【課題】排ガスの急速冷却処理を装置内部で実行し得る燃焼処理装置を提供する。また、排ガスから分離された不純物をシステム内部で処理することができる燃焼処理システムを提供する。
【解決手段】燃焼処理システム1は、燃焼処理装置2と排ガス処理装置3と不純物戻し装置4とを備える。燃焼処理装置2は、処理室10と処理媒体供給装置30と制御装置とを備える。処理室10の内部空間20には、被処理物の燃焼処理が行なわれる処理ゾーン21と、燃焼処理で発生した排ガスの冷却処理が行なわれる冷却ゾーン22が形成され、制御装置は、被処理物の燃焼が処理ゾーン21を超えて拡がらないように、処理媒体供給装置30から処理ゾーン21への処理媒体供給量を制御する。排ガスから分離された不純物は、不純物戻し装置4によって燃焼処理装置2に戻され、燃焼処理装置2において再度燃焼処理される。
前記内部空間の前記処理ゾーン以外の部分に冷却ゾーンを設け、前記処理ゾーンにおける燃焼処理により発生した排ガスを冷却する冷却処理が、前記冷却ゾーンにおいて行われるようにした請求項1に記載の燃焼処理装置。
前記処理媒体供給手段は、前記処理ゾーンと前記冷却ゾーンに対して同一種類の処理媒体を供給するとともに、前記制御手段は、前記冷却ゾーンに対する単位時間当たりの処理媒体供給量が、前記処理ゾーンに対する単位時間当たりの処理媒体供給量よりも大きくなるように、前記処理媒体供給手段からの処理媒体供給量を制御する請求項3に記載の燃焼処理装置。
前記処理ゾーンは、前記被処理物が燃焼する燃焼ゾーン部分と、前記被処理物が燃焼しない非燃焼ゾーン部分とを含み、前記非燃焼ゾーン部分が、前記燃焼ゾーン部分と前記冷却ゾーンの間に配置されるようにした請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の燃焼処理装置。
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の燃焼処理装置と、前記燃焼処理装置から排出された排ガスから分離された不純物を前記燃焼処理装置に戻す不純物戻し装置とを備えた燃焼処理システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、従来の焼却装置においては、排ガス処理設備において高温の排ガスを所定温度(250℃以下)まで急速冷却処理をする必要があったので、これは、排ガス処理設備の複雑化を招いていた。また、高温の排ガスを急速冷却処理する過程で使用する水、薬品類等が必要となり、さらに、急速冷却処理に必要な水、薬品類等を供給する設備や、急速冷却処理で発生する(ダイオキシン類以外の)不純物を処理する設備も必要となっていた。
【0006】
本発明は、このような問題点に着目してなされたものであり、廃棄物等の被処理物に対して燃焼処理を行う燃焼処理装置において、高温の排ガスの急速冷却処理を装置内部で実行し得る燃焼処理装置を提供することを目的とする。
【0007】
また、本発明は、燃焼処理装置を含む燃焼処理システムにおいて、排ガス中の不純物をシステム内部で処理することができ、不純物をシステム外部に廃棄する必要がない燃焼処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、被処理物を燃焼する燃焼処理を行うための燃焼処理装置において、前記被処理物の燃焼処理が行なわれる内部空間を備えた処理室と、前記内部空間に処理媒体を供給する処理媒体供給手段と、前記処理媒体供給手段による処理媒体供給を制御する制御手段とを備え、前記処理媒体供給手段は、前記処理媒体として、前記燃焼処理に必要な反応物質を含む反応用媒体を供給可能であり、前記制御手段は、前記被処理物の燃焼処理が前記内部空間の一部分である処理ゾーン内で行われるように、前記処理媒体供給手段から前記処理ゾーンへの前記反応用媒体の供給量を制御する。
【0009】
前記内部空間の前記処理ゾーン以外の部分に冷却ゾーンを設け、前記処理ゾーンにおける燃焼処理により発生した排ガスを冷却する冷却処理が、前記冷却ゾーンにおいて行われるようにしてもよい。
【0010】
前記処理媒体供給手段は、前記冷却ゾーンに対して、前記処理媒体として、前記排ガスを冷却するための冷却用媒体を供給するようにしてもよい。
【0011】
前記処理媒体供給手段は、前記処理ゾーンと前記冷却ゾーンに対して同一種類の処理媒体を供給するとともに、前記制御手段は、前記冷却ゾーンに対する単位時間当たりの処理媒体供給量が、前記処理ゾーンに対する単位時間当たりの処理媒体供給量よりも大きくなるように、前記処理媒体供給手段からの処理媒体供給量を制御するようにしてもよい。
【0012】
前記処理ゾーンは、前記被処理物が燃焼する燃焼ゾーン部分と、前記被処理物が燃焼しない非燃焼ゾーン部分とを含み、前記非燃焼ゾーン部分が、前記燃焼ゾーン部分と前記冷却ゾーンの間に配置されるようにしてもよい。
【0013】
前記処理媒体供給手段は、前記内部空間を分割した複数の部分領域の各々に対して、部分領域毎に前記処理媒体を供給可能である一方、前記制御手段は、前記処理媒体供給手段から前記複数の部分領域の各々への処理媒体供給量を個別に制御可能であり、前記処理ゾーン及び前記冷却ゾーンの各々は、前記複数の部分領域を組み合わせた領域として形成されるようにしてもよい。
【0014】
前記内部空間の複数地点における温度を計測可能な温度計測手段を備え、前記制御装置は、前記温度計測手段による計測データに基づいて前記内部空間内において前記被処理物が燃焼している位置を特定し、この特定された位置に基づいて前記処理ゾーン及び前記冷却ゾーンが形成されるべき位置を決定するようにしてもよい。
【0015】
