよい。このような添加剤としては、例えば、無機フィラー、有機フィラー、レベリング剤、表面調整剤、消泡剤などが挙げられる。なお、無機フィラーの種類としては、例えば、SiO
2、TiO
2、ZrO
2、SnO
2、Al
2O
3などの金属酸化物微粒子が挙げられる。
【0077】
図6、
図7では、基材フィルム11の両面に反射抑制部12が形成されている。これらの反射抑制部12の材質、特性は同じであっても良いが、異なっていてもよい。すなわち、光学フィルム10に求められる特性等に応じてこれらの反射抑制部12の材質、特性を決定すれば良い。例えば、基材フィルム11の表裏両面のうち、内視鏡カメラ用ドレープ200の内部に対向する面上に形成される反射抑制部12は、親水性の樹脂で構成されても良い。上述したように、内視鏡カメラ用ドレープ200の内部の湿度が上昇する可能性があるからである。
【0078】
このように、本実施形態に係る光学フィルム10は、反射抑制部12を備えるので、光学フィルム10に優れた反射防止機能を付与することができる。具体的には、撮像光が光学フィルム10の表面に入射する際に、撮像光の進行方向上の屈折率が連続的に変化する。なお、撮像光の進行方向上のいずれかの部分で屈折率が急激に変化する場合、その部分が光学的な界面となる。そして、その部分で撮像光が反射する。本実施形態では、光学フィルム10の表面には反射抑制部12が形成されているので、この部分で屈折率が連続的に変化する。すなわち、光学フィルム10の表面は光学的な界面になりにくい。このため、光学フィルム10は撮像光を反射しにくい。
【0079】
なお、照射光が可視光となる場合、可視光の分光反射率は0.1〜1.8%であることが好ましい。反射抑制部12を上述した構成とすることで、可視光の分光反射率を0.1〜1.8%とすることができる。また、全光線透過率は90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。ここで、反射抑制部12は基材フィルム11と一体形成されてもよい。この場合、基材フィルム11は、反射抑制部12を構成する材料、すなわち硬化性樹脂で構成される。
【0080】
<6.光学フィルムの製造方法>
光学フィルムの製造方法は特に制限されず、上述した反射抑制部12を基材フィルム11上に形成できる方法であれば特に制限されない。光学フィルムの製造方法は、概略的には、基材フィルム11を準備する第1の工程と、基材フィルム11上に反射抑制部12を形成する第2の工程とに区分される。第2の工程の例としては、反射抑制部12の凹凸構造の反転形状を有する凹凸構造が周面に形成された原盤を用意し、この原盤の凹凸構造を基材フィルム11に転写する工程等が挙げられる。
【0081】
ここで、原盤を用意する方法は特に制限されない。例えば、熱リソグラフィ及びドライエッチングにより原盤を作製してもよい。この方法では、概略的には、まず、原盤基材の表面にレジスト層を形成する。そして、レーザ光をレジスト層に照射し、その後現像することで、レジスト層に凹凸構造を形成する。ついで、レジスト層をマスクとしてドライエッチングを行うことで、原盤基材の表面に凹凸構造を形成する。これにより、原盤を作製する。なお、レジスト層の凹凸構造を基材フィルムに転写してもよい。
【0082】
また、陽極酸化法により原盤を作製してもよい。陽極酸化法による原盤の製造方法は、例えば特開2013−142802号公報に開示されている。この方法では、原盤基材を陽極酸化処理することで、原盤基材の表面に凹凸構造を形成する。これにより、原盤を作製する。凹凸構造のピッチは、陽極酸化処理時の化成電圧によってコントロール可能である。なお、特開2013−142802号公報では、化成電圧が互いに異なる2段階の陽極酸化処理を行っているが、本実施形態はこの方法に限定されない。
【0083】
また、原盤基材を機械的に切削加工することで、原盤を作製してもよい。原盤基材を機械的に切削加工する方法は、例えば特開2004−223836号公報に開示されている。この方法では、ダイヤモンドバイト等のバイトを用いて原盤基材の表面を切削加工することで、原盤基材の表面に凹凸構造を形成する。なお、特開2004−223836号公報に開示された方法では、円筒形状の原盤基材の表面に互いに交差する螺旋溝を形成することで原盤基材の表面に凹凸構造を形成しているが、本実施形態はこの方法に限定されない。
【0084】
原盤の形状は特に制限されないが、円筒形状あるいは円柱形状であってもよい。この場合、ロール・ツー・ロールによって光学フィルムを連続的に作製することができる。
【0085】
また、原盤の凹凸構造を基材フィルム11に転写する方法も特に制限されない。例えば、基材フィルム11上に未硬化の硬化性樹脂層を形成し、この硬化性樹脂層に原盤の凹凸構造を転写する。ついで、硬化性樹脂層を硬化させればよい。また、基材フィルム11に直接原盤の凹凸構造を転写してもよい。この場合、基材フィルム11を例えば熱可塑性樹脂で形成する。そして、基材フィルム11を加熱することで軟化させ、原盤の凹凸構造を基材フィルム11に転写する。
