(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-76880(P2017-76880A)
(43)【公開日】2017年4月20日
(54)【発明の名称】無線通信システム及び無線通信システムにおける暗号の作成方法
(51)【国際特許分類】
H04K 1/10 20060101AFI20170331BHJP
H04L 7/06 20060101ALI20170331BHJP
【FI】
H04K1/10
H04L7/06 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-203288(P2015-203288)
(22)【出願日】2015年10月14日
(71)【出願人】
【識別番号】304020498
【氏名又は名称】サクサ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】副島 健治
【テーマコード(参考)】
5J104
5K047
【Fターム(参考)】
5J104AA02
5J104BA04
5J104CA02
5J104PA07
5K047BB01
5K047GG11
5K047GG14
5K047HH15
(57)【要約】
【課題】高度な暗号処理を行うソフトウエア等による対策なしに送受信データの傍受の難易度を上げ、より秘匿性の向上をはかる。
【解決手段】無線通信システム10は、無線送信端末11と無線受信端末12からなり、無線送信端末11と無線受信端末12が、無線データの送受信とともに、送受信タイミングキーを共有している暗号パルスデータの送受信を行い、無線送信端末12が、クロック周期よりも短いタイミングで暗号パルスデータを送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信システムであって、
クロックに同期して無線データを送信する無線送信端末と、
前記無線送信端末から送信された前記無線データを受信する無線受信端末と、を備え、
前記無線送信端末と前記無線受信端末が、
前記無線データの送受信とともに、送受信タイミングキーを共有している暗号パルスデータの送受信を行い、
前記無線送信端末が、
クロック周期よりも短いタイミングで前記暗号パルスデータを送信することを特徴とする無線通信システム。
【請求項2】
前記暗号パルスデータの前記送受信タイミングキーが、前記無線送信端末と前記無線受信端末に共有されるように予め設定されており、前記無線データの初回の送受信から前記暗号パルスデータが重畳されることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記暗号パルスデータの前記送受信タイミングキーが、前記無線送信端末と前記無線受信端末の通信接続の確立の手続き終了後に共有されるように設定されており、前記通信接続が確立して以降の前記無線データの送受信から前記暗号パルスデータが重畳されることを特徴とする請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記無線送信端末は、
前記送受信タイミングキーが示す特定のタイミングで前記クロックと非同期の前記暗号パルスデータを前記無線データに重畳して送信する制御部、
を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記無線受信端末は、
受信した前記暗号パルスデータのクロック周期区間での電圧レベルと、前記クロック周期区間より短い、前記送受信タイミングキーが示す特定タイミングの微少区間での電圧レベルとを観察し、前記無線データの論理復調を行う制御部、
を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の無線通信システム。
【請求項6】
クロックに同期して無線データを送信する無線送信端末と、前記無線送信端末から送信された前記無線データを受信する無線受信端末とを備えた無線通信システムにおける暗号化キーの作成方法であって、
前記無線送信端末と前記無線受信端末が、
通信前に入力される共通鍵情報を取り込み、取り込んだ共通鍵情報とそれぞれの端末における時計情報とを演算して送受信タイミングキーを生成するステップと、
前記無線送信端末が、
前記送受信タイミングキーが示す特定のタイミングで前記クロックと非同期の暗号パルスデータを生成し前記無線データに重畳して送信するステップと、
前記無線受信端末が、
受信した前記暗号パルスデータのクロック周期区間での電圧レベルと、前記クロック周期区間より短い、前記送受信タイミングキーが示す特定タイミングの微少区間での電圧レベルとを観察し、前記無線データの論理復調を行うステップと、
を有することを特徴とする無線通信システムにおける暗号化キーの作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム及び無線通信システムにおける暗号の作成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
データ通信方法の一つに、クロックに同期してデータを送信する方法(クロック同期方式)が知られている。このクロック同期方式に基づくデータ通信によれば、例えば、