また、本発明の燃焼処理システムは、前記燃焼処理装置と、前記燃焼処理装置から排出された排ガスから分離された不純物を前記燃焼処理装置に戻す不純物戻し装置とを備えた。
【発明の効果】
【0016】
本発明の燃焼処理装置(例えば燃焼処理装置2、102、202)によれば、被処理物の高温の燃焼処理が、燃焼処理装置の内部空間(例えば内部空間20、120、220)の一部分である処理ゾーン(例えば処理ゾーン21)の内部で行われるように、処理ゾーンへの反応用媒体(例えば空気)の供給量が制御される。したがって、被処理物の高温の燃焼処理が処理ゾーンを超えて拡がることはないので、内部空間における処理ゾーン以外の部分に、燃焼処理によって発生した排ガスを冷却するための冷却ゾーン(例えば冷却ゾーン22)を設けることが可能となる。したがって、内部空間内において、排ガスを所望の温度まで急速に冷却することができるので、燃焼処理装置の外部には、排ガスを冷却するための特別な設備を設ける必要がなくなる。また、燃焼を処理ゾーン内に制限するために、処理媒体供給手段(例えば処理媒体供給装置30)及び制御手段(例えば制御装置40)以外に特別な構成が必要とされないので、装置の構成が複雑化してしまうことはない。
【0017】
また、処理ゾーンと冷却ゾーンに対して同一種類の処理媒体(例えば空気)が供給されるようにするとともに、冷却ゾーンに対する単位時間当たりの処理媒体供給量が、処理ゾーンに対する単位時間あたりの処理媒体供給量よりも大きくなるようにすれば、冷却ゾーンには、排ガスの冷却のために十分な量の処理媒体が供給されるようにでき、排ガスは、所望の温度まで適切に急速冷却される。また、処理媒体供給量を制御するだけで、内部空間内に処理ゾーン及び冷却ゾーンを形成することができるので、処理ゾーン及び冷却ゾーンの形成のために処理媒体供給手段及び制御手段以外に特別な構成は必要とされない。
【0018】
また、処理ゾーンにおいて被処理物の燃焼が行なわれない非燃焼ゾーン部分(非燃焼ゾーン部分24)が、被処理物の燃焼が行なわれる燃焼ゾーン部分(例えば燃焼ゾーン部分23)と冷却ゾーンの間に設けられるようにすれば、冷却ゾーンに供給された処理媒体が燃焼ゾーン部分にまで達してしまう結果、燃焼ゾーン部分に過剰な処理媒体が供給されてしまい、燃焼ゾーン部分の範囲が拡がってしまうことを適切に防止できる。
【0019】
また、処理媒体供給手段を、内部空間を分割した複数の部分領域の各々に対して、部分領域毎に前記処理媒体を供給可能とする一方、制御手段を、処理媒体供給手段から複数の部分領域の各々への処理媒体供給量を個別に制御可能とし、処理ゾーン及び冷却ゾーンの各々が、複数の部分領域を組み合わせた領域として形成されるようにすれば、制御手段は、所望の位置に所望の大きさの処理ゾーン及び冷却ゾーンを形成することができる。よって、様々な条件に応じて内部空間内の適切な位置に適切な大きさの処理ゾーン及び冷却ゾーンを形成することができるので、燃焼処理及び冷却処理を効果的に実行することが可能となる。例えば、燃焼処理によって生じた残渣物(例えば残渣物層72、73)の存在によって、燃焼ゾーン部分の位置が変わった場合でも、処理ゾーン及び冷却ゾーンを燃焼ゾーン部分に対して適切な位置に形成することができる。したがって、残渣物の排出を燃焼処理毎に行う必要がなくなり、残渣物の排出の回数を減らすことができるので、複数回の燃焼処理を効率的に行うことが可能となる。
【0020】
また、内部空間の複数地点における温度を計測可能な温度計測手段(例えば温度計42)を備え、温度計測手段による計測データに基づいて、被処理物が燃焼している位置を特定できるようにすれば、被処理物が燃焼している位置が変わった場合でも、処理ゾーン及び冷却ゾーンが形成されるべき位置を的確に決定できる。
【0021】
また、本発明の燃焼処理システム(例えば燃焼処理システム1)によれば、不純物戻し装置(例えば不純物戻し装置4)によって、燃焼処理装置から排出された急冷後の排ガス中の不純物が燃焼処理装置内に戻されるので、戻された不純物を燃焼処理装置において再び燃焼処理することができる。したがって、燃焼処理システムは、不純物をシステム外部に排出する必要のない循環型システムとして構成され、排ガスから分離された不純物を処理するための設備が必要なくなる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面に基づいて本発明の実施形態について説明する。
図1から
図5には、本発明の第1実施形態における燃焼処理システム1の全体構成を示す。図示されるように、燃焼処理システム1は、燃焼処理装置2と、排ガス処理装置3と、不純物戻し装置4とを備えている。
【0024】
燃焼処理装置2は、廃棄物等の被処理物を燃焼させる処理(燃焼処理)を行うための装置であり、処理室10と、処理媒体供給装置30と、制御装置40とを備えている。なお、本発明における燃焼という用語は、発熱又は吸熱を伴う反応物質(例えば酸素)との化学反応全般を意味するものであり、有炎燃焼(例えば焼却)と無炎燃焼(例えば燻焼)のいずれをも含むものである。
【0025】
処理室10は、処理室本体11と、処理室本体11の上部に配置された投入部12と、処理室本体11の下部に配置された排出部13とを備えている。また、処理室本体11の上部には、排気ダクト14が設けられている。
【0026】
処理室本体11は、単一の内部空間20を備えている。詳しくは後述するように、内部空間20には、被処理物の燃焼処理が実行される領域である処理ゾーン21と、燃焼処理で発生した排ガスを冷却する領域である冷却ゾーン22とが形成されるようになっている。
【0027】
