特開2017-77210(P2017-77210A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2017-77210(P2017-77210A)
(43)【公開日】2017年4月27日
(54)【発明の名称】液体肥料供給装置
(51)【国際特許分類】
   A01C 23/00 20060101AFI20170407BHJP
【FI】
   A01C23/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-206931(P2015-206931)
(22)【出願日】2015年10月21日
(71)【出願人】
【識別番号】000201641
【氏名又は名称】全国農業協同組合連合会
(71)【出願人】
【識別番号】596029085
【氏名又は名称】株式会社パディ研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 恒雄
(72)【発明者】
【氏名】小林 新
【テーマコード(参考)】
2B052
【Fターム(参考)】
2B052BC07
2B052DC07
2B052EB10
2B052EB11
2B052FA05
2B052FA07
(57)【要約】
【課題】 液体肥料を水口に供給する液体肥料供給装置を提供する。
【解決手段】 液体肥料を貯留する液肥貯留槽と、液肥貯留槽内の液体肥料の水面を保持する水面保持手段と、液肥貯留槽内から液体肥料を導出する液体肥料導出手段とを備え、水面保持手段は、液体肥料を導入する液肥導入ノズルと、液肥貯留槽内の水位上昇により液肥導入ノズルの弁口を閉塞するフロート弁体とを備え、液体肥料導出手段は、液肥貯留槽から液体肥料を導出する可撓性の液肥導出管と、液肥導出管の先端の位置を調節して液体肥料導出量を設定する導出量設定部とを有し、導出量設定部は、導出量表示部とガイドパイプとを備え、導出量表示部は、液肥貯留槽内の水面から下方への距離を表示し、ガイドパイプは、液肥導出管の先端部を挿入可能な内径を有する透明材料で形成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場への流し込み施肥を行う際の液体肥料を水口に供給するための液体肥料供給装置であって、肥料成分を溶解した液体肥料を貯留する液肥貯留槽と、該液肥貯留槽内の液体肥料の水面を一定の高さに保持するための水面保持手段と、前記液肥貯留槽内からあらかじめ設定された流量で液体肥料を導出するための液体肥料導出手段とを備え、前記水面保持手段は、液肥貯留槽の外部から該液肥貯留槽内に液体肥料を導入する液肥導入ノズルと、前記液肥貯留槽内の水位の上昇に伴って上昇したときに前記液肥導入ノズルの下端に設けた弁口を閉塞するフロート弁体とを備え、前記液体肥料導出手段は、液肥貯留槽から液体肥料を導出する可撓性材料からなる液肥導出管と、該液肥導出管の先端の上下方向位置を調節することによって液体肥料の導出量を設定する導出量設定部とを有し、該導出量設定部は、液肥貯留槽の側面に設けられた導出量表示部とガイドパイプとを備え、前記導出量表示部は、液肥貯留槽内の水面を基準として水面から下方への距離を表示し、前記ガイドパイプは、前記液肥導出管の先端部を挿入可能な内径を有する透明材料により形成され、前記液肥導出管の先端を、前記導出量表示部の表示に合わせてガイドパイプ内に挿入することにより、液体肥料を、液肥導出管の先端からガイドパイプ内に流下させることを特徴とする液体肥料供給装置。
【請求項2】
前記導出量表示部又は前記ガイドパイプに隣接して前記液肥貯留槽内の水面を外部から視認可能にした水面表示部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の液体肥料供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体肥料供給装置に関し、詳しくは、圃場への流し込み施肥を行う際の液体肥料を水口に供給するための液体肥料供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水稲栽培を行う圃場への追肥作業を行う際の施肥方法として、湛水深を低くした状態で、水口から圃場に流入する水流に乗せて肥料を施肥する流し込み施肥方法が知られている。