図5に示すように、クロックの立下りエッジ(矢印)に同期してそのエッジ発生時のデータの“High”/“Low”の電圧レベルを検出している。
【0003】
なお、無線通信の場合は、送信機がプリアンブルと称されるヘッダ部分の同期信号によりクロック送信を行い、受信機がこれを受信してそのクロック周期に同期することで、以降、送信される無線データを復調することができる。具体的には、クロックの立下がりエッジ時点で、データ電圧が“High”レベルの場合、“1”、“Low”レベルの場合“0”であるものとして論理復調する。
【0004】
しかしながら、この方法によれば、無線データは常にクロックエッジに同期してデータが検出され、したがって、第3者がクロックの同期タイミングさえ把握できれば通常のハードウエアで傍受することが可能である。このため、無線データの秘匿性を高めるために高度な暗号処理を行うソフトウエア等による対策が必要になる。
【0005】
このため、例えば、特許文献1に、ディジタルフィルタ回路が提案されている。特許文献1に記載されたディジタルフィルタ回路によれば、クロックエッジに依存することなく、送信データレートよりもはるかに高い周期でデータの電圧レベルを観察し、観察した電圧レベルの大小により論理復調することができる。
【0006】
具体的に、送信機が、特定のタイミングでクロックと非同期のパルスノイズ的なデータを重畳して送信し、受信機が、その特定のタイミングの微小区間でのレベル観察でパルスデータの存在を確認することでデータを抽出することができる。例えば、
図6に示すように、クロック周期区間Aの微少区間では、“High”レベルのデータが多いため“1”に、クロック周期区間Bの微少区間では、“Low”レベルのデータが多いため“0”にそれぞれ論理復調される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−222113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、高度な暗号処理を行うソフトウエア等による対策なしに送受信データの傍受の難易度を上げ、より秘匿性の向上をはかった、無線通信システム及び無線通信システムにおける暗号の作成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記した課題を解決するため、本発明は、以下のような解決手段を提供する。
【0010】
(1)本発明の第1の態様は、無線通信システムであって、クロックに同期して無線データを送信する無線送信端末と、前記無線送信端末から送信された前記無線データを受信する無線受信端末と、を備え、前記無線送信端末と前記無線受信端末が、前記無線データの送受信とともに、送受信タイミングキーを共有している暗号パルスデータの送受信を行い、前記無線送信端末が、クロック周期よりも短いタイミングで前記暗号パルスデータを送信することを特徴とする。
【0011】
(2)又、本発明において、前記暗号パルスデータの前記送受信タイミングキーが、前記無線送信端末と前記無線受信端末に共有されるように予め設定されており、前記無線データの初回の送受信から前記暗号パルスデータが重畳されることを特徴とする。
【0012】
(3)又、本発明において、前記暗号パルスデータの前記送受信タイミングキーが、前記無線送信端末と前記無線受信端末の通信接続の確立の手続き終了後に共有されるように設定されており、前記通接続が確立して以降の前記無線データの送受信から前記暗号パルスデータが重畳されることを特徴とする。
【0013】
(4)又、本発明において、前記無線送信端末は、前記送受信タイミングキーが示す特定のタイミングで前記クロックと非同期の前記暗号パルスデータを前記無線データに重畳して送信する制御部、を有することを特徴とする。
【0014】
(5)又、本発明において、前記無線受信端末は、受信した前記暗号パルスデータのクロック周期区間での電圧レベルと、前記クロック周期区間より短い、前記送受信タイミングキーが示す特定タイミングの微少区間での電圧レベルとを観察し、前記無線データの論理復調を行う制御部、を有することを特徴とする。
【0015】
(5)本発明の第2の態様は、クロックに同期して無線データを送信する無線送信端末と、前記無線送信端末から送信された前記無線データを受信する無線受信端末とを備えた無線通信システムにおける暗号化キーの作成方法であって、前記無線送信端末と前記無線受信端末が、通信前に入力される共通鍵情報を取り込み、取り込んだ共通鍵情報とそれぞれの端末における時計情報とを演算して送受信タイミングキーを生成するステップと、前記無線送信端末が、前記送受信タイミングキーが示す特定のタイミングで前記クロックと非同期の暗号パルスデータを生成し前記無線データに重畳して送信するステップと、前記無線受信端末が、受信した前記暗号パルスデータのクロック周期区間での電圧レベルと、前記クロック周期区間より短い、前記送受信タイミングキーが示す特定タイミングの微少区間での電圧レベルとを観察し、前記無線データの論理復調を行うステップと、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、高度な暗号処理を行うソフトウエア等による対策なしに送受信データの傍受の難易度を上げ、より秘匿性の向上をはかった、無線通信システム及び無線通信システムにおける暗号処理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る無線通信システムの構成図である。
