(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-76489(P2017-76489A)
(43)【公開日】2017年4月20日
(54)【発明の名称】積層型電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20170331BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20170331BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20170331BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20170331BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/0585
H01M10/0562
H01M10/0565
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-202649(P2015-202649)
(22)【出願日】2015年10月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000152675
【氏名又は名称】コマツNTC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160543
【弁理士】
【氏名又は名称】河野上 正晴
(72)【発明者】
【氏名】三宅 秀明
(72)【発明者】
【氏名】村岡 進
【テーマコード(参考)】
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5H028BB19
5H028CC01
5H029AJ14
5H029AM07
5H029AM16
5H029BJ12
5H029CJ30
(57)【要約】
【課題】正極及び/又は負極積層体を複数枚まとめて積層させ、かつ複数の正極及び/又は負極積層体間に生じる摩擦力を低減させ又はなくして、同時に位置決めをすることができる、積層型電池の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくとも、第1の活物質層及び第1の集電体を有する複数の第1の電極積層体2、第2の活物質層及び第2の集電体層を有する複数の第2の電極積層体4、及び第1の電極積層体と第2の電極積層体との間の又は第1及び/若しくは第2の電極積層体に積層されている固体電解質又はセパレータ6を、2組以上鉛直方向に積層して、電極積層体群10を形成する工程、並びに電極積層体群を鉛直方向30aに落下させながら、電極積層体群を包囲している複数の整列部材20を、電極積層体群に向かう方向20aへと移動させて、電極積層体群10の側面を押すことによって、電極積層体群10を整列させる工程を含む、積層型電池の製造方法。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の集電体層、第1の活物質層、固体電解質又はセパレータ、第2の活物質層、及び第2の集電体層の順の反復構成を2以上有する、積層型電池の製造方法であって、
少なくとも、第1の活物質層及び第1の集電体層を有する複数の第1の電極積層体、第2の活物質層及び第2の集電体層を有する複数の第2の電極積層体、及び前記第1の電極積層体と前記第2の電極積層体との間の又は前記第1及び/若しくは第2の電極積層体に積層されている固体電解質又はセパレータを、2組以上鉛直方向に積層して、電極積層体群を形成する工程、並びに
前記電極積層体群を鉛直方向に落下させながら、前記電極積層体群を包囲している複数の整列部材を、前記電極積層体群に向かう方向へと移動させて、前記電極積層体群の側面を押すことによって、前記電極積層体群を整列させる工程
を含む、積層型電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高電圧及び高エネルギー密度を有する電池として、リチウムイオン二次電池が実用化されている。リチウムイオン二次電池の用途が広い分野に拡大していること及び高性能の要求から、リチウムイオン二次電池の更なる性能向上のために様々な研究が行われている。
【0003】
リチウムイオン二次電池の形態としては、積層型リチウムイオンム二次電池、捲回型リチウムイオン二次電池等の態様が存在する。その中で、積層型リチウムイオン二次電池は、捲回型リチウムイオン二次電池と比較して、エネルギーの体積効率、安全性、品質、耐久性に優れている利点を有する。
【0004】
積層型リチウムイオンム二次電池の1つの態様においては、シート状の正極積層体と負極積層体の間に電解質を含浸させたセパレータを介在させた反復構成を複数積層されている構成を有する。この態様における製造工程においては、電極積層体(正極/負極)及びセパレータを繰り返し積層する工程が含まれる。この積層工程においては、効率よく、かつ高精度で積層させることが求められており、そのための手段が提案されている。
【0005】
特許文献1では、第1把持部が第1テーブルと積層テーブルとの間を往復移動する一方で、第2把持部は積層テーブルと第2テーブルとの間を往復移動し、第1テーブル上で水平方向の位置が調整されたセパレータ−電極組立体を第1把持部が把持するときには、第2把持部は積層テーブル上で第2電極を解放し、第1把持部が積層テーブル上でセパレータ−電極組立体を解放するときには、第2テーブル上で水平方向の位置が調整された第2電極を第2把持部が把持する、積層装置が開示されている。特許文献1では、積層時に各電極の位置を制御しつつ積層することで高い精度で積層することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−227130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の方法は、各電極積層体を1枚ずつ積層していくため、生産性が低い。
