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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-75478(P2017-75478A)
(43)【公開日】2017年4月20日
(54)【発明の名称】空洞充填検知装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/00 20060101AFI20170331BHJP
【FI】
   E21D11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2015-203040(P2015-203040)
(22)【出願日】2015年10月14日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)土木学会平成27年度全国大会第70回年次学術講演会講演概要集(DVD)VI−323「プラスティック製光ファイバーによるトンネル背面空洞の充填検知システム」(発行日:平成27年8月1日) (2)土木学会平成27年度全国大会in岡山第70回学術講演会 VI−7会場 岡山大学津島キャンパス他 一般教育棟A34講義室(公開日:平成27年9月16日)
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000129758
【氏名又は名称】株式会社ケー・エフ・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】芥川 真一
(72)【発明者】
【氏名】山本 拓治
(72)【発明者】
【氏名】伊達 健介
(72)【発明者】
【氏名】横田 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】小泉 悠
(72)【発明者】
【氏名】井本 厚
(72)【発明者】
【氏名】道上 剛幸
【テーマコード(参考)】
2D055
【Fターム(参考)】
2D055JA00
2D055LA13
2D055LA14
(57)【要約】
【課題】外部から内部が見えない地下空洞に充填材を充填する際に、充填材の充填完了を確実に確認することができると共に、経済性と作業効率に優れる。
【解決手段】充填材が充填される空洞外に配置される光源部2と、空洞外に配置される検知部3と、空洞内に光出射端41が設けられ、光源部2の光を伝送する送光用光ファイバー4と、空洞内に光入射端51が設けられ、光入射端51で受光する光を検知部3に伝送する受光用光ファイバー5を備え、送光用光ファイバー4の光出射端41と受光用光ファイバー5の光入射端51とが、光出射端41からの出射光が光出射端41と離間する光入射端51に一定経路と一定距離で導入されるように配置され、検知部3が、受光用光ファイバー5から入力される光の受光強度が設定記憶されている閾値以下若しくは未満になったことを認識可能に提示する空洞充填検知装置1。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填材が充填される空洞外に配置される光源部と、
前記空洞外に配置される検知部と、
前記空洞内に光出射端が設けられ、前記光源部の光を伝送する送光用光ファイバーと、
前記空洞内に光入射端が設けられ、前記光入射端で受光する光を前記検知部に伝送する受光用光ファイバーとを備え、
前記送光用光ファイバーの光出射端と前記受光用光ファイバーの光入射端とが、前記光出射端からの出射光が前記光出射端と離間する前記光入射端に一定経路と一定距離で導入されるように配置され、
前記検知部が、前記受光用光ファイバーから入力される光の受光強度が設定記憶されている閾値以下若しくは未満になったことを認識可能に提示する
ことを特徴とする空洞充填検知装置。
【請求項2】
前記検知部が、前記受光用光ファイバーから入力される光の受光強度と設定記憶されている閾値を比較し、前記受光強度が前記閾値以下若しくは未満の場合に、前記光出射端及び前記光入射端の周辺領域の前記充填材の充填完了を認識可能に提示する
ことを特徴とする請求項1記載の空洞充填検知装置。
【請求項3】
前記送光用光ファイバーの光出射端と前記受光用光ファイバーの光入射端とが離間して対向配置されることを特徴とする請求項1又は2記載の空洞充填検知装置。
【請求項4】
前記送光用光ファイバーの光出射端からの出射光が一若しくは複数の反射面を介して前記受光用光ファイバーの光入射端に導入されることを特徴とする請求項1又は2記載の空洞充填検知装置。
【請求項5】
前記送光用光ファイバーの光出射端と前記受光用光ファイバーの光入射端とが棒状のガイド部材の先端近傍で支持されることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の空洞充填検知装置。
【請求項6】
前記ガイド部材が筒状の充填材注入管であり、
前記送光用光ファイバーと前記受光用光ファイバーとが前記ガイド部材に略沿って前記ガイド部材の外側に取り付けられることを特徴とする請求項5記載の空洞充填検知装置。
【請求項7】
前記送光用光ファイバーの光出射端と前記受光用光ファイバーの光入射端とが1〜7mm離間して対向配置されることを特徴とする請求項3、5又は6記載の空洞充填検知装置。
【請求項8】
前記送光用光ファイバーの光出射端からの出射光が一若しくは複数の反射面を介して前記受光用光ファイバーの光入射端に導入され、
