【解決手段】 2つのコイル要素11、12を連結する連結部13は、コイル要素11の巻き終わり側の巻回面およびコイル要素12の巻き始め側の巻回面から所定距離だけ離間して、これら2つの巻回面と平行に延びる第1の直線部分13Bと、コイル要素11の巻き終わり端11Dからフラットワイズ曲げによって直角に折り曲げられて第1の直線部分11Bに連続する第1の接続部分と、第1の直線部分13Bに連続するとともに、コイル要素12の積層された横辺12Aの外周側面に沿って形成されるUターン形状部分11D〜Hと、このUターン形状部分11D〜Hに連続し、フラットワイズ曲げによって直角に折り曲げられて、コイル要素12の巻き始め端12Dに連続する第2の接続部分を有する。
両端部が接続端子となる1本の平角線材を用い、両端部の近傍部分がそれぞれエッジワイズ巻きで積層されることによって互いに角筒形状に並列形成されるとともに、対向する1つの側面同士が互いに平行に沿うように配された第1のコイル要素および第2のコイル要素と、両コイル要素を連結する連結部とを備え、
前記連結部は、
前記第1のコイル要素の巻き終わり側の巻回面および前記第2のコイル要素の巻き始め側の巻回面から所定距離だけ離間し、かつ該第1のコイル要素の巻き終わり端から延長されて角筒形状の外径から外側にとび出した所定位置において、これら2つのコイル要素の並列方向と平行に延びる直線部分と、
前記第1のコイル要素の巻き終わり端からフラットワイズ曲げによって直角に折り曲げられて前記直線部分に接続される第1の接続部分と、
前記直線部分に接続されるとともに、前記第2のコイル要素の、前記角筒形状の前記所定位置と同一側に位置する側面に沿ってUターン形状を描くように形成されるUターン形状部分と、
このUターン形状部分の、前記直線部分と接続された端部とは反対側の端部に接続され、フラットワイズ曲げによって直角に折り曲げられて、前記第2のコイル要素の巻き始め端に接続される第2の接続部分と、を有する、
ことを特徴とするコイル部品。
前記連結部は、前記第1のコイル要素における、前記第2のコイル要素から遠い側の縦辺の平角線材の巻き終わり端から、平角線材の積層方向に、フラットワイズ曲げによって直角に折り曲げられた第1の折曲げ部と、この第1の折曲げ部に続いて、横辺の延びる方
向に沿うようにエッジワイズ巻きによって、直角に屈曲する第1の屈曲部と、この第1の屈曲部に続いて、前記第1のコイル要素の前記横辺に平行に延びる第1の直線部と、この第1の直線部に続いて、前記第2のコイル要素の前記並列方向に平行な側面方向に、エッジワイズ巻きによって直角に屈曲する第2の屈曲部と、この第2の屈曲部に続き、該横辺の外周側面に沿うように直線状に延びる第2の直線部と、この第2の直線部に続いて、前記第2のコイル要素の該横辺の外周側面に沿い、前記第1のコイル要素の方向に向かうようにエッジワイズ巻きによって直角に屈曲する第3の屈曲部と、この第2のコイル要素の該横辺の外周側面に沿い、前記第1のコイル要素方向に直線状に延びる第3の直線部と、この第3の直線部に続いて、前記第2のコイル要素の該横辺の外周側面に沿い、前記第1の直線部の方向にエッジワイズ巻きによって直角に屈曲する第4の屈曲部と、この第4の屈曲部に続いて、前記第1の直線部と交叉する前に、前記第2のコイル要素における、前記第1のコイル要素に近い側の前記縦辺の終端部である、前記第2のコイル要素の巻き始め端に接続されるように、フラットワイズ曲げによって直角に折り曲げられる第2の折曲げ部とを備えている、ことを特徴とする請求項1記載のコイル部品。
前記連結部の前記第1の直線部と、前記第1および前記第2のコイル要素との間に形成されるスペース内に、これらコイル内に挿通されるコア部のコイル外鍔部分が配置可能とされるように構成されていることを特徴とする請求項1または2記載のコイル部品。
両端部が接続端子となる1本の平角線材を用い、両端部の近傍部分がそれぞれエッジワイズ巻きで積層されることによって互いに角筒形状に並列形成されるとともに、対向する1つの側面同士が互いに平行に沿うように配された第1のコイル要素および第2のコイル要素と、両コイル要素を連結する連結部とを備えた、コイル部品の成形方法において、