投入部12は、被処理物を内部空間20内に投入するための投入口12aを有しており、投入口12aは、開閉可能な蓋12bによって閉止可能となっている。また、排出部13は、残渣物(燃焼によって生じた灰)を内部空間20から排出するための排出口と、この排出口を閉止するための開閉可能な蓋とを備えている。
【0028】
図6に示すように、処理室本体11の内部空間20の底部には、保護材15が配置されている。保護材15は、被処理物の燃焼処理によって処理室本体11の底部付近が高温となった場合に、処理室本体11の底部壁面を保護する断熱材として作用するものである。
【0029】
図6及び
図7に示すように、処理媒体供給装置30は、処理室10内で実行される各種の処理に必要となる処理媒体を、処理室本体11の内部空間20に供給する装置である。具体的には、内部空間20内の処理ゾーン21に対しては、処理媒体として、被処理物の燃焼処理に必要となる反応物質(例えば酸素)を含む反応用媒体が供給される。また、冷却ゾーン22に対しては、処理媒体として、排ガスを冷却するための冷却用媒体が供給される。本実施形態においては、処理ゾーン21と冷却ゾーン22には、同一種類の処理媒体(例えば空気)が供給されるようになっている。
【0030】
処理媒体供給装置30は、複数(本実施形態では3系統)の処理媒体供給機器31(例えばブロワ)と、処理媒体供給管32と、供給量計測器41(例えば流量計)とを備えている。処理媒体供給機器31の各々は、対応する処理媒体供給管32の基端側管路33に接続されており、取り込んだ外気(空気)を処理媒体供給管32内に送り込むようになっている。
【0031】
処理媒体供給管32の先端側は、複数の分岐供給管34に分岐している。複数の分岐供給管34は、処理室10の側部において、互いに高さ方向に所定の間隔をもって配列されている。各分岐供給管34の先端側は、各々の高さ位置において処理室10の側面を貫通しており、処理室本体11の内部空間20内へと延在している。
【0032】
処理媒体供給管32の基端側管路33及び分岐供給管34の所定箇所には、処理媒体の供給量を調整するための複数の調整弁39が備えられている。これにより、各分岐供給管34内を流れる処理媒体(空気)の供給量が、調整弁39によって個別に調整できるようになっている。また、処理媒体供給管32の基端側管路33上には、供給量計測器41が備えられており、基端側管路33内を流れる処理媒体の実際の流量が計測可能となっている。
【0033】
図6及び
図7に示すように、内部空間20内に配置された各分岐供給管34の先端部分は、環状供給部35となっている。各環状供給部35は、矩形環形状を有する閉じた管路であり、処理室本体11の内部空間20内に略水平に配置され、処理室本体11の内周面に沿って、内部空間20を取り囲むようになっている。また、各環状供給部35には、処理室本体11の中心方向且つ略水平方向を向いて開口した複数の供給孔36が形成されている。各環状供給部35における複数の供給孔36は、互いに所定の間隔をもって、環状供給部35の略全周にわたって設けられている。処理媒体は、これらの供給孔36から、内部空間20に向けて放出されるようになっている。
【0034】
このように、処理媒体供給管32の各分岐供給管34の環状供給部35(供給孔36)を、処理室10の内部空間20内に配置することにより、処理媒体を内部空間20の中心部分にまで適切に到達させることができ、結果として、処理媒体を内部空間20全体に対して万遍なく供給することができる。
【0035】
また、複数の環状供給部35は、互いに高さ方向に所定の間隔をもって配置されているので、複数の環状供給部35の各々は、内部空間20を高さ方向に分割した複数の部分領域の一つを取り囲んでいる。この結果、これら複数の部分領域の各々には、対応する環状供給部35(分岐供給管34)から処理媒体が供給されるようになっている。
【0036】
処理室本体11の側面には、複数の温度計42が、高さ方向に互いに所定の間隔をもって配列され、内部空間20に向けて延び出している。これにより、各温度計42は、内部空間20の異なる高さ位置における温度を測定可能となっている。
【0037】
制御装置40は、処理媒体供給装置30の動作を制御する装置であり、本実施形態では、制御盤として構成されている。
図1に破線で示すように、制御装置40は、複数の調整弁39の各々に対して電気的に接続され、調整弁39の各々の動作を個別に制御可能となっている。これにより、制御装置40は、処理媒体供給装置30の各分岐供給管34を通しての処理媒体の供給量を、分岐供給管34毎に個別に制御することができる。したがって、処理室本体11の内部空間20を高さ方向に分割した各部分領域への単位時間当たりの処理媒体供給量は、対応する分岐供給管34を通じての処理媒体供給量を制御することにより、部分領域毎に個別に制御されることになる。
【0038】
また、制御装置40は、複数の供給量計測器41及び温度計42の各々に対しても電気的に接続されている。これにより、制御装置40は、供給量計測器41からの処理媒体の流量データ及び温度計42からの内部空間20の所定の各所における温度データを取得することにより、これらのデータを制御に利用できるようになっている。
【0039】
このような構成により、制御装置40は、内部空間20内に処理ゾーン21及び冷却ゾーン22が適切に形成され、各ゾーンにおける処理が適切になされるように、処理ゾーン21及び冷却ゾーン22への処理媒体供給量を適切に制御する。具体的に、制御装置40は、内部空間20内における被処理物の配置状況等に基づいて、内部空間20において処理ゾーン21となるべき部分を決定するとともに、この処理ゾーン21を構成すべき部分領域に対応する分岐供給管34を通じて、処理ゾーン21への処理媒体供給を行う。この場合、処理ゾーン21に対する処理媒体供給量は、被処理物が燃焼している領域(燃焼ゾーン部分23)が処理ゾーン21の外側に拡がって行かないような供給量に制限される。