【
図2】
図1の無線通信システムの暗号処理の一例を示すシーケンス図である。
【
図3】
図1の無線通信システムの暗号処理の他の例を示すーケンス図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る無線通信システムの動作タイミング図である。
【
図5】従来の無線通信システムのデータ復調の一例を示すタイミング図である。
【
図6】従来の無線通信システムのデータ復調の他の例を示すタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。以降の図においては、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号又は符号を付している。
【0019】
(実施形態の構成)
図1に示すように、本実施形態に係る無線通信システム10は、クロックに同期して無線データを送信する無線送信端末11と、無線送信端末11から送信された無線データを受信する無線受信端末12と、を備える。
【0020】
無線送信端末11は、無線受信端末12と共有する送受信タイミングキーで示される特定のタイミングでクロックと非同期のパルスノイズ的なデータ(以下、暗号パルスデータていう)を無線データに重畳して送信する。そして、無線受信端末12は、送受信タイミングキーで示される特定タイミングにおける微小区間での電圧レベルの観察により暗号パルスデータの存在を確認する。但し、この場合、無線送信端末11と無線受信端末12とが送受信タイミングキーを共有していることが前提である。
【0021】
無線送信端末11と無線受信端末12が共有する「送受信タイミングキー」とは、例えば、WPA(Wi−Fi Protected Access)における事前共有鍵(PSK:Pre-Sared Key)等に相当する共通鍵情報であり、互いに同じランダム種キー(共通鍵情報)と現在時刻(タイムスタンプ)とを演算(例えば、乗算)することにより生成されるランダムなタイミングデータのことをいう。
【0022】
送受信タイミングキーは、無線送信端末11と無線受信端末12が、共に通信前に入力される共通鍵情報を取り込み、取り込んだ共通鍵情報と時計情報とを乗算することにより生成される乱数である。例えば、タイムスタンプ(12:25)ד共通鍵情報”=15、タイムスタンプ(12:26)ד共通鍵情報”=38になるように、乱数生成器等により特定タイミングが指定される。
【0023】
無線送信端末11は、制御部110(CPU)と、発振器111(TCXO:Temperature Compensated Crystal Oscillator)と、位相同期回路(以下、PLL(Phased Lock Loop)回路112という)と、電圧制御発振器(以下、VCO(Voltage Controlled Oscillator)回路113という)と、送信アンプ114と、送信アンテナ115とを含む。
【0024】
無線送信端末11は、まず、制御部110が、無線受信端末12との間で共有する送受信タイミングキーを用い、ランダムに生成される暗号パルスデータを生成してGPIO(汎用入出力)ポートから出力し、発信器111の電圧制御端子(V_CONT)へ供給する。
【0025】
発信器111は、水晶振動子と温度補償回路とを一個のパッケージに組み込んだ電圧制御端子(V_CONT)付きの発振器であり、水晶の圧電効果を利用して高精度の基準周波数を生成してPLL回路112の基準電圧端子(REF)に出力する。
【0026】
PLL回路112は、発信器111から出力される入力信号(暗号パルスデータ)と、電圧に応じて周波数が変化するVCO回路113出力(OUT)のフィードバック信号との位相差をVCO回路113の電圧制御端子(V_CONT)に入力することで、入力信号と出力信号との位相を同期させる。
【0027】
送信アンプ114は、PLL回路112から出力される基準周波数の整数倍の周波数を用いて入力信号を変調し、増幅して送信アンテナ115経由で無線受信端末12へ送信する。
【0028】
無線受信端末12は、制御部120(CPU)と、受信アンテナ121と、受信アンプ122と、発信器123(TCXO)と、PLL回路124と、VCO回路125と、ミキサ回路126と、フィルタ回路127と、周波数電圧変換器(以下、f−V変換器128)とを含む。
【0029】
無線受信端末12は、受信アンプ122が、受信アンテナ121経由で変調された入力信号を受信し、増幅してミキサ回路126の一方の入力端子(IN2)へ供給する。ミキサ回路126の他方の入力端子(IN1)には、PLL回路124により、VCO回路125の出力信号を分周して入力信号の周波数を定数倍に高めたローカル発信周波数信号が供給されている。
【0030】