【0008】
これに対し、各電極積層体及びセパレータを大まかに積層させ、そして各電極積層体及びセパレータの側面を押して整列させることも考えられる。
【0009】
しかしながら、単純に各電極積層体及びセパレータを周囲から押して整列させる場合、各電極積層体及びセパレータの自重に起因する摩擦力が各電極積層体及びセパレータに働き、それにより各電極積層体及びセパレータが破損することが考えられる。
【0010】
これに対し、各電極積層体及びセパレータを押す際に、重ね合わされた各電極積層体及びセパレータの側面にエアーを吹き付け、それによって各電極積層体及びセパレータの間に隙間を形成して摩擦を低減させることも考えられる。
【0011】
しかしながら、エアーを吹き付ける場合、電極の重なり、エアーの吹き出し方法等により各電極積層体及びセパレータの全ての間に確実にエアーを入れることは非常に困難である。エアーが入らずに隙間が生じていない箇所が存在している状態で、各電極積層体及びセパレータの側面を押して整列した場合、この隙間が生じていない箇所においては摩擦力が発生し、それにより各電極積層体及びセパレータが破損することが考えられる。
【0012】
更に、エアーを吹き付ける場合、エアーの吹き出しによって異物の巻き上がりが起こり、各電極積層体及びセパレータの間に異物が混入し、それによって電池の短絡等の不具合が発生することも考えられる。
【0013】
したがって、正極及び/又は負極積層体を複数枚まとめて積層させ、かつ複数の正極及び/又は負極積層体間に生じる摩擦力を低減させ又はなくして、同時に位置決めをすることができる、積層型電池の製造方法を開発する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
第1の集電体層、第1の活物質層、固体電解質又はセパレータ、第2の活物質層、及び第2の集電体層の順の反復構成を2以上有する、積層型電池の製造方法であって、
少なくとも、第1の活物質層及び第1の集電体層を有する複数の第1の電極積層体、第2の活物質層及び第2の集電体層を有する複数の第2の電極積層体、及び上記第1の電極積層体と上記第2の電極積層体との間の又は上記第1及び/若しくは第2の電極積層体に積層されている固体電解質又はセパレータを、2組以上鉛直方向に積層して、電極積層体群を形成する工程、並びに
上記電極積層体群を鉛直方向に落下させながら、上記電極積層体群を包囲している複数の整列部材を、上記電極積層体群に向かう方向へと移動させて、上記電極積層体群の側面を押すことによって、上記電極積層体群を整列させる工程
を含む、積層型電池の製造方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、正極及び/又は負極積層体を複数枚まとめて積層させ、かつ複数の正極及び/又は負極積層体間に生じる摩擦力を低減させ又はなくして、同時に位置決めをすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、第1の電極積層体、第2の電極積層体、及び固体電解質の模式図である。
【
図2】
図2(a)は、積層工程を経た段階における、電極積層体群の上面図である。
図2(b)は、この段階における電極積層体群の側面断面図である。
【
図3】
図3(a)は、落下させる前の電極積層体群の側面断面図である。
図3(b)は、落下中の電極積層体群の側面断面図である。
図3(c)は、整列後の電極積層体群の側面断面図である。
【
図4】
図4は、電極整列システムの1つの態様の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
《積層型電池の製造方法》
本発明の積層型電池の製造方法は、第1の集電体層、第1の活物質層、固体電解質又はセパレータ層、第2の活物質層、及び第2の集電体層の順の反復構成を2以上有する、積層型電池の製造方法である。
【0018】
特に、本発明の積層型電池の製造方法は、積層工程及び整列工程を含む。
【0019】
以下では、本発明の積層型電池の製造方法の各工程及び各工程に用いる物について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
〈積層工程〉
積層工程は、少なくとも、第1の活物質層及び第1の集電体層を有する複数の第1の電極積層体、第2の活物質層及び第2の集電体層を有する複数の第2の電極積層体、並びに第1の電極積層体と第2の電極積層体との間の又は第1及び/若しくは第2の電極積層体に積層されている固体電解質又はセパレータを、2組以上鉛直方向に積層して、電極積層体群を形成する工程を意味する。
【0021】
より具体的には、積層工程の1つの態様においては、
図1に示すような、第1の電極積層体(2)、第2の電極積層体(4)、及び固体電解質又はセパレータ(6)を、それぞれ複数用意する。
【0022】
第1の電極積層体(2)は、第1の活物質層及び第1の集電体層を有する。第2の電極積層体(4)は、第2の活物質層及び第2の集電体層を有する。
【0023】
次いで、用意した複数の第1の電極積層体(2)、複数の第2の電極積層体(4)、及び第1の電極積層体(2)と第2の電極積層体(4)との間の複数の固体電解質又はセパレータ(6)とを、
図2に示すように、整列部材(20)を有する電極積層体置場(30)の上に、2組以上鉛直方向に積層して、電極積層体群(10)とする。
【0024】
整列部材としては、例えばアクチュエータ等を用いることができる。
【0025】
積層工程の別の態様としては、図示しないが、複数の第1の電極積層体、複数の第2の電極積層体、並びに第1及び/又は第2の電極積層体に積層されている固体電解質又はセパレータとを、2組以上鉛直方向に積層して、電極積層体群を形成してもよい。