前記送光用光ファイバーの光出射端から前記反射面を介して前記受光用光ファイバーの光入射端に至るまでの距離が6〜16mmに設定されることを特徴とする請求項4、5又は6記載の空洞充填検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば既設トンネルの覆工背面に存在する空洞、トンネル構築時に移動式型枠の背面側に設けられる覆工コンクリート打設用の空洞、自然空洞、地盤沈下で形成された建物下の空洞等の各種地下空洞に充填材を充填する際に、空洞への充填材の充填状況を確認するための空洞充填検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空洞への充填材の充填状況を確認するための装置として、特許文献1のトンネル覆工背面空洞充填確認装置がある。この装置は、セメントモルタルについて水分の誘電率を利用した静電容量式若しくはパルス反射波を用いるTDR方式の感知部、発泡ウレタンについて発泡時の圧力を感知する感知部と、感知部の感知を計測する記録装置を備えるものであり、感知部を一定の測定長を有するものとして上端を空洞の上端に接触させ、測定長の範囲内で連続的に充填完了までの状態を監視するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−287092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の装置は、静電容量式、TDR方式の感知部或いは圧力を感知する感知部と、記録装置に電気信号を送信する配線が必要な構造であるが、斯様な感知部や電気配線の構造は複雑で高コストのものとなる。そして、充填材の充填後にはこれらの構造を充填材内に残置せざるを得なくなるため、経済性に非常に劣るという問題がある。
【0005】
このような充填材に残置されることになる部分の費用抑制を図ることができる装置として、本願出願人は先に特願2014−153328(非公知文献)の装置を提案している。この装置は、送光用光ファイバーからトンネル空洞壁面に光を照射し、受光用光ファイバーでトンネル空洞壁面で反射された反射光を受光し、受光情報に応じて充填材の充填状況、充填高さを連続的に検知するものであり、送光用光ファイバーの側面に光漏れが生ずる開口部を設け、この開口部が充填材の充填で漸次遮蔽されるようにして、詳細な充填状況の変化を検知可能にしている。
【0006】
しかしながら、送光用光ファイバーの側面の被覆を故意に破って一定の開口部を形成し、光が漏れるようにするには加工に手間がかかり、製造コストが高くなる。
【0007】
また、充填材の充填高さの増加に応じて受光強度が増加し、最終段階で受光強度が0になって充填材の充填完了を検知する処理では、リアルタイムに充填状況をモニタリングしておかないと、充填材の充填高さが不十分で受光強度が少ないのか、充填完了で受光強度が少なくなっているのか分からない場合も生ずる。例えば既設トンネルの覆工背面空洞に充填材として可塑性材料を充填するケースでは、数分間で充填完了するわけではなく、施工翌日まで充填状況が変化し、最初に注入した材料が硬化してから未充填箇所への追加注入を翌日施すこともあり、ずっとモニタリングしているのは非現実的である。実際に空洞に充填材を充填する施工では、充填材の充填状況をリアルタイムで把握することよりも、確実に充填材の充填完了を確認できることが求められる。
【0008】
また、トンネル空洞壁面で反射された反射光を受光用ファイバーで受光して充填材の充填を検知する手法では、図19(a)のように、地山205の湧水が溜水209となっている空洞210に充填材208としてセメント系グラウト材を充填していった場合に、溜水209が懸濁して受光用ファイバー204による受光量が低下又はない状態が継続し、まだ未充填なのに充填完了と認識されてしまったり、又、図19(b)のように、トンネル空洞壁面206の凹凸により反射光が受光用光ファイバー204の光入射端で捉えることができずに受光強度が0になって充填完了とみなされてしまうケースも考えられる(図19中、201は光源部、202は検知部、203は送光用光ファイバー、204は受光用光ファイバー、205は地山、206はトンネル空洞壁面、207は覆工コンクリート、208は充填材、209は溜水、210は空洞である)。
【0009】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、外部から内部が見えない地下空洞に充填材を充填する際に、充填材の充填完了を確実に確認することができると共に、経済性と作業効率に優れる空洞充填検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の空洞充填検知装置は、充填材が充填される空洞外に配置される光源部と、前記空洞外に配置される検知部と、前記空洞内に光出射端が設けられ、前記光源部の光を伝送する送光用光ファイバーと、前記空洞内に光入射端が設けられ、前記光入射端で受光する光を前記検知部に伝送する受光用光ファイバーとを備え、前記送光用光ファイバーの光出射端と前記受光用光ファイバーの光入射端とが、前記光出射端からの出射光が前記光出射端と離間する前記光入射端に一定経路と一定距離で導入されるように配置され、前記検知部が、前記受光用光ファイバーから入力される光の受光強度が設定記憶されている閾値以下若しくは未満になったことを認識可能に提示することを特徴とする。
これによれば、送光用光ファイバーの光出射端からの出射光が離間する受光用光ファイバーの光入射端に一定経路と一定距離で導入されることから、空洞内の溜水の懸濁、空洞壁面の凹凸での光反射等に影響されずに、出射光を受光用光ファイバーで安定して受光することが可能となり、この安定した受光が充填された充填材の光路遮断で急減することで充填材の充填完了を確実に認識することができる。また、充填された充填材内に残置する部分が送光用光ファイバー、受光用光ファイバー等の安価なものに限られ、又、送光用光ファイバーの被覆を故意に破って一定の開口部を形成する等の加工も不要であり、経済性に優れる。また、充填材を充填する施工において、充填状況のリアルタイムのモニタリングすることも不要となり、優れた作業効率で充填材の充填確認を行うことができる。
【0011】
本発明の空洞充填検知装置は、前記検知部が、前記受光用光ファイバーから入力される光の受光強度と設定記憶されている閾値を比較し、前記受光強度が前記閾値以下若しくは未満の場合に、前記光出射端及び前記光入射端の周辺領域の前記充填材の充填完了を認識可能に提示することを特徴とする。
これによれば、検知部の演算処理により、一層明確に光出射端及び光入射端の周辺領域の充填材の充填完了を認識することができる。
【0012】
本発明の空洞充填検知装置は、前記送光用光ファイバーの光出射端と前記受光用光ファイバーの光入射端とが離間して対向配置されることを特徴とする。
これによれば、送光用光ファイバーの光出射端と受光用光ファイバーの光入射端との間に充填材の充填で状態が変化する光路を確保することができると共に、送光用光ファイバーの光出射端から受光用光ファイバーの光入射端に一定経路、一定距離で確実に光を導入することができる。