ここで、ミキサ回路126によりダウンコンバートされ復調された入力信号は、フィルタ回路127により波形成形され、f−V変換器128により周波数の変化を振幅の変化に変換して制御部120のGPIOポートに出力する。最後に、制御部120は、GPIOポートから取り込まれる復調された暗号パルスデータのクロック周期区間と、共通の送受信タイミングキーで示されると規定タイミングの当該クロック周期区間よりも短い微少区間での電圧レベルを監視して無線データに重畳された暗号パルスデータの論理復調を行う。
【0031】
(実施形態の動作)
以下、本実施形態に係る無線通信システム10の動作について
図2以降を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
まず、送受信タイミングキーの共有方法から説明する。送受信タイミングキーを共有するために以下の2通りの方法が想定される。一つは、無線送信端末11と無線受信端末12の工場出荷時、両端末に設定するパターンと、無線送信端末11と無線受信端末12との間の通信接続確立時に設定するパターンである。前者を用いた暗号化処理方法を
図2に、後者を用いた暗号化処理方法を
図3にシーケンス図で示す。
【0033】
図2によれば、無線送信端末11は、制御部110が、電源投入を検知すると(ステップS201“YES”)、工場出荷時に予め設定されてある送受信タイミングキーを読み出す(ステップS202)。すなわち、送受信タイミングキーは、制御部110が内蔵するマスクROM等のメモリに製造者によって予め書き込まれている。
【0034】
制御部110は、更に、この送受信タイミングキーにより生成される特定のタイミングでクロックと非同期の暗号パルスデータを生成し(ステップS203)、GPIOポートを介して発信器111,PLL回路112,VCO回路113,送信アンプ114,送信アンテナ115で構成される送信系回路に出力する(ステップS204)。そして、送信系回路は、暗号パルスデータをクロックに重畳して無線受信端末12に無線送信する(ステップS205)。
【0035】
一方、無線受信端末12は、無線送信端末11により送信された暗号パルスデータを、受信アンテナ121、受信アンプ122、発信器123,PLL回路124,VCO回路125,ミキサ回路126,フィルタ回路127,f−V変換器128で構成される受信系回路で受信し(ステップS213)、無線データを復調する(ステップS214)。そして、制御部120が復調した無線データをGPIOポート経由で取り込む。
【0036】
このとき、無線受信端末12では、既に制御部120が、無線送信端末11と同様、電源投入を検知したきに(ステップS211“YES”)、制御部120が工場出荷時に予め設定されている送受信タイミングキーを内蔵のメモリから読み出してあるものとする(ステップS212)。
【0037】
続いて、制御部120は、クロック周期区間と、共有の送受信タイミングキーで示される、当該クロック周期区間より短い微少区間での電圧レベルを観察することにより無線データに重畳された暗号化パルスデータの論理復調を行う(ステップS214)。このとき、制御部120は、パルス有りで自分宛の欲しいデータであれば(ステップS215“YES”)、その内容を取り込み(ステップS216)、不要データであれば(ステップS215“NO”)、破棄する処理を実行する(ステップS217)。
【0038】
すなわち、
図2の暗号処理方法によれば、暗号パルスデータの送受信タイミングキーが、無線送信端末11と無線受信端末12に共有されるように予め設定されており、無線データの初回の送受信から無線データに暗号パルスデータが重畳され送信される。つまり、工場出荷時に、無線送信端末11の制御部110,無線受信端末12の制御部120の内蔵メモリ(マスクROM等)のそれぞれに送受信タイミングキーを設定するプログラムを予め書き込んでおき、初回送信時から暗号パルスデータを生成して無線データに重畳している。
【0039】
次に、
図3を用いて暗号処理方法の他の例について説明する。まず、無線送信端末11(制御部110)は、無線受信端末12に、接続リクエストのためのメッセージを発行し(ステップS301)、接続許可のメッセージを受信する「ハンドシェイク」と称される手続きにより両端末11,12の通信接続を確立する(ステップS302)。ここで通信接続が確立すると、無線送信端末11(制御部110)は、無線受信端末12(制御部120)に対し、共有する送受信タイミングキーを送信する(ステップS303)。なお、送受信タイミングキーは、上記したように、事前に入力される共通鍵情報に時計等によりカウントされるランダム値を乗算した値であり、ここでは特定のタイミングを示す。
【0040】
続いて、無線送信端末11(制御部110)は、無線受信端末12から送受信タイミングキーの受信確認を得ると(ステップS304:キー応答)、その送受信タイミングキーにより生成される特定のタイミングで送信系回路によりクロックと非同期の暗号パルスデータを生成し、無線データに重畳して送信する(ステップS305:パルス有データ)。
【0041】
一方、無線受信端末12(制御部120)は、無線送信端末11から送信される無線データに重畳された暗号パルスデータを受信すると、正常受信したことを示す応答を返し(ステップS306:パルス有応答)、受信した暗号パルスデータのクロック周期区間と、送受信タイミングキーで示される特定のタイミングにおける、クロック周期区間より短い微少区間での電圧レベルを観察することにより暗号化パルスデータの論理復調を行なう。