前記平角線材の前記第1のコイル要素の端部近傍から、該第1のコイル要素と前記第2のコイル要素の中心を結ぶ並列方向に平行な横辺と、該並列方向に直交する縦辺とによるエッジワイズ巻きで、この平角線材を巻回積層することによって前記第1のコイル要素を
角筒形状に形成する第1のコイル要素形成工程を行った後、
前記並列方向に平行な前記横辺と、該並列方向に直交する前記縦辺とによるエッジワイズ巻きで、前記平角線材を前記第1のコイル要素の巻線方向と同一方向に第2のコイル要素の端部近傍まで巻回積層することによって前記第2のコイル要素を角筒形状に形成する第2のコイル要素形成工程を行うまでの間に、
この平角線材を用い、これら第1のコイル要素と第2のコイル要素を連結する連結部を形成する連結部形成工程を行うとともに、
前記第2のコイル要素形成工程を行った後、フラットワイズ曲げを用いて、前記連結部を折り曲げる連結部折曲げ工程を行う、コイル部品の成形方法であって、
前記連結部形成工程においては、前記平角線を、前記第1のコイル要素の巻き終わり端から、角筒形状の外径方向にとび出させ、エッジワイズ巻きによって第1の屈曲部を形成し、さらに前記横辺の2倍以下の長さの直線部を形成した後、エッジワイズ巻きによって第2の屈曲部を形成し、さらにエッジワイズ巻きによって前記第1のコイル要素と同一巻線方向に半周するUターン形状部分を形成し、この後、該Uターン形状部分の前記直線部分と接続された端部とは反対側の端部から延びる平角線を前記直線部と交叉させた後、前記第1のコイル要素の巻き始め端に連続させるようにし、
前記連結部折曲げ工程においては、フラットワイズ曲げによって、前記第1のコイル要素の巻き終わり端と前記第1の屈曲部の間に位置する第1の折曲げ部において、フラットワイズ曲げによって平角線を直角に折り曲げて、前記直線部が前記第1のコイル要素から離間する方向に位置するように形成する第1の折曲げ工程を行うとともに、前記Uターン形状部分が、前記直線部と交叉する前に、フラットワイズ曲げによって、前記第2のコイル要素が前記連結部に対して直角に折り曲げられるように、かつ前記並列方向に平行な前記第2のコイル要素の側面に沿うように形成する、ことを特徴とするコイル部品の成形方法。
【背景技術】
【0002】
リアクトル等のコイル部品は、磁性体コアに巻線コイルが巻回された構成とすることによりインダクタンスを発生させることができる。
リアクトルとしては、送電系統用の大容量のものから、通信器部品にいたるまで、使用目的に応じて種々のタイプのものが知られている。このようなリアクトルは、他の絶縁部材等と共に、金属ケース等に収容される。
【0003】
ところで、車載用の昇圧回路に用いられるリアクトルにおいて、高電流が流された場合には高インダクタンス値となるように、積層されたコイル要素を2つ並列して形成するとともに、両方のコイル要素を流れる電流の方向が互いに逆向きとなるように接続した構成のものが知られている。
【0004】
このようなリアクトルの従来例としては、並列して配された2つのコイル要素を1本の平角線材のエッジワイズ巻きによって形成したものが知られている(例えば、下記特許文献1、2を参照)。
特許文献1においては、閉ループを構成する磁性体コアの対向する位置に、平角線材をエッジワイズ巻きにより曲げ部を成形しながら巻回された、第1のコイル要素と第2のコイル要素が並列形成される。これらの2つのコイル要素間で渡される平角線材の連結部は、この平角線材が、コイル要素の巻回された巻線に沿って、二つ折り状に折り返すように形成されている。
【0005】
また、特許文献2においては、上記特許文献1と同様に、閉ループを構成する磁性体コアの対向する位置に、平角線材をエッジワイズ巻きにより曲げ部を成形しながら巻回された、第1のコイル要素と第2のコイル要素が並列形成され、さらに、これら2つのコイル要素の連結部において、平角線材が、一方のコイル要素から、2つのコイル要素の対向する側面間に入り込んで、他方のコイル要素に渡されるように形成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1のものでは、連結部において平角線材が折り返されているので、その部分についての厚みがコイル要素の積層方向に大きくなり、コンパクト化の要請に反するとともに、特性劣化の虞がある。