【0040】
一方、制御装置40は、内部空間20において冷却ゾーン22となるべき部分を決定するとともに、冷却ゾーン22を構成すべき部分領域に対応する分岐供給管34を通して、冷却ゾーン21への処理媒体供給を行う。この冷却ゾーン22に対する処理媒体供給量は、処理ゾーン21における燃焼処理によって生じた排ガスが適切に急速冷却されるために十分な供給量となるように制御される。具体的には、冷却ゾーン22に対する単位時間当たりの処理媒体供給量は、処理ゾーン21に対する処理媒体の単位時間当たりの供給量よりも大きくなるように制御される。
【0041】
このように、冷却ゾーン22に対する処理媒体供給量を十分に大きくすることにより、被処理物の反応処理によって生じた排ガスは、冷却ゾーン22において急速に冷却される。例えば、燃焼ゾーン部分23における温度が1000℃程度に達するのに対して、排ガスは、冷却ゾーン22において、80℃〜100℃程度の温度まで急速に冷却される。したがって、排ガスは処理室10から排出される段階で十分に低温となっているので、処理室10の外部に、排ガスを冷却するための設備を設ける必要がなくなる。
【0042】
処理ゾーン21には、被処理物の燃焼が生じている燃焼ゾーン部分23と、燃焼が生じていない非燃焼ゾーン部分24とが含まれ得る(
図9〜
図11参照)。本実施形態においては、燃焼ゾーン部分23は、保護材15の上の極狭い範囲に限定された領域である一方で、処理ゾーン21における燃焼ゾーン部分23よりも上側の領域全体は、非燃焼ゾーン部分24となる。
【0043】
燃焼ゾーン部分23に対しては、被処理物の適切な燃焼反応が継続するための処理媒体が供給される必要があるが、非燃焼ゾーン部分24に対しては、必ずしも処理媒体が供給される必要はない。したがって、非燃焼ゾーン部分24に対しては、処理媒体の供給が行われなくてもよいし、非燃焼ゾーン部分24に配置された燃焼前の被処理物の乾燥が促進される程度の少量の処理媒体が供給されるようにしてもよい。この場合、燃焼ゾーン部分23と非燃焼ゾーン部分24に対する処理媒体供給量は、全体として、被処理物の燃焼反応が処理ゾーン21を超えて拡がらない程度の量に制御されることになる。
【0044】
非燃焼ゾーン部分24は、燃焼ゾーン部分23と冷却ゾーン22の間に形成されているので、燃焼ゾーン部分23と冷却ゾーン22は、非燃焼ゾーン部分24によって適切に隔てられた状態となっている。これにより、冷却ゾーン22に対して多量の処理媒体が供給された場合でも、冷却ゾーン22に供給された処理媒体は、非燃焼ゾーン部分24を超えて燃焼ゾーン部分23にまで達してしまうことはない。したがって、冷却ゾーン22からの処理媒体が燃焼ゾーン部分23に達してしまうことにより燃焼ゾーン部分23における被処理物の燃焼反応が必要以上に促進されてしまうことが、適切に防止されるようになっている。また、冷却ゾーン22に供給された処理媒体(冷却用媒体)により、燃焼ゾーン部分23における燃焼温度が低下させられてしまうこともない。
【0045】
なお、燃焼処理開始当初に非燃焼ゾーン部分24に配置されていた被処理物は、燃焼ゾーン部分23での燃焼反応が進行するにしたがって、燃焼ゾーン部分23側に下降していく。これにより、被処理物は、燃焼ゾーン部分23側に配置された部分から、順次、燃焼されていくようになっている。
【0046】
排ガス処理装置3は、排ガス槽51と排気部52(例えば煙突)とを備えている。排ガス槽51は、燃焼処理装置2の処理室10と排気ダクト14により接続されており、処理室10からの排ガスが、排気ダクト14を通って、排ガス槽51内に導入されるようになっている。排ガス槽51においては、排ガス中の不純物を含む水分が凝結して廃液となり、排ガスから分離される。不純物が分離された排ガスは、排気部52から、燃焼処理システム1の外部に排気される。
【0047】
この場合、燃焼処理装置2から排ガス槽51に排出される排ガスは、処理室10の冷却ゾーン22において十分に冷却処理されているので、排ガス槽51内に導入された時点で、十分な低温となっている。したがって、排ガス処理装置3には、排ガスに対して急速冷却処理を施すための特別な設備を設ける必要はない。
【0048】
不純物戻し装置4は、排ガス処理装置3において排ガスから分離された不純物を燃焼処理装置2内に戻すための装置であり、廃液貯留槽61と、不純物移送機器62(例えばポンプ)とを備えている。廃液貯留槽61は、廃液移送管63を介して排ガス槽51と接続されている一方で、不純物移送管64を介して燃焼処理装置2の処理室本体11と接続されている。不純物移送機器62は、不純物移送管64に対して設けられている。
【0049】
図6及び
図8に示されるように、不純物移送管64の先端部分は、環状戻し部65となっており、処理室本体11の内周面に沿って配置されて、処理室本体11の内部空間20を取り囲むようになっている。環状戻し部65には、複数の戻し孔66が互いに所定の間隔をもって形成されており、不純物戻し装置4から燃焼処理装置2に戻される不純物は、これらの戻し孔66から内部空間20内に放出されるようになっている。
【0050】