【0042】
すなわち、
図3に示す暗号処理方法によれば、暗号パルスデータの送受信タイミングキーが、無線送信端末11と無線受信端末12との接続確立の手続き終了後に共有されるように設定されており、したがって、接続が確立して以降の無線データの送受信から暗号パルスデータが重畳される。
【0043】
図4に、プリアンブル部とデータ本体部“1,1,0,1,0”とからなる、無線送信端末11により生成される送信データと、無線受信端末12の電圧レベルの観察タイミング(レベル観察)とが示されている。
【0044】
図4によれば、無線受信端末12は、制御部120が、データ本体部のクロック周期区間T5〜T9において、クロック同期のデータレートよりもはるかに高いデータレートの微小区間で電圧レベルを観察し、各クロック周期区間T5〜T9で“high”レベルが多い区間は“1”、“Low”レベルが多い区間は“0”とデータを特定する。
【0045】
このため、送受信タイミングキーが示す特定微小区間aで“0”を検出し、そのクロック周期区間T6の“1”と特定微小区間aの“0”により、クロック周期区間T6のデータは、“10”、特定微小区間bで“1”を検出し、そのクロック周期区間T7の“0”と特定微小区間bの“1”により、このクロック周期区間T7のデータは、“01”と判断することができる。
【0046】
なお、本実施形態に係る無線通信システム10において、無線送信端末11は、無線受信端末12と共有する送受信タイミングキーで示される特定のタイミングでクロックと非同期のパルスノイズ的なデータを無線データに重畳して送信するが、無線通信であるため、同じタイミングで実際のノイズが重畳することも考えられる。しかしながら、この場合、無線受信端末12が、送信先アドレス等を確認することにより、自分宛の無線データで無いこと等を判断できるため、特に利用が制限されることはない。
【0047】
(実施形態の効果)
以上説明のように本実施形態に係る無線通信システム10によれば、無線送信端末11と無線受信端末12が、無線データの送受信とともに、送受信タイミングキーを共有している暗号パルスデータの送受信を行い、無線送信端末11が、クロック周期よりも短いタイミングで暗号パルスデータを送信することにより、送受信タイミングキーを認識するオリジナルのハードウエアでなければ変調された無線データの復調ができないため、高度な暗号処理を行うソフトウエア等による対策なしに送受信データの傍受の難易度が上がり、秘匿性も向上する。
【0048】
また、本実施形態に係る無線通信システム10によれば、暗号パルスデータの送受信タイミングキーが、予め設定されているか、接続確立の手続き終了後に設定されることで、無線送信端末11と無線受信端末12の送受信タイミングキーの共有が可能となり、無線送信端末11が、送受信タイミングキーで示される特定のタイミングでクロックと非同期の暗号パルスデータを無線データに重畳して送信し、無線受信端末12が、その特定タイミングにおける微小区間での電圧レベルの観察により暗号パルスデータの存在を確認する仕組みを構築することができ、その結果、送受信データの傍受の難易度が上がり、秘匿性も向上する。
【0049】
また、本発明の暗号の作成方法によれば、無線送信端末11が無線受信端末12と共有する送受信タイミングキーとして、例えば、WPAにおける事前共有鍵に相当する情報を用い、互いに同じ事前共通鍵情報と時計等によりカウントされるランダム値とを演算する等によって生成されるランダムなタイミングデータを用いて暗号パルスデータを重畳して送信することで、数秒毎に通信暗号キーを交換するような高頻度通信や、例えば、AES(Advanced Encryption Standard)のように、暗号鍵と元データとの掛け合わせにより元データより確実に大きなデータ量になる方法に比べて、データ量を増やすことなく、課金情報等、高度な秘匿性を求められる通信を実現することができる。
【0050】
なお、本実施形態に係る無線通信システム10は、例えば、ATM(Automatic Teller Machine)と銀行の勘定系サーバ等の間で、有線LAN(Local Area Network)から無線LANに切り替わる際に、より秘匿性の高いデータ送信に適用して顕著な効果が得られる。
【0051】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲に限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。またその様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0052】
10 無線通信システム、11 無線送信端末、110 制御部(CPU)、111 発振器(TCXO)、112 PLL回路、113 VCO回路、114 送信アンプ、115 送信アンテナ、12 無線受信端末、120 制御部(CPU)、121 受信アンテナ、122 受信アンプ、123 発信器、124 PLL回路、125 VCO回路、126 ミキサ回路、127 フィルタ回路、128 周波数電圧変換器(f−V変換器)