一方上記特許文献2のものでは、連結部の平角線材が2つのコイル要素の対向する側面間に入り込んで、一方のコイル要素から他方のコイル要素に渡されるのでこのコイル要素の間隔がどうしても大きくなってしまい、装置コンパクト化の要請に反する。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、2つのコイル要素の間隔を短縮して
コンパクト化を図るとともに特性劣化の虞を軽減し得るコイル部品およびコイル部品の成形方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係るコイル部品およびコイル部品の製造方法は、以下の特徴を備えている。
本発明に係るコイル部品は、
両端部が接続端子となる1本の平角線材を用い、両端部の近傍部分がそれぞれエッジワイズ巻きで積層されることによって互いに角筒形状に並列形成されるとともに、対向する1つの側面同士が互いに平行に沿うように配された第1のコイル要素および第2のコイル要素と、両コイル要素を連結する連結部とを備え、
前記連結部は、
前記第1のコイル要素の巻き終わり側の巻回面および前記第2のコイル要素の巻き始め側の巻回面から所定距離だけ離間し、かつ該第1のコイル要素の巻き終わり端から延長されて角筒形状の外径から外側にとび出した所定位置において、これら2つのコイル要素の並列方向と平行に延びる直線部分と、
前記第1のコイル要素の巻き終わり端からフラットワイズ曲げによって直角に折り曲げられて前記直線部分に接続される第1の接続部分と、
前記直線部分に接続されるとともに、前記第2のコイル要素の、前記角筒形状の前記所定位置と同一側に位置する側面に沿ってUターン形状を描くように形成されるUターン形状部分と、
このUターン形状部分の、前記直線部分と接続された端部とは反対側の端部に接続され、フラットワイズ曲げによって直角に折り曲げられて、前記第2のコイル要素の巻き始め端に接続される第2の接続部分と、を有する、ことを特徴とするものである。
【0010】
また、前記連結部は、前記第1のコイル要素における、前記第2のコイル要素から遠い側の縦辺の平角線材の巻き終わり端から、平角線材の積層方向に、フラットワイズ曲げによって直角に折り曲げられた第1の折曲げ部と、この第1の折曲げ部に続いて、横辺の延
びる方向に沿うようにエッジワイズ巻きによって、直角に屈曲する第1の屈曲部と、この第1の屈曲部に続いて、前記第1のコイル要素11の前記横辺11Aに平行に延びる第1の直線部と、この第1の直線部に続いて、前記第2のコイル要素の前記並列方向に平行な側面方向に、エッジワイズ巻きによって直角に屈曲する第2の屈曲部と、この第2の屈曲部に続き、該横辺の外周側面に沿うように直線状に延びる第2の直線部と、この第2の直線部に続いて、前記第2のコイル要素の該横辺の外周側面に沿い、前記第1のコイル要素の方向に向かうようにエッジワイズ巻きによって直角に屈曲する第3の屈曲部と、この第2のコイル要素の該横辺の外周側面に沿い、前記第1のコイル要素方向に直線状に延びる第3の直線部と、この第3の直線部に続いて、前記第2のコイル要素の該横辺の外周側面に沿い、前記第1の直線部の方向にエッジワイズ巻きによって直角に屈曲する第4の屈曲部と、この第4の屈曲部に続いて、前記第1の直線部と交叉する前に、前記第2のコイル要素における、前記第1のコイル要素に近い側の前記縦辺の終端部である、前記第2のコイル要素の巻き始め端に接続されるように、フラットワイズ曲げによって直角に折り曲げられる第2の折曲げ部とを備えていることが好ましい。
【0011】
さらに、前記連結部の前記第1の直線部と、前記第1および前記第2のコイル要素との間に形成されるスペース内に、これらコイル内に挿通されるコア部のコイル外鍔部分が配置可能とされるように構成されていることが好ましい。
【0012】
また、本発明のコイル部品の成形方法は、
両端部が接続端子となる1本の平角線材を用い、両端部の近傍部分がそれぞれエッジワイズ巻きで積層されることによって互いに角筒形状に並列形成されるとともに、対向する
1つの側面同士が互いに平行に沿うように配された第1のコイル要素および第2のコイル要素と、両コイル要素を連結する連結部とを備えた、コイル部品の成形方法において、