この流し込み施肥を行う際に使用する流し込み施肥用肥料袋として、肥料袋の特定の位置に斬り込み用表示を設け、流し込み施肥を行う圃場の条件や水口の条件、肥料の性状などに応じて斬り込み用表示の部分を所定の大きさで開口させるものが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−143968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、肥料袋に形成する開口を大きく形成してしまった場合は、所定量より多くの肥料が短時間で溶出してしまい、圃場全体への施肥が十分に行えなくなることがある。また、水口への肥料袋の置き方によって肥料の溶出量が異なることがあるなど、圃場全体に均等に施肥を行うことが難しかった。施肥作業の進行に伴って肥料の溶出量が異なってくるなどの問題もあった。
【0005】
そこで本発明は、各種肥料成分を水に溶解させた液体肥料の所定量を確実に水口に供給することができる液体肥料供給装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の液体肥料供給装置は、圃場への流し込み施肥を行う際の液体肥料を水口に供給するための液体肥料供給装置であって、肥料成分を溶解した液体肥料を貯留する液肥貯留槽と、該液肥貯留槽内の液体肥料の水面を一定の高さに保持するための水面保持手段と、前記液肥貯留槽内からあらかじめ設定された流量で液体肥料を導出するための液体肥料導出手段とを備え、前記水面保持手段は、液肥貯留槽の外部から該液肥貯留槽内に液体肥料を導入する液肥導入ノズルと、前記液肥貯留槽内の水位の上昇に伴って上昇したときに前記液肥導入ノズルの下端に設けた弁口を閉塞するフロート弁体とを備え、前記液体肥料導出手段は、液肥貯留槽から液体肥料を導出する可撓性材料からなる液肥導出管と、該液肥導出管の先端の上下方向位置を調節することによって液体肥料の導出量を設定する導出量設定部とを有し、該導出量設定部は、液肥貯留槽の側面に設けられた導出量表示部とガイドパイプとを備え、前記導出量表示部は、液肥貯留槽内の水面を基準として水面から下方への距離を表示し、前記ガイドパイプは、前記液肥導出管の先端部を挿入可能な内径を有する透明材料により形成され、前記液肥導出管の先端を、前記導出量表示部の表示に合わせてガイドパイプ内に挿入することにより、液体肥料を、液肥導出管の先端からガイドパイプ内に流下させることを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の液体肥料供給装置は、前記導出量表示部又は前記ガイドパイプに隣接して前記液肥貯留槽内の水面を外部から視認可能にした水面表示部が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の液体肥料供給装置によれば、液肥導出管の先端を、導出量表示部の表示に合わせてガイドパイプ内に挿入することにより、一定量の液体肥料を液肥導出管の先端からガイドパイプ内に流下させることができ、ガイドパイプの下端を水口の適当な位置に直接、あるいは、間接的に配置することにより、水口から圃場に流入する用水中に、一定割合の液体肥料を確実に供給することができる。また、液肥導出管の先端の位置を上下させることにより、液体肥料の供給量を調節できるので、液体肥料の種類や濃度、水口から圃場に流入する用水の状態に応じた量の液体肥料を確実に供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の液体肥料供給装置の一形態例を示す正面図である。
図2】同じく液体肥料供給装置の内部構造を示す断面図である。
図3】液肥貯留槽内の水面と液肥導出管の先端との差(水位差)と、流下する液体肥料の流量との関係の一例を示す図である。
図4】本発明の液体肥料供給装置の他の形態例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至図3は、本発明の液体肥料供給装置の一形態例を示している。この液体肥料供給装置は、有底円筒状の液肥貯留槽11に、該液肥貯留槽11内の液体肥料の水面を一定の高さに保持するための水面保持手段12と、液肥貯留槽11内から一定量の液体肥料を導出するための液体肥料導出手段13とを設けたものである。
【0011】