【0013】
本発明の空洞充填検知装置は、前記送光用光ファイバーの光出射端からの出射光が一若しくは複数の反射面を介して前記受光用光ファイバーの光入射端に導入されることを特徴とする。
これによれば、送光用光ファイバーの光出射端と受光用光ファイバーの光入射端との間に充填材の充填で状態が変化する光路を確保することができると共に、送光用光ファイバーの光出射端から受光用光ファイバーの光入射端に一定経路、一定距離で確実に光を導入することができる。
【0014】
本発明の空洞充填検知装置は、前記送光用光ファイバーの光出射端と前記受光用光ファイバーの光入射端とが棒状のガイド部材の先端近傍で支持されることを特徴とする。
これによれば、棒状のガイド部材で空洞内の所要位置に、簡単な作業で送光用光ファイバーの光出射端と受光用光ファイバーの光入射端を設置することができる。
【0015】
本発明の空洞充填検知装置は、前記ガイド部材が筒状の充填材注入管であり、前記送光用光ファイバーと前記受光用光ファイバーとが前記ガイド部材に略沿って前記ガイド部材の外側に取り付けられることを特徴とする。
これによれば、ガイド部材を筒状の充填材注入管とすることにより、充填材注入管を充填材の注入に加え、送光用光ファイバーの光出射端と受光用光ファイバーの光入射端の設置に利用することができ、別途にガイド部材を用いることが不要となる。
【0016】
本発明の空洞充填検知装置は、前記送光用光ファイバーの光出射端と前記受光用光ファイバーの光入射端とが1〜7mm離間して対向配置されることを特徴とする。
これによれば、送光用光ファイバーの光出射端と受光用光ファイバーの光入射端とを離間して対向配置する対向型の構成において、より確実に充填材の充填完了を確認することができる。
【0017】
本発明の空洞充填検知装置は、前記送光用光ファイバーの光出射端からの出射光が一若しくは複数の反射面を介して前記受光用光ファイバーの光入射端に導入され、前記送光用光ファイバーの光出射端から前記反射面を介して前記受光用光ファイバーの光入射端に至るまでの距離が6〜16mmに設定されることを特徴とする。
これによれば、送光用光ファイバーの光出射端の出射光を反射面を介して受光用光ファイバーの光入射端に導入する反射型の構成において、より確実に充填材の充填完了を確認することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の空洞充填検知装置によれば、外部から内部が見えない地下空洞に充填材を充填する際に、優れた経済性と作業効率で充填材の充填完了を確実に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明による実施形態の空洞充填検知装置を示すブロック図。
図2】実施形態の空洞充填検知装置を既存の矢板式トンネルの覆工背面空洞に充填材を充填する際に適用する場合の例を示す横断説明図。
図3】送光用光ファイバーと受光用光ファイバーをガイド部材の先端近傍で支持する構造の第1例を示す部分拡大斜視図。
図4】送光用光ファイバーと受光用光ファイバーをガイド部材の先端近傍で支持する構造の第2例を示す部分拡大斜視図。
図5】送光用光ファイバーと受光用光ファイバーをガイド部材の先端近傍で支持する構造の第3例を示す部分拡大斜視図。
図6】送光用光ファイバーと受光用光ファイバーをガイド部材の先端近傍で支持する構造の第4例を示す部分拡大斜視図。
図7】送光用光ファイバーと受光用光ファイバーをガイド部材の先端近傍で支持する構造の第5例を示す部分拡大斜視図。
図8】第5例の変形例である第6例の概念説明図。
図9】送光用光ファイバーと受光用光ファイバーをガイド部材の先端近傍で支持する構造の第7例を示す斜視説明図。
図10】送光用光ファイバーと受光用光ファイバーをガイド部材の先端近傍で支持する構造の第8例を示す斜視説明図。
図11】送光用光ファイバーと受光用光ファイバーをガイド部材の先端近傍で支持する構造の第9例を示す部分拡大斜視図。
図12】(a)は送光用光ファイバーと受光用光ファイバーをガイド部材の先端近傍で支持する構造の第10例を示す部分拡大斜視図、(b)は第10例のガイド部材の先端近傍を示す部分拡大斜視図。
図13】実施形態の空洞充填検知装置を用いる充填材の充填完了の検知処理を示すフローチャート。
図14】トンネルの延びる方向にセンサー部を複数設置する実施形態の空洞充填検知装置の別使用例を示す縦断説明図。
図15】空洞の両端近傍にセンサー部を設置する実施形態の空洞充填検知装置の別使用例を示す断面説明図。
図16】(a)はトンネルの天端にセンサー部を設置する実施形態の空洞充填検知装置の別使用例を示す横断説明図、(b)はその斜視説明図。
図17】(a)は実験例の対面型センサー部の送光用光ファイバーと受光用光ファイバーの配置を示す説明図、(b)は実験例の反射型センサー部の送光用光ファイバーと受光用光ファイバーと反射板の配置を示す説明図。
図18】(a)は対向型センサー部のセメント系充填材の充填進行に伴う受光強度の変化を示すグラフ、(b)は反射型センサー部のセメント系充填材の充填進行に伴う受光強度の変化を示すグラフ、(c)は対向型センサー部のウレタン系充填材の充填進行に伴う受光強度の変化を示すグラフ。
図19】(a)は従来の充填検知方法による溜水の問題点を示す断面説明図、(b)は従来の充填検知方法による空洞壁面の凹凸による反射の問題点を示す断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔実施形態の空洞充填検知装置〕
本発明による実施形態の空洞充填検知装置1は、図1に示すように、充填材が充填される空洞外に配置されるメタルハライドランプ、発光ダイオード等の光源部2と、空洞外に配置される検知部3と、空洞内に光出射端41が設けられ、光源部2の光を伝送する送光用光ファイバー4と、空洞内に光入射端51が設けられ、光入射端51で受光する光を検知部3に伝送する受光用光ファイバー5を備え、検知部3と光源部2で検知装置本体6を構成する。
【0021】
