(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-74764(P2017-74764A)
(43)【公開日】2017年4月20日
(54)【発明の名称】樹脂シート
(51)【国際特許分類】
B32B 25/08 20060101AFI20170331BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20170331BHJP
A61N 5/06 20060101ALI20170331BHJP
【FI】
B32B25/08
B32B27/18 Z
A61N5/06 A
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】書面
【全頁数】4
(21)【出願番号】特願2015-215092(P2015-215092)
(22)【出願日】2015年10月15日
(71)【出願人】
【識別番号】596021263
【氏名又は名称】小松崎 靖男
(72)【発明者】
【氏名】小松▲崎▼ 靖男
【テーマコード(参考)】
4C082
4F100
【Fターム(参考)】
4C082PA01
4C082PC09
4C082PG02
4F100AB11
4F100AB24A
4F100AK01A
4F100AK52
4F100AN00C
4F100AN02
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100DE01A
4F100EH61
4F100GB00B
4F100GB66
4F100JB13A
4F100JD12A
4F100JK01
4F100JK13
(57)【要約】
【課題】 各種の熱可塑性樹脂やゴムなどに遠赤外線放射微粒子を50質量%を超える高い含有率で配合すると、成形体は固くなり十分な強度と柔軟性が失われる。熱硬化性樹脂を用いると、70質量%を超える高い含有率にもかかわらず遠赤外線放射微粒子を強固に保持し強度も確保できるが柔軟性は失われる。
【解決手段】 柔軟性のあるゴムシートの片面に接着層を形成し、この接着層上に、遠赤外線放射微粒子を70質量%以上含有する熱硬化性樹脂の薄い層を形成して加熱硬化させ、接着層を介して相互に密着した3層からなるシートを作成する。このシートは相対的に厚いゴムシートが3層一体シートとしての柔軟性を保ち、遠赤外線放射率が高いけれど固い熱硬化性樹脂層は接着層によりゴムシートに密着してゴムシートの柔軟性に追随する。この柔軟な3層樹脂シートは皮膚の曲面形状に追随して密着し、強い遠赤外線を皮膚表面に効果的に無駄なく放射することが可能となる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムシートと接着層、および遠赤外線放射微粒子を含有する熱硬化性樹脂層の3層から構成される遠赤外線放射シート。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂層がナノメートルサイズの銀微粒子を含有する遠赤外線放射シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠赤外線を放射し、抗菌性と柔軟性を有する遠赤外線放射シートに関する。
【背景技術】
【0002】
波長3〜1000ミクロンの遠赤外線は身体の深部に達し、皮下組織の温度上昇、微細血管の拡張、血液循環の促進、血液と人体と他の組織間の新陳代謝などにより筋肉の凝り、張り、痛みなどの鎮静、鎮痛効果が発揮される。この効果を求めて、遠赤外線放射サウナや遠赤外線ランプ、各種の遠赤外線シートなどが使用されている。
【0003】
遠赤外線を放射する物質としてはブラックシリカ、トルマリン、麦飯石、黒曜石などの鉱物や金属酸化物として酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ニッケル、酸化チタン、酸化鉄、酸化シリコン、酸化マグネシウムなどがあり、これらの単独物質あるいは混合物が遠赤外線放射微粒子として使われる。
【0004】
遠赤外線効果を生かすために遠赤外線放射微粒子を様々な熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂に練込み繊維状あるいはシート状に加工したり、遠赤外線放射微粒子を包含する樹脂を対象物に吹き付け固化させるなどして利用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特開2007−182344号 公報
【0006】
【特許文献2】 特開2009−028507号 公報
【0007】
【特許文献3】 特開2010−036001号 公報
【0008】
【特許文献4】 特開2012−114687号 公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