排ガス槽51において排ガスから分離された廃液は、廃液移送管63を通って廃液貯留槽61に移送され、貯留される。廃液貯留槽61に貯留された廃液において、廃液に含まれる不純物(例えばスラッジ)は、廃液貯留槽61の底に沈殿した状態となる。この不純物は、不純物移送機器62により汲み出され、不純物移送管64を通して燃焼処理装置2へと移送される。燃焼処理装置2へと移送された不純物は、不純物移送管64の環状戻し部65の戻し孔66から、内部空間20内に配置された被処理物の上に放出される。これにより、廃液中の不純物は、燃焼処理装置2において、被処理物とともに燃焼処理されることになる。また、不純物が取り除かれた廃液は、そのまま下水に放出することができる。
【0051】
なお、上述したように、排ガスは、燃焼処理装置2において所定温度まで冷却されるので、排ガス槽51に導入された時点で十分に低温となっている。したがって、排ガス槽51において、凝結によって発生する廃液は比較的少量であり、燃焼処理装置2に戻すべき不純物の量も多くなり過ぎることはない。したがって、廃液から取り出された不純物は、全てを燃焼処理装置2に戻すことができる。
【0052】
このように、本実施形態の燃焼処理システム1は、燃焼処理装置2から排気された排ガス中の不純物が、再び燃焼処理装置2内に戻されて、再び燃焼処理される循環型システムとして構成される。すなわち、燃焼処理システム1は、システムにおいて発生した不純物をシステム内で処分することができ、システム外部に放出することはない。したがって、排ガスから分離された不純物を処理するための特別な設備が必要なくなる。
【0053】
次に、
図9から
図11を参照して、本実施形態の燃焼処理システム1における被処理物の処理手順について説明する。
図9には、初期状態(処理室10の内部空間20が空の状態)の燃焼処理装置2に対して、第1回目の燃焼処理を行うために、被処理物71が投入された直後の様子を示す。
【0054】
第1回目の燃焼処理の開始にあたっては、まず、火種となる起動材料(図示せず)を、処理室本体11の内部空間20内に投入して、保護材15上に配置する。その後、起動材料の上に、被処理物71を投入する。この場合、被処理物71の投入量は、内部空間20の全体を充填してしまわず、被処理物71の上方に被処理物71が存在していない領域が形成されるような量とされる。また、不純物戻し装置4から移送されてきた不純物は、環状戻し部65の戻し孔66から、被処理物71の上に放出される。
【0055】
内部空間20内に投入された被処理物71は、保護材15上の起動材料に隣接した部分(最下端部分)のみ、燃焼を始める。これにより、保護材15の直ぐ上方に、被処理物71の燃焼が生じている燃焼ゾーン部分23が形成される。
図9において、燃焼ゾーン部分23は、保護材15の上面15aと境界25との間の領域である。燃焼ゾーン部分23には、燃焼ゾーン部分23の最も近傍に配置された最下段の分岐供給管34Aから、燃焼反応に必要とされる処理媒体(空気)が供給される。
【0056】
燃焼ゾーン部分23の上方には、非燃焼ゾーン部分24が形成される。非燃焼ゾーン部分24に対しては、必要に応じて、下から第2〜5段目の分岐供給管34B〜34Eから処理媒体の供給がなされる。
図9において、非燃焼ゾーン部分24は、内部空間20における境界25と境界26との間の領域である。
【0057】
燃焼ゾーン部分23と非燃焼ゾーン部分24を組み合わせた領域(保護材15の上面15aと境界26の間の領域)は、第1回目の燃焼処理における処理ゾーン21となる。すなわち、処理ゾーン21は、下から第1〜5段目の分岐供給管34A〜34Eによって処理媒体が供給される部分領域を組み合わせて形成される領域である。処理ゾーン21への処理媒体の供給量は、被処理物71の燃焼範囲(つまり燃焼ゾーン部分23)が処理ゾーン21を超えて拡がって行かない量に制限される。
【0058】
燃焼ゾーン部分23において被処理物71の燃焼が進行すると、燃焼した被処理物は残渣物(灰)となり、体積が著しく縮小する。この結果、上方の非燃焼ゾーン部分24に配置されていた被処理物71は、燃焼ゾーン部分23に向けて下降していき、順次、燃焼ゾーン部分23において燃焼処理がなされていくようになっている。
【0059】
非燃焼ゾーン部分24の上方には、冷却ゾーン22が形成される。第1回目の燃焼処理において、冷却ゾーン22には、下から第6〜8段目の分岐供給管34F〜34Hから処理媒体の供給がなされる。すなわち、冷却ゾーンは、分岐供給管34F〜34Hによって処理媒体が供給される部分領域を組み合わせて形成される領域である。
図9において、冷却ゾーン22は、内部空間20における境界26よりも上側の領域となる。
【0060】
被処理物71の燃焼によって発生した高温の排ガスは、冷却ゾーン22内を上昇していき、冷却ゾーン22において、分岐供給管34F〜34Hを通して供給される処理媒体によって、冷却処理される。この場合、単位時間あたりに冷却ゾーン22に供給される処理媒体量は、単位時間あたりに処理ゾーン21(燃焼ゾーン部分23及び非燃焼ゾーン部分24)に供給される処理媒体量よりも多くなるように制御されるので、排ガスは、冷却ゾーン22において、所定温度以下まで急速に冷却される。冷却ゾーン22において所定温度以下に冷却された排ガスは、排気ダクト14を通って燃焼処理装置2から排出される。
【0061】
以上のような工程により、被処理物71が全て燃焼処理され、第1回目の燃焼処理が終了すると、保護材15の上には、被処理物71の燃焼処理によって生じた残渣物の層が残ることになる。本実施形態の燃焼処理装置2によれば、このような残渣物を燃焼処理毎に処理室10の外部に排出しなくても、第2回目以降の燃焼処理を行うことができる。すなわち、第2回目の燃焼処理は、この残渣物層(