検知部3は、CPU等の制御処理部31と、ハードディスク、RAM、EEPROM等の記憶部32と、フォトダイオード等の受光部33と、液晶ディスプレイ等の表示部34と、閾値等のデータを入力する入力部35を有し、記憶部32には、制御処理部31に実行させる制御プログラムを格納するプログラム格納部321と、設定された受光強度の閾値を格納する閾値格納部322と、閾値以外のデータを格納するデータ格納部323が設けられている。受光部33は、受光用光ファイバー5から伝送された光を受光して受光強度を取得するようになっている。
【0022】
検知部3の制御処理部31は、格納されている制御プログラムに従い、受光用光ファイバー5から受光部33を介して入力される光の受光強度と閾値格納部322に設定記憶されている閾値とを比較し、受光強度が閾値以下若しくは未満の場合に、送光用光ファイバー4の光出射端及び受光用光ファイバー5の光入射端の周辺領域における、充填材の充填完了として検知し、当該領域の充填材の充填完了を認識可能に提示するようになっている。なお、本発明に用いる光の受光強度は絶対値ではなく、光射出端41と光入射端51が位置する空洞の状況に応じ、検知される受光強度を相対的に表示可能とするようキャリブレーションされた値を用い、その受光強度の相対値に基づいて閾値が設定される。充填材の充填完了の提示には、例えば表示部34に充填完了の旨を表示して報知するが、充填完了の報知の仕方は、例えば別途に検知部3に充填完了灯或いはブザーを付設し、充填完了灯を点灯或いはブザーを鳴らすなど、適宜の仕方を採用できる。
【0023】
送光用光ファイバー4と受光用光ファイバー5は、例えばコアとこれを被覆するクラッドがプラスチック製の安価な光ファイバーを所望の長さに切断しただけのものであり、側面は全て被覆され、その切断された両端部でコアだけがそれぞれ外部に露出して発光或いは受光可能になっている。送光用光ファイバー4の光出射端41と受光用光ファイバー5の光入射端51とは、互いに接近して配置されると共に、光出射端41からの出射光が光出射端41と離間する光入射端51に一定経路と一定距離で導入されるように配置される。送光用光ファイバー4の光出射端41と受光用光ファイバー5の光入射端51は棒状のガイド部材の先端近傍で支持して配置するようにすると好ましい。送光用光ファイバー4の光出射端41と受光用光ファイバー5の光入射端51と出射光の導入経路により、センサー部7が構成される。
【0024】
送光用光ファイバー4と受光用光ファイバー5或いはセンサー部7は、1つの検知部3に対して一組若しくは複数組設けることが可能であり、又、光源部2は、送光用光ファイバー4と受光用光ファイバー5の組数或いはセンサー部7の数に対応して1つ若しくは複数設けることが可能である。また、検知部3は、受光用光ファイバー5から入力される受光強度の時間経過に伴う推移を表示部34にて表示し、且つ記録していく構成とすると参考情報が得られて好適であるが、受光強度の経時的な推移を表示せずに、充填材の充填完了を検知し、表示部34等で報知する構成とすることも可能である。
【0025】
尚、本発明の検知部には、上記検知部3の構成以外に、受光用光ファイバー5から入力される光の受光強度が設定記憶されている閾値以下若しくは未満になったことを認識可能に提示するものであれば適宜の構成が含まれ、例えば横軸:時間−縦軸:光強度のグラフを表示部34で表示すると共に、当該グラフに光強度の設定閾値を横線として表示し、表示部34を見た作業者が、受光強度が設定記憶されている閾値以下若しくは未満になったことを認識可能にする構成等が含まれる。
【0026】
本実施形態の空洞充填検知装置1は、例えば図2に示す既存の矢板式トンネルの覆工背面空洞に充填材を充填する際に適用することができる。図2の矢板式トンネルにおいて、91は地山、92はトンネル延長方向に所定間隔で設置された支保工(不図示)に架け渡すことで地山壁面に倣って配置されている矢板、93は矢板92の内側に形成されている覆工コンクリートであり、94は覆工背面の空洞、95は空洞94に途中まで充填された充填材である。
【0027】
図2の矢板式トンネルの空洞94には、5つのセンサー部7a、7b、7c、7d、7eが空洞94の天井面にそれぞれ近接して設けられており、又、センサー部7a、7b、7c、7d、7eは、それぞれ相互にある程度距離を開けて5箇所の異なる箇所に離間して配置されている。各センサー部7a、7b、7c、7d、7eをそれぞれ光出射端41と光入射端51で構成する送光用光ファイバー4と受光用光ファイバー5は、棒状のガイド部材8で先端近傍を支持されて空洞94内に導入されており、ガイド部材8で支持されて各センサー部7a、7b、7c、7d、7eは所定位置に設けられている。ガイド部材8は筒状の充填材注入管とすると充填材注入管を充填材95の注入に加え、送光用光ファイバー4の光出射端41と受光用光ファイバー5の光入射端51の設置に利用することができ、別途にガイド部材を用いることが不要となって好ましい。
【0028】
送光用光ファイバー4と受光用光ファイバー5の5組は、検知装置本体6内の1つの検知部3に接続され、又、各組の送光用光ファイバー4に対応して、検知装置本体6内には5個の送光用の光源部2が設けられている。検知装置本体6の検知部3では、5箇所のセンサー部7a、7b、7c、7d、7eのそれぞれについて、例えば受光用光ファイバー5から入力される受光強度の時間経過に伴う推移を表示部34にて表示し、且つ記録していく。これらの5箇所の推移画面は、例えば表示部34で複数画面で並行表示する、或いは入力部35からの画面切り替えの入力に応じて切替表示する構成等とすることが可能である。
【0029】
そして、検知部3は、5箇所のそれぞれについて、受光用光ファイバー5から受光部33を介して入力される光の受光強度と閾値格納部322に設定記憶されている閾値とを比較し、受光強度が閾値以下若しくは未満の場合に、送光用光ファイバー4の光出射端及び受光用光ファイバー5の光入射端の周辺領域における、充填材の充填完了として検知し、提示する処理を行う(図1参照)。図2の推移画面においては、光強度の設定閾値に対応する充填完了を認識可能な点線の横線を表示している。尚、検知部3が、入力される受光強度を経時的な推移で表示すると共に、光強度の設定閾値に対応する充填完了を認識可能な横線を表示し、表示部34を見た作業者が、受光強度が設定記憶されている閾値以下若しくは未満になったことを認識可能にする構成とすることも可能である。尚、図2の示例では、センサー部7a、7b、7d、7eが設置されている領域では充填材95の充填が完了し、センサー部7cが設置されている天端部の領域では充填材95の充填が未完である。