【0026】
例えば、セパレータ又は固体電解質で包み込まれている複数の第1の電極積層体と、セパレータ又は固体電解質で包み込まれていない複数の第2の電極積層体とを、上記と同様にして整列部材を有する電極積層体置場の上に、交互に2組以上鉛直方向に積層して、電極積層体群としてもよい。
【0027】
この場合、積層工程を容易にする観点から、セパレータ又は固体電解質で包み込まれている第1の電極積層体と、セパレータ又は固体電解質で包み込まれていない第2の電極積層体とが等しい面積を有することが好ましい。
【0028】
〈整列工程〉
整列工程は、電極積層体群を鉛直方向に落下させながら、電極積層体群を包囲している複数の整列部材を、電極積層体群に向かう方向へと移動させて、電極積層体群の側面を押すことによって、電極積層体群を整列させる工程を意味する。
【0029】
より具体的には、まず、
図3(a)に示すように、電極積層体群(10)が配置された電極積層体置場(30)を、鉛直方向(30a)に落下させ、それによって電極積層体群を鉛直方向に落下させる。
【0030】
この落下の加速度は、電極積層体群(10)の各構成(2、4、6)の摩擦係数、重量、剛性等に応じ、適宜調節することができる。例えば、この落下の加速度は、0.8G以上又は0.9G以上であることができ、また1.2G以下又は1.1G以下であることができる。
【0031】
電極積層体群を鉛直方向に落下させると、
図3(b)に示すように、電極積層体群(10)の各構成(2、4、6)間にかかる荷重が弱められ又はなくなり、そして電極積層体群(10)の各構成(2、4、6)間にかかる垂直抗力が弱められ又はなくなり、その結果摩擦力が弱められ又はなくなる状態となる。この状態で、整列部材(20)を、電極積層体群に向かう方向(20a)へと移動させて、
図3(c)に示すように電極積層体群(10)の側面を押すことによって、電極積層体群を整列させる。
【0032】
整列工程は、例えば
図4に示すような整列機構(100)を用いて行うことができる。この整列機構(100)は、落下装置(40)を具備しており、落下装置(40)には、整列部材(20)を有する電極積層体置場(30)、及びその上の電極積層体群(10)を載置することができる。
【0033】
落下装置(40)は、0.8G〜1.2Gの加速度で電極積層体置場(20)を鉛直方向に移動させることができる装置であれば特に限定されない。落下装置(40)は、例えばボールねじとモーターとの組合せ、リニアモーター等を具備していてよい。
【0034】
〈積層型電池の各構成〉
以下では、積層型電池の各構成について説明する。
【0035】
{第1の電極積層体}
第1の電極積層体は、第1の集電体層及び第1の活物質層を有する。反復構成を形成する観点から、第1の集電体層の両面に第1の活物質層が積層されていることが好ましい。また、第1の電極積層体は、随意のタブ部を有していてもよい。更に、第1の電極積層体は、必要に応じてセパレータで包み込まれていてもよい。
【0036】
(第1の集電体層)
第1の集電体層は、例えば正極集電体であることができる。正極集電体を構成する材料は、正極活物質からの集電を行うことができる材料であれば特に限定されない。
【0037】
(第1の活物質層)
第1の活物質層は、例えば正極活物質を含有することができる。正極活物質としては、リチウム、ナトリウム、カルシウム等のイオンを、放電の際に吸蔵し、また任意に充電の際には放出させることができる物質であれば、特に限定されない。
【0038】
{第2の電極積層体}
第2の電極積層体は、第2の集電体層及び第2の活物質層を有する。反復構成を形成する観点から、第2の集電体層の両面に第2の活物質層が積層されていることが好ましい。また、第2の電極積層体は、随意のタブ部を有していてもよい。
【0039】
(第2の集電体層)
第2の集電体層は、例えば負極集電体であることができる。負極集電体を構成する材料は、負極活物質からの集電を行うことができる材料であれば特に限定されない。
【0040】
(第2の活物質層)
第2の活物質層は、例えば負極活物質を含有することができる。負極活物質としては、リチウム、ナトリウム、カルシウム等のイオンを、放電の際に放出させ、また任意に充電の際には吸蔵させることができる物質であれば、特に限定されない。
【0041】
{固体電解質}
固体電解質は、リチウム、ナトリウム、カルシウム等のイオンに対する伝導性を有する材料であれば特に限定されない。
【0042】
{セパレータ}
セパレータは、基材及び基材に保持されている固体電解質で構成されていてよい。
【0043】
基材としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、テフロン(登録商標)で構成されているメッシュ状基材であることができる。この場合、開孔率は60%以上、65%以上、又は70%以上であることができ、また95%以下、90%以下又は85%以下であることができる。
【0044】
基材がメッシュ状基材である場合、基材の開孔率は、60%以上、65%以上、又は70%以上であることができ、また95%以下、90%以下又は85%以下であることができる。また、孔間の桟幅は、10μm以上、15μm以上、又は20μm以上であることができ、また50μm以下、40μm以下、又は30μm以下であることができる。
【0045】
基材の厚さは、10μm以上、12μm以上、又は15μm以上であることができ、また50μm以下、40μm以下、又は30μm以下であることができる。
【0046】
セパレータにおける固体電解質としては、上記の固体電解質を用いることができる。
【符号の説明】
【0047】
2 第1の電極積層体
4 第2の電極積層体
6 固体電解質又はセパレータ
10 電極積層体群
20 整列部材
20a 電極積層体群に向かう方向
30 電極積層体置場
30a 鉛直方向
40 落下装置
100 整列機構