前記平角線材の前記第1のコイル要素の端部近傍から、該第1のコイル要素と前記第2のコイル要素の中心を結ぶ並列方向に平行な横辺と、該並列方向に直交する縦辺とによるエッジワイズ巻きで、この平角線材を巻回積層することによって前記第1のコイル要素を角筒形状に形成する第1のコイル要素形成工程を行った後、
前記並列方向に平行な前記横辺と、該並列方向に直交する前記縦辺とによるエッジワイズ巻きで、前記平角線材を前記第1のコイル要素の巻線方向と同一方向に第2のコイル要素の端部近傍まで巻回積層することによって前記第2のコイル要素を角筒形状に形成する第2のコイル要素形成工程を行うまでの間に、
この平角線材を用い、これら第1のコイル要素と第2のコイル要素を連結する連結部を形成する連結部形成工程を行うとともに、
前記第2のコイル要素形成工程を行った後、フラットワイズ曲げを用いて、前記連結部を折り曲げる連結部折曲げ工程を行う、コイル部品の成形方法であって、
前記連結部形成工程においては、前記平角線を、前記第1のコイル要素の巻き終わり端から、角筒形状の外径方向にとび出させ、エッジワイズ巻きによって第1の屈曲部を形成し、さらに前記横辺の2倍以下の長さの直線部を形成した後、エッジワイズ巻きによって第2の屈曲部を形成し、さらにエッジワイズ巻きによって前記第1のコイル要素と同一巻線方向に半周するUターン形状部分を形成し、この後、該Uターン形状部分の前記直線部分と接続された端部とは反対側の端部から延びる平角線を前記直線部と交叉させた後、前記第1のコイル要素の巻き始め端に連続させるようにし、
前記連結部折曲げ工程においては、フラットワイズ曲げによって、前記第1のコイル要素の巻き終わり端と前記第1の屈曲部の間に位置する第1の折曲げ部において、フラットワイズ曲げによって平角線を直角に折り曲げて、前記直線部が前記第1のコイル要素から離間する方向に位置するように形成する第1の折曲げ工程を行うとともに、前記Uターン形状部分が、前記直線部と交叉する前に、フラットワイズ曲げによって、前記第2のコイル要素が前記連結部に対して直角に折り曲げられるように、かつ前記並列方向に平行な前記第2のコイル要素の側面に沿うように形成する、ことを特徴とするものである。
【0013】
ここで、上述した「エッジワイズ状に巻く」あるいは「エッジワイズ巻き」とは、平角線材の一方の側縁である短辺を内径面として縦に巻いて板状に積層することをいうものとする。
また、上述した「フラットワイズ曲げ」とは、平角線材の矩形断面における長辺側の一方の面を内径面とし他方の面を外径面として、平角線材を長辺側方向に曲げることをいうものとする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のコイル部品によれば、第1のコイル要素と第2のコイル要素は、連結部により連結されており、この連結部は、第1のコイル要素の巻き終わり側の巻回面および第2のコイル要素の巻き始め側の巻回面から所定距離だけ離間して、これら2つの巻回面と平行に延びる直線部分と、第1のコイル要素の巻き終わり端からフラットワイズ曲げによって直角に折り曲げられて前記直線部分に連続する第1の接続部分と、前記直線部分に連続するとともに、第2のコイル要素の、前記角筒形状の前記所定位置と同一側に位置する側面に沿って形成されるUターン形状部分と、このUターン形状部分に接続され、フラットワイズ曲げによって直角に折り曲げられて、第2のコイル要素の巻き始め端に連続する第2の接続部分と、から構成されている。
【0015】
これにより、上記特許文献1のもののように、連結部において平角線材が折り返されていないので、コイル要素の積層方向へのコンパクト化の要請に反することがなく、特性劣化の虞を軽減できる。また、上記特許文献2のもののように、連結部の平角線材が2つの
コイル要素の対向する側面間に入り込んで、これらのコイル要素の間隔が大きくなってしまい、コイル要素の並列方向の幅が大きくなり過ぎて装置コンパクト化の要請に反する、という虞もない。
【0016】
その上、前記連結部と前記第1および第2のコイル要素との間に形成されるスペース内に、これらコイル内に挿通されるコアの鍔部が配置可能に構成されるようにしたものでは、コア部に、コイル内コアよりも一回り大きいコイル外コア(鍔部)を備えたものとした場合にも、無駄なスペースを設けることなく、コンパクト化を図りつつ効率的に組み立てることが可能である。
