特開2017-75084(P2017-75084A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2017-75084単結晶シリコンインゴット及びウエハ形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-75084(P2017-75084A)
(43)【公開日】2017年4月20日
(54)【発明の名称】単結晶シリコンインゴット及びウエハ形成方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/06 20060101AFI20170331BHJP
   C30B 15/04 20060101ALI20170331BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20170331BHJP
【FI】
   C30B29/06 502A
   C30B15/04
   H01L21/304 611
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-123431(P2016-123431)
(22)【出願日】2016年6月22日
(31)【優先権主張番号】201510672144.6
(32)【優先日】2015年10月15日
(33)【優先権主張国】CN
(71)【出願人】
【識別番号】516145552
【氏名又は名称】上海新昇半導體科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100082418
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 朔生
(72)【発明者】
【氏名】肖徳元
(72)【発明者】
【氏名】張汝京
【テーマコード(参考)】
4G077
5F057
【Fターム(参考)】
4G077AA02
4G077BA04
4G077CF10
4G077EB01
4G077EB10
4G077HA12
4G077PB05
5F057BA01
5F057BB03
5F057CA02
5F057CA36
5F057DA01
5F057DA11
5F057DA38
(57)【要約】
【課題】本発明は単結晶シリコンインゴット及びウエハ形成方法に関する。
【解決手段】最初に、格子間間隔に保持された重水素原子でシリカをドープする。その後、重水素原子でドープしたシリカをチョクラルスキー法に利用して、酸素及び不純物をほとんど有さないインゴットを形成する。その後、インゴットを利用してウエハを形成する。半導体素子をウエハ上に形成すると、そこで重水素原子は拡散し、界面周りのダングリングボンドに結合して、比較的安定した構造を形成する。したがって、ホットキャリアを避けることが可能であり、リークを低下でき、性能及び信頼性を高めることが可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単結晶シリコンインゴット形成方法であって、
重水素原子でドープしたシリカを提供することと、
インゴットを形成するためチョクラルスキー法を適用して、ドーピング原料としてのドープシリカを多結晶シリコン材料と共に混合した状態で溶融することと、を含む、
方法。
【請求項2】
前記シリカを前記重水素原子でドープするとき、前記重水素原子のドーズ量は1E12〜1E18ions/cmであることを特徴とする、請求項1に記載の単結晶シリコンインゴット形成方法。
【請求項3】
前記シリカを前記重水素原子でドープするとき、前記重水素原子のエネルギーは1keV〜100keVであることを特徴とする、請求項2に記載の単結晶シリコンインゴット形成方法。
【請求項4】
請求項1に記載の単結晶シリコンインゴット形成方法であって、チョクラルスキー法は、前記るつぼ中で前記ドープシリカを前記多結晶シリコン材料と共に所定温度で溶融する工程と、前記溶融多結晶シリコン断片に浸した種結晶を所定の引き上げ速度で引き上げて単結晶を成長させ、前記単結晶のネック部長さが所定の長さに達すると、引き上げ速度を落として肩段階に移行する工程と、前記肩段階において、前記落とした引き上げ速度で線形冷却速度を維持し、インゴットの所定の直径を形成し、その後定直径成長段階に移行する工程と、前記インゴットの前記直径が前記所定の直径に達すると、冷却しながら素早く前記単結晶を引き上げるが線形冷却を止め、前記るつぼをある持ち上げ速度で持ち上げ、直径変化速度に応じて前記引き上げ速度をゆっくりと調整し、前記インゴットの前記直径を安定させた後、自動定直径成長プログラムを実行して、自動定直径成長段階に移行する工程と、を含むことを特徴とする、方法。