図9には図示せず)の上に、第2回目の処理分の被処理物を投入することによって、第1回目の処理と同様の手順で実行される。同様に、第3回目以降の処理は、前回以前の処理で生じた残渣物の層の上で順次実行されていくことになる。なお、第2回目以降の燃焼処理においては、前回の処理において投入された被処理物の燃焼物が火種として機能し続けるので、各燃焼処理毎に起動材料の投入を行う必要はない。
【0062】
このように、残渣物の排出を行わずに複数回の燃焼処理を行う場合、燃焼ゾーン部分23の位置は、それ以前の燃焼処理によって発生した残渣物の層の厚みによって変わってくる。このため、燃焼ゾーン部分23に処理媒体を供給する分岐供給管34は、燃焼ゾーン部分23の位置の変化に対応して変更する必要がある。この場合、制御装置40は、内部空間20の異なる高さに配置された複数の温度計42A〜42Eからの計測データに基づいて、燃焼ゾーン部分23の位置を推定し、これにより、燃焼ゾーン部分23に処理媒体を供給する分岐供給管34を決定する。
【0063】
詳しく説明すると、燃焼ゾーン部分23においては被処理物の燃焼が生じるため、燃焼ゾーン部分23の温度は処理室本体11の内部空間20で最も高温となる。制御装置40は、温度計42A〜42Eの計測データに基づいて、内部空間20内で最も高温となっている高さ位置を算出し、この位置を燃焼ゾーン部分23の位置と特定し、この燃焼ゾーン部分23を含むように処理ゾーン21の位置を決定するとともに、燃焼ゾーン部分23と特定された位置をカバーする分岐供給管34を通じて、燃焼ゾーン部分23への処理媒体の供給を行うことになる。
【0064】
図10には、第11回目の燃焼処理のための被処理物71の投入直後の様子を示す。図示されるように、第11回目の燃焼処理においては、これに先立つ10回分の燃焼処理の残渣物からなる残渣物層72が、保護材15の上に形成されている。この残渣物層72の上に、被処理物71が投入されることにより、第11回目の燃焼処理が開始される。
【0065】
したがって、この第11回目の処理において、燃焼ゾーン部分23は、残渣物層72の直ぐ上の領域に形成される。処理ゾーン21は、この燃焼ゾーン部分23を適切に含むように、下方から第2〜第6段目の分岐供給管34B〜34Fから処理媒体供給がなされる部分領域を組み合わせた領域となる。ここで、燃焼ゾーン部分23への処理媒体の供給は、燃焼ゾーン部分23の最も近くに配置された分岐供給管34Bからなされることになる。一方、非燃焼ゾーン部分24には、必要に応じて、第3〜第6段目の分岐供給管34C〜34Fを通じて処理媒体供給がなされる。
【0066】
また、冷却ゾーン22は、第7及び第8段目の2本の分岐供給管34G及び34Hから処理媒体供給がなされる部分領域を組み合わせた領域となり、分岐供給管34G及び34Hを通じて、処理ゾーン21よりも大きな供給量の処理媒体供給がなされることになる。
【0067】
なお、最下段の分岐供給管34Aは、燃焼ゾーン部分23の下方に配置されるため、処理媒体供給を停止してもよいが、必要に応じて、分岐供給管34Aからも処理媒体を供給して、燃焼ゾーン部分23に対する処理媒体の供給が、分岐供給管34A及び34Bからなされるような制御を行ってもよい。
【0068】
このように、残渣物層72の形成によって内部空間20における燃焼ゾーン部分23の位置が上昇すると、この上昇分だけ非燃焼ゾーン部分24及び冷却ゾーン22の位置も上昇し、また冷却ゾーン22の大きさは小さくなる。制御装置40は、このような燃焼ゾーン部分23の位置の変更に対応して、適切な場所に適切な大きさの非燃焼ゾーン部分24及び冷却ゾーン22が形成されるように、処理媒体供給装置30の各分岐供給管34A〜34Gからの処理媒体供給を制御することになる。
【0069】
図11には、第21回目の燃焼処理のための被処理物71が投入された直後の様子を示す。図示されるように、第21回目の処理においては、第1回目から第10回目の処理に伴う残渣物からなる残渣物層72の上に、第11回目から第20回目の処理に伴う残渣物からなる残渣物層73が形成されている。
【0070】
したがって、第21回目の燃焼処理における燃焼ゾーン部分23は、残渣物層73の直ぐ上の領域に形成される。処理ゾーン21は、この燃焼ゾーン23を適切に含むように、分岐供給管34C〜34Gから処理媒体供給がなされる部分領域を組み合わせた領域となる。また、燃焼ゾーン部分23への処理媒体供給は、燃焼ゾーン部分23の下側に隣接する分岐供給管34Cからなされ、非燃焼ゾーン部分24への処理媒体供給は、分岐供給管34D〜34Gからなされることになる。一方、冷却ゾーン22は、最上段の分岐供給管34Hから処理媒体供給がなされる部分領域のみから形成されることになり、分岐供給管34Hのみから処理媒体供給がなされることになる。
【0071】
このような燃焼処理を、残渣物の排出を行わずに複数回数にわたって実行した結果、残渣物層72、73の厚みが増大してきて、処理室本体11の内部空間20に燃焼処理及び冷却処理のための十分なスペースを確保できなくなったならば、内部空間20内に堆積した残渣物を、排出部13から排出する。これにより、処理室10が初期状態(空の状態)となったら、再び第1回目の燃焼処理から始まる処理サイクルが繰り返されることになる。
【0072】