【0086】
また、原盤を用いずに第2の工程を行っても良い。この場合、例えば、まず、基材フィルム11上にレジスト層を形成する。ついで、レジスト層を露光、現像することで、基材フィルム11上に反射抑制部12を形成する。
【実施例】
【0087】
<1.連結部材の作製>
以下の工程により、実施例1〜3、比較例、および参考例に係る連結部材を作製した。実施例1では、真空成型により
図5に示す構造を有する内視鏡カメラ嵌合部、内視鏡嵌合部、および閉塞部(すなわち、連結部材のうち、光学フィルム以外の部分)を作製した。内視鏡カメラ嵌合部、内視鏡嵌合部、および閉塞部の材料はポリエチレンテレフタレート(PET)とした。一方、以下の工程により光学フィルムを作製した。すなわち、基材フィルムとしてポリカーボネートフィルム(帝人社製パンライト)を準備した。さらに、反射抑制部の凹凸構造の反転形状を有する原盤を準備した。ここで、反射抑制部の凹凸構造の配列パターンは千鳥格子とした。また、反射抑制部の凹凸ピッチを230〜270nmとした。また、凸部の高さを200〜250nmとした。そして、この原盤を用いて基材フィルムの表裏両面に反射抑制部を形成した。ここで、硬化性樹脂として、東亞合成社製の紫外線硬化型アクリル樹脂組成物を使用した。これにより、光学フィルムを作製した。ついで、両面テープ(東電工社製LUCIACS25ミクロン)を用いて閉塞部の表裏両面に光学フィルムを貼り付けた。以上の工程により、実施例1に係る連結部材を作成した。
【0088】
実施例2では、閉塞部の内視鏡側の表面のみに光学フィルムを貼り付けた他は実施例1と同様の工程を行うことで、実施例2に係る連結部材を作製した。実施例3では、閉塞部の内視鏡カメラ側の表面のみに貼り付けた他は、実施例1と同様の工程をおこなうことで、実施例3に係る連結部材を作製した。比較例では、光学フィルムの代わりに反射抑制部が形成されていないPETフィルムを閉塞部の両面に貼り付けた他は、実施例1と同様の工程を行うことで、比較例に係る連結部材を作製した。参考例では、
図1に示す連結部材から光学フィルムを取り外したもの(つまり、光学フィルムが存在する箇所が空洞となっているもの)を連結部材とした。
【0089】
<2.光学特性の評価>
つぎに、実施例1〜3および比較例に係る連結部材の光学特性を評価した。具体的には、連結部材の中心部分(すなわち、光学フィルムまたはPETフィルムが取り付けられている部分)の全光線透過率(%)およびヘイズ値(%)を評価した。ここで、全光線透過率はJIS K7361に準拠して測定し、ヘイズ値はJIS K7136に準拠して測定した。そして、全光線透過率に関しては、全光線透過率が(95%以上)となる場合にVG(Very Good)と評価し、全光線透過率が(90%以上95%未満)となる場合にG(Good)と評価し、全光線透過率が(90%未満)となる場合にB(Bad)と評価した。また、ヘイズ値に関しては、ヘイズ値が(1.0%以下)となる場合にVG(Very Good)と評価し、ヘイズ値が(1.0%超1.2%以下)となる場合にG(Good)と評価し、ヘイズ値が(1.2%超)となる場合にB(Bad)と評価した。
【0090】
この結果、実施例1では、全光線透過率およびヘイズ値のいずれもVGとなり、実施例2、3では、全光線透過率およびヘイズ値のいずれもGとなった。一方、比較例では、全光線透過率およびヘイズ値のいずれもBとなった。
【0091】
<3.画像評価>
つぎに、実施例1〜3、および比較例に係る連結部材を内視鏡装置に適用した際の画像の見え方について評価した。具体的には、内視鏡(ストライカー社製PERECISIONIEラパロスコープ)と、内視鏡カメラ(ストライカー社製High Definition 1488HD)と、実施例1〜3、比較例、および参考例に係る連結部材とを用いて内視鏡装置を組み立てた。内視鏡カメラ用ドレープは省略した。ついで、紙面に描かれたサンプル絵に内視鏡の先端から照射光を照射し、撮像光を内視鏡カメラに入射させた。そして、内視鏡カメラが撮像した画像を表示装置に表示させた。そして、表示装置に表示された画像の品質を目視で評価した。具体的には、参考例で得られた画像を基準として、実施例1〜3、比較例で得られた画像を評価した。この結果、実施例1〜3では、参考例の画像と遜色ない品質の画像が得られたが、比較例で得られた画像は、参考例の画像よりも品質が大きく低下した。特に、比較例の画像は、参考例の画像に比べてぼやけが大きくなった。また、実施例1〜3を比較すると、実施例1のぼやけが最も小さくなった。このぼやけに関しては、上述した全光線透過率およびヘイズ値が大きく影響しているものと想定される。以上の結果により、実施例1〜3に係る連結部材は、内視鏡装置に非常に好適であることが明らかとなった。
【0092】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。