【0030】
ここで、送光用光ファイバー4と受光用光ファイバー5を棒状のガイド部材の先端近傍で支持する構造例について説明する。図3の第1例では、例えば円筒形の塩ビ管の充填材注入管等の筒状のガイド部材8aの先端近傍の外周面に透明材料で形成されている支持具11が設けられている。支持具11の底面はガイド部材8aの外周面に倣う形状になっており接着等で外周面に固定されている。支持具11は、略直方体形であり、中央に凹部12が形成され、その両側の対応する位置に一対の挟持部13が形成されており、挟持部13のスリット14が側方を向くようにして支持部11はガイド部材8aに取り付けられている。送光用光ファイバー4と受光用光ファイバー5はガイド部材8aに略沿うように設けられ、ガイド部材8aの外側に結束バンド15で結束して取り付けられている。
【0031】
送光用光ファイバー4の先端近傍は、一方の挟持部13に挟持されて固定され、受光用光ファイバー5の先端近傍は、他方の挟持部13に挟持されて固定され、送光用光ファイバー4の光出射端41と受光用光ファイバー5の光入射端51とが凹部12の幅と略対応する距離だけ離間して対向配置される。対向配置されている送光用光ファイバー4の光出射端41と受光用光ファイバー5の光入射端51との離間距離は1〜7mm程度とすることが好ましい。
【0032】
また、図4の第2例では、例えば円筒形の塩ビ管からなる充填材注入管等の筒状のガイド部材8aの先端がL字形に切り欠かれ、そこに蝶番等のL字状の板材16が、一方の面が切り欠かれ端面81a側に配置され、他方の面が切り欠かれた部分の残りである突出部82aに沿うように配置され、突出部82aに或いは突出部82aと端面81aに接着等で固定されている。透明材料で形成されている支持具11aは第1例と異なり底面が平面になっており、板材16の一方の面上に載置するようにして支持具11a設けられ、接着等で固定されている。その他の支持具11aの構成は第1例の支持具11と同一である。支持具11aは、ガイド部材8aの先端開口の一部を占めるように設けられ、挟持部13のスリット14が側方を向くようにして取り付けられている。スリット14が横方向を向いていると、充填材95が飛び跳ねたり泥や湧水が降ってきて光射出端41と光入射端51間の光の経路が塞がれることが防止され、常時適正な光強度を検出することができる。
【0033】
そして、第1例と同様に、ガイド部材8aに略沿うように設けられ、ガイド部材8aの外側に結束バンド15で結束して取り付けられている送光用光ファイバー4、受光用光ファイバー5について、送光用光ファイバー4の先端近傍が一方の挟持部13に挟持されて固定され、受光用光ファイバー5の先端近傍が他方の挟持部13に挟持されて固定されている。送光用光ファイバー4の光出射端41と受光用光ファイバー5の光入射端51とは、凹部12の幅と略対応する距離だけ例えば1〜7mm離間して対向配置されている。
【0034】
また、図5の第3例は、第2例において、送光用光ファイバー4、受光用光ファイバー5をガイド部材8aの外側に結束バンド15で結束して取り付ける構成に代え、送光用光ファイバー4、受光用光ファイバー5をガイド部材8a内部に挿入し、光源部2、検知部3まで導出しているものである。筒状のガイド部材8aが充填材注入管でない場合には、第3例のように送光用光ファイバー4、受光用光ファイバー5をガイド部材8aに内挿して設けることが可能である。図5中、25は充填材注入管である。その他の構成は第2例と同一である。
【0035】
また、図6の第4例は、第2例において、支持具11aを挟持部13のスリット14が側方を向くようにして取り付ける構成に代え、支持具11aを挟持部13のスリット14が上方を向くようにして取り付けられているものであり、スリット14が上方を向いた挟持部13・13で、送光用光ファイバー4の先端近傍、受光用光ファイバー5の先端近傍が挟持されて固定されている。スリット14が上方を向いた挟持部13・13による挟持では、送光用光ファイバー4、受光用光ファイバー5が挟持部13・13から外れにくくなり、より取り付け状態が安定する。本例でも送光用光ファイバー4の光出射端41と受光用光ファイバー5の光入射端51とが、凹部12の幅と略対応する距離だけ離間、好ましくは1〜7mm離間して対向配置されている。その他の構成は第2例と同一である。
【0036】
また、図7の第5例は、第1例〜第4例が送光用光ファイバー4の光出射端41と受光用光ファイバー5の光入射端51とが離間して対向配置される対向型であるのに対して、送光用光ファイバー4の光出射端41からの出射光が1つの反射板を介して受光用光ファイバー5の光入射端51に導入される反射型の構造例である。
【0037】
第5例においては、例えば円筒形の塩ビ管からなる筒状のガイド部材8aの先端がL字形に切り欠かれ、そこに蝶番等のL字状の板材16が、一方の面が切り欠かれ端面81aと逆側に配置され、他方の面が切り欠かれた部分の残りである突出部82aに沿うように配置され、突出部82aに接着等で固定されている。板材16の一方の面には、端面81aと対向するように反射板17が固着されている。尚、本例では板材16の一方の面が屋根として機能し、送光用光ファイバー4の光出射端41と受光用光ファイバー5の光入射端51が別途設けられる充填材注入管から充填される充填材を被りにくくなる。
【0038】
図示例においては透明材料で形成されている支持具11bは、略直方体形であり、所定距離離間して一対の挟持部13・13が並行して設けられている。支持具11bは、ガイド部材8aの先端開口の一部を占めるように設けられており、その底面が板材16の他方の面に沿うように配置され、接着等で固定されていると共に、一対の挟持部13・13が、ガイド部材8aの軸方向に延びるように配置されている。
【0039】