以上のように、本実施形態の燃焼処理装置2によれば、処理室10の内部空間20における被処理物71の燃焼処理が、内部空間20の一部分である処理ゾーン21の内部で行われるように、処理ゾーン21への処理媒体(例えば空気)の供給量が制御される。したがって、被処理物71の燃焼処理が処理ゾーン21を超えて拡がることはないので、内部空間20における処理ゾーン21以外の領域に、被処理物71の燃焼処理によって発生した排ガスを冷却するための冷却ゾーン22を設けることができ、処理室10の内部空間20において、排ガスを所望の温度まで急速に冷却することができる。よって、燃焼処理装置2の外部には、排ガスを急速に冷却するための特別な設備を設ける必要がなくなる。また、被処理物71の燃焼を処理ゾーン21内に制限する制御は、処理ゾーン21への処理媒体供給量を制限するだけで達成されるので、処理媒体供給装置30及び制御装置40以外に特別な構成が必要とされず、装置の構成が複雑化してしまうことはない。
【0073】
また、燃焼処理装置2によれば、冷却ゾーン22に対して単位時間当たりに供給される処理媒体の供給量は、処理ゾーン21に対して単位時間あたりに供給される処理媒体の供給量よりも大きくなるように制御されるので、冷却ゾーン22には、排ガスの冷却のために十分な量の処理媒体が供給される。したがって、冷却ゾーン22において、排ガスは、所望の温度まで適切に急速冷却される。また、内部空間20における処理ゾーン21及び冷却ゾーン22の形成は、処理ゾーン21及び冷却ゾーン22の各々への処理媒体供給量を制御するだけで達成されるので、処理媒体供給装置30及び制御装置40以外に特別な構成は必要とされない。
【0074】
また、処理ゾーン21には、被処理物71の燃焼が行なわれる燃焼ゾーン部分23と被処理物71の燃焼が行なわれない非燃焼ゾーン部分24が設けられ、非燃焼ゾーン部分24が、燃焼ゾーン部分23と冷却ゾーン22の間に配置されるようになっているので、燃焼ゾーン部分23と冷却ゾーン22は、非燃焼ゾーン部分24によって適切に隔てられる。したがって、冷却ゾーン22に供給された処理媒体が燃焼ゾーン部分23にまで達してしまう結果、燃焼ゾーン部分23に過剰な処理媒体が供給されてしまい、燃焼ゾーン部分23の範囲が拡がってしまうことが適切に防止される。また、冷却ゾーン22に供給された処理媒体(冷却用媒体)によって、燃焼ゾーン部分23における燃焼温度が低下させられてしまうこともない。
【0075】
また、燃焼処理装置2によれば、内部空間20を分割した各部分領域に対する処理媒体供給量を、部分領域毎に個別に制御することができる。具体的には、処理媒体供給装置30の複数の分岐供給管34A〜34Hが、燃焼処理装置2の内部空間20を高さ方向に分割した複数の部分領域に対して1対1で対応するようになっている一方で、分岐供給管34A〜34Hの各々からの処理媒体供給量は、制御装置40によって個別に制御可能となっている。
【0076】
したがって、制御装置40は、各部分領域に対する処理媒体供給量を制御することにより、部分領域を組み合わせて形成される領域として、所望の位置に所望の大きさの処理ゾーン21及び冷却ゾーン22を形成することができる。よって、例えば被処理物71の量や性質等の各種条件に応じて、内部空間20の適切な位置に適切な大きさの処理ゾーン21及び冷却ゾーン22を形成することにより、燃焼処理装置2における燃焼処理及び冷却処理を、効果的に実行することができる。
【0077】
また、燃焼ゾーン部分23の位置(被処理物71の燃焼が行なわれる位置)が変更になった場合にも、この位置の変化に応じて、内部空間20における処理ゾーン21及び冷却ゾーン22の位置及び大きさを適切に変更することができる。したがって、被処理物71の燃焼処理によって生じた残渣物の排出を行わずに燃焼処理を連続して行って残渣物層72、73が形成された結果、燃焼ゾーン部分23の位置が変わったとしても、この燃焼ゾーン部分23の位置の変化に適切に対応することができる。よって、残渣物の排出を燃焼処理毎に行う必要がなくなり、残渣物の排出の回数を減らすことができるので、複数回の燃焼処理を効率的に行うことが可能となる。
【0078】
また、燃焼処理装置2には、温度計測手段として、高さ方向に所定の間隔をもって配置された複数の温度計42A〜42Eが備えられているので、燃焼ゾーン部分23の位置が変わった場合、制御装置40は、温度計42A〜42Eからの計測データに基づいて、燃焼ゾーン部分23の位置を、内部空間20内で最も高温となっている領域として的確に特定することができる。よって、制御装置40は、この燃焼ゾーン部分23の位置の特定に基づいて、適切な位置に処理ゾーン21及び冷却ゾーン22が形成されるように、各部分領域への処理媒体供給量を制御することができる。
【0079】
また、処理媒体供給装置30の各分岐供給管34A〜34Hの先端部分である環状供給部35は、内部空間20内に配置されており、処理室本体11の内周面に沿って内部空間20を取り囲むようになっている。よって、環状供給部35の複数の供給孔36と内部空間20の中心部との距離を短くできるので、供給孔36から供給される処理媒体は内部空間20の中心部まで適切に到達し、内部空間20の全領域に対して均一な処理媒体供給を行うことができる。
【0080】
また、本実施形態の燃焼処理システム1によれば、燃焼処理装置2から排出された排ガス中の不純物は、不純物戻し装置4により燃焼処理装置2に戻されて、再度、燃焼処理される。したがって、燃焼処理システム1は、不純物をシステム外部に排出する必要のない循環型システムとして構成されるので、排ガス中の不純物を処理するための設備が必要なくなる。
【0081】
なお、上記実施形態においては、燃焼処理装置2の処理ゾーン21と冷却ゾーン22に対して、同一種類の処理媒体(例えば空気)が供給されるようになっていたが、本発明はこのような形態に限定されるものではなく、処理ゾーン21と冷却ゾーン22の各々に供給される処理媒体は、異なる種類の処理媒体であっても構わない。例えば、処理ゾーン21に供給される処理媒体(反応用媒体)は、燃焼反応に必要とされる酸素を含む気体である一方、冷却ゾーンに供給される処理媒体(冷却用媒体)は、酸素を含まない気体としてもよい。