水面保持手段12は、液肥貯留槽11の上部開口を覆う蓋体14の中央に下向きに設けた液肥導入ノズル15と、該液肥導入ノズル15の下端に設けた弁口15aを開閉するフロート弁体16とを備えている。
【0012】
前記液肥導入ノズル15には、液肥貯留槽11の外部の適当な位置に設置された大容量の液体肥料供給タンク17に接続した液肥導入経路となる液肥導入パイプ18が接続されており、高所に設置した液体肥料供給タンク17内の液体肥料は、自然流下によって液肥導入パイプ18を通り、液肥導入ノズル15から液肥貯留槽11の内部に流入する。
【0013】
前記フロート弁体16は、液肥貯留槽11内の水面の上下に伴って上下動するものであって、本形態例では、液肥貯留槽11の内径より僅かに小さな外径を有するPETボトルをフロート弁体16として使用し、キャップの上面に、前記弁口15aを閉塞可能な弁体部16aを設けている。
【0014】
液肥導入ノズル15から液肥貯留槽11の内部に液体肥料が流入して液肥貯留槽11内の水面が上昇し、該水面の上昇に伴ってフロート弁体16が上昇すると、あらかじめ設定された水面に達したときに弁体部16aが弁口15aを閉塞して液肥導入ノズル15からの液体肥料の流入を停止する。液肥貯留槽11内の液体肥料が液体肥料導出手段13によって導出され、液肥貯留槽11内の水面が下降すると、該水面の下降に伴ってフロート弁体16が下降し、弁体部16aが弁口15aから離れて液肥導入ノズル15から液体肥料が液肥貯留槽11内に流入する。したがって、液肥貯留槽11内の水面の上下動に伴うフロート弁体16の上下動によって弁口15aが開閉されることにより、液肥貯留槽11内の水面が一定に保持される。
【0015】
液体肥料導出手段13は、液肥貯留槽11の底部に接続した可撓性材料からなる液肥導出管19と、該液肥導出管19の先端の上下方向位置を調節することによって液体肥料の導出量を設定する導出量設定部20とを有している。該導出量設定部20は、液肥貯留槽11の側面に、互いに隣接するようにして設けられた水面表示部21、導出量表示部22及びガイドパイプ23を有している。
【0016】
前記水面表示部21は、液肥貯留槽11内の水面を外部から視認可能にしたものであって、液肥貯留槽11の周壁に縦方向のスリット11aを形成するとともに、該スリット11aの内側又は外側に、透明材料からなるフィルム又はシート21aを取り付けて形成されている。また、導出量表示部22は、水面表示部21に表示された液肥貯留槽内の水面を基準として、水面から下方への距離を表示している。ガイドパイプ23は、前記液肥導出管19の先端部を挿入可能な内径、例えば、液肥導出管19の外径より2〜6mm大きな内径を有する透明材料製のパイプが用いられている。導出量表示部22及びガイドパイプ23は、液肥貯留槽11の外周に装着される上下一対の固定バンド24,24によって液肥貯留槽11の外周面に保持されている。
【0017】
また、蓋体14の上部には把手14aが取り付けられており、ガイドパイプ23の下端部には、ガイドパイプ23内を流下する液体肥料を水口の所定位置に供給するための液肥供給管(図示せず)が必要に応じられて設けられている。さらに、液肥貯留槽11の上部には、槽内外を連通する通気孔(図示せず)が設けられている。
【0018】
このように形成した液体肥料供給装置を使用して圃場に流し込み施肥を行う際には、所定濃度の液体肥料あるいは固形肥料を所定濃度で水に溶解した液体肥料を液体肥料供給タンク17に投入するとともに、液体肥料供給タンク17と液肥導入ノズル15とを液肥導入パイプ18で接続する。また、液肥貯留槽11の外部に引き出した液肥導出管19の先端部をガイドパイプ23の上部開口からガイドパイプ23内に挿入し、導出量表示部22の表示に合わせて先端を位置決めする。
【0019】
このとき、可撓性材料からなる液肥導出管19は、自身の巻きぐせによってガイドパイプ23内で湾曲することにより、液肥導出管19の先端部がガイドパイプ23の内周に固定された状態になり、先端から流下する液体肥料の圧力や液肥導出管19自身の重量によって上下に移動することはない。また、液肥導出管19を不透明材料で形成したり、透明材料で形成した液肥導出管19の先端を着色したりすることにより、液肥導出管19の先端位置を容易かつ確実に視認することができる。
【0020】