【請求項5】
前記インゴットの直径は前記引き上げ速度及び前記所定温度によって制御されることを特徴とする、請求項4に記載の単結晶シリコンインゴット形成方法。
【請求項6】
前記シリカは単結晶シリコンであることを特徴とする、請求項1に記載の単結晶シリコンインゴット形成方法。
【請求項7】
前記シリカは多結晶シリコンであることを特徴とする、請求項1に記載の単結晶シリコンインゴット形成方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法に従って形成されたインゴットは、ウエハを形成する原料として利用されることを特徴とする、単結晶シリコンウエハの形成方法。
【請求項9】
スライシング、研削、研磨、表面フライス加工及び洗浄を実行する工程をさらに含み、前記インゴットを前記ウエハにする、請求項8に記載の単結晶シリコンウエハ形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は単結晶シリコンインゴットの形成及び半導体製造の分野に関し、特に単結晶シリコンインゴット及びウエハ形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
単結晶シリコンインゴットは、円筒形単結晶シリコンを成長させる技術であるチョクラルスキー(CZ)法により形成され、半導体素子を製造する原料として用いられる。このインゴットをスライス、エッチング、洗浄、研磨してウエハを形成する。
【0003】
CZ法によれば、多結晶シリコンをるつぼ中で加熱して溶融し、その後直径約10mmの棒状種結晶を溶融した多結晶シリコンに浸漬する。種結晶をゆっくりと回転させ、持ち上げると、溶融多結晶シリコン中に、シリコン原子による連続格子を持つ単結晶が成長する。環境が安定していれば結晶化を安定的に行い、その後最終的に、円筒状単結晶シリコンである、単結晶シリコンインゴットが形成する。
【0004】
通常、溶融多結晶シリコンは石英るつぼ内で汚染されている。酸素原子は汚染物質の1つであり、所定濃度まで格子に入り込む。この濃度は溶融多結晶シリコンの温度でのシリコンへの酸素の溶解度、及び固体シリコンにおける酸素の実際の析出係数に依存する。インゴットに入り込む酸素濃度は、製作プロセスにおける代表的温度での固体シリコンへの酸素の溶解度より大きい。結晶を冷却するにつれ、酸素の溶解度は急速に減少し、酸素の溶解度はその後インゴットで飽和する。
【0005】
その後、インゴットをウエハにスライスする。ウエハ内の格子間酸素原子は、後の熱プロセスにおいて酸素析出物を形成する。こうした酸素析出物が半導体素子の活性領域に位置すると、ゲート酸化物が損傷を受け、好ましくないリーク電流が起こることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、単結晶シリコンインゴット及びウエハ形成方法を提供することであり、この方法によって、酸素及び炭素不純物を除去でき、その後形成された半導体素子の性能を高めることが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、単結晶シリコンインゴット形成方法であって、重水素原子でドープしたシリカを提供する工程と、インゴットを形成するためチョクラルスキー法を適用して、ドーピング原料としてのドープシリカを多結晶シリコン材料と共に混合した状態で溶融する工程とを含む方法を提供する。
【0008】
さらに、シリカを重水素原子でドープするとき、任意で、重水素原子のドーズ量は1E12〜1E18ions/cmでよく、及び/または重水素原子エネルギーは1keV〜100keVでよい。
【0009】