各種の樹脂に固形物としての遠赤外線放射微粒子を包含させて放射される遠赤外線を利用する場合、赤外線放射微粒子の含有率高いほど遠赤外線放射が強くなり好ましいが、熱可塑性樹脂を使用した製品では、柔軟性や強度を求めると固形物微粒子含有率としては50質量%が限度となる。エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂に包含させると、熱硬化性樹脂の高い強度が固形物微粒子を強固に保持するため70質量%以上の高い含有率を得ることが出来、遠赤外線の放射率も高くなるが、弾性や柔軟性は失われる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は。遠赤外線放射微粒子の高い含有率により遠赤外線の放射率を高め、効率的に利用するために皮膚に貼ったり皮膚表面近くに置くことができるよう、皮膚の曲面形状に追随できる柔軟性があり、皮膚と密着したシートとの間の雑菌の繁殖を抑制可能な抗菌性を有する遠赤外線放射シートを提供する。
【0011】
遠赤外線放射微粒子の含有率を高め強固に保持する合成樹脂としてシリコーンレジンを用いる。シリコーンレジンはシロキサン結合(Si−O−Si)でつながっていて、3官能性(1個のケイ素原子を中心に1個のメチル基、又はフェニル基、又はビニル基などと3個の酸素原子の結合)または4官能性(1個のケイ素原子を中心に4個の酸素原子の結合)の結合から縮合反応を進めて高分子量のシリコーンレジンが作られる。ケイ素と酸素の繰り返しからなるシロキサン結合が3次元化した基本骨格をしており、炭素からなる結合でできている有機系の樹脂などと比較して、ケイ素と酸素の結合は原子同士の結びつきが強いため、シリコーンレジンは固形物微粒子を強固に保持し含有率を高めることができる。
【0012】
シリコーンレジンは強度に優れるが硬く柔軟性に欠ける。そこで柔軟性に富むシリコーンゴムシートの表面にシリコーン接着層を薄く形成し、この層の上に遠赤外線放射微粒子を高い含有率で含むシリコーンレジンの薄い層を形成し、これら3層を一体化した遠赤外線放射シートを作成する。3層が一体化したシートは、相対的に厚く柔軟性のあるシリコーンゴムシートがシートとしての柔軟性を発揮し、シリコーンレジン層が高い遠赤外線放射率を発揮する。
【0013】
本発明によるシートを皮膚に貼ると、皮膚とシートとの間で雑菌が繁殖する可能性があるので、抗菌性の高い銀微粒子をシリコーンレジンに含有させ雑菌の繁殖を抑制する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるシートを肩こり、筋肉痛、打撲などの患部に粘着シートで貼り症状を改善することが期待できる。またこむらがえりによるふくらはぎの激痛の緩和や、足の裏のツボの刺激にも効果があり、非常に有用性が高い。このシートは、皮膚に貼ることにより付着した皮脂や汗の成分などを洗剤などで洗い流して繰り返し使用することが出来る。
【0015】
本発明によるシートは、アイマスクや腹巻、コルセットなど身体に装着する製品の内側につけて強力な遠赤外線を利用することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
厚さ1mmの柔軟性に富むシリコーンゴムシートに、厚さ0.085mmのシリコーン接着フイルム((株)寺岡製作所製)を貼りつけシリコーン接着層を形成した。シリコーンレジン(信越化学工業(株)製)に8〜25μmのブラックシリカ微粒子を80質量%充填し、更に粒子径4〜25nmの銀パウダーを500ppm配合してスプレーガンでシリコーン接着層の上に40μmの厚さに吹き付けた。このシートを20分間の自然乾燥の後、150℃の温度で10分間加熱した。この加熱によりシリコーンレジン層は固化し、シリコーンレジン層とシリコーン接着層、およびシリコーン接着層とシリコーンゴムシートの接着強度が増して、相互に強固に密着した3層よりなるシートが作成された。シリコーンゴムシート自体は耐熱温度が200℃あり、この加熱により何ら影響されることなく柔軟性を保った。
【0018】
実施例ではブラックシリカ微粒子を80質量%充填させたが、充填量70〜90質量%の範囲であることが好ましい。
【0019】
実施例では遠赤外線放射層である表層に抗菌性を付与するため、日本イオン株式会社製ナノシルバー分散液TX−EB14Hを500ppm配合した。この製品の抗菌性能については、抗菌試験法JIS Z 2801による24時間後の菌数で、大腸菌、黄色ブドウ球菌、緑膿菌などの残留生菌数が10以下となっている。((社)京都微生物研究所にて検査)(日本イオン株式会社資料))。
【0020】
実施例ではシリコーンレジン層は固化されて柔軟性を失っているが、シリコーンレジン層に密着したシリコーン接着層がシリコーンレジン層の亀裂剥離を防ぎ、他の層と比較して相対的に厚いシリコーンゴムシートが3層からなるシートの柔軟性を保持しているので、皮膚の曲面に密着して使用することが可能となった。
【0021】
実施例ではフイルム状のシリコーン接着剤を使用したが、液状のシリコーン接着剤をスプレーガンで吹き付けたり、刷毛で塗り使用してもよい。
【0022】
実施例では厚さ1mmのシリコーンゴムシートを使用したが、この厚みに限ることなく、0,5mm〜2.0mm厚のシリコーンゴムシートでも使用可能である。
【0023】
実施例ではシリコーンレジン層の厚さを40μmとしたが、25〜50μmの厚さの範囲で形成することが好ましい。
【符号の説明】
【0025】
1 遠赤外線放射層の断面図
2 シリコーン接着層の断面図
3 シリコーンシートの断面図