送光用光ファイバー4、受光用光ファイバー5をガイド部材8aに内挿して設けられ、送光用光ファイバー4の光出射端41と、受光用光ファイバー5の光入射端51は、それぞれ反射板17の反射面に向けられて挟持部13・13で挟持され、反射板17の反射面に近接して並列配置されている。光出射端41と反射板17の反射面、反射板17の反射面と光入射端51とはそれぞれ離間しており、光出射端41から反射板17の反射面までの距離と、反射板17の反射面から光入射端51までの距離の合計距離は、例えばそれぞれの距離を4〜7mmに設定することで、8〜14mmに設定すると好ましい。
【0040】
図8の第6例は、第5例の変形例であり、複数の反射面を介して送光用光ファイバー4の光出射端41からの出射光を受光用光ファイバー5の光入射端51に導入するものである。第6例では、L字状の取付板18の内側に三角柱状の反射体19を設けた反射具を2つ用い、2つの反射体19・19の反射面20・20での反射により、送光用光ファイバー4の光出射端41からの出射光を90度ずつ角度を変えて屈折、反射させ、コ字形の光路になるように設定し、受光用光ファイバー5の光入射端51に導入するものである。取付板18・18は、例えば第5例の板材16の一方の面に接着等で固定して設けられ、反射体19・19の反射面20・20が所定位置となるようにして反射具が配置される。
【0041】
この場合の光出射端41から出射光が入射する第1の反射面20までの距離、第1の反射面20による反射光が入射する第2の反射面20までの距離、第2の反射面20による反射光が入射する光入射端51までの距離の合計も、例えば8〜14mmに設定すると好ましい。
【0042】
また、図9の第7例は、対向型であり、棒状のガイド部材に相当する細長板状のガイド部材8bを有し、ガイド部材8bの先端に固定板81bが設けられている。送光用光ファイバー4、受光用光ファイバー5はガイド部材8bの一方の面に沿うように設けられ、間隔を開けて設けられる結束具21で取り付けられている。
【0043】
送光用光ファイバー4の光出射端41側、受光用光ファイバー5の光入射端51側は、固定板81b下に配置されるように引き延ばされ、固定板81b下において、光出射端41と光入射端51が対応する位置で離間して対向するようにして、送光用光ファイバー4と受光用光ファイバー5は図示省略する固定具で固定されている。これにより、固定板81bが屋根として機能し、送光用光ファイバー4の光出射端41と受光用光ファイバー5の光入射端51が充填材等を被って充填前に光強度がなくなることが防止される。送光用光ファイバー4の光出射端41と受光用光ファイバー5の光入射端51は、ガイド部材8bの先端近傍で支持される。本例でも送光用光ファイバー4の光出射端41と受光用光ファイバー5の光入射端51とは、例えば1〜7mm離間して対向配置することが好ましい。
【0044】
また、図10の第8例は、反射型であり、棒状のガイド部材に相当する細長板状のガイド部材8cを有し、ガイド部材8cの先端に、L字状板材81cが一方の面をガイド部材8cに対して略垂直にし、他方の面をガイド部材8cの背面に沿わせるようにして設けられ、L字状板材81cの他方の面がガイド部材8cに接着等で固定されている。L字状部材81cの一方の面のガイド部材8c側には反射板17が設けられている。
【0045】
送光用光ファイバー4、受光用光ファイバー5はガイド部材8cの前面に沿うように並行して設けられ、間隔を開けて設けられる結束具21で取り付けられている。送光用光ファイバー4の光出射端41と、受光用光ファイバー5の光入射端51は、並行な状態で最先の結束具21で固定され、ガイド部材8cの先端近傍で支持されており、反射板17の反射面に向けられている。光出射端41と反射板17の反射面、反射板17の反射面と光入射端51とはそれぞれ離間しており、光出射端41から反射板17の反射面までの距離と、反射板17の反射面から光入射端51までの距離の合計距離は、例えばそれぞれの距離を4〜7mmに設定することで、8〜14mmに設定すると好ましい。
【0046】
また、図11の第9例は、対向型であり、棒状のガイド部材に相当する細長板状のガイド部材8dを有し、ガイド部材8dの先端に略C字状のC字部81dが形成されている。送光用光ファイバー4、受光用光ファイバー5はガイド部材8dの一方の面に沿うように設けられ、間隔を開けて設けられる結束バンド15で取り付けられていると共に、送光用光ファイバー4、受光用光ファイバー5の先端近傍は、略コ字形の取付具22を外側から嵌め込むことでガイド部材8d及びC字部81dに取り付けられている。
【0047】
送光用光ファイバー4の光出射端41と受光用光ファイバー5の光入射端51は、C字部81dのスリットを挟んで対応する位置で対向するように配置され、ガイド部材8dの先端近傍で支持される。本例でも送光用光ファイバー4の光出射端41と受光用光ファイバー5の光入射端51とは、例えば1〜7mm離間して対向配置することが好ましい。
【0048】
また、図12の第10例は、対向型であり、棒状のガイド部材に相当する細長板状のガイド部材8eを有し、ガイド部材8eの先端の略中央には凹部81eが形成されている。ガイド部材8eの一方の面側には、導入溝82e・82eが離間した位置に一対で形成されている。導入溝82e・82eは、ガイド部材8eの長手方向に延ばされ、先端付近で内側に曲げられ、凹部81eで先端が開放されており、対応する位置で対向配置されている。
【0049】
送光用光ファイバー4、受光用光ファイバー5は、それぞれ導入溝82e・82e内に嵌め込まれ、先端近傍においても導入溝82e・82eで支持されガイド部材8eからの離脱が防止されている。凹部81eにおいて、送光用光ファイバー4の光出射端41と受光用光ファイバー5の光入射端51は離間して配置され、対応する位置で対向配置されている。本例でも送光用光ファイバー4の光出射端41と受光用光ファイバー5の光入射端51とは、例えば1〜7mm離間して対向配置することが好ましい。
【0050】
本実施形態の空洞充填検知装置1で充填材の充填完了の検知処理を行う際には、図13に示すように、ガイド部材8を用いて所要個数のセンサー部7を空洞の所定箇所に設置する(S1)。例えば図2の矢板式トンネルの空洞94の場合には、センサー部7a、7b、7c、7d、7eを、トンネル周面方向に相互に距離を開けて5箇所の異なる箇所に離間して配置する。
【0051】
次いで、光源部2をON状態にして、送光用光ファイバー4の光出射端41からの出射光を受光用光ファイバー5の光入射端51が受光し、検知部3で受光強度を時間経過に沿って取得する状態とする(S2)。この状態で充填材95等の注入、充填を開始する(S3)。