単結晶シリコンインゴット形成方法において、るつぼ中でドープシリカを多結晶シリコン材料と共に所定温度で溶融する工程と、溶融多結晶シリコン断片に浸した種結晶を所定の引き上げ速度で引き上げて単結晶を成長させ、単結晶のネック部長さが所定の長さに達すると、引き上げ速度を落として肩段階に移行する工程と、肩段階において、落とした引き上げ速度で線形冷却速度を維持し、インゴットの所定の直径を形成し、その後定直径成長段階に移行する工程と、インゴットの直径が所定の直径に達すると、冷却しながら素早く単結晶を引き上げるが線形冷却を止め、るつぼをある持ち上げ速度で持ち上げ、直径変化速度に応じて引き上げ速度をゆっくり調整し、インゴットの直径を安定させた後、自動定直径成長プログラムを実行して、自動定直径成長段階に移行する工程と、を含むことでチョクラルスキー法を任意に例示してもよい。
【0010】
さらに、単結晶シリコンインゴット形成方法において、インゴットの直径は任意に引き上げ速度及び所定温度によって制御されてもよく、シリカは多結晶シリコンなどから任意に選択できる。
【0011】
本発明によれば、単結晶シリコンウエハ形成方法が提供される。前述の方法により形成したインゴットは少なくとも1つのウエハを形成する材料として利用される。
【0012】
単結晶シリコンウエハ形成方法において、スライシング、研削、研磨、表面フライス加工及び洗浄のさらなる工程が含まれていてもよく、インゴットをウエハにする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、チョクラルスキー法でインゴットを形成するためのドーピング原料として、格子間重水素原子でドープしたシリカを用い、これに由来するインゴット中の重水素原子によって、インゴットに混入した酸素及び他の不純物の含有量を低減すること、ホットキャリア耐性を強化すること、リーク電流を低下させること、半導体素子の形成過程で、格子間重水素原子が拡散してダングリングボンドに結合することで、ダングリングボンドが減少し、半導体素子の性能及び信頼性を高めること、に有効であるが、これに限定されない。
【0014】
本発明の様々な目的および利点は、添付図面と組み合わせ、以下の詳細な記述からより容易に理解できるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に従って、単結晶シリコンインゴット形成方法のフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本開示及びその利点をより完全に理解するため、添付図面と併せて以下の記述に言及する。図中、同様の参照番号は同様の特長を示す。当業者は本明細書に記載されたものを含む実施形態例を実行するための他の形態を理解するであろう。図面は特定のスケールに限定されず、類似の参照番号は類似の要素を表すのに用いる。
本開示及び添付の請求項で用いる場合、「実施形態例」、「例示的実施形態」及び「本実施形態」という語は、必ずしも1つの実施形態を参照していないが、参照している場合もある。様々な実施形態例は、本開示の範囲または主旨から逸脱することなく、容易に組み合わせ、入れ替え可能である。さらに、本明細書で用いられるような専門用語は、実施形態例のためにのみ記載するものであり、本開示を限定する意図はない。この点において、ここで用いる場合、「in」という語は「〜の中に(in)」及び「〜の上に(on)」を含んでもよく、「a」、「an」及び「the」という語は単数及び複数の指示物を含んでもよい。さらに、ここで用いる場合、「by」という語は文脈により、「〜から(from)」を意味してもよい。
さらに、ここで用いる場合、「if」という語は文脈により、「〜の場合(when)」または「〜の時(upon)」を意味してもよい。さらに、ここで用いる場合、「及び/または(and/or)」という単語は、1つまたは複数の関連する記載された項目のあらゆる可能な組み合わせに言及してもよく、包含してもよい。
【0017】
本発明の実施形態によれば、単結晶シリコンインゴット形成方法が提供される。この方法は、重水素原子でドープされたシリカを提供する工程S100と、インゴットを形成するためチョクラルスキー法を適用して、ドーピング原料としてのドープシリカを多結晶シリコン材料と共に混合した状態で溶融する工程S200とを含む。
【0018】