【0017】
また、本発明のコイル部品の成形方法によれば、上述した本発明のコイル部品の効果を享受することができる。さらに、1本の平角線材を、一端部から順に第1のコイル要素、連結部および第2のコイル要素を形成し、最後に、フラットワイズ曲げによって、該連結部を、2か所に亘って直角に折り曲げるようにして成形している。2か所のうち、1か所は第1のコイル要素と連結部の関係において、他の1か所は第2のコイル要素と連結部の関係において、両コイル要素の対向する側面が平行とされている状態で上記折曲げ処理を行うようにしているから、両コイル要素の間隔の寸法を小さく、かつ高精度に確保することができ、成形工程が簡略化し、製造効率を向上させることができる。
【0018】
また、本発明のコイル部品の成形方法においては、自動巻線装置を使用することが可能であり、連結部折曲げ工程においては、巻回したコイル要素をホルダ等に保持することが可能であるので、この場合には、成形効率をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係るコイル部品について図面を参照しつつ説明する。本実施形態のコイル部品は、例えば、リアクトルに適用したものである。
【0021】
リアクトルは、例えば、自動車に搭載される各種機器の電気回路要素として使用され、磁性コアと、このコアに巻回されるリアクトルコイルを備えており、通常は、リアクトルコイル内にリアクトルコアが挿入され、これらがケース内に収納され充填材等により固定された構成とされる。
【0022】
本実施形態のリアクトルコイル10は、
図1に示すように、1本の平角線材1を用い、接続端子となる両端部1a,1bの近傍を、エッジワイズ巻きで巻回積層することによってそれぞれ角筒形状に並列形成された第1のコイル要素11と第2のコイル要素12を備えるとともに、両コイル要素11,12を連結する連結部13を備えて構成される。
第1のコイル要素11と第2のコイル要素12は、対向する1つの側面11C、12C同士が互いに平行で所定の寸法Dの間隔をもって沿うように並列配置されている。
【0023】
第1のコイル要素11は、1本の平角線材1の一方の端部1aの近傍側に、この平角線材1を、両コイル要素11,12の中心を結ぶ並列方向(
図1で左右方向)に平行な横辺11Aと、並列方向に直交する方向(
図1で上下方向)に平行な縦辺11Bとによる角部が円弧状の矩形に、エッジワイズ巻きで角筒形状に巻回積層されて形成される。また、第2のコイル要素12は、上記平角線材1の他方の端部1bの近傍側に、この平角線材1を、並列方向に平行な横辺12Aと並列方向に直交する方向に平行な縦辺12Bとによる角部が円弧状の矩形に、第1のコイル要素11と同じ巻線方向(電流の方向は互いに逆向き)のエッジワイズ巻きで、同一の積層方向に角筒形状に巻回積層されて形成される。
【0024】
前記連結部13は、第1のコイル要素11の巻き終わり側の巻回面(
図1で最も手前側の巻回面)および第2のコイル要素12の巻き始め側の巻回面(
図1で最も手前側の巻回面)から所定距離だけ離間して、これら2つのコイル要素11、12の並列方向と平行に延びる直線部分13Bと、第1のコイル要素11の巻き終わり端からフラットワイズ曲げによって直角に折り曲げられて直線部分13Bに連続する第1の折曲げ部13Pと、直線部分13Bに連続するとともに、第2のコイル要素12の、前記角筒形状の前記所定位置と同一側に位置する側面12Aに沿って形成されるUターン形状部分13D〜Hと、このUターン形状部分13D〜Hに接続され、フラットワイズ曲げによって直角に折り曲げられて、第2のコイル要素12の巻き始め端12Dに連続する第2の折曲げ部13Qを備えて構成されている。
【0025】
前記連結部13の構成をより詳細に述べれば、第1のコイル要素11における、第2のコイル要素12から遠い側の縦辺の平角線材1の巻き終わり端11Dから、平角線材1の積層方向に、フラットワイズ曲げによって直角に折り曲げられる第1の折曲げ部13Pと