【0052】
充填材の充填進行に伴い、充填完了した領域に設置されているセンサー部7について、検知部3は、受光用光ファイバー5から入力される光の受光強度が設定記憶されている閾値以下若しくは未満になったことを認識可能に提示する。そして、設置した全てのセンサー部7について充填が完了した場合には、全てのセンサー部7について、検知部3は、受光用光ファイバー5から入力される光の受光強度が設定記憶されている閾値以下若しくは未満になったことを認識可能に提示し、充填材の充填が完了する(S4、S5、S6)。
【0053】
本実施形態によれば、送光用光ファイバー4の光出射端41からの出射光が離間する受光用光ファイバー5の光入射端51に一定経路と一定距離で導入されることから、空洞内の溜水の懸濁、空洞壁面の凹凸での光反射等に影響されずに、出射光を受光用光ファイバー5で安定して受光することが可能となり、この安定した受光が充填された充填材の光路遮断で急減することで充填材の充填完了を確実に認識することができる。また、充填された充填材内に残置する部分が送光用光ファイバー4、受光用光ファイバー5等の安価なものに限られ、又、送光用光ファイバー4の被覆を故意に破って一定の開口部を形成する等の加工も不要であり、経済性に優れる。また、充填材を充填する施工において、充填状況のリアルタイムのモニタリングすることも不要となり、優れた作業効率で充填材の充填確認を行うことができる。また、検知部3の演算処理により、一層明確に光出射端41及び光入射端51の周辺領域の充填材の充填完了を認識することができる。
【0054】
また、対向型のセンサー部7、或いは反射型のセンサー部7により、送光用光ファイバーの光出射端と受光用光ファイバーの光入射端との間に充填材の充填で状態が変化する光路を確実に確保することができると共に、送光用光ファイバーの光出射端から受光用光ファイバーの光入射端に一定経路、一定距離で確実に光を導入することができる。また、棒状のガイド部材8で空洞内の所要位置に、簡単な作業で送光用光ファイバー4の光出射端41と受光用光ファイバー5の光入射端51を設置することができる。
【0055】
また、ガイド部材8を筒状の充填材注入管とする場合には、充填材注入管を充填材の注入に加え、送光用光ファイバー4の光出射端41と受光用光ファイバー5の光入射端51の設置に利用することができ、別途にガイド部材を用いることが不要となる。
【0056】
〔実施形態の空洞充填検知装置の別使用例〕
次に、実施形態の空洞充填検知装置の別使用例について説明する。図14はトンネルの延びる方向にセンサー部7f〜7jを複数設置する使用例であり、地山101と既存の覆工コンクリート102との間に空洞103が形成され、空洞103がトンネルの延びる方向に延びて形成されている。そして、トンネル延在方向に間隔を開けた位置において、覆工コンクリート102を貫通するようにガイド部材8を設け、ガイド部材8の先端近傍で支持される送光用光ファイバー4と受光用光ファイバー5を空洞103内に導入し、センサー部7f〜7jを空洞103内に設置するものである。送光用光ファイバー4と受光用光ファイバー5は検知装置本体6に接続される。尚、図14中、104は充填材である。
【0057】
また、図15は空洞112の両端近傍にセンサー部7k、7lを設置する使用例であり、地山111の地下に空洞112が形成されている。地山111には、充填材113を充填すると共に送光用光ファイバー4と受光用光ファイバー5を導入するための注入穴114が形成されており、検知装置本体6から送光用光ファイバー4と受光用光ファイバー5が延ばされ、注入穴114に挿入され、センサー部7k、7lが空洞112の両端近傍に設置されている。この使用例は、例えば地下採石場、廃坑跡、防空壕、石灰岩やシラスによる自然空洞等の充填を行う際に、充填材の充填領域を仕切り、その端部近傍にセンサー部を配置する場合等に使用する。
【0058】
また、図16はトンネルの天端に単一のセンサー部7mを設置する使用例であり、地山121の周面に吹付コンクリート122が打設され、吹付コンクリート122から離間して型枠123が周状に配置されている状態において、吹付コンクリート122と型枠123との間の覆工コンクリート打設用の空洞124に充填材注入管125の吹上口126からコンクリートを充填材として注入、充填する場合の使用例である。
【0059】
検知装置本体6からは送光用光ファイバー4と受光用光ファイバー5が延ばされ、その先端のセンサー部7mは天端の吹付コンクリート122に近接して配置されている。このようにトンネル新築時には、既存のトンネルの覆工背面空洞のように、充填領域のアーチ天端形状が複雑ではないので、センサー部7を多点設置しなくても充填材の充填完了を確認することが可能である。尚、図14図16の各使用例のセンサー部7f〜7j、センサー部7k、7l、センサー部7mには、対向型のセンサー部と反射型のセンサー部のいずれを用いてもよい。
【0060】
〔対向型センサー部と反射型センサー部の実験例〕
次に、対向型センサー部と反射型センサー部の充填材の充填進行に伴う受光強度の変化を確認した実験例について説明する。対向型センサー部の実験例では、図17(a)に示すように、送光用光ファイバー4の光出射端41と受光用光ファイバー5の光入射端51とを距離d1を開けて離間させ、対応位置で対向配置し、この構造を維持して、光出射端41の出射光を光入射端51に受光させながら充填材を充填していき、検知部3において充填進行に伴う対向型の受光強度の変化を確認した。
【0061】
反射型センサー部の実験例では、図17(b)に示すように、送光用光ファイバー4と受光用光ファイバー5を並行配置し、送光用光ファイバー4の光出射端41と受光用光ファイバー5の光入射端51を反射板28に向けて配置している。送光用光ファイバー4の光出射端41と反射板28との距離、受光用光ファイバー5の光入射端51と反射板28との距離は、同一距離で距離d2としており、送光用光ファイバー4の光出射端41から受光用光ファイバー5の光入射端51に受光されるまでの距離はd2の2倍になっている。この構造を維持して、光出射端41の出射光を光入射端51に受光させながら充填材を充填していき、検知部3において充填進行に伴う反射型の受光強度の変化を確認した。