工程S100において、シリカは単結晶シリコン、不純物を含むシリカなどから選択してよい。チョクラルスキー法の適用前、シリカを重水素原子でドープして、格子間重水素原子を形成する。その後、シリカ中の酸素及び他の不純物の含有量を低減して、インゴットにより製造したウエハを用いて形成した半導体素子の性能及び信頼性を高める可能性を上げる。さらに、シリカを重水素原子でドープするとき、例えば、重水素原子のドーズ量は1E12〜1E18ions/cmでよく、好ましくは1E15ions/cmでよい。
【0019】
さらに、シリカを重水素原子でドープするとき、重水素原子のエネルギーは1keV〜100keVでよく、好ましくは50keVである。具体的なエネルギーまたはドーズ量はシリカの大きさに従って変更してもよいことに留意する。
【0020】
工程S200において、ドープシリカをチョクラルスキー法のドーピング原料として用いてインゴットを形成する。
具体的には、チョクラルスキー法は、ドープシリカをるつぼに入れて、所定温度で多結晶シリコン材料と共に溶融することと、溶融材料に浸した種結晶を所定の引き上げ速度で引っ張って単結晶を成長させ、単結晶のネック部長さが所定の長さに達すると、引き上げ速度を落として肩段階に移行することと、肩段階において、落とした引き上げ速度で線形冷却速度を維持し、インゴットの所定の直径を形成し、その後定直径成長段階に移行することと、インゴットの直径が所定の直径に達すると、冷却しながら素早く単結晶を引き上げるが線形冷却を止め、るつぼをある持ち上げ速度で持ち上げ、直径変化速度に応じて引き上げ速度をゆっくり調整し、インゴットの直径を安定させた後、自動定直径成長プログラムを実行して、自動定直径成長段階に移行することと、を含んでもよい。さらに、インゴットの直径を任意に引き上げ速度及び所定温度によって制御してもよく、プロセス要件により設計してもよい。
【0021】
本発明によれば、単結晶シリコンウエハ形成方法がさらに提供される。前述の方法により形成したインゴットをウエハを形成する材料として利用する。具体的には、スライシング、研削、研磨、表面フライス加工及び洗浄のさらなる工程を実施してインゴットをウエハにできる。その後、半導体素子をウエハ上に形成できる。
格子間間隔部に収容した重水素原子と、ウエハ中の低含有量の酸素原子及び他の不純物のため、熱プロセスで通常生じる酸素析出物が十分に低減されて、素子の活性領域におけるゲート酸化物の完全性を保護し、不要なリーク電流を避けることが可能である。
【0022】
要するに、本発明によれば、実施形態の単結晶シリコンインゴット及びウエハ形成方法において、チョクラルスキー法でインゴットを形成するためのドーピング原料として、格子間重水素原子でドープされたシリカを用い、これに由来するインゴット中の重水素原子により、インゴットに混入した酸素及び他の不純物の含有量を低減でき、ホットキャリア耐性を強化でき、リーク電流を低下でき、半導体素子の形成過程で、格子間重水素原子が拡散してダングリングボンドに結合し、ダングリングボンドが減少することにより、半導体素子の性能及び信頼性を高めることが可能である。
【0023】
開示された原理に従って、様々な実施形態を上記のように説明しているが、これらは実施例のためにのみ示すものであり、限定するものではないことを理解すべきである。このように、例示的実施形態の広さ及び範囲は、上述の実施形態のいずれかにより限定されるべきではなく、本開示による請求項及びその同等物によってのみ定義されるべきである。
さらに、前述の利点及び特長は記載の実施形態で提供されるが、該請求項の適用を前述の利点のいずれかまたはすべてを達成するプロセス及び構造に限定すべきでない。
【0024】
また、ここでの段落の見出しは米国特許法施行規則第1.77条またはそれ以外における提案と一致するように与えられ、系統的な標識を示す。これらの見出しは本開示によるいずれかの請求項に記載された本発明を限定または特徴付けない。
具体的には、「背景技術」における技術の説明は、技術が本開示におけるいずれかの発明に対する先行技術であると承認すると理解されるものではない。さらに、単数形の「発明」に対する本開示におけるいかなる言及も、本開示に新規性がただ一点あると主張するために使用されるべきではない。本開示による複数の請求項の制限に従って複数の発明を記載できる。したがって該請求項はそれによって保護される本発明及びその同等物を定義する。
すべての場合において、該請求項の範囲は本開示を考慮してそれぞれの長所に関して検討されるが、本明細書の見出しにより制限されるべきではない。
図1