、この第1の折曲げ部13Pに続いて、横辺の延びる方向に沿うように直角に屈曲する第1の屈曲部13Aと、この第1の屈曲部13Aに続き横辺11Aに平行に延びる第1の直線部13Bと、この第1の直線部13Bに続いて、第2のコイル要素12の横辺12Aの外周側面方向に直角に屈曲する第2の屈曲部13Cと、この第2の屈曲部13Cに続き、横辺12Aの外周側面に沿うように直線的に延びる第2の直線部13Dと、この第2の直線部13Dに続いて、この第2のコイル要素12の横辺12Aの外周側面に沿い、第1のコイル要素11の方向に向かうように直角に屈曲する第3の屈曲部13Eと、この第2のコイル要素12の横辺12Aの外周側面に沿い、第1のコイル要素方向に直線状に延びる第3の直線部13Fと、この第3の直線部13Fに続いて、第2のコイル要素12の横辺12Aの外周側面に沿い、第1の直線部13Bの方向に直角に屈曲する第4の屈曲部13Gと、この第4の屈曲部13Gに続いて、第1の直線部13Bと交叉する前に、第2のコイル要素12における、第1のコイル要素11に近い側の縦辺(第2のコイル要素の巻き端め端12D)に連続するように、フラットワイズ曲げによって直角に折り曲げられる第2の折曲げ部13Qとで構成されている。
【0026】
図1において、第1のコイル要素11は、紙面奥側から手前側に向かって端部1aから時計方向に巻回されて、紙面奥側から手前側に向かって積層されている。同様に、第2のコイル要素12も、紙面奥側から手前側に向かって端部1bから時計方向に巻回されて、紙面奥側から手前側に向かって積層されている。
ただし、端部(端子)1a、1bのいずれか一方が入力端子で、他方が出力端子となるので、電流の流れで考えると、各コイル要素11、12で電流が互いに逆向きに流れることになり、コイル要素11、12内を流れる電流は、互いに逆向きに回転することになる。
これにより磁性体コア内を通過する磁界も各コイル要素11、12間で互いに逆向きと
なる。
【0027】
図2〜
図6はリアクトルコイル10の成形方法を説明する図である。このリアクトルコイル10の成形方法では、不図示の巻線治具、ホルダ等を用いて平角線材1の巻回成形を行う。巻線治具は、例えば、位置を移動し得る滑車状のヘッド部材であり、曲げる位置の平角線材1の内側縁に当接して、所定の円弧形状に湾曲変形させる。ホルダは、例えば、第2のコイル要素12を巻回する場合に、第1のコイル要素11を保持するために、または、平角線材1を折り曲げたり屈曲させたりする場合に、第1のコイル要素11および第2のコイル要素12を保持するために使用する。なお、
図2〜
図6は成形工程を理解しやすい向きで表示しているものであり、実際の巻回成形における向きに合致しているとは限らない。
【0028】
まず、
図2に示すように、第1のコイル要素11と第2のコイル要素12の巻回および連結部13の形成に十分な長尺の平角線材1を用い、一方の端部1aの近傍から第1のコイル要素11を巻回する第1のコイル要素形成工程を行う。図示の場合、端部1aから直線状に、両コイル要素11,12の中心を結ぶ並列方向(
図2で左右方向)に直交する方向(
図2で上下方向)に延びる、第1のコイル要素11の最初の巻回の縦辺11Bを形成し、続いて直角に曲げて並列方向に平行な方向に延びる横辺11Aを形成し、さらに直角に曲げて縦辺11Bを、さらに直角に曲げて横辺11Aを順に形成する。これに続いて、平角線材1を最初の巻回の縦辺11Bに重ねて、次巻回の縦辺11Bを形成し、このエッジワイズ巻きを所定回数行って平角線材1を巻回積層し、第1のコイル要素11を角筒形状に形成する。
【0029】
次に、第1のコイル要素11の最終ターンを巻回したのち、第1のコイル要素11の巻き終わり端11Dに連結する連結部13を形成する連結部形成工程を行う。この連結部形成工程は、
図2に示すように、第1のコイル要素11の最終巻回における縦辺11Bを角筒形状の外径の外側まで延ばし、その後、エッジワイズ巻きによって、第1のコイル要素11と同一方向に巻回することになる。
【0030】
すなわち、上記縦辺11Bの延長部分をエッジワイズ巻きにより直角に屈曲させて第1の屈曲部13Aを形成し、次に、上記横辺11Aと平行となるように、コイル要素11、12の横辺11A、12Aの2倍の長さに両コイル要素11、12の間隔Dを加えた長さを有する第1の直線部13Bを形成し、さらに、第1の直線部13Bをエッジワイズ巻きにより直角に屈曲させて第2の屈曲部13Cを形成する。