【0062】
図18(a)、(b)の実験において、図17(a)の対向型センサー部、図17(b)の反射型センサー部を設置した空洞は、水が存在する空洞であり、この空洞に充填材を充填して実験した。この水が存在する空洞は、充填材の充填進行に伴って空洞内の水が懸濁するものであり、送光用光ファイバーから出射した光を空洞面で反射させ、受光用光ファイバーで受光して充填材の充填完了を確認する構造では、充填完了を正確に確認することが困難なものである。
【0063】
図18(a)は対向型センサー部を空洞の上端付近に設置し、セメント系充填材を空洞に充填した場合に、セメント系充填材の充填進行に伴う受光強度の変化を表したものである。距離d1を1mm、4mm、7mmのいずれとした場合でも、充填材の充填完了時には受光強度が急低下するため、受光強度の閾値を設定することにより、明確にセメント系充填材の充填完了を認識できることが分かる。
【0064】
図18(b)は反射型センサー部を空洞の上端付近に設置し、セメント系充填材を空洞に充填した場合に、セメント系充填材の充填進行に伴う受光強度の変化を表したものである。距離d2を4mm、7mmのいずれとした場合でも、充填材の充填完了時には受光強度が急低下するため、受光強度の閾値を設定することにより、明確にセメント系充填材の充填完了を認識できることが分かる。尚、距離d2を1mmとした場合には、d2が小さすぎて受光強度を正しく計測することができなかった。
【0065】
図18(c)の実験においては、図17(a)の対向型センサー部を空洞の上端付近に設置し、発泡ウレタン系充填材を空洞に充填した場合に、発泡ウレタン系充填材の充填進行に伴う受光強度の変化を表したものである。距離d1を1mm、4mm、7mmのいずれとした場合でも、充填材の充填完了時には受光強度が急低下するため、受光強度の閾値を設定することにより、明確に発泡ウレタン系充填材の充填完了を認識できることが分かる。尚、距離d1を1mmとした場合では、充填前より光強度が不規則に変化し,充填により一旦受光強度が0になった後,光強度が再上昇する傾向が見られた。これは,黒色で溶液状のウレタンが光の送受信間を充填し,光を一旦遮断したものの,その後の発泡による体積膨張に伴って密度が低下し,光が再び透過し始めたためと考えられる。
【0066】
以上の実験例によれば、空洞の状況や充填材の性状、送光用光ファイバー4の光射出端41と受光用光ファイバー5の光入射端51の配置様態により、充填進行に伴う受光強度の変化状態は異なるものの、光射出端41から射出される光が一定経路と一定距離で光入射端51に導入されるように配置しておくことにより、受光強度が一定以下となったことを確認すれば充填完了を明確に認識することができる点が明らかとなった。但し、反射型センサー部においては、図17(b)に示す反射板28との距離d2が2mm以下では受光強度の変化を検出することが難しくなってしまう為、距離d2が適正、即ち光射出端41から光入射端51までの距離が6〜16mm程度に設定されていることが望ましいことが確認された。
【0067】
〔実施形態の変形例等〕
本明細書開示の発明は、各発明、実施形態、各例の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものを含むものである。
【0068】
例えば送光用光ファイバー4の光出射端41と受光用光ファイバー5の光入射端51とを離間して対向配置する対向型の構成、或いは送光用光ファイバー4の光出射端41からの出射光を反射面を介して受光用光ファイバー5の光入射端51に導入する反射型の構成は上記例以外にも適宜であり、送光用光ファイバー4の光出射端41と受光用光ファイバー5の光入射端51とが、光出射端41からの出射光が光入射端51に一定経路と一定距離で導入されるように配置されるものであれば包含される。
【0069】
また、送光用光ファイバー4の光出射端41と受光用光ファイバー5の光入射端51の支持構造は上記例以外にも適宜である。また、送光用光ファイバー4の光出射端41から受光用光ファイバー5の光入射端51に至るまでの光路の距離は、充填材の充填完了を確認できる範囲で適宜である。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、例えば既設トンネルの覆工背面に存在する空洞、トンネル構築時に移動式型枠の背面側に設けられる覆工コンクリート打設用の空洞、地下採石場、廃坑跡、防空壕、石灰岩やシラスによる自然空洞、地盤沈下で形成された建物下の空洞等の各種地下空洞に充填材を充填する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1…空洞充填検知装置 2…光源部 3…検知部 31…制御処理部 32…記憶部 321…プログラム格納部 322…閾値格納部 323…データ格納部 33…受光部 34…表示部 35…入力部 4…送光用光ファイバー 41…光出射端 5…受光用光ファイバー 51…光入射端 6…検知装置本体 7、7a、7b、7c、7d、7e、7f、7g、7h、7i、7j、7k、7l、7m…センサー部 8、8a、8b、8c、8d…ガイド部材 81a…端面 82a…突出部 81b…固定板 81c…L字状板材 81d…C字部 11、11a、11b…支持具 12…凹部 13…挟持部 14…スリット 15…結束バンド 16…板材 17…反射板 18…取付板 19…反射体 20…反射面 21…結束具 22…取付具 25…充填材注入管 28…反射板 91…地山 92…矢板 93…覆工コンクリート 94…空洞 95…充填材 101…地山 102…覆工コンクリート 103…空洞 104…充填材 111…地山 112…空洞 113…充填材 114…注入穴 121…地山 122…吹付コンクリート 123…型枠 124…空洞 125…充填材注入管 126…吹上口 201…光源部、202…検知部、203…送光用光ファイバー、204…受光用光ファイバー、205…地山、206…トンネル空洞壁面、207…覆工コンクリート、208…充填材、209…溜水、210…空洞 d1、d2…距離
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