ガイドパイプ23内への液肥導出管19の挿入量は、水口への液体肥料の供給量に応じて設定する。液肥貯留槽11内の水面と液肥導出管19の先端との差(水位差cm)と、流下する液体肥料の流量(リットル/時)との関係は、実験によって容易に求めることができる。例えば、図3は、液肥導出管19として内径5mm、長さ1mの透明チューブを使用したときの実験結果の一例を示すもので、液肥導出管19の先端を液肥貯留槽11内の水面から2cm下方に位置させることにより、液体肥料の流量が毎時1リットルになり、4cm下方に位置させることにより、流量が毎時2.8リットル程度になり、略直線状に変化することが確認できる。したがって、液体肥料の種類や濃度などに応じてあらかじめ両者の関係を求めておくことにより、圃場の状況、水口における水量などに応じて最適な流量で液体肥料を供給することができる。したがって、前記導出量表示部22に、このような実験によって求めた液体肥料の流量を表示しておくこともできる。
【0021】
但し、液肥導出管19の長さが実験と現場とで異なっていると、通水抵抗によって流量が変化するので、液肥導出管19の長さを、あらかじめ設定された一定の長さ、例えば、1mに設定しておき、余分な液肥導出管19は、図2に示すように、液肥貯留槽11内に螺旋状に収納しておくことが好ましい。
【0022】
また、ガイドパイプ23の下端部に、圃場及び水口の状況や、圃場に流入させる用水の流量などに応じて適宜な液肥混合器や液肥分散器を設けることにより、液体肥料を用水中に効果的に分散させて圃場全体に満遍なく液体肥料を供給することができる。さらに、用水の流量が大きく変動するような場合は、用水の流量に応じてガイドパイプ23の下端部を上下動させるなど、ガイドパイプ23の下端部から流下する液体肥料の流量を調節するための適宜な流量調節機構を設けることもできる。
【0023】
図4は、本発明の液体肥料供給装置の他の形態例を示している。なお、以下の説明において、前記形態例に示した液体肥料供給装置の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0024】
図4に示す液体肥料供給装置は、前記同様の構成を有する有底円筒状の液肥貯留槽11に対して、液肥導出管19の余分な分は、液肥貯留槽11の下部外周に巻回するようにしており、水面表示部21は、液肥貯留槽11の下部を貫通して透明チューブ21bの下端を接続し、鉛直方向に立ち上げて上端を蓋体14の下方に配置している。
【0025】
このように、本発明の液体肥料供給装置は、一般的な配管材料などの市販品を使用し、切断や穴開け、接着などの簡単な作業で製作することが可能であり、液体肥料の供給量の設定も容易に行うことができる。また、液肥貯留槽11を透明材料で形成することにより、水面表示部21を形成する必要がなくなり、弁体部16aと弁口15aとの位置関係から、液肥貯留槽11内の水位を知ることができる場合も、水面表示部21を省略することができる。
【0026】
さらに、大量の液体肥料を供給する場合には、液肥貯留槽11の高さを高く形成したり、液肥導出管19及びガイドパイプ23の内径を大きくしたりすればよく、液体肥料供給量に応じた液体肥料供給装置を容易に製作することができる。また、弁口15a及び弁体部16aは、両者の当接部の少なくともいずれか一方に、軟質ゴムなどの密封可能な材料を使用すればよい。さらに、ガイドパイプ23の外面に導出量表示部と同様の表示を付すことにより、導出量表示部22をガイドパイプ23で兼用することができる。また、フロート弁体16の形状は任意であり、ボールタップのような構造を採用することも可能である。
【0027】
なお、液体肥料の種類は特に限定されるものではなく、各種固形肥料は、圃場への給水時間などの条件に応じて適度な濃度になるように、あらかじめ水に溶解させておけばよく、溶解しにくい固形肥料の場合は、前日あるいは数日前に溶解させておけばよい。
【符号の説明】
【0028】
11…液肥貯留槽、11a…スリット、12…水面保持手段、13…液体肥料導出手段、14…蓋体、14a…把手、15…液肥導入ノズル、15a…弁口、16…フロート弁体、16a…弁体部、17…液体肥料供給タンク、18…液肥導入パイプ、19…液肥導出管、20…導出量設定部、21…水面表示部、21a…シート、21b…透明チューブ、22…導出量表示部、23…ガイドパイプ、24…固定バンド
図1
図2
図3
図4