次に、
図3に示すように、上記縦辺11Bと平行となるように、この縦辺11Bよりも小さい長さの第2の直線部13Dを形成し、第2の直線部13Dをエッジワイズ巻きにより第1のコイル要素11の方向に直角に屈曲させて第3の屈曲部13Eを形成する。
【0031】
次に、
図4に示すように、第1の直線部13Bと平行となるよう、第1のコイル要素11の横辺11Aと同じ長さの第3の直線部13Fを形成し、第3の直線部13Fをエッジワイズ巻きにより第1の直線部13Bの方向に直角に屈曲させて第4の屈曲部13Gを形成し、この後、第4の直線部13Hを形成する。この第4の直線部13Hは、第2のコイル要素12の縦辺12B(第2のコイル要素の巻き端め端12D)に続く部分である。
ここで、
図4に示す第2の直線部13D、第3の屈曲部13E、第3の直線部13F、第4の屈曲部13Gおよび第4の直線部13Hは、全体としてUターン形状部分13D〜Hを構成している。
【0032】
次に、
図5に示すように、第2のコイル要素12を巻回する第2のコイル要素形成工程を行う。すなわち、上述したように、第4の直線部13Hは、第2のコイル要素の巻き始め端12Dを介して、第2のコイル要素12の最初の巻回の縦辺12Bに連続する。
【0033】
さらに第2のコイル要素12の縦辺12Bに沿って、この第2のコイル要素12の配置位置における縦辺12Bの終端位置でエッジワイズ巻きにより直角に曲げて、並列方向と平行な方向に延びる横辺12Aを形成し、さらに直角に曲げて縦辺12Bを、さらに直角に曲げて横辺12Aを形成する。これに続いて、平角線材1を最初の巻回の縦辺12Bに重ねて、次巻回の縦辺12Bを形成し、第1のコイル要素11の巻線方向と同方向のエッジワイズ巻きを、他方の端部1bの近傍に至るまで所定回数行って平角線材1を巻回積層し、第2のコイル要素12を角筒形状に形成する。
【0034】
続いて、連結部の2箇所においてフラットワイズ曲げを行なう連結部折曲げ工程を行なう。
すなわち、
図6に示すように、まず、第1のコイル要素11の巻き終わり端11Dと連結部13の屈曲部13Aの間に位置する折曲げ部13Pにおいて、平角線材1を、フラットワイズ曲げによって、2つのコイル要素11、12の並列方向に沿って直角に折り曲げる、連結部折曲げ工程(第1折曲げ工程)を行なう。
この第1折曲げ工程は、
図5に示す状態から、上記折曲げ部13Pの位置に治具を当てて、第2のコイル要素12を、その第2のコイル要素12の端部1bが
図6に示すように図中で上方に延びる姿勢となるよう連結部13を直角に折り曲げる。
【0035】
次に、第1のコイル要素12の連結部13における第4の屈曲部13Gと、巻き始め端12D(第4の直線部13H)との間に位置する折曲げ部13Qにおいて、平角線材1を、フラットワイズ曲げによって、2つのコイル要素11、12の並列方向に沿って直角に折り曲げる、連結部折曲げ工程(第2折曲げ工程)を行なう。
この第2折曲げ工程は、
図6に示す状態から、上記折曲げ部13Qの位置に治具を当てて、第2のコイル要素12を、その第2のコイル要素12の端部1bが
図1に示すように第1のコイル要素11の端部1aと平行となるよう、かつ第2のコイル要素12のUターン形状部分13D〜Hが第2のコイル要素12の横辺12Aの外周側面に沿うように、直角に折り曲げられる。
【0036】
上記連結部折曲げ工程においては、連結部13が、2つの折曲げ部13P、13Qの位置において、フラットワイズ曲げによって、直角に折り曲げられるように構成されており、その直角折曲げ処理においては、第1のコイル要素11と第2のコイル要素12はそれぞれホルダ等によって保持され、コイル要素11,12の対向する側面11C,12Cの平行状態が維持された状態で行われ、間隔寸法Dが精度よく維持されることになる。
そして、連結部折曲げ工程の後においては、
図1に示すように、第1のコイル要素11および第2のコイル要素12と、連結部13の第1の直線部13Bとの間に所定の間隔が確保される。これにより、図示されないコイル外に配されるコア部が、コイル内に配されるコア部よりも一回り大きい形状である場合にも、コイル外に配されるコア部の外周部分(鍔部分)が、上記所定の間隔内に収まるように構成することができ、スペースの有効利用によりコンパクト化を図ることができる。