【0082】
図12及び
図13には、本発明の第2実施形態における燃焼処理装置102を示す。本実施形態の燃焼処理装置102は、上記第1実施形態における燃焼処理装置2と比較して、処理室110と処理媒体供給装置130と不純物戻し装置の構成の一部が異なるもので、他の構成については、上記第1実施形態の燃焼処理装置2と共通している。したがって、以下の説明では、主として、この相違点について説明する。
【0083】
燃焼処理装置102において、処理室110の処理室本体111は、上記第1実施形態の処理室本体11と比較して、左右方向に2倍の幅を有している。これに対して、処理媒体供給装置130は、処理室本体111の左右両側の側面に対して設けられている。具体的には、処理室本体111の右側の側面には、処理媒体供給機器131A〜131C及び処理媒体供給管132A〜132Cが、また、処理室本体111の左側の側面には、処理媒体供給機器131D〜131F及び処理媒体供給管132D〜132Fが、それぞれ配置さている。処理媒体供給管132A〜132Fの各々は、2本又は3本の分岐供給管134へと分岐しており、合計16本の分岐供給管134が、処理室本体111の左右両側の側面から8本ずつ、処理室本体111の内部空間120へと延在している。なお、温度計142は、処理室本体111の背面側に設けられている。
【0084】
各分岐供給管134の先端部分は、略正方形の環状供給部135となっている。ここで、左右両側から同一高さに配置された環状供給部135の対は、対向した辺が接触した状態となっており、全体として長方形形状を構成するように配置されている。これにより、左右一対の環状供給部135の各々は、内部空間120の左右に分割した半部を、それぞれ取り囲むようになっている。各環状供給部135には、環状供給部135により取り囲まれた領域に向けて開口した複数の供給孔136が形成されており、これらの供給孔136から、処理媒体の供給がなされるようになっている。
【0085】
また、内部空間120の幅が左右に拡がったのに対応して、不純物戻し装置においても、左右一対の略正方形の環状戻し部165が、内部空間120を左右に分割した半部をそれぞれ取り囲むようになっている。なお、環状戻し部165は、それぞれが廃液貯留槽(図示せず)に接続されている。
【0086】
このように、本実施形態の燃焼処理装置102では、処理室本体111の内部空間120の横断面は左右方向に幅が広くなっているが、この広くなった横断面は、2つの環状供給部135によって全体がカバーされるようになっている。したがって、内部空間20が広くなったとしても、1つの環状供給部135によって処理媒体の供給がなされるべき部分領域は、適切な大きさとなっている。よって、内部空間120の各部分領域の全域に対して、万遍なく処理媒体を行き渡らせることができ、結果として、内部空間120の全域に対して均一な処理媒体供給を行うことができる。
【0087】
図14には、本発明の第3実施形態における燃焼処理装置202を示す。図示されるように、本実施形態の燃焼処理装置202においては、処理室210における処理室本体211の内部空間220の横断面は、上記第1実施形態における内部空間20の横断面と比較して、前後方向及び左右方向に2倍の幅を有しているが、この内部空間220の横断面に対しては、処理媒体供給装置230の4個の環状供給部235が、前後及び左右に互いに隣接した状態で配置されている。各環状供給部235には、環状供給部235により取り囲まれた領域に向けて開口した複数の供給孔236が形成されており、これらの供給孔236から処理媒体の供給がなされるようになっている。なお、温度計242は、処理室本体211の前面側及び背面側に設けられている。
【0088】
このような構成により、内部空間220の横断面を4分割した各領域は、対応する環状供給部235によって取り囲まれ、処理媒体の供給がなされる。したがって、各環状供給部235によって処理媒体供給がなされる部分領域は、適切な大きさのものとなるので、結果として、内部空間220の全域に対して、万遍なく処理媒体供給を行うことができる。このように、処理室本体211の内部空間220の横断面が広くなったとしても、同一高さに配置された複数の環状供給部235を適切に組み合わせて、横断面全体をカバーするようにすれば、各環状供給部235が処理媒体供給を行うべき部分領域が大きくなり過ぎないようにでき、内部空間220の全域に対して適切な処理媒体供給を行うことができる。
前記内部空間の前記処理ゾーン以外の部分に冷却ゾーンを設け、前記処理ゾーンにおける燃焼処理により発生した排ガスを冷却する冷却処理が、前記冷却ゾーンにおいて行われるようにした請求項1に記載の燃焼処理装置。
前記処理媒体供給手段は、前記処理ゾーンと前記冷却ゾーンに対して同一種類の処理媒体を供給するとともに、前記制御手段は、前記冷却ゾーンに対する単位時間当たりの処理媒体供給量が、前記処理ゾーンに対する単位時間当たりの処理媒体供給量よりも大きくなるように、前記処理媒体供給手段からの処理媒体供給量を制御する請求項3に記載の燃焼処理装置。
前記処理ゾーンは、前記被処理物が燃焼する燃焼ゾーン部分と、前記被処理物が燃焼しない非燃焼ゾーン部分とを含み、前記非燃焼ゾーン部分が、前記燃焼ゾーン部分と前記冷却ゾーンの間に配置されるようにした請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の燃焼処理装置。