【0037】
次に、
図7に、上記実施形態の変形例に係るコイル部品としてのリアクトルコイル100を示す。上述した
図1の実施形態においては、連結部13が端部1a、1bと同じ上部側に配置されているのに対して、
図7の実施形態においては連結部113が端部1a、1bと逆の下部側に配置されているが、第1のコイル要素11および第2のコイル要素12は、実質的に
図1に示す実施形態のものと同様に構成されている。
なお、同じ構成要素には
図1と同じ符号を付して、説明を省略している。
【0038】
つまり、この変形例のリアクトルコイル100は、1本の平角線材1を用い、接続端子となる両端部1a,1bの近傍を、エッジワイズ巻きで積層することによってそれぞれ横
辺11A,12Aと縦辺11B,12Bとによる角部が円弧状の矩形に、エッジワイズ巻きで巻回積層して角筒形状に並列形成された第1のコイル要素11と第2のコイル要素12を備えるとともに、両コイル要素11,12を連結する連結部113を備えて構成される。
また、上記実施形態のものと同様に、第1のコイル要素11と第2のコイル要素12は、対向する1つの側面11C,12C同士が互いに所定の間隔寸法Dをもって平行に沿うように並列配置される。
【0039】
また、前記連結部113の連結部折曲げ工程においては、平角線材1を両コイル要素11,12の中心を結ぶ並列方向に沿って上記折曲げ部113Pの位置に治具を当て、フラットワイズ曲げによって、この平角線1を直角に折り曲げる点、および平角線材1を両コイル要素11,12の中心を結ぶ並列方向に沿って上記折曲げ部113Qの位置に治具を当て、フラットワイズ曲げによって、この平角線1を直角に折り曲げる点においても、上記実施形態のものと基本的な構成において同じである。
【0040】
なお、この変形例によっても、第1の直線部分13Bの長さを、両コイル要素11,12の横辺11A,12Aの長さと間隔寸法Dの長さの和に正確に規定することによって、両コイル要素11、12の側面11C,12C同士の間隔寸法Dを精度よく形成できるため、リアクトルコアと組み合わせるときの両者の間隙も小さく、かつ精度よく設定可能であり、リアクトルとしての特性を高めることができるとともに、全体をコンパクトに形成することができる。
【0041】
なお、本発明のコイル部品およびコイル部品の成形方法としては、上記実施形態のものに限られるものではなく、その他の種々の態様をとり得るものである。例えば、上記実施形態における連結部13、113を構成する各部の間に、他の直線部や屈曲部を設けたり、連結部13、113を構成する各部の一部を省略することも可能である。具体的には例えば、折曲げ部13P、113Pと第1屈曲部13A、113Aの間や、第4屈曲部13G、113Gと折曲げ部13Q、113Qの間に直線部を設けるようにしてもよい。
【0042】
また、例えば、上記実施形態のものにおいては、連結部13、113のUターン形状13D〜Hの、上記並列方向の幅が、第1コイル要素11および第2コイル要素12の上記並列方向の幅と同一とされているが、Uターン形状13D〜Hの上記並列方向の幅が、第1コイル要素11および第2コイル要素12の上記並列方向の幅よりも小さい値とすることは可能である。
【0043】
また、このUターン形状13D〜Hは、上記実施形態のものに限られるものではなく形状を変更することが可能であり、例えば直線部13Fを円弧状に替えて、Uターン形状を全体としてコ字状ではなく、U字状とすることも可能である。
また、本発明のコイル部品のコイル要素は、ターン数の多少に拘らず適用可能であり、ターン数が極めて少ない場合(例えば1ターン)にも適用でき、形状としては、ターン数が極めて少ない場合であっても「角筒形状」と称するものとする。
【0044】
また、上記実施形態に係るリアクトル(コイル部品)では、車載用のリアクトルに適用したものを示しているが、本発明に係るコイル部品は車載用に限られず種々のものに適用が可能であり、例えば、太陽光発電パネルにおいて使用されるリアクトル等にも適用することが可能である。